JP3468512B2 - 磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、及び磁気記録装置 - Google Patents

磁気抵抗効果素子、磁気ヘッド、及び磁気記録装置

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JP3468512B2
JP3468512B2 JP2001234284A JP2001234284A JP3468512B2 JP 3468512 B2 JP3468512 B2 JP 3468512B2 JP 2001234284 A JP2001234284 A JP 2001234284A JP 2001234284 A JP2001234284 A JP 2001234284A JP 3468512 B2 JP3468512 B2 JP 3468512B2
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Panasonic Holdings Corp
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    • B82YSPECIFIC USES OR APPLICATIONS OF NANOSTRUCTURES; MEASUREMENT OR ANALYSIS OF NANOSTRUCTURES; MANUFACTURE OR TREATMENT OF NANOSTRUCTURES
    • B82Y25/00Nanomagnetism, e.g. magnetoimpedance, anisotropic magnetoresistance, giant magnetoresistance or tunneling magnetoresistance
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F10/00Thin magnetic films, e.g. of one-domain structure
    • H01F10/32Spin-exchange-coupled multilayers, e.g. nanostructured superlattices
    • H01F10/324Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer
    • H01F10/3268Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer the exchange coupling being asymmetric, e.g. by use of additional pinning, by using antiferromagnetic or ferromagnetic coupling interface, i.e. so-called spin-valve [SV] structure, e.g. NiFe/Cu/NiFe/FeMn
    • H01F10/3272Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer the exchange coupling being asymmetric, e.g. by use of additional pinning, by using antiferromagnetic or ferromagnetic coupling interface, i.e. so-called spin-valve [SV] structure, e.g. NiFe/Cu/NiFe/FeMn by use of anti-parallel coupled [APC] ferromagnetic layers, e.g. artificial ferrimagnets [AFI], artificial [AAF] or synthetic [SAF] anti-ferromagnets

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱的に安定な磁気抵
抗磁気抵抗効果素子とこれを用いた磁気ヘッド、磁気記
録装置、及び磁気抵抗効果メモリ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、強磁性層(自由層)/非磁性層/
強磁性層(固定層)を含んでいる磁気抵抗効果素子にお
いて、この非磁性層にCu等の金属膜を用いたGMRの
研究、およびこの非磁性層にAl23等の絶縁膜を用い
たTMRと呼ばれるトンネル型磁気抵抗効果素子の研究
が盛んとなってきている(Journal of Ma
gnetism and Magnetic Mate
rials 139 (1995)L231)。このG
MRおよびTMRは、磁気ヘッドおよびメモリー素子へ
の応用が検討されている(2000 IEEE ISS
CC TA7.2、 TA7.3)。GMRは、すでに
磁気ヘッドに応用されている。TMRは、室温で約40
%の抵抗変化率を示し、高出力が期待されている。
【0003】しかしながら、このような磁気抵抗効果素
子は層厚が数nmの積層膜であるため、250℃−30
0℃以上においては界面拡散が生じてその特性が劣化す
る課題がある。特に固定層がFeMn、IrMn等のM
nを含有する反強磁性膜とこれを介して交換結合した強
磁性膜とを含む磁気抵抗効果素子においては250℃以
上になるとこのMnが拡散し、その特性が劣化するとい
う課題がある。
【0004】この課題を改善する方法として、固定層を
Ru、Ir、Rh等を含む交換結合用非磁性膜を介し
て反強磁性的に交換結合した二つの強磁性膜を含む[強
磁性膜/交換結合用非磁性膜/強磁性膜]という構成と
することによりMnの拡散をRu、Ir、Rh等で止め
ようとする試みがなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この場
合用いられる交換結合用非磁性膜の膜厚は0.6〜0.
8nm程度であるため、300℃以上においてはこの交
換結合用非磁性膜の界面において拡散が生じて、特性の
劣化が生じ課題は未解決である。
【0006】本発明は、熱的安定性の課題を改善して4
00℃においても安定な特性を示す磁気抵抗効果素子、
これを用いた磁気ヘッド、磁気記録装置、及びメモリー
素子を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る磁気抵抗効
果素子は、外部磁界により容易に磁化回転する自由層
と、非磁性層と、該非磁性層に対して該自由層と反対側
に設けられ外部磁界により容易には磁化回転しない固定
層とを含む磁気抵抗効果素子であって、該固定層は、第
1交換結合用非磁性膜と、該第1交換結合用非磁性膜を
介して反強磁性的に交換結合した第1および第2磁性膜
とを含み、該第1交換結合用非磁性膜は、Ru、Ir、
Rh、Reのいずれかの酸化物を含み、そのことにより
上記目的が達成される。
【0008】前記磁気抵抗効果素子は、トンネル型の磁
気抵抗効果素子であってもよい。
【0009】前記固定層と磁気的に交換結合した反強磁
性膜をさらに含んでもよい。
【0010】前記自由層は、第2交換結合用非磁性膜
と、該第2交換結合用非磁性膜を介して反強磁性的に交
換結合した第3および第4磁性膜とを含み、該第2交換
結合用非磁性膜は、Ru、Ir、Rh、Reのいずれか
の酸化物を含み、該第3および第4磁性膜の磁化をM
1、M2、膜厚をt1、t2とする時、それぞれの積M
1・t1とM2・t2は実質的に異なってもよい。
【0011】前記第1乃至第4磁性膜の少なくとも1つ
は、Coを主成分としてBを含有してもよい。
【0012】前記第1および第2磁性膜の少なくとも1
つは、Coを主成分としてBを含有してもよい。
【0013】前記固定層と磁気的に交換結合した反強磁
性膜と、前記反強磁性膜に対して前記固定層と反対側に
設けられNiFeCrを主成分とする下地膜とをさらに
含んでいてもよい。
【0014】本発明に係る他の磁気抵抗効果素子は、外
部磁界により容易に磁化回転する自由層と、非磁性層
と、該非磁性層に対して該自由層と反対側に設けられ外
部磁界により容易には磁化回転しない固定層とを含む磁
気抵抗効果素子であって、該自由層は、第1交換結合用
非磁性膜と、該第1交換結合用非磁性膜を介して反強磁
性的に交換結合した第1および第2磁性膜とを含み、該
第1交換結合用非磁性膜は、Ru、Ir、Rh、Reの
いずれかの酸化物を含み、該第1および第2磁性膜の磁
化をM1、M2、膜厚をt1、t2とする時、それぞれ
の積M1・t1とM2・t2は実質的に異なり、そのこ
とにより上記目的が達成される。
【0015】前記磁気抵抗効果素子は、トンネル型の磁
気抵抗効果素子であってもよい。
【0016】前記固定層と磁気的に交換結合した反強磁
性膜と、前記反強磁性膜に対して前記固定層と反対側に
設けられNiFeCrを主成分とする下地膜とをさらに
含んでもよい。
【0017】本発明に係る磁気ヘッドは、記録媒体から
の信号磁界を検知する磁気ヘッドであって、磁性体を含
む二つのシールド部と、該二つのシールド部の間のギャ
ップ内に設けられる本発明の磁気抵抗効果素子とを備
え、そのことにより上記目的が達成される。
【0018】本発明に係る他の磁気ヘッドは、磁性体を
含む磁束ガイド部と、該磁束ガイド部により導かれた信
号磁界を検知する本発明の磁気抵抗効果素子とを備え、
そのことにより上記目的が達成される。
【0019】本発明に係る磁気記録装置は、記録媒体に
信号を記録する本発明の磁気ヘッドと、該磁気ヘッドを
搭載したアームと、該アームを駆動する駆動部と、該信
号を処理して該磁気ヘッドに供給する信号処理部とを備
え、そのことにより上記目的が達成される。
【0020】本発明に係る磁気抵抗効果メモリー素子
は、外部磁界により容易に磁化回転する自由層と、非磁
性層と、該非磁性層に対して該自由層と反対側に設けら
れ外部磁界により容易には磁化回転しない固定層とを含
む磁気抵抗効果素子であって、該固定層は、交換結合用
非磁性膜と、該交換結合用非磁性膜を介して反強磁性的
に交換結合した第1および第2磁性膜とを含み、該交換
結合用非磁性膜は、Ru、Ir、Rh、Reのいずれか
の酸化物を含む磁気抵抗効果素子と、該自由層の磁化反
転を起こすための磁界を発生するワード線と、該磁気抵
抗効果素子の抵抗変化を検知するセンス線とを備え、そ
のことにより上記目的が達成される。
【0021】前記磁気抵抗効果素子は、前記固定層と磁
気的に交換結合した反強磁性膜をさらに含んでもよい。
【0022】前記自由層は、第2交換結合用非磁性膜
と、該第2交換結合用非磁性膜を介して反強磁性的に交
換結合した第3および第4磁性膜とを含み、該第2交換
結合用非磁性膜は、Ru、Ir、Rh、Reのいずれか
の酸化物を含み、該第3および第4磁性膜の磁化をM
1、M2、膜厚をt1、t2とする時、それぞれの積M
1×t1とM2×t2は実質的に異なってもよい。
【0023】前記第1乃至第4磁性膜の少なくとも1つ
は、Coを主成分としてBを含有してもよい。
【0024】前記第1および第2磁性膜の少なくとも1
つは、Coを主成分としてBを含有してもよい。
【0025】前記磁気抵抗素子は、前記固定層と磁気的
に交換結合した反強磁性膜と、前記反強磁性膜に対して
前記固定層と反対側に設けられNiFeCrを主成分と
する下地膜とをさらに含んでもよい。
【0026】本発明に係る他の磁気抵抗効果メモリー素
子は、外部磁界により容易に磁化回転する自由層と、非
磁性層と、該非磁性層に対して該自由層と反対側に設け
られ外部磁界により容易には磁化回転しない固定層とを
含む磁気抵抗効果素子であって、該自由層は、第1交換
結合用非磁性膜と、該第1交換結合用非磁性膜を介して
反強磁性的に交換結合した第1および第2磁性膜とを含
み、該第1交換結合用非磁性膜は、Ru、Ir、Rh、
Reのいずれかの酸化物を含み、該第1および第2磁性
膜の磁化をM1、M2、膜厚をt1、t2とする時、そ
れぞれの積M1×t1とM2×t2は実質的に異なる磁
気抵抗効果素子と、該自由層の磁化反転を起こすための
磁界を発生するワード線と、該磁気抵抗効果素子の抵抗
変化を検知するセンス線とを備え、そのことにより上記
目的が達成される。
【0027】前記磁気抵抗素子は、前記固定層と磁気的
に交換結合した反強磁性膜と、前記反強磁性膜に対して
前記固定層と反対側に設けられNiFeCrを主成分と
する下地膜とをさらに含んでもよい。
【0028】本発明に係るメモリー素子は、本発明の磁
気抵抗効果メモリー素子をマトリックス状に配列して構
成され、そのことにより上記目的が達成される。
【0029】前記磁気抵抗素子は、前記固定層と磁気的
に交換結合した反強磁性膜と、前記反強磁性膜に対して
前記固定層と反対側に設けられNiFeCrを主成分と
する下地膜とをさらに含んでもよい。
【0030】本発明のある局面に従えば、Ru、Ir、
Rh、Reの酸化膜を用いることにより交換結合用非磁
性膜界面での拡散が抑制され耐熱性を大幅に改善するこ
とが出来る。この磁気抵抗効果素子の固定層は硬質磁性
膜でも良いが、素子サイズが小さくなると固定層からの
磁界も自由層に影響を及ぼすので、固定層が反強磁性膜
と磁気的に交換結合した積層反強磁性結合膜より構成さ
れることが望ましい。
【0031】自由層が外部印加磁界方向に磁化回転する
ためには積層反強磁性結合膜を構成する二つの磁性膜の
磁化をM1、M2、膜厚をt1、t2とする時、それぞ
れの積M1・t1とM2・t2は異なるようにする必要
がある。この積の値が等しいと磁界が印加されても自由
層のその方向への磁化回転に支障を来すからである。こ
れらの固定層は反強磁性膜と磁気的に交換結合した上記
積層反強磁性結合膜より構成されることが望ましい。
【0032】これら磁気抵抗効果素子の固定層あるいは
自由層、もしくは固定層と自由層の双方の磁性膜の一部
にCoを主成分としてBを含有する磁性膜を用いても良
い。この様な構成とすることにより自由層の軟磁気特性
が改善され感度の良い素子が可能となる。
【0033】磁性体より成る二つのシールド部を有し、
この二つのシールド部のギャップ内に上記の磁気抵抗効
果素子を設けることにより、熱的安定性に優れた信号磁
界を検知する再生ヘッド部を有する磁気ヘッドが可能と
なる。
【0034】磁性体より成る磁束ガイド(ヨーク)部を
有し、この磁束ガイド部により導かれた信号磁界を検知
する素子として上記の磁気抵抗効果素子を用いることに
より熱的安定性に優れた再生ヘッド部を有する磁気ヘッ
ドが可能となる。
【0035】これらの磁気ヘッドとその駆動部、情報を
記録する磁気記録媒体部、及び信号処理部を用いて熱的
安定性に優れた磁気記録装置を構成することが可能とな
る。
【0036】上記の磁気抵抗効果素子部と、磁気抵抗効
果素子部の自由層の磁化反転を起こすための磁界を発生
するに設けられた導体線(ワード線)、磁気抵抗効果素
子部の抵抗変化を検知するための導体線(センス線)を
設けることにより熱的安定性に優れた磁気抵抗効果メモ
リー素子が可能となる。
【0037】またこれらメモリー素子をマトリックス状
に配列し駆動回路を設ければ、熱的安定性に優れた(ラ
ンダムアクセス)メモリー素子が可能となる。
【0038】
【発明の実施の形態】実施の形態に係る磁気抵抗効果素
子の一例を図1に示す。磁気抵抗効果素子100は、外
部磁界により容易に磁化回転する自由層101と、非磁
性層103と、非磁性層103に対して自由層101と
反対側に設けられ外部磁界により容易には磁化回転しな
い固定層102とを含んでいる。固定層102は、交換
結合用非磁性膜104と、交換結合用非磁性膜104を
介して反強磁性的に交換結合した磁性膜105および1
06とを含んでいる。交換結合用非磁性膜104は、R
u、Ir、Rh、Reのいずれかの酸化物を含んでい
る。
【0039】自由層101と固定層102とは、非磁性
層103により磁気的に分離されている。自由層101
は外部から印加される磁界によって自由に磁化回転し、
固定層102は外部から印加される磁界によって容易に
は磁化回転しない。
【0040】前述したように固定層102は、交換結合
用非磁性膜104を介して反強磁性的に交換結合した磁
性膜105および106を含んでいる。本発明は、この
反強磁性的な交換結合を実現する交換結合用非磁性膜1
04にRu、Ir、Rh、Reのいずれかの酸化膜を用
いることを特徴とする。二つの磁性膜を反強磁性的に交
換結合させる交換結合用非磁性膜としてはCu,Ag,
Cr,Ru,Ir等多数の金属が知られている。しかし
ながら、これらの金属の酸化膜または窒化膜を用いて、
反強磁性的な交換結合を実現出来る交換結合用非磁性膜
は知られていなかった。即ち、金属の酸化膜は二つの磁
性層を反強磁性的に交換結合させることができないとい
う見解が当業者の常識であり、二つの磁性層を反強磁性
的に交換結合させる交換結合用非磁性膜として酸化膜を
用いるということは、当業者にとって非常識な見解であ
った。
【0041】例えばCu,Ag,Cr等の酸化膜によっ
ては、二つの磁性膜を反強磁性的に交換結合させる反強
磁性的交換結合を実現することは出来ない。この理由と
しては以下の事項が知られている。
【0042】二つの磁性膜の電子は通常d電子と呼ばれ
ている。このd電子は、局在的な振る舞いをする。この
ため、二つの磁性膜を数原子層も離すとこの二つの磁性
膜の間の磁気的相互作用が急激に弱くなる。Cu,A
g,Cr,Ru,Irのような非磁性金属膜の電子は通
常s電子と呼ばれている。二つの磁性膜の間にこのC
u,Ag,Cr,Ru,Irのような非磁性金属膜を挿
入すると、このs電子は遍歴的な振る舞いをする。この
遍歴的な振る舞いをするs電子を介して二つの磁性膜の
d電子同士の間において磁気的相互作用が強まる。その
結果、二つの磁性膜の距離(即ち非磁性金属膜の膜厚)
に依存して二つの磁性膜は反強磁性的にあるいは強磁性
的に交換結合する。この効果は、「RKKY相互作用」
として知られている。
【0043】しかしながら、この非磁性金属膜に酸化膜
を用いると、この酸化膜の電子は遍歴的な振る舞いをす
ることなく、局在的な振る舞いを示すため、二つの磁性
膜を反強磁性的に交換結合させることが困難となる。
【0044】このように、交換結合用非磁性膜として酸
化膜を用いることは当業者にとって非常識な見解であっ
て、実際、酸化膜は交換結合用非磁性膜として使用され
ていなかった。Al23やSiO2等の代表的酸化膜を
二つの磁性膜の間に入れて交換結合用非磁性膜として用
いても、この二つの磁性膜は全く交換結合しないことが
知られている。CuおよびCrの酸化膜についても同様
である。即ち、CuまたはCrを介して反強磁性的に交
換結合している二つの磁性膜も、このCuまたはCrを
CuまたはCrの酸化膜によって置き換えると反強磁性
的に交換結合しなくなる。
【0045】本願発明者は、固定層に含まれる強磁性膜
の中に、厚さが1nm程度の超薄型の酸化膜を挿入する
と、電子がこの超薄型の酸化膜により鏡面反射されて大
幅に磁気抵抗効果が改善されることを報告した(Jou
rnal of Magnetism and Mag
netic Materials 210 (200
0) L20−24)。
【0046】そこで本願発明者らはこれらの事実に着目
して、電子の鏡面反射効果を実現すると同時に二つの磁
性膜間の反強磁性的な交換結合を実現することができる
酸化膜を求めて研究開発を行った。その結果、Ru,I
r,Rh,Reの酸化膜は酸化膜でありながら例外的に
二つの磁性膜間の反強磁性的な交換結合を実現すること
ができるという事実を発見した。さらに、このRu,I
r,Rh,Reの酸化膜は、以下に述べる優れた熱的安
定性を示すことを発見した。
【0047】このRu、Ir、Rh、Reの金属の酸化
膜は、Ru、Ir、Rh、Reの金属膜よりも拡散しに
くい。即ち、400℃以上においても交換結合用非磁性
膜104の界面において拡散が生じず、磁気抵抗効果素
子の特性が劣化することがない。また、このRu、I
r、Rh、Reのいずれかの酸化膜は、酸化膜でありな
がらこの膜を介して二つの磁性膜105および106を
反強磁性的に交換結合させることが可能である。このよ
うに、交換結合用非磁性膜104にRu、Ir、Rh、
Reのいずれかの酸化膜を用いると、400℃以上にお
いても交換結合用非磁性膜104の界面において拡散が
生じず、磁気抵抗効果素子の特性が劣化することがない
磁気抵抗効果素子、即ち、熱的に安定な磁気抵抗効果素
子100を得る事ができる。
【0048】非磁性層103としてCu等の金属膜を用
いるとGMRとなる。このGMRにおいては、図1に示
す多層膜の左右に電極を設けて磁気抵抗効果素子を構成
する。非磁性層103としてAlの酸化膜等の絶縁膜を
用いるとTMRとなる。このTMRにおいては、図1に
示す多層膜の上下に電極を設けて磁気抵抗効果素子を構
成する。
【0049】このGMRとTMRとのいずれの場合も、
自由層101の磁化方向と固定層102に含まれる磁性
膜105の磁化方向とが反平行の場合には、この磁気抵
抗効果素子の抵抗が高く、平行の場合は抵抗が低くな
る。このGMRとTMRとにおいては、この抵抗変化率
(以下MR比と呼ぶ)が従来のNiFe等を用いた磁気
抵抗効果素子より大きなものが得られる。
【0050】図2は、実施の形態に係る他の磁気抵抗効
果素子200の構成図である。図1を参照して前述した
磁気抵抗効果素子100の構成要素と同一の構成要素に
は同一の参照符号を付している。これらの構成要素につ
いての詳細な説明は省略する。
【0051】図1に示す磁気抵抗効果素子と同様に、磁
気抵抗効果素子200に含まれる固定層102は、交換
結合用非磁性膜104を介して反強磁性的に交換結合し
た磁性膜105および106を含んでいる。本発明は、
この反強磁性的な交換結合を実現する交換結合用非磁性
膜104にRu、Ir、Rh、Reのいずれかの酸化膜
を用いることを特徴とする。交換結合用非磁性膜104
にRu、Ir、Rh、Reのいずれかの酸化膜を用いる
と、400℃以上においても交換結合用非磁性膜104
の界面において拡散が生じず、磁気抵抗効果素子の特性
が劣化することがない磁気抵抗効果素子、即ち、熱的に
安定な磁気抵抗効果素子200を得る事ができる。
【0052】この磁気抵抗効果素子200は、固定層1
02と磁気的に交換結合した反強磁性膜201と、この
反強磁性膜201に対して102固定層と反対側に設け
られNiFeCrを主成分とする下地膜201Aとをさ
らに含んでいる。
【0053】図1に於いて固定層102の磁化方向を更
に強力に固定するには、図2に示すように反強磁性膜2
01と交換結合した構成とすることが望ましい。特にこ
の場合、反強磁性膜201用の下地膜201AとしてN
iFeCrを主成分とした膜を用いると反強磁性膜20
1と固定層102との交換結合特性が改善される。この
場合反強磁性膜201の交換結合力が固定層102のみ
に及ぶためには下地膜201AとしてのNiFeCrは
非磁性膜であることが望ましい。
【0054】図2において反強磁性膜201の代わりに
硬質磁性膜を設けても良いが、磁気ヘッドやメモリー素
子への応用を考慮すると、微細な形状にパターニングし
た場合、この硬質磁性膜からの磁界が自由層101に影
響を及ぼすので、この影響のない反強磁性膜201を用
いることが望ましい。
【0055】図3は、実施の形態に係るさらに他の磁気
抵抗効果素子300の構成図である。図2を参照して前
述した磁気抵抗効果素子200の構成要素と同一の構成
要素には同一の参照符号を付している。これらの構成要
素についての詳細な説明は省略する。
【0056】図1に示す磁気抵抗効果素子と同様に、磁
気抵抗効果素子300に含まれる固定層102は、交換
結合用非磁性膜104を介して反強磁性的に交換結合し
た磁性膜105および106を含んでいる。本発明は、
この反強磁性的な交換結合を実現する交換結合用非磁性
膜104にRu、Ir、Rh、Reのいずれかの酸化膜
を用いることを特徴とする。交換結合用非磁性膜104
にRu、Ir、Rh、Reのいずれかの酸化膜を用いる
と、400℃以上においても交換結合用非磁性膜104
の界面において拡散が生じず、磁気抵抗効果素子の特性
が劣化することがない磁気抵抗効果素子、即ち、熱的に
安定な磁気抵抗効果素子300を得る事ができる。
【0057】この磁気抵抗効果素子300が図2を参照
して前述した磁気抵抗効果素子200と異なる点は、自
由層101の替わりに自由層301を設けた点である。
自由層301は、交換結合用非磁性膜302と、交換結
合用非磁性膜302を介して反強磁性的に交換結合した
磁性膜303および304とを含んでいる。この交換結
合用非磁性膜302は、Ru、Ir、Rh、Reのいず
れかの酸化物を含んでいる。磁性膜303および304
の磁化をM1、M2、その膜厚をt1、t2とする時、
それぞれの積M1×t1とM2×t2は実質的に異なっ
ている。
【0058】即ちこの構成では(M1×t1−M2×t
2)が零とならないように注意する必要がある。これを
実現するには同じ組成の二つの膜を用いる場合は膜厚に
差をつける必要があるし、二つの磁性膜の膜厚は同じで
も両者の磁化が異なれば良い。
【0059】図1あるいは図2に示した磁気抵抗効果素
子100、200において、膜厚を一定のまま磁気抵抗
効果素子の幅が小さくなると、即ち、素子が微細化する
と、一般には反転磁界は磁気抵抗効果素子の幅に逆比例
して大きくなる。この反転磁界が大きくなると、磁気抵
抗効果素子の感度が低下し、これを用いたメモリー素子
においてワード線の書き込み電流の増加を引き起こす。
しかしながら、本発明の場合はM1×t1とM2×t2
の値の差(M1×t1−M2×t2)が自由層301全
体の磁気的に有効な部分として動作するため、このM1
×t1とM2×t2の値の差を調整することにより、素
子の微細化による感度の低下の問題および書き込み電流
の増加の問題を解決することが出来る。
【0060】又磁気抵抗効果素子が微細化すると、メモ
リー素子の自由層に書き込まれた情報が熱揺らぎの影響
を受けるおそれがある。しかし、図3に示すように非磁
性膜(交換結合用非磁性膜)302を介して反強磁性的
に交換結合した二つの磁性膜303および304を含む
自由層301を設けることにより熱揺らぎに対して安定
なメモリー素子を実現することが出来る。この場合自由
層301を構成する二つの磁性膜303および304の
磁化と膜厚の積の差は0よりも大きく、2T(テスラ)
nm以下とすることが望ましい。
【0061】このように、非磁性膜302を介して交換
結合した二つの磁性膜303および304を含む自由層
301は、図4に示したように反強磁性的交換結合を保
ったまま自由層301の(M1×t1−M2×t2)の
磁化方向と外部磁界方向が平行となるように磁化回転す
る。自由層301を非磁性膜302を介して交換結合し
た二つの磁性膜303および304を含む構成として
も、図4に示したような動作をしないものは感度が悪
く、図4に示したような動作をするよう設計することが
大切である。
【0062】更に図3に示したように固定層102が交
換結合用非磁性膜104を介して反強磁性的に交換結合
している二つの磁性膜105及び106を含む構成とす
ると、外部磁界に対してより磁化回転し難く、熱的にも
安定な磁気抵抗効果素子とすることが可能である。この
場合は自由層301と異なり磁性膜105と106の磁
化と膜厚とは同じでも良い。なお図3では固定層102
に反強磁性膜201を有するものを示したが、反強磁性
膜201は無い構成としても良い。
【0063】磁気抵抗効果素子100または200に含
まれる固定層102の磁性膜105と106との少なく
とも一方にCoを主成分としてBを5%以上30%以下
含有するCoFeB、CoNbB、CoFeNbB等の
磁性膜を用いても良い。この様な構成とすることにより
自由層101または201の軟磁気特性が改善され感度
の良い素子が可能となる。
【0064】同様に磁気抵抗効果素子300に含まれる
固定層102の磁性膜105と106と自由層301に
含まれる磁性膜303と304との少なくとも1つにC
oを主成分としてBを5%以上30%以下含有するCo
FeB、CoNbB、CoFeNbB等の磁性膜を用い
ても良い。この様な構成とすることにより自由層301
の軟磁気特性が改善され感度の良い素子が可能となる。
【0065】図1〜図3に示される固定層102に含ま
れる磁性膜105および106、ならびに図3に示され
る自由層301に含まれる磁性膜303および304と
してはCo、Fe、Co−Fe、Ni−Fe、Ni−F
e−Co等の合金膜、あるいはこれらの積層膜とするこ
とが望ましい。自由層301に含まれる磁性膜303お
よび304としては軟磁気特性を示すものが望ましく、
Ni−Fe系やNi−Fe−Co系の磁性膜をその主構
成膜とすることが望ましい。
【0066】図1〜図3に示す固定層102の磁性膜1
05および106は硬質磁性膜でも良い。例えばCoP
t系膜がその一例である。更にこの硬質磁性膜と磁性膜
とを積層したものでも良い。一例としてはCoPt/C
oFeがあげられる。又固定層102は反強磁性膜20
1と交換結合した磁性膜105および106を含んでも
良い。
【0067】図2および図3に示す反強磁性膜201と
しては、T−Mn(TはNi、Pt、Ir、Pd、R
h、Ru、Crから選ばれる1種もしくは2種以上の元
素)系の合金膜が望ましい。具体例ではPtMn、Rd
PtMn、NiMn、IrMn、CrPtMn、RuR
hMn等が挙げられる。又これら反強磁性膜201の下
地膜201AにはNiFeCrを主成分とするものを用
いることが望ましい。この場合NiFeCrは非磁性で
あることが望ましく、Crを20原子%以上含有する組
成とすれば室温で非磁性とすることが可能である。更に
上述の自由層301の場合と同様に非磁性膜を介して反
強磁性的に交換結合した二つの磁性膜としても良い。
【0068】自由層と固定層を磁気的に分離する非磁性
層103としては、TMRを得るための絶縁膜について
は、AlOやAlN、AlNO、BN等を用いることが
望ましい。GMRを得るための金属膜(非磁性導電膜)
としてはCu、Au、Ag、Cr、Ru等を非磁性層1
03に用いることが望ましい。非磁性層103と自由層
101または301との間、あるいは非磁性層103と
固定層102との間に、ハーフメタルでスピン分極率の
大きな膜を挿入することにより更に大きな磁気抵抗変化
率が得られる。このハーフメタルでスピン分極率の大き
な膜の一例としてはFe34膜がそれであり、この場合
その膜厚を1nm以下とすることが望ましい。
【0069】これらの本実施の形態に係る磁気抵抗効果
素子を用いれば、熱的安定性に優れた磁気ヘッドを得る
事が出来る。図5は、本実施の形態に係る磁気抵抗効果
素子を用いた磁気ヘッド500の構成図である。磁気ヘ
ッド500は、再生ヘッド部505を備えている。この
再生ヘッド部505は、上部シールド501と、下部シ
ールド502と、上部シールド501と下部シールド5
02との間に形成された再生ギャップ503の中に設け
られた本実施の形態に係る磁気抵抗効果素子504とを
含んでいる。この二つのシールド501および502は
磁性体より成っている。
【0070】巻き線部506に電流が流れると、記録ポ
ール507と上部シールド501との間に形成された記
録ギャップ508からの漏れ磁界により信号が記録媒体
(図示せず)に記録される。記録媒体(図示せず)から
の信号磁界を再生ギャップ503(シールドギャップ)
間に設けられた磁気抵抗効果素子504が読み取ること
により記録媒体に記録された信号が再生される。
【0071】磁気抵抗効果素子504には図示しないリ
ード線部が接続される。磁気抵抗効果素子504がGM
Rである場合は、二つのシールド501、502と絶縁
されたリード線部が磁気抵抗効果素子504の左右に接
続される。磁気抵抗効果素子504がTMRである場合
は、磁気抵抗効果素子504の上下にリード線部が接続
される。磁気抵抗効果素子504がTMRである場合
は、磁気抵抗効果素子504の上下に接続されたリード
線部を上部シールド501および下部シールド502と
それぞれ接続して、上部シールド501および下部シー
ルド502がリード線部を兼ねる構造としても良い。こ
の構造によれば再生ギャップ503をより狭くすること
が可能となる。
【0072】このように本実施の形態によれば、熱的安
定性に優れた磁気抵抗効果素子504を備えた再生ヘッ
ド部505を有する磁気ヘッド500を実現することが
できる。
【0073】図6は、本実施の形態に係る磁気抵抗効果
素子を用いた他の磁気ヘッド600の構成図である。磁
気ヘッド600は、上部シールド602と、下部シール
ド601と、上部シールド602と下部シールド601
との間に設けられた磁気抵抗効果素子504とを備えて
いる。下部シールド601は、磁性体より成り、ヨーク
部(磁束ガイド部)を兼ねている。図6ではTMRとし
ての磁気抵抗効果素子504を用いた場合の構成を示し
ている。
【0074】図6に示すように、記録媒体(図示せず)
からの信号磁界は再生ギャップを経て下部シールド60
1と兼用されたヨーク部に沿って磁気抵抗効果素子50
4へ導かれ、ヨーク部601に接続された磁気抵抗効果
素子504により読み取られる。TMRとしての磁気抵
抗効果素子504には、上部リードが接続されている。
下部シールド601は、磁気抵抗効果素子504に接続
される下部リードをさらに兼用している。さらに、磁気
抵抗効果素子504に含まれる自由層全体、もしくはそ
の一部を下部シールド601と兼用しても良い。GMR
として磁気抵抗効果素子504を用いた場合は、磁気抵
抗効果素子504とヨーク部601とを絶縁した構成と
する必要がある。
【0075】このように本実施の形態によれば、熱的安
定性に優れた磁気抵抗効果素子504を備えたヨークを
有する磁気ヘッド600を実現することができる。
【0076】図7は、本実施の形態に係る磁気抵抗効果
素子を備えた磁気ヘッドを用いた磁気記録再生装置70
0の斜視図である。本実施の形態に係る再生ヘッドを有
する磁気ヘッドを用いてHDD等の磁気記録再生装置を
構成することが可能である。図7に示すように、磁気記
録再生装置700は、磁気記録媒体703に情報を記録
再生する磁気ヘッド701と、磁気ヘッド701を搭載
したアーム705と、アーム705を駆動する駆動部7
02と、磁気ヘッド701によって磁気記録媒体703
から再生された信号および磁気ヘッド701によって磁
気記録媒体703へ記録する信号を処理する信号処理部
704とを備えている。
【0077】駆動部702は、磁気記録媒体703上の
所定の位置に磁気ヘッド701を位置決めするようにア
ーム705を駆動する。再生動作においては、磁気ヘッ
ド701は、磁気記録媒体703に記録された信号を読
み出す。信号処理部704は、磁気ヘッド701によっ
て磁気記録媒体703から読み出された信号を再生処理
する。記録動作においては、信号処理部704は磁気記
録媒体703に記録すべき信号を記録処理する。磁気ヘ
ッド701は、信号処理部704によって記録処理され
た信号を磁気記録媒体703に記録する。このように本
実施の形態によれば、熱的安定性に優れた再生ヘッドを
有する磁気ヘッドを用いた磁気記録再生装置を構成する
ことができる。
【0078】更に本実施の形態に係る磁気抵抗効果素子
を用い、これに磁界を発生するワード線と磁気抵抗効果
素子の抵抗を読みとるセンス線とを設け図8および図9
に示すような構成とすれば、メモリー素子を得ることが
できる。
【0079】図8は、本実施の形態に係る磁気抵抗効果
素子801をGMRとして用いたメモリー素子800の
構成図である。メモリー素子800は、GMRとしての
磁気抵抗効果素子801を備えている。この磁気抵抗効
果素子801の左右には磁気抵抗効果素子801に記録
された情報を読み出すためのセンス線802が接続され
ている。メモリー素子800には、磁気抵抗効果素子8
01に情報を書き込むための2本のワード線803およ
び804が設けられている。
【0080】このメモリー素子800を複数個マトリッ
クス状に配列すると、二つのワード線803および80
4からの合成磁界により複数個の磁気抵抗効果素子80
1のうちの一つの磁気抵抗効果素子を選択して情報を書
き込むことが可能である。電流の流れる方向はワード線
803では紙面に垂直方向で、ワード線804では紙面
内の左右の方向である。
【0081】図9は、本実施の形態に係る磁気抵抗効果
素子901をTMRとして用いたメモリー素子900の
構成図である。メモリー素子900は、TMRとしての
磁気抵抗効果素子901を備えている。メモリー素子9
00には、磁気抵抗効果素子901に情報を書き込むた
めのワード線903が設けられている。磁気抵抗効果素
子901の上下には、センス線902とセンス線と兼用
のワード線904とが接続されている。
【0082】これらメモリー素子900を複数個マトリ
ックス状に配列すると、ワード線903とセンス線と兼
用のワード線904との合成磁界により複数個の磁気抵
抗効果素子901のうちの一つの磁気抵抗効果素子を選
択して情報を書き込むことが可能である。電流の流れる
方向はワード線903では紙面に垂直方向で、センス線
と兼用のワード線904では紙面内の左右の方向であ
る。
【0083】図8に示すメモリ素子800と図9に示す
メモリー素子900との異なる点は、各メモリー素子を
複数個マトリックス状に配列した場合、図8のメモリ素
子800においては各メモリー素子を直列にセンス線8
02が繋ぐのに対して、図9のメモリー素子900にお
いては各メモリー素子を並列にセンス線902が繋ぐ点
である。
【0084】これらのメモリー素子800および900
においては、ワード線803および804ならびにワー
ド線903およびセンス線兼ワード線904に電流を流
して磁界を発生させ、この磁界により磁気抵抗効果素子
801および901にそれぞれ含まれる自由層の磁化を
反転させて情報の記録を行う。情報の読み出しはセンス
線802ならびにセンス線902およびセンス線兼ワー
ド線904を用いて、磁気抵抗効果素子801および9
01にそれぞれ含まれる自由層の磁化方向と固定層の磁
化方向とが平行の場合は素子の抵抗が低く、反平行の場
合は素子の抵抗が高いことよりその磁気抵抗効果素子の
メモリー状態を読み取る。
【0085】このメモリー素子800および900は磁
気メモリーであるので半導体メモリーのDRAMとは異
なり不揮発性であり、半導体のフラッシュメモリーとは
異なり、書き込み/読み出し回数が原理的には無限回で
かつ書き込み/消去時間もnsのオーダーで早く、非破
壊読み出しが可能であることがその特徴である。
【0086】なお以上は1ビットのメモリ素子について
の動作原理の説明であるが、実際のメモリー素子を構成
する場合はこれらのメモリ素子をマトリックス状に配置
する必要がある。その場合は各メモリ素子、例えば
(N、M)番地のメモリ素子上で直交する2本のワード
線により磁界を発生してその合成磁界により情報の書き
込みを行う。情報の読み出しは(N、M)番地に接続さ
れた素子の抵抗の大小を読みとることにより行われる。
【0087】
【実施例】(実施例1)基板にSi、ターゲットにC
r、Pt、CoPt、Ir、CoFe、Al、Cu、N
iFeを用いてスパッタ法を用いて図1に示すような磁
気抵抗効果素子100を作成した。まずSi基板上に下
部電極用として厚さ50nmのCu/Pt/Cr膜を成
膜し、この上に以下の構成の磁気抵抗効果素子を作成し
た。 実施例試料1:CoPt(25)/CoFe(3)/I
rO(0.8)/CoFe(3)/AlO(1.4)/
CoFe(1)/NiFe(3) ただし()内は膜厚を示し、単位はnmである。またI
rOとAlO膜はIrとAlを成膜後、自然酸化により
形成した。
【0088】実施例試料1において、CoPtおよびC
oFeは、図1に示す磁性膜106に対応する。IrO
は交換結合用非磁性膜104に対応し、CoFeは磁性
膜105に対応し、AlOは、非磁性層103に対応す
る。CoFeおよびNiFeは、自由層101に対応す
る。
【0089】実施例試料1の膜をホトリソグラフィーを
用いて幅1μm×1μmの磁気抵抗効果素子とし、周囲
をAlOで絶縁した後スルーホールを開けて、この上に
厚さ50nmのCu/Pt膜を成膜して上部電極とし
た。この様にして作製した磁気抵抗効果素子を400℃
まで熱処理し、室温で磁界を500Oe印加して磁気抵
抗変化率(以下MR比と呼ぶ)を測定した。結果を(表
1)に示す。
【0090】
【表1】 この様に本発明の磁気抵抗効果素子100は極めて熱的
安定性に優れていることがわかった。
【0091】(実施例2)基板にSi、ターゲットにP
t、Ru、PtMn、CoFe、Cu、Al、NiF
e、NiFeCrを用いてスパッタ法を用いて図2に示
すような磁気抵抗効果素子200を作成した。まずSi
基板上に下部電極用として厚さ50nmのCu/Pt膜
を成膜し、この上に以下の構成の磁気抵抗効果素子を作
成した。 実施例試料2:PtMn(25)/CoFe(3)/R
uO(0.8)/CoFe(3)/AlO(1.4)/
CoFe(1)/NiFe(4)又PtMnの下地膜と
してNiFeCrを用いたものも作成した。 実施例試料2A:NiFeCr(4)/PtMn(2
5)/CoFe(3)/RuO(0.8)/CoFe
(3)/AlO(1.4)/CoFe(1)/NiFe
(4) 比較のため従来構成の下記の試料も作成した。 従来例試料A:PtMn(25)/CoFe(6)/A
lO(1.2)/CoFe(1)/NiFe(4) 実施例試料2において、PtMnは、図2に示す反強磁
性膜201に対応する。CoFeは磁性膜106に対応
し、RuOは交換結合用非磁性膜104に対応する。C
oFeは磁性膜105に対応し、AlOは非磁性層10
3に対応する。CoFeおよびNiFeは、自由層10
1に対応する。実施例試料2Aにおいて、NiFeCr
は、下地膜201Aに対応する。その他は実施例試料2
と同様である。
【0092】ただしRuO膜とAlO膜はRuとAlを
成膜後自然酸化して形成した。これら試料を280℃で
2時間熱磁界中処理した後、実施例試料2及び従来例試
料Aの膜をホトリソグラフィーを用いて幅1μm×1μ
mの磁気抵抗効果素子とし、周囲をAlOで絶縁した後
スルーホールを開けて、この上に厚さ50nmのCu/
Pt膜を成膜して上部電極とした。この様にして作製し
た磁気抵抗効果素子を400℃まで熱処理し、室温で磁
界を500Oe印可して磁気抵抗変化率(以下MR比と
呼ぶ)を測定した。結果を(表2)に示す。
【0093】
【表2】 この様に本発明の磁気抵抗効果素子200は従来の素子
と比較して熱的安定性に優れていることがわかった。
【0094】(実施例3)基板にSi、ターゲットにT
a、NiFeCr、RuO2、PtMn、CoFe、C
u、CoFeBを用い、スパッタ法を用いて図2に示す
ような磁気抵抗効果素子200を作成した。まずSi基
板上に厚さ6nmのTa/NiFeCr膜を成膜し、こ
の上に以下の構成の磁気抵抗効果素子を作成した。 実施例試料3:PtMn(15)/CoFe(2)/R
uO(0.8)/CoFe(2)/Cu(2.4)/C
oFe(2)/Cu(1)/Ta(3) 実施例試料3A:PtMn(15)/CoFeB(1)
/CoFe(1.5)/RuO(0.8)/CoFe
(2)/Cu(2.4)/CoFe(2)/Cu(1)
/Ta(3) (ただしRuO膜とはRuの酸化膜を示すものでありR
uとOの比が1:1を意味するものではない。上述した
のIrO、 AlOも同様である。)比較のため従来構
成の下記の試料も作成した。 従来例試料B:PtMn(15)/CoFe(4)/C
u(2.4)/CoFe(2)/Cu(1)/Ta
(3) 実施例試料3において、PtMnは、図2に示す反強磁
性膜201に対応する。CoFeは磁性膜106に対応
し、RuOは交換結合用非磁性膜104に対応する。C
oFeは磁性膜105に対応する。Cuは、非磁性層1
03に対応する。CoFeは、自由層101に対応す
る。CuおよびTaは、図示しないキャップ膜である。
実施例試料3Aにおいて、CoFeBおよびCoFe
は、磁性膜106に対応する。その他は、実施例試料3
と同様である。
【0095】これら試料を280℃で2時間熱磁界中処
理した後、実施例試料3及び従来例試料Bの膜をホトリ
ソグラフィーを用いて幅0.5μm×1μmの形状にし
て電極を付け磁気抵抗効果素子を作製した。これら磁気
抵抗効果素子のMR比を室温で測定し、その自由層の保
磁力Hcを調べた。結果を以下に示す。 実施例試料3 実施例試料3A 従来例試料B Hc(Oe) 6 1 9 この様に固定層102の磁性膜106にCoFeBを用
いたものは自由層101の軟磁気特性が大幅に改善され
ることがわかった。次に磁気抵抗効果素子を400℃ま
で熱処理し、室温で磁界を500Oe印可して磁気抵抗
変化率(以下MR比と呼ぶ)を測定した。結果を(表
3)に示す。
【0096】
【表3】 この様に本発明の磁気抵抗効果素子は従来の素子と比較
して熱的安定性に優れていることがわかった。
【0097】(実施例4)基板にSi、ターゲットにP
t、PtMn、CoFe、Ru、Al、Cu、NiF
e、NiFeCrを用いてスパッタ法を用いて図3に示
すような磁気抵抗効果素子300を作成した。まずSi
基板上に下部電極用として厚さ50nmのCu/Pt膜
を成膜し、この上に以下の構成の磁気抵抗効果素子を作
成した。 実施例試料4:PtMn(25)/CoFe(3)/R
uO(0.8)/CoFe(3)/AlO(1.4)/
NiFe(3)/RuO(0.8)/NiFe(2) 更にNiFeCrを下地膜として有するものも作成し
た。 実施例試料4A:NiFeCr(4)/PtMn(2
5)/CoFe(3)/RuO(0.8)/CoFe
(3)/AlO(1.4)/NiFe(3)/RuO
(0.8)/NiFe(2) 又比較のため従来構成の以下の試料も作製した。 従来例試料C:PtMn(25)/CoFe(3)/R
u (0.7)/CoFe(3)/AlO(1.4)/
NiFe(5) 実施例試料4において、PtMnは図3に示す反強磁性
膜201に対応する。CoFeは磁性膜106に対応
し、RuOは交換結合用非磁性膜104に対応する。C
oFeは磁性膜105に対応し、AlOは非磁性層10
3に対応し、NiFeは磁性膜304に対応し、RuO
は交換結合用非磁性膜302に対応し、NiFeは磁性
膜303に対応する。実施例試料4Aにおいて、NiF
eCrは下地膜201Aに対応する。
【0098】これら試料を280℃で2時間熱磁界中処
理した後、実施例試料4と従来例試料Cの膜をホトリソ
グラフィーを用いて幅0.2μm×0.3μmの磁気抵
抗効果素子とし、周囲をAlOで絶縁した後スルーホー
ルを開けて、この上に厚さ50nmのCu/Pt膜を成
膜して上部電極とした。この様にして作製した磁気抵抗
効果素子を400℃まで熱処理し、室温で磁界を500
Oe印可して磁気抵抗変化率(以下MR比と呼ぶ)を測
定した。結果を(表4)に示す。
【0099】
【表4】 この様に本発明の磁気抵抗効果素子は従来の素子と比較
して熱的安定性に優れていることがわかった。次にMR
比の測定磁界Hに対する依存性を調べたところ下記のよ
うな結果が得られた。 H=40Oe H=80Oe H=120Oe 実施例試料4 MR=39% MR=40% MR=41% 実施例試料4A MR=39% MR=41% MR=42% 従来例試料C MR=4% MR=28% MR=39% この結果からわかるように本発明の磁気抵抗効果素子3
00は自由層301が非磁性層302を介して反強磁性
的に交換結合したものとなっており、自由層301のN
iFe膜の外部磁界に対する実効的な膜厚は1nmと考
えて良いので弱磁界でも十分大きなMR比を示す。これ
に対して従来例試料CのNiFeの膜厚は5nmである
ため、素子サイズがこの様に小さくなると反磁界が大き
くなり、測定磁界が小さくなると自由層の磁化回転が困
難となるため弱磁界では大きなMR比が得られないと考
えられる。更にこれら磁気抵抗効果素子のMR曲線の非
対称性を調べたところ、実施例試料4及び4Aは殆ど非
対称性が見られなかったが、実施例試料来例試料Cは僅
かな非対称性が見られた。
【0100】(実施例5)基板にSi、ターゲットにT
a、 NiFeCr、 RuO2、 PtMn、CoF
e、 Cu、 NiFeを用いてスパッタ法を用いて図
3に示すような磁気抵抗効果素子300を作成した。ま
ずSi基板上に厚さ6nmのTa/NiFeCr膜を成
膜し、この上に以下の構成の磁気抵抗効果素子を作成し
た。 実施例試料5:PtMn(15)/CoFe(2)/R
uO(0.8)/CoFe(2)/Cu(2.4)/C
oFe(1)/NiFe(1)/RuO(0.8)/N
iFe(1.5)/Ta(3) 比較のため従来構成の下記の試料も作成した。 従来例試料D:PtMn(15)/CoFe(2)/R
u(0.7)/CoFe(2)/Cu(2.4)/Co
Fe(1)/NiFe(2.5)/Ta(3) 実施例試料5において、PtMnは図3に示す反強磁性
膜201に対応する。CoFeは磁性膜106に対応
し、RuOは交換結合用非磁性膜104に対応する。C
oFeは磁性膜105に対応し、Cuは非磁性層103
に対応する。CoFeおよびNiFeは、磁性膜304
に対応する。RuOは、交換結合用非磁性膜302に対
応する。NiFeは、磁性膜303に対応する。Ta
は、図示しないキャップである。
【0101】これら試料を280℃で2時間熱磁界中処
理した後、実施例試料5及び従来例試料Dの膜をホトリ
ソグラフィーを用いて幅0.2μm×0.3μmの形状
にして電極を付け磁気抵抗効果素子を作製した。この様
にして作製した磁気抵抗効果素子を400℃まで熱処理
し、室温で磁界を500Oe印可して磁気抵抗変化率
(以下MR比と呼ぶ)を測定した。結果を(表5)に示
す。
【0102】
【表5】 この様に本発明の磁気抵抗効果素子300は従来の素子
と比較して熱的安定性に優れていることがわかった。次
にMR比の測定磁界Hに対する依存性を調べたところ下
記のような結果が得られた。 H=40Oe H=80Oe H=120Oe 実施例試料5 MR=8% MR=9% MR=9% 従来例試料D MR=2% MR=6% MR=8% この様に本発明の素子300は従来素子に比較して微細
パターン形状での磁界感度が良いことがわかった。
【0103】(実施例6)実施例3で作製した実施例試
料3と従来例試料BのGMR膜を用いて図5に示した構
造の磁気ヘッド500を作製した。ヘッド500の記録
ポール507とシールド501、502にはNiFeメ
ッキ膜を用いた。再生ヘッド部505のGMR素子のト
ラック幅は0.3μm、MR高さも0.3μmとした。
作製したヘッドの熱的安定性を調べるために、ヘッド5
00を150℃の恒温槽に入れて5mAの電流を流して
5日間保持し、耐熱試験前と後の出力の比較を行った。
その結果実施例試料3を用いたヘッドの出力低下は約1
%であったのに対して、従来例試料Bを用いたヘッドの
出力低下は約33%であった。これより本発明のヘッド
500が従来のそれに比べて大幅に熱的安定性が改善さ
れていることがわかった。このヘッド500を用いて、
ヘッドの駆動部、磁気記録媒体ディスク、信号処理部を
有する図7に示すような構成の磁気記録再生装置700
を20台作製した。作製した磁気記録再生装置700の
耐熱試験を130℃の恒温槽を用いて行ったが、1台も
劣化するものは無いことがわかった。
【0104】(実施例7)実施例2及び4で作製した実
施例試料2、2A及び4と従来例試料A及びBの構成の
TMR膜を用いて図6に示した構造の磁気ヘッド600
を作製した。シールド601、602にはNiFeメッ
キ膜を用いた。ただしこの場合はシールドのNiFe膜
をCMP研磨した後、TMR膜は実施例とは逆にNiF
e膜から成膜を始め、最後にPtMn膜を成膜し、この
上に電極膜を形成した。再生ヘッド部のTMR素子の形
状は0.5μm×0.5μmとした。作製したヘッド6
00の熱的安定性を調べるために、ヘッド600を15
0℃の恒温槽に入れてTMR素子に0.2Vの電圧を印
加して5日間保持し、耐熱試験前と後の出力の比較を行
った。その結果実施例試料2、2A及び4を用いたヘッ
ドの出力低下は約4%であったのに対して、従来例試料
A及びBを用いたヘッドの出力低下は約21%であっ
た。これより本発明のヘッド600が従来のそれに比べ
て大幅に熱的安定性が改善されていることがわかった。
【0105】(実施例8)実施例5で作製した実施例試
料5と従来例試料Dを用いて図8に示す磁気抵抗効果メ
モリー素子800を作製した。実施例5で作製した実施
例試料5及び従来例試料Dの左右にセンス線802を接
続し、この上にAlO膜を成膜して絶縁した後、Cuよ
り成るワード線804を形成し、又この上にAlO膜を
成膜して絶縁した後、Cuより成るワード線803を形
成して図8の様な磁気抵抗効果メモリー素子800を作
製した。作製したこれらメモリー素子を64×64のマ
トリック状に配置して磁気ランダムアクセスメモリー
(MRAM)の試作を行った。このMRAMを380℃
で水素シンター処理した後、ワード線803及び804
を用いて情報の書き込みと再生を試みた。その結果本発
明の実施例試料5を用いたものは再生信号の確認が出来
たが、従来例試料Dを用いたものは再生信号が得られな
かった。
【0106】(実施例9)実施例4で作製した実施例試
料4及び4Aと従来例試料Cを用いて磁気抵抗効果メモ
リー素子を作製した。実施例4で作製した実施例試料4
及び従来例試料Cの下部電極をセンス線兼ワード線90
4として、又上部電極をセンス線902として用い、こ
の上にAlO膜を成膜して絶縁した後、この上にCuよ
り成るワード線903を形成し、図9の様な磁気抵抗効
果メモリー素子900を作製した。得られた素子の抵抗
は約10kΩであった。ワード線903と904に電流
を流して磁界を発生させ自由層の磁化反転を起こして情
報"1"を記録した。次にワード線903と904に反対
方向に電流を流し、自由層の磁化反転を起こして情報"
2"を記録した。センス線902と904の間にバイア
ス電圧を印可してセンス電流を0.05mA流し、情
報"1"の状態と情報"2"の状態の素子出力を測定したと
ころ、その差として実施例試料4及び4Aを用いた素子
で約150mV、従来例試料Cを用いた素子でも同様の
高出力が得られた。
【0107】次にこの素子を64×64のマトリックス
状に配置した磁気ランダムアクセスメモリー(MRA
M)の試作を行った。まずスウィッチングトランジスタ
ー(SW−Tr)としてCMOSをマトリックス状に配
置し、CMPにより平坦化した後、上記のような磁気抵
抗効果メモリー素子を各CMOSに対応してマトリック
ス状に設けた。最後に380℃で水素シンター処理を行
った。
【0108】各(N、M)番地の素子への情報の記録は
(N、M)番地の素子で交差するワード線に電流を流
し、その合成磁界により行った。読み出しはCMOSの
SW−Trにより各素子を選択して各素子の抵抗値と参
照抵抗とを比較する方式で行った。その結果実施例試料
4及び4Aを用いたMRAMでは単一メモリー素子の場
合と同様な素子大きな出力が得られたが、従来例試料C
を用いたMRAMはまったく出力が得られなかった。こ
れは380℃での水素シンター処理に本発明素子は耐え
られるものの、従来素子は耐えられないことに起因する
と考えられる。
【0109】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、熱的安定
性の課題を改善して400℃の熱処理に対しても安定な
磁気抵抗効果素子、これを用いた磁気ヘッド、磁気記録
装置、及びメモリー素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気抵抗効果素子の一例を示す図
【図2】本発明の磁気抵抗効果素子の一例を示す図
【図3】本発明の磁気抵抗効果素子の一例を示す図
【図4】本発明の磁気抵抗効果素子の外部磁界に対する
自由層の磁化回転機構を示す図
【図5】本発明の磁気抵抗効果素子を用いた、シールド
を有する磁気ヘッドの一例を示す図
【図6】本発明の磁気抵抗効果素子を用いた、ヨークを
有する磁気ヘッドの一例を示す図
【図7】本発明の磁気抵抗効果素子を用いた磁気記録再
生装置の一例を示す図
【図8】本発明のGMR膜を用いたメモリー素子の一例
を示す図
【図9】本発明のTMR膜を用いたメモリー素子の一例
を示す図
【符号の説明】
100 磁気抵抗効果素子 101 自由層 102 固定層 103 固定層 104 交換結合用非磁性膜 105、106 磁性膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 早期審査対象出願 (56)参考文献 特開2001−345493(JP,A) 特開2001−358380(JP,A) 特開2000−91667(JP,A) 特開2000−137906(JP,A) 特開 平11−86235(JP,A) 米国特許5701223(US,A) 国際公開99/014760(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 43/08 G01R 33/09 G11B 5/39 H01F 10/16 H01F 10/32 H01L 27/105

Claims (16)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外部磁界により容易に磁化回転する自由
    層と、金属膜からなる 非磁性層と、 該非磁性層に対して該自由層と反対側に設けられ外部磁
    界により容易には磁化回転しない固定層とを含む磁気抵
    抗効果素子であって、 該固定層は、第1交換結合用非磁性膜と、 該第1交換結合用非磁性膜を介して反強磁性的に交換結
    合した第1および第2磁性膜とを含み、 該第1交換結合用非磁性膜は、Ru、Ir、Rh、Re
    のいずれかの酸化物を含む磁気抵抗効果素子。
  2. 【請求項2】 前記固定層と磁気的に交換結合した反強
    磁性膜をさらに含む、請求項1に記載の磁気抵抗効果素
    子。
  3. 【請求項3】 前記自由層は、第2交換結合用非磁性膜
    と、 該第2交換結合用非磁性膜を介して反強磁性的に交換結
    合した第3および第4磁性膜とを含み、 該第2交換結合用非磁性膜は、Ru、Ir、Rh、Re
    のいずれかの酸化物を含み、 該第3および第4磁性膜の磁化をM1、M2、膜厚をt
    1、t2とする時、それぞれの積M1×t1とM2×t
    2は実質的に異なる、請求項1記載の磁気抵抗効果素
    子。
  4. 【請求項4】 前記第1乃至第4磁性膜の少なくとも1
    つは、Coを主成分としてBを含有する、請求項3記載
    の磁気抵抗効果素子。
  5. 【請求項5】 前記第1および第2磁性膜の少なくとも
    1つは、Coを主成分としてBを含有する、請求項1記
    載の磁気抵抗効果素子。
  6. 【請求項6】 前記固定層と磁気的に交換結合した反強
    磁性膜と、 前記反強磁性膜に対して前記固定層と反対側に設けられ
    NiFeCrを主成分とする下地膜とをさらに含む、請
    求項1記載の磁気抵抗効果素子。
  7. 【請求項7】 外部磁界により容易に磁化回転する自由
    層と、金属膜からなる 非磁性層と、 該非磁性層に対して該自由層と反対側に設けられ外部磁
    界により容易には磁化回転しない固定層とを含む磁気抵
    抗効果素子であって、 該自由層は、第1交換結合用非磁性膜と、 該第1交換結合用非磁性膜を介して反強磁性的に交換結
    合した第1および第2磁性膜とを含み、 該第1交換結合用非磁性膜は、Ru、Ir、Rh、Re
    のいずれかの酸化物を含み、 該第1および第2磁性膜の磁化をM1、M2、膜厚をt
    1、t2とする時、それぞれの積M1×t1とM2×t
    2は実質的に異なる磁気抵抗効果素子。
  8. 【請求項8】 前記固定層と磁気的に交換結合した反強
    磁性膜と、 前記反強磁性膜に対して前記固定層と反対側に設けられ
    NiFeCrを主成分とする下地膜とをさらに含む、
    求項7に記載の磁気抵抗効果素子。
  9. 【請求項9】 記録媒体からの信号磁界を検知する磁気
    ヘッドであって、 磁性体を含む二つのシールド部と、 該二つのシールド部の間のギャップ内に設けられる請求
    項1に記載の磁気抵抗効果素子とを備える磁気ヘッド。
  10. 【請求項10】 記録媒体からの信号磁界を検知する磁
    気ヘッドであって、 磁性体を含む二つのシールド部と、 該二つのシールド部の間のギャップ内に設けられる請求
    項7に記載の磁気抵抗効果素子とを備える磁気ヘッド。
  11. 【請求項11】 磁性体を含む磁束ガイド部と、 該磁束ガイド部により導かれた信号磁界を検知する請求
    項1に記載の磁気抵抗効果素子とを備える磁気ヘッド。
  12. 【請求項12】 磁性体を含む磁束ガイド部と、 該磁束ガイド部により導かれた信号磁界を検知する請求
    項7に記載の磁気抵抗効果素子とを備える磁気ヘッド。
  13. 【請求項13】 磁性体を含む二つのシールド部と、該
    二つのシールド部の間のギャップ内に設けられる請求項
    1に記載の磁気抵抗効果素子とを備え、記録媒体に信号
    を記録する磁気ヘッドと、 該磁気ヘッドを搭載したアームと、 該アームを駆動する駆動部と、 該信号を処理して該磁気ヘッドに供給する信号処理部と
    を備える磁気記録装置。
  14. 【請求項14】 磁性体を含む二つのシールド部と、該
    二つのシールド部の間のギャップ内に設けられる請求項
    7に記載の磁気抵抗効果素子とを備え、記録媒体に信号
    を記録する磁気ヘッドと、 該磁気ヘッドを搭載したアームと、 該アームを駆動する駆動部と、 該信号を処理して該磁気ヘッドに供給する信号処理部と
    を備える磁気記録装置。
  15. 【請求項15】 磁性体を含む磁束ガイド部と、該磁束
    ガイド部により導かれた信号磁界を検知する請求項1に
    記載の磁気抵抗効果素子とを備え、記録媒体に信号を記
    録する磁気ヘッドと、 該磁気ヘッドを搭載したアームと、 該アームを駆動する駆動部と、 該信号を処理して該磁気ヘッドに供給する信号処理部と
    を備える磁気記録装置。
  16. 【請求項16】 磁性体を含む磁束ガイド部と、該磁束
    ガイド部により導かれた信号磁界を検知する請求項7に
    記載の磁気抵抗効果素子とを備え、記録媒体に信号を記
    録する磁気ヘッドと、 該磁気ヘッドを搭載したアームと、 該アームを駆動する駆動部と、 該信号を処理して該磁気ヘッドに供給する信号処理部と
    を備える磁気記録装置。
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