JP3388208B2 - 屋根葺材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【０００１】 【発明の属する技術分野】本発明は、屋根葺材に関し、
特に雨等による水の侵入を完全に防止した屋根葺材に関
する。 【０００２】 【従来の技術】図１１は、従来の金属板製の屋根葺材を
使用し、一文字葺きを施した屋根の一部断面を含む斜視
図である。図１１に示すように、従来の一般住宅等の一
文字葺きの屋根は、野地板１０１の上にアスファルト防
水材１０２や断熱材（図示せず）を貼り、最下方の軒先
唐草１０３から順に金属製の葺き板（屋根葺材）１０４
を、吊子１０５の部分で釘１０６により野地板１０１に
釘打ち固定し、順次葺いていく。１０７は水切捨板、１
０８はケラバ捨板である。 【０００３】葺き板１０４は長方形をなし、長手方向下
側に裏面側に折り曲げた第1横継手部１０４ａを有し、
長手方向上側に表面側に折り曲げた第２横継手部１０４
ｂを有する。また、短手方向右側に表面側に折り曲げた
第１縦継手部１０４ｃを有し、短手方向左側に裏面側に
折り曲げた第２縦継手部（図示せず）を有する。これら
の継手部は全て「こはぜ継ぎ（はさみハゼ曲げ継ぎ）」
である。 【０００４】このような構造の屋根葺材を用いた従来の
屋根は、工事終了後の或る期間は防水機能を果たすこと
ができる。 【０００５】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図１２
に示すように、年月の経過に伴ない釘１０６と野地板１
０１・アスファルト防水材１０２との間に隙間が生じて
しまい、矢印Ａ，Ｂで示す水の侵入経路を通って雨水等
が屋根裏に漏れてしまう場合がある。この傾向は、特に
屋根勾配の緩い箇所，棟部，曲面部等に顕著に見られ
る。なお、屋根葺き前に防水工事を行っても、屋根葺材
を下地面に固定する為にアンカービスで防水シートに穴
を開けたり、釘打ちをするので、防水工事を完全に実施
するのは困難である。 【０００６】そこで本発明の課題は、雨等の水の侵入を
完全に防止した屋根葺材を提供することである。 【０００７】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に本発明は、矩形板の対向辺を互いに異なる板面方向に
折り曲げて形成した一対のこはぜ継ぎ部を、２組有する
板状部材を備えた屋根葺材であって、前記板状部材より
大きい形状の防水本体層の表裏両面に粘着層を夫々形成
して板状の防水シート部材を構成し、この防水シート部
材の一面側を、前記こはぜ継ぎ部の折り曲げ先端部側を
除いた前記板状部材の一方の面に対し、挿入・貼付して
なることを特徴とする。 【０００８】このようにすれば、次の作用・効果を奏す
る。図１の屋根葺材の平面図等と図４の防水シート部材
の断面構造と図８（Ａ）の屋根葺状態の断面構造を参照
しつつ説明する。即ち、図４に示すように、防水シート
部材（防水シート部）２０は、防水本体層（合成繊維・
合成ゴム層）２１の表裏両面に粘着層（粘着ゴム層）２
２ａ，２２ｂを備えている。この防水本体層２１を板状
部材（金属板）１１の一面側に貼付する（図１参照）。
この際、防水本体層２１の先端部２１ａを、こはぜ継ぎ
部（第１横継手部）１１ａに挿入・貼付するが、板状部
材１１の折り曲げ先端部１１ｅ側には貼付しない。 【０００９】このような屋根葺材を屋根に葺くには、図
８（Ａ）に示すように、屋根葺材ＹＨ１，ＹＵ２のこは
ぜ継ぎ部（継手部）同士を掛合する。すると、防水本体
層の先端部２１ａは、上下の板状部材１１（ＹＨ１，Ｙ
Ｈ２）が着層２２ａ，２２ｂで密着されるので、雨水等
が内部側（野地板側）に侵入することがない。 【００１０】 【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施例に基
づいて説明する。なお、既に説明した部分には同一符号
を付し、重複記載を省略する。 【００１１】（Ｉ）第１実施例 （１）構成先ず、本実施例の構成を説明する。図１は本
実施例の屋根葺材の平面図，長手方向側面図，短手方向
側面図、図２は同屋根葺材を構成する金属板部の平面
図，長手方向側面図，短手方向側面図、図３は同じく構
成部材の防水シート部の平面図，長手方向側面図，短手
方向側面図である。 【００１２】図１に示すように、屋根葺材ＹＨは全体と
しては略長方形をなし、「板状部材」である略長方形の
銅板製の金属板部１０と、「防水シート部材」である略
長方形の両面に粘着材・剥離紙を塗布・貼付した防水シ
ート部２０とからなる。 【００１３】図２に示すように、金属板部１０は長方形
の金属板１１からなり、長手方向下側に裏面側に折り曲
げた「こはぜ継ぎ部」である第1横継手部１１ａを有
し、長手方向上側に表面側に折り曲げた第２横継手部１
１ｂを有する。また、短手方向右側に表面側に折り曲げ
た第１縦継手部１１ｃを有し、短手方向左側に裏面側に
折り曲げた第２縦継手部１１ｄを有する。これらの継手
部は全て「こはぜ継ぎ（はさみハゼ曲げ継ぎ）」用にＵ
字状に曲げてある。 【００１４】金属板１１の右上に突設形成した釘止部１
２は、図示省略の釘を野地板に打ち付ける際に使用し、
中央に釘穴１２ａを穿設してある。即ち、この釘止部１
２は金属板１１を延長形成したものであり、従来例（図
１１参照）に示した吊子１０５（図１１参照）は不要で
あり、コストダウンおよび部品管理不要のメリットがあ
る。 【００１５】防水シート部２０は、図３，図４に示すよ
うに、中央部に「防水本体層」をなす弾力性のある合成
繊維・合成ゴム層２１を有し、表面側（上側）に表粘着
ゴム層２２ａ，表剥離紙２３ａを順次形成・貼付し、裏
面側（下側）に裏粘着ゴム層２２ｂ，裏剥離紙２３ｂを
順次形成・貼付する。防水シート部２０に使用する防水
シートとしては粘着層を持つ合成ゴム系シート,ゴムア
スファルト系シートが好適であり、具体的には田島ルー
フィング（株）社製のガムロンＭＧベースＢが好適であ
る。 【００１６】また、図３において、斜線で示す長方形
は、表剥離紙２３ａを剥ぎ取り表粘着ゴム層２２ａが露
呈した剥離部２４であり、この剥離部２４は金属板１１
の裏面に予め貼付するために使用する（図１参照）。ま
た、左上の切欠部２５は、屋根葺施工の際に釘止部１２
を露呈させる為の「逃げ」である（図６（Ｂ）参照）。
また、前記金属板１１における継手部の隣接する角部
（図２平面図の左下隅参照）の形状は、防水シート部２
０の隣接角部の形状（図３平面図の左下隅参照）に相似
である。 【００１７】（２）屋根への葺き方次に、図５〜図８を
参照しつつ屋根への葺き方（一文字葺き）を説明する。
図５は屋根葺施工完了後の側断面図である。なお、図６
〜図８の説明において、軒先唐草１０３等の施工は既に
終了しているものとする。 【００１８】先ず、図６（Ａ）に示すように、予め裏剥
離紙２３ｂ（図４）を剥がした１枚目の屋根葺材ＹＨ１
を、野地板１０１の所定方向に貼付し、ステンレス釘３
１を釘止部１２の釘穴１２ａに通して野地板１０１に打
ち付け・固定する。固定後、Ｌ字形の表剥離紙２３ａを
剥がし、Ｌ字形の表粘着ゴム層２２ａを露呈させる。 【００１９】次いで、図６（Ｂ）に示すように、予め裏
剥離紙２３ｂを剥がした２枚目の屋根葺材ＹＨ２の第２
縦継手部１１ｄを１枚目の屋根葺材ＹＨ１の第１縦継手
部１１ｃに掛合し（掛ける機構を互いに掛け合せる）、
縦方向の位置合せをした後、矢印Ｘ方向に引き、野地板
１０１に貼付する。この際、符号Ｃの掛合部分は、図８
（Ａ）の拡大図に示すように、２枚目の合成繊維・合成
ゴム層２１（ＹＨ２）の左端部２１ａは、１枚目の金属
板１１（ＹＨ１）の第１縦継手部１１ｃ（ＹＨ１）と２
枚目の金属板１１（ＹＨ２）の第２縦継手部１１ｃとで
形成される空間部を密閉して埋めることになる。従っ
て、矢印Ｄ方向からの雨水等は、合成繊維・合成ゴム層
２１の左端部２１ａにより遮断されるので、野地板１０
１に到達することができない。よって、屋根裏（図示せ
ず）に雨漏りを起すことがない。 【００２０】以上のようにして、横方向に屋根葺材ＹＨ
を順次葺いていき、１段目の屋根葺きが終了する。 【００２１】次いで、図７に示すように、予め裏剥離紙
２３ｂを剥がした２段目・１枚目の屋根葺材ＹＨ１１の
第１横継手部１１ａ（ＹＨ１１）を、屋根葺材ＹＨ１と
ＹＨ２の夫々の第２横継手部１１ｂに左右均等長さに掛
合させ、矢印Ｙ方向に引き上げつつ野地板１０１に貼付
する。この際、掛合部分は、図８（Ｂ）の拡大図に示す
ように、２段目・１枚目の合成繊維・合成ゴム層２１
（ＹＨ１１）の左端部２１ｂは、１段目・１枚目の金属
板１１（ＹＨ１）の第２横継手部１１ｂ（ＹＨ１）と２
段目・１枚目の金属板１１（ＹＨ１１）の第１横継手部
１１ａとで形成される空間部を密閉して埋めることにな
る。また、ステンレス釘３１および釘止部１２は合成繊
維・合成ゴム層２１（ＹＨ１１）が完全に覆ってしま
う。 【００２２】従って、矢印Ｅ方向からの雨水等は、合成
繊維・合成ゴム層２１の左端部２１ｂにより遮断され、
且つステンレス釘３１および釘止部１２は合成繊維・合
成ゴム層２１で完全に覆われているので、野地板１０１
に到達することができない。よって、屋根裏（図示せ
ず）に雨漏りを起すことがない。 【００２３】以下、２段目の屋根葺材ＹＨを順次葺いて
いき、更に３段目,４段目…と屋根葺材ＹＨを葺いてい
くとやがて屋根葺が完了する（図５参照）。 【００２４】（II）第２実施例 前記第１実施例は野地板に密着するタイプであったが、
第２実施例は下地面がコンクリート等の場合は、屋根葺
材がコンクリート中から発生する水蒸気等の影響で膨れ
てしまう場合があるので、膨れ防止機能を備えた場合で
ある。 【００２５】本実施例の屋根葺材ＹＨ０は、図９,図１
０に示すように、金属板部１０と防水シート部２０Ａと
からなる。防水シート部２０Ａは、裏粘着ゴム層２２ｂ
の下面に「緩衝部材」である帯状の不織布４１を平行し
て複数本貼り付け、この不織布４１の端部に直交して同
じく帯状の不織布４２を貼り付ける。不織布としては、
例えば鐘紡（株）社製のテキストグラス(ガラス繊維織
物)が好適である。 【００２６】このようにした屋根葺材ＹＨ０を使用すれ
ば、コンクリート等の場合であっても、コンクリート中
から発生する水蒸気をテープ状の不織布が膨張エアーを
分散し、通気路として外部へ排出するので、屋根葺材が
膨れを起こすことがない。 【００２７】なお、前記各実施例では長方形の場合を説
明したが、矩形（正方形,長方形,菱形）であれば本発明
を適用可能であることは勿論である。従って、一文字葺
き以外にひし形葺きの施工も可能である。 【００２８】また、前記各実施例では金属板（銅板）の
場合を説明したが、例えば合成樹脂板，平かわら，スレ
ート板，タイル等の平板系にも本発明を適用可能である
ことは勿論である。 【００２９】また、金属板の種類によって高級品から普
及品まで幅広く製造可能である。金属板の種類として
は、銅以外に、例えばチタン，ステンレス，アルミニュ
ーム，鉄等が考えられる。使用する金属板は薄くて良い
ので、材料費，加工賃を抑制することができる。 【００３０】 【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、台
風等の強風雨時にも雨漏りおよび剥がれが発生せず、長
期に渡り完全防水が可能なので、メンテナンス費用を削
減できる。また、防水工事と屋根工事を同時に施工でき
るので、工事費を低減できる。 【００３１】また、一般的な切妻屋根,片流れ屋根等以
外に、本発明は完全防水が可能なので、Ｍ形屋根,Ｙ形
屋根,緩い傾斜の屋根,曲面屋根，アーチ屋根，ドーム型
屋根等の各種の屋根に対応することが可能である。ま
た、屋根葺材に防水シート部を貼付して一体化している
ので、クラック等の下地面の動きに防水シート部が追従
・緩衝し、従って防水シート部および屋根葺材が破断す
ることがない。

【図面の簡単な説明】 【図１】本発明の第１実施例の平面図、長手方向側面
図、短手方向側面図である。 【図２】同第１実施例における金属板部の平面図、長手
方向側面図、短手方向側面図である。 【図３】同第１実施例における防水シート部の平面図、
長手方向側面図、短手方向側面図である。 【図４】同防水シート部の断面構成図である。 【図５】同第１実施例を用いて葺いた屋根の完成後の側
断面図である。 【図６】同第１実施例の葺き付け工程を説明する図であ
る。 【図７】図６の続きの工程を説明する図である。 【図８】同第１実施例における水の侵入を防止する説明
図であって、（Ａ）は図６（Ｂ）指定の拡大図、（Ｂ）
は図７のVIIIB−VIIIB線に沿う断面図である。 【図９】同第２実施例の平面図、長手方向側面図、短手
方向側面図である。 【図１０】同第２実施例の防水シート部の断面構成図で
ある。 【図１１】従来の金属板製の屋根葺材による屋根葺きの
状況を説明する一部断面を含む斜視図である。 【図１２】従来の屋根葺材における雨漏りを説明する側
断面図である。 【符号の説明】 ＹＨ…屋根葺材 １０…金属板部 １１…金属板 １１ａ〜１１ｄ…継手部 １２…釘止部 ２０…防水シート部 ２１…合成繊維・合成ゴム層 ２２ａ，２２ｂ…粘着ゴム層 ２３ａ，２３ｂ…剥離紙 ２４…剥離部 ２５…切欠部 ４１，４２…帯状の不織布 １０１…野地板

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) E04D 1/28 E04D 1/18 E04D 3/35

Claims (1)

1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項１】 矩形板の対向辺を互いに異なる板面方向
   に折り曲げて形成した一対のこはぜ継ぎ部を、２組有す
   る板状部材を備えた屋根葺材であって、前記板状部材よ
   り大きい形状の防水本体層の表裏両面に粘着層を夫々形
   成して板状の防水シート部材を構成し、この防水シート
   部材の一面側を、前記こはぜ継ぎ部の折り曲げ先端部側
   を除いた前記板状部材の一方の面に対し、挿入・貼付
   し、前記防水本体層の下地面側に緩衝・通気部材を取り
   付けたことを特徴とする屋根葺材。