JPH10204723A - 改質ポリエステル繊維及びその製造方法 - Google Patents

改質ポリエステル繊維及びその製造方法

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JPH10204723A
JPH10204723A JP33082497A JP33082497A JPH10204723A JP H10204723 A JPH10204723 A JP H10204723A JP 33082497 A JP33082497 A JP 33082497A JP 33082497 A JP33082497 A JP 33082497A JP H10204723 A JPH10204723 A JP H10204723A
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正昭 山本
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隆 秋田
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秀夫 坂倉
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 常圧で分散染料により染色可能で、高収縮性
能を有し、しかも強度・伸度特性にも優れた改質ポリエ
ステル繊維を提供する。 【構成】 アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分が全
酸成分に対し10〜20モル%共重合されたエチレンテ
レフタレート主体のポリエステルからなり、(a)動的
粘弾性測定によるtanδピーク温度が120℃以下、
(b)分散染料での染着飽和温度が110℃以下、又は
更に(c)150℃の乾熱収縮率と100℃の乾熱収縮
率の差が9%以上、(d)DS×√DE≧22(DS:
繊維強度、DE:破断伸度)の要件を備える。またこの
繊維を、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分10〜
20モル%共重合のポリエステルを、紡糸・延伸二段法
又は紡糸・延伸一段法で得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、常圧で分散染料に
より染色可能で、高収縮性能を有し、かつ強伸度特性に
優れた改質ポリエステル繊維及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル繊維、特にポリエチレンテ
レフタレート繊維は、耐熱性、耐薬品性及び機械的等に
優れることから、衣料用途や産業用途に広く用いられて
いるが、反面繊維構造が強固であるため、通常染色は高
温高圧下で行わねばならない。そこで、ポリエステル繊
維の染色性を改良する目的で、ポリエステルポリマを改
質して染色性を改良する方法が多数提案されている。例
えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分をポリエ
ステルに共重合してカチオン染料により染色可能とする
方法が特公昭34−10497号公報等で知られてい
る。しかしながら、この方法では、スルホン酸金属塩基
を含むイソフタル酸成分を十分な染色性が得られる量ま
で共重合すると、スルホネート間の疑似架橋のため溶融
粘度が上昇し、ポリマの重合度を十分に上げることが困
難となり、その結果得られる繊維の強度・伸度特性が不
十分となるという問題がある。
【0003】また、アジピン酸、イソフタル酸等の第三
成分を25モル%以下ポリエチレンテレフタレートに共
重合したポリマからの糸条を延伸した後、3〜60%の
収縮を許すような条件で熱処理し、しかる後再延伸する
ことにより、本来の繊維の強度・伸度特性を維持させた
分散染料により常温染色可能なポリエステル繊維を製造
する方法が特公昭40−24933号、特公昭41−9
809号、特公昭47−18049号各公報等で知られ
ている。しかしながら、このような繊維の熱処理、延伸
工程が増えるような方法は、工程が煩雑になるばかりで
なく、温度制御等の厳密な工程管理を必要とするいう点
で好ましい方法ではない。
【0004】一方、近年の消費者ニーズの多様化の中
で、染色性能の改善とともに、高収縮性繊維への要求が
高まっている。2本以上の糸条を流体処理或いは合糸に
より嵩高糸や潜在捲縮糸を得る際に、その特徴をより大
きく発揮させるために収縮率の異なる糸条が用いられる
が、収縮率の大きい側の糸条として用いられる繊維が高
収縮性繊維といわれるものである。
【0005】通常のポリエステルから収縮率の大きい繊
維を得る方法として、未延伸糸の延撚工程において熱セ
ットを施さないことにより高収縮性繊維を得る方法があ
る。しかしながら、近年の工程合理化技術では特に糸か
ら布帛にする際には高速化が要求され、高速化に対応す
るために各工程における熱処理も高温の条件が採用され
ている。例えば、糊付工程では乾燥の効率アップのため
100〜150℃の乾燥温度が採用され、その他撚止セ
ット工程、ウォータジェットルーム製織での生機乾燥工
程等でも高温の条件が採用されている。しかるに、熱セ
ットを施さない方法や従来公知の方法により得た高収縮
性繊維では、収縮力を発現させる工程前の高温の条件で
の処理により潜在収縮力が発現しきってしまい、例えば
染色仕上工程での熱処理で収縮力を発現させようとした
場合に、目的とする収縮力が発現せず、いわゆるヘタリ
のある布帛しか得られないという問題がある。
【0006】そこで、ポリエステルポリマ自体を改質し
て収縮性能を改良する方法も多数提案されている。例え
ば、自動車シートカバー用として、全炭素数4〜10の
脂肪族ジカルボン酸を4〜12重量%含有させた改質ポ
リエステルを高速紡糸により繊維化することにより、高
収縮性繊維を得る方法が特開平6−173114号公報
等で知られている。しかしながら、ポリエステルポリマ
を改質してなる高収縮性繊維としては、未だ衣料用途に
満足して用い得るようなものがないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、アジピ
ン酸成分等の脂肪族ジカルボン酸成分を特定の範囲の量
共重合したポリエチレンテレフタレートを繊維化したと
きに、特別な熱処理、延伸工程を採ることなしに、得ら
れる繊維が常圧で分散染料により染色可能なだけでな
く、高温処理した後でも潜在収縮力を保持し最終的な織
物または編物において十分良好な風合い効果が得られる
ような高収縮性能を有し、しかも強度・伸度特性に優れ
ていることを見い出し、本発明に至ったものであり、本
発明の目的は、常圧で分散染料により染色可能で、高収
縮性能を有し、しかも強度・伸度特性にも優れた改質ポ
リエステル繊維を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、繰り返し単位
の80モル%以上がエチレンテレフタレートであり、ジ
カルボン酸成分としてアジピン酸成分が全酸成分に対し
10〜20モル%共重合されたポリエステルからなり、
下記の要件(a)及び(b)、又は更に要件(c)、或
いは更に要件(d)を備えたことを特徴とする改質ポリ
エステル繊維、 (a)動的粘弾性測定によるtanδピーク温度が12
0℃以下 (b)分散染料での染色における染着飽和温度が110
℃以下 (c)150℃の乾熱収縮率と100℃の乾熱収縮率の
差が9%以上 (d)DS×√DE≧22(DS:繊維強度、DE:破
断伸度)
【0009】及び、繰り返し単位の80モル%以上がエ
チレンテレフタレートであり、ジカルボン酸成分として
アジピン酸成分が全酸成分に対し10〜20モル%共重
合されたポリエステルを、下記の方法(e)又は(f)
にて溶融紡糸することを特徴とする改質ポリエステル繊
維の製造方法、にある。 (e)紡糸口金より溶融押出し、吐出糸条を冷却し12
00〜3300m/分の速度で巻取って未延伸糸とし、
該未延伸糸を残留伸度が25〜40%になる倍率で延伸
し、100〜150℃の熱板で熱処理する (f)紡糸口金より溶融押出し、吐出糸条を、ポリエス
テルのガラス転移温度以下まで一旦冷却した後、加熱帯
域中でポリエステルのガラス転移温度以上融点以下に再
加熱して延伸し、熱処理して、3500〜5500m/
分の速度で巻取る
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の改質ポリエステル繊維を
構成するポリエステル共重合体は、繰り返し単位の80
モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエステ
ルに、脂肪族ジカルボン酸成分が全酸成分に対し10〜
20モル%共重合されていることが必要である。脂肪族
ジカルボン酸としては、下記式 H00C(CH2)nCOOH で表され、nが2〜15の範囲のものが好ましく、例え
ばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、ス
ベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸が挙げられ、特に
アジピン酸が好ましいものとして挙げられる。
【0011】脂肪族ジカルボン酸成分を共重合した改質
ポリエステル繊維は、動的粘弾性測定によるtanδピ
ーク温度を120℃以下とし易く、脂肪族ジカルボン酸
成分を10〜20モル%共重合した本発明の改質ポリエ
ステル繊維は、動的粘弾性測定によるtanδピーク温
度が120℃以下なる要件を満たす。tanδピーク温
度が120℃以下であるときには、常圧可染性を示し易
く、tanδピーク温度が120℃を超えるときには、
染着飽和温度が上昇し、常圧可染性を示さなくなる傾向
がある。ここでtanδピーク温度とは、昇温速度2℃
/分、周波数100Hzでの動的粘弾性測定により求め
た値であり、繊維を構成するポリマの分子運動が活発に
なる温度の指標となるものである。例えばイソフタル酸
のような環状モノマをポリエステルに共重合した場合に
は、tanδピーク温度が120℃以下とはならず、ア
ジピン酸のような脂肪族ジカルボン酸成分の共重合は、
tanδピーク温度の低下に必須なものである。
【0012】また、脂肪族ジカルボン酸成分の共重合量
も重要で、脂肪族ジカルボン酸成分の共重合量が10モ
ル%未満では、tanδピーク温度が120℃を超え、
また脂肪族ジカルボン酸成分の共重合量が20モル%を
超えると、ポリエステル共重合体のガラス転移温度が著
しく低下し、ポリエステル共重合体を紡糸した後の未延
伸糸条間で融着を起こしたり、未延伸糸条の解じょが困
難となる。
【0013】一般に、繊維の染色性を評価する上で、昇
温染着曲線が広く用いられている。この昇温染着曲線
は、染料の種類、染料濃度等の染色条件にかかわらず、
一般にS字型曲線となり、染色時間の経過とともに温度
を上昇させていったとき、昇温初期の温度の低いところ
でゆっくり染着が始まり、ある温度になると急激に染着
が生じ、十分温度が上がると染着は遅くなって平衡に近
づくという曲線となる。また、染色温度を変えて一定時
間染色したときでも、染色温度が低いと染着量は小さ
く、ある染色温度になると急激に染着量が上昇し、更に
染色温度が高いときには染着量は飽和に達するようなS
字型の染着曲線となる。
【0014】本発明の改質ポリエステル繊維は、このよ
うな染着曲線における分散染料での染着量が飽和に達す
る温度、即ち染着飽和温度が110℃以下である要件を
備える。本発明の改質ポリエステル繊維は、基体のポリ
エステル共重合体に基づき繊維内部に分散染料が浸透し
易い構造をなしており、染着飽和温度が110℃以下で
あることにより、常圧での分散染料により染色を可能と
する。しかして、通常のポリエチレンテレフタレート繊
維では、分散染料での染着飽和温度が130℃以上であ
り、分散染料により染着量を飽和に達するための染色に
は、高圧染色を必要とする。
【0015】本発明の改質ポリエステル繊維は、150
℃の乾熱収縮率と100℃の乾熱収縮率の差が9%以上
である要件を備えることが好ましい。収縮率の差が9%
以上であるときは、製織又は製編後の染色仕上工程での
熱処理で目的とする収縮力が発現し、ふくらみ感のある
織編物が得られ、収縮率の差が9%未満では、残留する
収縮力が小さく、ふくらみ感のある織編物が得られな
い。
【0016】図1に本発明の改質ポリエステル繊維の一
例の昇温収縮曲線を示す。図1において、aは本発明の
改質ポリエステル繊維、bは延伸工程で熱処理なしに得
た従来のポリエステル高収縮性繊維である。図1によれ
ば、従来のポリエステル高収縮性繊維は、収縮率が高い
が、残留収縮量が本発明の改質ポリエステル繊維に比べ
て少なく、乾熱温度が高くなるにつれ、残留収縮量が極
めて少なくなるのに対し、本発明の本発明の改質ポリエ
ステル繊維は、実用的な収縮率を示し、乾熱温度が高く
なっても、残留収縮量が保持されていることを示してい
る。
【0017】また、本発明の改質ポリエステル繊維は、
繊維強度(DS)と、破断伸度(DE)の平方根との積
が22以上、即ちDS×√DE≧22である要件を備え
ることが好ましい。DS×√DEが22以上であること
により、本発明の改質ポリエステル繊維は、強度・伸度
特性が良好なるものである。DS×√DEが22未満で
あると、繊維が仮撚工程又は製編織工程等での擦過に耐
えられなくなり、糸切れ、毛羽の発生等のトラブルの原
因となる。
【0018】本発明の改質ポリエステル繊維において、
基体のポリエステル共重合体は、繰り返し単位の80モ
ル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエステ
ル、好ましくはポリエチレンテレフタレートに脂肪族ジ
カルボン酸成分が全酸成分に対し10〜20モル%共重
合されたものであるが、脂肪族ジカルボン酸成分は、ポ
リエステルポリマを合成する任意の段階において添加さ
れる。例えば、脂肪族ジカルボン酸成分の添加には、テ
レフタル酸とエチレングリコールのエステル化反応開始
時に添加する、ジメチルテレフタレートとエチレングリ
コールのエステル交換反応開始時に添加する、エステル
化反応又はエステル交換反応によるビスヒドロキシエチ
ルテレフタレートに添加する等の方法が用いられる。
【0019】脂肪族ジカルボン酸のなかでもアジピン酸
が好ましく用いられるが、例えば脂肪族ジカルボン酸と
してアジピン酸を用いるときは、アジピン酸成分とし
て、アジピン酸、アジピン酸ジメチルエステル或いはビ
ス(2−ヒドキシエチル)アジペートとして用いられ、
粉体又はエチレングリコールの分散液或いは溶液として
添加される。また、脂肪族ジカルボン酸成分10〜20
モル%共重合のポリエステル共重合体には、艶消剤、易
滑剤、顔料等の添加剤が含まれていてもよい。
【0020】本発明の改質ポリエステル繊維は、中空部
を有しない中実繊維であってもよいし、中空部を有する
中空繊維であってもよく、また、その製糸過程の延伸工
程で未延伸糸条が不均一延伸されたシックアンドシン繊
維であってもよい。また、繊維の断面形状も円形断面或
いは多葉形等の異形断面であってもよい。
【0021】本発明の改質ポリエステル繊維は、常圧で
分散染料により染色可能で、高収縮性能を有し、しかも
強度、伸度特性にも優れることから、未改質ポリエステ
ル繊維と混用され異色染めに用いられるだけでなく、ア
セテート繊維等と混用され常圧染色による同色染め等に
も好適に用いられる。
【0022】本発明の改質ポリエステル繊維は、次に述
べるような方法により製造される。即ち、繰り返し単位
の80モル%以上がエチレンテレフタレートであり、ジ
カルボン酸成分として脂肪族ジカルボン酸成分が全酸成
分に対し10〜20モル%共重合されたポリエステル
を、(e)紡糸口金より溶融押出し、吐出糸条を冷却し
1200〜3300m/分の速度で巻取って未延伸糸と
し、この未延伸糸を残留伸度が25〜40%になる倍率
で延伸し、100〜150℃の熱板で熱処理する、紡糸
・延伸二段法、又は、(f)紡糸口金より溶融押出し、
吐出糸条を、ポリエステルのガラス転移温度以下まで一
旦冷却した後、加熱帯域中でポリエステルのガラス転移
温度以上融点以下に再加熱して延伸、熱処理し、350
0〜5500m/分の速度で巻取る、紡糸・延伸一段
法、により本発明の改質ポリエステル繊維を製造するこ
とができる。
【0023】(e)の紡糸・延伸二段法の場合、未延伸
糸の巻取り速度が1200m/分未満では、生産性の低
下を招き、巻取り速度が3300m/分を超えると、未
延伸糸の結晶化が進行して延伸工程での配向が阻害さ
れ、延伸糸の強度が不十分になり、残留伸度が25%未
満になる延伸倍率では、延伸工程での糸切れが多発し、
残留伸度が40%を超える延伸倍率では、十分な構造歪
みが生ぜず、繊維の収縮特性の低下を招く。また、熱処
理時の熱板温度が100℃未満では、繊維の品質が不安
定なものとなり、熱処理時の熱板温度が150℃を超え
ると、繊維の収縮特性の低下を招く。
【0024】(f)の紡糸・延伸一段法の場合、一旦冷
却した吐出糸条を、加熱筒のような加熱帯域中で延伸す
る、いわゆるホットチューブ延伸する必要があり、巻取
り速度が3500m/分未満では、延伸糸としての強度
・伸度が得られず、巻取り速度が5500m/分を超え
ると、溶融吐出後の冷却過程で配向結晶化が進行し、工
程安定性が悪化するだけでなく、目的とする繊維を得る
ことができなくなる。また、加熱筒等の加熱帯域の温度
は、150〜210℃とし、加熱帯域の温度が150℃
未満では、繊維の加熱が不十分となり、延伸不良による
筋斑が発生し、加熱帯域の温度が210℃を超えると、
繊維の収縮特性の低下を招く。
【0025】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。なお、実施例中、部、%とあるのは重量部、重量%
を意味し、実施例中の各特性値の評価は、下記の方法に
拠った。また、表1中の判定結果の◎は極めて良好、○
は良好、△はやや良好、×は不良を示す。
【0026】ガラス転移温度(Tg)及び融点;セイコ
ー電子工業(株)製DSC220を用い、昇温速度10
℃/分で測定した。
【0027】動的粘弾性測定;セイコー電子工業(株)
製DMS200を用い、昇温速度2℃/分、測定周波数
100Hzで測定し、tanδピーク温度を求めた。
【0028】繊維の強度及び伸度;(株)島津製作所製
オートグラフSD−100−Cを用い、試長200m
m、引張速度200mm/分で応力−伸長曲線を測定
し、繊維の破断点での繊維強度(DS)及び伸度(D
E)を求めた。
【0029】染着飽和温度;繊維を筒編みし、60℃で
20分の精練を行った後、70℃で20分の乾燥を行
い、下記の条件で80〜130℃の範囲の5℃毎の各温
度で、それぞれ60分間染色し、70℃で20分の還元
洗浄を行い、風乾した。得られた染色編地を150℃で
1分の熱セットを行った後、ジューキ(株)製分光光度
計JP7−100を用い、各温度での染色性を測定し、
染着量が飽和する温度を求めた。 染色条件; 分散染料 ミケトン ポリエステル ファースト ブラック Z (三井東圧化学(株)製) 3%(対繊維重量) 分散剤 ディスパーTL 0.5g/リットル (明成化学(株)製) 浴比 1:30
【0030】沸水収縮率(BWS);繊維を綛取りし、
0.05g/dの荷重下での綛長がL0の試料を無荷重
下沸騰水(100℃)中で30分間処理し、0.05g
/dの荷重下での綛長L1を求め、次式により算出し
た。 BWS(%)=〔(L0−L1)/L0〕×100
【0031】乾熱収縮率差ΔHAS;セイコー電子工業
(株)製TMA/SS120Cを用い、昇温速度10℃
/分で40℃から180℃までの乾熱での熱収縮曲線を
求め、この曲線より150℃での乾熱収縮率と100℃
での乾熱収縮率との乾熱収縮率差ΔHASを測定した。
【0032】(実施例1)テレフタル酸100部、エチ
レングリコール45部をエステル化槽に仕込み、4kg
/cm2の加圧下、260℃まで昇温してエステル化反
応を行った。エステル化反応終了後、得られた反応生成
物を重合槽に移し、ビス(2−ヒドキシエチル)アジペ
ート/エチレングリコールが2/1の溶液28.7部
(全酸成分に対しビス(2−ヒドキシエチル)アジペー
ト量12モル%)を添加し、更にトリメチルホスフェイ
トを0.01%、三酸化アンチモンを0.04%及び二
酸化チタンを0.5%、各々エチレングリコール溶液或
いは分散液として添加し、槽を減圧して真空度1トール
以下の高真空下、280℃で重縮合反応を行い、表1に
示す共重合ポリエステルポリマを得た。
【0033】得られたポリマを常法によりチップ化、乾
燥し、孔径0.25mmの円形孔を36個有する紡糸口
金より紡糸温度265℃にて溶融紡糸した。吐出糸条
は、冷却気流で冷却固化した後、油剤を付与し、140
0m/分の巻取速度で巻取った。次いで、得られた未延
伸糸を残留伸度が30%になる倍率で延伸し、110℃
の熱板で熱処理し、75デニール/36フィラメントの
延伸糸を得た。得られた延伸糸のtanδピーク温度、
染着飽和温度、BWS、乾熱収縮率差ΔHAS及びDS
×√DEを表1に示したが、得られた延伸糸は、良好な
染色特性、収縮特性及び強度・伸度特性を有していた。
【0034】(実施例2〜4)実施例1において、ビス
(2−ヒドキシエチル)アジペートの共重合量を表1に
示すように変更した以外は、実施例1と同様にして延伸
糸を得た。得られた延伸糸は、表1に示すように、いず
れも良好な染色特性、収縮特性及び強度・伸度特性を有
していた。
【0035】(比較例1〜2)実施例1において、ビス
(2−ヒドキシエチル)アジペートの共重合量を表1に
示すように変更した以外は、実施例1と同様にして延伸
糸を得た。比較例1により得られた延伸糸は、表1に示
すように、良好な強度・伸度特性を有していたが、染着
飽和温度が110℃を超えており染色特性に劣るもので
あり、また乾熱収縮率差ΔHASが9%未満であり収縮
特性が不十分であった。比較例2では、得られたポリマ
は、融点197℃で、紡糸温度240℃にて溶融紡糸し
たが、紡出後の未延伸糸条間で融着が起こり、解じょす
ることができず、延伸糸を得ることができなかった。
【0036】(比較例3)ポリマとして通常のポリエチ
レンテレフタレートを用い、延伸後に110℃の熱板で
の熱処理を施さない以外は、実施例1と同様にして延伸
糸を得た。得られた延伸糸は、表1に示すように、染着
飽和温度が130℃以上であり、常圧可染性がなく、ま
た、BWSは高いものの、乾熱収縮率差ΔHASが低
く、高収縮糸としては不十分なものであった。
【0037】(比較例4)ポリマとしてイソフタル酸を
11モル%共重合したポリエチレンテレフタレートを用
いた以外は、実施例1と同様にして延伸糸を得た。得ら
れた延伸糸は、表1に示すように、BWS及び乾熱収縮
率差ΔHASが高く収縮性能は良好であったが、染着飽
和温度が110℃以上であり、常圧可染性が不十分であ
った。
【0038】
【表1】
【0039】(実施例5)ビス(2−ヒドキシエチル)
アジペートの共重合量を15モル%に変更した以外は、
実施例1と同様にして共重合ポリエステルポリマを得
た。得られたポリマを常法によりチップ化、乾燥し、孔
径0.25mmの円形孔を36個有する紡糸口金より紡
糸温度265℃にて溶融紡糸した。吐出糸条を、冷却気
流で一旦ガラス転移温度以下に冷却した後、長さ1.5
m、内径28mm、内壁温度170℃の加熱筒に導入し
延伸した。その後ガイドオイリング方式で油剤を付与
し、室温の第一引き取りローラを介して200℃の温度
の第二引き取りローラで熱処理し、ワインダで4000
m/分の速度で巻取り、75デニール/36フィラメン
トの延伸糸を得た。得られた延伸糸のtanδピーク温
度、染着飽和温度、BWS、乾熱収縮率差ΔHAS及び
DS×√DEを表2に示したが、得られた延伸糸は、良
好な染色特性、収縮特性及び強度・伸度特性を有してい
た。
【0040】(実施例6〜7)実施例5において、巻取
り速度を表2に示すように変更した以外は、実施例5と
同様にして延伸糸を得た。得られた延伸糸は、表2に示
すように、いずれも良好な染色特性、収縮特性及び強度
・伸度特性を有していた。
【0041】(比較例5)実施例5において、ポリマと
して通常のポリエチレンテレフタレートを用い、第二引
き取りローラ温度を室温とした以外は、実施例5と同様
にして延伸糸を得た。得られた延伸糸は、表2に示すよ
うに、染着飽和温度が130℃以上で、常圧可染性がな
く、また、乾熱収縮率差ΔHASが低く収縮特性が不十
分なものであった。
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】本発明の改質ポリエステル繊維は、常圧
で分散染料により染色可能で、かつ高温処理後でも潜在
収縮力が残存して高収縮性能を示し、しかも強度、伸度
特性にも優れるものであり、衣料用素材として極めて好
適なるものであり、また、常圧での染色が可能なること
から経済性にも優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の改質ポリエステル繊維の一例の昇温収
縮曲線である。
【符号の説明】
a 本発明の改質ポリエステル繊維 b 延伸工程で熱処理なしに得た従来のポリエステル高
収縮性繊維
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂倉 秀夫 愛知県豊橋市牛川通四丁目1番地の2 三 菱レイヨン株式会社豊橋事業所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繰り返し単位の80モル%以上がエチレ
    ンテレフタレートであり、ジカルボン酸成分として脂肪
    族ジカルボン酸成分が全酸成分に対し10〜20モル%
    共重合されたポリエステルからなり、下記の要件(a)
    及び(b)を備えたことを特徴とする改質ポリエステル
    繊維。 (a)動的粘弾性測定によるtanδピーク温度が12
    0℃以下 (b)分散染料での染色における染着飽和温度が110
    ℃以下
  2. 【請求項2】 下記の要件(c)を備えた請求項1記載
    の改質ポリエステル繊維。 (c)150℃の乾熱収縮率と100℃の乾熱収縮率の
    差が9%以上
  3. 【請求項3】 下記の要件(d)を備えた請求項1又は
    請求項2記載の改質ポリエステル繊維。 (d)DS×√DE≧22(DS:繊維強度、DE:破
    断伸度)
  4. 【請求項4】 脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸である
    請求項1、請求項2又は請求項3記載の改質ポリエステ
    ル繊維。
  5. 【請求項5】 繰り返し単位の80モル%以上がエチレ
    ンテレフタレートであり、ジカルボン酸成分として脂肪
    族ジカルボン酸成分が全酸成分に対し10〜20モル%
    共重合されたポリエステルを、下記の方法(e)又は
    (f)にて溶融紡糸することを特徴とする改質ポリエス
    テル繊維の製造方法。 (e)紡糸口金より溶融押出し、吐出糸条を冷却し12
    00〜3300m/分の速度で巻取って未延伸糸とし、
    該未延伸糸を残留伸度が25〜40%になる倍率で延伸
    し、100〜150℃の熱板で熱処理する (f)紡糸口金より溶融押出し、吐出糸条を、ポリエス
    テルのガラス転移温度以下まで一旦冷却した後、加熱帯
    域中でポリエステルのガラス転移温度以上融点以下に再
    加熱して延伸し、熱処理して、3500〜5500m/
    分の速度で巻取る
  6. 【請求項6】 脂肪族ジカルボン酸としてアジピン酸を
    用いる請求項5記載の改質ポリエステル繊維の製造方
    法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001355187A (ja) * 2000-06-12 2001-12-26 Toray Ind Inc 脂肪族ポリエステル系繊維含有繊維構造物の製造方法
KR100402838B1 (ko) * 2001-05-10 2003-10-22 주식회사 효성 폴리에스테르 멀티필라멘트사
JP2012136810A (ja) * 2010-12-28 2012-07-19 Kuraray Co Ltd 染色性に優れたポリエステル繊維および繊維集合体
JP2012180624A (ja) * 2011-03-03 2012-09-20 Kuraray Co Ltd 常圧可染ポリエステル繊維
JP2012255224A (ja) * 2011-06-08 2012-12-27 Kuraray Co Ltd 構造加工糸

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