JP2002227034A - 黒発色性に優れたポリ乳酸繊維構造物及びその製造方法 - Google Patents

黒発色性に優れたポリ乳酸繊維構造物及びその製造方法

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JP2002227034A
JP2002227034A JP2001020318A JP2001020318A JP2002227034A JP 2002227034 A JP2002227034 A JP 2002227034A JP 2001020318 A JP2001020318 A JP 2001020318A JP 2001020318 A JP2001020318 A JP 2001020318A JP 2002227034 A JP2002227034 A JP 2002227034A
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lactic acid
poly
polylactic acid
fiber
acid
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Toshiaki Kimura
敏明 木村
Hiroshige Matsumoto
太成 松本
Yuhei Maeda
裕平 前田
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】黒発色性に優れ、高耐熱性を有するポリ乳酸繊
維構造物、及びその製造方法を提供する。 【解決手段】ポリL−乳酸とポリD−乳酸のブレンド物
からなるポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いてなるポ
リ乳酸繊維構造物を、黒色染料により染色する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高耐熱性を有する
黒発色性に優れたポリ乳酸繊維構造物に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】ポリ乳酸繊維は、土や水中の微生物の作
用により容易に分解し、且つ比較的融点や結晶性が高い
ため、実用的な生分解性繊維として、最近特に注目を集
めている。また、ポリ乳酸繊維は、他の合成繊維に比べ
て染色発色性に優れるというポリマー特性を有している
ため、その用途は産業・資材分野に留まらず、発色性を
大いに生かせる衣料分野にも期待されている。
【0003】一方、ポリエチレンテレフタレートに代表
される芳香族ポリエステルは、強度、耐熱性、ウォッシ
ュアンドウェア性等の繊維物性には優れているが、その
構造中に芳香環を有するため、屈折率が高く、染色発色
性が悪いという問題点がある。特に黒発色性が必要とさ
れる用途では、この問題は深刻であるため、これまでに
繊維表面の粗面化や樹脂加工等の種々の解決策が講じら
れている。しかし、これらの方法をもってしても、発色
性向上には限界があり、また、場合よっては風合いが硬
くなる等の発色性以外の問題が生じる場合が多い。その
上、これらの方法は、必然的に工程が煩雑になってしま
うため、汎用性に欠けるといった欠点もある。
【0004】そこで、発明者らは、一般的に用いられて
いるポリL−乳酸を主成分とするポリ乳酸繊維を、ブラ
ックフォーマル、学生服、和服等の黒発色性が必要とさ
れる衣料用途に展開する検討を行ってきた。この場合、
確かにごく汎用的な手法により、ポリエチレンテレフタ
レート等の芳香族ポリエステル繊維では成し得なかった
良好な黒発色性が達成できる。しかしながら、ポリL−
乳酸やポリ−D乳酸といった所謂ホモポリ乳酸の融点は
高々160〜180℃しかないため、ブラックフォーマ
ル等のようにクリーニング後にアイロン掛けすることが
望まれる用途には好適とは言えない。すなわち、これら
のホモポリ乳酸繊維では、その耐熱性が十分でなく、そ
の用途は限定を受けるのが実状である。
【0005】一方、ポリL−乳酸とポリD−乳酸の混合
物からなるステレオコンプレックス結晶は、ホモポリ乳
酸単独の結晶に比べて、融点が上昇することが知られて
いる。この技術を繊維に適用する公知技術としては、特
開昭63−264913号公報、特開昭63−2410
24号公報、Seni Gakkai Preprints 1989等があるが、
いずれの場合も実用的繊維強度を有していない、或いは
実用的繊維強度を有していても耐熱性が不十分である等
の問題点があり、衣料用途等に展開可能なポリ乳酸繊維
は全く得られていない。
【0006】以上のように、衣料用途等の発色性に重き
を置いた分野での高耐熱性ポリ乳酸繊維は、望まれてい
るにも関わらず存在しないのが実状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐熱性を有
する黒発色性に優れたポリ乳酸繊維構造物及びその製造
方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するために、次のような構成を有するものである。
【0009】すなわち、ポリL−乳酸とポリD−乳酸の
ブレンド物からなるポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用
いてなり、明度L*値が20以下、彩度C*値が12以
下であることを特徴とするポリ乳酸繊維構造物である。
【0010】また、ポリL−乳酸とポリD−乳酸のブレ
ンド物からなるポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いた
ポリ乳酸繊維構造物を、黒色染料により染色することを
特徴とするポリ乳酸繊維構造物の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】ポリ乳酸繊維は、他の合成繊維に
比べて優れた染料分散性を有している。よって、染色し
た際、くすんだ色とはならず、鮮やかな有彩色や黒らし
い深い黒色を表現できる。本発明は、このようなポリ乳
酸繊維の特殊且つ優れた染色発色性に着目し、また、耐
熱性を持たせるために、ポリL−乳酸とポリD−乳酸と
のブレンド技術についても同時に鋭意検討した結果、高
耐熱性を有し、黒発色性に優れたポリ乳酸繊維構造物を
得るに至った。以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】本発明のポリ乳酸繊維はポリL−乳酸とポ
リD−乳酸とのブレンド物からなることを特徴とする。
【0013】ポリL−乳酸およびポリD−乳酸の製造方
法としては、L−乳酸、あるいはD−乳酸を原料として
一旦環状2量体であるラクチドを生成せしめ、その後開
環重合を行う2段階のラクチド法や、当該原料を溶媒中
で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法等が挙げられ
るが、これらに限定されず公知の方法を適宜採用するこ
とができる。
【0014】本発明に用いるポリL−乳酸はL−乳酸を
主たるモノマー成分とする重合体であり、L−乳酸の他
にD−乳酸成分を15モル%以下含有する共重合ポリL
−乳酸であっても良いが、ステレオコンプレックス結晶
の形成性を高める観点から、ポリL−乳酸中のD−乳酸
成分は少ない程好ましく、D−乳酸成分を3モル%以下
含有するポリL−乳酸を用いることが更に好ましい。
【0015】同様に、本発明に用いるポリD−乳酸はD
−乳酸を主たるモノマー成分とする重合体であり、D−
乳酸のほかにL−乳酸成分を15モル%以下含有する共
重合ポリD−乳酸であっても良いが、ステレオコンプレ
ックス結晶の形成性を高める観点から、ポリD−乳酸中
のL−乳酸成分は少ない程好ましく、L−乳酸成分を3
モル%以下含有するポリD−乳酸を用いることが更に好
ましい。
【0016】さらに、本発明に用いるポリL−乳酸およ
び/またはポリD−乳酸は、本発明の効果を損なわない
範囲で、他のエステル形成能を有するモノマー成分を共
重合しても良い。共重合可能なモノマー成分としては、
グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪
酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸
などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコー
ル、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペン
チルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリ
ン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を
含有する化合物類またはそれらの誘導体、コハク酸、ア
ジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソ
フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナト
リウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニ
ウムスルホイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸
基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられ
る。
【0017】上述したポリL−乳酸およびポリD−乳酸
の重量平均分子量は少なくとも5万、好ましくは少なく
とも10万、さらに好ましくは10〜40万であれば良
い。重量平均分子量が5万に満たない場合は繊維の強度
物性が低下するため好ましくない。また、40万を超え
る場合には溶融粘度が高くなり過ぎ、溶融紡糸が困難に
なる場合があるので好ましくない。
【0018】なお、本発明で用いるポリL−乳酸および
ポリD−乳酸には本発明の効果を損なわない範囲で主体
をなすポリマー以外の成分を含有しても良い。例えば、
溶融粘度を低減させるため、ポリカプロラクトン、ポリ
ブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートのよ
うな脂肪族ポリエステルや、ポリエチレングリコール、
ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン−プロピレ
ン)グリコール共重合体などの脂肪族ポリエーテルポリ
マーを内部可塑剤として、あるいは外部可塑剤として用
いることができる。さらには、紫外線安定化剤、艶消し
剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤あるいは
着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じ
て添加しても良い。
【0019】本発明におけるポリ乳酸繊維の強度は、製
織時の糸切れ停台を減少させたり、織物、編地の引裂強
力および破裂強力の低下による製品強度の低下を防ぐと
いう観点から、好ましくは2cN/dtex以上、より
好ましくは3cN/dtex以上、さらに好ましくは4
cN/dtex以上であることが良い。
【0020】また、本発明におけるポリ乳酸繊維の沸水
収縮率は、特に限定されないが、精練、染色等の熱水に
よる加工を施しても布帛の幅出しが容易に行えるという
観点から、15%以下であることが望ましい。更に、過
剰な収縮による風合い硬化を防ぐといった観点から、通
常の布帛として用いる場合には、沸水収縮率は2〜10
%、さらに好ましくは3〜8%である。
【0021】本発明のポリ乳酸繊維の紡糸方法は、特に
限定されず公知の方法を適宜採用して良いが、工業的に
効率の高い生産を行うことができ、また、ポリL−乳酸
とポリD−乳酸をブレンドした溶液を安定的且つ均一的
に製糸することができるといった観点から溶融紡糸法が
好ましい。
【0022】本発明のポリ乳酸繊維は、ポリ−D乳酸と
ポリ−L乳酸のステレオコンプレックス形成により耐熱
性向上を図るという観点から、DSC測定により求めら
れるポリL−乳酸単独結晶およびポリD−乳酸単独結晶
の結晶融解に基づく吸熱量の和ΔHlとポリL−乳酸お
よびポリD−乳酸からなるステレオコンプレックス結晶
の結晶融解に基づく吸熱量ΔHhの比ΔHh/ΔHlが
10以上であることが好ましい。同様の観点から、ΔH
h/ΔHlは、より好ましくは20以上、更に好ましく
は30以上であることが良い。なお、ホモポリL−乳酸
およびホモポリD−乳酸のブレンド物からなるポリ乳酸
繊維の場合、ΔHlのピーク温度は160〜180℃付
近に存在し、ΔHhのピーク温度は210℃〜230℃
付近に存在する場合が多い。また、ΔHh/ΔHlが1
0に満たない場合は、ステレオコンプレックス結晶の生
成が不十分であるため、ポリL−乳酸単独結晶あるいは
ポリD−乳酸単独結晶の融解温度において繊維が熱変形
してしまい耐熱性が不十分となる。
【0023】本発明でいうポリL−乳酸とポリD−乳酸
とのブレンド物は、特に限定されず公知の方法により製
造することができるが、例えば以下の方法により製造す
ることができる。
【0024】本発明のポリ乳酸繊維はポリL−乳酸とポ
リD−乳酸のブレンド物を通常の溶融紡糸に供すること
で得られる。ポリL−乳酸とポリD−乳酸のブレンド方
法としては、例えば、ポリL−乳酸チップとポリD−乳
酸チップのチップブレンド(ドライブレンド)物を溶融
紡糸に供する方法が挙げられ、溶融押出し機としては、
プレッシャーメルター型や1軸あるいは2軸エクストル
ーダー型など通常の溶融押出し機を使用することができ
るが、ポリL−乳酸とポリD−乳酸を十分混練しステレ
オコンプレックス結晶を形成しやすくする観点から1軸
あるいは2軸エクストルーダー型が好ましい。さらに
は、ポリマー流路中に静止混練機を組み込む方法、ポリ
L−乳酸チップとポリD−乳酸チップのチップブレンド
物を2軸エクストルーダー型の混練機にて溶融・混練し
た後チップ化し、この予備混練されたチップを溶融紡糸
に供する方法などが好ましい。あるいは、ポリL−乳酸
とポリD−乳酸を別々の溶融押出し機で溶融の後混合し
ても良い。上述のいずれの場合においても濾過層や紡糸
口金通過時の剪断応力による混練が期待されるが、特に
ポリL−乳酸とポリD−乳酸を別々の溶融押出し機で溶
融後混合する場合は、混練強化の観点から混合後に静止
混練機を組み込むことが好ましい。
【0025】また、本発明のポリ乳酸繊維に用いるポリ
L−乳酸とポリD−乳酸のブレンド割合としては、ポリ
L−乳酸:ポリD−乳酸が30:70から70:30の
間であることが好ましいが、ステレオコンプレックス結
晶の生成促進および含有割合向上の観点から、40:6
0から60:40の間であることがより好ましく、4
7:53から53:47の間であることがさらに好まし
い。
【0026】上述したポリL−乳酸とポリD−乳酸のブ
レンド物は、エクストルーダー型やプレッシャーメルタ
ー型の溶融押出し機で溶融された後、メタリングポンプ
によって計量され、紡糸パック内等で濾過を受けた後、
所望の口金形状や口金数を有する口金から吐出される。
吐出された糸はポリマーの融点よりも温度の低い気体中
を通過させることによって冷却・固化された後、油剤を
付与されて引き取られるが、紡糸時の分子配向を上げる
ことによりポリ乳酸ステレオコンプレックス結晶が形成
されやすくなることから300m/分以上で引き取るこ
とが好ましい。同様の観点から、紡糸ドラフトは50以
上であることが好ましい。また、冷却の上流側または冷
却部では吐出糸条からの昇華物を除去するために、気流
吸引装置を用いることが好ましい。さらに、紡出直下、
冷却・固化の前には加熱帯を設置して糸条をポリマーの
融点以上の温度に加熱することが、繊維の強度を高める
点からは好ましい。冷却は環状チムニー、ユニフロチム
ニーのいずれを用いることもできる。引き取られた未延
伸糸はその後延伸に供される。延伸の前に一旦巻き取る
2工程法を用いても、紡糸後巻き取ることなく引き続い
て延伸を行う直接紡糸延伸法を用いてもどちらでも構わ
ないが、生産性の観点からは直接紡糸延伸法が好まし
い。
【0027】延伸工程は1段でも2段以上の多段でも良
いが、高強度化の観点から2段以上の多段延伸を行うこ
とが好ましい。また、延伸倍率が高すぎると繊維の白化
現象が生じ強度が低下してしまうため、繊維の白化現象
が起こらないような延伸倍率とすることが好ましい。延
伸熱源としては通常用いられる任意の方法を採れば良
く、例えばホットローラー、接触式熱板、非接触熱板、
熱媒浴、ピンなどでも良い。
【0028】延伸に引続いて、巻き取り前にはポリマー
の融点より10〜120℃程度低い温度で熱処理が行わ
れることが好ましい。熱処理には、ホットローラー、接
触式熱板、非接触式熱板など任意の方法を採ることがで
きる。また寸法安定性の観点から、熱処理に引き続いて
0〜20%の弛緩処理が行われることが好ましい。
【0029】本発明のポリ乳酸繊維は、丸断面あるいは
扁平、三〜八葉、C型、H型、中空などの異形断面であ
ってもよいし、少なくともポリ乳酸を成分に含んだ芯鞘
型、偏心芯鞘型、サイドバイサイド型、割繊維分割型な
ど、あるいは海島型などの1成分を溶出するタイプの複
合繊維であってもよい。また、通常のフラットヤーン以
外に、仮撚加工糸、強撚糸、タスラン加工糸、太細糸、
混繊糸等のフィラメントヤーンであってもよく、ステー
プルファイバーやトウ、あるいは紡績糸などの各種形態
の繊維であってよい。
【0030】本発明の繊維構造物は、前述した本発明の
ポリ乳酸繊維が単独または他の繊維と混用されてなり、
かつ染色を含む加工を施した繊維構造物であって、縫い
糸や刺繍糸、ひも類などの糸形態でもよく、織物、編
物、不織布、フェルト等の布帛形態、あるいはコート、
セーター、その他の外衣、下着、パンスト、靴下、裏
地、芯地、スポーツ衣料などの衣料用製品、カーテン、
カーペット、椅子貼り、カバン、家具貼り、壁材、各種
のベルトやスリング等の生活資材用製品、帆布、ネッ
ト、ロープ、重布等の産業資材用製品、人工皮革製品な
ど、各種の繊維製品形態を含む。特に、本発明のポリ乳
酸繊維は、発色性と耐熱性の両面において優れていると
いう特徴があることから、織物や編物等の衣料用途が好
適である。
【0031】ポリ乳酸繊維と他の繊維とを混用する場合
でも、ポリ乳酸繊維の高い黒発色性を生かす利用方法と
することが好ましい。布帛として混用する場合には、例
えば本発明のポリ乳酸繊維の混用比率を30%以上とす
ることが好ましく、混用する他の繊維は適正な染料によ
りポリ乳酸繊維と同様に黒色に染色して使用することが
好ましい。他の繊維としては特に制限はないが、綿、麻
などのセルロース繊維、ウール、絹、レーヨン、アセテ
ート、あるいはポリエステル、ナイロン、アクリル、ビ
ニロン、ポリオレフィン、ポリウレタン等の繊維が挙げ
られる。
【0032】混用の態様としては、他の繊維からなる繊
維構造物との各種組み合わせのほか、他の繊維との混繊
糸、複合仮撚糸、混紡糸、長短複合糸、流体加工糸、カ
バリングヤーン、合撚、交織、交編、パイル織編物、混
綿詰め綿、長繊維や短繊維の混合不織布、フェルトが例
示される。
【0033】本発明の繊維構造物は、L*値が20以
下、C*値が12以下であることを特徴とする。L*値
は、L*a*b*系の色表示における明度であり、その
値が小さいほど明度が低い、すなわち黒色の発色が深い
ことを意味する。また、C*値は(a*2+b*21/2
で定義される彩度を意味しており、その値が小さいほど
無彩色で黒らしい黒に見える。本発明においては、黒発
色性の点からL*値は20以下であることが必要であ
る。L*値は好ましくは14以下であり、さらに好まし
くは8以下であり、最も好ましくは6以下である。ま
た、C*値についても黒発色性の点から、12以下が必
要である。C*値は好ましくは8以下であり、さらに好
ましくは4以下であり、最も好ましくは2以下である。
【0034】本発明の繊維構造物は、ポリL−乳酸とポ
リD−乳酸のブレンド物からなるポリ乳酸繊維を少なく
とも一部に用いたポリ乳酸繊維構造物を、黒色染料によ
り染色することにより製造することができる。
【0035】本発明における黒色染料とは、本発明のポ
リ乳酸繊維を染色した際に、彩度(C*値)が、12以
下となる染料を意味する。すなわち、C*値が12以下
である限り、例えば有彩色染料を1種または2種以上含
む染料であってもよい。また、ポリ乳酸繊維を好適に染
色できる染料としては分散染料が挙げられるが、他の繊
維との混用繊維構造物の場合には、必要に応じて分散染
料以外に他の染料を併用しても良い。分散染料として
は、特に限定されず、市販されているものを適宜使用す
ることができ、例えば、Miketon Polyester染料(三井B
ASF染料(株)製)、Miketon Fast染料(三井BASF染料
(株)製)、Dispersol染料(三井BASF染料(株)
製)、Palanil染料(三井BASF染料(株)製)、Sumikar
on染料(住友化学(株)製)、Kayalon Polyester染料
(日本化薬(株)製)、Dianix染料(Dystar(株)
製)、Terasil染料(チバスペシャリティケミカルズ
(株)製)、Foron染料(クラリアント(株)製)等を
使用することができる。
【0036】染料濃度は特に限定されないが、染色後の
L*値が20以下といった深い黒色の発色を得るには、
好ましくは1%owf以上、より好ましくは5%owf
以上とすることが良い。また、染料濃度を高くしても、
濃染化の効果はある一定の所で飽和するので、経済的な
観点から30%owf以下とすることが良い。
【0037】染色する場合の手法は特に限定されず、浸
染、捺染、サーモゾル染色等の公知の手法を適宜採用す
ることができるが、コストや汎用性、染色布帛の品位と
いった観点から浸染又は捺染が好ましい。
【0038】浸染の場合、高圧ジッガー染色機や液流染
色機等の通常のマシンを使用することができる。染色液
には、染料と水の他に、pH調整剤や界面活性剤等を適
宜調合したものを用いる。染色温度に関しては、染料が
繊維中へ十分拡散することができ、且つ加水分解による
繊維の強度低下が起こりにくい温度として、好ましくは
90〜150℃、より好ましくは100〜140℃、最
も好ましくは105〜135℃が良い。
【0039】捺染の場合、ハンドプリントやスクリーン
プリント、ロータリープリント、インクジェットプリン
ト等の通常の方法で染色することができる。インクとし
ては、染料と水の他に湿潤剤、乾燥防止剤、pH調整
剤、防腐剤、堅牢度向上剤等を適宜調合したものを使用
し、水溶性高分子等で前処理した繊維構造物に付与した
後、スチーム処理を行う。スチーム処理は100〜12
0℃の飽和水蒸気、又は120〜150℃加熱水蒸気の
いずれを用いても良い。
【0040】染色加工前に、50℃〜100℃、pH7
〜12の弱アルカリ条件下での精練および/または50
〜100℃、pH9〜14のアルカリ条件下での減量加
工を必要に応じて実施することができる。また、染色加
工後に、pH3〜12、還元剤存在下での還元洗浄を行
うことも必要に応じて実施できる。さらに、発色性向上
やその他の機能付与のために公知の樹脂コーティングを
実施しても良い。
【0041】
【実施例】以下、実施例によって本発明をより詳細に説
明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法で求め
た。
【0042】A.強度(cN/dtex) オリエンテック社製“テンシロン”引張試験機タイプを
用い、試料長25cm、引張速度30cm/分の条件で
測定した。
【0043】B.ΔHl、ΔHh(J/g) セイコー電子工業社製“SSC5200/DSC12
0”示差走査熱量計を用い、昇温速度10℃/分で測定
を行って得られたDSCカーブから求めた。
【0044】C.L*a*b*値 透けないように2つ折りにした染色布帛を、ミノルタ社
製分光測色機“CM−3700d”を用いて、D65光
源、視野角度10度の条件で、L*、a*、b*を測定
した。また、C*値については次式により算出した。
【0045】C*=(a*2+b*21/2 D.引裂強力(cN) ダイエイ科学製機(株)の“エルメンドルフ引裂強力
計”を用いて、縦10cm×横6.5cmの試験片をセ
ットし、試験機のカッターハンドルを引いて2cmの切
れ目を入れた。落下ボタンを押して扇形振り子を落下さ
せ、試験片の残り4.5cmを引き裂き、この時の強力
を読みとった。試験はタテ方向とヨコ方向を各3回繰り
返して、平均値をもって布帛の引裂強力(cN)とし
た。
【0046】E.200℃耐熱性 10cm四方の布帛に対して、200℃に調整したアイ
ロンを30秒間接触させた後、その布帛の様子を観察し
た。
【0047】○:単糸間の熱融着もなく処理前の布帛形
状を保っていた。
【0048】×:単糸間の熱融着や布帛の熱変形あるい
は熱溶融が見られた。
【0049】実施例1 重量平均分子量が12万のポリL−乳酸ホモポリマー
(PLLA)と、30万のポリD−乳酸ホモポリマーを
PLLA:PDLA=50:50の重量割合でチップブ
レンドした後、100℃で12時間減圧乾燥し、2軸混
練押し出し機にて溶融混練・チップ化して、PLLAと
PDLAからなる予備混練チップを作製した。
【0050】この予備混練チップを100℃で12時間
減圧乾燥し、プレッシャーメルター型の溶融紡糸機によ
り、紡糸温度260℃で、0.34D−0.50Lの口
金孔より紡出した。この紡出糸を20℃、25m/分の
チムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束した
後、3000m/分で引き取って未延伸糸(122dt
ex−36f)を得た。
【0051】この未延伸糸をホットローラー系の延伸機
を用い、延伸温度90℃、熱セット温度120℃、延伸
倍率1.45倍、延伸速度800m/分の条件で延伸し
て84dtex−36fの延伸糸を得た。得られた延伸
糸の強度は、3.9cN/dtex、沸水収縮率は9.
0%であり、布帛の取り扱い上問題を生じなかった。
【0052】この延伸糸を用いてツイル織物(2/2)
を作成し、80℃×20分間精練を行った後、150℃
×2分間乾熱セットを施した。該織物に対して、液流染
色機を用いて下記の条件に調整された染浴にて、120
℃×60分間染色を行い、続いてカセイソーダ0.5g
/l、ハイドロサルファイト0.2g/lを溶解させた
水溶液を用いて60℃×20分間還元洗浄を行った。得
られた染色布帛は、タテ糸密度が40本/cm、ヨコ糸
密度が40本/cmであった。
【0053】表1に示すように、L*値は13.3と十
分低い値であり、黒発色性に優れていた。引裂強力につ
いても、915cNと耐久性に優れたものであった。ま
た、200℃耐熱性も有するものであった。
【0054】染色条件 (浸染) 染色温度 120℃ 染色時間 60分 染料 Dianix Black BG−FS(Dyst
ar(株)製) 染料濃度 8%owf 浴比 1:50 浴pH 4.5 実施例2 染料濃度を8%owfから15%owfに変える以外は
実施例1と同様にして、染色布帛を得た。
【0055】表1に示すように、布帛のL*値は7.1
であり、黒発色性に極めて優れていた。引裂強力につい
ても、910cNと耐久性に優れたものであった。ま
た、200℃耐熱性も有するものであった。
【0056】実施例3 織り組織をツイルからサテン(5枚朱子)に変える以外
は、実施例2と同様にして染色布帛を得た。得られた染
色布帛は、タテ糸密度79本/cm、ヨコ糸密度39本
/cmであった。
【0057】表1に示すように、布帛のL*値は6.2
であり、黒発色性に極めて優れていた。引裂強力につい
ても、800cNであり、耐久性にも優れたものであっ
た。また、200℃耐熱性も有するものであった。
【0058】実施例4 実施例1と同様にして得た延伸糸(84dtex−36
f)を用いて、24ゲージの緯編機を用いてインターロ
ック編地を作成した。この編物に対して、液流染色機を
用いて下記の条件に調整された染浴にて、130℃×6
0分間染色を行い、続いて60℃×20分間還元洗浄を
行った。
【0059】表1に示すように、布帛のL*値は6.5
であり、黒発色性に極めて優れていた。引裂強力につい
ても、1780cNであり、耐久性にも優れたものであ
った。また、200℃耐熱性も有するものであった。
【0060】染色条件 (浸染) 染色温度 130℃ 染色時間 60分 染料 Dianix Black BG−FS(Dyst
ar(株)製) 染料濃度 15%owf 浴比 1:50 浴pH 4.5 実施例5 PLLA:PDLA=50:50をPLLA:PDLA
=60:40に変える以外は実施例1と同様にして、延
伸糸を得た。得られた延伸糸の強度は、4.1cN/d
tex、沸水収縮率は8.8%であり、布帛の取り扱い
上問題を生じなかった。
【0061】この延伸糸を用いて、実施例1と同様にし
て、染色布帛を得た。
【0062】表1に示すように、L*値は13.3と十
分低い値であり黒発色性に優れていた。引裂強力につい
ても、930cNと耐久性に優れたものであった。ま
た、200℃耐熱性も有するものであった。
【0063】実施例6 染色方法を下記の条件によるハンドプリント法に変える
以外は実施例1と同様にして、染色布帛を得た。
【0064】表1に示すように、L*値は9.0と十分
低い値であり、黒発色性に優れていた。引裂強力につい
ても、850cNと耐久性に優れたものであった。ま
た、200℃耐熱性も有するものであった。 染色条件 (捺染) インク ・染料 Dianix Black BG−FS(Dystar
(株)製) 3wt% ・糊剤 アルギンテックスM(10%)(君津化学
(株)製) 40wt% ・水 57wt% スチーム温度 130℃ スチーム時間 15分 比較例1 PLLA:PDLA=50:50をPLLA:PDLA
=100:0に変える以外は実施例1と同様にして、延
伸糸を得た。得られた延伸糸の強度は、3.8cN/d
tex、沸水収縮率は10.8%であった。この延伸糸
を用いて、実施例1と同様にして、染色布帛を得た。
【0065】表1に示すように、L*値は13.6、引
裂強力は900cNであり、黒発色性と耐久性には優れ
ていたが、200℃耐熱性には問題があった。
【0066】比較例2 PLLA:PDLA=50:50をPLLA:PDLA
=100:0に変える以外は実施例6と同様にして、染
色布帛を得た。
【0067】表1に示すように、L*値は9.2、引裂
強力は800cNであり、黒発色性と耐久性には優れて
いたが、200℃耐熱性には問題があった。
【0068】
【表1】
【0069】
【発明の効果】本発明によれば、黒発色性に優れ、高耐
熱性を有するポリ乳酸繊維構造物、及びその製造方法を
提供することができる。また、得られたポリ乳酸繊維構
造物は、品位・風合いにも優れているため、ブラックフ
ォーマル、学生服、和服等の用途に好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D06P 3/54 D06P 3/54 Z Fターム(参考) 4H057 AA01 BA08 DA01 DA17 EA01 GA04 4J002 CF18W CF18X 4L035 BB32 BB56 BB89 BB91 EE01 EE07 EE08 EE20 HH01 4L048 AA20 AA43 AA46 AA47 AA48 AA50 AB07 AC07 BA01 CA01 DA02 DA03

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリL−乳酸とポリD−乳酸のブレンド物
    からなるポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いてなり、
    明度L*値が20以下、彩度C*値が12以下であるこ
    とを特徴とするポリ乳酸繊維構造物。
  2. 【請求項2】ポリ乳酸繊維の強度が2cN/dtex以
    上であることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸繊
    維構造物。
  3. 【請求項3】ポリL−乳酸とポリD−乳酸のブレンド物
    からなるポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いたポリ乳
    酸繊維構造物を、黒色染料により染色することを特徴と
    するポリ乳酸繊維構造物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006118065A (ja) * 2004-10-19 2006-05-11 Nippon Ester Co Ltd ポリ乳酸複合繊維
JP2009256838A (ja) * 2008-04-18 2009-11-05 Teijin Fibers Ltd ポリ乳酸編物およびその製造方法および衣料

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