JPH11100721A - 極細マルチフィラメント及びその製造法 - Google Patents

極細マルチフィラメント及びその製造法

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JPH11100721A
JPH11100721A JP25876997A JP25876997A JPH11100721A JP H11100721 A JPH11100721 A JP H11100721A JP 25876997 A JP25876997 A JP 25876997A JP 25876997 A JP25876997 A JP 25876997A JP H11100721 A JPH11100721 A JP H11100721A
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克宏 藤本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 人工皮革、スエード調編織物用として有用
な、易染性、堅牢性、耐磨耗性に優れたポリトリメチレ
ンテレフタレート極細マルチフィラメント及びその製造
法の提供。 【解決手段】 酸性分としてテレフタル酸を用い、グリ
コール成分としてトリメチレングリコールを80モル%
以上含有するポリエステルポリマーからなり、極限粘度
[η]が0.4〜0.80、単繊維繊度0.2デニール
以下のポリトリメチレンテレフタレート極細マルチフィ
ラメント。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、易染性と耐磨耗性
に優れた人工皮革,スエード調編織物用のポリトリメチ
レンテレフタレート極細マルチフィラメントに関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、人工皮革やスエード調編織物は家
具用資材や衣料用として広く利用されている。これら
の、人工皮革やスエード調編織物には、単繊維繊度が
0.3デニール以下の極細マルチフィラメントが多く用
いられている(特開昭55−80582号公報など)。
極細マルチフィラメントの素材として、汎用的にはナイ
ロン6やナイロン66などのポリアミドや、ポリエチレ
ンテレフタレートなどのポリエステルが用いられてい
る。しかし、ポリアミドからなる極細マルチフィラメン
トは、この素材固有の特性から耐候性が悪く、資材や衣
料用製品を5年〜10年と長期間使用し続けると黄変し
たり、色あせするなどの欠点がある。
【0003】一方、ポリエチレンテレフタレートからな
る極細マルチフィラメントは、優れた耐候性を有するも
のの、耐磨耗性に劣るという欠点がある。すなわち、ポ
リエチレンテレフタレートからなる極細マルチフィラメ
ントを用いた人工皮革やスエード調編み織物を、長期間
使用し続けると耐磨耗性が問題となる。例えばイス貼り
用に使用した場合には、肘掛け部の極細マルチフィラメ
ントが切断して脱落し、いわゆる「テカリ」や「ハゲ」
状になる欠点がある。この問題は、ポリエチレンテレフ
タレートからなる極細マルチフィラメントのモジュラス
が高すぎるためと考えられている。
【0004】更に、ポリアミドとポリエチレンテレフタ
レートに共通して、これらからなる極細マルチフィラメ
ントは、その単繊維繊度の細さ故に、発色性が劣るとい
う欠点があった。すなわち、単繊維繊度が0.3デニー
ル以下になると、単繊維内で光の乱反射が起こり発色性
が悪くなる。このために、通常の染色では十分な発色性
が得られていないのが現状である。
【0005】従って、易染性、堅牢性と耐磨耗性が改良
された極細マルチフィラメントの出現が強く求められて
いた。一方、特開平8−232117号公報には、ポリ
プロピレンテレフタレートからなる極細糸が提案されて
いる。しかし、該極細糸は固有粘度が極めて高いため、
易染性に欠ける難点がある。また、本発明者らの検討に
よれば、かかる高固有粘度では、0.20デニール未満
の極細マルチフィラメントを得ようとすると、紡糸性が
極めて不良となり工業的に安定な製造が不可能であっ
た。さらに、得られる極細マルチフィラメントの染色性
も易染性に劣るものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
ナイロンやポリエチレンテレフタレートなどの極細マル
チフィラメントの欠点を改良し、易染性,堅牢性と耐磨
耗性に優れた人工皮革、スエード調編織物用の極細マル
チフィラメント、及び、その安定な製造法を提供するこ
とを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の上
記欠点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のポリ
エステルポリマーからなる特定の極細マルチフィラメン
トとすることにより、易染性、堅牢性と耐磨耗性に優れ
た人工皮革、スエード調編織物用の極細マルチフィラメ
ントが得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】すなわち、本発明は下記の通りである。 1)酸性分としてテレフタル酸を用い、グリコール成分
としてトリメチレングリコールを80モル%以上含有す
るポリエステルポリマーからなり、極限粘度[η]が
0.4〜0.8、単繊維繊度0.2デニール以下のポリ
トリメチレンテレフタレート極細マルチフィラメント。
【0009】2)酸性分としてテレフタル酸を用い、グ
リコール成分としてトリメチレングリコールを80モル
%以上含有するポリエステルポリマーを溶融紡糸するに
際し、極限粘度[η]が0.4〜0.8のポリエステル
ポリマーを用い、孔数100ホール以上、孔径0.2m
mφ以下の紡糸孔より紡出し、紡口直下1cmの雰囲気
温度を100℃以下に急冷して紡糸することを特徴とす
るポリトリメチレンテレフタレート極細マルチフイラメ
ントの製造法。
【0010】以下、本発明につき詳述する。本発明の極
細マルチフィラメントは、グリコール成分としてトリメ
チレングリコールを80モル%以上含有することからな
るポリトリメチレンテレフタレートであることが必要で
ある。本発明において、トリメチレングリコールとして
は、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオ
ール、1,1−プロパンジオール、2,2−プロパンジ
オールあるいは、これらの混合物の中から選ばれるが、
安定性の観点から1,3−プロパンジオールが特に好ま
しい。トリメチレングリコールの含有比率は、グリコー
ル成分の80モル%以上であることが必要である。80
モル%未満では、易染性や耐磨耗性、染色堅牢性などが
低下し、本発明の目的が達成されない。好ましくは、9
0モル%以上である。
【0011】本発明に用いるポリトリメチレンテレフタ
レートには、必要に応じて、本発明の効果を損なわない
範囲で、酸成分としてイソフタル酸、コハク酸、アジピ
ン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などや、グリコ
ール成分としてエチレングリコール、1,4−ブタンジ
オール、1,6−ヘキサンジオール、ポリオキシアルキ
レングリコールなどのグリコール成分が共重合されてい
ても良い。また、必要に応じて各種の添加剤、例えば、
艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤など
を共重合または混合しても良い。
【0012】本発明に用いるポリトリメチレンテレフタ
レートは、公知の方法により重合することができる。本
発明の極細マルチフィラメントは、ポリトリメチレンテ
レフタレートの極限粘度[η]が0.4〜0.8である
ことが必要である。極限粘度[η]が0.8を超える
と、後述するように、極細マルチフィラメントを安定し
て製造することができない。また、染色性も劣るものと
なる。0.4未満だと、極細マルチフィラメントの強度
など機械的物性が低下するとともに、耐磨耗性が劣るも
のとなる。好ましい極限粘度[η]は、0.45〜0.
75である。
【0013】本発明の極細マルチフィラメントは、単繊
維繊度が0.2デニール以下であることが必要である。
単繊維繊度が0.2デニールを超えると、人工皮革やス
エード調編織物に使用した場合に表面の品位が悪く、ま
た風合いも不良となる。単繊維繊度は、小さいほど人工
皮革やスエード調編織物の風合いは良好となるが、現在
の技術水準では、直接紡糸法で得られるのは約0.05
デニールが下限である。安定した製造と、良好な製品風
合いを得るのに好ましい単繊維繊度は、0.05〜0.
15デニールである。
【0014】次に、本発明の極細マルチフィラメントを
安定して提供する製造法につき説明する。本発明の製造
法は、酸成分としてテレフタル酸を用い、グリコール成
分としてトリメチレングリコールを80モル%以上含有
するポリエステルポリマーを溶融紡糸するに際し、極限
粘度[η]が0.4〜0.8のポリエステルポリマーを
用い、孔数100ホール以上、孔径0.2mmφ以下の
紡糸孔より紡出し、紡口直下1cmの雰囲気温度を10
0℃以下にして紡糸することを特徴とするポリトリメチ
レンテレフタレート極細マルチフイラメントの製造法で
ある。
【0015】本発明の製造法において、ポリトリメチレ
ンテレフタレートの極限粘度[η]は0.4〜0.8で
あることが重要である。極限粘度[η]が0.8を超え
ると、いかに紡糸温度を高くしても溶融粘度が高く、単
繊維繊度0.2デニール以下の極細マルチフィラメント
を安定して製造することができない。極限粘度が0.4
未満であると、紡口直下を急冷する方法を採用しても、
紡出後のポリマーが液滴状に不均一となり、均一な繊維
が得られない現象(ドリッピング)を起こし、安定した
紡糸が困難となる。好ましい極限粘度[η]は、0.4
5〜0.75である。
【0016】本発明の製造法では、孔数100ホール以
上、孔径0.2mmφ以下の紡糸孔より紡出することが
必要である。孔数が100ホールよりも少ない場合に
は、紡糸機内でのポリマーの分解が生じる。また、孔数
が多くなり過ぎると、孔の占める面積が大きくなり、こ
れに伴いポリマーの滞留時間が長くなり、しかも孔によ
って滞留時間が大きく異なってしまう。従って孔数は1
000ホール以下が好ましい。より好ましくは300〜
500ホールである。
【0017】孔径が0.2mmφよりも大きい場合に
は、紡口直下をいかに急冷してもドリッピングが解消さ
れず安定した紡糸が困難となる。孔径は小さくてもかま
わないが、現在の紡口製造技術、異物による孔の詰まり
などを考慮に入れると0.02mmφが下限である。好
ましい孔径は0.05〜0.15mmφであり、特に好
ましくは0.08〜0.12mmφである。
【0018】本発明の製造法では、紡口直下1cmの雰
囲気温度を100℃以下に急冷することに大きな特徴が
ある。単繊維繊度が0.2デニール以下と極めて小さい
ことから、紡糸孔1ホール当たりのポリマー吐出量が少
なく、従来の紡糸法では紡口直下でドリッピングが生じ
る。本発明では、紡口直下を100℃以下に急冷するこ
とによりこのドリッピングを解消し、安定した紡糸を実
現した。紡口直下1cmの雰囲気温度が100℃を越え
ると、ポリマー粘度をいかに調整してもドリッピングが
生じ、安定した紡糸が困難となる。紡口直下1cmの雰
囲気温度は、低いほどドリッピングが解消されるが、温
度を制御する上では室温より少し高い30℃以上が好ま
しい。より好ましくは50℃〜90℃である。
【0019】紡口直下1cmの雰囲気温度を100℃以
下に保つ方法として、例えば、紡口の吐出面を除く下面
を断熱性の優れた断熱板で覆う方法や、紡口直下へ冷却
風を直接吹き付ける方法などが採用される。より好まし
くは、これらを組み合わせると良い。紡口から吐出さ
れ、紡口直下で急冷された繊維束は引き取られて未延伸
糸として巻き取られ、公知の方法で延伸される。引き取
りに際しては、繊維束を集束し、公知の給油や予備交絡
を付与する。
【0020】なお、繊維束を集束するにあたり集束位置
を、紡口下部のできるだけ上位置で行うことが、空気抵
抗を少なくする目的から好ましい。例えば、紡口下部1
0cm〜40cm、好ましくは20cm〜30cmであ
る。未延伸糸の巻き取り速度は、1000〜2500m
/分の比較的低速が採用される。特開平8−23211
7号公報のごとく2500〜4000m/分の高速で
は、単繊維繊度0.3デニール以上では紡糸可能である
が、本発明のように単繊維繊度が0.2デニール以下の
極細マルチフイラメントでは連続して安定な製造が困難
となる場合がある。更に、単繊維繊度が0.2デニール
以下で紡糸速度をあまり高速にすると、紡糸過程で分子
の結晶化が進みすぎて、後に続く延伸で十分な配向延伸
ができない場合が生じる。
【0021】本発明の極細マルチフイラメントの延伸
は、未延伸糸を一旦巻き取った後延伸しても良く、また
は一旦巻き取ることなく2つ以上のゴデットロール間で
連続して延伸しても良い。延伸倍率は、通常2〜4倍が
採用される。延伸温度は、30℃〜80℃、好ましくは
35℃〜70℃が良い。延伸温度が30℃未満では、延
伸の際に糸切れが多発して連続した延伸が難しくなる傾
向がある。延伸温度が80℃を越えると、延伸ロールな
どで滑り性が悪くなり、単糸切れが多発し安定な延伸が
困難となる傾向がある。延伸後の熱処理は、90℃〜2
00℃、好ましくは100℃〜190℃で行うのが良
い。
【0022】本発明の極細マルチフイラメントの溶融紡
糸温度は、240℃〜320℃、好ましくは245℃〜
300℃、更に好ましくは250℃〜280℃が採用さ
れる。本発明のポリトリメチレンテレフタレート極細マ
ルチフイラメントは、人工皮革やスエード調編織物に使
用すると好適である。人工皮革に用いる場合には、例え
ば、繊維束を3〜50mmに切断し、特開昭55−80
582号公報や特開平6−316877号公報、特開平
7−229071号公報に開示さる方法で人工皮革と
し、優れた易染性、耐磨耗性を有する人工皮革が得られ
る。スエード調編織物として用いる場合には、通常の編
織物とした後サンディング加工などを施し、起毛するこ
とにより優れた風合いと、易染性、耐磨耗性を有するス
エード調編織物が得られる。
【0023】本発明のポリトリメチレンテレフタレート
極細マルチフイラメントは、これらの用途に限定される
ものではなく、単独あるいは他の繊維と混用して布帛と
して使用することも可能である。混用する他の繊維とし
ては、ポリエステル、ポリアミド、セルロース、ウー
ル、綿、絹、アセテート、ストレッチ繊維などのいずれ
か、もしくはこれらの混用であっても良い。混用の方法
としては、経糸または緯糸に用いる交織織物、リバーシ
ブル織物などの織物、トリコット、ラッセルなどの編物
などがあげられる。その他、交撚、合糸、交絡を施して
も良い。特に、本発明のポリトリメチレンテレフタレー
ト極細マルチフイラメントは、セルロース繊維との混用
で優れた性能を発揮する。セルロース繊維として、綿、
麻、レーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジックな
どと混用し、100℃以下で染色しても良好な発色性が
得られるのが特徴である。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、実施例をもって本発明を更
に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるもの
ではない。なお、実施例中主な測定値は以下の方法で測
定した。 1)極限粘度[η] 極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求められる値
である。
【0025】
【数1】
【0026】定義式のηrは、純度98%以上のO−ク
ロロフェノールで溶解したポリトリメチレンテレフタレ
ートの希釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定し
た上記溶剤自体の粘度で割った値であり、相対粘度と定
義されているものである。また、Cは上記溶液100m
l中のグラム単位による溶質重量値である。 2)易染性 易染性の評価として、染料吸尽率と深色度(K/S)を
測定した。
【0027】ポリトリメチレンテレフタレート極細マル
チフイラメントの一口編み地を用い、スコアロール40
0を2g/リットル含む温水を用いて70℃、20分間
精練処理し、タンブラー乾燥機で乾燥させた。次いで、
ピンテンターを用いて180℃、30秒間の熱セットを
行ったものを染色性評価試料とした。染料吸尽率は、4
0℃から100℃に昇温後、更にその温度に1時間保持
した後の染料吸尽率で評価した。染料は、カヤロンポリ
エステルブルー3RSF(日本化薬(株)製)を使用
し、6%owf、浴比1:50で染色した。分散剤はニ
ッカサンソルト7000(日華化学(株)製)を0.5
g/リットル使用し、酢酸0.25mL/リットルと酢
酸ナトリウム1g/リットルを加えPH5に調整した。
【0028】染料吸尽率は、染料原液の吸光度A、染色
後の染液の吸光度aを分光光度計から求め、以下の式に
より求めた。なお吸光度当該染料の最大吸収波長である
580nmでの値を採用した。 吸尽率(%)=(A−a)/A×100 この測定で、吸尽率が80%以上であれば良好な易染性
を有する。
【0029】染色の発色性は、K/Sを測定した。この
値は、染色後のサンプル布帛の分光反射率Rを測定し、
以下に示すクベルカームンク(Kubelka−Mun
k)の式から求めた。この値が大きい程、発色性が良い
ことを示す。Rは、当該染料の最大吸収波長での値を採
用した。 K/S=(1−R)2/2R この測定で、K/Sが20以上であれば良好な発色性を
有する。
【0030】3)耐磨耗性 耐磨耗性の評価は、磨耗強度測定によった。測定法は、
JIS−L−1096(マーチンデール法)により行っ
た。本試験で、磨耗回数が3000回以上であれば良好
な磨耗耐久性を有する。5000回以上であれば優れた
耐磨耗性を有する。
【0031】
【実施例1】1,3−プロパンジオールとジメチルテレ
フタレートから、定法により重合し極限粘度[η]0.
6のポリトリメチレンテレフタレートポリマーを得た。
このポリトリメチレンテレフタレートポリマーを紡糸温
度280℃にて、孔径0.1mmΦで350ホールの孔
を有する紡口を用い、吐出量17.5g/分で押し出し
た。紡口の吐出面以外の周辺を厚さ16mmの断熱板で
遮蔽した紡糸部から紡糸し、紡口直下に冷却風を紡口面
に向けて吹き付けながら吐出糸条を冷却した。この際、
紡口面に吹き付ける冷却風の風速を0.4m/秒とし
て、紡口直下1cmの雰囲気温度を80℃に調整した。
この時、紡口吐出部の表面温度は、252℃であった。
冷却した極細マルチフイラメント未延伸は、紡口下部2
5cmの位置で集束ガイドにより一本に集束し、120
0m/分で巻き取り未延伸糸を得た。紡糸性は、約24
時間糸切れもなく極めて安定していた。
【0032】得られた未延伸糸を、ホットロール50
℃、ホットプレート140℃、延伸倍率2.5倍、延伸
速度600m/分で延伸を行い、52.5デニール/3
50フィラメントの延伸糸を得た。極細マルチフイラメ
ントの単繊維繊度は、0.15デニール、強度3.1g
/d、伸度25%であった。本実施例の極細マルチフイ
ラメントの100℃に於ける染料吸尽率は、87%、K
/Sは21であった。この結果は、比較として特公昭6
3−526号公報で得られた同一単繊維繊度のポリエチ
レンテレフタレートからなる極細マルチフイラメントを
130℃、60分間染色した場合の染料吸尽率が91
%、K/Sが21であることから、極めて易染性といえ
る。
【0033】このポリトリメチレンテレフタレートから
なる極細マルチフイラメントを、長さ5mmに切断した
短繊維を用い、特開昭55−80582号公報の実施例
1に準じてスエード調人工皮革を作った。得られた人工
皮革は、高級感のある表面性と良好な風合いを有してい
た。耐磨耗性をマーチンデール法で測定したところ、9
000回と抜群の耐磨耗性を有していた。
【0034】
【実施例2〜4、比較例1〜5】極限粘度[η]と紡糸
性、及びこの極細マルチフイラメントを用いて得られた
人工皮革の耐磨耗性について説明する。実施例1におい
て、用いるポリトリメチレンテレフタレートポリマーの
極限粘度[η]及び吐出量を異ならせて単繊維繊度の異
なる繊維の紡糸を行った。また、比較例として、ポリエ
チレンテレフタレートポリマーを同様に紡糸した。紡糸
性を表1に示す。
【0035】これらの極細マルチフイラメントから、実
施例1同様に人工皮革を作った。得られた耐磨耗性を表
1に示す。表1から明らかなように、極限粘度[η]が
0.4〜0.8のポリトリメチレンテレフタレートポリ
マーを用いた場合に、良好な紡糸性と優れた易染性、耐
磨耗性の人工皮革が得られた。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】本発明のポリトリメチレンテレフタレー
ト極細マルチフイラメントは、従来の極細マルチフィラ
メントの欠点を改良し、易染性、堅牢性と耐磨耗性に優
れた人工皮革、スエード調編織物用として有用である。
また、本発明の製造法によれば、ポリトリメチレンテレ
フタレートの極細マルチフィラメントが工業的に安定に
製造可能である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸性分としてテレフタル酸を用い、グリ
    コール成分としてトリメチレングリコールを80モル%
    以上含有するポリエステルポリマーからなり、極限粘度
    [η]が0.4〜0.8、単繊維繊度0.2デニール以
    下のポリトリメチレンテレフタレート極細マルチフィラ
    メント。
  2. 【請求項2】 酸性分としてテレフタル酸を用い、グリ
    コール成分としてトリメチレングリコールを80モル%
    以上含有するポリエステルポリマーを溶融紡糸するに際
    し、極限粘度[η]が0.4〜0.8のポリエステルポ
    リマーを用い、孔数100ホール以上、孔径0.2mm
    φ以下の紡糸孔より紡出し、紡口直下1cmの雰囲気温
    度を100℃以下に急冷して紡糸することを特徴とする
    ポリトリメチレンテレフタレート極細マルチフイラメン
    トの製造法。
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