JP3413325B2 - 甘藷ジュースの製造方法 - Google Patents

甘藷ジュースの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は甘藷ジュースの製造
方法、更に詳しくはカロチン含量及び糖度が高い飲用に
好適な甘藷ジュースを歩留まり良く製造できる甘藷ジュ
ースの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、甘藷ジュースの製造方法として、
甘藷を剥皮し、加熱処理した後、切断して、ジューサー
で搾汁する方法が提案されている(名古屋女子大学紀要
41巻,93〜100頁,1995年)。最近、高カロ
チン含量の甘藷が種々提供されており、上記の従来法で
も、これら高カロチン含量の甘藷が検討されている。と
ころが、上記の従来法には、原料として高カロチン含量
の甘藷を用いても、得られる甘藷ジュースのカロチン含
量及び糖度が低く、これを飲用に供するためには甘味料
を加えて調製する必要があり、とりわけ歩留まりが悪い
という欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、従来法では、原料として高カロチン含量の
甘藷を用いても、得られる甘藷ジュースのカロチン含量
及び糖度が低く、そのままでは飲用に不適であり、とり
わけ歩留まりが悪い点である。
【0004】
【課題を解決するための手段】しかして本発明者らは、
上記の課題を解決するべく研究した結果、高カロチン含
量の甘藷に特定の加熱処理及び搾汁を組み合わせて施す
と、カロチン含量及び糖度が高い、そのままで飲用に好
適な甘藷ジュースを歩留まり良く製造できることを見出
した。
【0005】すなわち本発明は、高カロチン含量の甘藷
を熱水中に浸漬し、これに含まれるポリフェノールオキ
シダーゼを実質的に失活するが、アミラーゼを活性化す
る条件下で、そのマルトース含量が3〜8重量%となる
ように加熱処理した後、圧搾方式で搾汁することを特徴
とする甘藷ジュースの製造方法に係る。
【0006】本発明において、原料として用いる甘藷は
高カロチン含量の甘藷である。なかでもβ−カロチンを
1mg%以上含有するものが好ましく、かかる高カロチン
含量の甘藷としては、通称ベニハヤト、ヘルシーレッ
ド、ひがしやま、更には九州120号等がある。
【0007】本発明では、上記のような高カロチン含量
の甘藷を加熱処理する。加熱処理は、甘藷中に含まれる
ポリフェノールオキシダーゼを実質的に失活するが、ア
ミラーゼを活性化する条件下で、そのマルトース含量が
3〜8重量%となるように行なう。ポリフェノールオキ
シダーゼはアミラーゼよりも失活温度が低く、その殆ど
が甘藷の表層部に集中しているので、加熱処理の温度及
び時間を選定することにより、ポリフェノールオキシダ
ーゼを実質的に失活する一方で、アミラーゼを活性化す
ることができる。ポリフェノールオキシダーゼを失活す
ることにより良好な色調の甘藷ジュースを製造でき、ま
たアミラーゼを活性化することにより澱粉の糖化を促し
て糖度が高い甘藷ジュースを製造できる。
【0008】本発明では、上記のように、高カロチン含
量の甘藷を、これに含まれるポリフェノールオキシダー
ゼを実質的に失活するが、アミラーゼを活性化する条件
下で、そのマルトース含量が3〜8重量%となるように
加熱処理する。ポリフェノールオキシダーゼを実質的に
失活し、その一方でアミラーゼを活性化する条件下であ
っても、アミラーゼの作用で澱粉の糖化により生成する
マルトース含量が3重量%未満となるような加熱処理で
は、糖度が低い甘藷ジュースしか製造できず、このよう
な甘藷ジュースはこれを飲用に供するために甘味料を加
えて調製する必要がある。逆にマルトース含量が8重量
%超となるような加熱処理では、澱粉が膨潤するためと
推察されるが、搾汁が難しくなって、歩留まりが悪くな
る。加熱処理それ自体は、甘藷を熱水中に浸漬する公知
の方法が適用できるが、合目的的には甘藷を80℃〜1
00℃未満の熱水中に5〜20分間浸漬する方法が好ま
しい。
【0009】本発明では、かくして加熱処理した甘藷を
圧搾方式で搾汁する。搾汁機には、パルパー、ギナー、
デカンター等の遠心分離方式のものと、フィルタープレ
ス、スクリュープレス、二軸回転型エクストルーダー等
の圧搾方式のものとがあるが、本発明では後者の圧搾方
式の搾汁機で搾汁する。なかでも、スクリュープレス又
は二軸回転型エクストルーダーで搾汁するのが好まし
い。カロチン含量が高い甘藷ジュースを歩留まり良く製
造できるからである。遠心分離方式の搾汁機で搾汁する
と、得られる甘藷ジュースのカロチン含量が低く、歩留
まりも悪い。
【0010】以上、本発明について説明したが、本発明
でも、加熱処理の前又は後の段階で、甘藷を剥皮するの
が好ましい。より色調の良好な苦味の少ない甘藷ジュー
スを製造できるからである。剥皮方法には、機械的剥皮
方法、化学的剥皮方法、これらを組み合わせた剥皮方法
等、公知の剥皮方法を適用できるが、合目的的には加熱
を伴わない機械的剥皮方法、例えばピーラーで剥皮する
方法が好ましい。また搾汁の前の段階で、加熱処理した
甘藷を破砕又は切断するのが好ましい。搾汁を円滑に行
なって搾汁率をより高くするためである。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態としては、下記
の1)〜3)が好適例として挙げられる。 1)β−カロチンを3.7mg%含有する通称ヘルシーレ
ッドを90℃の熱水中に10分間浸漬し、ポリフェノー
ルオキシダーゼを実質的に失活する一方でアミラーゼを
活性化して、マルトースを5重量%含有する加熱処理物
を得る。この加熱処理物をピーラーで剥皮し、ミクログ
レーダーで破砕した後、スクリュープレスで圧搾搾汁し
て、甘藷ジュースを製造する。
【0012】2)β−カロチンを10.2mg%含有する
通称九州120号を95℃の熱水中に10分間浸漬し、
ポリフェノールオキシダーゼを実質的に失活する一方で
アミラーゼを活性化して、マルトースを6重量%含有す
る加熱処理物を得る。この加熱処理物をピーラーで剥皮
し、クラッシャーで破砕した後、二軸異方向回転型エク
ストルーダーで圧搾搾汁して、甘藷ジュースを製造す
る。
【0013】3)β−カロチンを12mg%含有する通称
ベニハヤトを80℃の熱水中に20分間浸漬し、ポリフ
ェノールオキシダーゼを実質的に失活する一方でアミラ
ーゼを活性化して、マルトースを7重量%含有する加熱
処理物を得る。この加熱処理物をピーラーで剥皮し、ミ
クログレーダーで破砕した後、二軸異方向回転型エクス
トルーダーで圧搾搾汁して、甘藷ジュースを製造する。
【0014】
【実施例】
実施例1 β−カロチンを3.7mg%含有する通称ヘルシーレッド
を80℃の熱水中に8分間浸漬し、ポリフェノールオキ
シダーゼを実質的に失活する一方でアミラーゼを活性化
して、マルトースを3重量%含有する加熱処理物を得
た。この加熱処理物をピーラーで剥皮し、ミクログレー
ダーで破砕した後、スクリュープレス(出口圧力4kg/c
m2)で圧搾搾汁して、甘藷ジュースを製造した。甘藷ジ
ュースのβ−カロチンは2.5mg%、糖度は11.9重
量%、歩留まりは60重量%であって、所望通り、飲用
に好適であった。
【0015】実施例2〜9 手順は実施例1の場合と同様にして、表1に記載の条件
下で、甘藷ジュースを製造した。甘藷ジュースのβ−カ
ロチン、糖度、歩留まり及び官能評価の結果を表1にま
とめて示した。
【0016】比較例1 β−カロチンを10.2mg%含有する通称九州120号
を80℃の熱水中に20秒間浸漬して、加熱処理物を得
た。この加熱処理物をピーラーで剥皮し、ミクログレー
ダーで破砕した後、ジューサーで搾汁して、甘藷ジュー
スを製造した。甘藷ジュースのβ−カロチンは3.4mg
%、糖度は9.1重量%、歩留まりは39重量%であっ
た。
【0017】比較例2〜8 手順は比較例1の場合と同様にして、表2に記載の条件
下で、甘藷ジュースを製造した。甘藷ジュースのβ−カ
ロチン、糖度、歩留まり及び官能評価の結果を表2にま
とめて示した。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】表1及び表2において、 β−カロチン:液体クロマトグラフィーで測定した マルトース:液体クロマトグラフィーで測定した 糖度:糖度計で測定した 歩留まり:原料に対する歩留まり 官能評価:男性25名及び女性25名の合計50名によ
り、各実施例の甘藷ジュースと比較例1の甘藷ジュース
とを2点比較して、どちらが好ましいかを選択させ、各
実施例の甘藷ジュースを好ましいとした人数を表記した
(尚、表中の*印は5%以下の危険率で有意であること
を示す) A:通称ヘルシーレッド B:通称九州120号 C:通称ベニハヤト *1:ピーラー *2:ミクログレーダー *3:スクリュープレス(出口圧力4kg/cm2) *4:二軸異方向回転型エクストルーダー(出口圧力4
kg/cm2) *5:ジューサー −印:剥皮、破砕又は官能評価を行なわなかったことを
示す
【0021】
【発明の効果】既に明らかなように、以上説明した本発
明には、カロチン含量及び糖度が高い、そのままで飲用
に好適な甘藷ジュースを歩留まり良く製造できるという
効果がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古田 義也 栃木県那須郡西那須野町大字西富山17番 地 カゴメ株式会社総合研究所内 (56)参考文献 特開 昭64−43164(JP,A) 特開 平2−295456(JP,A) 特開 平4−75569(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 2/00 - 2/68 A23L 1/214

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高カロチン含量の甘藷を熱水中に浸漬
    し、これに含まれるポリフェノールオキシダーゼを実質
    的に失活するが、アミラーゼを活性化する条件下で、そ
    のマルトース含量が3〜8重量%となるように加熱処理
    した後、圧搾方式で搾汁することを特徴とする甘藷ジュ
    ースの製造方法。
  2. 【請求項2】 高カロチン含量の甘藷がβ−カロチンを
    1mg%以上含有するものである請求項1記載の甘藷ジュ
    ースの製造方法。
  3. 【請求項3】 スクリュープレス又は二軸回転型エクス
    トルーダーで搾汁する請求項1又は2記載の甘藷ジュー
    スの製造方法。
  4. 【請求項4】 加熱処理の前又は後に、高カロチン含量
    の甘藷を剥皮する請求項1、2又は3記載の甘藷ジュー
    スの製造方法。
  5. 【請求項5】 加熱処理した高カロチン含量の甘藷を破
    砕又は切断して搾汁する請求項1、2、3又は4記載の
    甘藷ジュースの製造方法。
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