JP3343497B2 - エレベータ制動機の制動力測定装置 - Google Patents

エレベータ制動機の制動力測定装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エレベータの制動
機における制動力を算出するエレベータの制動力測定装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】エレベータの制動機における制動力を算
出するためには、エレベータの慣性能率が必要であり、
これはエレベータ毎に一様な個別データであるため、1
台毎に測定しなければならないが、制動力の測定を初め
て実施する際に測定すれば良いものである。従来、この
制動力を最初に測定した際の慣性能率のデータを作業者
が記録し、次回に制動力の測定を行なう際に、既にその
慣性能率を測定しているかどうかデータを検索するよう
にしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の制動力測定方法では、エレベータ制動機にお
ける制動力を測定する際に、作業者が慣性能率のデータ
を見落として、既に測定済の慣性能率のデータを再測定
してしまったり、多数のデータが存在するときにはその
検索に時間を要してしまう。
【0004】本発明の目的とするところは、慣性能率を
重複して測定することを防止して作業効率を向上したエ
レベータ制動機の制動力測定装置を提供することにあ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するために、乗りかごおよびつり合いおもりを懸垂する
主ロープが巻掛けられる巻上シーブと、この巻上シーブ
に制動力を付与する制動機と、上記巻上シーブに駆動力
を付与する電動機を有し、上記制動機の制動力を算出す
るエレベータ制動機の制動力測定方法において、対象と
なるエレベータの既に測定した慣性能率を記憶する記憶
手段と、この記憶手段に上記エレベータの上記慣性能率
のデータがあるかどうかを自動的に判断する判断手段と
を設けたことを特徴とする。
【0006】上述したように本発明のエレベータの制動
機の制動力測定装置は、一度慣性能率を測定したなら、
そのデータを記憶するようにしたため、次に制動機の制
動力を測定するときに、制動力を算出する際に必要とな
るエレベータの慣性能率を過去に測定したかどうかを自
動的に判するので、作業者が慣性能率のデータを確認
したときに必要なデータを見落として、既に測定済の慣
性能率のデータを再測定して時間を浪費したり、データ
を検索するのに多くの時間を費やしてしまうこともなく
なり、作業性を良いものとすることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
によって説明する。図1は本発明の一実施の形態による
エレベータ制動機の制動力測定装置の構成図である。昇
降路5の上部に位置する機械室1には電動機2や制動機
4などが設置され、電動機2および制動機4に図示しな
い主電源から電力を供給すると、制動機4が開放される
と共に電動機2が起動されて、電動機2の回転軸3と一
体的な巻上シーブ9が回転するようになっている。昇降
路5内に位置した乗りかご6とつり合いおもり7は主ロ
ープ8によって連結され、この主ロープ8を巻上シーブ
9とビームプーリ10に巻掛けており、乗りかご6とつ
り合いおもり7からは補償ロープ11が垂下されてい
る。巻上シーブ9が回転すると、主ロープ8を介して昇
降路5内を乗りかご6とつり合いおもり7が昇降するよ
うになっている。
【0008】また、巻上シーブ9の速度を検出してエレ
ベータ速度データを出力する速度検出手段12と、電動
機2の電機子電流を検出して電流データを出力する電流
検出手段13と、電動機2の界磁電流を検出して電流デ
ータを出力する電流検出手段14がそれぞれ設けられ、
これら速度検出手段12および電流検出手段13,14
は、データを処理するデータ処理部15と、速度データ
や電流データを演算処理するパーソナルコンピュータ1
6とに接続されている。
【0009】データ処理部15はマイクロコンピュータ
17を有しており、このマイクロコンピュータ17によ
って、速度検出手段12から出力されるエレベータ速度
データと電流検出手段13,14から出力される電動機
2の電流データとをパーソナルコンピュータ16に送信
するタイミングの制御や送受信の切替制御を行なってい
る。また、パーソナルコンピュータ16には、個々のエ
レベータにおける巻上シーブ9の直径、乗りかご6の重
量、つり合いおもり7の重量等のエレベータの慣性能率
や、制動機4の制動力を算出するために必要な諸定数デ
ータを各エレベータ毎に記憶しているデータベース18
を有している。このデータベース18は、図2および図
3に示すように納入先番号21a、エレベータの製造番
号22a、制動機4の型式23a、巻上シーブ9の直径
24a、乗りかご6の積載荷重25a、慣性能率データ
26aなどによって構成されており、それぞれのエレベ
ータ毎に登録されている。図2の慣性能率26aは未測
定となっており、過去に慣性能率を測定していないこと
を示しており、図3の慣性能率26aはデータが記憶さ
れているので、過去に慣性能率を測定していることを示
す。
【0010】また、パーソナルコンピュータ16には、
測定の際にデータベース18から読み出した巻上シーブ
9の直径、乗りかご6の重量、つり合いおもり7の重
量、エレベータの慣性能率などの諸定数、測定したエレ
ベータ速度データ、電流データを記憶する記憶部19
と、この記憶部19に記憶されたデータに基づいて制動
機4の制動力を算出するために必要な定数である慣性能
率を算出し、乗りかご6とつり合いおもり7の不平衡ト
ルクや電動機2に発生する電気的制動力を算出すると共
に制動機4の制動力を算出する演算部20と、この演算
部20の算出結果などを表示する表示部21とを有して
いる。
【0011】次に、図4および図5に示すフローチャー
トによって制動機4の制動力を算出する処理手順を説明
する。先ず、ステップS1でパーソナルコンピュータ1
6を操作してデータベース18の中から、測定するエレ
ベータの諸定数である巻上シーブ9の直径、乗りかご6
の重量、慣性能率などのデータを読み出し、ステップS
2で、読み出したデータの中に測定するエレベータの慣
性能率のデータがあるかどうかを判する。ここで、図
2に示す慣性能率26aのように慣性能率のデータがな
いのであれば、過去に慣性能率を測定していないので、
次のステップS3でエレベータの主電源を遮断し、ステ
ップS4で制動機4を開放する。すると、乗りかご6は
つり合いおもり7より軽いため、不平衡トルクが生じて
乗りかご6は加速しながら上昇する。ステップS5で
は、このときのエレベータの速度を速度検出手段12で
検出し、その速度データをデータ処理部15のマイクロ
コンピュータ17を介してパーソナルコンピュータ16
へ伝送し、このパーソナルコンピュータ16の記憶部1
9に速度データとして記憶する。ステップS6では、制
動機4の開放時間が予め設定している所定の時間になっ
たかどうかを判し、所定の時間を経過するまではステ
ップS5のエレベータ速度の検出を継続するが、所定時
間に達したならばステップS7で制動機4の開放を止め
てエレベータを停止させる。
【0012】その後、ステップS8で記憶部19に記憶
したエレベータの速度データに基づいて、パーソナルコ
ンピュータ16の演算部20でエレベータの加速度を算
出する。ステップS9では、ステップS1で読み出した
測定対象となるエレベータの諸定数である巻上シーブ9
の直径、乗りかご6の重量、つり合いおもり7の重量な
どのデータを用いてパーソナルコンピュータ16の演算
部20でエレベータの不平衡トルクを次の数式(1)か
ら算出する。 Tub=D・(Mcw−Mc)/2 (1) ここで、Tubは不平衡トルク、Dは巻上シーブ9の直
径、Mcwはつり合いおもり7の重量、Mcは乗りかご
6の重量を示している。
【0013】次にステップS10では、ステップS8で
算出した加速度とステップS9で算出した不平衡トルク
から、演算部20でエレベータの慣性能率を次の数式
(2)によって算出する。 J=Tub/(dω/dt) (2) ここで、Jはエレベータの慣性能率、ωは巻上シーブ9
の回転角速度、Tubは不平衡トルク、tは速度データ
測定時間間隔を示している。
【0014】このようにして算出した慣性能率は、図5
に示したステップS11で、パーソナルコンピュータ1
6の記憶部19内のデータベース18に記憶し、その後
ステップS12でエレベータの主電源を投入し、慣性能
率の測定を終了する。このように慣性能率を過去に測定
していない場合は、ステップS1〜ステップS12を実
施して慣性能率の測定を行なう。
【0015】一方、ステップS2における判断において
慣性能率を過去に測定している場合は、図3に示す慣性
能率26aのように慣性能率のデータが既に入力されて
いるので、これを見い出した後、図5に示したステップ
S13でエレベータを所定の速度で下降運転する。この
ときステップS14では、速度検出手段12でエレベー
タの速度を検出してその速度データをデータ処理部15
のマイクロコンピュータ17を介してパーソナルコンピ
ュータ16へ伝送すると共に、電流検出手段13,14
で電動機2の電機子電流および界磁電流を検出してこれ
ら電流データをデータ処理部15のマイクロコンピュー
タ17を介してパーソナルコンピュータ16へ伝送し、
パーソナルコンピュータ16の記憶部19に記憶する。
【0016】その後、ステップS15でエレベータを非
常停止させ、ステップS16で、記憶部19に記憶した
速度データに基づいて演算部20で非常停止時のエレベ
ータの減速度を算出し、ステップS17で記憶部19に
記憶した界磁電流データに基づいて界磁磁束を求めると
共に、記憶部19に記憶した電機子電流データに基づい
て電動機2に発生した電気的制動力を次の数式(3)に
より算出して、その算出結果を記憶部19に記憶する。 Tdy=ζφ・Ia (3) ここで、Tdyは電動機2に発生した電気的制動力、ζ
φは電動機2の界磁磁束、Iaは電動機2の電機子電流
を示している。
【0017】次にステップS18で、記憶部19に記憶
したエレベータの加速度データと電気的制動力データに
基づいて、制動機4の制動力を次の数式(4)から算出
し、その算出結果を記憶部19に記憶する。 Tb=J(dω/dt)+Tdy−Tub (4) ここで、Tbは制動機4の制動力、Jはエレベータの慣
性能率、Tdyは電動機2で発生した電気的制動力、T
ubは不平衡トルクを示している。
【0018】次にステップS19で、パーソナルコンピ
ュータ16の記憶部19に記憶した制動機4の制動力を
予め定められた規定の制動力と比較し、制動機4の制動
力が正常であるかどうかを判定する。このステップS1
9で、規定の制動力より大きく正常であるなら、ステッ
プS20で表示部20に正常との判定結果を図6の表示
画面のように表示し、ステップS19で規定の制動力よ
り小さく正常でないなら、ステップS20で調査要との
判定結果を図7の表示画面のように表示部20に表示す
る。ここで、図6および図7の曲線27a,27bは非
常停止指令が発せられてからの巻上シーブ9の速度変化
を示し、曲線28a,28bは制動機4の制動力を示し
ており、また、破線29a,29bは制動力の規定値で
あり、表示30a,30bは制動機4の制動力の判定結
果を示している。
【0019】上述の説明から分かるように、マイクロコ
ンピュータ17およびパーソナルコンピュータ16によ
り、対象となるエレベータ既に測定した慣性能率のデ
ータがあるかどうかを自動的に判断する判断手段と、こ
の判断手段による結果が慣性能率のデータがない場合、
制動機を開放しその後に停止させて得たデータおよびそ
のエレベータの諸定数に基づいて不平衡トルクおよび慣
性能率を演算する演算手段と、この演算手段の演算結果
を記憶する記憶手段と、判断手段の判断結果に拘わらず
エレベータを下降運転しその後に停止させたときのデー
タから電動機に発生した電気的制動力を演算し、この電
気的制動力と慣性能率と不平衡トルクから制動機の制動
力を演算する演算手段とを設けたため、一度、慣性能率
を測定したなら、そのデータを記憶部19で示す記憶手
段に記憶するようにし、次に制動機4の制動力を測定す
るときに、制動力を算出する際に必要となるエレベータ
の慣性能率を過去に測定したかどうかを自動的に判
るので、作業者が慣性能率のデータを確認したときに必
要なデータを見落として、既に測定済の慣性能率のデー
タを再測定して時間を浪費したり、データを検索するの
に多くの時間を費やしてしまうこともなくなる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように本発明によるエレベ
ータ制動機の制動力測定装置は、一度測定した慣性能率
を記憶手段に記憶するようにしたため、次に制動機の制
動力を測定するときに、制動力を算出する際に必要とな
るエレベータの慣性能率を過去に測定したかどうかを自
動的に判して引用することができ、作業者が慣性能率
のデータを確認したときに必要なデータを見落として、
既に測定済の慣性能率のデータを再測定して時間を浪費
したり、データを検索するのに多くの時間を費やしてし
まうこともなくなり、作業効率を向上させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態によるエレベータ制動機
の制動力測定装置の構成図である。
【図2】図1に示した制動力測定装置のデータベースの
構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示した制動力測定装置のデータベースの
他の構成を示す斜視図である。
【図4】図1に示した制動力測定装置による測定手順の
一部を示すフローチャートである。
【図5】図4に示したフローチャートに続く他の部分を
示すフローチャートである。
【図6】図1に示した制動力測定装置の表示画面の一例
を示す平面図である。
【図7】図1に示した制動力測定装置の表示画面の他の
例を示す平面図である。
【符号の説明】
2 電動機 4 制動機 6 乗りかご 7 つり合いおもり 8 主ロープ 9 巻上シーブ 12 速度検出装置 13,14 電流検出手段 16 パーソナルコンピュータ 17 マイクロコンピュータ 19 記憶部 20 演算部 21 表示部 28a,28b 制動力
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 矢川 昌二 東京都千代田区神田錦町1丁目6番地 株式会社日立ビルシステム内 (56)参考文献 特開 平8−208139(JP,A) 特開 平6−263353(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B66B 5/00 B66B 1/32

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乗りかごおよびつり合いおもりを懸垂す
    る主ロープが巻掛けられる巻上シーブと、この巻上シー
    ブに制動力を付与する制動機と、上記巻上シーブに駆動
    力を付与する電動機を有し、上記制動機の制動力を算出
    するエレベータ制動機の制動力測定装置において、対象
    となるエレベータの既に測定した慣性能率を記憶する記
    憶手段と、この記憶手段に上記エレベータの上記慣性能
    率のデータがあるかどうかを自動的に判断する判断手段
    とを設けたことを特徴とするエレベータ制動機の制動力
    測定装置。
  2. 【請求項2】 乗りかごおよびつり合いおもりを懸垂す
    る主ロープが巻掛けられる巻上シーブと、この巻上シー
    ブに制動力を付与する制動機と、上記巻上シーブに駆動
    力を付与する電動機を有し、上記制動機の制動力を算出
    するエレベータ制動機の制動力測定装置において、対象
    となるエレベータ既に測定した慣性能率を記憶する記
    憶手段と、この記憶手段に上記エレベータの上記慣性能
    のデータがあるかどうかを自動的に判断する判断手段
    と、この判断手段による結果慣性能率のデータがない
    と判断された場合、上記制動機を開放しその後に停止さ
    せて得たデータおよびその上記エレベータの諸定数に基
    づいて不平衡トルクおよび慣性能率を演算し、その演算
    結果が上記記憶手段に記憶される演算手段と、上記判断
    手段の判断結果に拘わらず上記エレベータを下降運転し
    その後に停止させたときのデータから上記電動機に発生
    した電気的制動力を演算し、この電気的制動力と上記慣
    性能率と上記不平衡トルクから上記制動機の制動力を演
    算する演算手段とを設けたことを特徴とするエレベータ
    制動機の制動力測定装置。
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