JP2003041432A - ポリエステル超極細繊維 - Google Patents

ポリエステル超極細繊維

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JP2003041432A
JP2003041432A JP2001227097A JP2001227097A JP2003041432A JP 2003041432 A JP2003041432 A JP 2003041432A JP 2001227097 A JP2001227097 A JP 2001227097A JP 2001227097 A JP2001227097 A JP 2001227097A JP 2003041432 A JP2003041432 A JP 2003041432A
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polyester
ultrafine fiber
fiber
spinneret
polyester ultrafine
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JP2001227097A
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Tadashi Koyanagi
小柳  正
Teruhiko Matsuo
輝彦 松尾
Takao Abe
孝雄 阿部
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Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐磨耗性に優れ、人工皮革やスエード調編織
物に好適なポリエチレンテレフタレート超極細繊維、こ
の繊維を用いた布帛及び前記ポリエチレンテレフタレー
ト超極細繊維の製造方法を提供する。 【解決手段】 実質的にポリエチレンテレフタレートか
らなるポリエステルを溶融紡糸し、それに続く延伸によ
って製造される超極細繊維であって、極限粘度が0.5
5dl/g以上のポリエステルからなり、単糸繊度が
0.2dtex以下、かつ、結晶配向度が85〜95%
であることを特徴とするポリエステル超極細繊維。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い重合度とタフ
ネスを有するポリエステル超極細繊維、その繊維を用い
た布帛及び前記超極細繊維の製造方法に関する。更に詳
しくは、人工皮革やスエード調編織物に用いた際に優れ
た耐磨耗性を発揮することができるポリエステル超極細
繊維、その繊維を用いた布帛及び前記超極細繊維の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、人工皮革やスエード調編織物は家
庭用資材や衣料用として広く利用されている。これらの
人工皮革やスエード調編織物には、単糸繊度が0.3d
tex以下の超極細繊維が多く用いられている。超極細
繊維の工業的製造方法としては、2種のポリマー成分か
らなる鞘芯型複合繊維を製造し、その後に一方の成分を
化学的に溶解除去する海島繊維法(例えば、特公昭43
−14184号公報、特公昭44−18369号公報
等)、2種のポリマー成分からなる分割型複合繊維作
り、2成分の界面を化学的又は機械的に分割する割繊繊
維法(例えば、特公昭47−49766号公報等)等が
知られている。
【0003】この他に、複合繊維を経由することなく、
ポリエチレンテレフタレートからなる単独のポリエステ
ルを溶融紡糸し、それに続く延伸によって製造される、
直接紡糸―延伸法が、特公昭63−526号公報(A)
や特公昭62−35481号公報(B)に開示されてい
る。直接紡糸―延伸法によって得られる超極細繊維は、
海島繊維法や割繊繊維法による超極細繊維に比較して、
有機溶媒や溶剤を用いることなく超極細繊維を得る方法
として、人体や環境に対する影響が少ないことから、今
後一層の拡大が期待されている。
【0004】公知の直接紡糸―延伸法によって単糸繊度
が0.2dtex以下の超極細繊維を工業的に安定に製
造するには、使用するポリエチレンテレフタレートの重
合度を極限粘度で約0.5以下と極めて低くする必要が
あった。これは、紡糸時に発生する紡口直下での糸切れ
を解消するために、ポリマーの溶融粘度を低く保つ必要
性からの制約と考えられる。この方法で得られた超極細
繊維は、重合度が低いことと、タフネスが小さいことか
ら、人工皮革や編織物に用いた場合、長期間の使用によ
って布帛の表面に存在する超極細繊維が切断し脱落す
る。その結果、人工皮革や編織物としての耐磨耗性が低
くなるという問題があった。
【0005】布帛の耐磨耗性を向上する目的で、重合度
の高いポリエチレンテレフタレートからなる超極細繊維
を得ようとすると、紡口直下での糸切れが多発して工業
的な生産が困難であった。特に、人工皮革の風合いを好
ましいものとする目的で、単繊維繊度が0.2dtex
以下の極細繊維を製造しようとすると、紡糸が全く不可
能となる等の問題があった。したがって、上記の先行技
術A及びBに開示されているポリエステル超極細繊維に
替わる、耐磨耗性に優れた超極細繊維の出現が切望され
ていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来のポリ
エチレンテレフタレート超極細繊維を人工皮革やスエー
ド調編織物に用いた際、耐磨耗性が低いという欠点を解
決し得る実質的にポリエチレンテレフタレートからなる
ポリエステル超極細繊維及びその安定な製造方法を提供
することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の上
記欠点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリエチレ
ンテレフタレート超極細繊維の重合度と結晶配向度、よ
り好ましくはタフネスを特定することにより耐磨耗性が
飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至
った。即ち、本発明における第1の発明は、実質的にポ
リエチレンテレフタレートからなるポリエステルを溶融
紡糸し、それに続く延伸によって製造される超極細繊維
であって、極限粘度が0.55dl/g以上、単糸繊度
が0.2dtex以下、かつ、結晶配向度が85〜95
%であることを特徴とするポリエステル超極細繊維であ
る。
【0008】第2の発明は、実質的にポリエチレンテレ
フタレートからなる極限粘度が0.55dl/g以上の
ポリエステルを溶融紡糸し、それに続く延伸によってポ
リエステル超極細繊維を製造するに際し、以下の(1)
〜(3)の条件の下で紡出し、紡出直後のポリエステル
に40℃以下の冷却風を吹き付けることを特徴とするポ
リエステル超極細繊維の製造方法である。 (1)ポリエステルの極限粘度([η])×吐出線速度
(V)=0.5〜10(dl/g)・(m/分) (2)紡糸口金表面温度=280〜310℃ (3)紡糸口金孔芯間距離≧2mm 以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】本発明は、実質的にポリエチレンテレフタ
レートからなるポリエステルを溶融紡糸し、それに続く
延伸によって製造される超極細繊維である。溶融紡糸し
た後、延伸を施すことなく極細繊維を得るには、例え
ば、紡糸速度を約3000m/分以上の高速で巻取り、
そのまま製品とする方法がある。しかし、このような方
法により得られた超極細繊維は結晶の配向が不十分で、
本発明の目的である耐磨耗性に優れたポリエステル超極
細繊維が得られない。
【0010】本発明に用いるポリエステルは、90モル
%以上がエチレンテレフタレートの繰り返し単位からな
る実質的にポリエチレンテレフタレートである。本発明
のポリエステルには、他のポリエステル成分が10モル
%以下の割合で含まれていてもよい。他のポリエステル
成分としては、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカンニ
酸、スルホイソフタル酸等の酸成分や、ジエチレングリ
コール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、
ポリエチレングリコール等のグリコール成分があげれら
るが、特に限定されない。必要に応じて、ポリエステル
に艶消し剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、顔料等
を含有させてもよい。
【0011】本発明のポリエステル超極細繊維の極限粘
度は0.55dl/g以上であることが必要であり、好
ましくは0.57〜0.68dl/g、より好ましくは
0.58〜0.65dl/gである。極限粘度が0.5
5dl/g未満では、ポリエステル繊維を人工皮革やス
エード調編織物等の布帛に用いた場合、耐磨耗性が乏し
くなる。本発明のポリエステル超極細繊維の単糸繊度
は、0.2dtex以下であることが必要であり、好ま
しくは0.18〜0.05dtexである。単糸繊度が
0.2dtexを越えると、磨耗により単糸がフィブリ
ル化して布帛から脱落し、耐磨耗性が低下する。
【0012】本発明のポリエステル超極細繊維の結晶配
向度は85〜95%であることが必要であり、好ましく
は87〜93%である。結晶配向度は、後述する広角X
線回折により測定される結晶部の配向度である。本発明
の繊維は、結晶配向度が高いことから、優れた耐磨耗性
を発現する。結晶配向度が85%未満では、配向が不十
分であるため、長期間の使用時に超極細繊維が切断す
る。結晶配向度が95%を越えると、配向が過度となり
繊維のフィブリル化が発生し、耐磨耗性が低下する。
【0013】本発明のポリエステル超極細繊維は、上記
要件に加えて、破断伸度が20〜45%であることが好
ましく、より好ましくは25〜45%、最も好ましくは
30〜40%である。破断伸度が20%未満では、繊維
のフィブリル化が発生し易くなり、破断伸度が45%を
越えると、耐磨耗性が低下しやすくなる。本発明のポリ
エステル超極細繊維は、下式に示すタフネス値が20
(cN/dtex)・(%)0.5以上であることが好ま
しく、より好ましくは23(cN/dtex)・(%)
0.5以上である。タフネス値が20(cN/dtex)
・(%)0.5未満では、布帛に加工した時に布帛の耐磨
耗性が低下しやすくなる。 タフネス=(破断強度)×(破断伸度)0.5
【0014】次に、本発明のポリエステル超極細繊維の
製造方法について説明する。本発明のポリエステル超極
細繊維は、実質的にポリエチレンテレフタレートからな
る極限粘度0.55dl/g以上のポリエステルを溶融
紡糸し、それに続いて延伸を行うことによって製造され
る。ポリエステルの極限粘度が0.55dl/g未満の
場合、紡糸時の安定性が低下する。
【0015】溶融紡糸に用いる溶融紡糸機として、乾燥
機、押出機及び紡糸頭を設けた公知の紡糸機を用いるこ
とができる。溶融されたポリエチレンテレフタレート
は、紡糸頭に装着された紡糸口金より吐出され、紡出直
後に紡糸口金表面下方に設けた冷却設備から冷却風を吹
き付けることによって冷却固化され、マルチフィラメン
トとして紡糸される。本発明の製造方法においては、紡
糸するポリエステルの極限粘度[η]と紡糸口金に穿孔
された紡糸ノズルからの吐出線速度Vとの積が、0.5
〜10(dl/g)・(m/分)であることが必要であ
り、好ましくは1〜5(dl/g)・(m/分)であ
る。この積が0.5(dl/g)・(m/分)未満で
は、ポリエステルの極限粘度をいかに高くしても、紡口
直下で糸切れが多発し、安定した紡糸が困難となる。こ
の積が10(dl/g)・(m/分)を越えると、紡口
直下で糸曲がり等が発生して安定した紡糸が困難とな
る。
【0016】本発明における紡口表面温度は、280〜
310℃であることが必要であり、好ましくは285〜
305℃である。紡口表面温度が280℃未満では、吐
出条件をいかに調整しても糸切れが多発し、安定した紡
糸が困難となる。紡口表面温度が310℃を越えると、
孔周辺に「目やに」状の堆積物が付着し、糸切れが発生
する。紡口表面温度を本発明の範囲に維持するには、紡
口表面にヒーター類を直接、密着させて調節する方法
や、紡口下部をヒーター類で囲んで調節する方法等が採
用されるが、表面温度の維持が達成される方法であれば
特に限定されない。
【0017】本発明に使用する紡糸口金には、複数の吐
出孔が穿孔されているが、この吐出孔の間隔は、安定に
紡糸できるためには2mm以上であることが必要であ
る。吐出孔の間隔が2mm未満では、たとえ上記吐出速
度や紡口表面温度の条件を満足しても、安定した紡糸が
困難である。紡糸口金における吐出孔の配列は、円周配
列や直交配列等、特に限定されない。例えば、外形が円
形の紡糸口金の場合は円周配列が好ましい。孔数を増す
目的から、多重の円周配列とすることが好ましい。この
場合にも、孔間の最も短い間隔を2mm以上とすること
が重要である。
【0018】吐出孔の孔径は、通常、0.20mmΦ〜
0.05mmΦが採用され、好ましくは0.15mmΦ
〜0.07mmΦである。孔径は、本発明の要件である
極限粘度と吐出線速度の積を満足するように選択される
ことが必要である。一般に、超極細繊維の製造には、1
孔当たりのポリマー吐出量を少なくすることが必要であ
る。この場合には、吐出孔の孔径を小さくして、上記吐
出線速度を満足するようにすることが好ましい。
【0019】吐出孔から吐出されたマルチフィラメント
を、紡糸口金下方に設けた冷却風吹き出し装置により、
好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下の温
度の冷却風を吹き付けて固化させることが好ましい。冷
却風の温度が40℃を越えると、風量を増加することが
必要となり、冷却風が過大な速度でマルチフィラメント
に吹き付けられるために糸切れが生じやすくなる。この
冷却風吹き付け位置は、(紡糸口金表面〜紡糸口金表面
下方50mm)の領域であることが好ましい。紡糸口金
表面下方から50mmを越えると、冷却風量を多量にす
ることが必要となる。冷却風の風速は0.2〜1.5m
/秒が好ましい。
【0020】冷却風吹き付けにより、紡口直下1cmの
位置において、マルチフィラメント束から1cm離れた
位置での雰囲気温度を100〜200℃に調節すること
が好ましく、より好ましくは150〜200℃以下であ
る。吐出孔より吐出したマルチフィラメントを急冷する
ことにより、超極細繊維の紡糸口金直下での糸切れが抑
制され、安定した紡糸が継続される。冷却固化されたマ
ルチフィラメントに仕上げ剤を付与した後、未延伸繊維
として一旦巻取り、その後に延伸する2段階法や、未延
伸糸を一旦巻取ることなく連続して延伸する1段階法に
より延伸繊維とする。
【0021】必要に応じて、未延伸繊維の段階又は延伸
繊維の段階で交絡処理を施してもよい。交絡処理は、公
知の交絡ノズルを採用し、交絡数1〜50ヶ/mから選
択することが好ましい。延伸においては、延伸温度を5
0〜100℃で配向延伸を行うことが好ましい。延伸倍
率は、本発明の繊維の破断伸度が20〜45%となる倍
率を選択することが好ましい。延伸倍率の設定は、通
常、供給ロールと引取ロールの速度比によって行う。
【0022】本発明のポリエステル超極細繊維は、布帛
として、所望の長さに切断して人工皮革に用いたり、長
繊維のまま編織物に用いることができる。人工皮革に用
いる場合には、長さ150mm〜3mmに切断して用い
ることが好ましい。編織物に用いる場合には、そのまま
使用してもよく、また撚糸や仮撚加工及び流体噴射加工
を施して使用してもよい。編織物には、全て本発明のポ
リエステル超極細繊維を使用してもよく、他の繊維と混
合して使用してもよい。混繊複合する場合、他の繊維と
しては、ポリエステル、セルロース、ナイロン6、ナイ
ロン66、アセテート、アクリル、ポリウレタン弾性繊
維、ウール、絹等の長繊維及び短繊維等が挙げられる
が、これらに限定されるものではない。
【0023】本発明のポリエステル超極細繊維と他の繊
維との混繊複合糸は、他の繊維をインターレース混繊、
インターレース混繊後延伸仮撚、どちらか一方のみ仮撚
しその後インターレース混繊、両方別々に仮撚後インタ
ーレース混繊、どちらか一方を流体噴射加工後インター
レース混繊、インターレース混繊後流体噴射加工、流体
噴射混繊、等の種々の混繊方法によって製造することが
できる。かかる方法によって得た混繊複合糸には、交絡
が10個/m以上存在することが好ましい。
【0024】
【発明の実施形態】以下に実施例により本発明を具体的
に説明するが、本発明は実施例により限定されるもので
はない。なお、本発明における物性の測定方法及び測定
条件は以下の通りである。 (1)極限粘度 極限粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて
求められる値である。 式中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール
溶媒で溶解したポリマーの稀釈溶液の35℃での粘度を
同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、
相対粘度と定義されているものである。Cはg/100
mlで表されるポリマー濃度である。
【0025】(2)破断強度,破断伸度 JIS−L−1013に基づいて測定する。 (3)結晶配向度 X線回折装置を用い、試料の厚みを約0.5mmとし
て、以下の条件で回折角2θが7度から35度までの回
折強度曲線を描く。測定条件は、30KV、80A、ス
キャンニング速度1度/分、チャート速度10mm/
分、タイムコンスタント1秒、レシービングスリット
0.3mmとする。2θ=16度及び22度に描かれる
反射を各々(010)、(110)とする。更に、(0
10)面をー180度〜+180度方位角方向に回折強
度曲線を描く。
【0026】±180度で得られる回折強度曲線の平均
値をとり、水平線を引きベースラインとする。ピークの
頂点からベースラインに垂線をおろし、その高さの中点
を求める。中点を通る水平線を引き、これと回折強度曲
線との2つの交点間の距離を測定し、この値を角度に換
算した値を配向角Hとする。結晶配向度は、次式で与え
られる。 結晶配向度(%)=(180ーH)×100/180
【0027】(4)耐磨耗性 得られたポリエステル超極細繊維を、長さ5mmに切断
し、特開平6−316877号公報の実施例1にしたが
って人工皮革を製造する。この人工皮革の磨耗性を、J
IS−L−1096 E法(マーチンデール法)により
磨耗回数を評価する。 磨耗回数が、 20000回以上を ◎ 10000〜20000回未満 ○ 5000〜10000回未満 △ 5000回未満 × とする。本発明では、この磨耗回数が10000回以上
を合格とする。
【0028】(5)紡口下1cm以内の雰囲気温度 紡口下1cm、糸条からの距離1cmの位置の温度を測
定し、雰囲気温度とする。 (6)紡糸安定性 1錘当たり4エンドの紡口を装着した溶融紡糸機を用い
て、各実施例ごとに2日間の溶融紡糸と延伸を行う。延
伸糸を3kgのパーン状に巻き取る。この期間中の紡糸
時の糸切れの発生回数と、得られた延伸糸に存在する毛
羽の発生頻度(毛羽発生パーンの数の比率)から、以下
の基準により判定する。 ◎ ; 糸切れ0回、毛羽発生パーン比率5%以下 ○ ; 糸切れ2回以内、毛羽発生パーン比率10%未満 × ; 糸切れ3回以上、毛羽発生パーン比率10%以上
【0029】(7)総合評価 紡糸時の糸切れ及び、磨耗性のいずれもが◎の場合を
◎、このいずれかが○の場合を○、いずれかが×の場合
を×とする。
【0030】
【実施例1〜4、比較例1〜3】本実施例では、ポリエ
ステル超極細繊維の極限粘度と単糸繊度の効果について
説明する。極限粘度の異なるポリエチレンテレフタレー
トを用いて、吐出孔面積の異なる各種の紡糸口金から、
紡口表面温度を変更して溶融紡糸を行った。紡糸口金
は、孔が円周状に配列され、最内周の1周あたりに60
個の孔が2mm間隔で配置されたものである。放射状に
周の間隔を2mmとして、6周が配列されており、合計
の孔数は360個である。
【0031】紡糸されたマルチフィラメントを、紡口直
下3cmの位置に設置された冷風吹き出し器により、温
度20℃、冷風速度0.5m/秒の冷風で冷却した。こ
の時の紡口直下1cmの雰囲気温度は160℃であっ
た。冷却固化したマルチフィラメントに仕上げ剤を付与
した後、1500m/分で未延伸繊維として巻き取っ
た。この未延伸繊維を、公知の熱ロールと熱板を有する
延伸機により熱延伸を行った。延伸に際しては、熱ロー
ル温度75℃、熱板温度150℃とし、延伸倍率を変更
して延伸を行った。
【0032】製造条件、ポリエステル超極細繊維の極限
粘度、物性及び磨耗性を表1に示す。表1から明らかな
ように、本発明の超極細繊維は良好な紡糸性と優れた耐
磨耗性を有している。比較例1の繊維は、単糸繊度が本
発明外であり、人工皮革に用いた場合、風合が劣るばか
りか、耐磨耗性も不良であった。比較例2及び3は、紡
糸時の糸切れも多く、超極細繊維の耐磨耗性も不良であ
った。
【0033】
【実施例5〜9,比較例4〜6】本実施例においては、
破断伸度とタフネス値の効果について説明する。単糸繊
度0.15dtexとなるように孔当たりの吐出量を設
定し、ポリエステルの極限粘度と延伸倍率を異ならせた
以外は実施例2と同様にして超極細繊維を製造した。得
られたポリエステル超極細繊維の極限粘度、物性及び磨
耗性の結果を表2に示す。表2から明らかなように、本
発明の超極細繊維は、優れた耐磨耗性を有していた。
【0034】
【実施例10〜12、比較例7】本実施例においては、
超極細繊維の製造において、ポリエステルの極限粘度と
吐出線速度の積の効果について説明する。極限粘度
[η]が0.58dl/gのポリエステルを用いて単糸
繊度が0.15dtexの超極細繊維を実施例2と同様
にして製造するにあたり、使用する吐出孔の孔径を異な
らせてポリエステル超極細繊維を製造した。紡糸条件及
び紡糸性を表3に示す。表3から明らかなように、ポリ
エステルの極限粘度[η]と吐出線速度Vの積が本発明
の範囲であれば、良好な紡糸性が得られた。
【0035】
【実施例13〜14、比較例8】本実施例においては、
紡糸口金孔の芯間距離の効果について説明する。実施例
2と同様の紡糸条件において、紡糸口金の孔の芯間距離
を異ならせて紡糸を行ってポリエステル超極細繊維を製
造した。紡糸条件及び紡糸性を表4に示す。表4から明
らかなように、芯間距離が本発明の範囲にあるものは良
好な紡糸性を示した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、人工皮革やスエード調
編織物に用いた際に優れた耐磨耗性を発揮することがで
きるポリエチレンテレフタレート超極細繊維、その製造
方法及びポリエチレンテレフタレート超極細繊維を用い
た布帛を提供することが可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L035 BB31 BB40 BB54 BB91 4L048 AA21 AA35 AB07

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的にポリエチレンテレフタレートか
    らなるポリエステルを溶融紡糸し、それに続く延伸によ
    って製造される超極細繊維であって、極限粘度が0.5
    5dl/g以上、単糸繊度が0.2dtex以下、か
    つ、結晶配向度が85〜95%であることを特徴とする
    ポリエステル超極細繊維。
  2. 【請求項2】 破断伸度が20〜45%であり、下式に
    示すタフネス値が20(cN/dtex)・(%)0.5
    以上であることを特徴とする請求項1記載のポリエステ
    ル超極細繊維。 タフネス=(破断強度)×(破断伸度)0.5
  3. 【請求項3】 タフネス値が23(cN/dtex)・
    (%)0.5以上であることを特徴とする請求項1又は2
    記載のポリエステル超極細繊維。
  4. 【請求項4】 繊維長が150mm以下であることを特
    徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエス
    テル超極細繊維。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポ
    リエステル超極細繊維を少なくとも一部に用いた布帛。
  6. 【請求項6】 実質的にポリエチレンテレフタレートか
    らなる極限粘度が0.55dl/g以上のポリエステル
    を溶融紡糸し、それに続く延伸によってポリエステル超
    極細繊維を製造するに際し、以下の(1)〜(3)の条
    件の下で紡出し、紡出直後のポリエステルに40℃以下
    の冷却風を吹き付けることを特徴とするポリエステル超
    極細繊維の製造方法。 (1)ポリエステルの極限粘度([η])×吐出線速度
    (V)=0.5〜10(dl/g)・(m/分) (2)紡糸口金表面温度=280〜310℃ (3)紡糸口金孔芯間距離≧2mm
  7. 【請求項7】 ポリエステルの極限粘度([η])×吐
    出線速度(V)が1〜5であることを特徴とする請求項
    6記載のポリエステル超極細繊維の製造方法。
  8. 【請求項8】 冷却風の吹き付けを、(紡糸口金表面〜
    紡糸口金表面下方50mm)の領域で行うことを特徴と
    する請求項6記載のポリエステル超極細繊維の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 ポリエステル超極細繊維の破断伸度が2
    0〜45%となるような延伸倍率で延伸することを特徴
    とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のポリエステ
    ル超極細繊維の製造方法。
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