JP3924360B2 - 高中空ポリエステル系繊維よりなる人工皮革 - Google Patents

高中空ポリエステル系繊維よりなる人工皮革 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は人工皮革に関し、更に詳しくは、中空ポリエステル系繊維をその構成繊維とする不織布を基布とする人工皮革に関する。
【0002】
【従来の技術】
人工皮革は多種多様の用途に用いられているが、該人工皮革には市場要求の一つとして、該人工皮革の軽量化が求められている。
【0003】
従来より、該軽量化の方法として、中空率が40%を越えるような、高い中空度を有するポリエステル系繊維を用いる方法が提案されている。
【0004】
このような高い中空度を有するポリエステル系繊維の製造方法としては、切欠きを有する円弧状のスリットからなる吐出孔を形成した紡糸口金から、溶融押し出しすればよいが、高い中空率の繊維を得る為には、円弧状スリットの曲率半径を大きくとると共にスリット幅を小さくする必要がある。
【0005】
しかしながら、該スリット幅は、一般に0.05〜0.03mm程度が下限であり、これより小さくするとポリマー中の不純物(異物)等によりスリットが目詰まりしやすくなること、また、円弧状スリットの曲率半径を大きくすると、一吐出孔当たりの吐出下限量が増大して繊度が大きくなるため、一般に採用される製糸条件下では中空率40%以上のポリエステル系繊維は得られず、例えば、複数のスリットより溶融ポリマーを吐出させ、通常の条件で紡糸延伸する方法(特開昭61−79486号公報、特開昭61−83307号公報、特開平6−2210号公報、特開平6−235120号公報、特開平7−238418号公報、特開平7−238419号公報、特開平7−268726号公報、特開平7−268727号公報等)、スリットを複雑な形状に繋ぎ合わせた口金を使用して特殊な中空繊維を製造する方法(特開昭62−206009号公報等)、紡糸速度3000m/分以上の高速で紡糸する方法(特公昭57−54568号公報、特公昭62−33915号公報等)、溶融紡糸直後の糸条に、片面から冷却用気体を吹き付け、且つ紡糸ドラフトを400〜4000とし、紡糸速度1500m/分以下で紡糸する方法(特開平6−287809号公報等)、吐出された糸条を片面急冷した後、紡糸速度1500m/分以下で紡糸する方法(特開昭61−47807号公報、特開昭62−206008号公報等)、スリット状ノズルの内側から、窒素ガス等の不活性ガスを導入して、内外から吐出糸条を冷却したり、紡糸口金ノズル構造を二重管として、口金から吐出糸条の中心部に自吸式または強制的に空気や窒素ガス等を導入して高中空ポリエステル系繊維を製造する方法(特開昭57−106708号公報、特開昭62−289642号公報、特開昭63−21914号公報等)等、特殊な製糸条件下で製造されている。
【0006】
しかしながら、従来提案されている各種の中空率が40%を越える中空ポリエステル系繊維は、製糸工程や後加工工程において、中空部が潰れて偏平化、または破壊されやすく、一度偏平化した繊維は元の形状に回復し難い、完全に破壊された繊維は中空繊維としての効果が無くなるといった問題、また特殊なノズルを用いる場合には、その、ノズル構造が複雑になることから、大きな繊度を有する中空繊維しか得られず、人工皮革として硬いものしか得られないといった問題があり、前述したような、人工皮革の軽量化を図れるような中空繊維は未だ提供されていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた欠点を解消し、ソフト性、軽量性、寸法安定性、キックバック性等に優れた機能を発揮する人工皮革を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、人工皮革を構成する中空ポリエステル繊維について鋭意検討を重ねた結果、中空形状が機械的に変形した際の回復特性に優れた中空ポリエステル系繊維によって構成された人工皮革が、優れた特性を有していることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、前記の目的は、
中空ポリエステル系繊維をその構成繊維の少なくとも一部とする人工皮革であって、
該中空ポリエステル系繊維のうち人工皮革を基準として30重量%以上が、下記(a)〜(d)の各要件を同時に満足する事を特徴とする、高中空ポリエステル系繊維よりなる人工皮革により達成される。
(a)単繊維繊度が0.1〜8.0デニールの範囲にあること。
(b)繊維横断面の中空率が40〜85%の範囲にあること。
(c)繊維微細構造における結晶化度が20〜35%の範囲にあること。
(d)ミラー指数による(010)面の結晶サイズが4.0〜9.0nmの範囲にあること。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、高中空ポリエステル系繊維は、その単繊維繊度が0.1〜8.0デニールの範囲にあることが必要であり、好ましくは0.2〜3.0デニール、特に、0.5〜1.5デニールの範囲にあることが好ましい。該単繊維繊度が0.1デニール未満の場合には、中空繊維を安定して生産することができなくなり、また得られる中空繊維の中空率も小さくなりやすい。一方、8.0デニールを越える場合には、製糸時の工程安定性は良好であるものの、繊維横断面における中空壁面の厚さが大きくなるため、中空潰れが発生した場合の変形歪みが大きくなり、中空形状の回復特性が低下する。
【0011】
次いで、中空繊維横断面における中空率は40〜85%の範囲にあることが必要であり、50〜70%の範囲にあることが好ましい。該中空率が40%未満では、中空繊維が有する優れた風合い(ドレープ性、柔軟性、ソフトタッチ性)、隠蔽性、嵩高性、保温・断熱性等の改善効果が不十分となる。一方、85%を越える場合には、繊維壁面の厚みが薄くなりすぎて中空部破断が発生しやすくなったり、圧縮応力に対する抵抗性が低下して形態保持性が悪化する。ここで中空率とは、繊維横断面において該横断面の外周部で囲まれた図形の面積を基準としたときの、中空部の総面積の割合(%)をいう。
【0012】
繊維横断面における中空部の数は一つであっても複数であってもよいが、複数の中空部を形成した場合には、一つの中空部を形成した中空繊維と同一の中空率であっても、繊維壁面の厚みが薄くなり、風合いがソフトなものになる、また中空内に部分的な支えができて、中空部が潰れ難くなるとともに、回復性も向上する、といった好ましい点もあるが、形成する中空部の数が15を越えるような、ハニカム状の繊維横断面形状を有する中空繊維では、繊維壁面の厚みが薄くなり過ぎて紡糸延伸性が低下し易い、中空破断が発生し易い、圧縮応力に対する抵抗性が低下して形態保持性が悪化し易い、といった問題が生じるので好ましくない。高い中空率と、形態保持性及び嵩高性とを兼備させる為には、形成する中空部は一つが好ましい。また、中空部部分の形状は任意であるが、該形状が真円である場合には高中空率のものが得やすく、また中空形状の回復特性も良好なので好ましい。
【0013】
更に、高中空ポリエステル系繊維は、繊維微細構造における結晶化度が20〜35%の範囲にあることが必要である。該結晶化度は広角X線回折写真から算出されるが、該結晶化度が20%未満であると分子鎖間をつなぎ止める点が少なくなりすぎて物理的な外力で永久変形を起こしやすくなり、中空形状の回復特性も低下する。一方、35%を越えると分子鎖が剛直になりすぎて、物理的な外力による変形は起こり難くなるが、一度変形を受けると形状が破壊されて元の形状には回復しなくなる。該結晶化度は、22〜30%の範囲にあることが好ましい。
【0014】
また、高中空ポリエステル系繊維は、該繊維を構成しているポリエステル系ポリマーの、ミラー指数による(010)面の結晶サイズが4.0〜9.0nmの範囲にあることが必要である。該結晶サイズは広角X線回折写真の(010)面回折ピークの半値幅から計算され、該サイズが4.0nm未満であると、分子鎖間をつなぎ止める力が小さくなって外力に対する抵抗性が低下し、さらに同一結晶化度の下では結晶の数が多くなり、繊維微細構造では微結晶を結節点とする網目構造の網目が小さくなるため、歪みが小さい段階で永久歪みが発生しやすくなるので、中空繊維が中空潰れした場合の形状回復性能が低下する。一方、該結晶サイズが9.0nmを越えると巨大な結晶となり、結晶化度が大きくなった場合と同様に分子鎖が剛直になりすぎる。
【0015】
なお、これらの結晶化度及び結晶サイズは、繊維の収縮特性によって最適範囲は異なり、乾熱収縮率(180℃下20分間処理:DHS)が1.0〜5.0%のいわゆる低収縮タイプの場合には、結晶化度は25〜35%、(010)面の結晶サイズは7.0〜8.5nmの範囲が適当であり、DHSが40〜60%のいわゆる高収縮タイプの場合には、結晶化度は25〜30%、(010)面の結晶サイズは4.0〜5.0nmの範囲が適当である。
【0016】
本発明において、高中空ポリエステル系繊維は、中空の形状回復率Raが75%以上で、且つRbが90%以上であることが好ましい。
【0017】
ここで、中空形状の回復率Raは、中空繊維を加圧して中空部を90%以上つぶした後、常温常圧下で1時間放置した時の中空部面積をSb、当初の中空部面積をSaとした時、Ra=Sb/Sa×100(%)で表され、またRbは、中空繊維を加圧して中空部を90%以上つぶした後に常温常圧下で1時間放置し、次いで130℃下10分間熱処理した時の中空部面積をScとした時、Rb=Sc/Sa×100(%)で表される。該RaとRbの値が上記の範囲にあると、人工皮革の軽量性、柔軟性、寸法安定性、キックバック性等の特性が向上する。
【0018】
また本発明において、高中空ポリエステル系繊維は、そのシルクファクター(破断強度(g/d)×破断伸度(%)0.5)が15〜30の範囲にあることが好ましく、15未満では強力・タフネスが低くなりすぎ、一方、30を越える場合には高中空率を有する繊維は得難くなる。
【0019】
本発明において、中空部が繊維横断面内に占める位置は、繊維横断面の外周部で形成される図形の中心点に対して点対称であることが好ましく、この位置は、特に、中空部の数が1つであって、且つ繊維外壁により形成される図形の中心点と、中空部繊維内壁により形成される図形の中心点との2点を通る直線が交わる繊維壁面部分の二箇所の厚さを夫々La、Lb(ただし、La≦Lbとする)とする時、LaとLbとの肉厚比が(1:1)〜(1:5)の範囲にあるような偏心度となるように占めることが好ましい。該偏心度が上記範囲から外れると中空繊維が潰れたときの繊維形状の回復性能が低下する傾向にある。
【0020】
また、中空部を構成する壁面の厚さは0.5〜5μmの範囲にあることが好ましく、特に、1.0〜3.0μmの範囲にある場合には、優れた中空形状の回復性能を示すと共に、中空繊維が有する嵩高性、保温性、軽量性、ソフトな触感等の特性がより向上するので好ましい。なお、壁面の厚さが薄くなりすぎると製糸性が悪化し、また、中空破断が発生したり耐摩耗性が低下する場合がある。
【0021】
また、本発明の人工皮革は、中空ポリエステル系繊維として、70℃の温水中で45%以上の収縮率を有する高収縮性中空繊維を、該中空ポリエステル系繊維全重量を基準として5〜60%含んでいることが好ましい。このような高収縮性を有する中空繊維を上記の範囲含む人工皮革は、人工皮革用基材が嵩高くなり、更なる軽量化を図ることができる。このような高収縮性を有する高中空ポリエステル系繊維は、最初は物理的外力によって中空潰れし易いが、該中空繊維を加熱処理(100〜150℃下にて5〜10分間の処理)すると中空の形状がほぼ完全に回復し、その後の回復性能は良好なものとなる。
【0022】
更に、中空ポリエステル系繊維として、180℃の乾熱処理をした際の収縮率が−15〜+5%の範囲にある潜在自発伸長中空繊維を、該中空ポリエステル系繊維全重量を基準として、40〜95%含んでいることが好ましい。本発明において、潜在自発伸長中空繊維とは、実際にウェブを収縮させる際の60〜70℃の温度下での収縮率が0以下であることいい、該潜在自発伸長中空繊維を上記の範囲含む人工皮革用基材は嵩高いものとなるが、該潜在自発伸長繊維は、前記の高収縮性中空繊維と併用すると、その嵩高性が更に向上するので人工皮革の軽量化の観点から特に好ましい。さらにDHSが0〜−10%の範囲にある自己伸長性を有する繊維では、結晶化度は20〜25%、(010)面の結晶サイズは4.5〜5.5nmの範囲であることが適当である。
【0023】
本発明の人工皮革は、該人工皮革を構成する中空ポリエステル系繊維の中空形態開度が、該人工皮革の表層部と内層部とで異なることが好ましく、人工皮革表層部に配された中空繊維の中空形態開度が小さく、内層部に配された中空繊維中空形態開度が大きくなっていることが特に好ましい。
【0024】
該形態開度が上記のように異なっている場合には、人工皮革用不織布において表層部に配された薄皮状の高中空ポリエステル系繊維は、中空形態が加熱ローラーの接圧により、押しつぶされて扁平形状化し、又、人工皮革用不織布の中層部及び内層部に配された該高中空ポリエステル系繊維に対しては、上記ローラーの圧力が伝わり難いので中空形状回復機能を発揮し、中空繊維自身が、空間部を確保している状態でウレタン樹脂で含浸、固着されている。これは、本発明の高中空ポリエステル系繊維を用いた時特有の現象である。
【0025】
つまり、本発明の人工皮革は、表面層に配された高中空ポリエステル系繊維が、扁平状(中空部が、完全に押しつぶされた状態)の形態をとり、中層部及び内層部は略円形断面を有する高中空ポリエステル系繊維から構成されている。例えば、該人工皮革を折り曲げた際のシワ発現状態に於いては、扁平形状の中空繊維が曲げ応力を発揮し、又、略円形断面を有する高中空ポリエステル系繊維が、基布を容易に折り曲げた時でも無理なく変形対応が可能な、軽量性、弾力性、ボリュウム感、ソフト性、キックバック性等を発揮し、上記の組み合わせにより、更に優れた人工皮革を得ることができる。
【0026】
本発明において、ポリエステル系中空繊維の繊維横断面形状は丸断面、三角断面、多葉断面、十字断面等任意に採用することができ、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、その際、繊維横断面の外周部で囲まれた図形の最小外接円半径Raと最大内接円半径Rbとの比が(1:1)〜(1:5)の範囲内にあると、弾力性や隠蔽性をさらに向上させることができるので好ましく、特に、安定な生産がし易いと言う観点から、該断面形状は中空丸断面であることが好ましい。
【0027】
本発明の繊維は、短繊維であっても長繊維であってもよいが、カード工程の安定性及び得られるウェブの品位の点から短繊維を用いることが好ましく、特に、捲縮数は5〜30個/25mm、好ましくは8〜25個/25mm、捲縮率は8〜50%、繊維長は20〜100mm程度の短繊維を好ましく用いることが出来る。
【0028】
以上に述べた高中空ポリエステル系繊維は、以下に述べるような特殊な溶融紡糸方法によって製造することができる。
【0029】
すなわち、溶融ポリエステル系ポリマーを、中空糸製造用紡糸孔を具備する紡糸口金から吐出し、該吐出糸条を口金直下で急冷すると共に、紡糸ドラフトが150以上、好ましくは150〜500、特に好ましくは200〜400、且つ引取速度が500〜2000m/分、好ましくは1000〜1800m/分で引き取ることが、中空率が40%以上と、前記のような結晶化度及び結晶サイズを有する繊維微細構造を同時に達成するために大切である。吐出糸条を一旦急冷せずに徐冷すると、中空率40%以上の高中空化が達成できないだけでなく繊維微細構造における(010)面の結晶サイズも小さくなる。また紡糸ドラフトが150未満になると紡糸安定性が低下すると同時に、繊維微細構造における(010)面の結晶サイズも小さくなるため好ましくない。さらに引取速度が2000m/分を越えると、繊維微細構造における(010)面の結晶サイズは大きくなるが、中空率40%以上でかつ結晶サイズ及び結晶化度を同時に満足するものは、得られなくなり、一方、500m/分未満では(010)面の結晶サイズが小さくなるので好ましくない。なお、紡糸ドラフトがあまりに大きくなりすぎると、引き続いて延伸する場合の延伸性が低下する傾向にあるので、前記のように500以下にするのが望ましい。
【0030】
吐出された糸条を急冷するには、紡糸口金の直下、糸条の急冷開始位置までの距離を5〜50mm、好ましくは10〜30mmとし、温度が20〜35℃の冷却風を風速0.2〜4.0m/秒で吹き付ければよい。このような条件内で急冷することにより、安定に高中空ポリエステル系繊維を紡糸することができ、紡糸口金の直下、糸条の急冷距離が5mm未満になると、口金が冷却されて断糸原因となり、一方50mmを越えると冷却速度が不充分となって高い中空率を達成することが困難となる。また、冷却風の風速及び温度に関しても、両者のバランスによって適正な効果が発揮され、上述の範囲にないときには、例えば冷却が強過ぎると口金温度が低下しすぎると共に、ポリマー溶融粘度が上がりすぎて、口金からのポリマー吐出が困難になり、中空破断や断糸の原因となりやすい。また、風速が速くなりすぎると、糸揺れが激しくなって密着糸が発生しやすくなるので望ましくない。
【0031】
また、一旦急冷後次いで徐冷するためには、上記口金直下における糸条の急冷範囲が大切で50〜150mm、好ましくは80〜120mmとするのが、高い中空率を達成すると同時に、本発明の繊維微細構造を得るために大切である。即ち、糸条の急冷範囲が、50mm未満では冷却が不足するため、中空率40%以上を達成する事が困難となり、また繊維微細構造も、本発明の物とは、異なるものになる。一方、150mmを越えると中空率は満足し得るものの、糸条は、急冷されて徐冷領域がなくなる為、得られる未延伸糸の延伸性が著しく低下し、本発明の繊維微細構造とは異なるものとなる。さらに急冷に引き続いて施す徐冷の範囲は100〜400mmとすることが必須であり、150〜350mmとする事が好ましい。徐冷範囲がこの範囲を外れる場合には、繊維の微細構造形成が本発明のものとは、異なるものと成りやすい。
【0032】
この徐冷範囲では、温度が20〜35℃の冷却風を急冷部分の風速の1/2から1/10となるように吹き付ける。かかる条件内で徐冷することにより、安定に高中空ポリエステル系繊維を紡糸することができ、しかも本発明の繊維微細構造を達成することが可能である。即ち、上述の製造方法においては、吐出糸条を一旦急冷した後に徐冷する事が大切で、冷却風の吹き出し領域長、風速、温度などのバランスによって適性効果が、発揮されるのである。例えば冷却風温度が、20〜35の場合にあっては、風速は前記範囲が適当であり、冷却風温度が低すぎると、糸条が過冷却になり易く、一方冷却風温度が高すぎると糸条の冷却が不足して、高中空率の繊維が得られなくなり、さらに繊維微細構造も異なる物となる。
【0033】
この様にして引き取られた未延伸糸は、最終的な用途に応じて適宜延伸熱処理される。例えば、温度50〜70℃の温水中で、1.8〜5.5倍の延伸倍率で延伸し、これを熱セットしない場合には高収縮タイプの中空繊維が得られ、加熱ローラーやプレート等で、緊張熱処理すれば低収縮タイプの中空繊維が得られ、また一旦延伸処理した後、温水中等でオーバーフィードしながら熱処理すれば自己伸長タイプの中空繊維が得られる。
【0034】
本発明においては、高中空ポリエステル系繊維を単独で用いても、もしくは他のポリエステル系繊維及び/または他の合成繊維と併用してもよく、中空の潰れ難さや形状回復特性に基づいて各種優れた特性を有する人工皮革を得ることができるが、該高中空ポリエステル系繊維を、人工皮革内に30重量%以上、好ましくは40重量%以上占めるようにすることが、高中空ポリエステル繊維が中空潰れし難く、また形状回復特性も良好なので、皺がつきにくく、また仮に皺がついても容易に回復するので好ましい。
【0035】
これらの高中空ポリエステル系繊維は、目的に応じ、捲縮数を5〜30ケ/インチ当たり付与し、更に30〜70mmにカットして、カード工程を通過させ、ウェブを作成、ニードルパンチ工程を経て、不織布となし、更に樹脂加工工程を経て人工皮革を得られるが、その際には、任意に、他のバインダー繊維等を混綿してウェブを作成したり、他の繊維で作成したウェブを重ね合わせて多層構造状にしてもよい。
【0036】
本発明において、高中空ポリエステル系繊維は、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするエチレンテレフタレート系のホモポリエステル、コポリエステル又はこれらのポリエステルに他の成分を混合したポリエステルブレンドからなる必要があり、就中、繰り返し単位の90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエステルが好ましく、特に、ホモポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。ここで、該ポリエステルに共重合してもよい共重合成分としては、酸成分としてイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、P−オキシ安息香酸、P−βーヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸が挙げることができ、また、ジオール成分としては、1,3−プロパンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族ジオール、ポリエチレチングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール等を挙げる事ができ、これら第3成分は、単独で共重合させても2種以上を同時に共重合させてもよい。
【0037】
ポリエステルの重合度(固有粘度)は特に限定する必要はないが、大きくなりすぎると紡糸時の工程安定性が低下して細繊度のものが得難くなる傾向にあり、一方小さくなりすぎると高中空のものが得難くなる傾向があるので、該固有粘度[η]は0.45〜1.00の範囲にあることが好ましく、特に0.6〜0.7の範囲にあるのが好ましい。
【0038】
また、上記ポリエステルポリマーに添加する成分として、例えば抗菌剤、親水剤、防ダニ剤、消臭剤、遠赤外線放射性剤等の各種機能性付与剤、二酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニュウム、酸化マグネシウム、酸化カルシュウム、トルマリン等の無機微粒子を挙げることができ、目的に応じて適宜選択使用すればよいが、無機微粒子を添加する際には、ポリエステルポリマー中への分散性の観点から、その平均粒径は1.0μm以下にあることが好ましく、特に、0.1〜0.7μmの範囲にあることが好ましい。また、該ポリエステルポリマーへの添加量は、ポリエステルポリマーの全重量を基準として1〜10重量%の範囲にあることが好ましく、特に、2〜7重量%の範囲にあることが好ましい。
【0039】
【作用・効果】
本発明において得られる人工皮革を構成している高中空ポリエステル系繊維は、ポリマー内に大きな結晶が点在する構造を有している。すなわち、ポリマー分子鎖間は大きな結晶核で強固につなぎ止められ、一方結晶サイズが大きいので、結晶の数は少なくなって点在する結晶と結晶との間の距離は長くなっている。
【0040】
そして、この結晶における分子鎖の強固な繋ぎ止め効果と、結晶間の長いアモルファスな分子鎖の運動性の効果とが相俟って、小さな結晶が多数散在する構造の繊維より永久変形が起こり難くなり、中空部の潰れが発生し難く、また一旦中空形状の変形が起こっても例えば加熱処理することにより元の形状に容易に回復することができるものと考えられる。
【0041】
またこのような繊維微細構造により中空繊維であるにもかかわらず、染色性が極めて良好で、濃染化傾向があり、更に、摩耗等によるフィブリル化が生じにくく、長期間の使用において白化しにくく、かつ著しく抗ピル性が向上する。
【0042】
また、機械的外力によって中空部が変形しても、高中空ポリエステル系繊維には永久歪みが発生し難くなっており、形状回復特性がさらに向上する。すなわち、低中空率繊維は機械的外力により本発明の高中空ポリエステル系繊維よりも潰れにくいが、一旦潰れが発生すると中空形状は回復せず、耐久性に乏しいものであるのに対して、本発明の高中空ポリエステル系繊維は機械的外力によって一旦中空は潰れるが、機械的外力が取り除かれるとその回復特性により元の形状に容易に回復するので優れた耐久性を示すのである。
【0043】
さらに繊維が高い中空率を有することから見掛けの繊維径が太くなり、しかも上述のように中空形状の回復特性が良好なので、軽量保温効果に優れ、またカード工程に供する場合には細デニールにも関わらず、その外径デニールに相当するレベルの優れたカード通過性を示し、高品位のウエブを安定して製造することができる。つまり、この様な高中空ポリエステル系繊維を、人工皮革を基準として少なくとも30重量%以上、好ましくは40重量%以上用いる事により、得られた人工皮革は、従来品に類を見ないソフト性、軽量性、寸法安定性、キックバック性等に、優れた機能を発揮することができる。
【0044】
次に、これらの人工皮革が優れた機能を発揮する、マクロ的に見た場合のメカニズムについて述べるならば、先に述べたように、本発明の繊維は繊維壁が薄皮状で、中空潰れ回復性が非常に高い高中空ポリエステル系繊維であるが、この様な高中空ポリエステル系繊維を束状に集合体として一定の枠に入れ、繊維軸と直交するような外圧を加えると、例えば、繊維形状が中空真円断面形状である単糸繊維の場合には、正六角中空繊維形状に変形して、繊維がいわゆる最密形態をとり、外圧を取り除くと反対に繊維形態は、正六角形から真円中空形状に戻る。
【0045】
この様にして、外圧に対抗する形で単繊維による、いわゆる内部反発抵抗力が発生する。つまり、外圧力を繊維集合体として分散、吸収効果を発揮するものと推察されるが、この内部反発抵抗力は、人工皮革を押さえた時の底付き感、ボリュウム感、キックバック性機能の源となっているものと考えられる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は何等これらに限定されるものではない。なお、実施例中における各特性値の測定は、以下の方法にしたがった。
【0047】
固有粘度:
オルソクロルフェノールを溶媒として、35℃で測定した。
【0048】
繊維繊度:
JIS−L1015 7−5−1A法に準拠して測定した。
【0049】
見掛け繊度:
画像解析システム、(ピアス−2、ピアス株式会社製)を用い、単繊維のセクション断面画像を500倍に拡大して中空部分を含む断面積を求め、ポリマーの比重dを1.38と仮定して算出した。
【0050】
中空率:
画像解析システム、(ピアス−2、ピアス株式会社製)を用い、短繊維のセクション断面画像を500倍に拡大して断面画像から単繊維の中空部分を含む断面積と中空部面積とを測定し、その面積比により求めた。
【0051】
乾熱収縮率:
JIS L1015−1981法に準拠し測定した。
【0052】
結晶化度:
広角X線回折像から定法にしたがって求めた。
【0053】
(010)面結晶サイズ:
広角X線回折像の(010)面回折ピークの半値幅から定法にしたがって求めた。
【0054】
中空形状の回復率:
0.05mmの間隔を有する、一対の金属回転ローラー(直径20mm、幅2.5mm)間に、トウを1万デニール/25mm幅となる割合で通過させ、この際加圧調整して中空潰れが90%以上となるようにした。
次いで常温常圧下1時間放置したときの中空率bと、更に130℃下10分間加熱処理した後の中空率cとを測定し、元の繊維の中空率aから、下記式により中空の形状回復率Ra、及びRbを求めた。なお中空率はそれぞれ、任意に抜き取った単繊維20本の平均値とした。
Ra=b/a×100(%)
Rb=c/a×100(%)
【0055】
中空形成ポリマーの厚さ及び中空偏心比:
電子顕微鏡でセクション写真を撮影し、繊維外周で形成される図形の重心と中空部で形成される図形の重心とを結び、該線方向の中空形成ポリマー厚さLa及びLb(但しLa≦Lb)を測定して求めた。
【0056】
シルクファクター(SF):
JIS L−1015−1981法に準拠し測定した。
【0057】
繊維の収縮率:
収縮処理前の繊維に初荷重20mg/deを掛けて測定した繊維長(L0)と収縮処理後の繊維に荷重20mg/deを掛けて測定した繊維長(L1)とを求め、L0とL1とから、下記式により算出した。
【0058】
【数1】
収縮率 = (L0 − L1) / L0 × 100 (%)
【0059】
繊維の伸長率:
収縮処理前の繊維に初荷重20mg/deを掛けて測定した繊維長(L0)と収縮処理後の繊維に荷重20mg/deを掛けて測定した繊維長(L1)とを求め、L0とL1とから、下記式により算出した。
【0060】
【数2】
伸長率 = (L1 − L0) / L0 × 100 (%)
【0061】
基材の面積収縮率(S):
収縮処理前の人工皮革の面積(S0)と収縮処理後の人工皮革の面積(S1)とを求め、S0とS1とから、下記式により算出した。
【0062】
【数3】
S=(S0−S1)/S0 × 100 (%)
【0063】
基材の厚み(mm):
樹脂未含浸基材については、150g/cm2の荷重をかけ測定して厚みを求め、又、樹脂を含浸した基材については、500g/cm2の荷重をかけて測定して厚みを求めた。
【0064】
基材の見掛け密度(g/cm3):
基材の単位体積当たりの重さ(g)を測定した。体積については測定した基材の厚みと面積とから算出した。
【0065】
基材の柔軟性:
基材から20cm×20cmの面積を有する試験片を取り出し、熟練者10名を無作為に選びだし、官能評価により測定した。尚、この時の評価基準は以下の通りとした。
◎ ・・・10名中8名以上が柔軟であると評価したもの
〇 ・・・10名中6〜7名が柔軟であると評価したもの
△ ・・・10名中4〜5名が柔軟であると評価したもの
× ・・・10名中7名以上が硬いと評価したもの
【0066】
基材の挫屈性:
基材から取り出した20cm×20cmの基材を曲げ率5mm程度となるように折り曲げ、該折り曲げ部分を指先でつまみながら、漸次折り曲げ部を移動させて行き、折り曲がり部分の丸味の状態を観察した。判断基準としては、丸味があり、角の無い物を良、角が発生する物を不良とした。
【0067】
基材の曲げ硬さ(g/cm):
幅2.5cm×長さ9cmの試験片の、端部から2cmの部分をつかんで固定し、一方の端部より、2cmの位置を視点として、曲げてゆき、試験片を最初固定した時の位置から90°曲げた時の反発力を歪み計で測定した時の値から算出した。
【0068】
基材の曲げ剛性(kg/cm2):
求めた曲げ硬さより、下記式に基づいて算出した。
【0069】
【数4】
曲げ剛性 = 60 × 曲げ硬さ(g/cm) / 〔試験片厚さ(mm)〕3
【0070】
基材のレザーライク性:
幅2.5cm、長さ9cmの試験片を2つに折り、試験片厚さの3倍まで、折り曲げ圧縮したときの反発力を歪計で測定し、この値を曲げ硬さ(g/cm)で除した値で示す。この値が、大きいほど、レザーライク性が優れている事を示す。
【0071】
基材の屈曲耐久性:
JIS−K−6505−525法に準拠し測定を行った。
【0072】
[実施例1]
酸化チタンを0.07重量%含有する、固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレートを、中空型ノズルを2000ホール有する紡糸口金から、ポリマー温度268℃、吐出量1260g/分で押し出し、紡糸速度1800m/分で引き取って単繊維繊度が3.2デニール、中空率が50%の未延伸糸を得た。
【0073】
この時の口金中空型ノズル直下の急冷条件は、冷却風吹き出し位置15mm、冷却風吹き出し長100mm冷却風温度25℃、冷却風速度3.0m/秒とし、また紡糸ドラフトは400倍とした。
【0074】
また、急冷に続く徐冷条件は、冷却風吹き出し長250mm、冷却風温度25℃、冷却風速度0.5m/秒とした。
【0075】
得られた中空未延伸糸を、温度65℃、延伸倍率3.5倍で温水中で1段延伸して、単繊維繊度が1.0デニール、中空率が50%の高中空ポリエステル繊維を得た。更に、人工皮革用途として、熱処理等を加え繊維物性を確保するが、該高中空ポリエステル系繊維は、非加熱処理状態で高収縮性繊維、即ち、温水70℃、20分間収縮処理を施した際の収縮率が45%以上を示す繊維であった。
【0076】
更に、低収縮性繊維として、加熱処理として、180℃、20分間乾熱収縮処理を施した際の乾熱収縮率が10%以下の値を示す繊維を、容易に得ることができた。
【0077】
また、温水90℃の中で0.8倍にオーバーフィードさせた後、熱風乾燥機で100℃、20分間処理した繊維は、温水70℃、20分間処理しても繊維伸長変化は見られず、更に、180℃、20分間の乾熱処理に於ける乾熱収縮率の値が、−10%を示す、潜在自発伸長繊維を得ることができた。
【0078】
次いで、該繊維に油剤を付与した後、これら高中空ポリエステル系繊維に捲縮を付与し、繊維長51mmにカットした後、高収縮性繊維と潜在自発伸長繊維とを重量比で60:40(wt%)となるように混綿し、カードに掛け、ウェブを作り、40番レギュラーバーブ1つを有する針を装着したニードルロッカールームで800本/cm2の打ち込み密度にてパンチングを行い、目付157g/m2のウェブを得た。
【0079】
該ウェブを68℃の温水中に2分間浸漬して、面積収縮率が35%となるように収縮させた。更に、真空脱水したのち、50℃、5分間の雰囲気下乾燥を行い、目付242g/m2のウェブを得た。このウェブを180℃にて、各々60秒間加熱金属ドラムと60メッシュのステンレスネットベルト間に把持し、ウェブ表面積が、実質的に変化しないようにして加熱加圧処理し、厚さ1.2mm、見掛け密度0.202g/cm3の不織布を得た。得られた不織布は、ソフトな風合いに富んでおり、特に折り曲げた時の、折曲線の発生が無く、挫屈シワが、殆ど見られなかった。
【0080】
該不織布に、ポリウレタン樹脂の12%ジメチルホルムアミド溶液に、更に、ポリウレタン樹脂100重量部を基準として、カーボンブラックを5部添加した溶液「クリスボンMP−185」(大日本インキ化学(株))を均一に含浸させて、スクイーズロールで搾った後、40℃の温水中に浸漬し凝固させ、更に、溶媒が殆ど無くなるまで洗浄して乾燥した。
【0081】
得られた人工皮革は、軽量性、柔軟性に富み、且つ、厚さ方向に、弾力性が有り、折り曲げ時の折曲線の発生が無く、優れた性質を持ったシートであった。その評価結果を、表1に示す。
【0082】
[実施例2]
実施例1において、高収縮性繊維と潜在自発伸長繊維の混綿割合を60:40から変更して90:10とすること以外は同様の操作をおこなって人工皮革を得た。表1に結果を示す。
この様に、中空潰れの回復性に優れた機能を発揮する原綿を用いた時の人工皮革は、特に、ソフト性、軽量レザーライク性、弾力性等に優れた性能を示していた。
【0083】
[実施例3]
実施例1において、高収縮性繊維として、繊度0.5デニール、中空率75%で、見掛け(外見)繊度2.0デニールの繊維を用いること以外は同様の操作をおこなって人工皮革を得た。結果を表1に示す。
繊度が0.5デニールでも中空率が高く、実質繊度の約4倍の見掛け(外見)繊度が確保され2.0デニールと大きく成る為、カード通過性も良好で、安定したウェブ作成が可能であった。
【0084】
[実施例4]
実施例1において用いた、高収縮性繊維として、繊度3.0デニール、中空率70%で、見掛け(外見)繊度9.99デニールの繊維を用いること以外は同様の操作をおこなって人工皮革を得た。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
Figure 0003924360
【0086】
[比較例1]
実施例1において用いた高収縮性繊維から代えて、中実断面を有する繊度1.0デニールの高収縮性繊維を用いること以外は同様の操作をおこなって人工皮革を得た。結果を表2に示す。
カードウェブを作成しようとしたものの、カード通過不良が発生し、ウェブそのもの作成が困難なうえ、ウェブの均一性が確保出来ず、好ましい結果が得られなかった。繊維が中実断面であることから、見掛け(外見)繊度が変化せずに、繊度の小ささの為か、カード通過下限繊度が作用して、ウェブ作成不良が発生した為である。
【0087】
[比較例2]
比較例1において、中実断面を有する繊維の繊度を、1.0デニールから代えて2.0デニール徒すること以外は同様の操作をおこなって人工皮革を得た。
得られた人工皮革は、ソフト性、軽量性、レザーライク性等の面で、本発明の人工皮革と比べて、大幅に劣っていた。結果を表2に示す。
【0088】
[比較例3]
実施例1において用いた高収縮性繊維から代えて、繊度1.7デニール、中空率20%、見掛け(外見)繊度2.0デニールの高収縮性繊維を用いること以外は同様の操作をおこなって人工皮革を得た。
得られた人工皮革は、ソフト性、軽量性、レザーライク性等の面で、本発明の人工皮革と比べて、大幅に劣っていた。結果を表2に示す。
【0089】
[比較例4]
ポリエチレンテレフタレートとポリスチレンとを重量比で50:50の割合でブレンドしたポリマーブレンドを用いて、中実断面形状を有する繊度2.0デニールの高収縮性繊維を製造した。この高収縮性繊維と潜在自発伸長繊維とを、重量比で60:40となるように混綿し、ついでウェブとなした。
該ウェブを、ベンゼン溶剤65℃中に浸漬して、繰り返しポリスチレンを抽出除去し、繊維を多孔中空化した。
得られた繊維は微細な数多くの空間部分を有するものであって、繊維相互間の平均距離は小さく、中空断面形状の繊維を用いた時と同様に、人工皮革中における繊維の体積占有割合が50%程度になってはいたものの、本発明の人工皮革とは異なって、ソフト性は、有するものの、レザーライク性、特に挫屈性キックバック性の面で劣っていた。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
Figure 0003924360

Claims (8)

  1. 中空ポリエステル系繊維をその構成繊維の少なくとも一部とする人工皮革であって、
    該中空ポリエステル系繊維のうち人工皮革を基準として30重量%以上が、下記(a)〜(d)の各要件を同時に満足する事を特徴とする、高中空ポリエステル系繊維よりなる人工皮革。
    (a)単繊維繊度が0.1〜8.0デニールの範囲にあること。
    (b)繊維横断面の中空率が40〜85%の範囲にあること。
    (c)繊維微細構造における結晶化度が20〜35%の範囲にあること。
    (d)ミラー指数による(010)面の結晶サイズが4.0〜9.0nmの範囲にあること。
  2. 高中空ポリエステル系繊維が、Ra75%以上で、かつRbが90%以上である、請求項1記載の人工皮革。
    (ただし、Raは、中空繊維を加圧して中空部を90%以上つぶした後、常温常圧下で1時間放置した時の中空部面積の、当初の中空部面積に対する割合を表し、またRbは、中空繊維を加圧して中空部を90%以上つぶした後に常温常圧下で1時間放置し、次いで130℃下10分間熱処理した時の中空部面積の、当初の中空部面積に対する割合を表す。)
  3. 高中空ポリエステル系繊維のシルクファクターが15〜30の範囲にある、請求項1記載の人工皮革。
  4. 高中空ポリエステル系繊維の横断面における中空部の数が1つであって、且つ繊維外壁により形成される図形の中心点と、中空部繊維内壁により形成される図形の中心点との2点を通る直線が交わる繊維壁面部分の二箇所の厚さを夫々La、Lb(ただしLa≦Lbとする)とする時、LaとLbとの肉厚比が(1:1)〜(1:5)である、請求項1〜3のいずれか記載の人工皮革。
  5. 高中空ポリエステル系繊維の壁面厚みが0.5〜5μmの範囲にある、請求項1〜4のいずれか記載の人工皮革。
  6. 中空ポリエステル系繊維として、70℃の温水中で45%以上の収縮率を有する高収縮性中空繊維を、該中空ポリエステル系繊維全重量を基準として5〜60%含む、請求項1〜5のいずれか記載の人工皮革。
  7. 中空ポリエステル系繊維として、180℃の乾熱処理を施した際の収縮率が−15〜+5%の範囲にある潜在自発伸長中空繊維を、該中空ポリエステル系繊維全重量を基準として、40〜95%含む、請求項1〜5のいずれか記載の人工皮革。
  8. 人工皮革を構成する中空ポリエステル系繊維の中空形態開度が、該人工皮革の表層部と内層部とで異なる、請求項1〜7のいずれか記載の人工皮革。
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