JPH0617044B2 - 金 型 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［発明の技術的背景］ 本発明は、例えばプラスチック製の光学部品の射出成形
に好適する金型に関する。

［発明の技術的背景とその問題点］ 近時、軽量化、低価格化を目的として単レンズ，フレネ
ルレンズ等の各種の光学部品がプラスチック化されつつ
ある。このようなプラスチック製の光学部品は、射出成
形法、注型成形法，圧縮成形法等により成形されている
が、非球面の丸レンズ，球面の矩形状レンズ等のガラス
では困難なレンズの製作が容易となる利点を有してい
る。ところで、これらのプラスチック成形においては、
コア（入れ子）を有する金型が用いられるが、上記コア
は、光学部品が直接成形される部分であるので、表面粗
さが１／１００〜３／１００μｍＲｍａｘ程度になるま
で精密な鏡面加工を必要とするとともに、例えばマルエ
ージング鋼，ステンレス鋼，リン青銅などの熱伝導の良
好な材料が使用されている。

しかしながら、上記金属製のコアを用いる金型では、コ
アの鏡面加工に、ダイヤモンド工具や超硬工具による切
削加工あるいは遊離加工によるポリシングが用いられて
いるが、いずれも金属成形材にとって固有の微細なピン
ホール（直径０．１〜１０μｍ）が露出してしまう。こ
のピンホールは、プラスチック光学部品に乱反射を生じ
させる欠陥を転写させることになり、光学部品のプラス
チック成形にとって重大な問題となっている。さらに、
金属製のコアでは、熱伝導率が十分でなく、成形段階に
おいて、溶融樹脂と金型との間の熱交換が悪くなる結
果、溶融樹脂の固化にともなう収縮が複雑化し、成形欠
陥が生じやすくなる欠点をもっている。

［発明の目的］ 本発明は、上記事情に着目してなされたもので、良好な
光学特性を有するプラスチック光学部品を得ることので
きる金型を提供することを目的とする。

［発明の概要］ 金型を構成する固定側及び可動側のコアを熱伝導率の良
好なセラミックスにより成形するとともに、上記一対の
コアのうち、少なくともキャビティ構成面に金属被覆層
を被着するようにしたものである。

［発明の実施例］ 以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。

図面は、この実施例の金型を示している。この金型は、
図示せぬ型締機構の射出プレートに固定される固定側型
板（１）と、射出プレートに対して進退駆動される型締
プレートに取付けられる可動側型板（２）と、固定側型
板（１）のパーティング面（３）側に嵌着され凸レンズ
が成形されるキャビティ（４）が凹設された第１のコア
（５）と、可動側型板（２）のパーティング面（３）側
に嵌着されキャビティ（４）とともに凸レンズを成形す
るためのキャビティ（６）を有する第２のコア（７）と
からなっている。しかして、固定側型板（１）及び可動
側型板（２）には、冷却水を貫流させるための冷却孔
（８）…が配設されている。さらに、第１及び第２のコ
ア（５），（７）は、例えば炭化珪素（ＳｉＣ）に炭化
チタン（ＴｉＣ）を微量含有するセラミックスから構成
されている。すなわち、第１及び第２のコア（５），
（７）は、セラミックス粉体をコア形状に成形したのち
焼成したものである。しかして、これら第１及び第２の
コア（５），（７）のキャビティ（４），（６）には、
厚さ３０μｍ程度のニッケル（Ｎｉ）被覆層（９），
（１０）が被着されている。これらＮｉ被着層（９），
（１０）は、無電解メッキにより厚さ１００μｍ程度に
被着した後、ダイヤモンド切削により除去加工したの
ち、遊離砥粒を用いて表面粗さが１／１０００〜３／１
０００μｍＲｍａｘとなるように鏡面仕上げを行い、最
終的に厚さが３０μｍになるように加工したものてせあ
る。

しかして、上記構成の金型を用いて凸レンズの射出成形
を行った場合、セラミックス製のコア（５），（７）を
用いているので、金属に比べて熱伝導率がはるかに高く
なり、溶融樹脂と金型との熱交換性がよくなる。ちなみ
に、マルエージング鋼の熱伝導率は、０．０５ｃａｌ・
ｃｍ^-1・ｓｅｃ^-1・ｄｅｇ^-1であるのに対して、ＳｉＣ
の熱伝導率は、０．２５ｃａｌ・ｃｍ^-1・ｓｅｃ^-1・ｄ
ｅｇ^-1とマルエージング鋼の約５倍の熱伝導性を有して
いる。したがって、本実施例の金型では、熱伝導性がよ
くなる結果、冷却速度が均一化するとともに溶融樹脂の
体積収縮差が少なくなりヒケ・巣・空洞・ソリ・曲り・
ネジレ・変形などのプラスチック光学部品にとって致命
的な成形欠陥の発生を防止することができる。また、成
形品がキャビティ4，6中にて、熱変形温度以下に冷却固
化するに要する時間が３０％以上短くなり、成形サイク
ルが短縮する結果、生産能率が向上する。さらに、Ｎｉ
被覆層9，10は、非結晶のため、鏡面仕上加工された表
面にはピンホールは皆無となり、光学ガラスと同程度の
プラスチック光学面を得ることができる。

なお、上記実施例においては、凸レンズ成形用の金型を
例示しているが、凹レンズ，平凹レンズ，平凸レンズ，
円柱レンズ等、すべてのプラスチック光学部品の製作に
適用可能である。さらに、コアへの被覆方法についても
無電解メッキに限ることなく通常の電着でもよい。ま
た、被覆金属についても、Ｎｉに限ることなく、銅（Ｃ
ｕ），コバルト（Ｃｏ），銀（Ａｇ），クロム（Ｃ
ｒ），鉄（Ｆｅ）等でもよい。さらに、セラミックスに
ついても、窒化珪素（Ｎｉ_３Ｎ_４）あるいはＴｉＣを含
有しないＳｉＣでもよい。さらにまた、本発明の金型
は、射出成形はもとより、注型成形，圧縮成形等、他の
プラスチック成形法にも金型として用いることができ
る。

［発明の効果］ 本発明の金型は、プラスチック光学部品を直接成形する
コアを熱伝導率が良好なセラミックスで成形し、かつ、
金属薄膜を被着させたので、成形欠陥発生を防止するこ
とができる。よって、光学特性がガラス製のものと同程
度のプラスチック製の光学部品を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の一実施例の金型の断面図である。 （１）：固定側型板，（２）：可動側型板，（４），
（６）：キャビティ，（５）：第１のコア，（７）：第
２のコア，（９），（１０）：Ｎｉ被覆層。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】固定して設けられる固定側型板と、この固
   定側型板に嵌着された第１のコアと、上記固定側型板に
   対して進退自在に設けられる可動側型板と、この可動側
   型板に嵌着され上記第１のコアとともにプラスチック成
   形品が成形されるキャビティを形成する第２のコアとを
   具備し、上記第１のコア及び上記第２のコアはセラミッ
   クスにより形成され、かつ、上記第１のコア及び上記第
   ２のコアの少なくともキャビティ構成面には金属被覆層
   が被着されていることを特徴とする金型。
2. 【請求項２】セラミックスは炭化珪素であることを特徴
   とする特許請求の範囲第１項記載の金型
3. 【請求項３】金属被覆層は無電解ニッケルメッキである
   ことを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の金型。
4. 【請求項４】金属被覆層は鏡面加工されていることを特
   徴とする特許請求の範囲第１項記載の金型。