JP3731432B2 - ポリ乳酸繊維構造物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高発色性脂肪族ポリエステル繊維および繊維構造物に関する。さらに詳しくは、彩度が高く鮮明な発色性に優れるため、婦人衣料やフォーマルウエア等の高付加価値衣料用途に特に好適な脂肪族ポリエステル繊維および繊維構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートを代表とする芳香族ポリエステル繊維は、強度、耐熱性、耐薬品性、ウォッシュアンドウエア性など各種の特性に優れるため、衣料用繊維として広く用いられている。
【0003】
しかし、芳香族ポリエステルは分子鎖内に芳香環を有するためにポリマーの屈折率が高く、発色性の観点からは不十分な特性の繊維構造物しか得られなかった。有彩色に染色した場合には、色の“くすみ”が生じ、特に濃色領域に染色した場合には彩度が低下して黒に近い色調となってしまうという欠点があった。
【0004】
芳香族ポリエステル繊維の彩度を向上させる方法としては、カチオン染料を用いて染色する技術が知られている。しかし、カチオン染料を用いるためには、分子鎖内にスルホン酸ナトリウムなどの有機酸金属塩構造を導入するためのポリマー改質が必要となることから、汎用性の点で問題がある。また、カチオン染料は固着性が高いために染め直しが困難であることや、作業性に劣る問題も有している。
【0005】
また、芳香族ポリエステルにアジピン酸などを共重合してTgを低下せしめ、有彩色の発色性を向上させる方法が特開平10−195783号公報に開示されている。しかし、この場合には共重合によって耐光堅牢度が低下する問題があり、鮮明な発色性も未だ十分なものではなかった。
【0006】
天然繊維や化学繊維の中には、芳香族ポリエステルとは異なり、レーヨンやアセテートなど発色性に優れた繊維は存在している。しかし、これらの繊維は強度が弱いために布帛の強力が低いこと、洗濯後にしわになりやすくウォッシュアンドウエア性がないこと、また熱や水の作用によって収縮しやすく取り扱い性に劣ることなどの欠点を有しており、衣料用繊維構造物としては必ずしも望ましいものではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記の問題点を克服し、有彩色の発色性に優れた繊維、及び有彩色の発色性に優れた繊維構造物を、汎用的に提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は以下の構成によって解決することができる。
(1)強度が3〜8cN/dtex、沸騰水収縮率が0〜15%、カルボキシル基末端濃度[COOH]が0〜20eq/tであるポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いてなる繊維構造物であって、明度L*値が20〜50であり、かつ彩度C*値が40〜80であることを特徴とするポリ乳酸繊維構造物、
(2)繊維構造物が布帛よりなり、エルメンドルフ引裂強力計を用いて測定される該布帛の引裂強力が490cN以上であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸繊維構造物、
(3)ポリ乳酸繊維のカルボキシル基末端濃度[COOH]が0〜10eq/tであることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項記載のポリ乳酸繊維構造物、
(4)ポリ乳酸繊維が、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物の中から選ばれる少なくとも1種の末端封鎖剤を反応させたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリ乳酸繊維構造物、
(5)ポリマーの屈折率が1.30〜1.50、融点が130℃以上、強度が3〜8cN/dtex、沸騰水収縮率が0〜15%、カルボキシル基末端濃度[COOH]が0〜20eq/tであるポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いた繊維構造物を、染色温度120〜130℃で染色し、明度L*値が20〜50であり、かつ、彩度C*値が40〜80である繊維構造物を得ることを特徴とするポリ乳酸繊維構造物の製造方法、
(6)カルボキシル基末端濃度[COOH]が0〜10eq/tであるポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いた繊維構造物を染色することを特徴とする請求項5記載のポリ乳酸繊維構造物の製造方法、
(7)カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物の中から選ばれる少なくとも1種の末端封鎖剤を反応させたポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いた繊維構造物を染色することを特徴とする請求項5〜6のいずれか1項記載のポリ乳酸繊維構造物の製造方法、
である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維は脂肪族ポリエステル(ポリ乳酸)からなり、その屈折率が1.30〜1.50であるものである。以下、本発明においてポリ乳酸を脂肪族ポリエステルといい、ポリ乳酸繊維を脂肪族ポリエステル繊維という場合もある。屈折率が1.50よりも高いと繊維表面における反射光が多くなるため、このような繊維を用いて布帛にしても発色性に劣るものとなる。屈折率は好ましくは1.30〜1.45である。
【0014】
ここでいう屈折率は、自然光を採光できる室内に設置され恒温水の循環などの手段により23℃に調節された、プリズムを備えたアッベ屈折計により、JIS−K7105記載の方法に準拠して測定される値を意味している。
【0015】
また、本発明の脂肪族ポリエステルは、融点が130℃以上であるものである。融点が130℃よりも低い場合には、単糸間の融着の発生による延伸性不良や、染色加工時、熱セット時、摩擦加熱時に溶融欠点が生じるなど、製品の品位が著しく低いものとなるため、衣料用途に用いるには好ましくない。好ましくは脂肪族ポリエステルの融点は150℃以上であり、さらに好ましくは融点が165℃以上である。ここで融点とは、DSC測定によって得られた溶融ピークのピーク温度を意味する。
【0016】
屈折率が1.30〜1.50であり、融点が130℃以上である脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレートバリレートなどのポリオキシ酸類、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールの重縮合物類、ポリピバロラクトンなどの脂肪族環状エステルを開環重合して得られるポリエステル類、およびこれらのブレンド物、変性物等を例示することができる。
【0017】
本発明では高融点、高耐熱性の観点から、L−乳酸及び/又はD−乳酸を主たる繰り返し単位とするポリエステルであるポリ乳酸を用いる。ポリ乳酸の製造方法には、L−乳酸及び/又はD−乳酸を原料として一旦環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う二段階のラクチド法と、L−乳酸及び/又はD−乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知られている。本発明で用いるポリ乳酸はいずれの製法によって得られたものであってもよい。
【0018】
ポリ乳酸の平均分子量は、通常少なくとも5万、好ましくは少なくとも10万、好ましくは10〜30万である。平均分子量が5万よりも低い場合には繊維の強度物性が低下するため好ましくない。30万を越える場合には溶融粘度が高くなりすぎ、溶融紡糸が困難になる場合がある。
【0019】
また、本発明におけるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸の他にエステル形成能を有するその他の成分を共重合した共重合ポリ乳酸であってもよい。共重合可能な成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。ただし、高い融点を維持するためや繊維強度を損なわないため、繊維の70モル%以上が乳酸単位からなることが望ましい。
【0020】
また、溶融粘度を低減させるため、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートのような脂肪族ポリエステルポリマーや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン−プロピレン)グリコールなどの脂肪族ポリエーテルポリマーを内部可塑剤として、あるいは外部可塑剤として含有させることができる。さらには、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、抗酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加することができる。
【0021】
また、本発明の脂肪族ポリエステル繊維は、分散染料Kayalon Polyester Rubine BL−S 200を用いて染色した際に、染色された繊維構造物の明度L*値と彩度C*値の間に下記式1の関係が存在するものである。
【0022】
20≦(L*)≦50, −0.12{(L*)−40}2+48≦(C*)≦80 ・・・(式1)
ここで、明度L*とは、L*a*b*系の色表示における明度であり、彩度C*は(a*2+b*2)1/2で定義される彩度を意味している。
【0023】
ここで、L*a*b*の各値は標準布帛、すなわち下記式2で規定されるカバーファクターF1 が700〜800の範囲の織物を作成し、上記染料を用いて常法により染色し、これを用いて測定した値である。
【0024】
F1 ={経糸密度(本/cm)×(経糸の繊度(dtex))0.5 }+{緯糸密度(本/cm)×(緯糸の繊度(dtex))0.5 } ・・・(式2)
L*値とC*値の間に式1の関係、すなわち、20〜50のL*値に対して、C*値が−0.12{(L*)−40}2 +48以上、80以下となる関係が成り立たない場合には、鮮明な発色が得られない。この際、式1の関係が存在するかどうかを判断される脂肪族ポリエステル繊維が他の繊維と混合した状態にある場合には、脂肪族ポリエステル繊維のみを分取し、この分取された繊維を用いて式2で規定されるカバーファクターF1 が700〜800の範囲の織物を作成するか、あるいは混合前の糸を用いて式2で規定されるカバーファクターF1 が700〜800の範囲の織物を作成し、上記染料を用いて常法によって染色を行い、これを用いてL*a*b*各値を測定する。
【0025】
また、本発明における脂肪族ポリエステル繊維は繊維の強度が3〜8cN/dtex以上であり、沸騰水収縮率が0〜15%であることが好ましい。強度が3cN/dtex未満の場合には製織時の糸切れ停台の原因となったり、織物、編地の引裂強力および破裂強力の低下による製品強度の低下を招くため好ましくない。繊維の強度は、より好ましくは4cN/dtex以上であり、さらに好ましくは5cN/dtex以上である。8cN/dtex以上の強度を有する繊維を得るためには、延伸倍率を高くとる必要があり、この場合繊維の伸度が著しく低くなるため、製造が困難となることがある。
【0026】
また沸騰水収縮率は0〜15%であることが望ましい。15%より大きいと、精練、染色など熱水処理を行った場合の収縮が大きくなり、布帛の幅出しが困難となり、風合いも硬化する傾向にあるため好ましくない。通常の布帛として用いる場合には、沸騰水収縮率は2〜10%、さらに好ましくは3〜8%となっていることがよい。
【0027】
また、本発明における脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端濃度[COOH]は0〜20eq/tであることが必要である。カルボキシル基末端濃度が20eq/tよりも多い場合には、染色加工時に生じる加水分解の度合いが大きく、染色条件によっては布帛の引裂強力の著しい低下を招くことがある。特に、濃色に染色するため染色温度を高くした場合に加水分解は顕著であるため、布帛の強力保持の観点からは、脂肪族ポリエステルのカルボキシル基末端濃度は好ましくは10eq/t以下、最も好ましくは6eq/t以下である。カルボキシル基末端基濃度は低ければ低いほど好ましい。ここでカルボキシル基末端基濃度とは実施例中に記載の方法によって測定した値を指す。
【0028】
このような低いカルボキシル基末端基量の脂肪族ポリエステルは、脂肪族ポリエステルの溶融状態でカルボキシル基と反応性を有する化合物、例えばカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、アジリジン化合物、ジオール化合物、長鎖アルコール化合物などの末端封鎖剤を適量反応させることで得ることができるが、脂肪族ポリエステルの高重合度化、残存低分子量物の抑制などの観点から、ポリマーの重合反応終了後に末端封鎖剤を添加・反応させることが好ましい。上記した末端封鎖剤と脂肪族ポリエステルとの混合・反応としては、例えば、重縮合反応終了直後の溶融状態の脂肪族ポリエステルに末端封鎖剤を添加し攪拌・反応させる方法、脂肪族ポリエステルのチップに末端封鎖剤を添加・混合した後に反応缶あるいはエクストルーダなどで混練・反応させる方法、エクストルーダで脂肪族ポリエステルに液状の末端封鎖剤を連続的に添加し、混練・反応させる方法、末端封鎖剤を高濃度含有させた脂肪族ポリエステルのマスターチップと脂肪族ポリエステルのホモチップとを混合したブレンドチップをエクストルーダなどで混練・反応させる方法などにより行うことができる。また、末端封鎖剤を用いず、ポリマーの重縮合反応を低温でおこなう等、ポリマーの重合時における熱分解を抑制する方法によってもよい。
【0029】
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうちカルボジイミド化合物の例としては、例えば、N,N´−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert.−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド,N,N′−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド、下記一般式(I)で示される芳香族ポリカルボジイミドなどが挙げられる。
【0030】
【化1】
【0031】
(式中のRは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは2〜20の整数を表す)
さらには、これらのカルボジイミド化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択して脂肪族ポリエステルのカルボキシル末端を封鎖すればよいが、反応性の点でN,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドが好ましい。
【0032】
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうちエポキシ化合物の例としては、例えば、N−グリシジルフタルイミド、N−グリシジル−4−メチルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3−メチルフタルイミド、N−グリシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−4−エトキシフタルイミド、N−グリシジル−4−クロルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジクロルフタルイミド、N−グリシジル−3,4,5,6−テトラブロムフタルイミド、N−グリシジル−4−n−ブチル−5−ブロムフタルイミド、N−グリシジルサクシンイミド、N−グリシジルヘキサヒドロフタルイミド、N−グリシジル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリシジル−α,β−ジメチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−エチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−プロピルサクシンイミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジル−p−メチルベンズアミド、N−グリシジルナフトアミド、N−グリシジルステラミド、N−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−エチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−ナフチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−トリル−3−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、オルソフェニルフェニルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、3−(2−キセニルオキシ)−1,2−エポキシプロパン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、α−クレシルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ヒドヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジメチルジグリシジルエステル、フロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルなどが挙げられ、さらには、テレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、フェニレンジグリシジルエーテル、エチレンジグリシジルエーテル、トリメチレンジグリシジルエーテル、テトラメチレンジグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジグリシジルエーテル、エポキシ化大豆油などが挙げられる。これらのエポキシ化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択して脂肪族ポリエステルのカルボキシル末端を封鎖すればよいが、反応性の点でエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、オルソフェニルフェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、N−グリシジルフタルイミド、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルなどが好ましい。
【0033】
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうちオキサゾリン化合物の例としては、例えば、2−メトキシ−2−オキサゾリン、2−エトキシ−2−オキサゾリン、2−プロポキシ−2−オキサゾリン、2−ブトキシ−2−オキサゾリン、2−ペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘプチルオキシ−2−オキサゾリン、2−オクチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ノニルオキシ−2−オキサゾリン、2−デシルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキシ−2−オキサゾリン、2−メタアリルオキシ−2−オキサゾリン、2−クロチルオキシ−2−オキサゾリン、2−フェノキシ−2−オキサゾリン、2−クレジル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ペンチル−2−オキサゾリン、2−ヘキシル−2−オキサゾリン、2−ヘプチル−2−オキサゾリン、2−オクチル−2−オキサゾリン、2−ノニル−2−オキサゾリン、2−デシル−2−オキサゾリン、2−シクロペンチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−アリル−2−オキサゾリン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−オキサゾリンなどが挙げられ、さらには、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−9,9′−ジフェノキシタンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)などが挙げられる。これらのオキサゾリン化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択して脂肪族ポリエステルのカルボキシル末端を封鎖すればよい。
【0034】
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうちオキサジン化合物の例としては、例えば、2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−エトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−プロポキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ブトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ペンチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘプチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−オクチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ノニルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−デシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−シクロペンチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−シクロヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−アリルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−メタアリルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−クロチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジンなどが挙げられ、さらには、2,2′−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−メチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−エチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−プロピレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−ブチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−p−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−m−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−ナフチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2′−P,P′−ジフェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)などが挙げられる。これらのオキサジン化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択して脂肪族ポリエステルのカルボキシル末端を封鎖すればよい。
【0035】
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうちアジリジン化合物の例としては、例えば、モノ,ビスあるいはポリイソシアネート化合物とエチレンイミンとの付加反応物などが挙げられる。
【0036】
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうち、ジオール化合物の例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレン−プロピレン)グリコール、ポリ(エチレン−ブチレン)グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0037】
本発明に用いることのできる末端封鎖剤のうち、長鎖アルコール化合物としては、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどがあげられる。また、グリセロール、ソルビトール、キシルトール、リビトール、エリスチトールなどの多価アルコールを用いてもよい。
【0038】
また、本発明に用いることのできる末端封鎖剤として上述した化合物のうち、2種以上の化合物を末端封鎖剤として併用することもできる。
【0039】
本発明の脂肪族ポリエステル繊維は、(染色前強度/染色後強度)×100で表される染色時の強度保持率Sが70〜100(%)であることが望ましい。冴えた色調、深い色調の染色布帛を得るためには、たとえば110〜130℃などのある程度高い染色温度を選択する必要があるが、繊維の強力保持率Sが70%に満たない場合には、高温の染色加工によって布帛の強力が低くなりすぎてしまい、実用に供することができなくなることがある。強力保持率は、より好ましくは80〜100%である。
【0040】
本発明の脂肪族ポリエステル繊維は、丸断面あるいは扁平、三〜八葉、C型、H型、中空などの異形断面であってもよいし、少なくとも1成分、好ましくは2成分以上が脂肪族ポリエステルからなる芯鞘型、偏心芯鞘型、サイドバイサイド型、割繊維分割型など、あるいは海島型などの1成分を溶出するタイプの複合繊維であってもよい。また、通常のフラットヤーン以外に、仮撚加工糸、強撚糸、タスラン加工糸、太細糸、混繊糸等のフィラメントヤーンであってもよく、ステープルファイバーやトウ、あるいは紡績糸などの各種形態の繊維であってよい。
【0041】
以下、本発明の繊維を用いた繊維構造物に関して述べる。
【0042】
本発明の繊維構造物は、縫い糸や刺繍糸、ひも類などの糸形態でもよく、織物、編物、不織布、フェルト等の布帛形態、あるいはコート、セーター、その他の外衣、下着、パンスト、靴下、裏地、芯地、スポーツ衣料などの衣料用製品、カーテン、カーペット、椅子貼り、カバン、家具貼り、壁材、各種のベルトやスリング等の生活資材用製品、帆布、ネット、ロープ、重布等の産業資材用製品、人工皮革製品など、各種の繊維製品形態をも含む。
【0043】
本発明の脂肪族ポリエステル繊維構造体は、本発明の脂肪族ポリエステル繊維を単独で使用してもよく、また他の繊維と混用することもできる。混用する場合でも、脂肪族ポリエステル繊維の高い発色性を生かす利用方法とすることが好ましい。布帛として混用する場合には、例えば本発明の脂肪族ポリエステル繊維の混用比率を30重量%以上、好ましくは50重量%以上とすることが好ましく、混用する他の繊維は適正な染料により脂肪族ポリエステル繊維と同色または異色に染色して使用することが好ましい。他の繊維としては特に制限はないが、綿、麻などのセルロース繊維、ウール、絹、レーヨン、アセテート、テンセル、あるいはポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、ポリウレタン等が挙げられる。
【0044】
混用の態様としては、他の繊維からなる繊維構造物との各種組み合わせのほか、他の繊維との混繊糸、複合仮撚糸、混紡糸、長短複合糸、流体加工糸、カバリングヤーン、合撚、交織、交編、パイル織編物、混綿、詰め綿、長繊維や短繊維の混合不織布、フェルトが例示される。
【0045】
本発明の脂肪族ポリエステル繊維構造体は、脂肪族ポリエステル繊維の発色性を生かすよう、分散染料によって染色されていることが重要である。この場合彩度C*値が20以上であると発色性が良好となり、この観点でC*値は40以上であり、最も好ましくは50以上である。C*値は80以下であることが必要である。
【0046】
また、明度L*値が20以上であると濃過ぎることがなく鮮明さが維持でき、L*値が50以下の場合、薄過ぎることがなく発色性が良好であり好ましい範囲である。
【0047】
このように高い彩度の布帛とするためには、繊維中に存在する分散染料の濃度が0.5〜10wt%であることが望ましい。0.5wt%に満たない場合には、明度、彩度ともに不十分な色調の布帛となることがある。また、10wt%より多い場合には、著しく濃色の布帛となって彩度が低下してしまうことがある。繊維中に存在する分散染料の濃度は、より好ましくは、2〜9wt%である。
【0048】
本発明の繊維構造物は、エルメンドルフ強力計で測定した引裂強力が490cN以上であることが好ましい。引裂強力が490cNに満たない場合には、衣服の耐久性に問題を生じる場合がある。引裂強力はより好ましくは700cN以上である。
【0049】
さらに、本発明の繊維構造物は、織物であっても編物であってもよいが、織物の場合には、下記式2で規定される織物カバーファクターF1 が300〜2000であることが望ましい。
【0050】
F1 ={経糸密度(本/cm)×(経糸の繊度(dtex))0.5 }+{緯糸密度(本/cm)×(緯糸の繊度(dtex))0.5 } ・・・(式2)
カバーファクターF1 が300以上の場合には、単位面積あたりの繊維の存在率が高く、優れた発色が得られる。また、2000以下の場合には、風合いが硬くならず衣料用途に適したものになる。カバーファクターF1は、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは700〜1200である。
【0051】
繊維構造物が編物である場合には、下記式3で規定されるカバーファクターF2が2〜60であることが望ましい。
【0052】
F2 ={繊度(dtex)0.5 }/{ループ長(cm)} ・・・(式3)
カバーファクターF2 が2以上の場合には、単位面積あたりの繊維の存在率が高く、優れた発色が得られる。また、60以下の場合には、風合いが硬くならず衣料用途に適したものとなる。カバーファクターF2 は、より好ましくは5〜50、最も好ましくは10〜40である。
【0053】
また、優れた発色性の観点から、本発明の繊維構造物として立毛を有するパイル布帛を採用することができる。
【0054】
本発明の繊維構造物は、ポリマーの屈折率が1.30〜1.50であり、融点が130℃以上である脂肪族ポリエステルからなる、強度が3〜8cN/dtex、沸騰水収縮率が0〜15%、カルボキシル基末端濃度[COOH]が0〜20eq/tである脂肪族ポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる繊維構造物を、染色温度120〜130℃で染色することによって製造することができる。染色温度が120℃に満たない場合には染料の染着性が低いため淡染の繊維構造物となって、彩度(C*値)の高い布帛は得られない。130℃を越えると、カルボキシル基末端濃度[COOH]を20eq/tとしても、染色加工時の繊維の強力低下を防ぐことはできない。
【0055】
特に、濃色に染色するため染色温度を高くした場合に加水分解は顕著であるため、布帛の強力保持の観点からは、脂肪族ポリエステル繊維のカルボキシル基末端濃度[COOH]は好ましくは10eq/t以下、最も好ましくは6eq/t以下とする。
【0056】
染色加工前に、50℃〜100℃の弱アルカリ条件下で精練を行い、また80〜100℃のアルカリ条件下で減量加工を行うことは、必要に応じて実施できる。また、染色加工後に、弱アルカリ条件、還元剤存在下で還元洗浄を行うことも、必要に応じて実施できる。さらに、発色性向上のためやその他の機能付与のために公知の樹脂コーティングを実施しても良い。
【0057】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
A.融点
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計(DSC−7)を用いて、昇温速度15℃/分の条件で測定し、得られた溶融ピークのピーク温度を融点とした。
B.カルボキシル基末端濃度[COOH](eq/t)
精秤した試料をo−クレゾール(水分5%)調製液に溶解し、この溶液にジクロロメタンを適量添加の後、0.02規定のKOHメタノール溶液にて滴定することにより測定した。
C.屈折率
ポリマーの熱圧フィルムを試料として、23℃に調節された、プリズムを備えたアッベ屈折計により、JIS−K7105記載の方法に準拠して測定した。
D.強度
オリエンテック社製引張試験機(テンシロンUCT−100型)を用い、試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行い破断点の応力を繊維の強度とした。
E.沸騰水収縮率
試料を10回巻きのかせ取りにし、0.09cN/dtexの加重下で原長(L0 )を測定した。100℃に調温された沸水バスの中で、試料のかせを15分間処理した後取り出し、風乾した後、0.09cN/dtexの加重下で処理後長(L1 )を測定した。次式によって沸騰水収縮率を算出した。
【0058】
沸騰水収縮率={(L0 −L1 )/L0 }×100 (%)
F.L*a*b*値、C*値
染色した布帛を試料とし、ミノルタ社製分光測色機CM−3700dを用いて、D65光源、視野角度10度の条件で、L*、a*、b*を測定した。C*値は下式によって算出した。
【0059】
C*=(a*2 +b*2 )1/2
G.引裂強力
ダイエイ科学製機(株)のエルメンドルフ引裂強力計を用いて、縦10cm×横6.5cmの試験片をセットし、試験機のカッターハンドルを引いて2cmの切れ目を入れた。落下ボタンを押して扇型振り子を落下させ、試験片の残り4.5cmを引き裂き、この時の強力を読みとった。試験はタテ方向とヨコ方向を各3回繰り返して、全体の平均値をもって布帛の引き裂き強力とした。
参考例1 低カルボキシル基末端濃度ポリマーの調製
融点168℃、重量平均分子量12万、カルボキシル基末端濃度26.6eq/tであるポリL乳酸ポリマー100重量部に対して1.7重量部のN,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドを、2軸エクストルーダーを用いて、スクリュー部温度200℃、平均滞留時間2分間の条件で均一に混練・反応させた。エクストルーダーから押し出したガットを水冷し、チップ状に成形した。得られたポリマーの屈折率は1.43、融点は166℃、カルボキシル基末端濃度は5eq/tであった。
実施例1
参考例1で得られた、屈折率1.43、融点166℃、カルボキシル基末端濃度5eq/tのポリL乳酸ポリマーのチップを、105℃に設定した真空乾燥器で12hr乾燥した。乾燥したチップをプレッシャーメルター型紡糸機にて、メルター温度210℃にて溶融し、紡糸温度220℃で、0.23D−0.30Lの口金孔より紡出した。この紡出糸を20℃、25m/minのチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束した後、3000m/minで引き取って未延伸糸(122dtex−36f)を得た。
【0060】
この未延伸糸をホットローラー系の延伸機を用い、延伸温度90℃、熱セット温度120℃、延伸倍率1.45倍、延伸速度800m/minの条件で延伸して84dtex−36fの延伸糸を得た。得られた延伸糸の強度は、4.2cN/dtex、沸騰水収縮率は6.2%であり、布帛の取り扱い上問題を生じなかった。
【0061】
該延伸糸を用いてツイル織物(2/2)を作成し、80℃×20分間精練を行った後、150℃×2分間乾熱セットを施した。該織物を下記の条件に調整された染浴にて、120℃×1hr染色を行い、続いてカセイソーダ0.5g/l、ハイドロサルファイト0.2g/lを溶解させた水溶液を用いて60℃×20分間還元洗浄を行った。得られた染色布帛は、タテ糸密度が40本/cm、ヨコ糸密度が40本/cmであり、カバーファクターF1 は733であった。また、染色後の繊維強度は 3.9cN/dtexであり、染色時の強度保持率Sは93%と充分高い値であった。
【0062】
染色した布帛はL*値が37.0、C*値が51.2であり、L*値とC*値は式1の関係を満足していた。また、引裂強力は940cNと耐久性に優れたものであった。
【0063】
実施例2
実施例1と同様にして得た延伸糸(84dtex−36f)を用いて、サテン織物(5枚朱子)を作成した。該織物を下記の条件に調整された染浴にて、120℃×1hr染色を行い、実施例1と同様に還元洗浄を行った。得られた染色布帛は、タテ糸密度79本/cm、ヨコ糸密度39本/cmであり、カバーファクターF1 は1091であった。また染色時の強度保持率Sは81%であり許容できるものであった。
【0064】
染色布帛のL*値は48.2、C*値は41.8であり、式1の関係を満足していた。また、引き裂き強力は820cNであり、耐久性にも優れたものであった。
【0065】
実施例3
実施例1と同様にして得た延伸糸(84dtex−36f)を用いて、丸編地(スムース)を作成した。下記の条件に調整された染浴にて、130℃×1hr染色を行い、続いて60℃×20分間還元洗浄を行った。得られた染色編地のカバーファクターF2 は、38であった。染色時の強度保持率は75%であり許容できるものであった。
【0066】
染色布帛のL*値は31.1、C*値は40.5であり、式1の関係を満足するものであった。また、引き裂き強力は1850cNであり、耐久性にも優れたものであった。
【0067】
実施例4
実施例1と同様にして得た延伸糸(84dtex−36f)を用いて、パイル織物(ベロア)を作成した。実施例1と同様に120℃×1hr染色を行い、続いて60℃×20分間還元洗浄を行った。カバーファクターF1 は850であった。また、染色時の強度保持率Sは94%であり充分高いものであった。
【0068】
染色布帛のL*値は28.6、C*値は35.2であり、式1の関係を満足していた。また、引き裂き強力は1200cNであり、耐久性にも優れたものであった。
実施例5
屈折率1.43、融点168℃、カルボキシル基末端濃度25eq/tのポリL乳酸ポリマーのチップを用いる他は実施例1と同様にして、84dtex−36fの延伸糸を得た。延伸糸の強度は4.1cN/dtexであり、沸収は6.5%であった。この延伸糸を用いてツイル織物を作成し、実施例1と同様に120℃×1hr染色を行い、続いて60℃×20分間還元洗浄を行った。得られた染色布帛は、タテ糸密度が40本/cm、ヨコ糸密度が40本/cmであり、カバーファクターF1は733であった。
【0069】
表1に示すように布帛のL*値は38.2、C*値は52.4であり、L*値とC*値は式1の関係を満足していたが、引裂強力は510cNとかなり低下していた。
比較例1
融点が60℃、屈折率が1.43、カルボキシル基末端濃度[COOH]が32eq/tのポリカプロラクトンのチップを、30℃に設定した真空乾燥機で24hr乾燥した。乾燥したチップを実施例1と同様にして84dtex−36fの延伸糸を得た。延伸糸の強度は2.8cN/dtex、沸収は42%であった。この延伸糸を用いて実施例1と同様にツイル織物を作成し、80℃×20分の精練を行ったところ、激しく収縮し、織物形状が維持されていなかったため、以降の評価は省略した。
比較例2
融点が262℃、屈折率が1.58、カルボキシル基末端濃度[COOH]が28(eq/t)のポリエチレンテレフタレートのチップを、160℃に設定した真空乾燥機で5hr乾燥した。乾燥したチップをプレッシャーメルター型紡糸機にて、メルター温度280℃にて溶融し、紡糸温度290℃で、0.23D−0.30Lの口金孔より紡出した。この紡出糸を20℃、25m/minのチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束した後、3000m/minで引き取って未延伸糸(150dtex−36f)を得た。
【0070】
この未延伸糸をホットローラー系の延伸機を用い、延伸温度90℃、熱セット温度130℃、延伸倍率1.80倍、延伸速度800m/minの条件で延伸して84dtex−36fの延伸糸を得た。得られた延伸糸の強度は、5.0cN/dtex、沸騰水収縮率は6.8%であり、布帛の取り扱い上問題を生じなかった。
【0071】
該延伸糸を用いてツイル織物(2/2)を作成し、80℃×20分間精練を行った後、180℃×2分間乾熱セットを施した。該織物を下記の条件に調整された染浴にて、130℃×1hr染色を行い、続いてカセイソーダ0.5g/l、ハイドロサルファイト0.2g/lを溶解させた水溶液を用いて80℃×20分間還元洗浄を行った。得られた染色布帛は、タテ糸密度が40本/cm、ヨコ糸密度が40本/cmであり、カバーファクターF1 は733であった。染色時の強度保持率は98%であった。
【0072】
染色布帛は、L*値は38.5で、C*値が45.5であり、式1を満足しなかった。実際の布帛にも色調の鮮明性が感じられなかった。引裂強力は1500cNであった。
【0073】
比較例3
染液の組成を下記の通りとする以外は、実施例1と同様に染色加工を行った。表2に示す通り、布帛のL*値が53.4、C*値が24.2であり、式1の関係を満足しなかった。実際に布帛の色調は淡色であり、鮮明性が感じられなかった。
【0074】
比較例4
染液の組成を下記の通りとする以外は、実施例5と同様に染色加工を行った。染色時の強度保持率は72%であった。
【0075】
染色布帛のL*値が19.8、C*値2.4であり、式1の関係を満足しなかった。実際に布帛の色調は極めて暗色であり、鮮明性が感じられなかった。布帛の引裂強力は720cNであり、耐久性に劣るものであった。
【0076】
【0077】
【発明の効果】
本発明の脂肪族ポリエステル繊維を用いることによって、従来得られなかった高い発色性を有する繊維製品を得ることができる。本発明によれば、彩度が高く鮮明な発色性に優れるため、婦人衣料やフォーマルウエア等の高付加価値衣料用途に特に好適な脂肪族ポリエステル繊維および繊維構造物を得ることができる。
Claims (7)
- 強度が3〜8cN/dtex、沸騰水収縮率が0〜15%、カルボキシル基末端濃度[COOH]が0〜20eq/tであるポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いてなる繊維構造物であって、明度L*値が20〜50であり、かつ彩度C*値が40〜80であることを特徴とするポリ乳酸繊維構造物。
- 繊維構造物が布帛よりなり、エルメンドルフ引裂強力計を用いて測定される該布帛の引裂強力が490cN以上であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸繊維構造物。
- ポリ乳酸繊維のカルボキシル基末端濃度[COOH]が0〜10eq/tであることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項記載のポリ乳酸繊維構造物。
- ポリ乳酸繊維が、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物の中から選ばれる少なくとも1種の末端封鎖剤を反応させたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリ乳酸繊維構造物。
- ポリマーの屈折率が1.30〜1.50、融点が130℃以上、強度が3〜8cN/dtex、沸騰水収縮率が0〜15%、カルボキシル基末端濃度[COOH]が0〜20eq/tであるポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いた繊維構造物を、染色温度120〜130℃で染色し、明度L*値が20〜50であり、かつ、彩度C*値が40〜80である繊維構造物を得ることを特徴とするポリ乳酸繊維構造物の製造方法。
- カルボキシル基末端濃度[COOH]が0〜10eq/tであるポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いた繊維構造物を染色することを特徴とする請求項5記載のポリ乳酸繊維構造物の製造方法。
- カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物の中から選ばれる少なくとも1種の末端封鎖剤を反応させたポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いた繊維構造物を染色することを特徴とする請求項5〜6のいずれか1項記載のポリ乳酸繊維構造物の製造方法。
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