JP3403779B2 - ミシンにおける被縫製物の移送装置 - Google Patents

ミシンにおける被縫製物の移送装置

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、完成品である帽子のよ
うな筒形状の被縫製物の周面に対して縫製(刺繍)を施
すのに適したミシンにおける被縫製物の移送装置に関す
る。 【0002】 【従来の技術】この種の装置は、例えば特公平1−53
384号公報に開示されている。この公報の装置におい
ては、刺繍ミシンのY軸駆動部に連動してY方向へ往復
駆動される移動体に対し、環状体がこの移動体と共にY
方向へ移動するように組付けられている。一方、刺繍ミ
シンのX軸駆動部の駆動力はリンク機構を通じて環状体
に伝達され、これによって環状体はY方向の軸線回りに
回動するようになっている。そして被縫製物である帽子
は帽子枠にセットされ、この帽子枠が前記環状体に装着
される。したがってこの帽子は、Y軸駆動部によってY
方向へ直線駆動され、X軸駆動部によってY方向の軸線
回りに回転駆動される。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】前記X軸駆動部による
環状体の回転駆動は、この環状体の支持構造あるいは前
記X軸駆動部から環状体への動力伝達構造などから、そ
の回転角の範囲に限りがある。つまり被縫製物である帽
子をX軸駆動部によってY方向の軸線回りに一周以上回
転させることはできない。このため、例えば帽子の全周
にわたって連続する柄の刺繍を行う場合には、その刺繍
の途中で縫製作業を中断して前記帽子枠に対する帽子の
セット位置を変えなければならず、作業効率が悪い。な
おセットのし直し時には刺繍の柄合わせ(針落ち位置合
わせ)に手間取るとともに、この作業が適正でないと刺
繍に柄ずれが生じて商品価値の低下を招く。また被縫製
物には、その断面形状が楕円などの非円形の筒形状のも
のがあり、このような形状に対応させた環状体をX軸駆
動部によって一定の軸線回りに回転させると、その回転
角によって被縫製物の周面の高さが変化する。これでは
被縫製物の周面に対して適正な刺繍柄を縫製することが
できない。 【0004】本発明の技術的課題は、筒形状の被縫製物
を環状体に装着したままで、その全周に刺繍可能で、か
つ断面形状が非円形の筒形状をした被縫製物であっても
その全周に対する刺繍を可能とすることである。 【0005】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、本発明のミシンにおける被縫製物の移送装置はつぎ
のように構成されている。すなわち筒形状の被縫製物
が、その周面に対する縫製のためのX軸移動データに基
づいて周方向へ回転駆動され、またY軸移動データに基
づいて被縫製物の回転軸線に沿ったY方向へ直線駆動さ
れる形式のミシンにおける被縫製物の移送装置であっ
て、前記Y軸移動データに基づいてY方向へのみ往復駆
動される移動体と、この移動体と共にY方向へ直線動作
可能で、かつ前記X軸移動データに基づいて移動体とは
相対的に周方向へ回転動作可能な環状体と、この環状体
に装着される被縫製物の縫い針による挿通位置での高さ
を一定に保つように、環状体の内周の一箇所をY方向へ
の直線動作及び周方向への回動動作可能に支持した支持
体とを備えている。 【0006】 【作用】したがって環状体に装着された筒形状の被縫製
物を、X軸移動データに基づく制御により一周以上回転
させることが可能であり、例えば被縫製物の全周にわた
って連続する柄の刺繍を施すことができる。また環状体
は、被縫製物の縫い針による挿通位置での高さを一定に
保つように支持体によって支持されているので、被縫製
物の形状に合わせて例えば楕円形状の環状体を用いた場
合でも、被縫製物に対する針落ち位置の高さを一定に保
持しながら刺繍を行うことができる。 【0007】 【実施例】つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説
明する。 実施例1 図2は刺繍用のミシンを表した平面図である。この図面
に示されているヘッドフレーム50の前面部には、複数
個のミシンヘッド52がミシンの幅方向に沿って一定の
間隔で備付けられている。またヘッドフレーム50の下
方には、同じくミシンの幅方向に沿って長く形成された
移動体10が配置されている。この移動体10は、刺繍
のためのY軸移動データに基づいて駆動制御されるベル
トなどのY軸駆動部64に直結され、このY軸駆動部6
4によって図2のY方向へ往復駆動されるようになって
いる。なお前記の各ミシンヘッド52と対応する位置に
は移動体10の下部において釜土台56がそれぞれ配置
されている。 【0008】図3に図2のA−A線拡大断面図が示さ
れ、図4に図3のB−B線断面図が示され、図5に図4
のC−C線断面図が示されている。さらに図1に図3〜
5で示す構成部分、つまり被縫製物移送装置が斜視図で
示されている。これらの図面で明らかなように、前記釜
土台56はシリンダ状に形成されていて、その基端部は
ミシンフレーム(図示外)に固定され、先端部は図3及
び図5で示すように対応するミシンヘッド52の下部に
位置している。この釜土台56の先端部上面には針板5
7が設けられているとともに、この針板57の下面(釜
土台56の中)には釜58が内蔵されている。周知のよ
うにミシンの縫い動作時には、ミシンヘッド52の針棒
54がその下端に装着されている縫い針55と共に昇降
駆動され、これと同期して釜58が釜軸59を通じて回
転駆動される。そして縫い針55は、その下降動作の度
に前記針板57の針孔57a(図1参照)に挿通され、
この縫い針55と釜58との協同作用によって後述する
被縫製物に上糸と下糸との絡みによるステッチが形成さ
れる。 【0009】前記移動体10の下面には、前記釜土台5
6の両側においてブラケット12がそれぞれ固定されて
いる。これらのブラケット12の前面には、図4で明ら
かなように前記釜土台56の配置箇所を切欠いた矩形状
の支持板14がボルト16によって固定されている。こ
の支持板14の前面四隅には案内体70がそれぞれボル
ト71によって固定されている。また釜土台56におい
て、前記支持板14から前面側に突出した部分の上面中
央には一個の支持体20が設けられている。この支持体
20は中空のローラ状に形成されていて、その両端部が
釜土台56に固定された各支軸22によって回転自在に
支持されている(主として図5参照)。 【0010】前記支持板14の前面には、環状体30が
前記釜土台56の周りに嵌装された状態で組付けられて
いる。つまりこの環状体30は、その内周の一箇所が前
記支持体20によって前記Y方向への直線動作及び周方
向への回転動作可能に支持されている。しかも環状体3
0の基部外周にはフランジ33が一体に形成されてい
る。そしてこのフランジ33は、図5で明らかなように
前記案内体70に係合しており、これによって環状体3
0は前記支持板14に対するY方向への変位(がたつ
き)が規制されている。 【0011】また前記環状体30において前記フランジ
33に隣接する環状溝32の外周面には、例えばここに
タイミングベルトを巻き付けることでギヤ34が構成さ
れている。一方、前記移動体10には釜土台56と対応
する位置においてX軸駆動源としてのパルスモーター6
0が設けられている。このパルスモーター60は刺繍の
ためのX軸移動データに基づいて駆動制御され、その駆
動軸61に固定されている小径の駆動ギヤ62は前記環
状溝32に係合し、かつ前記ギヤ34に噛合っている。
なおこれらの両ギヤ34,62の噛合い点と前記支持体
20による環状体30の支持点とは、図4で示すように
環状体30の内外周において互いに対応しており、これ
によって両ギヤ34,62の噛合い反力は支持体20で
受けられるようになっている。 【0012】そこでY軸移動データに基づくY軸駆動部
64の駆動によって前記移動体10が往復駆動すると、
前記環状溝32に対する駆動ギヤ62の係合及びフラン
ジ33に対する各案内体70の係合を通じて環状体30
が前記支持体20に沿ってY方向へ往復動作する。図6
に移動体10及び環状体30が図5の位置からY方向に
関して最も移動した状態が示されている。この図面から
も明らかなように環状体30は、その内周面が常に前記
支持体20に支持された状態でY方向へ動作する。また
X軸移動データに基づく前記パルスモーター60の駆動
により、環状体30が前記の両ギヤ34,62の噛合い
を通じて前記支持板14及び釜土台56とは相対的に周
方向へ回転駆動される。この回転時においても環状対3
0はその内周面が支持対20に常時支持された状態に保
たれる。 【0013】図7は被縫製物としての帽子(キャップ)
46とその保持体40との関係を表した斜視図である。
この図面で示すようにリング状に形成された保持体40
のセット面42には、前記帽子46が例えば図3で示す
ように被せ付けられる。そして帽子46の外周に保持リ
ング44を位置させ、そのフック部44aをロックする
ことによって保持体40のセット面42に帽子46がし
っかりと締付けられてセットされる。この状態の保持体
40は図1で示す方向から前記環状体30の外周に装着
され、かつ図示外のロック部材により環状体30にロッ
クされる。なお保持体40が環状体30に装着された状
態での帽子46は、その周面のいずれかの箇所が図3及
び図5,6で示すように前記縫い針55と釜土台56の
針板57との間に位置している。 【0014】つぎに前記のように構成された移送装置の
作用を説明する。まず帽子46は前記のように保持体4
0にセットされ、この保持体40は前記環状体30に装
着される。そしてこの環状体30は、すでに説明したよ
うに前記Y軸移動データに基づく移動体10の駆動によ
ってY方向へ往復動作し、かつ前記X軸移動データに基
づくパルスモーター60の駆動によって周方向へ回転動
作する。なおこの環状体30のY方向への往復動作及び
周方向への回転動作は、それぞれ前記釜土台56に対し
て相対的に、かつ前記支持体20に支持された状態で行
われる。前記環状体30と共に前記帽子46もY方向へ
直線駆動されるとともに、その周方向へ回転駆動され、
これらと同期して駆動される前記縫い針55と釜58と
の協同作用によって帽子46の周面に刺繍が施される。 【0015】前記X軸移動データに基づく環状体30の
回転駆動については、前記パルスモーター60の制御次
第で帽子46を例えば一周以上回転させることも容易に
行える。したがって帽子46の全周にわたって刺繍を施
す場合でも、刺繍の途中で縫い作業を中断して前記保持
体40に対して帽子46をセットし直す、といったよう
な作業は不要である。また刺繍が周方向に連続した柄の
場合、予め刺繍データを分割したり、あるいは一つの区
分の刺繍を終える毎に柄合わせをする手間も省け、刺繍
の質も向上する。 【0016】実施例2 図8は実施例1とは異なる構成の案内体70を表した拡
大斜視図である。この図面で明らかなように本実施例で
は、その案内体70を構成するアーム72の一端部が軸
73によって支持板14に回動自在に取付けられてい
る。このアーム72の他端部には溝つきローラ74が回
転自在に取付けられている。なお前記軸73の外周に
は、アーム72をこの軸73の軸線回りに図面の矢印方
向へ付勢するトーションばね75が設けられている。こ
のトーションばね75の弾力により、前記溝つきローラ
74の溝部が環状体30におけるフランジ33の外周に
押付けられている。本実施例の案内体70も、実施例1
の場合と同様に前記支持板の四箇所に設けられる。そし
て環状体30の支持板14に対するY方向への相対的な
変位が前記溝つきローラ74によって規制される。しか
も本実施例の案内体70では、前記トーションばね75
の弾力を超える力が環状体30に作用しない限り、この
環状体30の径方向の変位(がたつき)も規制される。 【0017】実施例3 図9は楕円の筒形状をした被縫製物(例えばハット)用
の環状体30が使用された移送装置の断面図であり、図
10は図9のD−D線断面図である。この実施例では環
状体30が被縫製物の形状に合わせた楕円形状であり、
しかも各案内体70がガイドケース76、案内子77及
びテンションばね78から構成されたものに代えられて
いる。まず各案内体70の構造を説明すると、前記の各
ガイドケース76はそのガイド溝76aが楕円形状の環
状体30の径方向に沿って延びるように支持板14に固
定されている。また前記案内子77はガイドケース76
のガイド溝76aに沿ってスライドするように組付けら
れ、かつこれらの案内子77は、図10で示すように環
状体30のフランジ33に対してその外周側から係合し
ている。そして各案内子77は、ガイドケース76との
間に掛けられたテンションばね78の弾力によって常に
環状体30の中心側へ引き戻されるように付勢されてい
る。 【0018】図11は楕円形状の環状体30を図9の状
態から90°回転させた状態の断面図である。このよう
に環状体30をX軸移動データに基づくパルスモーター
60の駆動によって周方向に回転させた場合、この環状
体30は実施例1の場合と同様に支持体20により常時
支持された状態で、その回転軸線を変化させながら回転
する。したがって環状体30が楕円形状であっても前記
針板57の上に位置する被縫製物の周面の高さは常に一
定に保持され、楕円の筒状をした被縫製物に対しても、
その周面の全域にわたって刺繍を行うことができる。 【0019】楕円形状の環状体30がその回転軸線を変
化させながら回転すると、前記フランジ33の外周面も
図9及び図11の比較から明らかなように大きく変位す
る。この変位に伴って前記の各案内子77はガイドケー
ス76のガイド溝76aに沿ってスライドし、フランジ
33の外周面に対する係合状態は保持される。なお図1
2に楕円形状の環状体30に前記実施例2の案内体70
を使用した状態が図9と対応させた断面図で示されてい
る。この組合せによっても前記と同様の機能が得られ
る。また楕円の長径と短径との差が小さい(真円に近
い)環状体30の場合は、前記実施例1の案内体70を
使用することも可能である。 【0020】 【発明の効果】本発明は、被縫製物をセットし直すこと
なく、その全周にわたって刺繍することができるため、
作業能率がよくなるとともに刺繍の質が良好に維持され
て商品価値が高められる。また断面形状が非円形の被縫
製物であっても、X軸移動データに基づく回転制御時に
おいてこの被縫製物の周面の高さが常に一定に保たれ、
その全周に対する刺繍が可能となる。
【図面の簡単な説明】 【図1】被縫製物の移送装置を表した斜視図である。 【図2】刺繍用のミシンを表した平面図である。 【図3】図2のA−A線拡大断面図である。 【図4】図3のB−B線断面図である。 【図5】図4のC−C線断面図である。 【図6】移動体及び環状体が図5の位置からY方向に関
して最も移動した状態の断面図である。 【図7】被縫製物(帽子)と保持体との関係を表した斜
視図である。 【図8】実施例2の案内体を表した拡大斜視図である。 【図9】実施例3の移送装置を表した断面図である。 【図10】図9のD−D線断面図である。 【図11】図9の状態から環状体を90°回転させた状
態の断面図である。 【図12】楕円形状の環状体と図8の案内体とを組み合
わせた場合の断面図である。 【符号の説明】 10 移動体 20 支持体 30 環状体 46 被縫製物(帽子)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 筒形状の被縫製物が、その周面に対する
    縫製のためのX軸移動データに基づいて周方向へ回転駆
    動され、またY軸移動データに基づいて被縫製物の回転
    軸線に沿ったY方向へ直線駆動される形式のミシンにお
    ける被縫製物の移送装置であって、 前記Y軸移動データに基づいてY方向へのみ往復駆動さ
    れる移動体と、この移動体と共にY方向へ直線動作可能
    で、かつ前記X軸移動データに基づいて移動体とは相対
    的に周方向へ回転動作可能な環状体と、この環状体に装着される被縫製物の縫い針による挿通位
    置での高さを一定に保つように、 環状体の内周の一箇所
    をY方向への直線動作及び周方向への回動動作可能に支
    持した支持体と、 を備えていることを特徴としたミシンにおける被縫製物
    の移送装置。
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