JP4021535B2 - ポリエステル中空繊維及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高次加工工程や着用時の特性変化の少ないポリエステル中空繊維に関する。更に詳しくは、衣料用素材、特にスポーツ衣料用素材として従来以上に中空部の潰れが少なく、光沢が良好で軽量で保温性に優れ、しかも易染性、ソフトさに優れた高品位のポリエステル中空繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル繊維は機械的性質、化学的性質、イージーケア性、光沢性等の優れた特性から一般衣料用として広く利用されている。特に最近では、スポーツ衣料用素材として注目され、あらゆるスポーツ分野で利用されている。従来からニーズの一つとして衣料の軽量化が望まれており、特にスポーツ衣料では運動のし易さの点から軽量化の要望が強く、冬物用では保温性を保持したものが望まれている。衣料の軽量化をはかる手段としては、糸条の嵩高性を大きくしたり、織編物の組織を工夫することである程度までは可能である。しかし更に軽量化を計る手段としては繊維自体を軽量化する必要がある。その手段として見掛け上軽量化された中空繊維が用いられている。中空繊維については、古くから知られており、例えば特公昭42−2928号公報には中空率50%以下のポリエチレンテレフタレート中空繊維の製法が開示されている。しかしながら、中空繊維はその製造工程や高次加工行程あるいは製品の使用(着用)時に中空部の潰れが起こり易く、中空繊維としての有用な特性が損なわれやすいという欠点がある。特に中空率の高い中空繊維ほどその傾向は大きい。特にスポーツ衣料は使用時の扱いが他の衣料に比較し激しいので中空部の潰れが起こり易い。中空部が潰れると当然のことながら中空率が低下し、製品の軽量性や保温性が低下するばかりか、筋状に見える光沢ムラが発生する。
【0003】
中空部の潰れを改善する手段として、特開平6−228815号公報に、三角形状の中空部を有したポリエチレンテレフタレート中空繊維が提案されている。しかし、本発明者らの検討によると、中空部を三角形状にすると、ある程度の耐潰れ性は得られるものの、ポリエチレンテレフタレート繊維は変形させたときの降伏点の伸度が小さいため、ある一定以上の角度で折れ曲がった場合は潰れてしまい、耐潰れ性を十分に改良することはできない。また中空繊維とした場合、同じデニールの中実繊維に比べ繊維の外径が太くなり、ソフトな風合を得ることができない。
【0004】
またスポーツ衣料では、動き易く、ソフトな風合も望まれている。この点においても前記のポリエチレンテレフタレート中空繊維は、中実繊維に比べ、同じ強度の繊維を得ようとした場合(すなわち同じデニールの繊維)、繊維の外径が太くなってしまい、得られる衣料はごわごわな風合のものとなってしまう。ソフトな風合を得るために繊維径を細くした場合は中空率を高くすることが著しく困難となってしまう。
ソフトな風合の繊維としては、特開昭52−5320号公報に開示されているポリトリメチレンテレフタレート繊維が挙げられる。ここで開示されている繊維は弾性率が低いために、この繊維から得られる衣料などの布帛は非常にソフトな風合となる。しかしこの繊維は通常ポリエチレンテレフタレートで行われているような紡糸方法を用いても、中空率の高い繊維を得ることは困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来のポリエステル中空繊維の欠点を改良し、軽量性、保温性、易染性に優れ、しかも潰れにくくソフトな風合を有した、スポーツ分野などに有用なポリエステル繊維、及びその安定な製造法に関するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記欠点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のポリエステルポリマーからなる特定の中空繊維とすることにより、軽量性、保温性、易染性、鮮明性に優れ、しかも潰れにくく、ソフトな風合を有した、スポーツ分野などに有用なポリエステル繊維を提供するに至った。
すなわち本発明の第1は、酸性分としてテレフタル酸を用い、グリコール成分としてトリメチレングリコールを80モル%以上含有したポリエステルポリマーからなり、中空率が10〜60%、密度が1.32〜1.45g/cm3 、複屈折率(Δn)が0.05〜0.08であることを特徴とするポリエステル中空繊維である。
【0007】
本発明の第2は、酸性分としてテレフタル酸を用い、グリコール成分としてトリメチレングリコールを80モル%以上含有するポリエステルポリマーを溶融紡糸するに際し、極限粘度〔η〕が0.4〜1.4のポリエステルポリマーを、溶融紡糸温度250〜280℃で、紡口のC型吐出孔の径φ A とC型吐出孔の厚みWの比「φ A /W 」が5〜20の範囲であり、開口部の開口角を示すθが45〜90°であるC型吐出孔が全て同一方向に向けて配置してある紡口から押出し、開口部に向けて冷却風を吹き付け、紡口直下1cmの雰囲気温度を100℃以下に調整して吐出糸条を急冷し、1000〜5000m/分の速度で中空未延伸糸を巻き取った後、当該中空未延伸糸を延伸温度45〜60℃で破断延伸倍率の70〜99%で延伸し、90〜200℃の温度で熱処理することを特徴とする第1に記載のポリエステル中空繊維の製造法、である。
本発明の中空繊維は、グリコール成分としてトリメチレングリコールを80モル%以上含有したポリエステルポリマーからなることが必要である。通常中空繊維は、繊維の内部表面にて光が反射するため鮮明性が低下する傾向にある。しかし本発明に用いるポリマーは屈折率が高く、このため中空繊維にしても鮮明性が低下しにくい。
【0008】
本発明において、トリメチレングリコールとしては、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,1−プロパンジオール、2,2−プロパンジオールあるいは、これらの混合物の中から選ばれるが、安定性の観点から1,3−プロパンジオールが特に好ましい。
トリメチレングリコールの含有比率は、グリコール成分の80モル%以上であることが必要である。80モル%未満では、本発明の目的である耐潰れ性や、発色性、ソフトさが達成できないだけでなく、易染性や鮮明性などが低下し、本発明の目的が達成されない。好ましくは、90モル%以上である。
【0009】
本発明に用いるポリトリメチレンテレフタレートには、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、酸成分としてイソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸などや、グリコール成分としてエチレングリコール、1,4ーブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリオキシアルキレングリコールなどのグリコール成分が共重合されていても良い。また、必要に応じて各種の添加剤、例えば艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤などを共重合または混合しても良い。
本発明に用いるポリマーは、公知のポリエステル重合方法により重合することができる。
【0010】
中空繊維の耐潰れ性は、ポリマー部分の厚さ、ポリマーの変形しにくさ、およびポリマーが変形したときの回復し易さで決まると考えられる。スポーツ衣料に適した軽量性、保温性、ソフトさ、潰れ難さを有した繊維とするためには、適度な中空率とするとともに、適度な繊度とすることが好ましい。このことにより中空繊維のポリマー部分を適度な厚さとすることができる。本発明の中空繊維は中空率が10〜60%であることが必要である。中空率が60%を超えるとポリマー部分が薄くなり、本発明の目的である、耐潰れ性が発揮できなくなる。一方、中空率が10%未満では本発明の目的である、軽量性、保温性などの特徴が発揮できない。軽量性、保温性、潰れ難さの点から好ましい中空率は15〜50%、更に好ましくは20〜40%の範囲である。
【0011】
また、本発明の中空繊維の繊度は単糸繊度が0.1〜10デニールとすることが好ましい。繊度が0.1デニール未満の中空繊維では本発明の中空率の範囲とすることが困難となる。また、繊度が10デニールを越えると中空率を高くすると潰れやすくなり、潰れにくくするために中空率を低くした繊維では繊維が曲がりにくくなるため、得られる衣料用布帛はごわごわな物となり、ソフトな風合とならない。単糸繊度は好ましくは0.2〜5デニールの範囲が良く、更に好ましくは0.5〜3デニールの範囲である。
【0012】
中空率が高く、ソフトな風合の繊維では、ポリマーが変形した時の回復し易さを高める必要がある。このためには本発明のポリマーを用いる必要があるとともに、結晶化度を高め、分子の繊維軸方向の配向度を高める必要がある。結晶化度を高め配向度を高めることにより、変形した繊維が元の形に戻る領域である降伏点伸度およびその時の応力(降伏点応力)を高めることができ、中空繊維を潰れにくくすることができる。
【0013】
また、本発明の繊維では、密度が1.32〜1.45g/cm3 であることが重要である。密度が1.32g/cm3 未満では繊維の結晶化度が低く、潰れ易い繊維しか得られない。本発明のポリマーの結晶密度が1.45g/cm3 以下であることより、繊維の密度は実質上1.45g/cm3 を越えることはない。繊維の密度は好ましくは1.35〜1.4g/cm3 の範囲である。
【0014】
本発明の繊維では、繊維の配向度の指標である複屈折率(Δn)が0.05〜0.08であることも必要である。Δnが0.05未満では繊維の配向が十分でないために変形の降伏点伸度が低くなってしまい、潰れやすい繊維しか得ることができなくなる。Δnが0.08を越えるものは配向度が高すぎるため、延伸時や後加工時に毛羽の発生や糸切れが多発してしまう。Δnは好ましくは0.055〜0.075、更に好ましくは0.06〜0.07の範囲である。
【0015】
本発明の第2の発明は、第1の発明の中空繊維を安定して提供するための製造法であり、酸成分としてテレフタル酸を用い、グリコール成分としてトリメチレングリコールを80モル%以上含有するポリエステルポリマーを溶融紡糸するに際し、極限粘度[η]が0.4〜1.4のポリエステルポリマーを用い、紡口直下1cmの雰囲気温度を100℃以下にして紡糸することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート中空繊維の製造法である。ここで、極限粘度[η]とは、純度98%以上のo−クロロフェノールで溶解したポリトリメチレンテレフタレートの希釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶剤自体の粘度で割った値であり、相対粘度と定義されているものである。
【0016】
本発明の製造法において、ポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度[η]は0.4〜1.4であることが必要である。極限粘度[η]が1.4を超えると、いかに紡糸温度を高くしても溶融粘度が高くなり通常の紡糸機での押出が困難となるだけではなく、押出したポリマーの弾性が高いために縮んでしまい、中空率10%以上ので均一な太さの中空繊維を安定して製造することができなくなってしまう。極限粘度が0.4未満だと、中空繊維の強度など機械的物性が低下するとともに、中空部の潰れにくさが劣った繊維しか得られなくなってしまう。好ましい極限粘度[η]は、0.5〜0.9の範囲である。
【0017】
本発明の中空繊維の溶融紡糸温度は、240℃〜320℃、好ましくは245℃〜300℃、更に好ましくは250℃〜280℃の範囲である。240℃未満では、溶融粘度が高くなり、押出が困難となる。また320℃を越えるとポリマーの分解が激しくなり、着色や強度の著しい低下などが起こってしまう。
本発明の製造法では、紡口直下1cmの雰囲気温度を100℃以下に急冷して紡糸することが重要である。急冷することにより、ポリマーの固化を早め中空率を10%以上にできるだけでなく、急冷により押出後の結晶化を抑制できるために、後に行う延伸行程での延伸倍率を高めて本発明の繊維の高い密度、配向度を達成することが可能になる。ポリマーの固化、結晶化の抑制のためには、紡口直下1cmの雰囲気温度が低いほど良いが、紡糸の安定性、糸むらなどを考えた場合30℃〜90℃が好ましい。紡口直下1cmの雰囲気温度が100℃を越えると、中空率が10%以上で、しかも耐潰れ性に優れた中空繊維を安定して得ることが困難となる。
【0018】
紡口直下1cmの雰囲気温度を100℃以下に保つ方法としては、例えば、紡口の吐出面を除く下面を断熱性の優れた断熱板で覆う方法や、紡口直下へ冷却風を直接吹き付ける方法などが採用される。より好ましくは、これらを組み合わせると良い。
紡口の形状は特に規定されるものではないが、三角、田型、四角等が挙げられるが、図1の(a)に示す様なC型吐出孔を有した紡口を用いることが好ましい。その場合、C型の開口部の大きさを示すθは30〜120°、好ましくは45〜90°が得られる中空繊維の形態安定性の点で好ましい。
【0019】
また、紡口の径φA と厚みWの比「φA /W」で中空率が決まってくる。φA /Wは5〜20の範囲が好ましい。
C型吐出孔の紡口を用いる場合は、吐出孔の開口部を全て一つの方向に向けて配置し、開口部に向けて冷却風を吹き付けることが望ましい。開口部に向けて冷却風を吹き付けることにより、均一な中空繊維を得ることが容易になる。もちろんこれ以外にも、2分割以上に分割された同心円状の吐出孔を有した紡口などを用いてもよい。
【0020】
紡口から吐出され、紡口直下で急冷された繊維束は引き取られて未延伸糸として巻き取られ、従来公知の方法で延伸される。
引き取りに際しては、繊維束を集束し、公知の給油や予備交絡を付与する。
未延伸糸の巻き取り速度は、1000〜5000m/分の速度が好ましく、特に好ましくは強度発現の観点から1500〜3500m/min範囲である。紡糸速度が5000m/分を越えると、紡糸過程で分子の結晶化が進みすぎて、後に続く延伸で十分な配向延伸が困難になるとともに、糸径むらが大きくなってしまう。また、紡糸速度が1000m/min未満では未延伸糸の配向度があまり高くならないため、後に続く延伸で分子を十分に配向することが困難となり、本発明の目的である、潰れ難い中空繊維を得ることが困難となってしまう。
【0021】
本発明の中空繊維の延伸は、未延伸糸を一旦巻き取った後延伸しても良く、または一旦巻き取ることなく2つ以上のゴデットロール間で連続して延伸しても良い。延伸倍率は、通常1.5〜3.5倍が好ましい。延伸倍率は未延伸糸の巻取速度、冷却温度、糸種によって異なるが、破断延伸倍率の70〜99%で延伸することが好ましい。
【0022】
延伸温度は、30℃〜80℃、好ましくは35℃〜70℃、更に好ましくは45℃〜60℃の範囲が良い。延伸温度が35℃未満では、延伸の最に糸切れが多発し連続した延伸ができない。延伸温度が80℃を越えると、延伸ロールなどでの滑り性が悪化し単糸切れが多発し安定な延伸が困難となる。延伸した糸は熱処理を行う必要がある。延伸後の熱処理は、90℃〜200℃、好ましくは100℃〜190℃で行う必要がある。熱処理温度が90℃未満では繊維の結晶化度を十分に高くすることができず、本発明の目的である優れた耐潰れ性の繊維を得ることが困難となってしまう。熱処理温度が200℃以上では繊維の破断が起こり易くなり連続して熱処理を行うことが困難となってしまう。
【0023】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート中空繊維は、単独あるいは他の繊維と混用して布帛として使用することも可能である。混用する他の繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、セルロース、ウール、綿、絹、アセテート、ストレッチ繊維などのいずれか、もしくはこれらの混用であっても良い。混用の方法としては、経糸または緯糸に用いる交織織物、リバーシブル織物などの織物、トリコット、ラッセルなどの編物などがあげられる。その他、交撚、合糸、交絡を施しても良い。特に、本発明のポリエステル中空繊維はセルロース繊維との混用で優れた性能を発揮する。セルロース繊維として、綿、麻、レーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジックなどと混用し、100℃以下で染色しても良好な発色性が得られるのが特徴である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度[η]
極限粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値である。
【式1】
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義式のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノールで溶解したポリトリメチレンテレフタレートの希釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶剤自体の粘度で割った値であり、相対粘度と定義されているものである。また、Cは上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
【0025】
(2)複屈折率(Δn)
光学顕微鏡とコンペンセーターを用いて、繊維の表面に観察される偏光のリターデーションから求めた。
(3)密度
四塩化炭素およびトルエンにより作成した密度勾配管を用いて測定した。
【0026】
(4)強度、伸度
オリエンテック(株)製テンシロンを用い、糸長20cm、引っ張り速度20cm/minの条件で測定した。
(5)中空率、耐潰れ性
繊維の断面写真から次式により算出した。
中空率(%)=(中空部の断面積/繊維の断面積)×100
また、中空繊維の潰れは、筒編みに編成した後の糸の中空率で評価した。
【0027】
(6)染色性{吸尽率、深色度(K/S)}
試料は、ポリエステル系複合繊維の一口編地を用い、スコアロール400を2g/リットルで含む温水を用いて、70℃、20分間精練処理し、タンブラー乾燥機で乾燥させ、次いで、ピンテンターを用いて、180℃、30秒の熱セットを行ったものを使用した。吸尽率は、40℃から110℃に昇温後、更にそのまま1時間保持した後の吸尽率で評価した。染料は、カヤロンポリエステルブルー3RSF(日本化薬(株)製)を使用し、6%owf、浴比1:50で染色した。分散剤はニッカサンソルト7000(日華化学(株)製)を0.5g/リットル使用し、酢酸0.25ml/リットルと酢酸ナトリウム1g/リットルを加え、pHを5に調整した。
【0028】
どの程度濃色に染まったかを表す深色度は、K/Sを用いて評価した。この値は、染色後のサンプル布の分光反射率Rを測定し、次に示すクベルカ−ムンク(Kubelka−Munk)の式から求めた。
K/S=(1−R)2 /2R
この値が大きい程、深色効果が大きいこと、すなわち、よく発色されていることを示す。Rは、当該染料の最大吸収波長での値を採用した。
【0029】
(実施例1)
1,3ープロパンジオールとジメチルテレフタレートとを定法により重合し極限粘度[η]0.7のポリトリメチレンテレフタレートポリマーを得た。
このポリトリメチレンテレフタレートポリマーを紡糸温度270℃にて、図1の(a)に示すC型の孔(W=0.08、φA =1.9、θ=60°)36ホールが、C型の開口部が全て同一方向になるように配列してある紡口(図1の(b))を用い、吐出量23.1g/分で押し出した。紡口の吐出面以外の周辺を厚さ16mmの断熱板で遮蔽した紡糸部から紡糸し、紡口直下に冷却風をC型孔の開口部に向けて吹き付けながら吐出糸条を冷却した。この際、紡口面に吹き付ける冷却風の風速を0.4m/秒として、紡口直下1cmの雰囲気温度を70℃に調整した。冷却した中空未延伸糸は集束ガイドにより一本に集束し、1600m/分で巻き取り未延伸糸を得た。紡糸性は、約24時間糸切れもなく極めて安定していた。
【0030】
得られた未延伸糸を、ホットロール55℃、ホットプレート140℃、延伸倍率2.6倍、延伸速度800m/分で延伸を行い、50.5デニール/36フィラメントの延伸糸を得た。中空繊維は中空率32%、強度4.2g/d、伸度32%であった。この時の中空繊維の密度は1.353g/cm3 、Δnは0.066であった。この中空繊維を筒編みした後の中空率は31%であり、非常に潰れにくい繊維であった。また得られた筒編み地は非常にソフトな風合を有していた。
本実施例の極細マルチフイラメントの100℃に於ける染料吸尽率は、86%、K/Sは21.5であった。この結果は、同一単繊維繊度のポリエチレンテレフタレートからなるマルチフイラメントを130℃、60分間染色した場合の染料吸尽率が91%、K/Sが21であることから、極めて易染性で発色性が良いといえる。
【0031】
(実施例2〜5、比較例1〜4)
紡糸条件(巻取速度、延伸倍率、熱処理温度)を変えて、実施例1と同様な方法で中空繊維を得た。結果を第一表に示す。本発明の範囲の中空繊維は良好な耐潰れ性、鮮明性、ソフトさを有していた。一方本発明の範囲から外れた中空繊維は潰れ性など満足できるものが得られなかった。
【0032】
【表1】
【0033】
(比較例5)
ホットロールの温度を30℃とした以外は実施例1と同様な方法で重合・紡糸を行った。延伸の際には糸切れが多発し、連続して繊維を得ることができなかった。
(比較例6)
ホットロールの温度を85℃とした以外は実施例1と同様な方法で重合・紡糸を行った。延伸の際にホットロールに糸が融着するため単糸切れが多発し、得られた繊維は毛羽だらけであった。
【0034】
(比較例7)
ホットプレートの温度を210℃とした以外は実施例1と同様な方法で重合・紡糸を行った。繊維はホットプレートのところで切れ、延伸を行うことができなかった。
(比較例8)
エチレングリコールとジメチルテレフタレートから、定法により重合し極限粘度[η]0.7のポリエチレンテレフタレートポリマーを得た。このポリマーを用いて実施例1と同様の方法で紡糸、延伸を行い中空繊維を得た。しかしこの中空繊維は筒編みにより簡単に潰れてしまった。
【0035】
【発明の効果】
本発明により得られるポリエステル中空繊維は、従来の中空繊維の欠点を改良し、軽量性、保温性、易染性に優れ、しかも後加工工程や、衣類着用時に潰れにくく、ソフトな風合を有した、スポーツ分野などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の中空繊維を製造する際のC型吐出孔の一例の平面図。
(b)は、本発明の中空繊維を製造する際のC型吐出孔の一例の配置図。
【符号の説明】
W :C型吐出孔の厚み
φA :C型吐出孔の径
θ :C型吐出孔の開口部の開口角(°)
Claims (2)
- 酸性分としてテレフタル酸を用い、グリコール成分としてトリメチレングリコールを80モル%以上含有するポリエステルポリマーを溶融紡糸するに際し、極限粘度〔η〕が0.4〜1.4のポリエステルポリマーを、溶融温度250〜280℃で、以下の式を満足する開口部の開口角を示すθが45〜90°のC型吐出孔が全て同一方向になるように配列してある紡口から押出し、開口部に向けて冷却風を吹き付け、紡口直下1cmの雰囲気温度を100℃以下に調整して吐出糸条を急冷し、1000〜5000m/分の速度で中空未延伸糸を巻き取った後、当該中空未延伸糸を延伸温度45〜60℃で破断延伸倍率の70〜99%で延伸し、90〜200℃の温度で熱処理することを特徴とする密度が1.32〜1.45g/cm3 、複屈折率(Δn)が0.05〜0.08であるポリトリメチレンテレフタレート中空繊維の製造法。
φA/W = 5〜20
(ここで、φAはC型吐出孔の径、WはC型吐出孔の厚みである。) - 請求項1記載の製造法で得られた密度が1.32〜1.45g/cm3 、複屈折率(Δn)が0.05〜0.08であるポリトリメチレンテレフタレート中空繊維。
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