JP5735844B2 - 染色性に優れたカチオン可染ポリエステル繊維および繊維集合体 - Google Patents
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Description
すなわち、カチオン染料及び分散染料に対して濃色性を示すポリエステル樹脂からなり断面形状が三角断面又は葉状(3〜10葉)断面である繊維であって、該ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合体ポリエステルで、少なくとも3種以上の共重合成分からなり、該ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分のうち75モル%以上がテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、共重合成分として下記化学式(I)で表される化合物(A)を1.0モル%〜3.5モル%、および(B)としてシクロヘキンサジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を2.0モル%〜10モル%、(C)として脂肪族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体を2.0モル%〜8モル%を共重合してなることを特徴とするポリエステル繊維であり、好ましくは断面形状において、三角断面をはじめとして、葉状(3〜10葉)断面などで、異形度が0.05〜0.80の範囲である上記のポリエステル繊維である。
本発明で用いるポリエステル樹脂は、エチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステルであり、その繰り返し単位の75モル%以上がテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体(以下、テレフタル酸成分と称することもある)であり、少なくとも3種以上の共重合成分からなるポリエステル繊維である。
上記式(I)で表されるスルホイソフタル酸の金属塩(A)は1種類のみをポリエステル中に共重合させても、また2種以上を共重合させてもよい。
上記式(I)で表されるスルホイソフタル酸の金属塩(A)を共重合させることにより、従来のポリエステル繊維に比べて繊維内部構造に非晶部分を保有させることができ、その結果、カチオン染料及び分散染料に対して常圧染色が可能で、かつ堅牢度に優れたポリエステル繊維を得ることができる。
更に、混練設備を通過してから紡糸頭に至るまでの間の溶融温度についても、スルホイソフタル酸の金属塩(A)、およびシクロヘキンサジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体(B)、脂肪族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体(C)の共重合量によって異なるため一概に特定はできないが、溶融斑なく安定な状態で紡出させ、且つ安定な製糸性や品位を得るためには、ポリマーの融点から30〜60℃高い温度範囲で溶融押出するのが好ましく、20〜50℃高い温度範囲とすることがより好ましい。
そのうちでも、油剤の付着量を0.3〜2.0%とすることが高品質のポリエステル繊維を円滑に得ることができるので好ましく、0.3〜1.0%とすることがより好ましい。
共重合量は、該ポリエステル繊維を重トリフロロ酢酸溶媒中に5.0wt%/volの濃度で溶解し、50℃で500MHz 1H−NMR(日本電子製核磁気共鳴装置LA−500)装置を用いて測定した。
溶媒としてフェノール/テトラクロロエタン(体積比1/1)混合溶媒を用い30℃でウベローデ型粘度計(林製作所製HRK−3型)を用いて測定した。
得られた繊維の筒編地を精練した後、以下の条件で染色し、還元洗浄をした後、染着率を求めた。
(カチオン染色)
染料:Cathilon Red CD-FGLH 3.0%omf
助剤:Na2SO4 10.0%、CH3COONa 0.5%、CH3COOH(50%)
浴比1:50
染色温度×時間:90℃×40分
(分散染色)
染料:Dianix NavyBlue SPH conc5.0%omf
助剤:Disper TL:1.0cc/l、ULTRA MT−N2:1.0cc/l
浴比:1/50
染色温度×時間:95〜100℃×40分
(還元洗浄)
水酸化ナトリウム:1.0g/L
ハイドロサルファイトナトリウム:1.0g/L
アミラジンD:1.0g/L
浴比:1/50
還元洗浄温度×時間:80℃×20分
(染着率)
染色前の原液及び染色後の残液をそれぞれアセトン水(アセトン/水=1/1混合溶液)で任意の同一倍率に希釈し、各々の吸光度を測定した後に、以下に示す式から染着率を求めた。
吸光度測定器:分光光度計 HITACHI
HITACHI Model 100−40
Spectrophotometer
染着率=(A−B)/A×100(%)
ここで、A及びBはそれぞれ以下を示す。
A:原液(アセトン水希釈溶液)吸光度
B:染色残液(アセトン水希釈溶液)吸光度
染着濃度は、染色後サンプル編地の最大吸収波長における反射率Rを測定し、以下に示すKubelka−Munkの式から求めた。
分光反射率測定器:分光光度計 HITACHI
C−2000S Color Analyzer
K/S=(1−R)2 /2R
JIS L−0844の測定方法に準拠して測定した。
JIS L−0842の測定方法に準拠して測定した。
JIS L−1013の測定方法に準拠して測定した。
以下の基準に従って紡糸性評価を行った。
◎:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が何ら発生せず、しかも得られたポリエステル繊維には毛羽・ループが全く発生していないなど、紡糸性が極めて良好である
○:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が1回以下の頻度で発生し、得られたポリエステル繊維に毛羽・ループが全く発生していないか、あるいは僅かに発生したものの、紡糸性がほぼ良好である
△:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が3回まで発生し、紡糸性が不良である
×:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が3回よりも多く発生し、紡糸性が極めて不良である
ヤーンを3本引き揃え2500T/Mの下撚をかけ、それを3本合糸し、S400T/Mの上撚をかけた撚糸をミクロトームで切った繊維断面の光学顕微鏡写真を撮影した。該写真を拡大し、繊維と空隙部に切り分け、その重量比から下記式により空隙率を求めた。ただし、中空繊維等の中空部を有する繊維については中空部も空隙率として算術した。
空隙率(%)=〔(空隙部重量)/(繊維重量部+空隙部重量)〕×100
繊維の異形度繊維断面の光学顕微鏡写真を撮影し、下記式により測定、算出した。
異形度=R/L
(ただし、繊維断面においてLは隣り合う先端部A、Bを結ぶ線の長さABであり、Rは該隣り合う先端部の中間に位置する窪みDとDから線ABへの垂線の交点をCとした時の長さCDを示す。)
染色加工後の異形度は前記に記載の染色条件で染色処理し、還元洗浄後に異形度を測定した。染色加工前は未染色の異形度を測定した。
異形度保持率(%)=染色加工後の異形度/染色加工前の異形度×100
経密度38本/cm、緯密度28本/cmのタフタ織物を、日立分光光度計U−3400にて測定し、得られた反射曲線により波長500nmにおける反射率を求めた。
単繊度2.2dtexの多葉型ポリエステル系繊維を経糸および緯糸に用い、経糸38本/cm、緯糸28本/cmを作製し、日立分光光度計(U−3400型)を用いて、この編地のL* を測定し、下記式により算出した。
不透明度(%)=(L* B /L* W )×100
L* B :黒素地に布帛(繊維集合体)を重ねた時のL* 値
L* W :白素地に布帛(繊維集合体)を重ねた時のL* 値
黒素地は黒色プラスチック板(L*値=12)、白素地は標準白板(L*値=100)を示す。
ジカルボン酸成分のうち88.3モル%がテレフタル酸であり、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1.7モル%、且つ1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を5.0モル%、アジピン酸を5.0モル%それぞれ含んだ全カルボン酸成分とエチレングリコール、及び所定の添加剤とでエステル交換反応及び重縮合反応を行い、本発明のポリエステル樹脂重合物を得た。この原料を基に、孔数24個で断面形状が図1(ロ)のような4葉型の口金を用いて紡糸温度260℃、単孔吐出量=1.57g/分で紡出し、温度25℃、湿度60%の冷却風を0.5m/秒の速度で紡出糸条に吹付け糸条を60℃以下にした後、紡糸口金下方1.2mの位置に設置した長さ1.0m、入口ガイド系8mm、出口ガイド系10mm、内径30mmφチューブヒーター(内温185℃)に導入してチューブヒーター内で延伸した後、チューブヒーターから出てきた糸条にオイリングノズルで給油し2個の引き取りローラーを介して3500m/分の速度で捲取り、84T/24fの4葉型ポリエステルフィラメントを得た。その時の製糸化条件と紡糸性、及び得られた繊維の結果を表1、2に示した。本発明の製造方法で得られたポリエステル繊維の染着率は、90℃で93%、95℃で96%、K/S=29と良好な常圧可染性を示した。また、異形度、延伸糸の集合体の空隙率、洗濯堅牢度、耐光堅牢度について何ら問題のない品質であった。
ポリエステル樹脂のカチオン可染成分と1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸、またイソフタル酸の共重合成分および共重合量と繊維断面を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂および繊維を製造した。
具体的には表1に示す熱特性を有する共重合物を製造し、この重合物を、繊維断面を変更するための口金を用いた以外は実施例1と同様の手法で紡糸して84T/24fのポリエステルフィラメントを得た。得られた繊維の物性を表1、2に示した。
ポリエステル樹脂のカチオン可染成分と1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸の共重合量と繊維断面を変更した以外は実施例1と同様に実施した。表1に示す熱特性を有する共重合物を得て、この重合物を、繊維断面を変更するための口金を用いた以外は実施例1と同様の手法で紡糸して84T/24fのポリエステルフィラメントを得た。得られた繊維の物性を表1、2に示した。
染着濃度が不十分であり、常圧可染性を示さない結果となった。
能で、直接紡糸延伸手法又はその他の一般的な溶融紡糸手法においても安定した品質及び
工程性が得られるポリエステル繊維を提供することができる。
具体的には、本発明の常圧可染ポリエステル繊維は、従来のポリエステル繊維と何ら遜
色のない品質を有しているため、一般衣料全般、例えば紳士婦人向けフォーマル或いはカ
ジュアルファッション衣料用途、スポーツ用途、ユニフォーム用途など、多岐に渡って有
効に利用することができる。また、資材用途全般、例えば自動車や航空機などの内装素材
用途、靴や鞄などの生活資材用途、カーテンやカーペットなどの産業資材用途などにも有
効に利用することができる。
Claims (5)
- カチオン染料及び分散染料に対して濃色性を示すポリエステル樹脂からなり断面形状が異形断面である繊維であって、該ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合体ポリエステルで、少なくとも3種以上の共重合成分からなり、該ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分のうち75モル%以上がテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、共重合成分として下記化合物(A)を1.0モル%〜3.5モル%、さらに(B)としてシクロヘキサンジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を2.0モル%〜10モル%、(C)として脂肪族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を2.0モル%〜8モル%、前記テレフタル酸成分、前記化合物(A)、前記シクロヘキサンジカルボン酸成分(B)、及び前記脂肪族カルボン酸成分(C)以外のジカルボン酸成分の共重合量が合計10.0モル%以下であり、イソフタル酸およびそのエステル形成性誘導体がジカルボン酸成分に対して10モル%以下を共重合してなり、
前記ジカルボン酸成分の共重合量が合計100モル%であることを特徴とするポリエステル繊維。
- 断面形状において、三角断面又は葉状断面である請求項1に記載のポリエステル繊維。
- 断面形状において、異形度が0.05〜0.80の範囲である請求項1又は請求項2に記載のポリエステル繊維。
- 葉状断面において、葉数が3〜10である請求項2または3記載のポリエステル繊維。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の異形断面ポリエステル繊維からなる繊維集合体であって、波長500nmにおける反射率Rが85%以上であり、かつ空隙率が20〜60%であることを特徴とする繊維集合体。
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