JP3704536B2 - 潜在捲縮性ポリエステル複合繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた伸縮性、弾性回復性、並びに風合いを兼ね備え、しかも着用疲労性に優れた伸縮織物用に適した潜在捲縮能を有するポリエステル系複合繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、織編物の機能性、特に伸縮性能に対する要求が一段と強くなってきている。この織編物の伸縮性能は衣服着用時の着心地と圧迫感との間に密接な関係を有しており、例えば伸縮性能が良好なものは、身体各部の動きに織編物の伸び縮みが容易に追従できるため、圧迫感がなく、着用時の活動が円滑に行えることになる。
【0003】
従来、紡糸時に異種または異質のポリマーを複合紡糸し、延伸熱処理後に加熱空気加工して捲縮を発現させる方法が米国特許4115989号、同4118534号、特公昭45−37576号公報、特公昭54−42441号公報などに提案されているが、これらの方法で得られた捲縮糸は、その嵩高性・ストレッチ特性に代表される力学特性は、伸縮性織物用としては未だ不十分である。
【0004】
一方、高捲縮性を有し、かつ、捲縮堅牢度の高い複合繊維の製造方法としては、例えば延伸後の弾性回復、あるいは熱処理による収縮率または収縮応力の異なる2種の重合体を組み合せる方法が提案され、具体的には、ポリトリメチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート、固有粘度の異なるポリエチレンテレフタレート、カチオン可染性ポリエステルとナイロン6などの組合せで複合紡糸し、延伸後に弛緩熱処理、あるいはさらに加熱空気ジェットを通して弛緩熱処理する方法が、特公昭43−19108号公報、特開昭51−84924号公報、特公昭61−15169号公報、特公昭63−44843号公報などに提案されている。しかし、これらの方法においては、ポリエチレンテレフタレートと組み合わされているポリエステルまたはポリアミドはそれ自身優れた伸長弾性回復性能をもっているものの、ポリエチレンテレフタレートと組み合わせられているため、ポリマー自身が有する構造弾性は拘束されてその効果の発揮は完全に抑制される。したがって、これらの方法においても、捲縮形態は得られるので織編物に与えられる伸縮歪みが比較的小さい場合には、捲縮形態からくる高度なストレッチ性能を示すものの、その形態弾性回復領域を超えて大きな伸縮歪みを負荷すると、ポリエチレンテレフタレート本来の弾性回復性は高々10%伸長時の弾性回復が50%、仕事回復率に至っては20%しかないため、心地よい伸長反発感が得られず、いわゆる着用疲労として織編物の品位は著しく損なわれ、着衣の原形が崩れるという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の有する問題点を改善し、優れた伸縮性と風合いを兼ね備え、しかも着用疲労性に優れた伸縮織物用に適した、潜在捲縮能を有するポリエステル系複合繊維を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、ナイロン6よりも優れた弾性回復性能を有するポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルであって互いに配向結晶化挙動の異なる2種のポリエステルを、サイドバイサイド型または偏心シースコア型に複合してなる複合繊維は、捲縮形態からくる比較的低応力かつ低歪み量における優れた弾性回復性能に加えて、これまで着用疲労として問題となるような高歪み領域においてもポリトリメチレンテレフタレート分子構造がもつ構造弾性により、高反発で、パワー感のあるストレッチ性能が達成され、優れた着用間および着用疲労性を有する伸縮織編物を提供できることが見出された。
【0007】
かくして、本発明によれば、下記ポリエステルAとポリエステルBとが、サイドバイサイド型または偏心シースコア型に複合されてなる潜在捲縮性ポリエステル複合繊維が提供される。
ポリエステルA:全繰り返し単位の85モル%以上がトリメチレンテレフタレート単位であり、実質的にエステル形成性官能基を3個以上有する成分が共重合されていないポリエステル
ポリエステルB:全繰り返し単位の85モル%以上がトリメチレンテレフタレート単位であり、エステル形成性官能基を3個以上有する成分が0.05〜0.20モル%共重合されたポリエステル
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の複合繊維に用いられる一方成分であるポリエステルAは、全繰り返し単位の85モル%以上、好ましくは95モル%以上がトリメチレンテレフタレートで、実質的にエステル形成性官能基を3個以上有する成分が共重合されていないポリエステルであり、なかでもポリトリメチレンテレフタレートが好ましい。該ポリエステルA中の共重合成分(2官能性)の共重合割合が15モル%を越える場合には、該ポリエステル骨格が有する構造弾性性能が低下してパワー感のあるストレッチ性能は得難くなる。なお、ポリエステルAの固有粘度(オルソクロロフェノール溶媒中25℃で測定)は0.7〜1.3の範囲が適当である。
【0009】
好ましく用いられるポリエステルAの共重合成分としては、酸成分として例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−オキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸の如き2官能性芳香族カルボン酸、セバシン酸、アジピン酸の如き2官能性脂肪族カルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き2官能性脂環族カルボン酸等をあげることができる。また、ジオール成分として例えば、エチレングリコール、テトラメチレングルコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSの如き脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物をあげることができる。
【0010】
本発明の複合繊維に用いられる他方成分であるポリエステルBは、全繰り返し単位の85モル%以上、好ましくは95モル%以上がトリメチレンテレフタレートであり、エステル形成性官能基を3個以上有する成分が0.05〜0.20モル%共重合されたポリエステルであり、なかでも共重合成分としてエステル形成性官能基を3個以上有する成分のみが共重合されたポリトリメチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。該ポリエステルB中の共重合成分の総共重合割合が15モル%を越える場合には、該ポリエステル骨格が有する構造弾性性能が低下してパワー感のあるストレッチ性能は得難くなる。
【0011】
また、エステル形成性官能基を3個以上有する成分の共重合割合が0.05モル%未満の場合には、前記ポリエステルAとの熱収縮特性の差が小さくなって十分な潜在捲縮能を有する複合繊維が得られなくなるので好ましくない。一方、0.20モル%を越える場合には、製糸工程における各変形過程において変形応力が増加し、製糸工程調子が悪化するので好ましくない。なお、ポリエステルBの固有粘度(オルソクロロフェノール溶媒中25℃で測定)は、0.5〜1.2の範囲が適当である。
【0012】
好ましく用いられるエステル形成性官能基を3個以上有する成分としては、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などがあげられ、これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0013】
また、ポリエステルBに共重合可能な2官能性共重合成分としては、前記ポリエステルAで用いられると同一の成分があげられる。
【0014】
上記ポリエステルA同士、つまり、全繰り返し単位の85モル%以上がトリメチレンテレフタレートで、実質的にエステル形成性官能基を3個以上有する成分が共重合されていないポリエステル同士で、かつ固有粘度の異なるポリエステル同士の組み合わせによる複合繊維は、ポリエステルAとBの組合せによる複合繊維と比較すると、潜在捲縮能は小さくなって捲縮形態による弾性回復は小さくなる。
【0015】
本発明においては、上記ポリエステルAとポリエステルBとをサイドバイサイド型または偏心シースコア型の複合繊維となす。ここで複合繊維となす方法は任意で、従来公知の紡糸口金、例えば、特公昭43−19108号公報、特公昭41−16125号公報に記載されている紡糸口金を用いて溶融紡糸すればよい。特に、サイドバイサイド型複合繊維となす場合には、実公昭42−19536号公報に記載されているような、吐出直後の両成分ポリマーを口金直下で接合させるようにした紡糸口金を用いれば紡糸安定性が向上するので好ましい。
【0016】
得られた未延伸糸は、必要に応じて、通常の延伸・熱処理工程をとおして潜在捲縮性複合繊維となしてもよいし、さらに仮撚加工を施したり機械捲縮を付与して顕在捲縮をも持つ捲縮複合繊維としてもよい。また、高速紡糸して得られた潜在捲縮能を有する部分配向未延伸糸を仮撚加工して顕在捲縮を有する捲縮複合繊維としてもよい。
【0017】
例えば、潜在捲縮型複合繊維となす場合には、延伸・熱処理工程を通しす際、通常延伸糸の残留伸度が15〜50%の範囲となるように調整される。一般に残留伸度が小さいほど、捲縮を顕在化させた時の捲縮率は大きくなるが、構造弾性回復は小さくなる傾向が認められ、また、15%よりも小さくしようとした場合には、延伸工程での毛羽、断糸等のトラブルが増加する傾向にある。一方、50%を超える場合には、捲縮を顕在化させた時の捲縮率が小さくなり、得られる織編物品位に関しては、ふくらみが低下する。
【0018】
なお、延伸温度は、ポリトリメチレンテレフタレートのガラス転移点−20℃〜+30℃の範囲が好ましい。延伸工程は、紡出糸を巻き取った後に別工程にて延伸する、いわゆる別延でも、紡出糸を巻き取らずに引続いて延伸する直延でも、いずれでも適用できるが、ポリトリメチレンテレフタレートはガラス転移点が30〜40℃の範囲にあり、経時により不定形のままで結晶化が進行しやすいため、品質安定化の点から別延よりは直延の方が好ましい。
【0019】
熱処理温度は、120℃〜180℃までの温度が衣料用としては最適であり、フィラメント全体の100℃の沸水収縮率を5〜12%の範囲に調整することが好ましい。この時、熱処理時の弛緩率は、0〜2.0%の範囲とすることが好ましく、弛緩率を2.0%を超えて付与した場合には、特に、弾性回復性と捲縮を顕在化させる際の熱収縮応力とを担うポリエステルAの結晶化が進行すると共に内部歪みの緩和も進行するため、織編物となした後に、精練・リラックス工程にて捲縮を発現させ、織編物を3次元的なふくらみをもった構造へと変化させるにあたって、とりわけ織物に関しては、その拘束力に逆らって良好なふくらみを発現させることが難しくなる。特に弛緩率0%、すなわち緊張状態にて熱処理すると、内部構造の歪みが大きくなるため、捲縮を顕在化させる際の捲縮発現性能が高くなるので好ましい。
【0020】
次に、潜在捲縮性複合繊維に健在捲縮を付与する方法としては、機械的に捲縮を付与する方法の他、上記の延伸糸を仮撚加工する方法、比較的速い速度、例えば、2000〜4000m/分程度の速度で紡糸した、伸度が80〜200%程度の部分配向未延伸糸を延伸同時仮撚加工する方法などがあげられる。
【0021】
この仮撚加工は、シングルヒーター方式、2ヒーター方式のいずれでもよい。仮撚時の仮撚数TW(T/M)は、25000/(De)1/2〜39000/(De)1/2の範囲が好ましく、25000/(De)1/2以下の場合には、十分な捲縮を付与することが困難であり、一方39000/(De)1/2を超える場合には、加工糸の毛羽、断糸の発生頻度が高くなる。仮撚ヒーター温度は、140〜200℃とする。140℃未満の場合には、熱セット効果が不十分となるため十分な捲縮率が得難い。一方、200℃を超える場合には、融着が発生して未解撚部を有するがさついた風合いの糸条となり、強伸度、捲縮率、および構造弾性回復についても不十分なものとなる。なお、仮撚付加装置は、スピンドル仮撚装置、摩擦仮撚装置、流体仮撚装置など任意の仮撚装置を使用することができる。
【0022】
以上に詳述した本発明の複合繊維の繊維横断面形状は、上記の2成分がサイドバイサイド型または偏心シースコア型に複合されている限り、特に限定されるものではなく、円形、繭型、偏平、異形、中空等任意の断面形状をとることができる。なお、偏心シースコア型の複合繊維においては、熱収縮性の低いポリエステルBまたはCがシース側となるようにするのが好ましい。
【0023】
複合繊維における上記ポリエステルAとポリエステルBまたはCとの複合重量比は、30:70〜70:30が製糸時の安定性および得られる潜在捲縮能の点から適当であり、特に40:60〜60:40の範囲が好ましい。なお、複合繊維の繊度は、用途に応じて適宜設定できるが、通常は0.5〜20デニール程度とすればよい。
【0024】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の測定値は次の方法により測定したものである。
【0025】
1.捲縮率(TC10)
試料に50mg/deの張力をかけてカセ枠に巻き取り約3000deのカセをつくる。カセ作成後、カセの一端に2mg/de+200mg/deの荷重を負荷し、1分間経過後の長さL0(cm)を測定する。次いで、200mg/deの荷重を除去し8mg/deの荷重を負荷(すなわち、試料には10mg/deの荷重が負荷されている)した状態で100℃の沸水中にて20分間処理する。沸水処理後直ちに全荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥する。自然乾燥した試料に再び2mg/de+200mg/deの荷重を負荷し、1分間経過後の長さL1(cm)を測定する。次いで、200mg/deの荷重を除去し、1分間経過後の長さL2を測定し、次式で捲縮率TC10を算出する。
TC10(%)=(L1−L2)/L0×100
なお、上記測定は複合捲縮糸製造後3日以上経過させた後行う。
【0026】
2.繊維の伸長弾性回復性および仕事回復率
各伸長率に対する弾性回復率は、まず、試料に50mg/deの張力をかけてカセに取り、カセの一端に、2mg/deの荷重をかけ、沸水中で20分間捲縮発現処理をし、全荷重をはずした状態で一昼夜自然乾燥した試料を用いて、下記方法で行った。
【0027】
(1)20%伸長時弾性回復率(TR20)
捲縮形態を取り除くために必要な荷重を初荷重として、引張試験機に試料糸長200mmをセットする。毎分20%の歪み速度で伸長し、伸度20%まで伸長したところで、今度は逆に同じ速度で収縮させて、応力−歪み曲線を画く。収縮中、応力が初荷重になった時の残留伸度をεとすると、TR20は次式により算出される。
TR20(%)=(20−ε)/20×100
(2)20%伸長時仕事回復率(WR20)
20%伸長時仕事回復率は、TR20を求める時に画かれた応力−歪み曲線から次式によって算出される。
WR20(%)=収縮曲線下の面積/伸長曲線下の面積×100
【0028】
3.織物30%または40%伸長弾性回復率(SB30またはSB40)
糸条から生機を作成し、精練・リラックス処理後、130℃の高圧染色を施し、160℃でファイナルセットを行い仕上げた。経糸および緯糸方向のそれぞれに5.5cm×30cmの試験片を3枚作成する。試験片を上部つかみでつかみ、試験幅を5cmとして、初荷重(試験片の不自然なしわを除くに必要な荷重)を加えて下部つかみでつかみ、定速伸長測定法(JIS L 1018−70準拠)、すなわち毎分100%の歪み速度で伸長し、伸度30%または40%まで伸長したところで、今度は逆に同じ速度で収縮させて、応力−歪み曲線を画く。収縮中、応力が初荷重になった時の残留伸度をεとするとし、経・緯方向の平均として次式で算出される。
SB30(%)=(30−ε)/30×100
【0029】
[実施例1]
0.3重量%の酸化チタンを艶消剤として含有する、表1に示すポリエステルA(第1成分)およびポリエステルB(第2成分)を160℃×5時間乾燥した後、それぞれ直径25mmの1軸フルフライト型溶融押出機にて260℃で溶融し、吐出後両成分のポリマー流が一点で接合するサイドバイサイド型断面を形成する直径0.25mmφ−ランド長0.50mm(L)の向かい合った2個の吐出孔からそれぞれ吐出し、得れらる延伸後の複合糸条のデニールが75de/36fとなるよう吐出量を調整し、口金下下方9cm〜100cmに設けた横吹き冷却筒から25℃の空気を0.2m/秒の速度で吹き付けて吐出ポリマーを冷却固化せしめ、油剤付着量(OPU)が0.25〜0.4重量%の範囲となるように油剤を付与した後、1500m/分の速度で引取り巻き取った。得られた未延伸糸を延伸温度60℃にて延伸し、120℃の非接触ヒーターを用いてセットし、延伸速度600m/minにて75de/36fのフィラメントを作成した。該フィラメントを用いて目付け80g/m2のタフタ織物を作成し、温度130℃で染色した。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
上記表から明らかなように、実験No.1および2は、貼り合わせた第2成分の収縮挙動抑制性が乏しいために、捲縮率が小さく、織物の30%伸長時に非弾性領域まで伸長変形がなされるため、応力が高く、回復性能が不十分であり、残留歪みとして着用疲労の原因となり易い。実験No.3、4、5、6については、エステル形成性官能基を3個以上有する共重合成分(以下架橋成分と呼ぶことがある)による第2成分の弾性回復および収縮抑制能が良好であるため、良好な捲縮率を示すと共に、織物の弾性回復性能も十分である。一方、実験No.7は、架橋成分が過剰に添加されており、曳糸性が損なわれるために、得られる繊維の強伸度、ならびに、捲縮発現性、ポリトリメチレンテレフタレート(PTMT)本来の構造弾性回復も損なわれてしまっている。また、実験No.8のPTMTとPETの複合繊維においては、両者の弾性回復性、熱収縮性が異なるために、良好な捲縮発現性能を有するが、PETの不十分な弾性回復性能を反映して、捲縮形態による伸縮領域を超えて伸長を施す際の、伸長弾性回復率および伸長仕事回復率は著しく劣り、したがって、織物伸長は、着用歪みとして記憶される。
【0032】
[実施例2]
0.3重量%の酸化チタンを艶消剤として含有し、表2に示す両重合体成分を160℃×5時間乾燥した後、それぞれ直径25mmの1軸フルフライト型溶融押出し機にて260℃で溶融し、偏心シースコア断面を形成できる口金(ポリエステルAがシースになるようにする)および実施例1で使用したサイドバイサイド型口金から吐出し、延伸同時仮撚加工後の複合捲縮糸が150de/48fとなるよう吐出量を調整し、口金下下方9〜100cmに設けた横吹き冷却筒から25℃の空気を0.2m/秒の速度で吹き付けて吐出ポリマーを冷却固化せしめ、油剤付着量(OPU)が0.25〜0.4重量%の範囲となるように油剤を付与した後、2500m/分の速度で引取り巻き取った。該未延伸糸をシングルヒーター方式(温度180℃×ヒーター長1.6mの非接触ヒーター)で、ウレタンディスクの仮撚ユニット(TEMCO社製)を用いて、仮撚り数(T/M)=29000〜32500/(De)1/2で算出される仮撚数の範囲内で、仮撚デイスク前張力(T1)、張力後(T2)の張力比(T2/T1)が0.95となるよう仮撚ディスク速度を調整して加工を施し、150de/48fの捲縮糸を作成した。ここで、Deは、仮撚延伸後のマルチフィラメントデニールを示す。
【0033】
得られた複合捲縮糸を用い、綾組織の目付け220g/m2の織物を作成し、織物伸長回復率の測定に用いた。
【0034】
また、偏心シースコア型複合繊維に関しては、次の計算式で、偏平度と偏心度を算出し、表2に記載した。
偏平度=断面内長径/断面内短径
偏心度=(複合繊維断面重心とコア部重心間距離)/(長径×1/2)
結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
上記表から明らかなように、No.9は、サイドバイサイド型に複合した繭型断面をなした複合繊維を仮撚加工したものであるが、全く特性の同じポリマーを複合したために、捲縮形態が不十分であり、織物伸長時に、非弾性領域まで延伸されてしまって残留歪み量が大きい。一方、実験No.10、11、12は、表2に示された偏心度ならびに、偏平度を有する複合断面からなり、本発明の要求特性を満たす架橋成分が最適量共重合されているために、良好な捲縮率と、それに伴う高伸長時の織物伸長弾性回復率を示す。しかし、エチレングリコール(C2G)を30モル%共重合し、固有粘度差が0.15である第2成分をコア側に用いた場合(実験No.13)、PTMTの構造伸長弾性が阻害されているため、捲縮形態による伸長性を取り除いて伸長弾性回復率TR10を測定した結果、十分な伸長弾性回復が得られず、それに伴って、織物伸長弾性回復性は不十分である。
【0037】
【発明の効果】
以上に述べた本発明の複合繊維によれば、優れた伸縮性と風合いを兼ね備え、しかも着用疲労性に優れた伸縮織物用に適した潜在捲縮性ポリエステル複合繊維およびポリエステル複合捲縮繊維を提供することができる。
Claims (3)
- 下記ポリエステルAとポリエステルBとが、サイドバイサイド型または偏心シースコア型に複合されてなる潜在捲縮性ポリエステル複合繊維。
ポリエステルA:全繰り返し単位の85モル%以上がトリメチレンテレフタレート単位であり、実質的にエステル形成性官能基を3個以上有する成分が共重合されていないポリエステル
ポリエステルB:全繰り返し単位の85モル%以上がトリメチレンテレフタレート単位であり、エステル形成性官能基を3個以上有する成分が0.05〜0.20モル%共重合されたポリエステル - エステル形成性官能基を3個以上有する成分が、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸およびピロメリット酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項1記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維。
- 請求項1または2記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を熱処理して捲縮を顕在化させた捲縮繊維であって、該捲縮構造がクリンプ螺旋状構造で、かつ、該螺旋の外側に前記ポリエステルBが配置されている捲縮ポリエステル複合繊維。
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