JP2012136810A - 染色性に優れたポリエステル繊維および繊維集合体 - Google Patents

染色性に優れたポリエステル繊維および繊維集合体 Download PDF

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【課題】崇高性、膨らみ、張り、腰のある良好な風合を有し、かつ軽量で不透明性を有する布帛を形成し、常圧環境下での染色においても濃色性と堅牢性に極めて優れた特性を有する繊維および繊維集合体を提供する。
【解決手段】ポリエステル樹脂からなり、断面形状が多葉状である繊維であって、該ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合体であって、該ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ4.0〜12.0モル%がシクロヘキンサジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ2.0〜8.0モル%がアジピン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であって、該グリコール成分はエチレングリコール及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とすることを特徴とする多葉型ポリエステル繊維および該繊維からなる繊維集合体。
【選択図】図1

Description

本発明は、崇高性、膨らみ、張り、腰のある良好な風合を有し、かつ軽量で不透明性を有する布帛を形成し、常圧環境下での染色においても濃色性と堅牢性に極めて優れた特性を有する繊維および繊維集合体を提供する。
ポリエステル繊維は、力学的特性や発色性及び取扱い性などの特性から、衣料用途を中心に様々な分野で使用されている。しかし、一般にポリエステル繊維はその緻密な繊維構造から染色性に劣っており、特に分散染料を使用する場合は130℃の高温高圧下、或いは有機溶剤のキャリア剤を使用しなければ、良好な発色性、堅牢性を得ることは困難である。
一方で、ポリエステル繊維をウール、綿、アクリル、ポリウレタンなど、ポリエステル以外の素材と交編、交織し、複雑な工程を介さずに良好な染色特性を有するポリエステル混製品を製造する技術が求められているが、この場合、ポリエステル繊維に十分な染色特性を付与するために130℃前後の高温高圧下での染色加工が必要となる。しかし、その環境下においてはポリエステル繊維と交編、交織した素材が劣化してしまうため、例えば常圧環境下、より具体的には100℃以下においても良好な染色特性を有するポリエステル繊維の発現が必要とされてきた。
このため、ポリエステル樹脂の改質により染色性を改良させる方法がこれまで数多く検討されており、その中でもジカルボン酸成分としてスルホン酸金属塩基を共重合させることで、常圧でカチオン染料及び分散染料に易染性のポリエステル繊維を製造することができるという発明が数多く提案されている(特許文献1〜3参照。)。スルホン酸金属塩基として一般的によく用いられているのが5−ナトリウムスルホイソフタル酸、又は5−カリウムスルホイソフタル酸成分などであり、それらを共重合化した後に繊維化することで、従来のポリエステル繊維に比べて繊維内部構造に非晶部分を保有させることができ、その結果、分散染料及びカチオン染料にて常圧染色が可能で、かつ堅牢度に優れたポリエステル繊維を得ることができるとされている。しかし、それらスルホン酸金属塩基成分を共重合化してできた繊維は従来のポリエステル繊維に比べて低強度となりやすく、また製糸工程においても高速紡糸性に劣る。更には、アルカリ減量速度が早く、紡糸原糸の糸形態によってはアルカリ減量を行った織編物で繊維表面にクラックが発生し、粉落ちなどの品質不良が発生しやすいという欠点がある。そのため、基本的に単独糸使いであってもアルカリ減量は困難なため、良好な風合いの織編物を得ることができないばかりでなく、シルケット加工を行う綿との混繊などにおいても加工条件の大きな制約を受けることとなる。
特開平6−184820号公報 特開2000−355831号公報 特開2003−301328号公報
さらに、衣料へのニーズの動向として、レジャー用のスポーツ等に用いられるテニスウエアー、水着、そして医療分野に用いられる白衣等への該素材の需要が増加している。ポリエステルやポリアミド等の合成繊維は、その単糸繊度が大きいこと、その横断面形状が単純であること、その表面の内部構造が均一かつ単純であること等からプラスチック的な冷たい感じがあり、薄地使いの場合透けやすいという問題点があった。
そこで上記のような合成繊維の欠点を改良するために、高屈折率を有する無機微粒子を鞘部のみに含有させた芯鞘型複合繊維にしたり、合成繊維の横断面を異形化したり、繊維を中空化することなどが広く行われている。しかしながら、水や汗に濡れた場合においても不透明性を発現し、軽量性、崇高性等の性能を兼ね備えた繊維集合体を得ることは困難であった。
芯鞘型複合繊維の鞘部に高屈折率を有する無機微粒子を高濃度に含有させると、該複合繊維の色調は黄味が強くなり、用途は制限される。また、中空で丸断面の場合、空気層による屈折率の差から不透明性は向上するが、撚糸等の後加工による中空部、繊維断面のつぶれなどの問題が生じ、膨らみ等の風合の点で不十分となる。
このように、分散染料において100℃以下においても良好な染色特性を有するポリエステル繊維で、かつ膨らみ等の風合にも優れた繊維集合体は従来品にはなかったのである。
本発明はこのような従来技術における問題点を解決するものであり、具体的には常圧環境下で分散染料に対して濃色性を示し、洗濯堅牢性及び耐光堅牢性に優れ、且つ常圧染色を必要とするポリエステル繊維以外の素材との混繊に対しても良好な染色性・糸品位を確保することができ、アルカリ減量処理を行った場合においてもその後の糸品位を低下させることのない良好な紡糸性を確保できるポリエステル繊維を有し、更には透け防止性に優れ、かつ崇高性、膨らみ、張り、腰のある良好な風合を有し、かつ軽量で不透明性を有する織編物を提供することを目的とする。
すなわち、本発明はポリエステル樹脂からなり、断面形状が多葉状である繊維であって、該ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合体であって、該ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ4.0〜12.0モル%がシクロヘキンサジカルボン酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ2.0〜8.0モル%がアジピン酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体であって、該グリコール成分はエチレングリコール成分及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とすることを特徴とするポリエステル繊維であり、好ましくは断面形状において、葉数が3〜10、異形度が0.05〜0.80の範囲である上記のポリエステル繊維である。
さらに本発明は上記のポリエステル繊維からなる繊維集合体であって、波長500nmにおける反射率Rが85%以上であり、かつ空隙率が20〜60%であることを特徴とする繊維集合体に関する。
本発明により得られる多葉型ポリエステル繊維は、洗濯堅牢度、耐光堅牢度に極めて優れたものである。更に、アルカリ減量処理後においても十分な破断強度を保持でき、特定の反射率および空隙率を有し、衣料全般に適したポリエステル繊維及び繊維集合体を得ることができる。
本発明の繊維の断面形状を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明する。
本発明で用いるポリエステル樹脂は、エチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステルであり、その繰り返し単位の80モル%以上がテレフタル酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体(以下、テレフタル酸成分と称することもある)であり、且つジカルボン酸成分のうちシクロヘキサンジカルボン酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体が4.0〜12.0モル%共重合されていることが必要であり、5.0〜10.0モル%共重合されていることが好ましい。またアジピン酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体が2.0〜8.0モル%共重合されていることが必要であり、3.0〜6.0モル%共重合されていることが好ましい。
シクロヘキサンジカルボン酸成分又はそのエステル形成性誘導体(以下、シクロヘキサンジカルボン酸成分と称することもある)及びアジピン酸成分又はそのエステル形成性誘導体(以下、アジピン酸成分と称することもある)をポリエチレンテレフタレートに共重合した場合、他の脂肪族ジカルボン酸に比べて結晶構造の乱れが小さい特徴を有しているため、高い染着率を確保しながら、耐光堅牢性にも優れた繊維を得ることができる。
シクロヘキサンジカルボン酸成分を共重合化することによって、ポリエステル繊維の結晶構造に乱れが生じ、非晶部の配向は低下する。そのため、分散染料の繊維内部への浸透が容易となり、分散染料の常圧可染性を向上させることが可能となる。更に、シクロヘキサンジカルボン酸成分は他の脂肪族ジカルボン酸に比べ結晶構造の乱れが小さいことから、耐光堅牢性にも優れたものとなる。
シクロヘキサンジカルボン酸成分の共重合量がジカルボン酸成分において4.0モル%未満では、繊維内部における非晶部位の配向度が高くなるため、常圧環境下での分散染料に対する染色性が不足し、目的の染着率が得られない。また、ジカルボン酸成分において12.0モル%を超えた場合、染着率、洗濯堅牢度、耐光堅牢度など、染色性に関しては良好な品質を確保できるものの、延伸を伴わない高速紡糸手法で製糸を行った場合、樹脂のガラス転移温度が低いことと繊維内部における非晶部位の配向度が低いことによって高速捲取中に自発伸長が発生し、安定な高速曳糸性を得ることができない。
本発明に用いられるシクロヘキサンジカルボン酸には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の3種類の位置異性体があるが、本発明の効果が得られる点からはどの位置異性体が共重合されていても構わないし、また複数の位置異性体が共重合されていても構わない。また、それぞれの位置異性体について、シス/トランスの異性体があるが、いずれの立体異性体を共重合しても、あるいはシス/トランス双方の位置異性体が共重合されていても構わない。シクロヘキサンジカルボン酸誘導体についても同様である。
アジピン酸成分についてもシクロヘキンジカルボン酸成分と同様に、ポリエステル繊維の結晶構造に乱れが生じ、非晶部の配向が低下するため、分散染料の繊維内部への浸透が容易となり、分散染料の常圧可染性を向上させることが可能となる。
更に、アジピン酸成分をポリエチレンテレフタレートに共重合すると、低温セット性にも効果があり、本発明により得られる繊維を織編物にしてから形態安定化のために熱セットする場合、熱セット温度を低くすることが可能となる。ニット用途において低温セット性は好ましい物性であり、ウール、綿、アクリル、ポリウレタン等のポリエステル以外の素材と複合する場合、熱セットに必要な温度をポリエステル以外の素材の物性が低下しない程度に抑えることが可能となる。また、ポリエステル繊維の単独使いにおいても、一般的な現行ニット用設備に対応が可能となり用途拡大が期待できる。
ジカルボン酸成分中のアジピン酸成分の共重合量が2.0モル%未満では、常圧環境下での分散染料に対する染色性が不足し、目的の染着率が得られない。また、ジカルボン酸成分中のアジピン酸成分の共重合量が8.0モル%を超えた場合、染着率は高くなるものの、延伸を伴わない高速紡糸手法で製糸を行った場合には繊維内部における非晶部位の配向度が低くなり、高速捲取中での自発伸長が顕著となり、安定な高速紡糸性を得ることができない。
本発明におけるポリエステル繊維の常圧可染性や品位を落とすことのない範囲であれば、テレフタル酸成分、シクロヘキサンジカルボン酸成分、及びアジピン酸成分以外の他のジカルボン酸成分を共重合しても良い。具体的には、イソフタル酸やナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分又はそのエステル形成誘導体や、アゼライン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分又はそのエステル形成誘導体を単独であるいは複数の種類を合計10.0モル%以下の範囲で共重合化させてもよい。
しかし、これらの成分を共重合化させることでエステル交換反応、重縮合反応が煩雑になるばかりでなく、共重合量が適正範囲を超えると洗濯堅牢性を低下させることがある。具体的には、イソフタル酸およびそのエステル形成性誘導体がジカルボン酸成分に対して10モル%を越えて共重合させると、本発明の構成要件を満足させたとしても、洗濯堅牢特性を低下させる恐れがあり、5モル%以下での使用が望ましく、さらに望ましくは0モル%であること(共重合化しないこと)がより望ましい。
一方、常圧可染型の特徴を有するポリエステル繊維として一般的によく知られているのがスルホン酸金属塩基を共重合化しているポリエステル繊維であり、とりわけ5−ナトリウムスルホイソフタル酸、又は5−カリウムスルホイソフタル酸成分などが広く用いられている。それにより、従来のポリエステル繊維に比べて繊維内部構造に非晶部分を保有させることができ、その結果、分散染料及びカチオン染料に対して常圧染色が可能で、かつ堅牢度に優れたポリエステル繊維を得ることができるとされている。しかし、それらスルホン酸金属塩基成分を共重合化してできたポリエステル繊維は、従来のものに比べて低強度となりやすく、また製糸工程においても高速紡糸性に劣る。更には、アルカリ減量速度が早く、紡糸原糸の糸形態によってはアルカリ減量処理を行った織編物で繊維表面にクラックが発生しやすく、その結果強度劣化が大きくなったり、粉落ちなどの品質不良が発生しやすい欠点がある。そのため、基本的に単独糸使いであってもアルカリ減量は困難なため、良好な風合いの織編物を得ることができないばかりでなく、シルケット加工を行う綿との混繊などにおいても加工条件の大きな制約を受けることとなる。風合いなどの品位を求められない、限られた用途においては、ジカルボン酸成分のうち2.0モル%以下の割合でスルホン酸金属塩基を共重合化しても良いが、本発明が目的としている、常圧での優れた染色性のみならず、高強度性や耐アルカリ性や高速紡糸性を併せ持つポリエステル繊維であり、またこれらの特性が必要とされる衣料用途全般で使用する場合にはスルホン酸金属塩基の共重合量はジカルボン酸成分のうち1.0モル%以下が望ましく、0モル%であること(共重合化しないこと)がより望ましい。
繊維の太さとしては、衣料用途には0.5〜5dtexの範囲が好ましく、また産業資材分野には、0.5〜30dtexが好ましい。繊維は、マルチフィラメント糸として、あるいはカットしてステープル繊維として使用することが可能であり、マルチフィラメント糸として用いる場合には、そのトータル繊度としては30〜200dtexが一般的である。
本発明の多葉型ポリエステル繊維の葉数としては、繊維断面に深い凹凸部を形成させる点で3〜10であることが好ましく、3〜5であることがより好ましい。また、かかる多葉型ポリエステル繊維の集合体は、空隙率が20〜60%であることが好ましく、より好ましくは20〜40%である。なお、本発明で規定される空隙率とは、後述する方法で測定された撚糸の断面の光学顕微鏡観察により算出される値である。
本発明の繊維集合体としては、織物、不織布、編物、紙、その他一般的に公知である繊維集合体であれば限定されないが、衣料用途としては織編物が適当である。
繊維断面が多葉断面である効果によって、該繊維集合体の繊維間の空隙率を高められ、見掛けの糸直径が太くなり、該繊維集合体は軽量感、膨らみ感を有する。さらに繊維集合体は空気層の多層化を形成することにより、反射率を高め、不透明性の向上効果をもたらすものである。
該空隙率が20%未満の場合、該繊維集合体は、不透明性、軽量性、嵩高性の点から、従来の織編物等の布帛に対する優位性は認められない。一方、空隙率が60%を越えると、軽量化は期待できるものの繊維密度が小さくなり、透け防止性に欠け、膨らみ感、張り、腰等の点においても不十分なものとなる。本発明で規定する空隙率は後述の方法により測定、算術された値であり、本発明の繊維集合体は、該規定する空隙率に束縛されることなく、目的とする繊維製品に即して繊維製品(織編物等)の空隙率を変化させることができる。
上記のような空隙率を有する多葉型ポリエステル繊維の断面形状としては、3〜10葉、好ましくは図1に示されるような3〜5葉のものが挙げられ、その断面形状において異形度が高く、0.05〜0.80の範囲にあることが空気層の多層化を発現させ、繊維の不透明性を向上させる点で好ましい。異形度とは、後述する式で表される値である。
異形度が0.05未満の場合、繊維断面形状の凹凸変化が小さくなり、繊維集合体にした場合に繊維密度が高くなることから、空気層の多層化を発現することができにくい。一方、異形度が、0.80を越えると、繊維断面形状の凹凸変化が大きくなり、繊維の製造工程で損傷を受けやすく、フィブリル化の問題が生ずる場合がある。
本発明の特徴として、上述したポリエステル樹脂を用いることによって、染色など後加工後の異形度の保持性が良好で、繊維集合体としての空隙率が高く不透明性、軽量性、嵩高性が得られることである。
また、本発明の繊維集合体は波長500nmにおける反射率Rが85%以上であることにも大きな特徴を有する。該反射率が85%未満の場合、不透明性は不満足なものとなり、繊維集合体として白色、淡色系の織編物とすることができない。白色、淡色系の織編物として好適な繊維集合体の該反射率Rは90%以上である。
上記のような特定の反射率を有するこのような繊維集合体を構成するポリエステル繊維として、白色系顔料を特定量含有したポリエステル繊維を挙げることができる。ポリエステル繊維は、ポリエステルの重合時に種々の微粒子を練り込み溶融紡糸することが可能であり、微粒子として屈折率の高い白色系顔料を含有させることにより、繊維表面の反射率を向上させ、不透明度を上げることが可能となる。本発明に係わる多葉型ポリエステル繊維は、屈折率が1.8以上である白色系顔料を1〜10重量%、とくに2〜5重量%含有することが好ましい。白色系顔料の含有量が1重量%未満の場合、該繊維からなる集合体は波長500nmにおける反射率が85%未満となり、必然的に掛かる繊維集合体からなる織編物は、不透明性に欠けたものとなり易い。一方、白色系顔料の含有量が10重量%を越えると、該顔料がポリエステル繊維中で凝集を起こし、紡糸・延伸工程での毛羽の発生および断糸等の原因となる場合がある。
また白色系顔料は、屈折率が1.8以上であるものを使用することが好ましい。屈折率が1.8未満である場合、ポリエステル繊維の屈折率が1.575〜1.643であることから、該白色顔料添加による屈折率の向上はあまり期待できず、反射率の増大が見込めにくい。白色系顔料の屈折率の上限はとくに限定はないが、屈折率が3を越える白色系顔料は、現在では得ることが困難である。このような白色系顔料としては、たとば、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン等が挙げられ、なかでも高屈折率であること、ポリマーへの練り込み性および耐候性の点で酸化チタンが好ましい。該白色系顔料の粒径はとくに限定されるものではないが、ポリエステルへの練り込み性、溶融紡糸性、不透明性等の点において、平均粒径は0.2μm以上であることが好ましい。
これら添加剤は、ポリエステル樹脂を重合によって得る際に、重合系内にあらかじめ加えておいても良い。ただし、一般に酸化防止剤などは重合末期に添加するほうが好ましく、特に重合系に悪影響を与える場合や、重合条件下で添加剤が失活する場合は後者が好ましい。一方、艶消剤、熱安定剤などは重合時に添加するほうが均一に樹脂重合物内に分散しやすいため好ましい。
また、本発明に係わる多葉型ポリエステル繊維からなる繊維集合体は後述する式で示される不透明度Fが85%以上であることが好ましい。特に白生地や淡色系においてこの不透明度の判断は鋭敏であり、より有効に判定できる。
繊維集合体の不透明度Fが85%未満の場合、着用時とりわけ白地や淡色系の場合には、生地を通して内衣の着用物や肌が透けて見えやすい。一方、不透明度Fの値が85%以上では、薄地の白物においても透け防止効果を発揮するものとなる。
本発明の多葉型ポリエステル樹脂は、固有粘度0.6〜0.7であるが、好ましくは0.62〜0.68、より好ましくは0.63〜0.66である。固有粘度が0.7を上回ると、繊維化時の高速紡糸性が著しく乏しくなる。また、紡糸が可能であり、目標の染着率が得られた場合においても、筒編染色生地で染色斑や筋が発生したり織編物の風合いが劣るなど、得られた織編繊維の表面品位が低下し衣料用として好ましくない。また、固有粘度が0.6を下回ると紡糸中に断糸しやすく生産性が乏しくなるばかりでなく、得られた繊維の強度も低いものとなる。更に、紡糸が可能であり、目標の染着率が得られた場合においても、筒編染色生地で染色斑や筋が発生したり織編物の風合いが劣るなど、得られた織編繊維の表面品位が低下し衣料用として好ましくない。
本発明の製造方法の紡糸工程において、ポリエステル樹脂は通常の溶融紡糸装置を用いて口金より紡出する。
次に、本発明のポリエステル樹脂は、例えば単軸押出機や二軸押出機を用いて溶融混練する。溶融混練する際の温度は、シクロヘキサジカルボン酸成分及びアジピン酸成分の共重合量によって異なるが、斑なく安定に溶融混練し且つ安定な製糸性や品位を得るためには、ポリマーの融点から10〜50℃高い温度範囲で溶融混練するのが好ましく、20〜40℃高い温度範囲とすることがより好ましい。
更に、混練設備を通過してから紡糸頭に至るまでの間の溶融温度についても、シクロヘキサンジカルボン酸成分及びアジピン酸成分の共重合量によって異なるため一概に特定はできないが、溶融斑なく安定な状態で紡出させ、且つ安定な製糸性や品位を得るためには、ポリマーの融点から30〜60℃高い温度範囲で溶融押出するのが好ましく、20〜50℃高い温度範囲とすることがより好ましい。
そして、上記によって溶融紡出した多葉型ポリエステル繊維を、一旦そのガラス転移温度以下の温度、好ましくはガラス転移温度よりも10℃以上低い温度に冷却する。この場合の冷却方法や冷却装置としては、紡出したポリエステル繊維をそのガラス転移温度以下に冷却できる方法や装置であればいずれでもよく特に制限されないが、紡糸口金の下に冷却風吹き付け筒などの冷却風吹き付け装置を設けておいて、紡出されてきたポリエステル繊維に冷却風を吹き付けてガラス転移温度以下に冷却するのが好ましい。その際に冷却風の温度や湿度、冷却風の吹き付け速度、紡出糸条に対する冷却風の吹き付け角度などの冷却条件も特に制限されず、口金から紡出されてきたポリエステル繊維を繊維の揺れなどを生じないようにしながら速やかに且つ均一にガラス転移温度以下にまで冷却できる条件であればいずれでもよい。そのうちでも、冷却風の温度を20℃〜30℃、冷却風の湿度を20%〜60%、冷却風の吹き付け速度を0.4〜1.0m/秒として、紡出繊維に対する冷却風の吹き付け方向を紡出方向に対して垂直にして紡出したポリエステル繊維の冷却を行うのが、高品質のポリエステル繊維を円滑に得ることができるので好ましい。また、冷却風吹き付け筒を用いて前記の条件下で冷却を行う場合は、紡糸口金の直下にやや間隔を空けてまたは間隔を空けないで、長さが約80〜120cm程度の冷却風吹き付け筒を配置するのが好ましい。
次に、より効率的な生産性で且つ安定した品位の延伸糸を得る方法として、紡出後に一旦ガラス転移温度以下に糸条を冷却した後、引き続いてそのまま直接加熱帯域、具体的にはチューブ型加熱筒などの装置内を走行させて延伸熱処理し給油後に3500〜5500m/分の速度で捲取ることで延伸糸を得ることができる。加熱工程における加熱温度は延伸しやすい温度、すなわちガラス転移温度以上で融点以下の温度が必要であり、具体的にはガラス転移温度よりも30℃以上高いことが好ましく、50℃以上高いことがより好ましい。また融点よりも20℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましい。これにより、冷却工程においてガラス転移温度以下に冷えた糸条が加熱装置で加熱されることで分子運動を促進活発化し延伸を行う。
油剤は加熱装置による延伸処理工程通過後に付与する。これにより油剤による延伸断糸が少なくなる。油剤としては通常ポリエステルの紡糸に用いられるものであれば制限はない。給油方法としてはギヤポンプ方式によるオイリングノズル給油またはオイリングローラー給油のいずれでもよい。ただし、紡糸速度が高速化するにつれて前者の方式の方が糸条に斑無く、安定した油剤付着が可能である。油剤の付着量については特に制限はなく、断糸や原糸毛羽の抑制効果と織編物の工程に適した範囲であれば適宜調節しても良い。
そのうちでも、油剤の付着量を0.3〜2.0%とすることが高品質のポリエステル繊維を円滑に得ることができるので好ましく、0.3〜1.0%とすることがより好ましい。
そして、上述した一連の工程からなる延伸した多葉型ポリエステル繊維を、3500〜5500m/分で引き取ることが好ましく、引き取り速度4000〜5000m/分であることがより好ましい。ポリエステル繊維の引き取り速度が3500m/分未満の場合は生産性が低下し、また加熱帯域において繊維の延伸が十分に行われなくなり、得られるポリエステル繊維の機械的物性が低下する。引き取り速度が5500m/分を超えた場合は安定な高速紡糸性が得られにくく、また加熱帯域において繊維の延伸が十分に行われなくなり、得られる多葉型ポリエステル繊維の機械的物性が低下する。
本発明で得られる多葉型ポリエステル繊維の染着率は、95℃での染着率が70%以上であり、且つ100℃での染着率が90%以上であることが望ましい。これらの染着率を下回ると、中〜低分子量染料(SE〜Eタイプ)の易染性染料においても十分な染着率が得られないため一般衣料用途としては好ましくなく、更にウール、綿、アクリル、ポリウレタンなど、ポリエステル以外の素材と交編、交織しても、常圧環境下で十分な染色性を得ることが困難となる。
本発明で得られた多葉型ポリエステル繊維は、変退色、添付汚染、液汚染の洗濯堅牢度が4級以上であることが望ましい。そのいずれかが4級未満であった場合、取扱い性の点から一般衣料用途としては好ましくない。
また、本発明で得られた多葉型ポリエステル繊維は耐光堅牢度が4級以上であることが好ましい。耐光堅牢度が4級未満であった場合、取扱い性の点から一般衣料用途としては好ましくない。
更に、本発明で得られた多葉型ポリエステル繊維はアルカリ減量処理後における破断強度保持率が90%以上を満足することが望ましい。破断強度保持率が90%未満の場合、アルカリ減量後の糸品質が低下するため、糸加工時の工程不良や製品の品質不良が発生し、一般衣料用途としては好ましくない。
本発明の染色性に優れる多葉型ポリエステル繊維は、上記製造方法による延伸糸に限られるものではなく、最終製品に求められる品質や良好な工程通過性を確保するために、最適な紡糸手法を選択することができる。より具体的には、スピンドロー方式や、紡糸原糸を採取した後に別工程で延伸を行う2−Step方式、また延伸を行わず非延伸糸のまま引き取り速度が2000m/分以上の速度で捲取る方式においても、任意の糸加工工程を通過させた後に製品化することで、良好な常圧可染性品位を有するポリエステル製品を得ることができる。
以下、実施例によって本発明を詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものでない。なお、ジカルボン酸成分共重合量、ポリエステル樹脂のガラス転移温度、結晶化温度、固有粘度、本発明で得られる繊維の染着率、K/S、繊度、繊維の各物性の評価は以下の方法に従った。
<ジカルボン酸成分共重合量>
共重合量は、該ポリエステル繊維を重トリフロロ酢酸溶媒中に5.0wt%/volの濃度で溶解し、50℃で500MHz、H−NMR(日本電子製核磁気共鳴装置LA−500)装置を用いて測定した。
<ガラス転移温度>
島津製作所製 示差走査熱量計(DSC−60)にて、昇温速度10℃/分で測定した。
<結晶化温度>
島津製作所製 示差走査熱量計(DSC−60)にて、昇温速度10℃/分で測定した。
<固有粘度>
溶媒としてフェノール/テトラクロロエタン(体積比1/1)混合溶媒を用い30℃でウベローデ型粘度計(林製作所製HRK−3型)を用いて測定した。
<染色及び染着率>
得られた繊維の筒編地を精練した後、以下の条件で染色し、還元洗浄をした後、染着率を求めた。
(染色)
染料:Dianix NavyBlue SPH conc5.0%omf
助剤:Disper TL:1.0cc/l、ULTRA MT−N2:1.0cc/l
浴比:1/50
染色温度×時間:95〜100℃×40分
(還元洗浄)
水酸化ナトリウム:1.0g/L
ハイドロサルファイトナトリウム:1.0g/L
アミラジンD:1.0g/L
浴比:1/50
還元洗浄温度×時間:80℃×20分
(染着率)
染色前の原液及び染色後の残液をそれぞれアセトン水(アセトン/水=1/1混合溶液)で任意の同一倍率に希釈し、各々の吸光度を測定した後に、以下に示す式から染着率を求めた。
吸光度測定器:分光光度計 HITACHI
HITACHI Model 100−40
Spectrophotometer
染着率=(A−B)/A×100(%)
ここで、A及びBはそれぞれ以下を示す。
A:原液(アセトン水希釈溶液)吸光度
B:染色残液(アセトン水希釈溶液)吸光度
<染着濃度(K/S)>
染着濃度は、染色後サンプル編地の最大吸収波長における反射率Rを測定し、以下に示すKubelka−Munkの式から求めた。
分光反射率測定器:分光光度計 HITACHI
C−2000S Color Analyzer
K/S=(1−R) /2R
<洗濯堅牢度>
JIS L−0844の測定方法に準拠して測定した。
<耐光堅牢度>
JIS L−0842の測定方法に準拠して測定した。
<繊度>
JIS L−1013の測定方法に準拠して測定した。
<破断強度>
インストロン型の引張試験機を用いて得られた荷重−伸度曲線より求めた。
<破断伸度>
インストロン型の引張試験機を用いて得られた荷重−伸度曲線より求めた。
<紡糸性>
以下の基準に従って紡糸性評価を行った。
◎:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が何ら発生せず、しかも得られたポリエステル繊維には毛羽・ループが全く発生していないなど、紡糸性が極めて良好である
○:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が1回以下の頻度で発生し、得られたポリエステル繊維に毛羽・ループが全く発生していないか、あるいは僅かに発生したものの、紡糸性がほぼ良好である
△:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が3回まで発生し、紡糸性が不良である
×:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が3回よりも多く発生し、紡糸性が極めて不良である
<強度保持率>
得られた繊維の筒編地を精練した後、以下の条件で重量減量率が15%になるまでアルカリ減量し、その処理前後の筒編を解繊してインストロン型の引張試験機を用いて荷重−伸度曲線より破断強度を求め、以下に示す式から破断強度の比率(保持率)として表した。
強度保持率=(B/A)×100(%)
ここで、A及びBはそれぞれ以下を示す。
A:アルカリ減量未処理における筒編解繊糸の破断強度
B:15%アルカリ減量処理後における筒編解繊糸の破断強度
(アルカリ減量)
水酸化ナトリウム:40g/L
アルカリ減量温度×時間:95〜100℃×任意時間(重量減量率=15%)
<繊維集合体の空隙率(%)>
ヤーンを3本引き揃え2500T/Mの下撚をかけ、それを3本合糸し、S400T/Mの上撚をかけた撚糸をミクロトームで切った繊維断面の光学顕微鏡写真を撮影した。該写真を拡大し、繊維と空隙部に切り分け、その重量比から上記式(I)により空隙率を求めた。ただし、中空繊維等の中空部を有する繊維については中空部も空隙として算術した。
空隙率(%)=〔(空隙部重量)/(繊維重量部+空隙部重量)〕×100
<繊維の異形度>
繊維の異形度繊維断面の光学顕微鏡写真を撮影し、下記式により測定、算出した。
異形度=R/L
(ただし、繊維断面においてLは隣り合う先端部A、Bを結ぶ線の長さABであり、Rは該隣り合う先端部の中間に位置する窪みDとDから線ABへの垂線の交点をCとした時の長さCDを示す。)
<異形度保持率(%)>
染色加工後の異形度は前記に記載の染色条件で染色処理し、還元洗浄後に異形度を測定した。染色加工前は未染色の異形度を測定した。
異形度保持率(%) =(染色加工後の異形度/染色加工前の異形度)×100
<反射率R(%)>
経密度38本/cm、緯密度28本/cmのタフタ織物を、日立分光光度計「U−3400」にて測定し、得られた反射曲線により波長500nmにおける反射率を求めた。
<繊維集合体の不透明度(%)>
単繊度2.2デニールの多葉型ポリエステル繊維を経糸および緯糸に用い、経糸38本/cm、緯糸28本/cmを作製し、日立分光光度計「U−3400型」を用いて、この編地のL* を測定し、下記式により算出した。
不透明度(%)=(L* B /L* W )×100
* B :黒素地に布帛(繊維集合体)を重ねた時のL*
* W :白素地に布帛(繊維集合体)を重ねた時のL*
黒素地は黒色プラスチック板(L* 値=12)、白素地は標準白板(L* 値=100)を示す。
(実施例1)
ジカルボン酸成分のうち91モル%がテレフタル酸であり、且つ1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を6.0モル%、アジピン酸を3.0モル%それぞれ含んだ全カルボン酸成分とエチレングリコール、及び平均粒径0.3μmの二酸化チタンとでエステル交換反応及び重縮合反応を行い、本発明のポリエステル樹脂重合物を得た。この原料のガラス転移温度、及び結晶化温度を測定したところ、それぞれ72℃、144℃であった。この原料を基に、孔数24個で断面形状が図1(ロ)のような四葉型の口金を用いて紡糸温度260℃、単孔吐出量=1.57g/分で紡出し、温度25℃、湿度60%の冷却風を0.5m/秒の速度で紡出糸条に吹付け糸条を60℃以下にした後、紡糸口金下方1.2mの位置に設置した長さ1.0m、入口ガイド系8mm、出口ガイド系10mm、内径30mmφチューブヒーター(内温185℃)に導入してチューブヒーター内で延伸した後、チューブヒーターから出てきた糸条にオイリングノズルで給油し2個の引き取りローラーを介して4500m/分の速度で捲取り、84T/24fの4葉型ポリエステルフィラメントを得た。その時の製糸化条件と紡糸性、及び得られた繊維の染色堅牢性、強度保持率の結果を表1に示した。上記の製造方法で得られた4葉型ポリエステル繊維を用いて、経糸および緯糸として使い、生機密度が経糸38本/cm、緯糸28本/cmのタフタを製織した。この生機タフタをソーダ灰2g/l、アクチノールR−100(松本油脂製)1g/lにて100℃、30分処理して精練を行った。ついでピンテンターにて180℃のヒートセットを行った。この各織物についての染着率は、95℃で85%、100℃で93%、K/S=26と良好な常圧可染性を示した。また、異形度、延伸糸の集合体の空隙率、反射率、洗濯堅牢度、耐光堅牢度、不透明度について表1に示す。表1に示すとおり、上記方法で得られた繊維は何ら問題のない品質であった。更に、15%アルカリ減量後の強度保持率および異形度保持率についてもそれぞれ96%と良好な品質であった。
(実施例2〜5)
ポリエステル樹脂の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びアジピン酸の共重合量と繊維断面を変更した以外は実施例1と同様にポリエステル樹脂および繊維を製造した。
具体的には表1に示す熱特性を有する共重合物を製造し、この重合物を、繊維断面を変更するための口金を用いた以外は実施例1と同様の手法で紡糸して84T/24fのポリエステルフィラメントを得た。得られた繊維の物性を表1に示した。
いずれも良好な紡糸性、常圧可染性(染着率、K/S、堅牢性)、強度保持率、及び異形度保持率であり、何ら問題のない品質であった。
(比較例1〜6)
ポリエステル樹脂の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びアジピン酸の共重合量と繊維断面を変更した以外は実施例1と同様にポリエステル樹脂および繊維を製造した。
具体的には表1に示す熱特性を有する共重合物を製造し、この重合物を、繊維断面を変更するための口金を用いた以外は実施例1と同様の手法で紡糸して84T/24fのポリエステルフィラメントを得た。得られた繊維の物性を表1に示した。
比較例1〜2では、断面を丸断面、一穴中空に変更して実施した。生地としての空隙率や反射率が不十分で、繊維集合体の不透明度の値も劣る結果となった。
比較例3では、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の共重合量が少ないため染着率、染着濃度が不十分であり、常圧可染性を示さない繊維物性となった。
比較例4では、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の共重合量を18.0モル%とし、テレフタル酸の共重合量を77モル%と本発明の組成から外れる範囲とした。その結果、得られた繊維は染着率、染着濃度は十分であったが、紡糸性に劣るものとなった。
比較例5では、アジピン酸の共重合量が少ないため、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が十分量共重合されていても染着率、染着濃度が不十分であり、常圧可染性を示さない繊維物性となった。
比較例6では、アジピン酸の共重合量が多いため、染着率、染着濃度は十分であったが、紡糸性が大幅に劣るものとなった。
Figure 2012136810
本発明によれば、常圧環境下での染色において濃色性と堅牢性に極めて優れた染色が可能で、直接紡糸延伸手法又はその他の一般的な溶融紡糸手法においても安定した品質及び工程性が得られるポリエステル繊維を提供することができる。
具体的には、本発明の常圧可染ポリエステル繊維は、従来のポリエステル繊維と何ら遜色のない品質を有しているため、一般衣料全般、例えば紳士婦人向けフォーマル或いはカジュアルファッション衣料用途、スポーツ用途、ユニフォーム用途など、多岐に渡って有効に利用することができる。また、資材用途全般、例えば自動車や航空機などの内装素材用途、靴や鞄などの生活資材用途、カーテンやカーペットなどの産業資材用途などにも有効に利用することができる。

Claims (4)

  1. ポリエステル樹脂からなり、断面形状が多葉状である繊維であって、該ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合体であって、該ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ4.0〜12.0モル%がシクロヘキンサジカルボン酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ2.0〜8.0モル%がアジピン酸成分及び/又はそのエステル形成性誘導体であって、該グリコール成分はエチレングリコール成分及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とすることを特徴とするポリエステル繊維。
  2. 断面形状において、葉数が3〜10である請求項1に記載のポリエステル繊維。
  3. 断面形状において、異形度が0.05〜0.80の範囲である請求項1又は請求項2に記載のポリエステル繊維。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル繊維からなる繊維集合体であって、波長500nmにおける反射率Rが85%以上であり、かつ空隙率が20〜60%であることを特徴とする繊維集合体。
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