JP3582466B2 - 高伸縮性ポリエステル系複合繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた捲縮発現能力により布帛に適度なストレッチ性を与えることのできるソフト性に優れ、品位良好な高伸縮性ポリエステル系複合繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは機械的特性をはじめ、様々な優れた特性を有しているため衣料用途のみならず幅広く展開されている。また、近年のストレッチブームによりポリエステル系布帛にもストレッチ性を与えるため、種々の方法が採用されている。
【0003】
例えば、織物中にポリウレタン系の弾性繊維を混用し、ストレッチ性を付与する方法がある。しかしながら、ポリウレタン系繊維を混用した場合、ポリウレタン固有の性質として風合いが硬く、織物の風合いやドレープ性が低下すると共に、ポリエステル用の分散染料には染まり難く、汚染の問題がつきまとう。そのため、還元洗浄の強化など染色工程が複雑になるばかりか、所望の色彩に染色することが困難であった。
【0004】
また、ポリエステル繊維に仮撚加工を施し、加撚/解撚トルクを発現させた繊維を用いることにより、織物にストレッチ性を付与する方法がある。しかしながら、このトルクは織物表面のシボに転移し易い傾向があり、織物欠点となり易い問題がある。このため、熱処理やS/Z撚りとすることでトルクバランスを取り、ストレッチ性とシボ立ちによる欠点をバランスさせることも行われているが、概ねストレッチ性が低下しすぎることが問題となっていた。
【0005】
一方、ポリウレタン系繊維や仮撚加工糸を用いない方法として、サイドバイサイド複合を利用した潜在捲縮発現性ポリエステル繊維が種々提案されている。潜在捲縮発現性ポリエステル繊維とは、熱処理により捲縮が発現するか、あるいは熱処理前より微細な捲縮が発現する能力を有するポリエステル繊維のことを言い、通常の仮撚加工糸とは区別されるものである。
【0006】
例えば、特公昭44−2504号公報や特開平 4−308271号公報には固有粘度差あるいは極限粘度差を有するポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)のサイドバイサイド複合糸、特開平5−295634号公報にはホモPETとそれより高収縮性の共重合PETのサイドバイサイド複合糸が記載されている。このような潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を用いれば、確かにある程度のストレッチ性を得ることはできるが、織物にした際のストレッチ性が不充分となり、満足なストレッチ性織物が得られにくいという問題があった。これは、上記したようなサイドバイサイド複合糸は織物拘束中での捲縮発現能力が低い、あるいは捲縮が外力によりヘタリ易いためである。サイドバイサイド複合糸はポリウレタン系繊維のように繊維自身の伸縮によるストレッチ性を利用しているのではなく、複合ポリマ間の収縮率差によって生じる3次元コイルの伸縮をストレッチ性に利用している。 このため、例えば、ポリマーの収縮が制限される織物拘束下で熱処理を受けるとそのまま熱固定され、それ以上の収縮能を失うためコイルが十分に発現せず、上記問題が発生すると考えられる。
【0007】
さらに、このような複合捲縮糸は沸水処理後に捲縮を発現するため、和装などシボを発現する用途に用いられたりするが、その際、繊維の長手方向に繊度変動斑が大きいと、シボが均一に発現せず品位が低下してしまったり、また、単繊維繊度が4dtex以上のものが一般的であり、ソフト性に欠けるという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紡糸、延伸等の製糸性が良好で、従来のポリエステル系潜在捲縮性繊維で問題となっている織物拘束下での捲縮発現能力を改善し、ストレッチ性とソフト性に優れた品位良好な布帛を得ることができる高伸縮性ポリエステル繊維を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するため本発明のポリエステル系潜在捲縮性繊維は、主として次の構成を有する。すなわち、2種類のポリエステル系重合体がサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維において、2種類のポリエステル重合体がいずれもポリトリメチレンテレフタレートを主体としたポリエステルであり、両成分の固有粘度差が下記式を満たし、マルチフィラメント糸の繊度変動率U%値が2%以下、伸縮伸長率が120%以上、伸縮弾性率が90%以上であることを特徴とする単繊維繊度1dtex以上3dtex以下の高伸縮性ポリエステル系複合繊維である。
但し、高粘度側ポリマの固有粘度をIV(H)、低粘度側のポリマ固有粘度をIV(L)とした時に、両ポリマ間の固有粘度差をΔIVとすると、
1.20>ΔIV>0.6
IV(L)≧0.6
伸縮伸長率(%)=[(L1−L0)/L0]×100
伸縮弾性率(%)=[(L1−L2)/(L1−L0)]×100
L0:原長560mmのカセに、3.53×10−3cN/dtexの処理荷重をかけた状態で沸水処理15分、乾熱処理170℃×5分を行い、次に処理荷重を外し、1.76×10−3cN/dtexの初荷重を30秒吊した時のカセ長
L1:初荷重を外し、定荷重0.09cN/dtexを30秒吊した時のカセ長
L2:定荷重を外して2分後に再び初荷重1.76×10−3cN/dtexを30秒吊し た時のカセ長
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の高伸縮性ポリエステル系複合繊維は、2種類のポリエステル系重合体が繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維であり、それを構成する2種類のポリエステル重合体とは、いずれもポリトリメチレンテレフタレートを主体としたポリエステルであり、両成分の固有粘度差が下記式を満たしていることを特徴とする高伸縮性ポリエステル系複合繊維である。ここで高粘度側ポリマの固有粘度をIV(H)、低粘度側のポリマ固有粘度をIV(L)とした時に、両ポリマ間の固有粘度差をΔIVとすると、
1.20>ΔIV>0.6
IV(L)≧0.6
を満たすものである。2種類の粘度の異なる該ポリマは繊維長さ方向に沿ってサイドバイサイド型に貼り合わされたものであり、粘度が異なる重合体を貼り合わせることによって、紡糸、延伸時に高粘度側に応力が集中するため、2成分間で内部歪みが異なる。そのため、延伸後の弾性回復率差および布帛の熱処理工程での熱収縮率差により高粘度側が大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル捲縮の形態をとる。この3次元コイルの径および単位繊維長当たりのコイル数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まると言ってもよく、収縮差が大きいほどコイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多くなる。
【0011】
ストレッチ素材として要求されるコイル捲縮は、コイル径が小さく、単位繊維長当たりのコイル数が多い(伸長特性に優れ、見映えが良い)、コイルの耐へたり性が良い(伸縮回数に応じたコイルのへたり量が小さく、ストレッチ保持性に優れる)、さらにはコイルの伸長回復時におけるヒステリシスロスが小さい(反発性に優れ、フィット感がよい)等である。これらの要求を全て満足しつつ、ポリエステルとしての特性、例えば適度な張り腰、ドレープ性、高染色堅牢性を有することで、トータルバランスに優れたストレッチ素材とすることができる。
【0012】
そこで、本発明者らはポリエステルの特性を損なうことなく前記特性を満足させるために鋭意検討した結果、高収縮成分および低収縮成分にポリトリメチレンテレフタレート(以下PTTと略記する)を主体としたポリエステルを用いることを見出した。PTT繊維は、代表的なポリエステル繊維であるPETやポリブチレンテレフタレート(以下PBTと略記する)繊維と同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、伸長回復性が極めて優れている。これは、PTTの結晶構造においてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシュ−ゴーシュの構造(分子鎖が90度に屈曲)であること、さらにはベンゼン環同士の相互作用(スタッキング、並列)による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸長・回復するためと考えている。このように、高収縮成分(高粘度成分)、低収縮成分(低粘度成分)ともにPTTとし、融点、ガラス転移点を合わせることで、紡糸工程でより高粘度成分に応力集中させることができ、収縮率差を大きくすることができる。また、両成分をPTTとすることにより、図3に示した沸水処理後の強伸度曲線にみられるように繊維のヤング率を低くできるので、よりソフトで弾発性に優れた捲縮糸が得られるのである。
【0013】
なお、本発明でいう粘度とは固有粘度(IV)を指し、オルトクロロフェノール中に試料を溶かして測定した値である。
【0014】
また、両成分の複合比率は製糸性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の点で、高収縮成分:低収縮成分=75:25〜35:65(重量%)の範囲が好ましく、65/35〜45/55の範囲がより好ましい。
【0015】
ここで、本発明のPTTとは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし、20モル%、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0016】
また、本発明の高伸縮性PTT複合繊維は、伸縮伸長率が120%以上、伸縮弾性率が90%以上であることを特徴とする。
【0017】
伸縮伸長率(%)=[(L1−L0)/L0]×100
伸縮弾性率(%)=[(L1−L2)/(L1−L0)]×100
L0:原長560mmのカセに、3.53×10−3cN/dtexの処理荷重をかけた状態で沸水処理15分、乾熱処理170℃×5分を行い、次に処理荷重を外し、1.76×10−3cN/dtexの初荷重を30秒吊した時のカセ長
L1:初荷重を外し、定荷重0.09cN/dtexを30秒吊した時のカセ長
L2:定荷重を外して2分後に再び初荷重1.76×10−3cN/dtexを30秒吊し た時のカセ長
伸縮伸長率が高いほど捲縮発現能力が高いことを示しており、120%以上であれば本発明の目的とする伸長特性を与えることができる。伸縮伸長率は高いほど布帛にしたときの伸長性が向上するため、好ましくは130%以上、より好ましくは140%以上である。
【0018】
なお、特公昭 44−2504号公報記載のような固有粘度差のあるPET系複合糸、あるいは特開平5−295634号公報記載のようなホモPETと高収縮性共重合PETとの組み合わせでの複合糸では伸縮伸長率は高々2%程度である。
【0019】
また伸縮弾性率は、形態安定性を維持するためにも90%以上であることが必要で、93%以上であることがより好ましい。伸長弾性率は高いほど歪み回復性に優れており、形態安定性に優れている。なお、特公昭 44−2504号公報記載のような固有粘度差のあるPET系複合糸では伸縮弾性率は83%程度である。
【0020】
上記伸縮伸長率120%以上、伸縮弾性率90%以上という特性を両方満たすようなPTT複合繊維は伸長しやすいうえに、伸長した分のひずみが元に戻りやすいという特徴を持ち、衣料用ストレッチ素材として優れたものが得られる。
【0021】
また、本発明の高捲縮性ポリエステル系複合繊維の2成分間の複合界面は、繊維断面において直線的であるほうが捲縮発現能が高くなり、ストレッチ性も向上する。複合界面の直線性を示す指標としては、図1に示す繊維断面の複合界面において、繊維表面から中心に向かって深さ2μmの点a、bおよび界面の中心cの3点に接する円の曲率半径R(μm)を求め、Rが10d0.5以上であることが好ましい。ここで、dとは単繊維の繊度(デシテックス)を示す。より好ましくは曲率半径Rは15d0.5以上である。図2(a)〜(g)はいずれも曲率半径Rが10d0.5以上であり、本発明に好ましく用いられる繊維断面である。
【0022】
また、本発明の高捲縮性ポリエステル系複合繊維の繊維断面形状は、丸断面、三角断面、マルチローバル断面、偏平断面、X型断面その他公知の異形断面であってもよく、何等限定されるものではないが、捲縮発現性と風合いのバランスから、図2に示すような丸断面の半円状サイドバイサイド(a)や軽量、保温を狙った中空サイドバイサイド(d)、ドライ風合いを狙った三角断面サイドバイサイド(g)等が好ましく用いられる。
【0023】
このように、本発明によれば、織物拘束下での捲縮発現能力を改善した、ストレッチ素材を得ることができるが、衣料用用途などで使用する上で、特に品位の問題は重要である。本発明のように固有粘度差の大きなポリマーをサイドバイサイドに複合した場合、得られる糸の捲縮特性は良好であるものの、紡糸糸条が高粘度成分側に過度にベンディングするため、製糸性が悪化し、結果として繊維の長手方向での太さ斑を生じ、結果として布帛としたときにシボ斑が生じ、品位が低下するので好ましくない。したがって安定した製糸性とストレッチ性、良好な品位を満たすため、繊度変動率U%は2%以下であることが必要である。
【0024】
また、本発明の高伸縮性ポリエステル系複合繊維は、ソフト性を向上させるために、単繊維繊度が1dtex以上3dtex以下であることが必要である。単繊維繊度が3dtexより大きいと、布帛としたときのソフト性に欠け、単繊維繊度が1dtex未満であると、製糸性が悪化するためである。
【0025】
本発明の高伸縮性ポリエステル系複合繊維は単独で用いることも可能であるが、低収縮糸や自発伸長糸と混繊して用いると、ストレッチ性にふくらみ感や反発感を付与することができ、好ましい。
【0026】
本発明の特徴を生かす用途としては、織物、編物、不織布、さらにはクッション材など、目的に応じて適宜選択でき、シャツ、ブラウス、パンツ、スーツ、ブルゾン等に好適に用いることができる。
【0027】
次に、本発明の高捲縮性ポリエステル系複合繊維の好ましい製法を説明する。
【0028】
本発明の高伸縮性ポリエステル系複合繊維は、固有粘度の異なる2種類のPTTをそれぞれに配し、吐出孔上部で合流させ、サイドバイサイド複合流を形成させた後、所望の断面形状を得るための吐出孔から吐出される。吐出された糸条は冷却され、固化した後、一旦巻き取ってから延伸する2工程法によって製造してもよいし、紡糸引取り後、そのまま延伸する直接紡糸延伸法によって製造してもよい。
【0029】
また、本発明の高伸縮性ポリエステル系複合繊維を安定して製造するためには、各成分の固有粘度および、各成分間の固有粘度差が重要となってくる。複合繊維といえども、片側成分の粘度が低すぎて繊維形成能がなかったり、逆に高すぎて特殊な紡糸装置が必要になるようでは実用的ではない。また、各成分間の粘度差により、吐出孔直下での糸条のベンディング(曲がり現象)の度合いが決まり、それが製糸性に大きく影響する。そのため、各成分の固有粘度(IV)は、次式を満たす組み合わせであることが好ましい。
【0030】
複合紡糸を行う際、低粘度PTTの固有粘度(IV)が0.6以上であることが必要である。0.6以上であることによって繊維形成性が向上し、製糸性が良好になる。低粘度PTTの固有粘度(IV)が0.6未満であると重合度が低すぎるため繊維形成能が乏しく、製糸性が不良で、得られる糸の強度が低いといった問題が発生する。また、PTTの高粘度成分と低粘度成分との固有粘度の差ΔIVは0.6より大きくすることにより捲縮特性に優れた原糸となるが、0.7より大きくすると、さらに伸縮性の優れた原糸となるのでより好ましい。一方ΔIVが1.20以上になると、得られる糸の捲縮特性は良好であるものの、紡糸糸条が高粘度成分側に過度にベンディングするため、長時間にわたって安定して製糸することができず、好ましくない。したがって安定した製糸性とストレッチ回復性の両方を満たすため、ΔIVは0.6より大きく、1.2より小さいことが必要である。
【0031】
また、紡糸温度はPTTのため、250〜270℃とすることが好ましい。
【0032】
また、複合繊維のU%を2%以下とするためには紡糸速度を2000m/分以下、より好ましくは1500m/分以下とする。特に、口金の計量性を向上させたり、口金面深度を下げ、口金面からチムニーまでに存在するスペースを極力なくすことによって吐出した糸条を均一に冷却すること、さらには引き取り時の紡糸張力をアップすることなどが効果的である。また、延伸工程では擦過体上を滑らせながら高倍率で延伸することである。操業性を考慮すると好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下の破断伸度になるように延伸することが好ましい。前記擦過体による摩擦抵抗により、延伸張力を高めることができるため、内部歪みの増大によりU%も向上する。さらに延伸性、高次工程での取り扱い性から、熱セット温度は110〜170℃の範囲が好ましい。また、延伸温度は50〜80℃とすることが好ましい。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
【0034】
A.固有粘度
オルソクロロフェノール(以下OCPと略記する)10ml中に試料ポリマを0.8g溶かし、25℃にてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηrを下式により求め、IVを算出した。
【0035】
ηr=η/η0=(t×d)/(t0×d0)
IV=0.0242ηr+0.2634
ここで、η:ポリマ溶液の粘度、η0:OCPの粘度、t:溶液の落下時間(秒)、d:溶液の密度(g/cm3)、t0:OCPの落下時間(秒)、d0 :OCPの密度(g/cm3)。
【0036】
B.伸縮伸長率および伸縮弾性率
(JIS L1090(伸縮性)C法に準ずる)
原長560mmの繊維カセに3.53×10−3cN/dtexの処理荷重をかけた状態で、 沸騰水処理を15分行った後、風乾させ、さらに170℃で5分の乾熱処理を 行う。次に1.76×10−3cN/dtexの初荷重を吊した状態で30秒間保持後、カセ 長L0を測定する。さらに速やかに荷重を取り除き、0.09cN/dtexの定荷重を3 0秒間保持後、カセ長L1を測定し速やかに荷重を取り除く。2分間放置した 後、1.76×10−3cN/dtex荷重を吊して30秒間保持後、カセ長L2を測定す る。得られたカセ長L0、L1、L2より、下記式にて伸縮伸長率および伸縮弾性 率を求める。
【0037】
伸縮伸長率(%)=[(L0−L1)/L0]×100
伸縮弾性率(%)=[(L1−L2)/(L1−L0)]×100
C.繊度変動率(U%)
測定機としては市販のUster Eveness Tester(計測器工業株式会社製)を使用する。糸のトータル繊度により使用する測定用スロットを選択し、糸速を200m/minとして撚糸機で約1500rpmの回転を与え撚糸しつつノルマルテストにて測定する。U%値は3分間の測定を1回として、測定試料の任意の5カ所について測定し、その平均値で表す。
【0038】
D.ソフト性
得られた原糸を用いて布帛を作り、3段階の官能評価を行った。○○はソフト性に優れている、△はPET/PET系バイメタル糸レベル、×はソフト性に欠ける。
【0039】
実施例1
固有粘度(IV)が1.44のホモPTTと固有粘度(IV)が0.72のホモPTTをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で図4に示す構造を有する12孔の複合紡糸口金から複合比(重量%)50:50で吐出し、紡糸速度1400m/分で引取り165デシテックス、24フィラメントのサイドバイサイド型複合構造未延伸糸(繊維断面は図2a)を得た。さらにホットロール−熱板系延伸機(接糸長:20cm、表面粗度:3S)を用い、ホットロール温度70℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0倍で延伸して55デシテックス、24フィラメント(単繊維繊度d:2.3デシテックス)の延伸糸を得た。紡糸、延伸とも製糸性は良好であり、糸切れは発生しなかった。伸縮伸長率は141.2%、伸縮弾性率は94.9%と優れた伸長回復性を示した。なお、繊度変動率(U%)は0.3%と良好であり、品位に優れた布帛を得ることができた。また、本原糸から得られた布帛は単糸繊度が2.3dtexと細いため、ソフト性に大変優れていた。
【0040】
実施例2
固有粘度(IV)が1.27のホモPTTと固有粘度(IV)が0.65のホモPTTの組み合わせとした以外は実施例1と同様の方法で評価した。その結果、伸縮伸長率は130%、伸縮弾性率は92%、繊度変動率(U%)は0.4%であった。実施例2は口金直下のベンディングも小さく、製糸性は良好であった。また、実施例1には及ばないものの、優れた伸長回復性・ソフト性を示し、品位の良好な布帛を得ることができた。
【0041】
比較例1
固有粘度(IV)が1.34のホモPTTと固有粘度(IV)が0.86のホモPBTの組み合わせとした以外は実施例1と同様の方法で評価した。伸縮伸長率は29.6%、伸縮弾性率は92.0%、繊度変動率(U%)は0.2%で、布帛としたときの回復性、ソフト性、品位は優れていたが伸長性に劣るものであった。
【0042】
比較例2
固有粘度(IV)が1.80のホモPBTと固有粘度(IV)が0.62のホモPTTの組み合わせとし、紡糸温度270℃で紡糸、第1ホットロール温度85℃で延伸した以外は実施例1と同様の方法で評価した。その結果は伸縮伸長率が76.3%、伸縮弾性率は94.7%、繊度変動率(U%)は0.2%であり、布帛としたときの回復性、ソフト性、品位は優れていたが、伸長性に劣るものであった。
【0043】
比較例3
固有粘度(IV)が1.18のホモPTTと固有粘度(IV)が0.65のホモPPTの組み合わせとし、紡糸温度260℃で紡糸し、実施例1と同様にして延伸糸を得た。このポリマの組み合わせでは粘度差ΔIVが0.53と低いため、
伸縮伸長率が110%とやや低く、伸縮弾性率が88%、繊度変動率(U%)が0.6%であり、実施例1と比較するとやや劣るものであった。
【0044】
比較例4
固有粘度(IV)が0.78のホモPETと固有粘度(IV)が0.51のホモPETの組み合わせとし、紡糸温度290℃とした以外は実施例1と同様の方法で評価した結果を表1に示す。製糸性は比較的良好であったが、伸縮伸長率1.8%、伸縮弾性率83.2%、繊度変動率(U%)は1.0%であり、伸長回復性に劣るものであった。
【0045】
比較例5
固有粘度(IV)が1.18のホモPTTと固有粘度(IV)が0.58のホモPTTを用いて実施例1と同様の方法で延伸糸を得た。比較例5では低粘度成分のIVが低すぎるため、繊維形成能が乏しく、製糸性が不良であった。また、得られた糸の特性も伸縮伸長率40%、伸縮弾性率は89%、繊度変動率(U%)は2.1%であり、伸長回復性、品位が劣り、ストレッチ素材としてのポテンシャルに欠けるものであった。
比較例6
固有粘度(IV)が1.18のホモPTTと固有粘度(IV)が0.88のホモPTTの組み合わせとし、口金吐出孔の直上で高IVポリマに低IVポリマを横からインサートする方式とした以外は実施例1と同様の方法で評価した結果、伸縮伸長率は2.0%、伸縮弾性率は87%、繊度変動率(U%)は0.8%、複合界面Rは20μmであった。比較例6の製糸性は良好であったが、捲縮発現能・伸長回復性に劣り、ストレッチ素材としてのポテンシャルに欠けるものであった。
【0046】
比較例7
固有粘度(IV)が1.61のホモPTTと固有粘度(IV)が0.40のホモPTTの組み合わせとした以外は実施例1と同様の方法で評価した結果を表1に示す。比較例7のポリマ組み合わせでは口金直下でのベンディングがひどく、紡糸できなかった。
【0047】
比較例8
実施例1において吐出孔径の大きな口金を用いて紡糸したところ、口金背面圧は20kgとなった。その結果、繊度変動率U%は3.6%となり、染色斑、シボ斑が発生し、品位の悪いものとなってしまった。
【0048】
比較例9
実施例1において、パックを変更して口金面深度を20cmとしたところ、吐出面からチムニー面までの距離が長くなり、冷却が不十分となってしまった。その結果、U%は2.8%となり、品位が低下した。
【0049】
比較例10
実施例1において、フィラメント数を12Fとする以外は実施例1と同様にして、55デシテックス、12フィラメント(単繊維繊度:4.6デシテックス)の延伸糸を得た。得られた延伸糸はストレッチ性には優れていたが、布帛としたときにソフト性に欠け、ゴワゴワした風合いになってしまった。
【0050】
比較例11
実施例1において、フィラメント数を60Fとする以外は実施例1と同様にして、単繊維繊度が0.9デシテックスのサイドバイサイド型複合構造の延伸糸を得ようとしたが、単繊維繊度が細すぎて、紡糸中に糸切れが多発して糸を得ることができなかった。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】
本発明の高伸縮性ポリエステル系複合繊維を用いることにより、従来問題となっていた織物拘束下での伸長回復性を改善し、ストレッチ性、ソフト性に優れた品位の布帛を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の繊維の繊維横断面における複合界面の曲率半径Rを説明するためのモデル図である。
【図2】本発明の繊維の繊維横断面形状を示す図である。
【図3】本発明および本発明以外の繊維の沸騰水処理後の応力−伸度曲線である。
Claims (2)
- 2種類のポリエステル系重合体がサイドバイサイド型に貼り合わされた複合繊維において、2種類のポリエステル重合体がいずれもポリトリメチレンテレフタレートを主体としたポリエステルであり、両成分の固有粘度差が下記式を満たし、マルチフィラメント糸の繊度変動率U%値が2%以下、伸縮伸長率が120%以上、伸縮弾性率が90%以上であることを特徴とする単繊維繊度1dtex以上3dtex以下の高伸縮性ポリエステル系複合繊維。
高粘度側ポリマの固有粘度をIV(H)、低粘度側のポリマ固有粘度をIV(L)とした時に、両ポリマ間の固有粘度差をΔIVとすると、
1.20>ΔIV>0.6
IV(L)≧0.6
伸縮伸長率(%)=[(L1−L0)/L0]×100
伸縮弾性率(%)=[(L1−L2)/(L1−L0)]×100
L0:原長560mmのカセに、3.53×10−3cN/dtexの処理荷重をかけた状態で沸水処理15分、乾熱処理170℃×5分を行い、次に処理荷重を外し、1.76×10−3cN/dtexの初荷重を30秒吊した時のカセ長
L1:初荷重を外し、定荷重0.09cN/dtexを30秒吊した時のカセ長
L2:定荷重を外して2分後に再び初荷重1.76×10−3cN/dtexを30秒吊し た時のカセ長 - 2種類のポリエステル系重合体の複合界面の曲率半径Rが単繊維繊度と下式の関係にあることを特徴とする請求項1項記載の高伸縮性ポリエステル系複合繊維。
曲率半径R(μm)≧10d0.5 d:単繊維繊度(デシテックス)
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