JP3382281B2 - 熱可塑性樹脂射出成形用金型 - Google Patents

熱可塑性樹脂射出成形用金型

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JP3382281B2 JP00952793A JP952793A JP3382281B2 JP 3382281 B2 JP3382281 B2 JP 3382281B2 JP 00952793 A JP00952793 A JP 00952793A JP 952793 A JP952793 A JP 952793A JP 3382281 B2 JP3382281 B2 JP 3382281B2
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弘之 金山
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    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は熱可塑性樹脂成形用金型
に関し、さらに詳しくはキャビティ型表面の光沢や微細
な凹凸形状を成形品表面に忠実に転写でき、かつヒケの
ない成形品を低圧または極低圧で成形し得る熱可塑性樹
脂成形用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の熱可塑性樹脂成形用金型は、通
常、一般鋼材、ニッケル、ニッケル合金、アルミニウ
ム、アルミ合金、銅、銅合金等の金属材料にて製作され
ている。そしてキャビティ部内に溶融樹脂を圧入して該
溶融樹脂を所定形状に賦形すると同時に、キャビティ表
面の状態を、その表面に転写した成形品を得る。
【0003】しかし、このような従来型を用いて射出成
形する場合、キャビティ表面の転写度は低く、光沢や微
細凹凸模様を忠実に転写した成形品が得られないのが欠
点である。さらに成形品表面にフローマーク、ウェルド
マーク等が発生するばかりでなく、成形品の末端部や肉
厚部にヒケが発生しやすい。
【0004】これら諸現象の改善策としては、型温を高
くしたり、射出圧を上げるのが普通である。しかし、型
温を高くしても転写精度の改善に限度があり、また成形
サイクルの長時間化につながり、満足な結果は得られな
い。射出圧の増大も同じく転写改善に限度があり、さら
に、残留歪を増大させ、ソリやバリを発生するなど成形
品品質を低下させるばかりでなく、成形機の大型化を招
き、さらには金型の高剛性化を要し、良品を得るための
経済的生産を困難にする。
【0005】品質改善に限度がある理由は次のようであ
る。
【0006】射出成形用金型は、通常熱伝導性の良好な
金属材料にて構成されている。このような金型を使用し
て射出成形する場合、キャビティ内に充填されつつある
溶融樹脂は金型表面への放熱によって急速に冷却し、表
面に固化層が形成する。すなわち、充填工程では溶融樹
脂の型内圧が比較的低いため、溶融樹脂は型表面にあま
り強く圧接されないままに(即ち型表面を忠実に転写し
ないままに)表皮固化層を形成しながら充填が進行す
る。この表皮固化層の存在のため充填完了時に所定の高
圧が付加されたとしても、もはや型表面の光沢や微細な
凹凸模様は成形品に十分に転写され難い。またゲート付
近の乱流や、流動中の不整流が上記固化層中に瞬間的に
凍結し、フローマーク、ウェルドマーク等が発現する。
【0007】一方、最近では品質の高級化と同時に低価
格化への要望と、製品の大形化・軽薄短小化の二極化傾
向からくる成形の低圧化及び薄肉化要望が強まってい
る。この薄肉化要望はさらに高い成形圧力を必要とする
ため従来法ではもはや対応不能で、前記未解決の基本問
題、すなはち比較的低圧で良品を得る成形技術の開発
が、新しい課題として大きくクローズアップされてい
る。この課題に関連した、これまでに公表されている研
究・開発技術も少なくない。その代表例は次のようなも
のである。
【0008】1)ヒケ防止低発泡成形法 2)ヘッティンガー・プロセス 3)シンプレス・プロセス(ガス注入射出成形法) 4)高速射出成形法 5)射出圧縮成形法 6)断熱構造金型の利用 7)型表面への断熱性かつ濡れ性の良い薄膜コーティン
グ処理。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】これらのうち上記1)
〜5)では、従来法の問題点の一つであるヒケの発生問
題は大きく改善されたものの、充填時の樹脂表面固化層
による転写不良、フローマーク、ウェルドライン発生等
の弊害を取り除くものではなく、低圧条件下で高品質表
面の成形品を得る成形技術とはなり得ない。
【0010】ただ一つ上記6)では固化層の形成を遅ら
す効果があり、また7)では充填樹脂と型表面の濡れ性
改善による密着性向上に効果があり、従って、両者共金
型表面の転写性向上には有効な技術であるが、低圧条件
では成形品肉厚部のヒケ発生に対応できないため、結局
は高圧成形が必要になる。
【0011】このように、この種金型の利用によって
も、低圧で良品を得る成形技術の開発はいまだ達成され
ていないのが現状である。
【0012】本発明は従来の前記諸問題を解決するもの
であり、その目的は、コア側面にのみヒケ、収縮を発生
させることによりキャビティ型表面の光沢や微細な凹凸
模様を忠実に成形品表面に転写でき、かつ表面にヒケの
ない美しい成形品を、従来型による成形圧に比して半分
以下の低圧で、場合によっては1/5程度の極低圧で成
形できる熱可塑性樹脂の射出成形用金型を提供すること
にある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記問題解
決のため、型表面と溶融樹脂との“濡れ性”を研究し
た。
【0014】その実験の概略を以下に記す。
【0015】温度コントロールのできる熱盤上に4cm
×4cm×厚さ10mmの形状の各種型用材料を乗せ、
その表面上に溶融樹脂(ABS、温度230℃、重量8
g)を押し付けた。型用材料表面と溶融ABS樹脂との
間に濡れ性が発現して密着するときの型材料表面温度、
並びに濡れ性発現温度より型表面材料温度を2℃高く設
定した場合の、密着後離型するまでの時間(密着時間)
を測定した。各種型用材料及び構成と、得られたデータ
の一部を表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】上記の実験データにより次の事が言える。
【0018】鋼材等の金属材料は熱伝導率が1.99×
10-1cal/cm・sec・℃と良好であるため、その
表面に高温溶融樹脂が接触した際、樹脂は瞬間的に冷却
されて表面に固化層が形成されやすい。従って、濡れ性
が発現しにくい。濡れ性を発現させるためには、金属表
面を112℃以上の高温にする必要がある。
【0019】ジルコニア(熱伝導率:4〜7×10-3
al/cm・sec・℃)等のセラミックス材料や、エポ
キシ樹脂(熱伝導率:5×10-4cal/cm・sec・
℃)等の樹脂材料は熱伝導率が金属材料に比して格段に
低いため、溶融樹脂との接触により材料表面温度が急上
昇し、材料本体が低温であっても、その表面は溶融樹脂
と密着する。特に、エポキシ樹脂を用いた場合、室温
(21℃)でも溶融樹脂はその材料表面に密着すること
ができる。
【0020】しかし、これらの材料表面における溶融樹
脂の離型はあまり良好なものではない。すなわち、これ
らの材料は、濡れ性を発現し得る温度が低くても熱伝導
性が小さいため、放熱に時間を要し、離型に長時間を要
する。熱伝導性の高い金属と、熱伝導性の低い樹脂叉は
セラミックスの両者の特質を複合し、金属材料上に薄い
樹脂材料叉はセラミックス材料をコートすれば、金属材
料(ベース金属)の温度は低くても、樹脂またはセラミ
ックスからなるコーティング層の介在により、その表面
と溶融樹脂とは密着することができ、かつその密着時間
もコーティング層の厚さにより調整することができる。
【0021】また、この樹脂からなる断熱層の保護層と
して、その表面に薄い金属層を設けることも考えられ
る。型表面に樹脂層が設けられている場合、樹脂の軟弱
性のため型表面にヘヤーラインとか梨地等の微細な表面
パターンを施すと、耐久性の面で問題があるが、その表
面に金属層を設けて型表面とする場合は、この金属層に
ヘヤーラインとか梨地を施すことができ、上記耐久性の
問題は解消する。
【0022】さらに、金属層の表面に濡れ性の良好な二
酸化珪素あるいはポリイミド等の薄膜表面層を設けるこ
とにより、例えば、断熱層の厚みが0.5mmで、金属
層の厚みが0.1mmの場合、この薄膜表面層の表面
は、薄膜表面層が設けられていない場合に比して、6℃
低い59℃の表面温度で、溶融樹脂との濡れ性が発現す
ることもわかった(表1中のNo.5とNo.7を比較)。この
濡れ性改善による密着向上効果は、ABS樹脂の他、P
E、PP、PS、PC等の汎用樹脂に適用できることも
わかった。
【0023】上記の知見に基づき、以下のように5cm
×5cm×厚さ2mmの平板成形品製造用射出成形金型
を試作し成形実験を試みた。
【0024】5cm×5cm×高さ30mmのシンチュ
ウ母型の表面を鏡面研磨し、その表面を離型処理(重ク
ロム酸溶液処理)した後、その表面に、0.1mm厚み
のスルファミン酸ニッケルめっきを施した。さらに、そ
の表面に1mm厚のエポキシ樹脂系耐熱・高剛性断熱層
を形成し、さらに5cm×5cm×厚さ10mmの鋼材
を重ね一体化した後、母型を脱却し、キャビティ型を作
製した。コア型は通常の鋼材で作製した。
【0025】この断熱キャビティ型及び通常のコア型を
組み込んだ上記射出成形用金型を用いてABS樹脂を射
出成形したところ、金型温度 80℃〜85℃、型内圧 極
低、最高射出速度と云う限定された狭い組合せ条件下で
キャビティ側面にヒケがなくかつ美しい光沢を持ち、コ
ア側面にのみヒケのある成形品が得られた。しかし、限
定された上記組合せ以外の成形条件ではキャビティ側面
にも、一部または全面にわたってヒケが発生した。
【0026】そこで、より広範囲な成形条件下でも外観
の良好な成形品が得られるよう、コア型についてさらに
検討した。その結果、コアー型表面に、例えば、厚さ
0.05mmのフッ素系樹脂コーティング等による離型
性断熱層を形成することにより、金型温度 62℃以上、
型内圧 100kg/cm2以上、射出速度低速〜高速とも、広
範な条件下で、キャビティ側面が高精度に転写し、コア
側面にのみヒケのある成形品が得られた。
【0027】コア型表面に離型性断熱層を設ける目的は
つぎの通りである。
【0028】断熱性及び良好な離型性を有する層をコア
型表面に設けると、溶融樹脂が型内に充填されると瞬時
に冷却収縮が始まりコア側の溶融樹脂は高温状態でコア
型面との即時離型が可能となる。この離型の進行によ
り、樹脂とコア型との間に形成された空気による断熱効
果が加味されて、コア側での溶融樹脂の冷却が鈍化し、
キャビティ側溶融樹脂(密着状態)の冷却収縮をコア側溶
融樹脂の“集中的収縮”によって容易に補償することが
できる。つまり、キャビティ型面における濡れ性消失ま
での冷却収縮をコア側からの高温溶融樹脂の移動によっ
て容易に補償することができ、キャビティ側面にヒケの
ない転写性の良い成形品が得られる。
【0029】この機能を発現する離型性断熱層の形成方
法として、フッ素系樹脂コーティング、フッ素系複合樹
脂コーティング、シリコーン系複合樹脂コーティング、
或いはフッ素樹脂分散ニッケルめっき等が利用できる。
またベース金属材として一般の鋼材等に比べて断熱性の
優れたステンレス材、チタン材等を使用することも有効
である。
【0030】前述したように所期ABS形成品を与えた
金型構成、すなわち、キャビテイ型(断熱層厚さ1m
m、表面金属層厚さ0.1mm)及びコア型(離型性断熱
層の厚さ0.05mm)から成る金型(キャビテイ部サ
イズ5cm×5cm×厚さ2mm)にてABS以外の種
々の成形材料について確認実験をしたところ、PE,PS,P
P,PC等の一般汎用材料においては、前記ABSと同様の
良好な成形結果が得られることが明らかとなった。
【0031】しかし、例えば、30%入りガラス繊維入り
PC(HDT 148℃:18.5kgf/cm2負荷)や、30%ガラス繊
維入りPBT(HDT 210℃:18.5kgf/cm2負荷)等の高HDT
(熱変形温度)材料については、低圧ではキャビテイ側
面にもヒケが発生することがあり、所期の成形結果は得
られ難い。
【0032】この原因は次のように考えられる。ガラス
繊維入りの高HDT材料は無充填材料に比べて著しく高温
度で固化が始まるばかりでなく、固化時の収縮量がはる
かに少ない。(参考:無充填のPCの成形収縮率は0.5
〜0.7%であり、30%ガラス繊維入りのPCの成形収縮
率は0.1〜0.2である(Modetn Plastics Encylopedia '91
特性表より)) したがって、キャビテイ側では密着時間が短くなり、一
方コア側では早期離型による空気断熱効果が期待できな
く、キャビテイ側より速く固化する。このようなキャビ
テイ側とコア側における両現象の相乗効果により、キャ
ビテイ側材料の収縮補償が十分行われず、キャビテイ側
にヒケが発生する。
【0033】そこでコア側の冷却速度を遅らせるため、
キャビテイ型の断熱層厚さに比してコア型の離型性断熱
層の厚さを充分厚くしたところ(例えばキャビテイ型の
断熱層の厚さを0.5mm、コア型の離型性断熱層の厚さ
を5mmとする)、期待通りキャビテイ型表面が転写
し、コア型側にヒケの発生した成形品が得られた。
【0034】さらに、キャビティ型に設けた金属層の表
面に、濡れ性の良好な薄膜表面層(例えば、SiO2膜)を
形成することにより、溶融樹脂との濡れ性が向上し、濡
れ性発現表面温度が5〜10℃低下することがわかっ
た。この結果より広い条件で安定した低圧転写成形が行
える。
【0035】前記薄膜表面層としては、酸化チタン(Ti
O2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化ジルコニウム(Zr
O2)、二酸化珪素(SiO2)またはガラス等の金属酸化
物、珪素酸化物、珪素系複合酸化物が好ましい。これら
の薄膜表面層を形成したキャビティ型表面の水との接触
角を測定したところ、それぞれ30°、13°、27
°、10°、12°であった。また、前記薄膜表面層と
して、溶融樹脂との親和性に優れたプラスチックも使用
可能であり、特にプラズマ重合や電着等によるプラスチ
ック薄膜が好ましい。
【0036】上記のようなキャビティ型及びコア型を組
み合わせた金型構成とする事により、通常型による従来
の高圧条件に比べ、半分以下の低圧条件でヒケ、フロー
マーク、ウェルドマーク、ジェッティング等のない、キ
ャビティ型面をよく転写した美しい外観を持った成形品
が多段射出圧力制御や速度制御等の必要もなく、一速一
圧条件で得られることを見いだし、かつ確認して本発明
を完成するに至った。すなわち、本発明の熱可塑性樹脂
の射出成形用金型は、キャビティ型とコア型と、該キャ
ビティ型と該コア型との間で形成されており溶融樹脂が
充填されるキャビティ部と、を有し、該キャビティ型は
その表面部に充填樹脂との”濡れ性”を発現する断熱層
を有し、該コア型は、その表面に、断熱性かつ離型性機
能を有する離型性断熱層を有しており、そのことにより
上記目的が達成される。
【0037】キャビティ型の表面に設けられた該断熱層
の熱伝導率は低い程良く、好ましくは、6×10-3ca
l/cm・sec・℃以下であり、さらに好ましくは、4
×10-3cal/cm・sec・℃以下である。
【0038】光学部品等の成形型では、断熱層を形成す
る材料として熱安定性のよいセラミックス材(例えば、
ジルコニア;線膨張係数 8〜11×10-6/℃、熱伝
導係数4〜7×10-3cal/cm・sec・℃)あるい
はガラス材(例えば、板ガラス(ソーダ石灰ガラス);
線膨張係 8〜9×10-6/℃、熱伝導係数 1.8×1
-3cal/cm・sec・℃)等を用い、その厚さは、
成形品の要求精度が高いほど厚くして充填樹脂を徐冷す
ることが好ましいが、その他成形品の厚さ、生産性等を
勘案して1mm〜10mmが好ましい。
【0039】該断熱層が耐熱性プラスチックまたはプラ
スチック複合材から形成される場合、その断熱層の厚さ
は0.1〜1.5mmが好ましい。厚さが0.1mm未
満ではウェルドライン、フローマーク等が解消しにく
く、また1.5mmを超える場合、成形サイクルが延
び、生産性に好ましくない。さらにその表面に0.01
〜0.2mmの金属層が形成されているのが好ましい。
【0040】さらに、型表面に設けた金属層の表面に、
溶融樹脂との濡れ性の良好な薄膜表面層を形成すること
も好ましい。そのような薄膜表面層は、金属酸化物、珪
素酸化物、珪素系複合酸化物またはプラスチック等の材
料から形成するのが好ましい。薄膜表面層の厚みは、該
薄膜表面層の物質または形成方法によって異なるが、5
μm 以下でよい。
【0041】上記コア型表面の離型性断熱層は、フッ素
系樹脂(ポリ四フッ化エチレンなど)、フッ素系樹脂複
合材、シリコーン系樹脂複合材及びフッ素樹脂分散ニッ
ケルめっきからなる群から選択された一種で形成される
のが好ましい。厚い離型性断熱層が要求される場合は、
その表面層が上記離型性断熱層で形成されていればよ
い。上記離型性断熱層の厚さは0.01〜7mmである
のが好ましい。汎用樹脂を成形する場合には、離型性断
熱層の厚さは0.01〜0.3mmでもよい。離型性断
熱層の厚さが0.01未満の場合には、断熱性に劣り、
7mmを超える場合には、キャビティ側、コア側両面の
冷却速度差が大きくなり、成形品に反りが発生する場合
がある。
【0042】次に、本発明による熱可塑性樹脂成形用金
型を、図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0043】図1は本発明の射出成形用金型の一実施例
を示す概念図であり、この射出成形用金型は、断熱性の
良いセラミックスで形成された断熱層1を表面に有する
キャビティ型2と、フッ素樹脂分散ニッケルめっきにて
形成された離型性断熱層4を表面に有するコア型8とを
備えており、この金型は、特に反射ミラー等の成形に有
効である。
【0044】上記断熱層1はキャビティ型材とロー付等
にて接合され、キャビティ型2の表面を形成している。
【0045】射出成形機からの溶融樹脂は、ノズルタッ
チ部10よりスプル6、ランナー・ゲート7を通って、
キャビティ型2とコア型8との間で形成されるキャビテ
ィ部5に充填されように構成されている。
【0046】光学部品ではシビアーな型面転写が要求さ
れるため、成形サイクルを犠牲にしても上記断熱層1の
厚みは5mm以上に厚くし、充填樹脂を徐冷しキャビテ
ィ型表面との密着時間を長くすることが好ましい。
【0047】なお、図中、9は取付板、10はノズルタ
ッチ部、12はキャビティプレート、13はコアプレー
ト、14はコア型8の底部に設けられたリブ溝である。
【0048】図3は、凹キャビティ型と凸コア型とを備
えた射出成形用金型の他の実施例を示す概略断面図であ
る。この実施例では、キャビティ型2の断熱層1の表面
に、薄肉の金属層3が形成されている。このキャビティ
型2は次のようにして作製した。キャビティ部5の外径
寸法、即ち成形品形状と同一形状の母形を作り、その表
面に電鋳法にて薄肉金属層3を形成し、耐熱プラスチッ
クを介して、キャビティ型部材の中に圧入固定し、同時
に断熱層1を成形後、母型を抜去し、キャビティ型2を
作製した。コア型8の表面には、実施例1と同様にフッ
素系樹脂コーティングにより離型性断熱層4が形成され
ている。
【0049】成形装置の他の構成は上記実施例と同一で
あるので、同一の番号を付けて説明を省略する。
【0050】なお、キャビティ型およびコア型に設けた
断熱層および離型性断熱層は、キャビティ型の一部およ
びそれに対応するコア型の一部にのみ設けてもよい。
【0051】
【作用】本発明の熱可塑性樹脂成形用金型において、溶
融樹脂がキャビティ部に充填されると、キャビティ型表
面は瞬時に昇温し、濡れ性を発現して溶融樹脂は該型表
面に強く密着する。このため充填された溶融樹脂はフロ
ーマーク、ウエルドライン、ジェッテイング等が解消す
るとともに、キャビティ型面を均一に、かつ忠実にその
表面に転写しつつ冷却固化する。
【0052】一方、コア型表面は離型性断熱層を有する
ため、溶融樹脂と接触はしているが密着はしていない状
態に保たれる。このため瞬時に始まる充填溶融樹脂の冷
却収縮により、コア側の溶融樹脂は、コア型面から直ち
に離型が進行し、型面との間に空気断熱層が形成され、
冷却速度の鈍化が起こる。
【0053】その結果、キャビティ型面での樹脂は密着
したまま、コア側の樹脂のみ収縮が進行する状態とな
り、キャビティ側の収縮を補う。やがてキャビティ型表
面の温度低下により樹脂との濡れ性が消失し離型が起こ
るが、このときすでに十分厚い固化層が形成されている
ため、キャビティ側の成形品表面にはヒケが発生するこ
とはなく、引続き冷却過程が進行して成形品の固化が完
了する。
【0054】
【実施例】次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細
に説明する。
【0055】(実施例1)5cm×5cm×厚さ0.1
mmの光沢ニッケル板の片面に、シリカ粉充填耐熱エポ
キシ樹脂(熱伝導率:3×10-3cal/cm・sec
・℃)にて、厚さ0.5mmの断熱層を形成し、その上
に鋼材を張り合わせ一体化し、5cm×5cm×厚さ
1.5cmの断熱キャビティ型を作製した。
【0056】また、5cm×5cm×厚さ1.5cmの
鋼材の片面に、4cm×4cm×深さ0.2cmの凹キ
ャビティ部を切削加工し、その凹部の底面に、さらに幅
3.5cm、長さ2cm、深さ0.5cmのテーパー付
リブ溝を切削したコア型を作製した。
【0057】このコア型凹部表面に、フッ素樹脂分散ニ
ッケルめっき(商品名メタフロン、上村工業社製)を施
して、離型性断熱層(厚み0.03mm)を形成した。
【0058】次に、標準的2ヶ取り金型を作製し、その
片側に上記本発明によるキャビティ型およびコア型を組
み込み、比較として、他の片側に通常の鋼材で作製した
キャビティ型(表面研磨)およびコア型を組み込み、そ
の他必要な加工をして金型を完成した。尚、キャビティ
部に圧力センサーを取り付け、射出時の型内圧力を測定
可能とした。
【0059】この金型を標準的射出成形機に取り付け、
ABS樹脂にて同時に2ヶの成形品を成形し、両者を比
較したところ、本発明によるキャビティ型及びコア型を
用いて得られた成形品は、型温65℃以上、型内圧10
0kg/cm2の低圧から高圧まで、低速射出から高速射出
まで広範な成形条件下で、キャビティ側面にはヒケのな
い、全面に光沢のある美しい成形品が得られた。
【0060】一方、通常型を用いて得られた成形品は、
型内圧400kg/cm2以下ではキャビティ側全面にヒケ
が発生し、型内圧500kg/cm2以下では、リブ上のヒ
ケが目立ち、型内圧600kg/cm2以上の高圧でもヒケ
が完全に消えず、またキャビティ側面の光沢も前者に比
べ相当に劣っていた。なお、高速射出条件下ではゲート
部にジェッティング現象が発生した。
【0061】(実施例2)キャビティ型に設けた断熱層
の厚さを1.2mm、ニッケル板の厚さを0.01mm
とし、コア型に設けた離型性断熱層の厚みを0.2mm
としたこと以外は上記実施例1と同様にして本発明の金
型を得、この金型について実施例1と同様の射出成形を
行った。
【0062】その結果、本発明のキャビティ型及びコア
型を用いて得られた成形品では、ヒケのない光沢のある
美しい外観を有しており、実施例1と同じ結果であっ
た。
【0063】(実施例3)両方のコア型とも、その中心
部に10mm径×高さ0.2cmの円柱ボスを設けて、
該ボスの先端をキャビティ面と接触させることにより中
心部に穴のあいた成形品が得られるようにしたこと以外
は、上記実施例1と同様にして金型を得た。この金型に
ついて、実施例1と同様の射出成形を行った。
【0064】その結果本発明のキャビティ型およびコア
型を用いて得られた成形品ではウエルドの発生がなく、
ヒケのない美しい成形品が得られたが、通常型による成
形品は穴部よりゲートの反対側へウエルドが明確に発生
し、通常の成形条件では消えなかった。他の結果は、実
施例1と同様であった。
【0065】(実施例4)キャビティ型のニッケル層の
表面にスパッタ装置にて、厚さ0.3μm の二酸化珪素
薄膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして本発
明の金型を得、この金型について実施例1と同様の射出
成形を行った。
【0066】その結果、本発明のキャビティ型およびコ
ア型を用いると、実施例1(二酸化珪素薄膜が設けられ
ていないキャビティー型)と同様の良品が、実施例1の
金型温度より約6℃低い59℃で得ることができた。
【0067】(実施例5)キャビティ型のニッケル層の
表面に電着法により、厚さ3μm のポリイミド薄膜を形
成したこと以外は、実施例1と同様にして本発明の金型
を得、この金型について実施例1と同様の射出成形を行
った。
【0068】その結果、本発明のキャビティ型およびコ
ア型を用いると、実施例1と同様の良品が、実施例4の
金型温度より約3℃低い56℃で得ることができた。
【0069】(実施例6)超強力鋼(YAG)の片面に
厚さ5mmの板ガラスを、ろう付けにて接合し、5cm
×5cm×厚さ1.5cmの大きさに研削仕上げした。
このガラス面を平面ラップして本発明による光学的鏡面
キャビティ型を作製した。
【0070】チタン材で形成したコア型に、4cm×3
cm×深さ0.3cmのキャビティ部を切削加工し、そ
の凹部表面にフッ素樹脂コート(厚み0.3mm)を施
し、実施例1と同様の構成で2ヶ取り金型に組み込み、
金型を完成した。
【0071】この金型温度を90℃に設定し、ポリカー
ボネート樹脂を成形した。
【0072】本発明のキャビティ型及びコア型を用い、
射出圧力(シリンダー圧力)500kg/cm2、射出時間
2〜3秒で得られた成形品のキャビティ側面は歪みの少
ない美しい面が得られた。ただし成形サイクルは、90
秒以上を要した。
【0073】一方、通常型を用いて得られた成形品のキ
ャビティ側面は、映した像に歪みが生じ、本発明型によ
る成形品と、はっきりと差が認められた。
【0074】(実施例7)キャビティ型に設けた断熱層
の厚さを0.3mm、コア型に設けた離型性断熱層の厚
さを5mmとしたこと以外は上記実施例1と同様にして
本発明の金型を得た。
【0075】この金型について、ガラス繊維30%入り
ポリカーボネート(PC)樹脂にて、実施例1と同様の
射出成形を行った。
【0076】その結果、本発明のキャビティ型及びコア
型を用いて得られた成形品では、金型温度85℃、型内
圧150Kg/cm2、高速射出、射出時間6秒で得られた
成形品のキャビティ側はガラス繊維の浮きがなく、キャ
ビティ型面をよく転写した光沢のある面であったが、コ
ア側面には全面にヒケが発生していた。
【0077】一方、通常型を用いて得られた成形品は型
内圧500Kg/cm2以下では両面にヒケが発生し、型内
圧600Kg/cm2以上では、ヒケのない成形品が得られ
たが、ガラス繊維の浮いた艶のない成形品であった。
【0078】
【発明の効果】本発明によれば、キャビティ型表面が成
形品表面に忠実に転写された、表面にヒケ等のない美し
い成形品を、従来型による成形圧に比して半分以下の低
圧で、場合によっては1/5程度の極低圧で成形するこ
とができる。従って、大形薄肉成形品の成形において
も、従来より、射出圧力の低減が可能であり、ひいては
少なくとも30%以上の型締力の低減が可能であり、高
性能の成形機を用いる必要がなく、品質の高級化と同時
に低価格化への要望に応えた熱可塑性樹脂用成形金型を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の射出成形用金型の一例を示す概略断面
図である。
【図2】図2に示す金型の要部拡大図である。
【図3】本発明の射出成形用金型の他の例を示す概略断
面図である。
【図4】図3に示す金型の要部拡大図である。
【符号の説明】
1 断熱層 2 キャビティ型 3 金属層 4 離型性断熱層 5 キャビティ部 6 スプル 7 ランナー・ゲート 8 コア型 10 ノズルタッチ部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−55839(JP,A) 特開 昭55−55818(JP,A) 特開 平4−211912(JP,A) 実開 昭55−33761(JP,U) 特公 昭64−2487(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 45/26 B29C 33/42 B29C 45/37

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 キャビティ型と、コア型と、該キャビテ
    ィ型と該コア型との間で形成されており溶融樹脂が充填
    されるキャビティ部と、を有する熱可塑性樹脂射出成形
    用金型であって、 該キャビティ型はそのキャビティ部側の表面部に断熱層
    を有し、該コア型はそのキャビティ部側の表面部に離型
    性かつ断熱性機能のある離型性断熱層を有し、該断熱層
    が、セラミック、ガラスおよび耐熱性プラスチック材料
    からなる群から選択される一種から形成され、 該離型性断熱層が、フッ素系樹脂、フッ素系樹脂複合
    材、シリコーン系樹脂複合材およびフッ素樹脂分散金属
    めっきからなる群から選択された一種から形成され、 キャビティ部に成形用樹脂が充填されて該成形用樹脂が
    冷却収縮するときに、該樹脂は該キャビティ型の表面よ
    りも該コア型表面から先に型離れする 熱可塑性樹脂射出
    成形用金型。
  2. 【請求項2】 前記断熱層が、セラミックスからなり、
    その熱伝導率が4×10-3cal/cm・sec・℃以
    下であり、かつ厚さが1〜10mmである請求項1に記
    載の射出成形用金型。
  3. 【請求項3】 前記断熱層が、耐熱性プラスチックおよ
    びプラスチック複合材からなる群から選択された一種か
    らなり、その厚みが0.1〜1.5mmである請求項1
    記載の射出成形用金型。
  4. 【請求項4】 前記断熱層の表面に、さらに薄い金属層
    を有する請求項1に記載の射出成形用金型。
  5. 【請求項5】 前記断熱層が、0.1〜1.5mmの厚
    さを有する耐熱性プラスチックまたはプラスチック複合
    材からなり、その表面に0.01〜0.2mmの金属層
    を有する請求項1に記載の射出成形用金型。
  6. 【請求項6】 前記金属層の上に、さらに溶融樹脂との
    塗れ性の良い薄膜表面層を有する請求項4に記載の射出
    成形用金型。
  7. 【請求項7】 前記薄膜表面層が、金属酸化物、珪素酸
    化物、珪素系複合酸化物およびプラスチックからなる群
    から選択された一種からなる請求項6に記載の射出成形
    用金型。
  8. 【請求項8】 前記薄膜表面層が、水との接触角30°
    以下の濡れ性を有している請求項6に記載の射出成形用
    金型。
  9. 【請求項9】 前記離型性断熱層の熱伝導率が3×10
    -3cal/cm・sec・℃以下であり、かつ厚さが
    0.01〜7mmである請求項1に記載の射出成形用金
    型。
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