JP2006322079A - ポリアミド織編物およびその製造方法 - Google Patents

ポリアミド織編物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
ポリアミド中空繊維からなる撚糸を使用した織編物であって、ドライタッチの風合いで軽く、暖かい織編物と、その織編物を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】
中空率が20〜80%のポリアミド中空繊維からなる糸条を含む織編物であって、該糸条には撚り係数(K)が2000〜30000の撚りがかかっており、且つ該ポリアミド中空繊維の中空部の真円度(S)が1.0〜2.0であることを特徴とするポリアミド織編物。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ポリアミド織編物およびその製造方法に関するものであり、詳しくは、ポリアミド中空繊維からなる撚糸を用いたポリアミド織編物とその製造方法に関するものである。
近年、衣料用織編物は、現代の快適生活に志向されるように、ドライタッチで軽く、暖かい衣料用織編物が求められている。これに対し、ポリエステルマルチフィラメント糸からなるジョーゼット、デシンおよびチリメンなどの強撚織物は、サラッとしたドライ感やシャリ感はあるが、丸断面のポリエステル繊維の比重は1.38と高く、絹などに比較して重く、冷たい感触の織編物である。
また、ポリアミド繊維は、比重が1.14と低く軽いものであるが、元来その表面と内部構造が均一かつ単純であることから、単なる丸断面フィラメント糸ではヌメヌメした風合いでドライ感に欠け、また、冬季の衣料としての保温性が不十分であるという欠点がある。
これらの問題を解決すべく、繊維内部に中空部を持つ中空繊維により、軽量性や保温性のような機能を高める技術が提案されている。例えば、中空繊維の製造方法として、紡糸口金から直接に中空繊維を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この提案では、ポリマー粘度や紡糸口金の形状などの工夫しても、通常の溶融紡糸であるため、高中空繊維を得ることは困難であり、そのため軽量性が十分な軽量織編物を得ることができない。特に、中空率が20%を超える高中空の繊維は紡糸時にポリマーの粘度に限界があるので、表面張力でどうしてもゆがんでしまい、中空部が潰れやすいという問題を抱え、真円の中空糸を得ることは困難である。ちなみに、真円の中空繊維は嵩があり、極めて軽量になること、および中空部には空気が満たされており空気の断熱材の効果で体温を放熱させないので、暖かく保温性に富むものである。これは、デッドエアー効果と呼ばれている。すなわち、この中空部を潰さずに中空部の真円度をいかに創出するかが技術的課題である。
また、ポリエステルとポリアミドからなる芯鞘複合繊維の糸条を製糸した後に、芯部を溶出除去することにより、高中空率の繊維を製造する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、この提案では、高中空繊維を得ることは可能であるが、撚糸織編物とした場合の中空繊維の中空部の真円度については、提案がない。また、この提案では、芯成分の溶出工程にかなりの時間を要する。そのため、イソフタル酸、アルキレングリコールあるいはスルホイソフタル酸アルカリ金属塩等を共重合させたポリエステルを用いることにより溶出時間を短縮させているが、まだ十分でない。
かかる芯成分の溶出の短縮化のために、アルカリ分解促進剤(減量促進剤)として知られる第4級アンモニウム塩を併用し、溶出時間を短縮させることが提案されている(非特許文献1参照)。しかしながら、この提案では、カチオン性である第4級アンモニウム塩を除去する目的で酸性側で十分に除去(洗浄)する必要があり、その工程を含めるとトータルの溶出工程はかなりの時間を要している。また、最近では、環境に対する関心が高まってきており、アルカリ液を廃液処理する場合、第4級アンモニウム塩は抗菌剤としての作用も持ち合わせていることからバクテリア等を殺菌してしまうので、環境に優しくないという問題がある。
特開平9−217225号公報 特開平7−278947号公報 加工技術 Vol.14 No1(1979) p8
上記のように、従来技術では、中空繊維の中空部が潰れてしまうか、または、溶出性に問題があるなど、効率よく目的とする中空繊維を用いた撚糸織編物を製造することは困難であった。
そこで本発明の目的は、かかる従来技術の背景に鑑み、中空繊維の中空部の潰れを抑え、ドライタッチの風合いで軽く、暖かいポリアミド織編物、およびそのポリアミド織編物を効率よく製造する方法を提供するものである。
上記目的を達成するため、本発明は下記の構成を有するものである。本発明のポリアミド織編物は、中空率が20〜80%のポリアミド中空繊維からなる糸条を含む織編物であって、該糸条には撚り係数(K)が2000〜30000の撚りがかかっており、且つ該ポリアミド中空繊維の中空部の真円度(S)が1.0〜2.0であることを特徴とするポリアミド織編物である。
本発明のポリアミド織編物の好ましい態様によれば、前記のポリアミド中空繊維を構成するポリアミドは、ナイロン6またはナイロン66である。
また、本発明のポリアミド織編物の製造方法は、芯成分がアルカリ易溶解性ポリエステルであり、鞘成分がポリアミドであって、該芯成分の比率が芯成分と鞘成分の合計に対して20〜80重量%である芯鞘複合繊維からなる糸条に、撚り係数(K)が2000〜30000の撚りをかけ、40〜110℃の温度で撚り止めセットした糸条を用いて織編物に形成後、該織編物を50〜120℃の温度でリラックス処理し、しかる後、アルカリ溶液を用いて80〜120℃の温度で加熱処理して該芯成分を溶出し、該芯鞘型複合繊維を中空化することを特徴とするポリアミド織編物の製造方法である。
本発明のポリアミド織編物の製造方法の好ましい態様によれば、前記の芯成分は、ポリ乳酸である。
本発明のポリアミド織編物の製造方法の好ましい態様によれば、前記の芯成分は、スルフォン化芳香族化合物ジカルボン酸が3.0〜10.0モル重量%の範囲で共重合されてなるアルカリ昜溶解性ポリエステルである。
本発明によれば、中空繊維の中空部の潰れを抑え、従来技術では得られなかった、ドライタッチの風合いで軽く、暖かい織編物を効率よく製造することができる。
本発明者らは、アルカリ易溶解性ポリエステルとポリアミドの芯鞘複合繊維からなる糸条に撚りをかけて織編物を作成した後、苛性アルカリ処理を行い、芯部のアルカリ易溶解性ポリエステルを溶出して中空部を形成することにより、ドライタツチの風合いで保温性、軽量性、生産性良好な織編物を製造することができることを見い出し、上記の課題を一挙に解決することを究明したものである。本発明において織編物とは、織物と編物の総称をいう。
以下、本発明のポリアミド織編物とその製造方法について詳細に説明する。
本発明において、ポリアミド中空繊維を構成するポリアミドとは、アミド結合を有する熱可塑性重合体のことであり、ポリアミドとしては、ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610およびナイロン46等を挙げることができる。また、ポリアミドは、前記のポリアミドのブレンド物や共重合ポリマーであってもよい。なかでも、繊維形成性、製造コスト、汎用性および芯部の汎用性の点から、ナイロン6とナイロン66が好ましく用いられる。ポリアミドは、目的に応じて艶消し剤、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤や紫外線吸収剤等の添加物を含有していてもよい。
本発明のポリアミド織編物は、中空率が20〜80%のポリアミド中空繊維からなる糸条を含む織編物であって、該糸条には撚り係数(K)が2000〜30000の撚りがかかっており、且つ該ポリアミド中空繊維の中空部の真円度(S)が1.0〜2.0であることを特徴とするポリアミド織編物である。
ここで本発明でいう撚り係数(K)とは、次のように定義される。
撚り係数(K)=T×平方根(DT)
但し、T:撚り回数(回/m)・・・糸1mあたりの撚り数
DT:糸条の総繊度(デシテックス)
本発明のポリアミド織編物は、撚り係数(K)が2000〜30000の範囲で加撚されているポリアミド中空繊維からなる糸条を用いてなるものである。撚り係数(K)が2000未満では撚糸特有のドライタッチ感は得られず、また、撚り係数(K)が30000を超えると撚りが強すぎて、織編物の表面が荒れてしまい、且つ中空部に潰れがでる場合があり、好ましくない。ドライタッチ風合いであり、中空部の歪みを小さくすることからも、撚り係数(K)は2000〜30000の範囲がよく、用途により、中撚物は7000〜10000の撚り係数のものが、また、強撚物は15000〜20000の撚り係数のものが推奨される。
ここでいうところの撚り係数(K)は、後述する芯成分を溶出した後のポリアミド織編物の構成糸(ポリアミド中空繊維からなる糸条)の撚り係数に該当する。
また、本発明でいうポリアミド中空繊維の中空部の真円度(S)は、次のように定義される。
中空部の真円度(S)=S2/S1
但し、S2:繊維の中空部の外接円の直径(ミクロン)・・・長径
S1:繊維の中空部の内接円の直径(ミクロン)・・・短径
図2は、本発明における中空繊維の中空部の真円度(S)を説明するための概略図である。長径S2とは、外接円を描く場合、最も長い直径を指し、同様に短径S1とは内接円を描く場合、最も短い直径を指す。
かかる中空部の真円度は、例えば、直径(内径)8ミクロンの真円の丸中空糸が、何らかの外力が加わって歪んだ場合にS2が9ミクロンで、S1が6.5ミクロンであれば、真円度(S)は1.38となり、また、S2が11ミクロンで、S1が4ミクロンであれば、真円度(S)は2.75となる。
本発明では、ポリアミド中空繊維の中空部の真円度(S)は、1.0〜2.0の範囲である。真円度(S)が1.0に近いほど真円であり、中空部が潰れが少なく、軽量性と保温性が優れている。真円度(S)が2.0を超える場合は歪みが大きく、中空部が潰れる傾向を示し本発明で意図する性能は発揮されない。
本発明でいうところの中空部の真円度(S)は、撚糸した後に後述する芯成分を溶出後、仕上げの織編物の構成糸(中空糸)を分解したときのポリアミド中空繊維の中空部の真円度に該当する。
中空部の真円度(S)の測定は、ポリアミド織編物を分解した分解糸の単繊維20本の切断面を、走査型電子顕微鏡で1000〜2000倍に写真撮影し、S2とS1をそれぞれ測定し、20本の平均値を求めたものである。
本発明で芯鞘型複合繊維の芯成分として用いられるアルカリ易溶解性ポリエステルとは、苛性ソーダ濃度30g/Lの水溶液中、98℃の温度で、60分間の条件下において、ポリエステル単独繊維と比較して5倍以上の溶解性をもつポリエステルのことである。
本発明で好適に用いられるアルカリ易溶解性ポリマーとしては、例えば、スルフォン化芳香族ジカルボン酸変性ポリエステルが挙げられ、スルフォン基を有する化合物がポリエステルの連鎖または末端の一部に含まれた変性されたポリエステルを好適に用いることができる。より具体的には、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリブチレンテレフタレート、あるいはこれらを主成分とする共重合ポリエステルなどに、スルフォン化芳香族ジカルボン酸、あるいはその塩を共重合させてなる変性ポリエステルなどを用いることができる。
スルフォン化芳香族ジカルボン酸の代表的なものとしては、5−ナトリウムスルフォイソフタル酸ジメチルが挙げられる。その共重合量は、テレフタル酸に対し3.0〜10モル重量%の範囲であることが好ましい。この共重合量が低すぎると所望の効果が十分に得られ難い場合があり、逆に多すぎると変性ポリエステルの結晶構造が乱れて機械的特性の大幅な低下を招くことになる場合がある。
本発明では、アルカリ易溶解性ポリマーとして、さらに好ましくは、ポリ乳酸を用いることができる。ポリ乳酸は、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる繰り返し単位とするものであるが、該ポリ乳酸のL−乳酸あるいはD−乳酸いずれかの比率が95モル%以上であることが好ましく、その比率は、さらに好ましくは98モル%以上である。
ポリ乳酸の製造方法には、L−乳酸および/またはD−乳酸を原料として一旦環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う二段階のラクチド法と、L乳酸および/またはD−乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知られているが、いずれの製法で得られたものであってもよい。
また、L−乳酸とD−乳酸の他に、エステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合可能な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セパシン酸、フマル酸など分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類およびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明では、芯成分がアルカリ易溶解性ポリマーであり、鞘成分がポリアミドからなる芯鞘複合繊維を用いる。鞘成分のポリアミドとしては、前記したポリアミドが用いられる。
本発明において、アルカリ易溶解性ポリエステルとポリアミドからなる芯鞘複合繊維の芯成分と鞘成分の複合比率は、軽量感の点から、芯成分の比率が芯成分と鞘成分の合計に対して20〜80重量%であること、すなわち、中空率が20〜80%であることが必要である。芯成分の比率が20重量%未満の場合は軽量性と保温性が乏しい。また、芯成分の比率が80重量%を超える場合は、芯成分をアルカリ溶液により溶出除去する際に、鞘成分内を薬液(アルカリ溶液)が浸透して分解物を溶出させるのに時間と高温を要すること、また、鞘成分の劣化を生じやすく、引裂強力や破裂強力など物理特性が低下する。芯成分の比率は、性能と製造効率から、30〜60重量%であること好ましい。
本発明において、芯鞘複合繊維の複合形態は特に限定されないが、紡績、糸加工、製織および編成の生産性の点から、鞘成分が芯成分を完全に覆っていることが好ましく、これは軽量性と保温性からも好ましい態様である。例えば、芯部と鞘部が同心円あるいは偏心円で、芯部が単一円若しくは複数円であることが好ましい。
また、芯鞘複合繊維の繊維断面は、丸、三葉、四葉、五葉、扁平、X型、井型およびその他どのような形状であっても構わず、要するにこれらの断面の中心部に中空部を構成する芯部が存在するものであり、目的に応じて選択することができる。
芯鞘複合繊維の形態は、長繊維や短繊維等、特に限定するものではないが、本発明の効果が最大に発揮できることから長繊維が好ましい。長繊維についてその繊度を例示すると、マルチフィラメント糸での単繊維繊度は0.5〜8.0デシテックスであることが好ましく、また、総繊度は20〜500デシテックスのものが好ましい。具体的には、総繊度が20〜50デシテックスのマルチフィラメント糸を用いた織編物はインナーや肌着用途に、また、総繊度が50〜100デシテックスのマルチフィラメント糸を用いた織編物はブラウス、シャツおよびドレス用途に、総繊度が100〜500デシテックスのマルチフィラメント糸を用いた織編物はジャケット、コートおよびパンツ等の外衣用途に好適に適用することができ、本発明の効果をより大きく発揮させることができる。
本発明において、芯鞘複合繊維からなる糸条の製造方法は特に限定されないが、常法の溶融紡糸法を用いて製造することができる。例えば、次のような手法を用いて製造することができる。ポリ乳酸を芯部に、また、ナイロン6またはナイロン66を鞘部に配置されるように設計された紡糸口金を用いて、溶融紡糸の後、給油および交絡処理を行い、1000m/分以上の速度で紡糸引取り、引き続いて延伸し巻取る方法、あるいは、同様にして溶融紡糸の後、給油および交絡処理を行い1000m/分以上の速度で紡糸引取りし、実質的に延伸することなく巻取る方法、さらには、同様にして溶融紡糸の後、給油を行い一旦巻取り、その後延伸し巻取る方法などがある。ステープルの場合は、延伸後カッティングして原綿を製造し、それを紡績し巻取る。得られた芯鞘型複合繊維からなる糸条は、続いて、所定の撚り係数(K)で撚糸される。
本発明でいう芯鞘型複合繊維からなる糸条の撚り係数(K)とは、次のように定義される。
すなわち、
撚り係数(K)=T×平方根(DT)
但し、T:撚り回数(回/m)・・・糸1mあたりの撚撚り数
DT:糸条の総繊度(デシテックス)
本発明では、撚り係数(K)が2000〜30000の範囲で加撚されている糸条を用いるものである。撚り係数(K)が2000未満では撚糸特有のドライタッチ感は得られず、また、撚り係数(K)が30000を超えると撚りが強すぎて、織編物の表面が荒れてしまい、且つ中空部に潰れがでるので好ましくない。ドライタッチ風合いであり、中空部の歪みを小さくすることからも、撚り係数(K)は2000〜30000の範囲がよく、用途により、中撚物は7000〜10000の撚り係数のものが、また、強撚物は15000〜20000の撚り係数のものが推奨される。
本発明のポリアミド編織物の製造方法について更に述べると、芯鞘複合繊維からなる糸条に上記の撚りをかけた後は、40〜110℃の温度で撚り止めセットする。かかるセット温度は、撚り数により、適宜設定される。例えば、撚り係数が7000〜10000の中撚物では、50〜70℃の温度が、また、撚り係数が15000〜20000の強撚物では、60〜90℃の温度が推奨される。即ち、次の製織工程でビリの発生がなく、且つ製織後のリラックス処理で撚りが解撚するバランスから、かかるセット温度が設定される。撚りのセット方法としては、通常適用されるスチーミング方法がよく、更にはセットを均一にできることから、スチーミング前後に減圧するセット方法が推奨される。
次いで、撚糸されたポリアミド繊維糸条を用いて織編物を形成する。本発明では、撚糸された芯鞘複合繊維からなる糸条を織編物の一部又は全部に使用する。例えば、織物では、経糸と緯糸の全部に該撚糸を用いたジョーゼット織物や二重織物、あるいは経糸に甘撚り糸を用い、緯糸には該撚糸を用いたデシン、チリメンおよび楊柳織物等が挙げられる。編物では、該撚糸100%のほか、他糸との交編編物が挙げられる。
本発明では、特に軽量性と保温性の点から、該芯鞘複合繊維からなる撚糸を100%を用いて織編物に使用することが好ましいが、他の糸と50%以上に交織や交編しても構わない。かかる撚糸はできるだけ織編物に多く使用することが推奨される。
本発明において、ポリアミド織物の織成は、通常のフィラメント織物やスパン織物と同様の工程で行なうことができる。使用できる織機は特に限定されず、エアジェット織機やレピア織機などの織機など革新型織機でも対応可能である。また、その組織は、平織、綾織および繻子織など特に限定されない。
本発明において、ポリアミド編物の編成は、通常のフィラメント編物やスパン編物と同様の工程で行なうことができる。使用できる編機は特に限定されず、丸編機、経編機およびヨコ編機などを使用することができる。また、その組織は、丸編ではスムースと天竺、経て編みではハーフとクインズコードなどが挙げられる。
織編物に形成後、織編物は50〜120℃の温度でリラックス処理される。これにより、織編物の中の撚糸が一部分解撚し、優雅なシボと呼ばれる凹凸が織編物の表面に発現し、且つ織り、編みでの緊張した張力が緩和されてドライタッチの風合いが作られる。リラックス処理は精錬工程でおこなうことができ、精練方法は、シボ立ち性と均一性の点から、液流染色機あるいはワッシャーを用いることが好ましい。
しかる後、好適には、160〜190℃の温度で適宜乾熱セットし、アルカリ溶液を用いて80〜120℃の温度で加熱処理することによって前記の芯鞘複合繊維の芯成分を溶出し、芯鞘複合繊維を中空化する。加熱処理温度が80℃未満では溶出時間がかかり効率が良くない。また、加熱処理温度が120℃を超える場合は、ポリアミド中空繊維の脆化が起こり、強度が低くなる。加熱処理温度は、溶出効率と繊維強度面からも80〜120℃であることが好ましい。
芯成分の溶出処理において、更に溶出時間を短く、早く効率よく処理するため、アルカリ溶液として苛性アルカリ水溶液、特に水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましく、この場合、アルカリ溶液濃度は、30〜150g/Lの範囲が好ましく、より好ましくは40〜80g/Lの範囲である。
本発明においては、アルカリ溶液と同時にポリアミド膨潤剤を併用することが好ましい。ポリアミド膨潤剤を併用することで、水酸化ナトリウム単独使用対比で、2.5〜4.0倍程度、溶出時間を短縮することができる。また、ポリアミド膨潤剤は、溶出処理後の従来のいわゆる「アニオン返し」の処理が不要で、効率よく処理することができる。ポリアミド膨潤剤としては、具体的に例示すると、フェニレングリコール誘導体が挙げられ、中でもベンジルアルコール類またはベンジルアルコール誘導体を用いることが好ましい。本発明では、かかる組成の処理液を分散液として使用することが好ましい。
処理液中の各成分のそれぞれの使用量は、溶出性と加工コスト等の点から、苛性アルカリ濃度10〜80g/L溶液、ポリアミド膨潤剤5〜80g/Lであることが好ましい。
芯成分の溶出処理の後は、通常の仕上げで、適宜染色やプリント加工して仕上げることができる。また、必要に応じて、撥水、吸水、制電、抗菌および柔軟仕上げ、その他公知の後加工を施することができる。
得られたポリアミド中空繊維からなる糸条を含む織編物は、その後、縫製されて、各種衣料用のみならず産業資材用製品としても使用される。本発明のポリアミド織編物は、なかでも、婦人中衣(ブラウス、シャツ)および外衣(ジャケット、パンツ、スーツ)また、インナーウェア(ランジェリー、ファウンデーション等)やスポーツウェア(ウィンドブレーカー、テニスウェア、スキーウェア、トレーニングウェア等)、カジュアルウエア(ジーンズウエア等)、およびかばん地として好適である。
以上のように、本発明によれば、従来技術ではなし得なかった、ドライタッチの風合いで軽く、暖かいポリアミド織編物を効率よく製造することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。物性の測定方法は、次のとおりである。
A.撚り係数(K)の測定
前記の測定に従って、仕上げのポリアミド織編物の構成糸条(ポリアミド中空繊維糸)を取り出し、これを検撚器で解撚しながら撚り数を測定する(10ヶ所平均)。この撚り数と糸条の総繊度から撚り係数を求める。
B.ポリアミド中空繊維の中空部の真円度の測定、評価
前記の測定に従って織編物中のポリアミド中空繊維の中空部の長径と短径を求め、真円度(S)を求める。値が1.0に近いほど、中空部の歪みがなく、良好である。
C.織編物の軽量感
芯成分溶出前と溶出後の織編物の重量を測定し、その重量変化を求めた。20重量%以上の重量変化がある場合に、軽量感「あり」〜「極めてあり」と評価した。重量変化が20重量%未満のものを軽量感「なし」と評価した。
D.織編物のドライ感風合い評価
織編物のドライ感の風合いについて、10人にモニター調査を行った。その結果を、次の基準で示した。
○:ドライな風合いでよい。
△:風合いがあまりよくない。
×:風合いが良くない。
E.保温性評価
次の方法で保温率(%)を求めた。値が大きいほど、暖かみのある織編物である。
・測定器:KES−FB7(カトーテックス(株)製)
・測定織編物(仕上品):10cm×10cm
・測定方法:ヒーターのある上記測定器を用い、測定器表面の熱板(40℃:体温相当)に測定織編物を被せ、織編物から逃げる熱量をヒーターの消費電力(ワット)で表す。
・保温率の算出
保温率(%)=(W0−W1)/W0×100
ここで、W0:織編物が無いときの消費電力(ワット)
W1:織編物があるときの消費電力(ワット)
<実施例1>
重量平均分子量17万のポリL乳酸(光学純度98%L乳酸、融点170℃)を芯成分とし、平均2次粒子径が0.4μmの酸化チタンを0.2重量%含有した硫酸相対粘度ηr:2.6のナイロン6を鞘成分として、それぞれ別々に溶融し、お互いの重量比が50/50となるように計量して紡糸口金に導き、ポリ乳酸が芯部で、ナイロン6が鞘部となるように複合した後、24ヶの丸孔から紡糸温度260℃で溶融吐出し糸条を得た。続いて、得られた糸条を冷却風で冷却し、給油し、交絡をおこなった後、非加熱ローラーで引き取り、170℃の温度の加熱ローラーとの間で1.5倍に延伸して、巻き取り速度4000m/分で巻き取り、156デシテックス48フィラメントの芯鞘複合フィラメント糸条(芯鞘:同心円の丸断面繊維糸条)を得た。
上記のようにして得られた芯鞘複合フィラメント糸条に、1700回/mの撚りをかけ(撚り係数:22100、撚り方向:S方向およびZ方向)、70℃×30分でスチーミングし、撚り止めセットし撚糸を得た(セツター:減圧タイプ)。続いて、得られた撚糸をタテ糸およびヨコ糸にS方向およびZ方向いに1本づつ配列させて、タテ密度120本/インチ、ヨコ密度90本/インチの平織物を製織した。製織した平織物を、98℃×20分、ワッシャー機でリラックス精練処理し、続いて180℃の温度で乾熱セットした。
得られた平織物を液流染色機を用い、水酸化ナトリウム50g/L、ベンジルアルコール誘導体を乳化させたポリアミド膨潤剤(ベンジルアルコール純分85%)30g/L、浴比1:20、昇温時間2℃/分、温度110℃の条件下で、45分間、芯成分の溶出処理を行い、水洗、洗浄した。その結果、減量率は50.0%で完全に芯成分が溶出していることを確認した(走査型電子顕微鏡で1000倍で観察した。図1参照。)。次に、常法に従って、酸性染料でベージュ色に染色し、160℃の温度で乾熱セットし、仕上げた。仕上げ品の撚り係数は、21908であった。結果を表1に示す。
<実施例2>
ポリ乳酸が芯部に30重量%、ナイロン6が鞘部に70重量%となるように複合したこと以外は、実施例1に従って織物を製造した。なお、アルカリ溶液による芯成分の溶出処理は、温度110℃の条件下で、30分間で、完全に芯部が溶出していることを確認した。仕上げ品の撚り係数は、21911であった。結果を表1に示す。
<比較例1>
芯部にポリ乳酸を複合することなく、通常の中空口金を用いて、ナイロン6を紡糸し延伸し、中空率が50%のナイロン6の糸を得た。そして、アルカリ溶液による芯成分の溶出処理は適用しないこと以外は、実施例1に従って織物を製造した。結果を表1に示す。
<比較例2>
芯部にポリ乳酸を複合することなく、通常の中空口金を用いて、ナイロン6を紡糸し延伸し、中空率が30%のナイロン6の糸を得た。そして、アルカリ溶液による芯成分の溶出処理は適用しないこと以外は、実施例1に従って織物を製造した。結果を表1に示す。
<比較例3>
芯部にポリ乳酸を15重量%複合し、ナイロン6を85重量%複合して紡糸したこと以外は、実施例1に従って織物を製造した。結果を表1に示す。
Figure 2006322079
表1から明らかなように、実施例1、2とも、真円度(S)が1.1レベルであり、中空部の歪みがほとんどなく、軽量感とドライ感に富むものであった。また、保温率が従来ナイロンのほぼ1.9倍と極めて高く、暖かいベージュの平織物が得られた。芯成分の溶出性は30〜45分で完全に溶出でき、製造効率のよい織物加工性であった。この織物を、ジャケットに縫製し着用した結果、従来の織物に比べて非常に軽く、且つ暖かい、快適な織物であった。
一方、比較例1、2は紡糸性が不良で且つ中空部の潰れがあり、平凡な織物であった。比較例3は中空部の潰れは少ないものの、軽量感と保温性が劣るものであった。
<実施例3>
ポリ乳酸が芯部に45重量%、ナイロン6が鞘部に55重量%となるように複合し、78デシテックス、24フィラメントの芯鞘複合フィラメント糸条(芯鞘:同心円の丸断面糸)としたこと以外は、実施例1に従って紡糸し、延伸した。ついで、得られた芯鞘複合フィラメント糸条に、1000回/mの撚りをかけ(撚り係数:8850)、65℃×30分でスチーミングし、撚り止めセットし撚糸を得た。得られた撚糸を、30ゲージ、28吋の編み機でウェル:52本/吋、コース:48本/吋の密度でスムースに編成した。次いで、アルカリ溶液で芯成分の溶出処理を、温度110℃の条件下で、30分間行い、完全に芯部が溶出していることを確認したこと以外は、実施例1に従って染色仕上げした。仕上がり品は撚り係数が8845であり、中空部の真円度(S)が1.13で、軽量感が極めてあり、ドライ感が○で、保温率が11.4%であり、非常に特徴あるスムース編み物であった。
芯成分の溶出時間は30分と短時間で処理でき、且つ撚糸、編成とも極めて円滑に効率よく編物を製造することができた。
<実施例4>
重量平均分子量18万のポリL乳酸(光学純度99%L乳酸、融点170℃)を芯成分とし、平均2次粒子径が0.35μmの酸化チタンを0.25重量%含有した硫酸相対粘度ηr:2.5のナイロン6を鞘成分として、それぞれ別々に溶融し、お互いの重量比が45/55となるように計量して紡糸口金に導き、ポリ乳酸が芯部、ナイロン6が鞘部となるように複合した後、24ヶの丸孔から紡糸温度258℃で溶融吐出し糸条を得た。得られた糸条を冷却風で冷却し、給油、交絡をおこなった後、非加熱ローラーで1550m/minで一旦引き取った。引き続き、延伸倍率3.0倍に延伸して、捲縮付与を行った後、カット長44mm、単繊維繊度1.7dtexの複合ステープル繊維を得た。得られたステープル繊維を用い通常の方法で76番手の粗糸を作り、製紡ドラフト21倍、撚り数16t/インチ、綿番手16s(長繊維換算で365デシテックス)の複合ステープル繊維からなる紡績糸を製造した。
得られた紡績糸に600回/mの撚りをかけ(撚り係数:11460)、70℃×30分でスチーミングし、撚り止めセットした。続いて、得られた撚糸をタテ糸およびヨコ糸に用いて、タテ密度82本/インチ、ヨコ密度60本/インチのツイル織物を製織した。続いて得られた織物を、98℃×20分、液流染色機でリラックス精練処理し、続いて180℃の温度で乾熱セットした。得られた織物を、実施例1に従って、芯成分を溶出し、酸性含金染料で濃紺に染色し、160℃の温度で乾熱セットし、仕上げた。
仕上がり品は撚り係数は11334であり、中空部の真円度(S)は1.11で、軽量感は極めてありで、ドライ感は○で、保温率は22.4%であり、従来織物には得られない、非常に特徴あるツイル織物であった。真成分の溶出時間が30分と短時間で処理でき、且つ紡績、撚糸、製織とも極めて円滑に、効率よく織物を製造することができた。
図1は、本発明の実施例1で得られた撚糸織物(ジョーゼット織物)中の撚糸の断面を示す図面に代わる走査型電子顕微鏡による500倍の拡大断面写真である。 図2は、本発明における中空繊維の中空部の真円度(S)を説明するための概略図である。

Claims (5)

  1. 中空率が20〜80%のポリアミド中空繊維からなる糸条を含む織編物であって、該糸条には撚り係数(K)が2000〜30000の撚りがかかっており、且つ該ポリアミド中空繊維の中空部の真円度(S)が1.0〜2.0であることを特徴とするポリアミド織編物。
  2. ポリアミド中空繊維を構成するポリアミドが、ナイロン6またはナイロン66である請求項1記載のポリアミド織編物。
  3. 芯成分がアルカリ易溶解性ポリエステルであり、鞘成分がポリアミドであって、該芯成分の比率が芯成分と鞘成分の合計に対して20〜80重量%である芯鞘複合繊維からなる糸条に、撚り係数(K)が2000〜30000の撚りをかけ、40〜110℃の温度で撚り止めセットした糸条を用いて織編物に形成後、該織編物を50〜120℃の温度でリラックス処理し、しかる後、アルカリ溶液を用いて80〜120℃の温度で加熱処理して該芯成分を溶出し、該芯鞘型複合繊維を中空化することを特徴とするポリアミド織編物の製造方法。
  4. 芯成分がポリ乳酸であることを特徴とする請求項3記載のポリアミド織編物の製造方法。
  5. 芯成分が、スルフォン化芳香族化合物ジカルボン酸が3.0〜10.0モル重量%の範囲で共重合されてなるアルカリ昜溶解性ポリエステルであることを特徴とする請求項3記載のポリアミド織編物の製造方法。
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