JP3828274B2 - 不織布の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維重量に対して40%以下のポリエチレンからなる抽出可能な海成分を有する、島数が200以下の極細繊維発生型海島型繊維からなる不織布の製造方法に関する。更に詳しくは、スエード調人工皮革に使用される不織布の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、抽出可能な海成分を有する海島構造繊維を用いてスエード調人工皮革、特殊起毛織編物、フィルター等を作ることは公知である。特に海成分の少なくとも1成分がポリエチレンである海島構造繊維は特に人工皮革用基材を製造する場合には、海成分であるポリエチレンが熱成形性および耐DMF性に優れるため、不織布にバインダー樹脂を含浸処理する前の工程で不織布表面の平滑化、不織布の比重調整を容易に行うことが可能であり、繊維/含浸樹脂比率の安定した表面平滑性に優れた人工皮革用基材を得ることができる。さらに海島構造繊維は最終製品となるまでのいずれかの工程で海成分を除去して極細化することができる。
【0003】
このような製品は極細繊維特有の外観と風合いを有し、高い評価を得るに至っているが、さらに製品に対する要求も強く、高密度で品位の良い不織布を得ることが重要になって来ている。しかし、高密度、高品位の不織布を得るには、次のような解決すべき課題がある。すなわち、カージング工程でのウェッブの不均一、ニードルパンチ工程でのニードルパンチ中に繊維の割れ及びそれに伴う繊維の切断、絡合不良、ダンボール構造化による不織布の粗硬化、パンチ中の不織布の目付低下、へたり、ニードルパンチ用ニードルの摩耗等がそれである。
かかる課題は、少なくとも海成分の1成分がポリエチレンである海島構造繊維においてはポリエチレンの強度が低いために、原綿作成時の捲縮工程、カージング工程、およびニードルパンチ工程に繊維割れが発生し、繊維割れに起因してニードルパンチ工程での絡合不良や、ダンボール構造化を起こしやすく良好な不織布を得る際の障害となっていた。
【0004】
さらに少なくとも海成分の1成分がポリエチレンである海島構造繊維においては海成分のポリエチレンの嵩高性が低いために、ニードルパンチ時に不織布の絡合性が向上する前に、不織布の見かけ比重のみが高くなる傾向にあり、不織布比重が高くなるとニードルパンチでの繊維の移動が困難となり、結果として、繊維割れ、ダンボール構造化、不織布の目付低下、へたり等を生じ、高絡合不織布を得ることが困難であった。
【0005】
これらの問題点を解決するために、一般的には繊維の捲縮状態、油剤等によってニードルパンチ中の繊維割れや、繊維の動きやすさを制御を行うことが提案されている。しかし、少なくとも1成分がポリエチレンである抽出可能な海成分を有する海島構造繊維においては、海成分のポリエチレンの疎水性によりカージング工程における静電気の発生が著しく、一般的には帯電防止剤の付与により、大気中の水分を繊維表面に取り込み静電気の発生を抑制することが必要となる。この際、繊維表面に付着した水分は繊維間の滑りを阻害するため、ニードル工程における繊維間の抵抗の増大による繊維の割れ及びそれに伴う繊維の切断、絡合不良、ダンボール構造化による不織布の粗硬化、パンチ中の不織布の目付低下、へたり、ニードルパンチ用ニードルの摩耗が顕著となる傾向が認められる。このような問題は単に繊維の捲縮状態の変更および油剤の選択では繊維間の滑りの改良を行うことは困難であった。また、捲縮状態、油剤が同じ場合においても海島構造繊維の島成分にポリエチレンテレフタレート等のヤング率の高い樹脂を用いる場合には、ナイロン等のヤング率の低い樹脂を用いる場合と比較してニードルパンチ時の抵抗が大きくなり良好なカージング性および絡合状態が得られず、商品展開の大きな障壁となっている。
【0006】
さらに、ニードルパンチ中に繊維が動きにくいと、多数の島を少なくとも1成分がポリエチレンからなる海成分が取りまいてなる海島型形態の繊維であっても、少なくとも1成分がポリエチレンからなる海成分比率を40%以下に下げた場合には、ニードルパンチ時の繊維割れを誘発するため深刻な問題であった。不織布の絡合度を上げることは良好なスエード調の人工皮革を作るときや、良好なフィルターを作るときには避けて通れない問題である。
特に、島数が200以下の極細繊維発生型繊維からなるウエッブをニードルパンチする際には、海成分樹脂の分散が繊維の太さ方向において粗密斑を生じやすい為に、ニードルパンチ工程において海成分ポリエチレンを境目として繊維割れを生じやすいという欠点があった。
【0007】
また、不織布の品位を決定する重要な項目であるニードルマークの発生についても海成分樹脂比率が40%以下の極細繊維発生型繊維においては、海成分比率が少ないためにニードルパンチ工程で生じたニードルマークが樹脂含浸、海成分の抽出、バフィング、染色仕上げを行った後にも発現し易いという欠点があり大きな問題となっている。
これらの問題を解決するために、不織布に用いられるステープルの特性とニードルパンチ性および不織布物性とを関連付ける目的で、ステープルのカット長、捲縮状態、F/F摩擦、F/R摩擦等の特性値に付いて様々な検討が行われているが、これらの欠点をカバーしうる具体的手段は全く無かった。
【0008】
また、特公昭49−10632号公報には、ポリスチレンを海成分とする極細繊維発生型繊維をニードルパンチする方法として、引掛け計数3.0以下のバーブを有するニードルを使用してニードルパンチする方法が開示されているが、海成分が繊維重量の40%以下のポリエチレンであり、かつ、島数が200島以下の場合においては、ニードルパンチ時の繊維損傷が大きく良好な不織布を得ることは不可能である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように、繊維重量に対して40%以下のポリエチレンからなる抽出可能な海成分を有する、島数が200以下の極細繊維発生型海島型繊維からニードルパンチ不織布を製造する方法においては、ニードルパンチ工程での繊維の割れ及びそれに伴う繊維の切断、絡合不良、ダンボール構造化による不織布の粗硬化、パンチ中の不織布の目付低下、へたり、ニードルパンチ用ニードルの摩耗等の問題点が生じていた。
本発明はこれらの問題点を解決し、スエード調人工皮革用の高性能不織布を安定的に製造すること提供することを目的とするものである。
本発明者らは従来の既成概念にとらわれることなく、鋭意検討の結果、本発明に到達した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、少なくともポリエチレンからなる海成分が島成分を取りまいてなる海島型形態の繊維であって、かつ繊維重量に対して40%以下のポリエチレンからなる、溶剤または分解剤で処理することにより抽出可能な海成分を有する、島数が200以下の極細繊維発生型海島型繊維からなるウエッブをニードルパンチするのに際して、ブレード部の太さが0.45mm以下、キックアップが0.01mm以下、スロートデプスが0.06mm以下であり、キックアップとスロートデプスの合計が0.03mm以上である1バーブニードル針を用いることを特徴とした不織布の製造方法である。
【0011】
本発明に使用するウエッブは、少なくともポリエチレンからなる海成分が島成分を取りまいてなる海島型形態の繊維であって、かつ繊維重量に対して40%以下のポリエチレンからなる、溶剤または分解剤で処理することにより抽出可能な海成分を有する、島数が200以下の極細繊維発生型海島繊維からなるウエッブであり、該海島繊維としては、不織布の表面平滑性および絡合性の点から3〜5デニールのものが好ましく用いられる。3デニール未満のウエッブは、カード通過性が低下する傾向にあり生産性に乏しいと共に、繊維強力が低いためにニードルパンチ工程における繊維切断が発生しやすくなる。また5デニールを超えるウエッブは、不織布の表面平滑性が得られにくく、スエード仕上を行った後の表面の均一性においても不満足なものしか得られない。また、ウエッブの目付は、100〜1000g/m2と通常用いられる範囲のものを使用できる。
【0012】
本発明で用いられるポりエチレンは、通常工業的に利用されているポリエチレンがいずれも使用でき、密度0.910〜0.925の低密度ポリエチレン、同じく密度0.926〜0.940の中密度ポりエチレン、同じく密度0.941〜0.965の高密度ポリエチレンのいずれであってもよい。中でも、低密度ホリエチレンとして市販されているものは、その取扱い性、溶融特性、紡糸性、温水浴中延伸性、溶解除去性等の観点から特に好ましい。また、かかるポリエチレンのメルトインデックスは5〜100の範囲にあるのが好ましい。もちろん他のモノマーが共重合されているものでもよい。
【0013】
また、本発明の極細繊維発生型海島繊維の島成分樹脂には、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等の何れの繊維形成性樹脂も使用可能であり特に限定されず、必要に応じ帯電防止剤、二酸化チタンのごとき艶消剤、カーボンブラックのごとき着色剤及び熱安定性の酸化防止剤等を添加混合することもできる。特に得られる人工皮革の風合いや触感、柔軟性等の点から、ポリエチレンテレフタレート系の樹脂およびナイロンー6系の樹脂が好ましい。
【0014】
本発明で用いられる海島繊維において、その繊維の横断面を見た場合に、海成分を構成するポリエチレンの重量は繊維の海成分および島成分の合計重量に対して40%以下であらねばならない。40%を越える場合には、ニードル針仕様にかかわらず、繊維割れの発生が少なく極細繊維発生型繊維のニードルパンチ性が良好で、得られた不織布はスエード調人工皮革用とした際の外観の均一性、ライティングが良好であるが、耐摩耗性が悪化すると共に、これらは、生産性が低下し、スエードとしての発色性に劣る。また同様に、繊維の横断面を見た場合に、島数は200以下であらねばならず、200を越える場合には、上記40%を越える場合と同一の問題が生じる。
【0015】
次に本発明のニードルパンチ方法についての説明を行う。添付の図1はニードル針の全体図を示すものであり、図2はニードル針のブレード部分の拡大図、図3はさらにそのバーブ部分の拡大図である。図中、1がバーブ、2がキックアップ、3がスロートデプス、4がアンダーカットアングル、5がスロート長、6がバーブ部太さである。
本発明に使用するニードル針のブレード部の太さは0.45mm以下のものであり、ブレード部分の太さ、すなわちバーブ部太さが太くなるほどニードルパンチ時の突き刺し抵抗が大きくなり、繊維切断、繊維割れを誘発しやすくなる。本発明に使用するポリエチレンからなる抽出可能な海成分を有する極細繊維発生型繊維においては、海成分ポリエチレンの特性から繊維抵抗が高くなる傾向が顕著であり、ブレード部の太さが0.45mmを超える場合には繊維切断、繊維割れを誘発する原因となり良好な不織布は得られない。ニードル針のブレード部の断面積は、通常正三角形であり、本発明で定義するブレード部の太さとは断面の正三角形の高さを意味するが、ブレード部の断名形状が正三角形と異なる場合には断面において最も太い部分の太さを表す。
【0016】
ブレード部の太さが0.45mm以下であることが必要であることと同じ理由によりキックアップは、0.01mm以下、スロートデプスは0.06mm以下であることが必要である。キックアップとスロートデプスを大きくすることにより、ニードル針の繊維把持能は向上するが、繊維把持能が向上することによりニードルパンチ時の突き刺し抵抗も増大するため、本発明におけるポリエチレンからなる抽出可能な海成分を有する極細繊維発生型海島繊維においては、繊維切断、繊維割れを誘発し、絡合不良、ダンボール構造化による不織布の粗硬化、パンチ中の不織布の目付低下、へたりを生じる原因となる。
【0017】
特にポリエチレンからなる抽出可能な海成分を有する極細繊維発生型繊維においては単にバーブの繊維把持能を減少することのみではニードルパンチ時の繊維損傷を防ぐことは困難であり、繊維損傷に与えるキックアップの効果がスロートデプスの効果と比較して非常に大きいことを見いだした。また、当然のことではあるが、キックアップとスロートデプスを小さくすると繊維の絡合効果は減少するが、キックアップとスロートデプスの合計を0.03mm以上確保することで繊維損傷を減少しニードルパンチでの絡合効果も充分なものとなり、さらに、ニードル針に過大な抵抗が生じることを防止するためニードル針の摩耗等の問題が無く、長期間の安定的な不織布の製造が可能となる。
【0018】
また、本発明に使用のニードル針のバーブ部のアンダーカットアングルは、5〜35度の通常の範囲の物が使用でき、スロート長についてバーブ部分の大きさに対して3倍以上の長さを有している通常の範囲の物が使用でき、特に限定されない。バーブの針先端からの位置は、先端から8mm以下の通常の範囲のもので本発明の効果が得られるが、ニードルパンチ時の針抵抗を減少し、針折れの発生を最小限にするためには、5mm以下であることが望ましい。また、本発明においては1バーブのニードル針を用いる。2バーブ以上の多バーブ針は、バーブ数の増加に比例してニードルパンチ時の突き刺し抵抗が増大するにもかかわらず、絡合効果の増加は少ない。多バーブ針を使用すると表面付近の繊維損傷が発生しやすくなり、不織布の段ボール化が生じやすくなる。バーブの向きは、突き刺し方向にて繊維を把持する順バーブでも、引き抜き方向にて繊維を把持する逆バーブでもよい。
【0019】
以上述べた本発明方法を用いることにより、繊維重量に対して40%以下のポリエチレンからなる抽出可能な海成分を有する、島数が200以下の極細繊維発生型海島型繊維からなり、ニードルパンチ後の比重が0.16以上かつニードルパンチによる繊維損傷による極細繊維の露出の割合が50%以下である不織布が得られ、このような不織布は人工皮革用の不織布として極めて優れている。
本発明方法(1)および(2)で得られたニードルパンチ不織布は、以下の(3)〜(6)の工程を組み合わすことによりスエード調人工皮革へ応用が可能である。すなわち
(1)特定の極細繊維発生型海島繊維を製造する工程、
(2)極細繊維発生型海島繊維からなる絡合不織布を特定の方法で製造する工程、
(3)不織布を仮固定する工程、
(4)該絡合不織布に弾性樹脂液を含浸し、凝固させて緻密な発泡体を形成する工程、
(5)該繊維から海成分ポリマーを除去して極細繊維束に変性する工程、
(6)該シートをバフィング、染色しスエード調人工皮革とする工程、
を順次行うことにより、本発明の不織布からスエード調人工皮革を得ることができる。
【0020】
極細繊維発生型繊維は、カ−ドで解繊し、ウェバ−を通してランダムウェブまたはクロスラップウェブを形成し、得られた繊維ウェブは所望の重さ、厚さに積層する。次いで、公知の方法でニ−ドルパンチ処理を行い、ニ−ドルパンチ不織布とする。パンチ数は通常1000〜3500パンチ/cm2の範囲内で処理を行う。
【0021】
該ニードルパンチ不織布は、極細繊維発生型繊維の海成分ポリエチレンを80℃以上、好ましくは100〜140℃で溶融後に冷却プレスするかあるいは80℃以上、好ましくは100〜140℃の加熱ロールでプレスすることにより不織布の見かけ密度の調整を行い、後に含浸する弾性重合体と繊維比率の調整を行うと共に、樹脂含浸工程での形態安定性を向上させる。
上記の熱処理を行う方法としては、成形後の表面平滑性の点からポリエチレンを溶融後に冷却プレスする方法が望ましい。
【0022】
次に、繊維絡合不織布に弾性重合体液を含浸、凝固する。繊維絡合不織布に含浸する弾性重合体は、例えば、平均分子量500〜3000のポリエステルジオ−ル、ポリエ−テルジオ−ル、ポリエステルエ−テルジオ−ル、ポリラクトンジオ−ル、ポリカ−ボネ−トジオ−ルなどから選ばれた少なくとも1種類のポリマ−ジオ−ルと、トリレンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、フェニレンジイソシアネ−ト、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4´-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−トなどの芳香族系、脂環族系、脂肪族系の有機ジイソシアネ−トなどから選ばれた少なくとも1種の有機ジイソシアネ−トと、ジオ−ル、ジアミン、ヒドロキシアミン、ヒドラジン、ヒドラジドなどの活性水素原子を少なくとも2個有する低分子化合物から選ばれた少なくとも1種類の鎖伸長剤とを所定のモル比で反応させて得たポリウレタンである。ポリウレタンは必要に応じて、合成ゴム、ポリエステルエラストマ−、ポリ塩化ビニルなどの重合体を添加して得た重合体組成物として使用する。
【0023】
次に、弾性重合体を主体とした重合体を溶剤に溶解あるいは分散剤に分散させて得た重合体液、更に重合体液には着色剤、凝固調節剤、離型剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤などから選ばれた添加剤を配合して得た重合体組成液として繊維絡合不織布に含浸し、重合体の非溶剤で処理して湿式凝固し、必要に応じて洗浄し、乾燥して繊維質基体とする。繊維質基体に占めるポリウレタンあるいはポリウレタン組成物の量は固形分として重量比で10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%の範囲である。
【0024】
重合体を含浸・凝固した繊維質基体は、島成分樹脂及び重合体の非溶剤でありかつ極細繊維発生型繊維の海成分の溶剤または分解剤で処理することにより、極細繊維発生型海島繊維を極細繊維束に変成し、極細繊維束絡合不織布とポリウレタンを主体とした重合体とからなる繊維質基体とする。
【0025】
次に、極細繊維絡合不織布とポリウレタンを主体とした重合体とからなる繊維質基体の少なくとも一面を起毛処理して極細繊維を主体とした繊維立毛面を形成させる。繊維立毛面を形成させる方法は、繊維質基体を所望の厚さに厚み合わせを行った後あるいは厚み合わせを行う前に、サンドペ−パ−などによるバフィング処理などによる。そして厚み合わせを行っていないものにあっては所望の厚さに厚み合わせを行う。次いで、得られたスエ−ド調繊維質基体を染色するが、染色は、分散染料、含金染料、カチオン染料などを主体とした染料で、通常の染色法で染色を行う。染色したスエ−ド調繊維質基体は揉み柔軟化処理、ブラッシングなどの仕上げ処理を行う。これによりスエ−ド調人工皮革の製品が得られる。
【0026】
【実施例】
以下実施例により本発明を詳述する。なお、実施例中の部はすべて重量部を意味する。なお繊維断面における島の数は、繊維の断面を顕微鏡により拡大し写真を撮り、数を数えることにより求められる。
【0027】
実施例1〜2、比較例1〜4
島成分として、o−クロロフエノール溶液中35℃で測定した極限粘度が0.64のポリエチレンテレフタレートのチップ、海成分としてメルトインデックスが70の高圧法低密度ポリエチレンチップを用い、貼合せ型ノズルを用いて50島の極細繊維発生型繊維の11drの未延伸糸を得た。これらの末延伸糸を、延伸温度70℃、延伸速度100m/分で延伸して、単繊維デニールが3.5デニールの延伸糸を得た。得られた延伸糸に機械捲縮を付与し、繊維長51mmに切断し、カ−ドで解繊した後クロスラップウェバ−でウェブとした。次に、1バーブニードルを用いて第1バーブの不織布貫通量が5mmとなる針深度にてパンチ密度2300P/cm 2 のニ−ドルパンチを行い、目付600g/m 2 の繊維絡合不織布とした。
【0028】
この繊維絡合不織布を熱水中での収縮処理および乾燥、表面平滑化処理を行った後にポリエ−テル系ポリウレタンを主体とするポリウレタン組成物13部、N,N’−ジメチルホルムアミド(以下DMFとする)87部の組成液を含浸し、DMF40%水溶液中で凝固し、水洗し、次いで、極細繊維発生型繊維中のポリエチレンをパ−クレンで処理して除去し、ポリエチレンテレフタレート極細繊維束状繊維とポリウレタンとからなる厚さ約1.4mmの繊維質基体を得た。繊維質基体を厚さ方向に2分割し、分割面をサンドペ−パ−でバフィングして厚さ0.6mmに厚み合わせを行った後、他の面をエメリ−バフ機で処理してポリエステル極細繊維立毛面を形成し、更に茶色に染色した後、仕上げをしてスエ−ド調人工皮革を得た。
【0029】
実施例3,4
島成分として、o−クロロフエノール溶液中35℃で測定した極限粘度が0.64のポリエチレンテレフタレートのチップ、海成分としてメルトインデックスが70の高圧法低密度ポリエチレンチップを用い、貼合せ型ノズルを用いて紡糸した15島の極細繊維発生型繊維を用いる以外は実施例1と同様な処理を行いスエ−ド調人工皮革を得た。
【0030】
比較例5
島成分として、o−クロロフエノール溶液中35℃で測定した極限粘度が0.64のポリエチレンテレフタレートのチップ、海成分としてメルトインデックスが70の高圧法低密度ポリエチレンチップを用い、混合紡糸ノズルを用いて紡糸した1000島の極細繊維発生型繊維を用いる以外は実施例1と同様な処理を行いスエ−ド調人工皮革を得た。
【0031】
実施例5、比較例6
島成分として、6ナイロン、海成分としてメルトインデックスが20の高圧法低密度ポリエチレンチップを用い、貼合せ型ノズルを用いて紡糸した50島の極細繊維発生型繊維を用いる以外は実施例1と同様な処理を行いスエ−ド調人工皮革を得た。
極細繊維発生型繊維からニードルパンチして得られた不織布の特性及びそれから得られたスエード調人工皮革の物性を表1に示す。
【0032】
得られた不織布およびスエード調人工皮革の評価方法。
不織布評価方法
1)ニードルパンチ時の目付低下を生じるパンチ数
ニードルパンチ時に繊維割れが生じ不織布の目付低下を生じるニードルパンチ数を表す。
2)不織布の層間剥離強力測定法
本発明にいう不織布の層間剥離強力は、不織布の絡合状態を示す指標であり、不織布をたて方向に1inch巾で23cm長さに切取り、厚さのほぼ真中にカミソリで切れ目を入れ長さ約10cm程度を剥離させ、つかみ間隔13cm、引張り速度20cm/minで剥離させたときの平均剥離強力をいう。測定値はn=2の平均値で表わす。
【0033】
3)ニードルパンチ後不織布の極細繊維露出率の測定方法
ニードルパンチ後の不織布から繊維を抜き出し、サンプル長さの合計値に対する極細繊維露出部の長さの合計値の比率を表す。
4)不織布の厚み方向の見かけ密度の測定
不織布の絡合不良に起因するダンボール構造化の目安として、不織布を厚み方向に3等分し、10cm×10cmの面積にて重量、厚さを測定して、不織布の見かけ密度の算出を行った。測定値はn=5の平均値で表わす。
【0034】
スエード調人工皮革評価方法
1)立毛繊維の均一性、ライティング効果の評価
任意に選出した20人のパネラ−による官能試験により評価。
◎:極めて良好
○:良好
△:やや不良
×:極めて不良
【0035】
2)表面の耐摩耗性の評価。
テーバー摩耗試験(摩耗輪CS10,荷重1kg,回転数1000回)前後の摩耗減量の測定を行った。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
本発明の方法(実施例1〜5)に従えば、繊維重量に対して40%以下のポリエチレンからなる抽出可能な海成分を有する、島数が200以下の極細繊維発生型繊維からなるウエッブをニードルパンチするのに際して、ブレード部の太さが0.45mm以下、キックアップが0.01mm以下、スロートデプスが0.06mm以下のニードル針を用いた場合はニードルパンチ性が良好で、得られた不織布はスエード調人工皮革用とした際の外観の均一性、ライティングが良好であり、耐摩耗性に優れていることがわかる。一方、スロートデプスが深い場合(比較例1)およびキックアップが大きい場合(比較例2,6)、ブレード太さが太い場合(比較例3)にはニードルパンチ時の繊維割れに起因する絡合不良、目付低下が発生し、得られたスエード調人工皮革の品位が低く、表面物性も悪い。ポリエチレンの量が本発明の範囲より多い場合(比較例4)および島数が本発明より多い場合(比較例5)には、ニードル針仕様にかかわらず、繊維割れの発生が少なく極細繊維発生型繊維のニードルパンチ性が良好で、得られた不織布はスエード調人工皮革用とした際の外観の均一性、ライティングが良好であるが、耐摩耗性が悪化すると共に、これらは、生産性が低下し、スエードとしての発色性に劣ることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる1バ−ブニ−ドル針のモデル図である。
【図2】図1のブレード部の拡大図である。
【図3】図2のバ−ブ部の拡大図である。
【符号の説明】
1:バ−ブ、
2:キックアップ、
3:スロ−トディプス、
4:アンダ−カットアングル、
5:スロ−ト長。
6:ブレード太さ
7:バーブの針先端からの位置
Claims (3)
- 少なくとも1成分がポリエチレンからなる海成分が、島成分を取りまいてなる海島型形態の繊維であって、かつ繊維重量に対して40%以下のポリエチレンからなる、溶剤または分解剤で処理することにより抽出可能な海成分を有する、島数が200以下の極細繊維発生型海島型繊維からなるウエッブをニードルパンチして不織布を製造するに際して、ブレード部の太さが0.45mm以下、キックアップが0.01mm以下、スロートデプスが0.06mm以下であり、キックアップとスロートデプスの合計が0.03mm以上である1バーブニードル針を用いることを特徴とする不織布の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法により得られた不織布に以下の工程(1)〜(3)(1)80℃以上の温度で熱処理後に冷却ロールにて不織布表面の平滑化を行うか、または80℃以上の熱ロールでプレスして不織布表面の平滑化を行なう工程、(2)弾性重合体の溶液を含浸したのち凝固し、その後、ポリエチレンを主体とした海成分樹脂を溶解除去する工程、(3)ポリエチレンを繊維から除去して得られた極細繊維シートをバフィング、染色する工程、を順次付加することを特徴とするスエード調人工皮革の製造方法。
- 少なくとも1成分がポリエチレンからなる海成分が、島成分を取りまいてなる海島型形態の繊維であって、かつ繊維重量に対して40%以下のポリエチレンからなる、溶剤または分解剤で処理することにより抽出可能な海成分を有する、島数が200以下の極細繊維発生型海島型繊維からなり、ニードルパンチ後の比重が0.16以上かつニードルパンチによる繊維損傷による極細繊維の露出の割合が50%以下であることを特徴とする不織布。
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JP6245298A JP3828274B2 (ja) | 1998-03-13 | 1998-03-13 | 不織布の製造方法 |
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