JP3753844B2 - ポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維及びそれを用いた布帛 - Google Patents

ポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維及びそれを用いた布帛 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維に関するものである。更に詳しくは、ナイロン繊維とポリエステル繊維の両方の特徴を兼ね備えた、低弾性率、高弾性回復性、熱セット性、耐光性に優れ、しかも制電性を兼ね備えたポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ナイロン繊維は、低弾性率、高弾性回復性、制電性、低温可染性を利用して広く衣料分野や資材分野に用いられている。
衣料分野においては、制電性があり弾性率が低いという特性を生かしてソフト感の要求が強い婦人用インナーやパンスト分野で、例えば、ポリウレタン繊維に代表されるストレッチ繊維と混用して幅広く用いられている。また、資材分野においては、ナイロン繊維は、弾性回復性や折り曲げや摩擦に対する耐性が優れていることから、カーペット、漁網、帆布等に用いられている。
【0003】
更に、後加工特性という製造上の問題に関しては、ナイロン繊維は低温可染性であるために、例えば、ナイロン繊維とセルロース繊維との混用においては、セルロース繊維の染色に耐熱性の低い反応染料を用い、酸性染料と組み合わせて、常圧一段一浴染色を行うことができる。また、ウール、絹、ポリウレタン繊維、アセテート繊維のような110℃を越える染色温度では熱劣化を受けやすい繊維との混用において、これらを痛めずに染色が可能であるという優れた加工特性を有する。
【0004】
このように、ナイロン繊維は、低弾性率、高弾性回復性、制電性、低温可染性という特徴を生かして、合繊の中で大きな市場を有しているにもかかわらず、次に示す重大な問題点も有する。すなわち、ナイロン繊維は熱セット性が悪く、例えば、ストレッチ繊維と混用したトリコットやラッセル等の編物は長期使用すると、いわゆる、笑い、という組織ずれを起こし易すいために、寸法安定性、形態安定性に乏しい布帛となる。また、耐光性が悪いために、長期間使用したり、日光に当てすぎると、黄変し易いという問題も存在する。
【0005】
これに対し、ポリエチレンテレフタレート繊維に代表されるポリエステル繊維は、熱セット性、耐候性には優れるものの、弾性率が高く風合いが堅くなったり、弾性回復性に乏しかったり、また高温での染色が必要であるといった、ナイロン繊維とは逆の性能を有する。また制電性がないためにポリエステル繊維単独で使用した場合や、制電性のあるセルロール繊維との混用布帛でもセルロース繊維の混用比率が低い時は、帯電を起こしてしまい、特に冬期に見られるパチパチという放電音や放電の際の痛み、身体へのまとわりつきなど不快感を与えてしまう。
【0006】
仮にナイロン繊維とポリエステル繊維の両方の特徴を兼ね備えた、低弾性率、高弾性回復性、制電性、低温可染性、熱セット性、耐光性に優れた繊維の製造が可能であれば、ナイロン繊維の上記問題は解決でき、ソフトな風合いを有する熱セット性、制電性に優れた布帛の製造が可能になるものの、これまでこのような繊維は知られていない。
分散染料に対しての染色性が良好で、弾性率が低く、弾性回復性に優れた繊維としては、例えば、特開昭52−5320号公報に開示されているポリトリメチレンテレフタレート繊維が挙げられる。ここに開示されている繊維は、ナイロン並の低弾性率で弾性回復性も優れているが、ポリエチレンテレフタレート繊維同様に制電性は有していない。
【0007】
また、制電性ポリエステル繊維としては、ブロックアルキレンエーテルアミドを制電剤として用いたポリエステル繊維(例えば、特公昭44−16178号公報、特公昭46−7213号公報、特開昭61−28016号公報)、ブロックアルキレンエーテルアミドやブロックポリアルキレンエーテルエステルをポリエステル中に分散させる技術(例えば、特公昭48−10380号公報、特開昭50−107206号公報)等が知られているが、いずれもナイロン並みに弾性率が低く、弾性回復率の優れた繊維を得ることはできない。また低温での染色性も十分ではない。
【0008】
また、ポリエステルエラストマーを得る目的でポリブチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレートにポリオキシアルキレングリコールを共重合させる方法がすでに知られている(例えば、特開昭52−6796号公報)。しかしながら、この発明では具体的な繊維化方法やトリメチレングリコールを用いたポリマーについては全く記載されていない。更に、エラストマーを目的としているために、ポリアルキレングリコールの分子量、共重合割合、存在形態が適切でなく制電性をほとんど示さないばかりか、繊維化しても強度、耐光堅牢性、ドライクリーニング堅牢性が低かったり、紡糸性が十分でなく収率が低下したり、細デニール化が難しいために用途が著しく限定されたりする。
【0009】
以上のように、従来の公知技術の範囲では、ナイロン繊維とポリエステル繊維の両方の特徴を兼ね備えた、低弾性率、高弾性回復性、制電性、低温可染性、熱セット性、耐光性に優れた繊維は知られていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ナイロン繊維とポリエステル繊維との両方の特徴を兼ね備えた、低弾性率、高弾性回復性、制電性、低温可染性、熱セット性、耐光性に優れた繊維を提供しようとする点にある。より具体的には、分散染料に対して110℃以下で染色可能であり、更に20%伸長時の弾性回復率が70%以上、弾性率が40g/d以下で、熱セット性が良好でかつ制電性を有した、ソフトな風合いの織編物を得るのに有用なポリエステル系複合繊維を提供しようとすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、テレフタル酸を主たる酸成分とし、トリメチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステル系重合体を用い、更に繊維構造形成段階で、制電剤を芯部に導入した繊維が、上記の課題を解決できる可能性を見出し、更に検討を続けた結果、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、
鞘部がテレフタル酸を酸成分およびトリメチレングリコールをグリコール成分とするポリトリメチレンテレフタレートからなり、芯部が制電剤の導入された繊維形成性ポリエステル重合体から構成され、かつ下記(A)〜(C)を満足することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維、
(A)該制電剤が、トリメチレンテレフタレートまたはエチレングリコールをグリコール成分とするポリエステルに第三成分として平均分子量4000〜20000のポリエチレングリコール10〜80重量%が共重合されたポリエステル共重合体であって、該制電剤の繊維全体に占める割合が0.1〜10重量%、
(B)該繊維の損失正接のピーク温度が、85℃から115℃、
(C)該繊維の弾性率Q(g/d)と弾性回復率R(%)の関係が、下記式(1)を満たす。
0.18≦Q/R≦0.35・・・(1)
ただし、20≦Q≦40 70≦R≦99
である、
【0013】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、鞘部を構成するポリマーが、テレフタル酸を酸成分とし、トリメチレングリコールをグリコール成分とするポリエステルであり、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、後に記すような他の成分が共重合されていてもよい。
また、芯部を構成するポリマーが、テレフタル酸を酸成分とし、トリメチレングリコールまたはエチレングリコールをグリコール成分とするポリエステルに第三成分として平均分子量が4000〜20000のポリエチレングリコールが10〜80重量%共重合されたポリエステル共重合体からなる制電剤、あるいはこの制電剤が分散した繊維形成能のあるポリエステル系重合体であり、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、後に記すような他の成分が共重合されていてもよい。この芯部が制電性を発現する上で極めて重要なものである。
【0014】
本発明に用いるトリメチレングリコールは、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,1−プロパンジオール、2,2−プロパンジオール、あるいは、これらの混合物のいずれでもよいが、弾性回復性、熱セット性、熱安定性の観点から1,3−プロパンジオールが特に好ましい。
【0015】
制電剤は、テレフタル酸を酸成分とし、トリメチレングリコールまたはエチレングリコールをグリコール成分とするポリエステルに第三成分として平均分子量が4000〜20000のポリエチレングリコールが10〜80重量%共重合されたポリエステル共重合体である。平均分子量が4000未満の場合には、制電効果が小さく、平均分子量が20000よりも大きい場合には制電剤の熱安定性が悪くなり、紡糸安定性が悪いものとなる。共重合比率としては、10〜80重量%であり、10重量%未満の場合には、制電効果が小さく、80重量%よりも大きい場合には制電剤の熱安定性が悪くなり、紡糸安定性が悪いものとなる。好ましい平均分子量、共重合比率は、制電効果、熱安定性の兼ね合いから決定され、平均分子量としては5000〜10000で、共重合比率が5〜35重量%が好ましい。
【0016】
また、制電性、紡糸性を高める観点から、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、3−ナトリウムスルホテレフタル酸等の金属スルホフタル酸を更に共重合することは極めて好ましく、その共重合比率としては、0.5〜3重量%、特に好ましくは、0.7〜1.5重量%である。また、同じ理由から、公知の非イオン性、イオン性の界面活性剤から構成された制電助剤、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等を0.1〜5重量%含有させてもよい。
【0017】
芯部は、本発明で規定された制電剤のみ、あるいは、該制電剤を繊維形成能のあるポリエステル中に分散させたものである。ここで、繊維形成能のあるポリエステルとしては、本発明の鞘部に用いるポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、あるいは、それらが主たる成分となる共重合ポリエステルである。
【0018】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、鞘部、芯部のいずれのポリマーにも、前記したように、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の酸成分や、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等グリコール成分、ε−カプロラクトン、4−ヒドロキシ安息香酸などを共重合されていてもよい。その共重合の割合は、10重量%以内が好ましく、さらに好ましくは5重量%以内の範囲である。ただし、この場合、堅牢性の低下が起こらない程度の共重合成分である必要がある。
【0019】
更に、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、制電助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤などを必要に応じて共重合、または混合されていてもよい。
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維を構成する鞘部、芯部のポリエステル系重合体、制電剤は、公知の方法を用いて重合することができる。たとえば制電剤は通常のポリトリメチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートの製造工程において、エステル交換反応または重縮合反応の際にポリエチレングリコールを所定の割合で反応系に添加し共重合することによって製造できる。共重合成分は、そのまま、あるいは、トリメチレングリコールまたはエチレングリコールなどの適当な溶媒に分散、溶解、または加熱処理してから添加することができる。
【0020】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、制電剤が芯部のみに存在し、しかも、制電剤が鞘部や芯部の繊維形成能のあるポリエステルと分子オーダーで交じり合うことなく、一定の大きさをもって独立に存在するために高い制電性を示す。更に、耐光性、耐加水分解性、耐溶剤性、洗濯堅牢性が低い制電剤が、繊維表面に出ることがないので、これらの欠点が顕在化することなく、高度の制電性を発現することができる。芯部が制電剤のみの場合に比べて、繊維形成能のあるポリエステル中に分散させる方が原糸コストが小さくなり、また、一般的に長期紡糸安定性がよくなり、紡糸収率が高くなるので、より好ましい。
【0021】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、制電剤が繊維形成能のあるポリエステル中に分散する形式については特に制限はないが、繊維断面図で表した場合、代表例として図1、図2が挙げられる。図1は並列型、木目型、放射型、多芯型、モザイク型、海島型、星雲型である。図1は繊維断面が丸形の場合を例示しているが、もちろん、三角、星形等の異形であってもよい。これらの構造の中で制電性を最も高める構造としては、制電剤が糸長方向にすじ状分散して存在するものがよい。すじの長さについても特に制限はないが、長ければ長い方が制電性発現にはよい。一般的には、0.01μm以上あればよい。更に、好ましくは、図2に示すように繊維形成性ポリエステルと制電剤が3層以上積層した構造を有し、かつ、糸長方向にすじ状分散しているものである。この場合に、最も少ない制電剤量で高い制電性を発現することが可能となる。
【0022】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、制電剤の割合が0.1〜10重量%である。0.1重量%未満の場合には十分な制電性が発現されず、10重量%を越える場合には紡糸性、紡糸収率が悪くなる。好ましくは、1〜7重量%、更に好ましくは、3〜7重量%である。
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、繊維全体に占める芯部の割合については、用いる制電剤の量を考慮して任意に決定できる。一般的には芯部の含有率は全繊維に対して、0.1〜90重量%である。芯部が制電剤のみからなる場合、芯部の占める割合は、0.1〜10重量%が好ましい。制電剤が繊維形成能のあるポリエステル中に分散する場合、制電剤の繊維中に占める割合が0.1〜10重量%になるように芯部の割合を決めればよい。この場合、芯部の占める割合は20〜90重量%が好ましい。
【0023】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、動的粘弾性測定から求められる損失正接のピーク温度(以下、Tmax、と略記する)が85〜115℃であることが必要である。これは、この範囲で本発明が求める分散染料110℃可染性と堅牢性が確保できるからである。Tmaxは、非晶部分の分子密度に対応するので、この値が小さくなるほど非晶部分の分子密度が小さくなるために、染料が入るための空隙部分が大きくなり染料が入りやすくなり、吸尽率が高くなる。Tmaxが85℃未満では低い温度で分子が動きやすくなるため、熱セットに代表される通常の後加工、アイロンがけ等に代表される通常の使用の段階で物性、風合いが変化しまうか、あるいは染色を行ったあとの布帛のドライクリーニング堅牢性が悪化してしまう。またTmaxが115℃を越えると、本発明の目的である染色性が低下し、110℃以下で分散染料にて濃色まで染色することができなくなってしまう。
【0024】
このようにTmaxは、繊維の構造因子であるために、同じ共重合組成を持つポリマーであっても、紡糸温度、紡糸速度、延伸倍率、熱処理温度等の紡糸条件によって異なる値を示すものである。これらの条件を変化させたときのTmaxの変化割合は、共重合組成ごとに異なるので、条件とTmaxとの関係を調べながら検討する必要がある。本発明の場合には、115℃を越えると染色性改善効果が小さく、110℃可染性は示さなくなる。しかし、低ければよいというわけではなく、非晶部分が粗になりすぎるために、染料が入りやすくなるなると同時に抜けやすくなる欠点を持つ。すなわち、堅牢性、特に、ドライクリーニング堅牢性、湿摩擦堅牢性、洗濯堅牢性等が低下する。また、熱セット時の硬化による風合いの悪化、寸法安定性の低下等の問題が出てくる。
【0025】
また、本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、弾性率Q(g/d)と、20%伸長後、1分間放置後の弾性回復率R(%)が式(1)を満足することが必要である。
0.18≦Q/R≦0.35 ・・・(1)
Q/R>0.35では弾性率が高すぎるために本発明の目的とするナイロン並みのソフトな風合いが得られないか、あるいは弾性回復性が不足し、一度応力が加わって変形した繊維は元に戻らなくなってしまい、形態安定性の悪い布帛しか得ることができなかったりする。逆に、Q/R<0.18となる領域は実質存在しないため、本発明においては、0.18をQ/Rの下限界としている。式(1)の範囲となりうる具体的な弾性率は、通常20〜40g/d、弾性回復率は70〜99%となる。
【0026】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、次に示すような方法で得ることができる。
紡糸の際の紡口パックからの押出に当たっては、繊維形成性ポリエステルポリマーと制電剤の2種のポリエステルを使うため、所望の断面構造を作るのに適した紡口パックを選択する必要があるが、これらは公知の技術を用いることができる。以下、紡口パックについて、概略図を以てその一例を示す。
【0027】
芯部が制電剤のみで構成される場合には、例えば図3のような紡口パックを用いればよい。図3において、繊維形成性ポリエステルポリマーをAから、制電剤をBから各々濾過部を通過した後、水平流路1を通ってキャピラリー2に導入し、紡口3より流出させてフィラメント群として吐出成形することによって、本発明が目的とする鞘部と芯部とからなる構造を得ることができる。また、Bから、制電剤と繊維形成性ポリエステルとの混合物を流すと、制電剤が糸長方向にすじ状分散した繊維を作ることも可能である。また、制電剤が糸長方向にすじ状分散して存在し、しかも、その断面構造において、繊維形成性ポリエステルと制電剤が3層以上積層した構造を有する繊維を作る場合は、例えば、図4のような紡口パックを用いればよい。すなわち、繊維形成能のあるポリエステルと制電剤を別々にC、Dから導入し、各々濾過部を通過した後、静的混練素子4によって混練する。この静的混練素子によって繊維形成能のあるポリエステルと制電剤は、3層以上の層に分離される。静的混練素子1で多層に積層された後、水平流路1を通ってキャピラリー2に入り、紡口3より流出されてフィラメント群として吐出成形される。
【0028】
紡糸に用いる静的混練素子は、例えば、ケニックス社製のスタティックミキサー、東レエンジニアリング(株)製のミキシングユニット、スルーザー社製のミキシングエレメント等、公知のものが用いられる。静的混練素子の数によって層の数は決まるが、通常2枚以上、好ましくは4〜16枚である。
【0029】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、紡口より押出した後に巻き取り、次いで延伸を行うことにより得ることができる。ここで巻き取った後に延伸を行うとは、紡糸を行った後にボビン等に巻き取り、この糸を別の装置を用いて延伸する、いわゆる通常法や、紡口より押し出されたポリマーが完全に冷却固化した後、一定の速度で回転している第一ロールに数回以上巻き付けられることにより、ロール前後での張力が全く伝わらないようにし、第一ロールと第一ロールの次に設置してある第二ロールとの間で延伸を行うような、紡糸−延撚工程を直結したいわゆる直延法を指す。
【0030】
本発明においてポリマーを溶融紡糸する際の紡糸温度は、240〜340℃が好ましく、さらに好ましくは245〜320℃、特に好ましくは250〜300℃の範囲が適当である。紡糸温度が240℃未満では、温度が低過ぎて安定した溶融状態になり難く、得られた繊維の斑が大きくなり、また満足し得る強度、伸度を示さなくなる。また、紡糸温度が340℃を越えると熱分解が激しくなり、得られた糸は着色し、また満足し得る強度、伸度を示さなくなる。
【0031】
糸の巻取速度については、特に制限はないが、通常3500m/min以下が好ましく、さらに好ましくは2500m/min以下、特に好ましくは2000m/min以下で巻取る。巻取速度が3500m/minを越えると、巻取る前に結晶化が進み過ぎ、延伸工程で延伸倍率を上げることができないために分子を配向させることができず、十分な糸強度や弾性回復率を得ることができなかったり、捲き締まりが起こり、ボビン等が巻取機より抜けなくなってしまったりする。
【0032】
延伸時の延伸倍率は、2〜4倍が好ましく、さらに好ましくは、2.2〜3.7倍、特に好ましくは、2.5〜3.5倍である。延伸倍率が2倍以下では、延伸により十分にポリマーを配向させることができず、得られた糸の弾性回復率は低いものとなってしまい、式(1)を満足することができない。また4倍以上では糸切れが激しく、安定して延伸を行うことができない。
【0033】
延伸の際の温度は、延伸ゾーンでは35〜75℃が好ましく、さらに好ましくは40〜70℃、特に好ましくは45℃〜65℃である。延伸ゾーンの温度が35℃未満では延伸の際に糸切れが多発し、連続して繊維を得ることができない。また80℃を越えると延伸ロールなどの加熱ゾーン対する繊維の滑り性が悪化するため単糸切れが多発し、毛羽だらけの糸になってしまう。また、ポリマー同士がすり抜けてしまうため十分な配向がかからなくなり弾性回復率が低下する。
【0034】
また、本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、延伸後の熱処理を行うことが好ましい。この熱処理は90〜200℃が好ましく、さらに好ましくは100〜190℃、特に好ましくは110〜180℃である。熱処理温度が90℃未満では繊維の結晶化が十分に起こらず、弾性回復性が悪化する。また、200℃より高い温度では繊維が熱処理ゾーンで切れてしまい延伸することができない。
【0035】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、110℃で染色した時の深色度であるK/Sが、20以上であることが好ましい。通常のポリエチレンテレフタレート系繊維を130℃で染色した時のK/Sが20程度なので、K/Sが20以上であれば、通常のポリエチレンテレフタレート繊維と同等の発色性が発現されたものと考えることができる。また染色性の評価に用いた染料は大きな分子構造を有しているので、この染料を用いて、高い染色性が得られるならば、どのような種類の分散染料を用いてもK/Sが20以上の高い染色性が確保できる。
【0036】
こうして染色された染色物が高い堅牢性を示すためには、ドライクリーニング堅牢性が3級以上であることが望ましい。本発明でのドライクリーニング堅牢性は、液汚染性を評価するものである。なお、堅牢性の評価項目としては、水堅牢性、洗濯堅牢性、昇華堅牢性、摩擦堅牢性等多岐に渡るが、本発明者らの検討によれば、ドライクリーニング堅牢性が3級以上あれば、本発明のポリエステル系複合繊維においては耐光堅牢性を除く、残りの堅牢性はすべて工業的に問題のないレベルであることがわかっている。従って、ドライクリーニング堅牢性は、本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維の染色堅牢性全体を示す指標となる。
【0037】
また、本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、アウター衣料に使用するためには、本発明の染色条件で3−4級以上であることが好ましく、さらに好ましくは4級以上の耐光堅牢性を示すことが望ましい。
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維において、達成されるべき必要な制電性は摩擦帯電圧と半減期から知ることができる。衣料用に用いる際に必要な摩擦帯電圧は、その値が小さければ小さい程よいが、一般的には2000V以下が好ましく、さらに好ましくは1500V以下である。また、半減期も、その値が小さければ小さい程よいが、一般的には20秒以下が好ましく、さらに好ましくは15秒以下である。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、言うまでもなく本発明は実施例などにより何ら限定されるものでない。尚、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度
この極限粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値である。
[η]=lim(C×(ηr−1))
c→0
定義式のηrは純度98%以上のo−クロロフェノールで溶解したポリエステルポリマーの希釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶剤自体の粘度で割った値であり、相対粘度と定義されているものである。またCは、上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
【0039】
(2)損失正接
オリエンテック(株)製レオバイブロンを用い、乾燥空気中、測定周波数110Hz、昇温速度5℃/分にて、各温度における損失正接(tanδ)、および動的弾性率を測定した。その結果から、損失正接−温度曲線を求め、この曲線上で損失正接のピーク温度であるTmax(℃)を求めた。昇温速度5℃/min、測定周波数110Hzで求めた。
【0040】
(3)染色性{評価吸尽率、深色度(K/S)}
試料はポリエステル系複合繊維の一口編地を用い、スコアロール400を2g/リットルで含む温水を用いて、70℃、20分間精練処理し、タンブラー乾燥機で乾燥させ、次いで、ピンテンターを用いて、180℃、30秒の熱セットを行ったものを使用した。吸尽率は、40℃から110℃に昇温後、更にそのまま1時間保持した後の吸尽率で評価した。染料は、カヤロンポリエステルブルー3RSF(日本化薬(株)製)を使用し、6%owf、浴比1:50で染色した。分散剤はニッカサンソルト7000(日華化学(株)製)を0.5g/リットル使用し、酢酸0.25mI /リットルと酢酸ナトリウム1g/リットルを加え、pHを5に調整した。
【0041】
吸尽率は、染料原液の吸光度A、染色後の染液の吸光度aを分光光度計から求め、以下の式に代入にて求めた。吸光度は当該染料の最大吸収波長である580nmでの値を採用した。
吸尽率=(A−a)/A×100 (%)
どの程度濃色に染まったかを表す深色度は、K/Sを用いて評価した。この値は、染色後のサンプル布の分光反射率Rを測定し、以下に示すクベルカ−ムンク(Kubelka−Munk)の式から求めた。この値が大きい程、深色効果が大きいこと、すなわち、よく発色されていることを示す。Rは、当該染料の最大吸収波長での値を採用した。
K/S=(1−R)2/2R
【0042】
(4)染色堅牢性
上記の(3)の方法で染色した一口編地500mgを用いて評価を行った。ドライクリーニング堅牢性(DC堅牢性)はJIS−L−0860に、耐光堅牢性はJIS−L−0842に、洗濯堅牢性はJIS−L−0844に、乾・湿摩擦堅牢性はJIS−L−0849に準じて行った。
【0043】
(5)弾性回復率
弾性回復性は、下記の方法で得られる弾性回復率として求めた。
繊維をチャック間距離20cmで引っ張り試験機に取り付け、伸長率20%まで引っ張り速度20cm/minで伸長し1分間放置する。この後、再び同じ速度で元の長さ(X )までもどし、この時応力がかかっている状態でのチャックの移動距離(残留伸び:X’)を読みとり、以下の式に従って求めた。
弾性回復率=(X−X’)×100/X
【0044】
(6)制電性(摩擦帯電圧、半減期)
摩擦帯電圧は、JIS−L−1094のB法、半減期は、JIS−L−1094のA法に従った。
【0045】
【実施例1】
1,3−プロパンジオール(以下、TMG、と略記する)1121重量部、ジメチルテレフタレート(以下、DMT、と略記する)1300重量部、エステル交換触媒としてチタンテトラブトキシド1.3重量部を用いて220℃にてエステル交換反応を行った。次いで重縮合触媒としてチタンテトラブトキシド1.3重量部を添加して260℃で減圧度0.5torrにて重縮合を行い繊維形成性ポリエステルポリマーを得た。得られたポリマーの極限粘度は0.62であった。
【0046】
一方、エチレングリコール(以下、EG、と略記する)915重量部、DMT1300重量部、エステル交換触媒として酢酸マンガン0.65重量部を用いて220℃にてエステル交換反応を行った。次いで平均分子量6000のポリエチレングリコール(以下、PEG6000、と略記する)321重量部、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.65重量部、安定剤としてトリメチルフォスファイト0.39重量部を添加して285℃で減圧度0.5torrにて重縮合を行い、PEG6000を25重量%共重合した制電剤として用いるポリマーを得た。
【0047】
得られた2種類のポリマーチップをそれぞれ130℃で100ml/分の窒素気流下、20時間乾燥させた。次いで図3で示された紡口パックを用い、Aから繊維形成性ポリエステルポリマーを、Bから制電剤をギアポンプを介して、流し、36個の一重配列の紡口を用い、紡糸速度1200m/minで紡糸して未延伸糸を作成した。次いで、得られた未延伸糸をホットロール50℃、ホットプレート140℃、延伸倍率3.0倍、延伸速度600m/minで延撚を行い、50デニール/36フィラメントの延伸糸を得た。得られた繊維の芯部の割合(制電剤の割合)は5重量%であった。また繊維の物性は、強度3.2g/d、伸度37%、弾性率23g/d、弾性回復率91%であった。また、Q/Rは0.25となり式(1)を満足することができた。
Q/R=0.25<0.35
【0048】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維の染色性は、通常法で紡糸されたポリエチレンテレフタレート繊維の青色の分散染料による130℃、60分の染色性と比較することで評価できる。染料としてカヤロンポリエステルブルー3RSF(日本化薬株製)を使用し、6%owf、浴比1:50で染色したところ、通常法によるポリエチレンテレフタレート繊維の130℃、60分染色における吸尽率は93%、得られた染色物のK/Sは21.4であった。本実施例で得られたポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維の110℃、60分における吸尽率93%、得られた染色物のK/Sは22.3であった。この結果は、本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維の110℃、60分における染色性が、通常法によるポリエチレンテレフタレート繊維の130℃、60分の染色性と同等であることを示すものである。
【0049】
染色後の一口編地のドライクリーニング堅牢性では染色物の退色も認められず、液汚染は4−5級であった。また、耐光堅牢性(3−4級)、乾・湿摩擦堅牢性(5級)、洗濯堅牢性(5級)についても良好であった。
また摩擦帯電圧は1400V、半減期は7秒と良好であった。
【0050】
【実施例2〜4】
平均分子量20000のポリエチレングリコール(以下、PEG20000、と略記する)を用いた他は実施例1と同様の方法で(実施例4)、また、制電剤として用いるポリマーの共重合組成、および全体に対して占める重量比(%)をいろいろ変化させて、重合、紡糸実験を行った(実施例2、3)。その結果を表1にまとめた。いずれのポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維についても式(1)を満足しており、また良好な染色性、堅牢制、制電性、諸物性を示した。
【0051】
【比較例1】
PEG6000の代わりにPEG1000を用いた以外は実施例1と同様にして重合、紡糸を行い繊維を得た。得られた繊維は摩擦帯電圧が3400Vであり、ポリエチレンテレフタレートの摩擦帯電圧よりは低いものの、実用的には制電性のない繊維であった。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0003753844
【0053】
【比較例2】
TMGとDMTからなるポリエステルにPEG6000を5重量%共重合ポリエステルを単独で実施例1と同様にして紡糸し断面が丸型均一構造の繊維を作成した。この繊維を110℃で染色したところ、吸尽率99%、K/S23.5であった。しかしドライクリーニング堅牢性が1〜2級、耐光堅牢性が2〜3級と堅牢性が非常に悪かった。
【0054】
【比較例3】
芯部の割合(制電剤の割合)を20%とした以外は実施例1と同様にして重合、紡糸を行った。しかし紡糸の際に糸切れ、毛羽の発生が起こり、良好な繊維を得ることができなかった。
【0055】
【実施例5】
実施例1と同一の繊維形成性ポリエステルポリマーと、実施例1の制電剤のうちPEG6000を30重量%とし、また5−ナトリウムスルフォンイソフタル酸を1重量%共重合した制電剤を、乾燥後にチップブレンドし、図3で示された紡口パックを用いて、Aから繊維形成性ポリマーを、Bから繊維形成性ポリマーと制電剤をブレンドしたものをできるだけ混練しないようにギアポンプを介して流し、36個の一重配列の紡口を用いて押出し、実施例1と同様にして紡糸し、未延伸糸を得た。この際ギアポンプの流量、チップブレンド比を調整して、制電剤の量が繊維に対して5重量%になるようにした。この未延伸糸をホットロール55℃、ホットプレート140℃、延伸倍率3.1倍、延伸速度600m/minで延撚を行い、50デニール/36フィラメントの延伸糸を得た。
【0056】
得られた繊維の断面を顕微鏡観察したところ、芯部は図1の海島型(制電剤が島となる)であった。また、繊維を糸長方向に切断し、切断面を観察したところ、制電剤は筋状に分散していた。得られた繊維を110℃で染色したところ、吸尽率は97%、K/Sは23.1であった。またドライクリーニング堅牢性、耐光堅牢性は共に4級であった。また摩擦帯電圧は1200V、半減期を6.3秒と良好であった。
【0057】
【実施例6】
図4で示された紡口パック用いて、Cから実施例1と同一の繊維形成性ポリエステルポリマーを、Dから実施例1のPEG6000を25重量%共重合した制電剤をギアポンプを用いて流し、36個の一重配列の紡口を用いて押出し、実施例1と同様の方法で紡糸し、未延伸糸を得た。なお静的混練素子は8枚用い、ギアポンプの量を調整して、制電剤の量が繊維に対して3重量%になるようにした。この未延伸糸をホットロール55℃、ホットプレート140℃、延伸倍率3.1倍、延伸速度600m/minで延撚を行い、50デニール/36フィラメントの延伸糸を得た。
【0058】
得られた繊維の断面を顕微鏡観察したところ、芯部は図2のように少なくとも6層は確認できる層状であった。また、繊維を糸長方向に切断し、切断面を観察したところ、制電剤は筋状に分散していた。得られた繊維を110℃で染色したところ、吸尽率は97%、K/Sは21.9であった。またドライクリーニング堅牢性、耐光堅牢性は共に4級であった。また摩擦帯電圧は1700V、半減期を17秒と良好であった。
実施例2と比較すると理解できるが、制電剤を層状かつ糸長方向に筋状分散させると、芯部が制電剤のみの場合と同等の制電性をより少ない制電剤量で達成できる。
【0059】
【比較例4】
ホットロールの温度を30℃とした以外は実施例1と同様な方法で重合、紡糸を行った。しかし延伸の際に糸切れが多発し、連続して繊維を得ることができなかった。
【0060】
【比較例5】
ホットロールの温度を80℃とした以外は実施例1と同様な方法で重合、紡糸を行った。しかし延伸の際にホットロールに糸が融着するため単糸切れが多発し、得られた繊維は毛羽だらけであった。
【0061】
【比較例6】
ホットプレートの温度を80℃とした以外は実施例1と同様な方法で重合、紡糸を行った。糸切れ、毛羽の発生等の問題なく繊維が得られた。しかし得られた繊維は弾性回復率が60%と低く、このためQ/Rは0.38となり式(1)を満足することはできなかった。
【0062】
【比較例7】
ホットプレートの温度を200℃とした以外は実施例1と同様な方法で重合、紡糸を行った。繊維はホットプレートのところで切れ、延伸を行うことができなかった。
【0063】
【比較例8】
延伸倍率を2.3倍、ホットプレートの温度を180℃とした以外は実施例1と同様な方法で重合、紡糸を行った。毛羽の発生等の問題なく繊維が得られた。しかし、得られた繊維は弾性回復率が57%と低く、このためQ/Rは0.51となり式(1)を満足することはできなかった。
【0064】
【発明の効果】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、分散染料に対して110℃以下で染色可能であり、20%伸長時の弾性回復性が70%以上で、弾性率が40g/d以下で、熱セット性が良好、かつ、高い制電性を有している繊維である。このため通常のポリエチレンテレフタレート系繊維の染色温度では染色が困難な繊維と混用でき、しかもソフトな風合いを発揮できる。更には、高い制電性を有しているので、本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維の混用率が高い場合でも静電気に基づくまとわりつき、放電等の問題点がでない。
【0065】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維は、上記の利点を活かし、混用率の低い用途から高い用途まで、セルロース繊維との混用が可能なほか、絹、ウールをいった天然繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維等の耐熱温度の低い繊維をの混用に特に有用である。勿論、単独使用でも高度の機能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維の芯部における制電剤の分散例を模式的に示した断面図。
【図2】 本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維、の芯部における制電剤の好ましい分散例を模式的に示した断面図。
【図3】 本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維を製造する際に用いる紡口パックの一例を模式的に示した断面図。
【図4】 本発明のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維で芯部において繊維形成性ポリエステルと制電剤とが3層以上積層したものを製造する際に用いる紡口パックの一例を模式的に示した断面図。
【符号の説明】
イ:鞘部
ロ:芯部
A〜D:ポリマーの入口
1:水平流路
2:キャピラリー
3:紡口
4:静的混練素子

Claims (4)

  1. 鞘部がテレフタル酸を酸成分およびトリメチレングリコールをグリコール成分とするポリトリメチレンテレフタレートからなり、芯部が制電剤の導入された繊維形成性ポリエステル共重合体から構成され、かつ下記(A)〜(C)を満足することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維。
    (A)該制電剤が、テレフタル酸およびトリメチレンテレフタレートまたはエチレングリコールをグリコール成分とするポリエステルに第三成分として平均分子量4000〜20000のポリエチレングリコール10〜80重量%が共重合されたポリエステル共重合体であって、該制電剤の繊維全体に占める割合が0.1〜10重量%、
    (B)該繊維の損失正接のピーク温度が、85℃から115℃、
    (C)該繊維の弾性率Q(g/d)と弾性回復率R(%)の関係が、下記式(1)を満たす。
    0.18≦Q/R≦0.35・・・(1)
    ただし、20≦Q≦40 70≦R≦99
  2. 制電剤が、糸長方向にすじ状分散して存在する請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維。
  3. 該鞘芯型複合繊維の断面において、芯部は繊維形成性ポリエステル系重合体と制電剤が3層以上積層した構造を有する請求項1記載のポリトリメチレンテレフタレート鞘芯型複合繊維。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の該鞘芯型複合繊維から構成される布帛であって、該布帛の摩擦帯電圧が2000V以下、かつ半減期が20秒以下であることを特徴とする布帛。
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