JP3383358B2 - 金属板貼合せ成形加工用ポリエステルフィルム - Google Patents
金属板貼合せ成形加工用ポリエステルフィルムInfo
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属板貼合せ成形加工
用ポリエステルフィルムに関し、更に詳しくは金属板と
貼合せて絞り加工等の製缶加工をする際、優れた成形加
工性を示し、金属板との接着性、更には巻取性が良好で
あり、かつ耐熱性、耐レトルト性、保香性、耐衝撃性
等、更には保味性に優れた金属缶、例えば飲料缶、食品
缶等を製造し得る金属板貼合せ成形加工用ポリエステル
フィルムに関する。 【0002】 【従来の技術】金属缶には内外面の腐蝕防止として一般
に塗装が施されているが、最近、工程簡素化、衛生性向
上、公害防止等の目的で、有機溶剤を使用せずに防錆性
を得る方法の開発が進められ、その一つとして熱可塑性
樹脂フィルムによる被覆が試みられている。すなわち、
ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム等の金属
板に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートした後、絞り加
工等により製缶する方法の検討が進められている。この
熱可塑性樹脂フィルムとしてポリオレフィンフィルムや
ポリアミドフィルムが試みられたが、成形加工性、耐熱
性、保香性、耐衝撃性の全てを満足するものでない。 【0003】一方、ポリエステルフィルム、特にポリエ
チレンテレフタレートフィルムがバランスのとれた特性
を有するとして注目され、これをベースとしたいくつか
の提案がされている。すなわち、 (A) 二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム
を低融点ポリエステルの接着層を介して金属板にラミネ
ートし、製缶材料として用いる(特開昭56―1045
1号、特開平1―192546号)。 (B) 非晶性もしくは極めて低結晶性の芳香族ポリエ
ステルフィルムを金属板にラミネートし、製缶材料とし
て用いる(特開平1―192545号、特開平2―57
339号)。 (C) 低配向で、熱固定された二軸配向ポリエチレン
テレフタレートフィルムを金属板にラミネートし、製缶
材料として用いる(特開昭64―22530号)。 【0004】しかし、本発明者らの検討では、いずれも
充分な特性が得られず、それぞれ次の問題のあることが
明らかとなった。 【0005】(A)については、二軸配向ポリエチレン
テレフタレートフィルムは耐熱性、保香性に優れるが、
成形加工性が不充分であり、大きな変形を伴う製缶加工
ではフィルムの白化(微小クラックの発生)、破断が発
生する。 【0006】(B)については、非晶性もしくは極めて
低結晶性の芳香族ポリエステルフィルムであるため成形
加工性は良好であるが、保香性が劣り、また製缶後の印
刷、レトルト殺菌処理等の後処理、更には長期の保存に
より脆化しやすく、缶外部からの衝撃により割れ易いフ
ィルムに変質する恐れがある。 【0007】(C)については、上記(A)と(B)の
中間領域で効果を発揮せんとするものであるが、未だ製
缶加工に適用可能な低配向には達しておらず、また変形
度の小さい領域で加工し得たとしても、その後の印刷、
缶内容物を滅菌する他のレトルト処理により、脆化しや
すくなり、缶外部からの衝撃により割れやすいフィルム
に変質する恐れがあることは前記(B)と同様である。 【0008】かかる問題を解決するために、本発明者ら
は、共重合ポリエステルからなるフィルムを使用するこ
とを考え、種々検討を重ねてきた。その結果、共重合ポ
リエステルフィルムは、成形加工性、耐熱性、耐レトル
ト性、保香性には優れているものの、耐衝撃性、特に1
5℃以下の低温での耐衝撃性が不十分であり、このフィ
ルムを貼合せた金属缶を低温下で落下させたりして衝撃
を与えると、フィルムにひび割れが生じ易いことがわか
ってきた。低温下での耐衝撃性が悪いことは、ジュー
ス、清涼飲料水用の金属缶のように冷却した状態で取扱
われるものでは、大きな問題となる。 【0009】また、フィルムと金属板との接着性が必ず
しも十分ではなく、過酷な条件下では、フィルムの剥離
が生ずるという問題が起ることもある。 【0010】更に、共重合ポリエステルフィルムを使用
した場合、保香性は一般に良好であるが、清涼飲料水な
どに用いたときは、内容物の味が悪くなるという問題が
生ずることもわかってきた。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、共重
合ポリエステルフィルムが持っている優れた成形加工
性、耐熱性、耐レトルト性、保香性を保持しながら、耐
衝撃性を改善し、低温下で衝撃によりひび割れが生じ難
く、しかも金属板との接着性が良好であり、更には清涼
飲料水などの味を悪くすることのない金属板貼合せ加工
用ポリエステルフィルムを提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、フィルムを共重合
ポリエステルからなる2層で構成すると共に、両層の共
重合ポリエステルの固有粘度を異ならしめることによ
り、低温下での耐衝撃性が改善され、しかも接着性も向
上し、更に各層の表面粗さをそれぞれ特定の範囲に限定
すれば、保味性が改善され、巻取性の悪化も避けられる
ことを見出し、本発明を完成するに至った。 【0013】即ち、本発明は、融点が210〜245℃
のイソフタル酸共重合ポリエステル層(A)と、融点が
210〜245℃の共重合ポリエステル層(B)とを積
層してなり、該イソフタル酸共重合ポリエステル層
(A)の固有粘度が、該共重合ポリエステル層(B)の
固有粘度よりも高く、その差が0.02以上であり、か
つイソフタル酸共重合ポリエステル層(A)の表面粗さ
(Ra)が5nm以上かつ15nm以下および共重合ポ
リエステル層(B)の表面粗さ(Ra)が15nm以上
であることを特徴とする金属板貼合せ成形加工用ポリエ
ステルフィルムである。 【0014】本発明において、共重合ポリエステル層
(B)に用いる共重合ポリエステルとしては共重合ポリ
エチレンテレフタレートが代表例として挙げられる。こ
の共重合成分は、酸成分でも、アルコール成分でも良
い。該酸成分としてはイソフタル酸、フタル酸、ナフタ
レンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン酸、アジピ
ン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸
等の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボ
ン酸の如き脂環族ジカルボン酸等が例示でき、またアル
コール成分としてはブタンジオール、ヘキサンジオール
等の如き脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール
の如き脂環族ジオール等が例示できる。これらは単独ま
たは2種以上を使用することができる。 【0015】共重合成分の割合は、その種類にもよるが
結果として、ポリマー融点が210〜245℃、好まし
くは215〜235℃の範囲になる割合である。融点が
210℃未満では耐熱性が劣ることになる。一方、融点
が245℃を超えると、ポリマーの結晶性が大きすぎて
成形加工性が損われる。 【0016】ここで、共重合ポリエステルの融点測定
は、Du Pont Instruments 910
DSCを用い、昇温速度20℃/分で融解ピークを求
める方法による。なおサンプル量は約20mgとする。 【0017】本発明におけるイソフタル酸共重合ポリエ
ステル層(A)に用いる共重合ポリエステルは、保香性
に優れていることから、共重合ポリエステル層(B)に
用いる前記共重合ポリエステルのうち、共重合酸成分と
してイソフタル酸を用いた共重合ポリエステルであり、
イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートが代表
例として挙げられる。このイソフタル酸共重合ポリエス
テルは、イソフタル酸以外の共重合成分として、共重合
ポリエステル層(B)の共重合ポリエステルの共重合成
分として例示した共重合成分が、その特性を損なわない
範囲、例えば全酸成分または全アルコール成分に対して
3モル%以下の割合で共重合されていてもよい。 【0018】イソフタル酸及びその他の共重合成分の割
合は、ポリマーの融点が210〜245℃、好ましくは
215〜235℃の範囲になる割合である。融点が21
0℃未満では耐熱性が劣ることになる。一方、融点が2
45℃を超えると、ポリマーの結晶性が大きすぎて成形
加工性が損われる。 【0019】共重合ポリエステル層(B)を構成する共
重合ポリエステルは、イソフタル酸共重合ポリエステル
層(A)と積層、接着させた際の接着力を高め、耐衝撃
性を向上させるうえで、イソフタル酸共重合ポリエステ
ル層(A)を構成するイソフタル酸共重合ポリエステル
との融点差が±10℃以下、好ましくは±7℃以下、更
に好ましくは±5℃以下であることが望ましい。 【0020】本発明においては、イソフタル酸共重合ポ
リエステル層(A)を構成するイソフタル酸共重合ポリ
エステルの固有粘度が、共重合ポリエステル層(B)を
構成する共重合ポリエステルの固有粘度よりも高く、そ
の差が0.02以上であることが必要である。この要件
を満足しない場合は、金属板に対するフィルムの接着性
が向上しない。 【0021】イソフタル酸共重合ポリエステル層(A)
を構成するイソフタル酸共重合ポリエステルの固有粘度
は0.55以上であることが好ましく、更に好ましくは
0.60以上である。また、共重合ポリエステル層
(B)を構成する共重合ポリエステルの固有粘度は0.
40以上であることが好ましく、更に好ましくは0.4
5以上、特に好ましくは0.50以上である。更に、両
者の固有粘度差は、0.02〜0.15であることが好
ましく、更に好ましくは0.02〜0.10、最も好ま
しくは0.02〜0.06である。共重合ポリエステル
層(B)の共重合ポリエステルの固有粘度を低くすれ
ば、接着性は向上するが、あまり低くしすぎると結晶化
し易くなるため耐衝撃性が悪化するので、固有粘度をあ
まり低くしないように注意する必要がある。 【0022】ここで、固有粘度は、オルソクロロフェノ
ールに各々の層の共重合ポリエステルを溶解し、35℃
にて測定した溶液粘度から求める。 【0023】更に、本発明のフィルムにおいては、イソ
フタル酸共重合ポリエステル層(A)は、その表面粗さ
(Ra)が15nm以下、更に12nm以下、特に2〜
10nmであることが好ましい。イソフタル酸共重合ポ
リエステル層(A)は、金属缶に貼合せた場合、缶の内
容物と接する側に位置する層であり、この表面粗さ(R
a)が15nm以下とすることにより、内容物、特に炭
酸飲料などの清涼飲料水の味が悪くなるのを防ぐことが
でき、かつ、低温下での耐衝撃性を改善することができ
る。なお、この表面粗さ(Ra)が2nm未満の場合
は、フィルム表面に傷がつき易くなるので、避けるのが
望ましい。 【0024】この表面粗さ(Ra)を15nm以下にす
るには、イソフタル酸共重合ポリエステルに添加する滑
剤の平均粒径、添加量を適宜選択すればよい。滑剤は、
無機、有機系の如何を問わないが、無機系が好ましい。
無機系滑剤としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタ
ン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が例示でき、有機
系滑剤としてはシリコーン粒子等が例示できる。特に、
耐ピンホール性の点で好ましい滑剤は、粒径比(長径/
短径)が1.0〜1.2である単分散の滑剤である。こ
のような滑剤としては、真球状シリカ、真球状シリコー
ン粒子等が例示できる。例えば、滑剤として真球状シリ
カを使用する場合は、平均粒径1.5μmの真球状シリ
カであれば0.04重量%以下、平均粒径0.8μmの
真球状シリカであれば0.36重量%以下添加すればよ
い。また、添加量が0.2重量%のときは、真球状シリ
カの平均粒径を0.95μm以下に、添加量が0.05
重量%のときは、真球状シリカの平均粒径を1.33μ
m以下にすればよい。 【0025】一方、共重合ポリエステル(B)は、その
表面粗さ(Ra)が15nm以上であることが好まし
い。この表面粗さ(Ra)が15nm未満であると、フ
ィルムの取扱性(巻取性)が悪化するので不適当であ
る。 【0026】共重合ポリエステル層(B)は、フィルム
を金属缶に貼合せた場合、金属缶に接着される側の層で
あり、缶の内容物と直接接することがないので、表面粗
さ(Ra)が15nm以上であっても内容物の味を悪く
するようなことはない。 【0027】共重合ポリエステル層(B)の場合は、共
重合ポリエステルに添加する前記充填剤の平均粒径、添
加量を、前記の範囲内で適宜選択することによって、所
望の表面粗さ(Ra)を得ることができる。 【0028】なお、フィルムの表面粗さ(Ra)は、J
IS―B0601に準じて求めた中心線平均粗さであ
り、フィルム表面粗さ曲線からその中心線の方向に測定
長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線を
X軸とし、縦倍率の方向をY軸として、粗さ曲線をY=
f(x)で表わしたとき、次の式で与えられる値(R
a:nm)をフィルム表面粗さとして定義する。 【0029】 【数1】 【0030】本発明では、基準長を2.5mmとして5
個測定し、値の大きい方から1個を除いた4個の平均値
としてRaを表わす。 【0031】本発明のおけるイソフタル酸共重合ポリエ
ステル及び共重合ポリエステルはその製法によって限定
されることはない。例えば、テレフタル酸、エチレング
リコール及びイソフタル酸又は共重合成分をエステル化
反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させ
てイソフタル酸共重合ポリエステル又は共重合ポリエス
テルとする方法、或はジメチルテレフタレート、エチレ
ングリコール及びイソフタル酸又は共重合成分をエステ
ル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反
応させてイソフタル酸共重合ポリエステル又は共重合ポ
リエステルとする方法などが好ましく用いられる。イソ
フタル酸共重合ポリエステル又は共重合ポリエステルの
製造においては、必要に応じ、他の添加剤例えば蛍光増
白剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止
剤等も添加することができる。 【0032】本発明のポリエステルフィルムは、イソフ
タル酸共重合ポリエステル層(A)と共重合ポリエステ
ル(B)とを積層した構造をとるものであり、かかる2
層構造のフィルムは、例えば、それぞれの層を構成する
イソフタル酸共重合ポリエステルと共重合ポリエステル
とを別々に溶融して、ダイより共押出し、固化前に積層
融着させた後、二軸延伸、熱固定する方法、各共重合ポ
リエステルを別々に溶融、押出してフィルム化し、未延
伸状態又は延伸後、両者を積層融着させる方法などによ
り製造することができる。 【0033】本発明のポリエステルフィルムは、未延伸
フィルムであってもよいが、通常は二軸延伸し、熱固定
した状態で使用される。この場合、イソフタル酸共重合
ポリエステル層(A)の厚さ方向の屈折率は、1.49
0〜1.550であることが好ましく、更に好ましくは
1.505を超え1.540以下である。この屈折率が
低すぎると成形加工性が不十分となり、一方、高すぎる
と、非晶に近い構造となるため耐熱性が低下することが
ある。 【0034】本発明のポリエステルフィルムは、好まし
くは厚みが6〜75μmである。さらに10〜75μ
m、特に15〜50μmであることが好ましい。厚みが
6μm未満では加工時に破れ等が生じやすくなり、一方
75μmを超えるものは過剰品質であって不経済であ
る。 【0035】イソフタル酸共重合ポリエステル層(A)
の厚みTA と、共重合ポリエステル層(B)の厚みTB
との比(TA /TB )は、0.02〜1.5程度が好ま
しく、更に好ましくは0.04〜0.67、特に好まし
くは0.04〜0.25である。具体的には、例えば厚
みが25μmのポリエステルフィルムの場合、イソフタ
ル酸共重合ポリエステル層(A)の厚みを0.5〜15
μm、好ましくは1〜10μm、更に好ましくは1〜5
μmとする。 【0036】本発明のポリエステルフィルムが貼合せら
れる金属板、特に製缶用金属板としては、ブリキ、ティ
ンフリースチール、アルミニウム等の板が適切である。
金属板へのポリエステルフィルムの貼合せは、例えば下
記,の方法で行うことができる。 【0037】 金属板をフィルムの融点以上に加熱し
ておいてフィルムを貼合せた後冷却し、金属板に接する
フィルムの表層部(薄層部)を非晶化して密着させる。 【0038】 フィルムに予め接着剤層をプライマー
コートしておき、この面と金属板を貼合せる。接着剤層
としては公知の樹脂接着剤、例えばエポキシ系接着剤、
エポキシ―エステル系接着剤、アルキッド系接着剤等を
用いることができる。 【0039】なお、本発明のポリエステルフィルムを金
属板へ貼り合せる場合には、ポリエステル層(B)の側
を金属板に貼り合せるようにする。 【0040】更に、本発明のポリエステルフィルムにお
いては、必要に応じて、イソフタル酸共重合ポリエステ
ル層(A)とポリエステル層(B)との間に、他の追加
の層を積層させてもよい。 【0041】 【実施例】以下、実施例により本発明を更に説明する。 【0042】 【実施例1〜6及び比較例1〜5】表1に示す成分を共
重合したポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.6
4、粒径比1.1、平均粒径0.3μmの真球状シリカ
を0.1重量%含有)が共重合ポリエステル層(A)、
同じく表1に示す成分を共重合したポリエチレンテレフ
タレート(固有粘度0.60、平均粒径0.27μmの
二酸化チタンを18重量%含有)が共重合ポリエステル
層(B)となるように、それぞれ別々に常法により乾
燥、溶融した後、互いに隣接したダイから共押出して、
積層、融着させて急冷固化し、未延伸積層フィルムを作
成した。 【0043】次いで、この未延伸フィルムを110℃で
3.0倍に縦延伸した後、120℃で3倍に横延伸し、
190℃で熱固定して二軸配向積層フィルムを得た。 【0044】得られたフィルムの全厚みは25μmであ
り、共重合ポリエステル層(A)及びポリエステル層
(B)の厚みは、それぞれ5μm及び20μm、表面粗
さ(Ra)は、それぞれ5nm及び23nmであった。 【0045】なお、表面粗さ(Ra)は、(株)小坂研
究所製、触針式表面粗さ計(SURFCORDER S
E―30C)を用いて、触針半径2μm、測定圧0.0
3g、カットオフ値0.25mmの条件下で測定した。 【0046】 【表1】 【0047】 【比較例6〜7】実施例2において、2層積層構造とせ
ずに、イソフタル酸共重合ポリエステル層(A)のみ
(比較例6)、及び共重合ポリエステル層(B)のみ
(比較例7)の厚み25μmの単層フィルムを作成し
た。 【0048】 【実施例7〜9及び比較例8〜10】実施例2におい
て、イソフタル酸共重合ポリエステル層(A)及び共重
合ポリエステル層(B)の固有粘度を表2に示すように
変更し、その他の条件は実施例2と同じにして、二軸配
向積層フィルムを得た。 【0049】 【表2】 【0050】 【実施例10〜11】実施例2において、イソフタル酸
共重合ポリエステル層(A)に含まれる真球状シリカの
平均粒径及び含有量並びに共重合ポリエステル層(B)
に含まれる二酸化チタンの平均粒径及び含有量を表3に
示すように変更し、それぞれの表面粗さ(Ra)を変更
し、その他の条件は実施例2と同じにして二軸配向積層
フィルムを得た。 【0051】 【表3】【0052】上記実施例1〜11及び比較例1〜10で
得られた計21種のフィルムを、230℃に加熱した板
厚0.25mmのティンフリースチールの両面に、共重
合ポリエステル層(B)の表面がティンフリースチール
に接するように貼合せ、水冷した後、150mm径の円
板状に切取り、絞りダイスとポンチを用いて4段階で深
絞り加工し、55mm径の側面無継目容器(以下、缶と
略す)を作成した。 【0053】この缶について以下の観察および試験を行
い、各々下記の標準で評価した。 【0054】(1) 深絞り加工性―1 ○:フィルムに異常なく加工され、フィルムに白化や破
断が認められない。 △:フィルムの缶上部に白化が認められる。 ×:フィルムの一部にフィルム破断が認められる。 【0055】(2) 深絞り加工性―2 ○:異常なく加工され、缶内フィルム面の防錆性試験
(1%NaCl水を缶内に入れ、電極を挿入し、缶体を
陽極にして6Vの電圧をかけた時の電流値を測定する。
以下ERV試験と略す)において0.1mA以下を示
す。 ×:フィルムに異常はないが、ERV試験で電流値が
0.1mA以上であり、通電個所を拡大観察するとフィ
ルムに粗大滑剤を起点としたピンホール状の割れが認め
られる。 【0056】(3) 耐衝撃性 深絞り成形が良好な缶について、水を満注し、10℃に
冷却した後、各テストにつき10個ずつを高さ30cm
から塩ビタイル床面に落した後、缶内のERV試験を行
った結果、 ○:全10個について0.3mA以下であった。 △:1〜5個について0.3mA以上であった。 ×:6個以上について0.3mA以上であるかあるい
は、落下後既にフィルムのひび割れが認められた。 【0057】(4) 耐熱脆化性 深絞り成形が良好であった缶を200℃×5分間加熱保
持した後、(3)に記した耐衝撃性評価を行った結果、 ○:全10個について0.3mA以下であった。 △:1〜5個について0.3mA以上であった。 ×:6個以上について0.3mA以上であるかあるい
は、200℃×5分間加熱後既にフィルムにひび割れが
認められた。 【0058】(5) 耐レトルト性 深絞り成形が良好な缶について、水を満注し、蒸気滅菌
器で、120℃、1時間レトルト処理を行い、しかる
後、50℃で30日間保存した。得られた缶を各テスト
につき10個ずつ高さ1mから塩ビタイル床面に落した
後、缶内のERV試験を行った。 ○:全10個について0.3mA以下であった。 △:1〜5個について0.3mA以上であった。 ×:6個以上について0.3mA以上であったかあるい
は、落下後既にフィルムのひび割れが認められた。 【0059】(6) 保香性 深絞り成形が良好な缶について、サイダーを充填し、密
封した。37℃で30日間保持した後開缶し、香りの変
化を官能検査により調べた。 ○:香りの変化はなかった。 △:わずかに香りの変化が認められた。 ×:香りの変化が認められた。 【0060】(7) 接着性 フィルムを230℃に加熱した板厚0.25mmのティ
ンフリースチールの片面に共重合ポリエステル(B)の
表面がティンフリースチールに接するように貼合せ、水
冷して得たラミネート板から、幅1cm長さ10cmの
テストピースを作成し、このテストピースを数回折り曲
げ、ティンフリースチールを切断し、ティンフリースチ
ールからフィルムを緩やかに引き剥がし、剥離の程度を
調べた。 ○:フィルムが剥離せず、破断した。 △:フィルムが剥離したが、剥離した長さが5mm以下
で破断した。 ×:フィルムが剥離し、剥離した長さが5mm以上であ
った。 【0061】(8) 保味性 (6)と同様にして、味の変化を官能検査により調べ
た。 ○:味の変化はなかった。 △:わずかに味の変化が認められた。 ×:味の変化が認められた。 【0062】以上8種の評価結果及び巻取性は、表4に
示す通りであった。 【0063】 【表4】 【0064】表4の結果から明らかなように、本発明の
ポリエステルフィルムを使用した缶では、深絞り加工
性、耐熱脆化性、耐レトルト性、保香性に優れていると
共に、耐衝撃性、特に低温下での耐衝撃性に優れてお
り、しかも金属板との接着性も良好である。 【0065】特にイソフタル酸共重合ポリエステル層
(A)の表面粗さ(Ra)が15nm以下で、共重合ポ
リエステル層(B)の表面粗さ(Ra)が15nm以上
である場合は、清涼飲料水などの味を悪化させることが
なく、巻取性も良好である。 【0066】 【発明の効果】本発明によれば、成形加工性、耐熱性、
耐レトルト性、保香性を保持しながら、耐衝撃性、接着
性を改善した金属板貼合せ成形加工用ポリエステルフィ
ルムを提供することができる。
用ポリエステルフィルムに関し、更に詳しくは金属板と
貼合せて絞り加工等の製缶加工をする際、優れた成形加
工性を示し、金属板との接着性、更には巻取性が良好で
あり、かつ耐熱性、耐レトルト性、保香性、耐衝撃性
等、更には保味性に優れた金属缶、例えば飲料缶、食品
缶等を製造し得る金属板貼合せ成形加工用ポリエステル
フィルムに関する。 【0002】 【従来の技術】金属缶には内外面の腐蝕防止として一般
に塗装が施されているが、最近、工程簡素化、衛生性向
上、公害防止等の目的で、有機溶剤を使用せずに防錆性
を得る方法の開発が進められ、その一つとして熱可塑性
樹脂フィルムによる被覆が試みられている。すなわち、
ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウム等の金属
板に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートした後、絞り加
工等により製缶する方法の検討が進められている。この
熱可塑性樹脂フィルムとしてポリオレフィンフィルムや
ポリアミドフィルムが試みられたが、成形加工性、耐熱
性、保香性、耐衝撃性の全てを満足するものでない。 【0003】一方、ポリエステルフィルム、特にポリエ
チレンテレフタレートフィルムがバランスのとれた特性
を有するとして注目され、これをベースとしたいくつか
の提案がされている。すなわち、 (A) 二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム
を低融点ポリエステルの接着層を介して金属板にラミネ
ートし、製缶材料として用いる(特開昭56―1045
1号、特開平1―192546号)。 (B) 非晶性もしくは極めて低結晶性の芳香族ポリエ
ステルフィルムを金属板にラミネートし、製缶材料とし
て用いる(特開平1―192545号、特開平2―57
339号)。 (C) 低配向で、熱固定された二軸配向ポリエチレン
テレフタレートフィルムを金属板にラミネートし、製缶
材料として用いる(特開昭64―22530号)。 【0004】しかし、本発明者らの検討では、いずれも
充分な特性が得られず、それぞれ次の問題のあることが
明らかとなった。 【0005】(A)については、二軸配向ポリエチレン
テレフタレートフィルムは耐熱性、保香性に優れるが、
成形加工性が不充分であり、大きな変形を伴う製缶加工
ではフィルムの白化(微小クラックの発生)、破断が発
生する。 【0006】(B)については、非晶性もしくは極めて
低結晶性の芳香族ポリエステルフィルムであるため成形
加工性は良好であるが、保香性が劣り、また製缶後の印
刷、レトルト殺菌処理等の後処理、更には長期の保存に
より脆化しやすく、缶外部からの衝撃により割れ易いフ
ィルムに変質する恐れがある。 【0007】(C)については、上記(A)と(B)の
中間領域で効果を発揮せんとするものであるが、未だ製
缶加工に適用可能な低配向には達しておらず、また変形
度の小さい領域で加工し得たとしても、その後の印刷、
缶内容物を滅菌する他のレトルト処理により、脆化しや
すくなり、缶外部からの衝撃により割れやすいフィルム
に変質する恐れがあることは前記(B)と同様である。 【0008】かかる問題を解決するために、本発明者ら
は、共重合ポリエステルからなるフィルムを使用するこ
とを考え、種々検討を重ねてきた。その結果、共重合ポ
リエステルフィルムは、成形加工性、耐熱性、耐レトル
ト性、保香性には優れているものの、耐衝撃性、特に1
5℃以下の低温での耐衝撃性が不十分であり、このフィ
ルムを貼合せた金属缶を低温下で落下させたりして衝撃
を与えると、フィルムにひび割れが生じ易いことがわか
ってきた。低温下での耐衝撃性が悪いことは、ジュー
ス、清涼飲料水用の金属缶のように冷却した状態で取扱
われるものでは、大きな問題となる。 【0009】また、フィルムと金属板との接着性が必ず
しも十分ではなく、過酷な条件下では、フィルムの剥離
が生ずるという問題が起ることもある。 【0010】更に、共重合ポリエステルフィルムを使用
した場合、保香性は一般に良好であるが、清涼飲料水な
どに用いたときは、内容物の味が悪くなるという問題が
生ずることもわかってきた。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、共重
合ポリエステルフィルムが持っている優れた成形加工
性、耐熱性、耐レトルト性、保香性を保持しながら、耐
衝撃性を改善し、低温下で衝撃によりひび割れが生じ難
く、しかも金属板との接着性が良好であり、更には清涼
飲料水などの味を悪くすることのない金属板貼合せ加工
用ポリエステルフィルムを提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、フィルムを共重合
ポリエステルからなる2層で構成すると共に、両層の共
重合ポリエステルの固有粘度を異ならしめることによ
り、低温下での耐衝撃性が改善され、しかも接着性も向
上し、更に各層の表面粗さをそれぞれ特定の範囲に限定
すれば、保味性が改善され、巻取性の悪化も避けられる
ことを見出し、本発明を完成するに至った。 【0013】即ち、本発明は、融点が210〜245℃
のイソフタル酸共重合ポリエステル層(A)と、融点が
210〜245℃の共重合ポリエステル層(B)とを積
層してなり、該イソフタル酸共重合ポリエステル層
(A)の固有粘度が、該共重合ポリエステル層(B)の
固有粘度よりも高く、その差が0.02以上であり、か
つイソフタル酸共重合ポリエステル層(A)の表面粗さ
(Ra)が5nm以上かつ15nm以下および共重合ポ
リエステル層(B)の表面粗さ(Ra)が15nm以上
であることを特徴とする金属板貼合せ成形加工用ポリエ
ステルフィルムである。 【0014】本発明において、共重合ポリエステル層
(B)に用いる共重合ポリエステルとしては共重合ポリ
エチレンテレフタレートが代表例として挙げられる。こ
の共重合成分は、酸成分でも、アルコール成分でも良
い。該酸成分としてはイソフタル酸、フタル酸、ナフタ
レンジカルボン酸等の如き芳香族ジカルボン酸、アジピ
ン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸
等の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボ
ン酸の如き脂環族ジカルボン酸等が例示でき、またアル
コール成分としてはブタンジオール、ヘキサンジオール
等の如き脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール
の如き脂環族ジオール等が例示できる。これらは単独ま
たは2種以上を使用することができる。 【0015】共重合成分の割合は、その種類にもよるが
結果として、ポリマー融点が210〜245℃、好まし
くは215〜235℃の範囲になる割合である。融点が
210℃未満では耐熱性が劣ることになる。一方、融点
が245℃を超えると、ポリマーの結晶性が大きすぎて
成形加工性が損われる。 【0016】ここで、共重合ポリエステルの融点測定
は、Du Pont Instruments 910
DSCを用い、昇温速度20℃/分で融解ピークを求
める方法による。なおサンプル量は約20mgとする。 【0017】本発明におけるイソフタル酸共重合ポリエ
ステル層(A)に用いる共重合ポリエステルは、保香性
に優れていることから、共重合ポリエステル層(B)に
用いる前記共重合ポリエステルのうち、共重合酸成分と
してイソフタル酸を用いた共重合ポリエステルであり、
イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートが代表
例として挙げられる。このイソフタル酸共重合ポリエス
テルは、イソフタル酸以外の共重合成分として、共重合
ポリエステル層(B)の共重合ポリエステルの共重合成
分として例示した共重合成分が、その特性を損なわない
範囲、例えば全酸成分または全アルコール成分に対して
3モル%以下の割合で共重合されていてもよい。 【0018】イソフタル酸及びその他の共重合成分の割
合は、ポリマーの融点が210〜245℃、好ましくは
215〜235℃の範囲になる割合である。融点が21
0℃未満では耐熱性が劣ることになる。一方、融点が2
45℃を超えると、ポリマーの結晶性が大きすぎて成形
加工性が損われる。 【0019】共重合ポリエステル層(B)を構成する共
重合ポリエステルは、イソフタル酸共重合ポリエステル
層(A)と積層、接着させた際の接着力を高め、耐衝撃
性を向上させるうえで、イソフタル酸共重合ポリエステ
ル層(A)を構成するイソフタル酸共重合ポリエステル
との融点差が±10℃以下、好ましくは±7℃以下、更
に好ましくは±5℃以下であることが望ましい。 【0020】本発明においては、イソフタル酸共重合ポ
リエステル層(A)を構成するイソフタル酸共重合ポリ
エステルの固有粘度が、共重合ポリエステル層(B)を
構成する共重合ポリエステルの固有粘度よりも高く、そ
の差が0.02以上であることが必要である。この要件
を満足しない場合は、金属板に対するフィルムの接着性
が向上しない。 【0021】イソフタル酸共重合ポリエステル層(A)
を構成するイソフタル酸共重合ポリエステルの固有粘度
は0.55以上であることが好ましく、更に好ましくは
0.60以上である。また、共重合ポリエステル層
(B)を構成する共重合ポリエステルの固有粘度は0.
40以上であることが好ましく、更に好ましくは0.4
5以上、特に好ましくは0.50以上である。更に、両
者の固有粘度差は、0.02〜0.15であることが好
ましく、更に好ましくは0.02〜0.10、最も好ま
しくは0.02〜0.06である。共重合ポリエステル
層(B)の共重合ポリエステルの固有粘度を低くすれ
ば、接着性は向上するが、あまり低くしすぎると結晶化
し易くなるため耐衝撃性が悪化するので、固有粘度をあ
まり低くしないように注意する必要がある。 【0022】ここで、固有粘度は、オルソクロロフェノ
ールに各々の層の共重合ポリエステルを溶解し、35℃
にて測定した溶液粘度から求める。 【0023】更に、本発明のフィルムにおいては、イソ
フタル酸共重合ポリエステル層(A)は、その表面粗さ
(Ra)が15nm以下、更に12nm以下、特に2〜
10nmであることが好ましい。イソフタル酸共重合ポ
リエステル層(A)は、金属缶に貼合せた場合、缶の内
容物と接する側に位置する層であり、この表面粗さ(R
a)が15nm以下とすることにより、内容物、特に炭
酸飲料などの清涼飲料水の味が悪くなるのを防ぐことが
でき、かつ、低温下での耐衝撃性を改善することができ
る。なお、この表面粗さ(Ra)が2nm未満の場合
は、フィルム表面に傷がつき易くなるので、避けるのが
望ましい。 【0024】この表面粗さ(Ra)を15nm以下にす
るには、イソフタル酸共重合ポリエステルに添加する滑
剤の平均粒径、添加量を適宜選択すればよい。滑剤は、
無機、有機系の如何を問わないが、無機系が好ましい。
無機系滑剤としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタ
ン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が例示でき、有機
系滑剤としてはシリコーン粒子等が例示できる。特に、
耐ピンホール性の点で好ましい滑剤は、粒径比(長径/
短径)が1.0〜1.2である単分散の滑剤である。こ
のような滑剤としては、真球状シリカ、真球状シリコー
ン粒子等が例示できる。例えば、滑剤として真球状シリ
カを使用する場合は、平均粒径1.5μmの真球状シリ
カであれば0.04重量%以下、平均粒径0.8μmの
真球状シリカであれば0.36重量%以下添加すればよ
い。また、添加量が0.2重量%のときは、真球状シリ
カの平均粒径を0.95μm以下に、添加量が0.05
重量%のときは、真球状シリカの平均粒径を1.33μ
m以下にすればよい。 【0025】一方、共重合ポリエステル(B)は、その
表面粗さ(Ra)が15nm以上であることが好まし
い。この表面粗さ(Ra)が15nm未満であると、フ
ィルムの取扱性(巻取性)が悪化するので不適当であ
る。 【0026】共重合ポリエステル層(B)は、フィルム
を金属缶に貼合せた場合、金属缶に接着される側の層で
あり、缶の内容物と直接接することがないので、表面粗
さ(Ra)が15nm以上であっても内容物の味を悪く
するようなことはない。 【0027】共重合ポリエステル層(B)の場合は、共
重合ポリエステルに添加する前記充填剤の平均粒径、添
加量を、前記の範囲内で適宜選択することによって、所
望の表面粗さ(Ra)を得ることができる。 【0028】なお、フィルムの表面粗さ(Ra)は、J
IS―B0601に準じて求めた中心線平均粗さであ
り、フィルム表面粗さ曲線からその中心線の方向に測定
長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線を
X軸とし、縦倍率の方向をY軸として、粗さ曲線をY=
f(x)で表わしたとき、次の式で与えられる値(R
a:nm)をフィルム表面粗さとして定義する。 【0029】 【数1】 【0030】本発明では、基準長を2.5mmとして5
個測定し、値の大きい方から1個を除いた4個の平均値
としてRaを表わす。 【0031】本発明のおけるイソフタル酸共重合ポリエ
ステル及び共重合ポリエステルはその製法によって限定
されることはない。例えば、テレフタル酸、エチレング
リコール及びイソフタル酸又は共重合成分をエステル化
反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反応させ
てイソフタル酸共重合ポリエステル又は共重合ポリエス
テルとする方法、或はジメチルテレフタレート、エチレ
ングリコール及びイソフタル酸又は共重合成分をエステ
ル交換反応させ、次いで得られる反応生成物を重縮合反
応させてイソフタル酸共重合ポリエステル又は共重合ポ
リエステルとする方法などが好ましく用いられる。イソ
フタル酸共重合ポリエステル又は共重合ポリエステルの
製造においては、必要に応じ、他の添加剤例えば蛍光増
白剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止
剤等も添加することができる。 【0032】本発明のポリエステルフィルムは、イソフ
タル酸共重合ポリエステル層(A)と共重合ポリエステ
ル(B)とを積層した構造をとるものであり、かかる2
層構造のフィルムは、例えば、それぞれの層を構成する
イソフタル酸共重合ポリエステルと共重合ポリエステル
とを別々に溶融して、ダイより共押出し、固化前に積層
融着させた後、二軸延伸、熱固定する方法、各共重合ポ
リエステルを別々に溶融、押出してフィルム化し、未延
伸状態又は延伸後、両者を積層融着させる方法などによ
り製造することができる。 【0033】本発明のポリエステルフィルムは、未延伸
フィルムであってもよいが、通常は二軸延伸し、熱固定
した状態で使用される。この場合、イソフタル酸共重合
ポリエステル層(A)の厚さ方向の屈折率は、1.49
0〜1.550であることが好ましく、更に好ましくは
1.505を超え1.540以下である。この屈折率が
低すぎると成形加工性が不十分となり、一方、高すぎる
と、非晶に近い構造となるため耐熱性が低下することが
ある。 【0034】本発明のポリエステルフィルムは、好まし
くは厚みが6〜75μmである。さらに10〜75μ
m、特に15〜50μmであることが好ましい。厚みが
6μm未満では加工時に破れ等が生じやすくなり、一方
75μmを超えるものは過剰品質であって不経済であ
る。 【0035】イソフタル酸共重合ポリエステル層(A)
の厚みTA と、共重合ポリエステル層(B)の厚みTB
との比(TA /TB )は、0.02〜1.5程度が好ま
しく、更に好ましくは0.04〜0.67、特に好まし
くは0.04〜0.25である。具体的には、例えば厚
みが25μmのポリエステルフィルムの場合、イソフタ
ル酸共重合ポリエステル層(A)の厚みを0.5〜15
μm、好ましくは1〜10μm、更に好ましくは1〜5
μmとする。 【0036】本発明のポリエステルフィルムが貼合せら
れる金属板、特に製缶用金属板としては、ブリキ、ティ
ンフリースチール、アルミニウム等の板が適切である。
金属板へのポリエステルフィルムの貼合せは、例えば下
記,の方法で行うことができる。 【0037】 金属板をフィルムの融点以上に加熱し
ておいてフィルムを貼合せた後冷却し、金属板に接する
フィルムの表層部(薄層部)を非晶化して密着させる。 【0038】 フィルムに予め接着剤層をプライマー
コートしておき、この面と金属板を貼合せる。接着剤層
としては公知の樹脂接着剤、例えばエポキシ系接着剤、
エポキシ―エステル系接着剤、アルキッド系接着剤等を
用いることができる。 【0039】なお、本発明のポリエステルフィルムを金
属板へ貼り合せる場合には、ポリエステル層(B)の側
を金属板に貼り合せるようにする。 【0040】更に、本発明のポリエステルフィルムにお
いては、必要に応じて、イソフタル酸共重合ポリエステ
ル層(A)とポリエステル層(B)との間に、他の追加
の層を積層させてもよい。 【0041】 【実施例】以下、実施例により本発明を更に説明する。 【0042】 【実施例1〜6及び比較例1〜5】表1に示す成分を共
重合したポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.6
4、粒径比1.1、平均粒径0.3μmの真球状シリカ
を0.1重量%含有)が共重合ポリエステル層(A)、
同じく表1に示す成分を共重合したポリエチレンテレフ
タレート(固有粘度0.60、平均粒径0.27μmの
二酸化チタンを18重量%含有)が共重合ポリエステル
層(B)となるように、それぞれ別々に常法により乾
燥、溶融した後、互いに隣接したダイから共押出して、
積層、融着させて急冷固化し、未延伸積層フィルムを作
成した。 【0043】次いで、この未延伸フィルムを110℃で
3.0倍に縦延伸した後、120℃で3倍に横延伸し、
190℃で熱固定して二軸配向積層フィルムを得た。 【0044】得られたフィルムの全厚みは25μmであ
り、共重合ポリエステル層(A)及びポリエステル層
(B)の厚みは、それぞれ5μm及び20μm、表面粗
さ(Ra)は、それぞれ5nm及び23nmであった。 【0045】なお、表面粗さ(Ra)は、(株)小坂研
究所製、触針式表面粗さ計(SURFCORDER S
E―30C)を用いて、触針半径2μm、測定圧0.0
3g、カットオフ値0.25mmの条件下で測定した。 【0046】 【表1】 【0047】 【比較例6〜7】実施例2において、2層積層構造とせ
ずに、イソフタル酸共重合ポリエステル層(A)のみ
(比較例6)、及び共重合ポリエステル層(B)のみ
(比較例7)の厚み25μmの単層フィルムを作成し
た。 【0048】 【実施例7〜9及び比較例8〜10】実施例2におい
て、イソフタル酸共重合ポリエステル層(A)及び共重
合ポリエステル層(B)の固有粘度を表2に示すように
変更し、その他の条件は実施例2と同じにして、二軸配
向積層フィルムを得た。 【0049】 【表2】 【0050】 【実施例10〜11】実施例2において、イソフタル酸
共重合ポリエステル層(A)に含まれる真球状シリカの
平均粒径及び含有量並びに共重合ポリエステル層(B)
に含まれる二酸化チタンの平均粒径及び含有量を表3に
示すように変更し、それぞれの表面粗さ(Ra)を変更
し、その他の条件は実施例2と同じにして二軸配向積層
フィルムを得た。 【0051】 【表3】【0052】上記実施例1〜11及び比較例1〜10で
得られた計21種のフィルムを、230℃に加熱した板
厚0.25mmのティンフリースチールの両面に、共重
合ポリエステル層(B)の表面がティンフリースチール
に接するように貼合せ、水冷した後、150mm径の円
板状に切取り、絞りダイスとポンチを用いて4段階で深
絞り加工し、55mm径の側面無継目容器(以下、缶と
略す)を作成した。 【0053】この缶について以下の観察および試験を行
い、各々下記の標準で評価した。 【0054】(1) 深絞り加工性―1 ○:フィルムに異常なく加工され、フィルムに白化や破
断が認められない。 △:フィルムの缶上部に白化が認められる。 ×:フィルムの一部にフィルム破断が認められる。 【0055】(2) 深絞り加工性―2 ○:異常なく加工され、缶内フィルム面の防錆性試験
(1%NaCl水を缶内に入れ、電極を挿入し、缶体を
陽極にして6Vの電圧をかけた時の電流値を測定する。
以下ERV試験と略す)において0.1mA以下を示
す。 ×:フィルムに異常はないが、ERV試験で電流値が
0.1mA以上であり、通電個所を拡大観察するとフィ
ルムに粗大滑剤を起点としたピンホール状の割れが認め
られる。 【0056】(3) 耐衝撃性 深絞り成形が良好な缶について、水を満注し、10℃に
冷却した後、各テストにつき10個ずつを高さ30cm
から塩ビタイル床面に落した後、缶内のERV試験を行
った結果、 ○:全10個について0.3mA以下であった。 △:1〜5個について0.3mA以上であった。 ×:6個以上について0.3mA以上であるかあるい
は、落下後既にフィルムのひび割れが認められた。 【0057】(4) 耐熱脆化性 深絞り成形が良好であった缶を200℃×5分間加熱保
持した後、(3)に記した耐衝撃性評価を行った結果、 ○:全10個について0.3mA以下であった。 △:1〜5個について0.3mA以上であった。 ×:6個以上について0.3mA以上であるかあるい
は、200℃×5分間加熱後既にフィルムにひび割れが
認められた。 【0058】(5) 耐レトルト性 深絞り成形が良好な缶について、水を満注し、蒸気滅菌
器で、120℃、1時間レトルト処理を行い、しかる
後、50℃で30日間保存した。得られた缶を各テスト
につき10個ずつ高さ1mから塩ビタイル床面に落した
後、缶内のERV試験を行った。 ○:全10個について0.3mA以下であった。 △:1〜5個について0.3mA以上であった。 ×:6個以上について0.3mA以上であったかあるい
は、落下後既にフィルムのひび割れが認められた。 【0059】(6) 保香性 深絞り成形が良好な缶について、サイダーを充填し、密
封した。37℃で30日間保持した後開缶し、香りの変
化を官能検査により調べた。 ○:香りの変化はなかった。 △:わずかに香りの変化が認められた。 ×:香りの変化が認められた。 【0060】(7) 接着性 フィルムを230℃に加熱した板厚0.25mmのティ
ンフリースチールの片面に共重合ポリエステル(B)の
表面がティンフリースチールに接するように貼合せ、水
冷して得たラミネート板から、幅1cm長さ10cmの
テストピースを作成し、このテストピースを数回折り曲
げ、ティンフリースチールを切断し、ティンフリースチ
ールからフィルムを緩やかに引き剥がし、剥離の程度を
調べた。 ○:フィルムが剥離せず、破断した。 △:フィルムが剥離したが、剥離した長さが5mm以下
で破断した。 ×:フィルムが剥離し、剥離した長さが5mm以上であ
った。 【0061】(8) 保味性 (6)と同様にして、味の変化を官能検査により調べ
た。 ○:味の変化はなかった。 △:わずかに味の変化が認められた。 ×:味の変化が認められた。 【0062】以上8種の評価結果及び巻取性は、表4に
示す通りであった。 【0063】 【表4】 【0064】表4の結果から明らかなように、本発明の
ポリエステルフィルムを使用した缶では、深絞り加工
性、耐熱脆化性、耐レトルト性、保香性に優れていると
共に、耐衝撃性、特に低温下での耐衝撃性に優れてお
り、しかも金属板との接着性も良好である。 【0065】特にイソフタル酸共重合ポリエステル層
(A)の表面粗さ(Ra)が15nm以下で、共重合ポ
リエステル層(B)の表面粗さ(Ra)が15nm以上
である場合は、清涼飲料水などの味を悪化させることが
なく、巻取性も良好である。 【0066】 【発明の効果】本発明によれば、成形加工性、耐熱性、
耐レトルト性、保香性を保持しながら、耐衝撃性、接着
性を改善した金属板貼合せ成形加工用ポリエステルフィ
ルムを提供することができる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 平6−286091(JP,A)
特開 平4−224936(JP,A)
特開 平6−172556(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
B32B 1/00 - 35/00
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 融点が210〜245℃のイソフタル酸
共重合ポリエステル層(A)と、融点が210〜245
℃の共重合ポリエステル層(B)とを積層してなり、該
イソフタル酸共重合ポリエステル層(A)の固有粘度
が、該共重合ポリエステル層(B)の固有粘度よりも高
く、その差が0.02以上であり、かつイソフタル酸共
重合ポリエステル層(A)の表面粗さ(Ra)が5nm
以上かつ15nm以下および共重合ポリエステル層
(B)の表面粗さ(Ra)が15nm以上であることを
特徴とする金属板貼合せ成形加工用ポリエステルフィル
ム。
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