JP4484622B2 - スエード調人工皮革 - Google Patents
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Description
即ち、本発明は下記の通りである。
(2)極細繊維の繊度が0.5dtex以下である、
(3)極細繊維が、130℃の熱水中にて無緊張下で30分処理した後のtanδmax値が0.16以上0.22以下、Tmax値が125℃以上160℃以下である、
(4)極細繊維が、広角X線解析による結晶完全性が23%以上である、及び
(5)表層繊維層と織物・編物であるスクリム層の少なくとも2層構造以上の多層構造である。
3.表面繊維層を構成する極細繊維が、繊維軸方向への沸水収縮率が25%未満であることを特徴とする上記1又は2に記載のスエード調人工皮革。
5.ポリウレタン樹脂が有機溶剤系ポリウレタンであり、人工皮革中におけるポリウレタン樹脂の含有率が25〜50wt%であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のスエード調人工皮革。
7.耐磨耗性能のエンドポイントが60000以上であり、且つ、抗ピリング性能が4級以上であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のスエード調人工皮革。
したがって、本発明においては、高い耐磨耗性能と抗ピリング性を両立させるため、表面繊維層を構成する極細繊維におけるポリエチレンテレフタレートの極限粘度は、0.57〜0.63である。
繊度が0.04dtex未満で細すぎると、ブラックを代表とする濃染域に染色する場合、染色時の染料濃度が非常に高くなって、染色堅牢度が低下する傾向があり、また、糸が細くなり過ぎるため光が乱反射して濃色の色が十分に発現し難い場合がある。
好ましい製造方法の例としては、環境負荷の低減と製造工程を簡素化するために、前述の直接紡糸法によって得られた極細繊維をカットして短繊維化し、これを水中において分散させた後、抄造法によって直接シート化し、このシートを水流交絡法によって三次元交絡させた交絡体を作る技術である。
つまり、前述のシート化する方法については、カレンダー加工法を用いても良く、抄造法に限定するものではない。更に、交絡方法については、ニードルパンチなどの交絡方法を用いても良く、本発明においては水流交絡方法に限定するものではない。
また、スクリムが編物の場合、シングルニットで22〜28ゲージにて編み上げたものが好適である。
ポリオール成分としては、ポリエチレンアジペートグリコールなどのポリエステルジオール類、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルグリコール類、ポリカーボネートジオール類等が挙げられる。イソシアネート成分としては、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。鎖伸長剤としては、エチレングリコール等のグリコール類、エチレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルメタン等のジアミン類などを挙げることができる。
また、ポリウレタンエマルジョン中にあるいはポリマーチェーン内に、ヒンダードアミンやヒンダードフェノール等の耐熱酸化剤などの他成分が組み込まれたものも、ポリウレタン樹脂性能の低下や、染色中のポリウレタンの脱落に影響しない程度であれば問題なく、ポリウレタン樹脂として用いても良い。
液流染色機による染色は、ジェットノズルによる起毛の引き出し効果や生地柔布効果による商品力の向上、及び、生産性の観点から最も好ましい。
島津製作所製の島津ダイナミック超微小硬度計DUH-W201Sを用い、測定する極細繊維糸条より単糸1本を取り出し、Siウエハー上に横に静置して、Siウエハーごと測定ステージにセットした後、直径20μmの平面圧子にて、負荷速度0.284mN/secにて極細繊維の断面方向への圧縮変形時の応力を測定した。
測定した結果、得られた図3に示すような圧縮応力−圧縮率チャートより、一次降伏応力を求めた。
極限粘度(IV35℃)は、35℃においてオルトクロロフェノールに対し1g/dlの濃度になるよう試料を溶解し、ウベローデ型粘度計にて測定した還元粘度を、下記式により35℃における極限粘度に換算した値として定義する。
IV35℃=((1+ηsp/c)0.5−1)/0.5
130℃の熱水中にて無緊張下で30分処理した後の糸を、(株)オリエンテック製のMODEL DDV−01FPを用い、試料長2.00cm、測定周波数110Hz、昇温速度5℃/minの条件で、各温度における損失弾性率、貯蔵弾性率を求め、(損失弾性率/貯蔵弾性率)より動的弾性損失正接を算出し、その動的弾性損失正接温度曲線から、そのピークトップの動的弾性損失正接をtanδmaxとし、温度をTmaxとした。
130℃の熱水中にて無緊張下で30分処理した後の糸を、広角X線解析装置として(株)リガク社製のR−AXISIICを用い、試料を約6000dtex程度に束ねた後、透過法X線回折による測定方法で、CU管球にて管球電圧40kV、管球電流100mAをかけ、カメラ長98.2mmとし、検出器としてイメージングプレートIPを用い、回折角2θの測定範囲5〜45度における回折強度曲線を測定した。
結晶完全性(%)=〔1−(B/A)〕×100
耐白化性は、JIS−L−1096(E法:マーチンデール法)に準じた。この試験で、試験前明度と、押圧荷重12kPaとして、n=10で3000回磨耗後の明度(試験後明度)を、ミノルタCM3500Dを用いて、明度(L*)を測定し、摩耗前後の明度から、明度差を絶対値|△L|とし、耐白化性能として、下記の基準で評価した。
|△L|=|(試験前明度)−(試験後明度)|
○:|△L|<9
△:9≦|△L|≦10
×:10<|△L|
JIS−L−1096(E法:マーチンデール法)に準じた。この試験で、押圧荷重12kPaとしてn=10で磨耗試験後、直径2mm以上の面積で2箇所以上スクリム面の露出または穴が開いた回数をエンドポイントとし、下記の基準で評価した。
○:エンドポイントが60000以上
△:エンドポイントが55000以上
×:エンドポイントが55000未満
JIS−L−1096(E法:マーチンデール法)に準じ、押圧荷重12kPaにてn=10で30000回磨耗後、表面に発生した毛玉数の平均値を求め、下記の基準にてピリング性を評価した。
5級:毛玉数=0
4級:毛玉数=1〜2
3級:毛玉数=3〜10
2級:毛玉数=11〜20
1級:毛玉数>20
人工皮革の表面品位を、目視及び触感の官能検査で、下記の基準によりを評価した。
○:風合いが良好
△:風合いが並み程度
×:風合いが悪い
総合評価は、耐白化性能、耐磨耗性能、ピリング性、風合いの結果を基に評価した。
○:全て○
△:1つ△
×:それ以外
実施例1〜4では、紡糸する前のポリマーの極限粘度が0.63(実施例1、2、4)、0.68(実施例3)のポリエチレンテレフタレートを用い、直接紡糸法により紡糸速度700〜1000m/min、延伸倍率1.8〜2.0倍の条件にて、表1に示すポリエステル極細繊維を製造した。得られた繊維の単繊維繊度は0.15dtex、破断伸度は40〜55%であった。
比較例1では、紡糸する前のポリマーの極限粘度が0.69のポリエチレンテレフタレートを用い、直接紡糸法により紡糸速度700m/min、延伸倍率2.5倍の条件にて、表1に示すポリエステル極細繊維を製造した。得られた繊維の単繊維繊度は0.15dtex、破断伸度は25%であった。
得られた人工皮革原反を、130℃、30分間、液流染色機でブルーの分散染料(BlueFBL:住友化学製)で染色し、アルカリで還元洗浄を実施し、明度28のスエード調人工皮革製品を得た。
紡糸して一旦巻き取った後、延伸工程での延伸倍率を2.7倍とし、180℃のヒートチューブ内にて緊張下で5分間熱セットしたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル繊維を製造した。得られた繊維は、表1に示す通りであり、単繊維繊度0.15dtex、破断伸度15%であった。
紡糸する前のポリマー極限粘度が0.63のポリエチレンテレフタレートを用い、直接紡糸法により紡糸速度2000m/minにて、溶融ポリマーを比較的急速に冷却する条件で紡糸し、延伸倍率を1.25倍としてポリエステル繊維を製造した。得られた繊維は、表1に示す通りであり、単繊維繊度は0.15dtex、破断伸度は60%であった。
紡糸する前のポリマー極限粘度が0.68のポリエチレンテレフタレートを用い、直接紡糸法により紡糸速度を2500m/分(比較例4)、1900m/分(比較例5)として紡糸し、延伸しない条件にてポリエステル繊維を製造した。得られた繊維は、表1に示す通りであり、単繊維繊度は0.15dtex、破断伸度は100%(比較例4)、140%(比較例5)であった。
極限粘度0.52〜0.74のポリマーを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリエステル極細繊維を製造した。得られた極細繊維は、表2に示す通りであり、単繊維繊度は0.15dtexであった。
海成分にはアルカリ減量しやすいポリエステル共重合ポリマーとして、分子量4000のポリエチレングリコールを10%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、一方、島成分には共重合していないレギュラータイプのポリエチレンテレフタレートを用いた。この2種のポリマーを、海成分35%、島成分65%にて紡糸後、熱延伸し、続いて、80℃の5wt%のNaOH水溶液で海成分を溶出し、極細繊維を得た。得られた極細繊維は、表3に示す通りであり、単繊維繊度0.10dtex(実施例7)、0.06dtex(実施例8)であった。
アルカリ減量しやすいポリエステル共重合ポリマーとして、分子量4000のポリエチレングリコールを10wt%共重合したポリエチレンテレフタレートを用い、一方、アルカリ減量し難いポリマーとして、共重合していないレギュラータイプのポリエチレンテレフタレートを用いた。この2種のポリマーを、6分割の割繊糸となるように、共重合ポリマー:レギュラータイプのポリマーの比率を20:80として紡糸、延伸し、続いて、80℃、5wt%のNaOH水溶液で共重合成分を溶出し、極細繊維を得た。得られた極細繊維は、表3に示す通りであり、単繊維繊度は0.13dtexであった。
実施例7及び実施例9と同様の製法で、紡糸後に熱延伸した糸を、アルカリ減量することなく、50mmにカットし、続いてカード・クロスラッパーに通し、目付け180g/m2のシート状物を製造した。このシート状物をニードルパンチングして三次元交絡不織布を得た。
実施例1と同様にバフ工程まで完了したシートを用い、ポリエーテル系の水系ポリウレタンを人工皮革に対して付着率5〜25wt%となるように含浸し、ピンテンター乾燥機で3分間加熱乾燥して人工皮革原反を作製した。得られた人工皮革原反を、実施例1と同様に染色し、明度29のスエード調人工皮革製品を得た。
実施例7と同様の極細繊維を用い、実施例1と同様にバフ工程まで完了したシートを用い、エステル・エーテル系ポリウレタン溶液を人工皮革に対して付着率25〜45wt%となるように含浸した後、湿式凝固させ、熱水中にて脱溶剤処理をして乾燥して人工皮革原反を作製した。得られた原反を実施例1と同様にして染色し、明度28のスエード調人工皮革製品を得た。
Claims (7)
- 表面繊維層がエチレンテレフタレートの繰り返し単位からなるポリエチレンテレフタレートの極細繊維で構成され、ポリウレタン樹脂が含浸されて染色されたスエード調人工皮革であって、下記の(1)〜(5)の条件を満足することを特徴とするスエード調人工皮革:
(1)ポリエチレンテレフタレート極細繊維の極限粘度が0.57以上0.63以下である、
(2)極細繊維の繊度が0.5dtex以下である、
(3)極細繊維が、130℃の熱水中にて無緊張下で30分処理した後のtanδmax値が0.16以上0.22以下、Tmax値が125℃以上160℃以下である、
(4)極細繊維が、広角X線解析による結晶完全性が23%以上である、及び
(5)表層繊維層と織物・編物であるスクリム層の少なくとも2層構造以上の多層構造である。 - 表面繊維層を構成する極細繊維が、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が80%以上のポリエチレンテレフタレートからなることを特徴とする請求項1記載のスエード調人工皮革。
- 表面繊維層を構成する極細繊維が、繊維軸方向への沸水収縮率が25%未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスエード調人工皮革。
- ポリウレタン樹脂が水性ポリウレタンであり、人工皮革中におけるポリウレタン樹脂の含有率が5〜25wt%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスエード調人工皮革。
- ポリウレタン樹脂が有機溶剤系ポリウレタンであり、人工皮革中におけるポリウレタン樹脂の含有率が25〜50wt%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスエード調人工皮革。
- 表面繊維層を構成する極細繊維が、繊維断面方向への圧縮変形時の1次降伏応力が0.16mN/μm2以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスエード調人工皮革。
- 耐磨耗性能のエンドポイントが60000以上であり、且つ、抗ピリング性能が4級以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスエード調人工皮革。
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