JP2012255224A - 構造加工糸 - Google Patents

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Abstract

【課題】 スパン糸織物風の外観と風合、触感を与える2層構造仮撚加工糸を提供する。
【解決手段】 二種のポリエステル糸条からなる構造加工糸であり、該ポリエステルは、ジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合ポリエステルであり、該ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸成分であり、4.0〜12.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分であり、2.0〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸成分であり、かつ該グリコール成分がエチレングリコール成分を主成分とするポリエステルからなることを特徴とする構造加工糸。
【選択図】なし

Description

本発明は、2層構造仮撚加工糸に関するものであり、詳細には濃色性に優れたスパン調の風合いを有するポリエステル仮撚加工糸に関するものである。
従来、仮撚加工糸は繊維に捲縮を与えて織物上で変形空間(すなわちスパン糸織物に見られるようなふくらみ変形)を得ることを目的としている。そして、スパン糸織物のふくらみに近づけるべくより多くの捲縮が付与されている。
しかしながら、上記した加工糸からなる織物とスパン糸織物を比較すると、1)繊維束の構造、2)構造の違いによる風合にもたらす効果、3)捲縮、の3点で基本的な違いがある。
まず1)について、スパン糸は、撚によって中心に集められた芯と、それを取り巻く各種の高さと変形量を持つ変形空間繊維(ループや毛羽繊維)とからなり、特に紡績時の撚掛けで主繊維束を横切るように浮いた繊維(以下、ワタリ繊維と呼ぶ)があり、大きな変形空間を持っている。一方、仮撚加工糸は芯のない均一な捲縮空間糸である。そして、該加工糸は織工程を容易にするために撚を掛けているが、それは通常の織工程に必要最低限度の撚(例えば、166dtex加工糸で150〜200T/M)であって、これは芯を形成するほどの撚拘束力はない。ここで、仮撚加工糸に芯を形成するほどの撚を掛けることもできるが、そのようにすると撚によって繊維が中心に集められて捲縮空間がつぶれてやせた糸になってしまうので仮撚加工糸は事実上、芯ができるほどの撚を掛けることはできない。
つぎに2)については、スパン糸は芯を取り巻く種々の高さの変形空間繊維があり、これがスパン糸織物のふくらみ挙動を多様化し、ふくらみがあるといわれる要因をなしており、また多少ではあるが捲縮による変形もこれに寄与している。
また、スパン糸は芯とそれを取り巻くソフトな構造から、それが織物の組織の中にあっては、芯(繊維が集中している部分)が組織内の空間を作り、糸条と糸条の間は外層のソフトな部分の接触で糸条間が動き易くなっており、これがスパン糸織物にドレープ性がある要因である。かかる風合の点で重要なもう一つのことは織物とコシと張りである。すなわち、スパン糸は撚拘束によって集められた芯があり、充分なコシと張りを有するためにスパン糸織物は風合の3要素であるふくらみ、ドレープ性、コシや張りを併せ持つことができる。一方、仮撚加工糸は捲縮のみの変形空間で変形量としても貧弱であるため変形挙動が一様であり、そのために加工糸織物は風合上で充分なふくらみを持たない。また、該加工糸織物はその織組織内にあっては個々の捲縮がそれぞれに占有空間を持とうとすることから糸条間の接触を高めドレープ性に欠ける。また、コシや張りは捲縮による糸条間の接触から硬くはなるが、押しつぶそうとするときスパン糸織物に見られる芯による抵抗力がないため風合上のコシとしては充分でない。換言すると、加工糸織物は糸条の構造から風合要素であるふくらみ、ドレープ性、コシ、張りの3拍子を兼ね備えることはできない。
そして、3)の捲縮であるが、スパン糸の捲縮は甘いため繊維はしなやかで織物としてしっとりしている。一方、仮撚加工糸は捲縮のみに変形空間を頼ることから非常に高捲縮であり、そのため捲縮抵抗力が強く、ごつごつとしている。
スパン糸織物と加工糸織物は以上3つの点の違いによって、スパン糸織物はこれらの要因と他の要因が重なり合った効果として優れた外観と手触りを有し、たとえば手触りは外層繊維の変形挙動、捲縮、撚によるしめの効果と不均一性が織り成したものであるが、一方、加工糸織物は一様でこれらの効果はない。
なお、仮撚加工糸において、2種の糸条を用い、その糸長差をもたせて一方の糸条を芯部とし、他の糸を鞘部として巻き付けた芯鞘二層構造糸が多く知られている(例えば、特許文献1参照。)。
これらの糸は嵩高性を意図するものであり、このような糸からなる織物は嵩高ではあるが、スパン糸織物に比べてソフトな風合、ドレープ性、コシあるいは張り等において劣るものであり、仮撚加工糸からなるスパン糸織物風の外観と風合が望まれている。
特開昭54−160844号公報
本発明の課題は、上記の従来技術の課題を解決し、スパン糸織物風の外観と風合、触感を与える2層構造仮撚加工糸を提供することである。
すなわち、本発明は、二種のポリエステル糸条からなる構造加工糸であり、該ポリエステルは、ジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合ポリエステルであり、該ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸成分であり、4.0〜12.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分であり、2.0〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸成分であり、かつ該グリコール成分がエチレングリコール成分を主成分とするポリエステルからなり、該糸条の糸長差 (ΔL/L)及びこれら糸条の合糸に加えられる仮撚数(T0)の関係が下式(I)、(II)を満足することを特徴とする構造加工糸である。
Figure 2012255224
また本発明は、好ましくは上記ポリエステル糸条に下式(III)を満足する微粒子が添加含有されていることを特徴とする構造加工糸である。
Figure 2012255224
そして本発明は、さらに好ましくは上記構造加工糸からなり、式(IV)を満足する実撚数にて加撚された糸条を用いてなり、かつアルカリ減量率1〜30%のアルカリ減量加工処理が施されることで繊維表面に微細な凹凸が形成されていることを特徴とする構造加工糸織物である。
Figure 2012255224
本発明によれば、常圧下で分散染料を用いて染着性が良好な構造加工糸を得ることができる。また、本発明により得られる構造加工糸織物はスパン糸織物風の外観と風合、触感を与えるものとなる。
本発明の構造加工糸を構成する繊維は、ジカルボン酸成分とグリコール成分からなり、該ジカルボン酸成分の80モル%以上がテレフタル酸成分であり、4.0〜12.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分であり、2.0〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸成分であり、かつ該グリコール成分がエチレングリコール成分を主成分とする共重合ポリエステル重合体で構成されることが必要である。
シクロヘキサンジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体(以下、シクロヘキサンジカルボン酸成分と称することもある)及び脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体をポリエチレンテレフタレートに共重合した場合、芳香族ジカルボン酸に比べて結晶構造の乱れが小さい特徴を有しているため、高い染着率を確保しながら、耐光堅牢性にも優れた繊維を得ることができる。
シクロヘキサンジカルボン酸成分を共重合化することによって、ポリエステル繊維の結晶構造に乱れが生じ、非晶部の配向は低下する。そのため、分散染料の繊維内部への浸透が容易となり、分散染料の常圧可染性を向上させることが可能となる。更に、シクロヘキサンジカルボン酸成分は芳香族ジカルボン酸に比べ結晶構造の乱れが小さいことから、耐光堅牢性にも優れたものとなる。
シクロヘキサンジカルボン酸成分の共重合量がジカルボン酸成分において4.0モル%未満では、繊維内部における非晶部位の配向度が高くなるため、常圧環境下での分散染料に対する染色性が不足し、目的の染着率が得られない。また、ジカルボン酸成分において12.0モル%を超えた場合、染着率、洗濯堅牢度、耐光堅牢度など、染色性に関しては良好な品質を確保できるものの、延伸を伴わない高速紡糸手法で製糸を行った場合、樹脂のガラス転移温度が低いことと繊維内部における非晶部位の配向度が低いことによって高速捲取中に自発伸長が発生し、安定な高速曳糸性を得ることができない。好ましくは5.0〜10.0モル%である。
シクロヘキサンジカルボン酸には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の3種類の位置異性体があるが、本発明の効果が得られる点からはどの位置異性体が共重合されていても構わないし、また複数の位置異性体が共重合されていても構わない。また、それぞれの位置異性体について、シス/トランスの異性体があるが、いずれの立体異性体を共重合しても、あるいはシス/トランス双方の位置異性体が共重合されていても構わない。シクロヘキサンジカルボン酸誘導体についても同様である。
脂肪族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体成分についてもシクロヘキサンジカルボン酸成分と同様に、ポリエステル繊維の結晶構造に乱れが生じ、非晶部の配向が低下するため、分散染料の繊維内部への浸透が容易となり、分散染料の常圧可染性を向上させることが可能となる。
脂肪族ジカルボン酸成分をポリエチレンテレフタレートに共重合すると、低温セット性にも効果があり、本発明により得られる繊維を織編物にしてから形態安定化のために熱セットする場合、熱セット温度を低くすることが可能となる。ニット用途において低温セット性は好ましい物性であり、ウール、綿、アクリル、ポリウレタン等のポリエステル以外の素材と複合する場合、熱セットに必要な温度をポリエステル以外の素材の物性が低下しない程度に抑えることが可能となる。また、ポリエステル繊維の単独使いにおいても、一般的な現行ニット用設備に対応が可能となり用途拡大が期待できる。
ジカルボン酸成分中の脂肪族ジカルボン酸成分の共重合量が2.0モル%未満では、常圧環境下での分散染料に対する染色性が不足し、目的の染着率が得られない。また、ジカルボン酸成分中の脂肪族ジカルボン酸成分の共重合量が8.0モル%を超えた場合、染着率は高くなるものの、延伸を伴わない高速紡糸手法で製糸を行った場合には繊維内部における非晶部位の配向度が低くなり、高速捲取中での自発伸長が顕著となり、安定な高速紡糸性を得ることができない。好ましくは3.0〜6.0モル%である。本発明の脂肪族ジカルボン酸成分として好ましく用いられるものとしては、発色性、製糸工程性などの点から、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸が例示できる。またこれらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
本発明の構造加工糸に用いるポリエステル繊維を構成するポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)及び結晶化温度(Tch)が下記(a)〜(c)を満足することが好ましい。
(a)ガラス転移温度(Tg):60℃≦Tg≦80℃
(b)結晶化温度(Tch):120℃≦Tch≦150℃
(c)ΔT(Tch−Tg):50℃≦ΔT(Tch−Tg)≦80℃
本発明の構造加工糸を構成するポリエステル繊維の常圧可染性や品位を落とすことのない範囲であれば、テレフタル酸成分、シクロヘキサンジカルボン酸成分、及び脂肪族ジカルボン酸成分以外の他のジカルボン酸成分を共重合しても良い。具体的には、イソフタル酸やナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分又はそのエステル形成誘導体や、アゼライン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分又はそのエステル形成誘導体を単独であるいは複数の種類を合計10.0モル%以下の範囲で共重合化させてもよい。
しかし、これらの成分を共重合化させることでエステル交換反応、重縮合反応が煩雑になるばかりでなく、共重合量が適正範囲を超えると洗濯堅牢性を低下させることがある。具体的には、イソフタル酸およびそのエステル形成性誘導体がジカルボン酸成分に対して10モル%を越えて共重合させると、本発明の構成要件を満足させたとしても、洗濯堅牢特性を低下させる恐れがあり、5モル%以下での使用が望ましく、さらに望ましくは0モル%であること(共重合化しないこと)がより望ましい。
更に、本発明の構造加工糸を構成するポリエステル繊維には、それぞれ、酸化チタン、硫酸バリウム、硫化亜鉛などの艶消剤、リン酸、亜リン酸などの熱安定剤、あるいは光安定剤、酸化防止剤、酸化ケイ素などの表面処理剤などが添加剤として含まれていてもよい。酸化ケイ素を用いることで、得られる繊維は、減量加工後に繊維表面に微細な凹凸を付与することができ、後に織編物にした場合に濃色化が実現される。更に、熱安定剤を用いることで加熱溶融時やその後の熱処理における熱分解を抑制できる。また、光安定剤を用いることで繊維の使用時の耐光性を高めることができ、表面処理剤を用いることで染色性を高めることも可能である。
これら添加剤は、ポリエステル樹脂を重合によって得る際に、重合系内にあらかじめ加えておいても良い。ただし、一般に酸化防止剤などは重合末期に添加するほうが好ましく、特に重合系に悪影響を与える場合や、重合条件下で添加剤が失活する場合はこちらが好ましい。一方、艶消剤、熱安定剤などは重合時に添加するほうが均一に樹脂重合物内に分散しやすいため好ましい。
本発明の構造加工糸に用いるポリエステル繊維を構成するポリエステル樹脂は、固有粘度0.6〜0.7であるが、好ましくは0.62〜0.68、より好ましくは0.63〜0.66である。固有粘度が0.7を上回ると、繊維化時の高速紡糸性が著しく乏しくなる。また、紡糸が可能であり、目標の染着率が得られた場合においても、筒編染色生地で染色斑や筋が発生したり織編物の風合いが劣るなど、得られた織編繊維の表面品位が低下し衣料用として好ましくない。また、固有粘度が0.6を下回ると紡糸中に断糸しやすく生産性が乏しくなるばかりでなく、得られた繊維の強度も低いものとなる。更に、紡糸が可能であり、目標の染着率が得られた場合においても、筒編染色生地で染色斑や筋が発生したり織編物の風合いが劣るなど、得られた織編繊維の表面品位が低下し衣料用として好ましくない。
本発明の二種のポリエステル糸条は、破断伸度差を有する製造方法であれば任意に設定することが可能である。
本発明の製造方法の紡糸工程において、ポリエステル樹脂は通常の溶融紡糸装置を用いて口金より紡出する。また、口金の形状や大きさによって、得られる繊維の断面形状や径を任意に設定することが可能である。
次に、本発明のポリエステル樹脂は、例えば単軸押出機や二軸押出機を用いて溶融混練する。溶融混練する際の温度は、シクロヘキサンジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸の共重合量によって異なるが、斑なく安定に溶融混練し且つ安定な製糸性や品位を得るためには、ポリマーの融点から30〜60℃高い温度範囲で溶融押出するのが好ましく、20〜50℃高い温度範囲とすることがより好ましい。
更に、混練設備を通過してから紡糸頭に至るまでの間の溶融温度についても、シクロヘキサンジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸の共重合量によって異なるため一概に特定はできないが、溶融斑なく安定な状態で紡出させ、且つ安定な製糸性や品位を得るためには、ポリマーの融点から30〜60℃高い温度範囲で溶融押出するのが好ましく、20〜50℃高い温度範囲とすることがより好ましい。
本発明のポリエステル糸条の製造方法について一例を以下に示す。一方の破断伸度の短いほうの糸条については、上記によって溶融紡出したポリエステル繊維を、一旦そのガラス転移温度以下の温度、好ましくはガラス転移温度よりも10℃以上低い温度に冷却する。この場合の冷却方法や冷却装置としては、紡出したポリエステル繊維をそのガラス転移温度以下に冷却できる方法や装置であればいずれでもよく特に制限されないが、紡糸口金の下に冷却風吹き付け筒などの冷却風吹き付け装置を設けておいて、紡出されてきたポリエステル繊維に冷却風を吹き付けてガラス転移温度以下に冷却するのが好ましい。その際に冷却風の温度や湿度、冷却風の吹き付け速度、紡出糸条に対する冷却風の吹き付け角度などの冷却条件も特に制限されず、口金から紡出されてきたポリエステル繊維を繊維の揺れなどを生じないようにしながら速やかに且つ均一にガラス転移温度以下にまで冷却できる条件であればいずれでもよい。そのうちでも、冷却風の温度を20℃〜30℃、冷却風の湿度を20%〜60%、冷却風の吹き付け速度を0.4〜1.0m/秒として、紡出繊維に対する冷却風の吹き付け方向を紡出方向に対して垂直にして紡出したポリエステル繊維の冷却を行うのが、高品質のポリエステル繊維を円滑に得ることができるので好ましい。また、冷却風吹き付け筒を用いて前記の条件下で冷却を行う場合は、紡糸口金の直下にやや間隔を空けてまたは間隔を空けないで、長さが約80〜120cm程度の冷却風吹き付け筒を配置するのが好ましい。
次に、より効率的な生産性で且つ安定した品位の延伸糸を得る方法として、紡出後に一旦ガラス転移温度以下に糸条を冷却した後、引き続いてそのまま直接加熱帯域、具体的にはチューブ型加熱筒などの装置内を走行させて延伸熱処理し給油後に3500〜5500m/分の速度で捲取ることで延伸糸を得ることができる。加熱工程における加熱温度は延伸しやすい温度、すなわちガラス転移温度以上で融点以下の温度が必要であり、具体的にはガラス転移温度よりも30℃以上高いことが好ましく、50℃以上高いことがより好ましい。また融点よりも20℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましい。これにより、冷却工程においてガラス転移温度以下に冷えた糸条が加熱装置で加熱されることで分子運動を促進活発化し延伸を行う。
油剤は加熱装置による延伸処理工程通過後に付与する。これにより油剤による延伸断糸が少なくなる。油剤としては通常ポリエステルの紡糸に用いられるものであれば制限はない。給油方法としてはギヤポンプ方式によるオイリングノズル給油またはオイリングローラー給油のいずれでもよい。ただし、紡糸速度が高速化するにつれて前者の方式の方が糸条に斑無く、安定した油剤付着が可能である。油剤の付着量については特に制限はなく、断糸や原糸毛羽の抑制効果と織編物の工程に適した範囲であれば適宜調節しても良い。
そのうちでも、油剤の付着量を0.3〜2.0質量%とすることが高品質のポリエステル繊維を円滑に得ることができるので好ましく、0.3〜1.0質量%とすることがより好ましい。
そして、上述した一連の工程からなる延伸したポリエステル繊維を、3500〜5500m/分で引き取ることが必要であり、引き取り速度4000〜5000m/分であることがより好ましい。ポリエステル繊維の引き取り速度が3500m/分未満の場合は生産性が低下し、また加熱帯域において繊維の延伸が十分に行われなくなり、得られるポリエステル繊維の機械的物性が低下する。引き取り速度が5500m/分を超えた場合は安定な高速紡糸性が得られにくく、また加熱帯域において繊維の延伸が十分に行われなくなり、得られるポリエステル繊維の機械的物性が低下する。
本発明のもう一方の破断伸度の長いほうの糸条について、上記によって溶融紡出したポリエステ
ル繊維を巻取り速度1900m/min〜3500m/minで巻き取ることで未延伸を得る。
このようにして得られた二種類のポリエステル繊維の糸条から構造加工糸を製造する。
本発明の構造加工糸は二種の糸条の糸長差(ΔL/L)およびこれら糸条の合糸に加えられる仮撚数(T0)の関係が下式(I)、(II)を満足することが重要である。
Figure 2012255224
本発明の構造加工糸において第1の重要な要件は織物の変形挙動に関する繊維束の構成要件であり、糸長差(ΔL/L)と捲縮およびトルクが主要件である。一般に、糸長差(長い繊維と短い繊維の長さの差を短い繊維の長さで割った値)は大きければ大きいほど繊維束表面に浮いたループを形成し、それが保有する変形空間も大きい。
本発明の構造加工糸における第2の重要な要件は捲縮であり、捲縮が緻密で数が多いと繊維束表面に浮いたループ繊維は自己の強い捲縮で縮み繊維束表面近くに集まり、小さな変形空間しか持たなくなる。また、それによって織物表面変化も乏しく、強い捲縮力で織物表面がごつごつする。また、甘い捲縮であると、伸縮性は小さく繊維束表面の遠いところまで浮く繊維が多く発生し、大きな変形空間を保有し、かかる甘い捲縮と相まってしなやかでしっとりとしたスパン風の触感を与える。
本発明の構造加工糸における第3の重要な要件はトルク効果であり、通常仮撚加工糸として実施されている仮撚数は(2400〜2500)×(166/D0)0.5(T/M)であり、この領域で得られる仮撚加工糸は高捲縮で低トルク糸である。一方、仮撚数を下げていくと捲縮は甘くなり高トルク糸が得られる。そして、この領域で加工された繊維が繊維束表面にあるとき(長さの長い繊維)、その繊維自身の高トルクでねじれを生じ、このねじれが高さの高い(保有する変形空間の大きい)ループを作り、またスパン糸に見られるような繊維束を横切って浮く繊維形態にする。それ故、スパン糸に見られるワタリ繊維をより多く得ようとする場合、高捲縮側では低トルクであるために糸長差をより多くして自由度を高める必要があるが、低捲縮側では高トルクであるため容易にワタリ繊維を得ることができる。しかしながら、仮撚数が極端に小さく、例えば1200×(166/D0)0.5(T/M)以下では捲縮が甘すぎて実用性に欠けるので適当でない。本発明において、変形空間を多く有し、かつスパン糸の風合や形態を得る繊維束としては、上式(I)、(II)の仮撚数と糸長差(ΔL/L)が必要であることが見出された。
二種の糸条の糸長差(ΔL/L)およびこれら糸条の合糸に加えられる仮撚数(T0)の関係が下式(I)、(II)を満足しない場合、狙いとするしなやかでしっとりとしたスパン風の触感風合いが得られない問題がある。
好ましくは、1350×(166/D0)0.5≦T0≦2100×(166/D0)0.5(T/M)で加工された繊維束である。
また本発明の構造加工糸を構成するポリエステル糸条には、下式(III)を満足する微粒子が添加含有されていることが好ましい。下式(III)が0.022未満であると安定な紡糸工程、安定な仮撚工程、さらにしなやかな触感が得られない問題があり、3.5より大きいと紡糸工程、仮撚工程性が悪化する問題がある。
Figure 2012255224
さらに本発明は、式(IV)を満足する実撚数にて加撚された糸条で構成される構造加工糸を用いてなり、かつアルカリ減量率1〜30%のアルカリ減量加工処理が施されることで繊維表面に微細な凹凸が形成されていることを特徴とする構造加工糸織物であることが好ましい。
Figure 2012255224
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関するものである。
<染色方法及び発色性評価>
得られた繊維の織物を精練した後、以下の条件で染色し、還元洗浄をした後、発色性評価を実施した。
(染色)
染料:Dianix NavyBlue SPH conc5.0%omf
助剤:Disper TL:1.0cc/1、ULTRA MT−N2:1.0cc/1
浴比:1/50
染色温度×時間:95〜100℃×40分
(還元洗浄)
水酸化ナトリウム:1.0g/L
ハイドロサルファイトナトリウム:1.0g/L
アミラジンD:1.0g/L
浴比:1/50
還元洗浄温度×時間:80℃×20分
[発色性評価]
官能試験により、最も発色性の良好な◎から最も劣る×まで4段階で評価した。
◎:非常に優れている
○:優れている
△:やや不良
×:不良
[繊維化工程性評価]
100kgの繊維を紡糸する際に、何回断糸するかによって、次のように評価した。
○:3回以内/100kg
△:4回〜7回/100kg
×:8回以上/100kg
[織物の風合評価]
スパン糸の風合いでソフト感、ハリコシ感については官能試験により、最もスパン糸風のでソフト感、ハリコシ感の良好な◎から最も劣る×まで4段階で評価した。
◎:非常に優れている
○:優れている
△:やや不良
×:不良
実施例1
表1記載の共重合ポリエステルを用い、一方の糸条は、孔数36個で丸断面形状の口金を用いて紡糸温度260℃、単孔吐出量=1.57g/分で紡出し、温度25℃、湿度60%の冷却風を0.5m/秒の速度で紡出糸条に吹付け糸条を60℃以下にした後、紡糸口金下方1.2mの位置に設置した長さ1.0m、入口ガイド系8mm、出口ガイド系10mm、内径30mmφチューブヒーター(内温185℃)に導入してチューブヒーター内で延伸した後、チューブヒーターから出てきた糸条にオイリングノズルで給油し2個の引き取りローラーを介して4500m/分の速度で捲取り、110dtex/36fのポリエステルフィラメントを得た。もう一方の糸条は、同一の共重合ポリエステルを用いて紡糸速度3000m/分の捲取りにより110dtex/36fの未延伸糸を得た。これら、2種の糸条を引き揃えて、加熱温度は170℃、1680T/ Mの仮撚数で延伸同時仮撚を実施し、210dtex/72fの2層構造仮撚加工糸を得た。糸長差△L/Lは0.08であった。これに撚り数500T/M(Z撚り)の撚りを掛け経糸、緯糸として平織物にした。得られた平織物に対し染色加工を実施したところ、発色性、スパン調風合いに優れるものであった。
実施例2
共重合成分と変性量を表1に示す通り変更した以外は実施例1と同様に実施し、210dtex/72fの2層構造仮撚加工糸を得た。糸長差△L/Lは0.08であった。これに撚り数500T/M(Z撚り)の撚りを掛け経糸、緯糸として平織物にした。得られた平織物に対し染色加工を実施したところ、発色性、スパン調風合いに優れるものであった。
実施例3
共重合成分と変性量を表1に示す通り変更し、さらに一方の糸条は紡糸速度3600m/分で、もう一方の糸条は2800m/分の110dtex/36fの未延伸糸を得た。これら、2種の糸条を引き揃えて、加熱温度は160℃、1350T/Mの仮撚数で延伸同時仮撚を実施し、150dtex/72fの2層構造仮撚加工糸を得た。糸長差△L/Lは0.07であった。得られた仮撚加工糸で構成される平織物は発色性、スパン調風合いに優れるものであった。
比較例1〜3
共重合成分と変性量を表1に示す通り変更した以外は実施例1と同様に実施し、2層構造仮撚加工糸を得た。糸長差△L/Lは0.05以下であった。仮撚加工糸で構成される平織物は発色性が特に劣るものとなり、さらにスパン調風合いに劣るものであった。
Figure 2012255224
本発明によれば、常圧下で分散染料を用いて染着性が良好な構造加工糸を得ることができる。また本発明により得られる構造加工糸織物はスパン糸織物風の外観と風合、触感を与えるものとなる。

Claims (3)

  1. 二種のポリエステル糸条からなる構造加工糸であり、該ポリエステルは、ジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合ポリエステルであり、該ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸成分であり、4.0〜12.0モル%がシクロヘキサンジカルボン酸成分であり、2.0〜8.0モル%が脂肪族カルボン酸成分であり、かつ該グリコール成分がエチレングリコール成分を主成分とするポリエステルからなり、該糸条の糸長差(ΔL/L)及びこれら糸条の合糸に加えられる仮撚数(T0)の関係が次式(I)、(II)を満足することを特徴とする構造加工糸
    Figure 2012255224
  2. 請求項1記載のポリエステル糸条に、式(III)を満足する微粒子が添加含有されていることを特徴とする構造加工糸。
    Figure 2012255224
  3. 請求項2記載の構造加工糸からなり、式(IV)を満足する実撚数にて加撚された糸条を用いてなる構造加工糸織物であり、アルカリ減量率1〜30%の減量加工処理が施され繊維表面に微細なクレーターが発現されていることを特徴とする構造加工糸織物。
    Figure 2012255224
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