JP2012136810A - 染色性に優れたポリエステル繊維および繊維集合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステル樹脂からなり、断面形状が多葉状である繊維であって、該ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合体であって、該ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ4.0〜12.0モル%がシクロヘキンサジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ2.0〜8.0モル%がアジピン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であって、該グリコール成分はエチレングリコール及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とすることを特徴とする多葉型ポリエステル繊維および該繊維からなる繊維集合体。
【選択図】図1
Description
本発明で用いるポリエステル樹脂は、エチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステルであり、その繰り返し単位の80モル%以上がテレフタル酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体(以下、テレフタル酸成分と称することもある)であり、且つジカルボン酸成分のうちシクロヘキサンジカルボン酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体が4.0〜12.0モル%共重合されていることが必要であり、5.0〜10.0モル%共重合されていることが好ましい。またアジピン酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体が2.0〜8.0モル%共重合されていることが必要であり、3.0〜6.0モル%共重合されていることが好ましい。
繊維の太さとしては、衣料用途には0.5〜5dtexの範囲が好ましく、また産業資材分野には、0.5〜30dtexが好ましい。繊維は、マルチフィラメント糸として、あるいはカットしてステープル繊維として使用することが可能であり、マルチフィラメント糸として用いる場合には、そのトータル繊度としては30〜200dtexが一般的である。
更に、混練設備を通過してから紡糸頭に至るまでの間の溶融温度についても、シクロヘキサンジカルボン酸成分及びアジピン酸成分の共重合量によって異なるため一概に特定はできないが、溶融斑なく安定な状態で紡出させ、且つ安定な製糸性や品位を得るためには、ポリマーの融点から30〜60℃高い温度範囲で溶融押出するのが好ましく、20〜50℃高い温度範囲とすることがより好ましい。
そのうちでも、油剤の付着量を0.3〜2.0%とすることが高品質のポリエステル繊維を円滑に得ることができるので好ましく、0.3〜1.0%とすることがより好ましい。
共重合量は、該ポリエステル繊維を重トリフロロ酢酸溶媒中に5.0wt%/volの濃度で溶解し、50℃で500MHz、1H−NMR(日本電子製核磁気共鳴装置LA−500)装置を用いて測定した。
島津製作所製 示差走査熱量計(DSC−60)にて、昇温速度10℃/分で測定した。
島津製作所製 示差走査熱量計(DSC−60)にて、昇温速度10℃/分で測定した。
溶媒としてフェノール/テトラクロロエタン(体積比1/1)混合溶媒を用い30℃でウベローデ型粘度計(林製作所製HRK−3型)を用いて測定した。
得られた繊維の筒編地を精練した後、以下の条件で染色し、還元洗浄をした後、染着率を求めた。
(染色)
染料:Dianix NavyBlue SPH conc5.0%omf
助剤:Disper TL:1.0cc/l、ULTRA MT−N2:1.0cc/l
浴比:1/50
染色温度×時間:95〜100℃×40分
(還元洗浄)
水酸化ナトリウム:1.0g/L
ハイドロサルファイトナトリウム:1.0g/L
アミラジンD:1.0g/L
浴比:1/50
還元洗浄温度×時間:80℃×20分
(染着率)
染色前の原液及び染色後の残液をそれぞれアセトン水(アセトン/水=1/1混合溶液)で任意の同一倍率に希釈し、各々の吸光度を測定した後に、以下に示す式から染着率を求めた。
吸光度測定器:分光光度計 HITACHI
HITACHI Model 100−40
Spectrophotometer
染着率=(A−B)/A×100(%)
ここで、A及びBはそれぞれ以下を示す。
A:原液(アセトン水希釈溶液)吸光度
B:染色残液(アセトン水希釈溶液)吸光度
染着濃度は、染色後サンプル編地の最大吸収波長における反射率Rを測定し、以下に示すKubelka−Munkの式から求めた。
分光反射率測定器:分光光度計 HITACHI
C−2000S Color Analyzer
K/S=(1−R)2 /2R
JIS L−0844の測定方法に準拠して測定した。
JIS L−0842の測定方法に準拠して測定した。
JIS L−1013の測定方法に準拠して測定した。
インストロン型の引張試験機を用いて得られた荷重−伸度曲線より求めた。
インストロン型の引張試験機を用いて得られた荷重−伸度曲線より求めた。
以下の基準に従って紡糸性評価を行った。
◎:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が何ら発生せず、しかも得られたポリエステル繊維には毛羽・ループが全く発生していないなど、紡糸性が極めて良好である
○:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が1回以下の頻度で発生し、得られたポリエステル繊維に毛羽・ループが全く発生していないか、あるいは僅かに発生したものの、紡糸性がほぼ良好である
△:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が3回まで発生し、紡糸性が不良である
×:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が3回よりも多く発生し、紡糸性が極めて不良である
得られた繊維の筒編地を精練した後、以下の条件で重量減量率が15%になるまでアルカリ減量し、その処理前後の筒編を解繊してインストロン型の引張試験機を用いて荷重−伸度曲線より破断強度を求め、以下に示す式から破断強度の比率(保持率)として表した。
強度保持率=(B/A)×100(%)
ここで、A及びBはそれぞれ以下を示す。
A:アルカリ減量未処理における筒編解繊糸の破断強度
B:15%アルカリ減量処理後における筒編解繊糸の破断強度
(アルカリ減量)
水酸化ナトリウム:40g/L
アルカリ減量温度×時間:95〜100℃×任意時間(重量減量率=15%)
ヤーンを3本引き揃え2500T/Mの下撚をかけ、それを3本合糸し、S400T/Mの上撚をかけた撚糸をミクロトームで切った繊維断面の光学顕微鏡写真を撮影した。該写真を拡大し、繊維と空隙部に切り分け、その重量比から上記式(I)により空隙率を求めた。ただし、中空繊維等の中空部を有する繊維については中空部も空隙として算術した。
空隙率(%)=〔(空隙部重量)/(繊維重量部+空隙部重量)〕×100
繊維の異形度繊維断面の光学顕微鏡写真を撮影し、下記式により測定、算出した。
異形度=R/L
(ただし、繊維断面においてLは隣り合う先端部A、Bを結ぶ線の長さABであり、Rは該隣り合う先端部の中間に位置する窪みDとDから線ABへの垂線の交点をCとした時の長さCDを示す。)
染色加工後の異形度は前記に記載の染色条件で染色処理し、還元洗浄後に異形度を測定した。染色加工前は未染色の異形度を測定した。
異形度保持率(%) =(染色加工後の異形度/染色加工前の異形度)×100
経密度38本/cm、緯密度28本/cmのタフタ織物を、日立分光光度計「U−3400」にて測定し、得られた反射曲線により波長500nmにおける反射率を求めた。
単繊度2.2デニールの多葉型ポリエステル繊維を経糸および緯糸に用い、経糸38本/cm、緯糸28本/cmを作製し、日立分光光度計「U−3400型」を用いて、この編地のL* を測定し、下記式により算出した。
不透明度(%)=(L* B /L* W )×100
L* B :黒素地に布帛(繊維集合体)を重ねた時のL* 値
L* W :白素地に布帛(繊維集合体)を重ねた時のL* 値
黒素地は黒色プラスチック板(L* 値=12)、白素地は標準白板(L* 値=100)を示す。
ジカルボン酸成分のうち91モル%がテレフタル酸であり、且つ1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を6.0モル%、アジピン酸を3.0モル%それぞれ含んだ全カルボン酸成分とエチレングリコール、及び平均粒径0.3μmの二酸化チタンとでエステル交換反応及び重縮合反応を行い、本発明のポリエステル樹脂重合物を得た。この原料のガラス転移温度、及び結晶化温度を測定したところ、それぞれ72℃、144℃であった。この原料を基に、孔数24個で断面形状が図1(ロ)のような四葉型の口金を用いて紡糸温度260℃、単孔吐出量=1.57g/分で紡出し、温度25℃、湿度60%の冷却風を0.5m/秒の速度で紡出糸条に吹付け糸条を60℃以下にした後、紡糸口金下方1.2mの位置に設置した長さ1.0m、入口ガイド系8mm、出口ガイド系10mm、内径30mmφチューブヒーター(内温185℃)に導入してチューブヒーター内で延伸した後、チューブヒーターから出てきた糸条にオイリングノズルで給油し2個の引き取りローラーを介して4500m/分の速度で捲取り、84T/24fの4葉型ポリエステルフィラメントを得た。その時の製糸化条件と紡糸性、及び得られた繊維の染色堅牢性、強度保持率の結果を表1に示した。上記の製造方法で得られた4葉型ポリエステル繊維を用いて、経糸および緯糸として使い、生機密度が経糸38本/cm、緯糸28本/cmのタフタを製織した。この生機タフタをソーダ灰2g/l、アクチノールR−100(松本油脂製)1g/lにて100℃、30分処理して精練を行った。ついでピンテンターにて180℃のヒートセットを行った。この各織物についての染着率は、95℃で85%、100℃で93%、K/S=26と良好な常圧可染性を示した。また、異形度、延伸糸の集合体の空隙率、反射率、洗濯堅牢度、耐光堅牢度、不透明度について表1に示す。表1に示すとおり、上記方法で得られた繊維は何ら問題のない品質であった。更に、15%アルカリ減量後の強度保持率および異形度保持率についてもそれぞれ96%と良好な品質であった。
ポリエステル樹脂の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びアジピン酸の共重合量と繊維断面を変更した以外は実施例1と同様にポリエステル樹脂および繊維を製造した。
具体的には表1に示す熱特性を有する共重合物を製造し、この重合物を、繊維断面を変更するための口金を用いた以外は実施例1と同様の手法で紡糸して84T/24fのポリエステルフィラメントを得た。得られた繊維の物性を表1に示した。
いずれも良好な紡糸性、常圧可染性(染着率、K/S、堅牢性)、強度保持率、及び異形度保持率であり、何ら問題のない品質であった。
ポリエステル樹脂の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びアジピン酸の共重合量と繊維断面を変更した以外は実施例1と同様にポリエステル樹脂および繊維を製造した。
具体的には表1に示す熱特性を有する共重合物を製造し、この重合物を、繊維断面を変更するための口金を用いた以外は実施例1と同様の手法で紡糸して84T/24fのポリエステルフィラメントを得た。得られた繊維の物性を表1に示した。
具体的には、本発明の常圧可染ポリエステル繊維は、従来のポリエステル繊維と何ら遜色のない品質を有しているため、一般衣料全般、例えば紳士婦人向けフォーマル或いはカジュアルファッション衣料用途、スポーツ用途、ユニフォーム用途など、多岐に渡って有効に利用することができる。また、資材用途全般、例えば自動車や航空機などの内装素材用途、靴や鞄などの生活資材用途、カーテンやカーペットなどの産業資材用途などにも有効に利用することができる。
Claims (4)
- ポリエステル樹脂からなり、断面形状が多葉状である繊維であって、該ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合体であって、該ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ4.0〜12.0モル%がシクロヘキンサジカルボン酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ2.0〜8.0モル%がアジピン酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体であって、該グリコール成分はエチレングリコール成分及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とすることを特徴とするポリエステル繊維。
- 断面形状において、葉数が3〜10である請求項1に記載のポリエステル繊維。
- 断面形状において、異形度が0.05〜0.80の範囲である請求項1又は請求項2に記載のポリエステル繊維。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル繊維からなる繊維集合体であって、波長500nmにおける反射率Rが85%以上であり、かつ空隙率が20〜60%であることを特徴とする繊維集合体。
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