JP2012180624A - 常圧可染ポリエステル繊維 - Google Patents
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Abstract
紡糸延伸手法又はその他の一般的な溶融紡糸手法においても安定した品質及び工程性が得
られるポリエステル繊維の提供を目的とする。
【解決手段】ジカルボン酸成分とグリコール成分からなり、ジカルボン酸成分のうち80
モル%以上がテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つジカルボン
酸成分のうちシクロヘキサンジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を4.0
〜12.0モル%、且つ脂肪族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を2.
0〜8.0モル%共重合化し、更にガラス転移温度(Tg):60℃≦Tg≦80℃、結晶
化温度(Tch):120℃≦Tch≦150℃、ΔT(Tch−Tg):50℃≦ΔT(T
ch−Tg)≦80℃の特徴を有するポリエステル樹脂からなるポリエステル繊維であっ
て、95℃での染着率が70%以上、100℃での染着率が90%以上であり、且つ変退
色、添付汚染、液汚染の洗濯堅牢度及び耐光堅牢度がそれぞれ4級以上を示し、該ポリエ
ステル繊維の15%アルカリ減量処理後における破断強度保持率が90%以上を満足でき
る、常圧染色が可能なポリエステル繊維を提供する。
【選択図】なし
Description
すなわち、本発明はポリエステル樹脂からなる繊維であって、該ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合体ポリエステルであって、該ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ4.0〜12.0モル%がシクロヘキンサジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ2.0〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体であって、該グリコール成分はエチレングリコール及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするポリエステル繊維であり、好ましくはポリエステル樹脂中における脂肪族ジカルボン酸がセバシン酸またはデカンジカルボン酸である上記のポリエステル繊維である。
(a)ガラス転移温度(Tg):60℃≦Tg≦80℃ であること、
(b)結晶化温度(Tch):120℃≦Tch≦150℃ であること、
(c)ΔT(Tch−Tg):50℃≦ΔT(Tch−Tg)≦80℃ であること。
(d)95℃での染着率が70%以上であり、且つ100℃での染着率が90%以上であること、
(e)100℃染色時における変退色、添付汚染、液汚染の洗濯堅牢度が4級以上であること、
(f)100℃染色時における耐光堅牢度が4級以上であること。
また、本発明により得られるポリエステル繊維は、洗濯堅牢度、耐光堅牢度に極めて優れたものである。更に、アルカリ減量処理後においても十分な破断強度を保持できるため衣料全般に適したポリエステル繊維を得ることができる。
本発明で用いるポリエステル樹脂は、エチレンテレフタレート単位を主たる繰返し単位とするポリエステルであり、その繰り返し単位の80モル%以上がテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体(以下、テレフタル酸成分と称することもある)であり、且つジカルボン酸成分のうちシクロヘキサンジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体が4.0〜12.0モル%、また脂肪族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体が2.0〜8.0モル%共重合されている必要がある。
(a)ガラス転移温度(Tg):60℃≦Tg≦80℃
(b)結晶化温度(Tch):120℃≦Tch≦150℃
(c)ΔT(Tch−Tg):50℃≦ΔT(Tch−Tg)≦80℃
更に、混練設備を通過してから紡糸頭に至るまでの間の溶融温度についても、シクロヘキサンジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸の共重合量によって異なるため一概に特定はできないが、溶融斑なく安定な状態で紡出させ、且つ安定な製糸性や品位を得るためには、ポリマーの融点から30〜60℃高い温度範囲で溶融押出するのが好ましく、20〜50℃高い温度範囲とすることがより好ましい。
そのうちでも、油剤の付着量を0.3〜2.0%とすることが高品質のポリエステル繊維を円滑に得ることができるので好ましく、0.3〜1.0%とすることがより好ましい。
共重合量は、該ポリエステル繊維を重トリフロロ酢酸溶媒中に5.0wt%/volの濃度で溶解し、50℃で500MHz1H−NMR(日本電子製核磁気共鳴装置LA−500)装置を用いて測定した。
島津製作所製 示差走査熱量計(DSC−60)にて、昇温速度10℃/分で測定した。
島津製作所製 示差走査熱量計(DSC−60)にて、昇温速度10℃/分で測定した。
溶媒としてフェノール/テトラクロロエタン(体積比1/1)混合溶媒を用い30℃でウベローデ型粘度計(林製作所製HRK−3型)を用いて測定した。
得られた繊維の筒編地を精練した後、以下の条件で染色し、還元洗浄をした後、染着率を求めた。
(染色)
染料:Dianix NavyBlue SPH conc5.0%omf
助剤:Disper TL:1.0cc/l、ULTRA MT−N2:1.0cc/l
浴比:1/50
染色温度×時間:95〜100℃×40分
(還元洗浄)
水酸化ナトリウム:1.0g/L
ハイドロサルファイトナトリウム:1.0g/L
アミラジンD:1.0g/L
浴比:1/50
還元洗浄温度×時間:80℃×20分
(染着率)
染色前の原液及び染色後の残液をそれぞれアセトン水(アセトン/水=1/1混合溶液)で任意の同一倍率に希釈し、各々の吸光度を測定した後に、以下に示す式から染着率を求めた。
吸光度測定器:分光光度計 HITACHI
HITACHI Model 100−40
Spectrophotometer
染着率=(A−B)/A×100(%)
ここで、A及びBはそれぞれ以下を示す。
A:原液(アセトン水希釈溶液)吸光度
B:染色残液(アセトン水希釈溶液)吸光度
染着濃度は、染色後サンプル編地の最大吸収波長における反射率Rを測定し、以下に示すKubelka−Munkの式から求めた。
分光反射率測定器:分光光度計 HITACHI
C−2000S Color Analyzer
K/S=(1−R)2 /2R
JIS L−0844の測定方法に準拠して測定した。
JIS L−0842の測定方法に準拠して測定した。
なお、測定用サンプルは以下の淡色染料および濃色染料で染色したものを用いた。
・淡色染料 Dianix Red UN-SE 0.5%omf
・濃色染料 Dianix Red UN-SE 3.0%omf
JIS L−1013の測定方法に準拠して測定した。
インストロン型の引張試験機を用いて得られた荷重−伸度曲線より求めた。
インストロン型の引張試験機を用いて得られた荷重−伸度曲線より求めた。
以下の基準に従って紡糸性評価を行った。
◎:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が何ら発生せず、しかも得られたポリエステル繊維には毛羽・ループが全く発生していないなど、紡糸性が極めて良好である
○:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が1回以下の頻度で発生し、得られたポリエステル繊維に毛羽・ループが全く発生していないか、あるいは僅かに発生したものの、紡糸性がほぼ良好である
△:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が3回まで発生し、紡糸性が不良である
×:24hrの連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が3回よりも多く発生し、紡糸性が極めて不良である
得られた繊維の筒編地を精練した後、以下の条件で重量減量率が15%になるまでアルカリ減量し、その処理前後の筒編を解繊してインストロン型の引張試験機を用いて荷重−伸度曲線より破断強度を求め、以下に示す式から破断強度の比率(保持率)として表した。
強度保持率=B/A×100(%)
ここで、A及びBはそれぞれ以下を示す。
A:アルカリ減量未処理における筒編解繊糸の破断強度
B:15%アルカリ減量処理後における筒編解繊糸の破断強度
(アルカリ減量)
水酸化ナトリウム:40g/L
アルカリ減量温度×時間:95〜100℃×任意時間(重量減量率=15%)
ジカルボン酸成分のうち90モル%がテレフタル酸であり、且つ1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を5.0モル%、セバシン酸を5.0モル%それぞれ含んだ全カルボン酸成分とエチレングリコール、及び所定の添加剤とでエステル交換反応及び重縮合反応を行い、本発明のポリエステル樹脂重合物を得た。この原料のガラス転移温度、及び結晶化温度を測定したところ、それぞれ70℃、142℃であった。この原料を基に、孔数24個(孔径0.20mmφ)の口金を用いて紡糸温度260℃、単孔吐出量=1.57g/分で紡出し、温度25℃、湿度60%の冷却風を0.5m/秒の速度で紡出糸条に吹付け糸条を60℃以下にした後、紡糸口金下方1.2mの位置に設置した長さ1.0m、入口ガイド系8mm、出口ガイド系10mm、内径30mmφチューブヒーター(内温185℃)に導入してチューブヒーター内で延伸した後、チューブヒーターから出てきた糸条にオイリングノズルで給油し2個の引き取りローラーを介して4500m/分の速度で捲取り、84T/24fのポリエステルフィラメントを得た。その時の製糸化条件と紡糸性、及び得られた繊維の染色堅牢性、強度保持率の結果を表1、2に示した。本発明の製造方法で得られたポリエステル繊維の染着率は、95℃で86%、100℃で96%、K/S=27と良好な常圧可染性を示した。また、洗濯堅牢度、耐光堅牢度についても何ら問題のない品質であった。更に、15%アルカリ減量後の強度保持率についても96%と良好な品質であった。
ポリエステル樹脂の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びセバシン酸の共重合量を変更した以外は実施例1と同様にして、表1に示す熱特性を有する共重合物を得た。更に、この重合物を実施例1と同様の手法で紡糸して84T/24fのポリエステルフィラメントを得た。得られた繊維の物性を表1、2に示した。いずれも良好な紡糸性、常圧可染性(染着率、K/S、堅牢性)及び強度保持率であり、何ら問題のない品質であった。
ジカルボン酸成分のうち90モル%がテレフタル酸であり、且つ1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を5.0モル%、デカンジカルボン酸を5.0モル%それぞれ含んだ全カルボン酸成分とエチレングリコール、及び所定の添加剤とでエステル交換反応及び重縮合反応を行い、本発明のポリエステル樹脂重合物を得た。更に、この重合物を実施例1と同様の手法で紡糸して84T/24fのポリエステルフィラメントを得た。得られた繊維の物性を表1、2に示した。いずれも良好な紡糸性、常圧可染性(染着率、K/S、堅牢性)及び強度保持率であり、何ら問題のない品質であった。
ポリエステル樹脂の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸の共重合量変更、あるいは5−ナトリウムスルホイソフタル酸又はイソフタル酸を共重合した以外は実施例1と同様にして、表1に示す熱特性を有する共重合物を得た。更に、この重合物を実施例1と同様の手法で紡糸して84T/24fのポリエステルフィラメントを得た。得られた繊維の物性を表1、2に示した。
具体的には、本発明の常圧可染ポリエステル繊維は、従来のポリエステル繊維と何ら遜色のない品質を有しているため、一般衣料全般、例えば紳士婦人向けフォーマル或いはカジュアルファッション衣料用途、スポーツ用途、ユニフォーム用途など、多岐に渡って有効に利用することができる。また、資材用途全般、例えば自動車や航空機などの内装素材用途、靴や鞄などの生活資材用途、カーテンやカーペットなどの産業資材用途などにも有効に利用することができる。
Claims (5)
- ポリエステル樹脂からなる繊維であって、該ポリエステル樹脂がジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合体であって、該ジカルボン酸成分のうち80モル%以上がテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ4.0〜12.0モル%がシクロヘキンサジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であり、且つ2.0〜8.0モル%が脂肪族ジカルボン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体であって、該グリコール成分はエチレングリコール及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とすることを特徴とするポリエステル繊維。
- ポリエステル樹脂中における脂肪族ジカルボン酸がセバシン酸またはデカンジカルボン酸である請求項1記載のポリエステル繊維。
- 前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)及び結晶化温度(Tch)が下記の条件(a)〜(c)を同時に満足する、請求項1または2に記載のポリエステル繊維。
(a)ガラス転移温度(Tg):60℃≦Tg≦80℃ であること、
(b)結晶化温度(Tch):120℃≦Tch≦150℃ であること、
(c)ΔT(Tch−Tg):50℃≦ΔT(Tch−Tg)≦80℃ であること。 - 下記の条件(d)〜(f)を同時に満足する、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル繊維。
(d)95℃での染着率が70%以上であり、且つ100℃での染着率が90%以上であること、
(e)100℃染色時における変退色、添付汚染、液汚染の洗濯堅牢度がともに4級以上であること、
(f)100℃染色時における耐光堅牢度が4級以上であること。 - 15%のアルカリ減量処理後における破断強度保持率が90%以上を満足する、請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル繊維。
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