JP3550003B2 - エレベータの制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、永久磁石回転子の同期電動機を動力とするエレベータの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
巻上機を永久磁石回転子の同期電動機で駆動するようにしたエレベータでは、永久磁石回転子同期電動機の磁極位置を回転センサで検出してベクトル制御にて乗りかごの速度やトルクを制御している。すなわち、永久磁石回転子同期電動機の回転軸に回転センサを取り付けて磁極位置を検出し、永久磁石回転子同期電動機の相電流を電流センサを用いて検出する。これらの値よりベクトル制御することにより永久磁石回転子同期電動機を回転させてエレベータの制御を行うようにしている。
【0003】
ここで、永久磁石回転子同期電動機は、電機子に三相交流を通ずると電機子反作用による磁束Φaが生じる。図16は、永久磁石回転子同期電動機の特性の説明図であり、図16(a)は同期電動機の回転子と回転磁界との相対位置の説明図、図16(b)はトルクの特性図である。
【0004】
図16(a)において、界磁極である永久磁石回転子が同期速度で回転していれば、電機子電流Iの分布も界磁束Φも一定の関係位置を保ったまま同期速度で回転する。すなわち、電機子電流Iによる電機子磁束Φaと永久磁石回転子による界磁束Φとは、一定の位相差γを保って回転する。そして、電機子電流Iと界磁速Φとの間にフレミング左手の法則により力が働き、電機子が固定されていることから回転子にA方向に一定トルクが発生する。
【0005】
界磁束Φと電機子磁束Φaとの軸間の位相差をγとし比例定数をkとすると、トルクτは次式(1)で表現される。
【0006】
τ=kΦIsinγ …(1)
従って、図16(b)に示すように、γ=90°の時にトルクは最大となり、γ=0°またはγ=180°の時にトルクは最小となる。
【0007】
次に、磁極位置と電機子インダクタンスの関係について、電流ベクトルの大きさを一定として、等価交換巻線と鎖交する磁束の関係を説明する。磁極軸と電機子磁束との相対角度がγの時の等価交換巻線と鎖交する全磁束Φoは、次式(2)となる。但し、Φは永久磁石回転子による界磁束、Φaは電機子電流Iにより作られる磁束である。
【0008】
Φo=Φa+Φcosγ …(2)
(2)式は磁気飽和を無視した時の関係であるが、磁気飽和を考慮しても磁束Φoの相対的大小関係は変わらない。この関係を図17に示す。図17(a)は全磁束Φoと磁極位置γとの関係図であり、図17(b)は電機子インダクタンスLと磁極位置γとの関係図である。実際は、電機子インダクタンスLは鉄心の磁気飽和のために鎖交磁束の大きい時は小さくなり、磁束の小さい時は大きくなる。結果として図17(b)に示すように、電機子インダクタンスLは磁極位置γによって変化する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このようなエレベータの制御装置において、永久磁石回転子同期電動機の回転センサが故障した場合、ベクトル制御が不能となりエレベータは停止したまま動けなくなる。例えば、回転センサがパルスジェネレータの場合、発光ダイオードやフォトトランジスタが故障するなど永久磁石回転子同期電動機の磁極位置が検出できなくなったときには、ベクトル制御が不能となりエレベータは停止したまま動けなくなる。ベクトル制御ができなくなれば、乗客を缶詰めにしたまま救出ができなくなってしまう。
【0010】
また、磁極位置がわからずに救出運転を目的として通電した場合には、磁極位置によっては、永久磁石回転子同期電動機が逆転したり、トルクが出せずに乗りかごをつり落としたりすることが考えられる。
【0011】
本発明の目的は、永久磁石回転子同期電動機の回転センサが故障した場合であっても、磁極位置と電機子インダクタンスとの関係を利用して磁極位置を推定してベクトル制御を可能とし、回転センサがなくても救出運転ができるエレベータの制御装置を得ることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係わるエレベータの制御装置は、乗りかごの巻上機を駆動する永久磁石回転子同期電動機の磁極位置を検出する回転センサと、前記永久磁石回転子同期電動機の相電流を検出する相電流センサと、前記乗りかごの位置を検出するかご位置センサと、前記磁極位置と前記相電流および乗りかご位置に基づいて前記乗りかごの昇降運転のための前記永久磁石回転子同期電動機への電圧指令を演算するとともに電磁ブレーキにオンオフ指令を出力する演算処理装置と、前記演算処理装置からの電圧指令に基づいて前記永久磁石回転子同期電動機を駆動する電動機駆動制御装置とを備えたエレベータの制御装置において、前記乗りかごの移動速度を検出するかご速度センサを有し、前記演算処理装置は、前記回転センサからの磁極位置の検出が不能となったときは、前記電磁ブレーキにより前記永久磁石回転子同期電動機の軸を固定して前記永久磁石回転子同期電動機の電機子インダクタンスから前記磁極位置を推定し、前記電磁ブレーキを解除して推定された磁極位置に基づいて救出運転を行い、その救出運転開始後に前記かご速度センサで検出された乗りかごの移動速度が所定値より小さいときは救出運転を継続し、乗りかごの移動速度が所定値より大きくなったときは前記電磁ブレーキを作動させてエレベータを停止させるようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明に係わるエレベータの制御装置は、乗りかごの巻上機を駆動する永久磁石回転子同期電動機の磁極位置を検出する回転センサと、前記永久磁石回転子同期電動機の相電流を検出する相電流センサと、前記乗りかごの位置を検出するかご位置センサと、前記磁極位置と前記相電流および乗りかご位置に基づいて前記乗りかごの昇降運転のための前記永久磁石回転子同期電動機への電圧指令を演算するとともに電磁ブレーキにオンオフ指令を出力する演算処理装置と、前記演算処理装置からの電圧指令に基づいて前記永久磁石回転子同期電動機を駆動する電動機駆動制御装置とを備えたエレベータの制御装置において、前記乗りかごの進行方向を検出する進行方向センサを有し、前記演算処理装置は、前記回転センサからの磁極位置の検出が不能となったときは、前記電磁ブレーキにより前記永久磁石回転子同期電動機の軸を固定して前記永久磁石回転子同期電動機の電機子インダクタンスから前記磁極位置を推定し、その磁極位置に基づいて前記乗りかごを静止制御した後に前記電磁ブレーキを解除し、前記進行方向センサにより前記永久磁石回転子同期電動機の回転方向が回転指令方向と同一方向であると検知されたときは推定した磁極位置に基づいて救出運転を行い、前記永久磁石回転子同期電動機の回転方向が回転指令方向と反対方向であると検知されたときは前記電磁ブレーキを作動させてエレベータを停止させるようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明に係わるエレベータの制御装置は、乗りかごの巻上機を駆動する永久磁石回転子同期電動機の磁極位置を検出する回転センサと、前記永久磁石回転子同期電動機の相電流を検出する相電流センサと、前記乗りかごの位置を検出するかご位置センサと、前記磁極位置と前記相電流および乗りかご位置に基づいて前記乗りかごの昇降運転のための前記永久磁石回転子同期電動機への電圧指令を演算するとともに電磁ブレーキにオンオフ指令を出力する演算処理装置と、前記演算処理装置からの電圧指令に基づいて前記永久磁石回転子同期電動機を駆動する電動機駆動制御装置とを備えたエレベータの制御装置において、エレベータの乗りかごの荷重を検出するかご荷重センサを有し、前記演算処理装置は、前記回転センサからの磁極位置の検出が不能となったときは、前記電磁ブレーキにより前記永久磁石回転子同期電動機の軸を固定して前記永久磁石回転子同期電動機の電機子インダクタンスから前記磁極位置を推定し、前記かご荷重センサで検出されたかご荷重が所定値より小さいときは上昇方向の運転とし、かご荷重が所定値より大きいときは下降方向の運転とし、この上昇方向の運転または下降方向の運転の判定後に、前記電磁ブレーキを解除して推定された磁極位置に基づいて救出運転を行ようにしたことを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係わるエレベータの制御装置の構成図である。エレベータの乗りかご5とカウンターウエート6とは、主ロープ10で接続されメインシーブ4につるべ式に吊られており、メインシーブ4は永久磁石回転子同期電動機3からの動力で駆動される。これにより、乗りかご5を昇降し、乗りかご5を所定のフロア12に停止させて乗客が乗り降りできるようにする。
【0023】
永久磁石回転子同期電動機3は、演算処理装置1からの電圧指令に基づいて電動機駆動装置2で駆動される。すなわち、演算処理装置1には、かご位置センサ13からのかご位置信号、回転センサ7からの磁極位置、永久磁石回転子同期電動機の相電流センサ8からの相電流が入力され、これらのデータをメモり11に保存すると共に、乗りかご5を所定のフロア12に昇降制御するための電圧指令を電動機駆動装置2に出力する。また、演算処理装置1は、緊急事態には電磁ブレーキ9に指令を出してエレベータに制動をかけられるようになっている。
【0024】
すなわち、演算処理装置1は、乗りかご5の昇降のための電圧指令値を電動機駆動装置2に与える。電動機駆動装置2はその電圧指令値に基づいて永久磁石回転子同期電動機3を駆動する。永久磁石回転子同期電動機3の回転軸はメインシーブ4に接続されており、永久磁石回転子同期電動機3により駆動される。永久磁石回転子同期電動機3のU相には電流センサ8uが取り付けられ、その電流センサ8uで検出されたU相電流iuは演算処理装置1に入力され、同様に、永久磁石回転子同期電動機3のW相には電流センサ8wが取り付けられ、その電流センサ8wで検出されたW相電流iwは演算処理装置1に入力される。
【0025】
そして、メインシーブ4は電磁ブレーキ9により制動をかけられるようになっており、演算処理装置1により電磁ブレーキ9に指令が出力され、ブレーキのオンオフが行われる。
【0026】
ここで、本発明においては、演算処理装置1により、かご位置センサ13からのかご位置信号、回転センサ7からの磁極位置、永久磁石回転子同期電動機の相電流センサ8からの相電流に基づいて乗りかご5の昇降制御中に、回転センサ7が故障した場合には、演算処理装置は磁極位置推定のための電圧指令値Vθ1*を電動機駆動装置2に出力し、永久磁石回転子同期電動機4の電機子インダクタンスLを同定して磁極位置を推定する。
【0027】
図2に、永久磁石回転子同期電動機3のシステムモデル図を示す。図2中のRは永久磁石回転子同期電動機3の巻線抵抗分を表し、Lは永久磁石回転子同期電動機3の電機子インダクタンスを表し、Vθ1*は磁極位置推定のための電圧指令、iθ1は磁極位置推定のための電圧指令Vθ1*に対する永久磁石回転子同期電動機3の電機子電流である。図3は永久磁石回転子同期電動機3の電機子インダクタンスLを測定するために流す電流指令i*の一例である。横軸は時間tであり、縦軸は電機子を流れる電流ベクトルの大きさを表している。
【0028】
次に動作について説明する。図4は、回転センサ7が故障した場合の救出運転手順を示している。エレベータが回転センサ7の故障により停止したとすると、S101にて電機子電流の測定を行う。すなわち、U相電流iuθ1およびW相電流iwθ1を検出する。この場合、メインシーブ4は電磁ブレーキ9により固定され永久磁石回転子同期電動機3の軸は固定される。磁極位置は電機子電流ベクトルをある方向に固定して電動機の電機子電流値を測定する。
【0029】
図5に示すように、演算処理装置1はある方向θ1に図3のようなステップ状の電流指令値i*を流すように電動機駆動装置2へ電圧指令値Vθ1*(Vuθ1*、Vvθ1*、Vwθ1*)を与える。電動機駆動装置2は永久磁石回転子同期電動機3に対して電流を通電して、U相電流センサ8uおよびW相電流センサ8wにより、それぞれの相電流iuθ1およびiwθ1を△tの時間間隔で検出して、各時刻における電圧指令値Vθ1*(Vuθ1*、Vvθ1*、Vwθ1*)とそれに対する相電流iθ1(iuθ1、ivθ1、iwθ1)をメモリ11に記録する。
【0030】
次にS102へ進み、電機子電流と電圧値から電機子インダクタンスLを同定し、磁極の電機子電流ベクトルに対する相対角度を推定する。記録した時系列データから、例えば、最小二乗法により電機子インダクタンスLθ1を同定する。そして、S103へ進み、同定した電機子インダクタンスLθ1より永久磁石回転子同期電動機3の磁極位置は、図6に示すようにγ=γ1あるいはγ1’のいずれかであると推定される。ここで、γは図5に示すように不明の磁極の軸に対する電流ベクトルの相対角度を表す。
【0031】
次にS104へ進み、電流ベクトルの方向を変えて電機子電流を測定する。すなわち、演算処理装置1は、ある方向θ1に△θをプラスした方向θ1+Δθに対して、図3のようなステップ状の電流指令i*を流すように電動機駆動装置2へ電圧指令値Vθ1+△θ*(Vuθ1+△θ*、Vvθ1+△θ*、Vwθ1+△θ*)を与える。電動機駆動装置2は永久磁石回転子同期電動機3に対して電流を通電して、U相電流センサ8uおよびW相電流センサ8wにより、それぞれの相電流iuθ1+△θおよびiWθ1+△θを△tの時間間隔で検出して、各時刻における電圧指令値Vθ1+△θ*(Vuθ1+△θ*、Vvθ1+△θ*、Vwθ1+△θ*)とそれに対する相電流iθ1+△θ(iuθ1+△θ、ivθ1+△θ、iwθ1+△θ)をメモリ11に記録する。
【0032】
次に、S105へ進み電機子インダクタンスを同定する。記録した時系列データから、例えば、最小二乗法により電機子インダクタンスLθ1+△θを同定できる。次にS106に進み同定した電機子インダクタンスの値を比較する。比較の結果、Lθ1>Lθ1+△θであればS107aに進み磁極位置γ=γ1と推定する。一方、Lθ1<Lθ1+△θであればS107bに進みγ=γ1’と推定される。
【0033】
次にS108に進み救出運転に入る。推定した磁極位置γを用いて電機子電流ベクトルを磁極位置から90°進めて回転させるように制御する。演算処理装置1は電磁ブレーキ9を解除してエレベータを起動する。演算処理装置1は、オープンループ制御で永久磁石回転子同期電動機3を乗りかご5が下降するように回転させる。次にS109に進み着床したかを判断をする。かご位置センサ13により乗りかご5の位置を検出して、着床していなければS108へ戻り運転を継続する。乗りかご5がフロア12に到着すると、S110へ進みエレベータを停止させる。永久磁石回転子同期電動機3を停止させ、電磁ブレーキ9を作動させてメインレシーブ4を固定する。乗りかご5はドアを開いて乗客を降ろし救出運転を終了する。
【0034】
以上説明したように、第1の実施の形態では永久磁石回転子同期電動機3の電機子インダクタンスLの変化から磁極位置を推定するので、回転センサ7が故障した場合であっても永久磁石回転子同期電動機3のベクトル制御を可能とし、救出運転を行うことができる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図7は本発明の第2の実施の形態に係わるエレベータの制御装置の構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、乗りかご5の移動速度を検出するかご速度センサ14を設け、演算処理装置1は、かご速度センサ14で検出された乗りかご5の移動速度が所定値より小さいときは救出運転を行い、所定値より大きいときはエレベータを停止させるようにしたものである。
【0036】
すなわち、演算処理装置1は、推定した磁極位置を基にエレベータの救出運転をする際に、乗りかご5のかご速度センサ14からの速度信号が所定の最大速度基準値より大きい速度である場合にはエレベータを停止させる。これにより、トルク制御がうまくいかなかった場合の乗りかご5の吊り落としを防止する。
【0037】
図7において、エレベータの乗りかご5とカウンターウエート6とは、主ロープ10で接続されメインシーブ4につるべ式に吊られており、メインシーブ4は永久磁石回転子同期電動機3からの動力で駆動される。これにより、乗りかご5を昇降し、乗りかご5を所定のフロア12に停止させて乗客が乗り降りできるようにする。
【0038】
永久磁石回転子同期電動機3は、演算処理装置1からの電圧指令に基づいて電動機駆動装置2で駆動される。すなわち、演算処理装置1には、かご位置センサ13からのかご位置信号、かご速度センサ14からのかご速度信号、回転センサ7からの磁極位置、永久磁石回転子同期電動機の相電流センサ8からの相電流が入力され、これらのデータをメモり11に保存すると共に、乗りかご5を所定のフロア12に昇降制御するための電圧指令を電動機駆動装置2に出力する。また、演算処理装置1は、緊急事態には電磁ブレーキ9に指令を出してエレベータに制動をかけられるようになっている。
【0039】
すなわち、演算処理装置1は、乗りかご5の昇降のための電圧指令値を電動機駆動装置2に与える。電動機駆動装置2はその電圧指令値に基づいて永久磁石回転子同期電動機3を駆動する。永久磁石回転子同期電動機3の回転軸はメインシーブ4に接続されており、永久磁石回転子同期電動機3により駆動される。
【0040】
永久磁石回転子同期電動機3のU相には電流センサ8uが取り付けられ、その電流センサ8uで検出されたU相電流iuは演算処理装置1に入力され、同様に、永久磁石回転子同期電動機3のW相には電流センサ8wが取り付けられ、その電流センサ8wで検出されたW相電流iwは演算処理装置1に入力される。さらに、かご速度センサ14は、かご位置センサ13の出力を微分して乗りかご5のかご速度Vcを検出し演算処理装置1に入力している。
【0041】
そして、メインシーブ4は電磁ブレーキ9により制動をかけられるようになっており、演算処理装置1により電磁ブレーキ9に指令が出力され、ブレーキのオンオフが行われる。
【0042】
ここで、本発明においては、演算処理装置1により、かご位置センサ13からのかご位置信号、回転センサ7からの磁極位置、永久磁石回転子同期電動機の相電流センサ8からの相電流に基づいて乗りかご5の昇降制御中に、回転センサ7が故障した場合には、演算処理装置は磁極位置推定のための電圧指令値Vθ1*を電動機駆動装置2に出力し、永久磁石回転子同期電動機4の電機子インダクタンスLを同定して磁極位置を推定する。そして、その磁極位置に基づいて救出運転を行うが、その際に乗りかご5の速度が所定の最大速度基準値より小さい場合には着床制御を行い、乗りかご5の速度が所定の最大速度基準値より大きい速度である場合にはエレベータを停止させる。これにより、推定した磁極位置の誤差により、トルク制御がうまくいかなかった場合の乗りかご5の吊り落としを防止する。
【0043】
次に、動作について説明する。図8は第2の実施の形態における回転センサ故障時の救出運転の手順を示すフローチャートである。エレベータが回転センサ7の故障により停止したとすると、S101にて電機子電流の測定を行う。すなわち、U相電流iuθ1およびW相電流iwθ1を検出する。この場合、メインシーブ4は電磁ブレーキ9により固定され永久磁石回転子同期電動機3の軸は固定される。磁極位置は電機子電流ベクトルをある方向に固定して電動機の電機子電流値を測定する。
【0044】
図5に示すように、演算処理装置1はある方向θ1に図3のようなステップ状の電流指令値i*を流すように電動機駆動装置2へ電圧指令値Vθ1*(Vuθ1*、Vvθ1*、Vwθ1*)を与える。電動機駆動装置2は永久磁石回転子同期電動機3に対して電流を通電して、U相電流センサ8uおよびW相電流センサ8wにより、それぞれの相電流iuθ1およびiwθ1を△tの時間間隔で検出して、各時刻における電圧指令値Vθ1*(Vuθ1*、Vvθ1*、Vwθ1*)とそれに対する相電流iθ1(iuθ1、ivθ1、iwθ1)をメモリ11に記録する。
【0045】
次にS102へ進み、電機子電流と電圧値から電機子インダクタンスLを同定し、磁極の電機子電流ベクトルに対する相対角度を推定する。記録した時系列データから、例えば、最小二乗法により電機子インダクタンスLθ1を同定する。そして、S103へ進み、同定した電機子インダクタンスLθ1より永久磁石回転子同期電動機3の磁極位置は、図6に示すようにγ=γ1あるいはγ1’のいずれかであると推定される。ここで、γは図5に示すように不明の磁極の軸に対する電流ベクトルの相対角度を表す。
【0046】
次にS104へ進み、電流ベクトルの方向を変えて電機子電流を測定する。すなわち、演算処理装置1は、ある方向θ1に△θをプラスした方向θ1+Δθに対して、図3のようなステップ状の電流指令i*を流すように電動機駆動装置2へ電圧指令値Vθ1+△θ*(Vuθ1+△θ*、Vvθ1+△θ*、Vwθ1+△θ*)を与える。電動機駆動装置2は永久磁石回転子同期電動機3に対して電流を通電して、U相電流センサ8uおよびW相電流センサ8wにより、それぞれの相電流iuθ1+△θおよびiWθ1+△θを△tの時間間隔で検出して、各時刻における電圧指令値Vθ1+△θ*(Vuθ1+△θ*、Vvθ1+△θ*、Vwθ1+△θ*)とそれに対する相電流iθ1+△θ(iuθ1+△θ、ivθ1+△θ、iwθ1+△θ)をメモリ11に記録する。
【0047】
次に、S105へ進み電機子インダクタンスを同定する。記録した時系列データから、例えば、最小二乗法により電機子インダクタンスLθ1+△θを同定できる。次にS106に進み同定した電機子インダクタンスの値を比較する。比較の結果、Lθ1>Lθ1+△θであればS107aに進み磁極位置γ=γ1と推定する。一方、Lθ1<Lθ1+△θであればS107bに進みγ=γ1’と推定される。
【0048】
次に、S108に進み救出運転に入る。この救出運転では、推定した磁極位置γを用いて電機子電流ベクトルを磁極位置から90°進めて回転するように制御する。演算処理装置1は電磁ブレーキ9を解除してエレベータを起動する。演算処理装置1はオープンループ制御で永久磁石回転子同期電動機3を乗りかご5が下降するように回転させる。
【0049】
次にS111に進み、かご速度センサ14によりかご速度Vcを検出し、S112にて、かご速度Vcと最大かご速度基準値VLMとを比較してかご速度Vcが最大かご速度基準VLMより小さい場合にはS109へ進む。例えば、推定した磁極位置に誤差があり、必要なトルクが出せずにかごを吊り落とす等かご速度Vcが最大かご速度基準VLMより大きい場合にはS110へ進み、演算処理装置1は電磁ブレーキ9を作動させ制動をかけて乗りかご5を停止させる。
【0050】
正常時は、S109において乗りかご5が着床したかの判断をする。かご位置センサ13により乗りかご5の位置を検出して、着床していなければS108へ戻り運転を継続する。乗りかご5がフロア12に到着するとS110へ進みエレベータを停止させる。永久磁石回転子同期電動機3を停止させ、電磁ブレーキ9を作動させてメインシーブ4を固定する。乗りかご5はドアを開いて乗客を降ろし救出運転を終了する。
【0051】
以上説明したように、第2の実施の形態では、永久磁石回転子同期電動機3の磁極位置推定に誤差を生じ十分なトルクが出せなかった場合であっても、かごの異常速度を検出してブレーキをかけるので、乗りかご5の吊り落としを防止することができる。
【0052】
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図9は本発明の第3の実施の形態に係わるエレベータの制御装置の構成図である。この第3の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、乗りかご5の進行方向を検出する進行方向センサ15を設け、演算処理装置1は、永久磁石回転子同期電動機3の回転方向が回転指令方向と反対方向に回転したことを検知したときはエレベータを停止させるようにしたものである。
【0053】
すなわち、推定した磁極位置を基にエレベータの救出運転をする際に、乗りかご5の進行方向センサ15からのからの信号より、乗りかご5の進行方向を検出して、推定した磁極位置の誤差から永久磁石回転子同期電動機3が起動時に演算処理装置1の回転指令方向に対して反対方向に回転したときは、エレベータを停止させる。
【0054】
図9において、エレベータの乗りかご5とカウンターウエート6とは、主ロープ10で接続されメインシーブ4につるべ式に吊られており、メインシーブ4は永久磁石回転子同期電動機3からの動力で駆動される。これにより、乗りかご5を昇降し、乗りかご5を所定のフロア12に停止させて乗客が乗り降りできるようにする。
【0055】
永久磁石回転子同期電動機3は、演算処理装置1からの電圧指令に基づいて電動機駆動装置2で駆動される。すなわち、演算処理装置1には、かご位置センサ13からのかご位置信号、進行方向センサ15からの乗りかご5の信号方向信号、回転センサ7からの磁極位置、永久磁石回転子同期電動機の相電流センサ8からの相電流が入力され、これらのデータをメモり11に保存すると共に、乗りかご5を所定のフロア12に昇降制御するための電圧指令を電動機駆動装置2に出力する。また、演算処理装置1は、緊急事態には電磁ブレーキ9に指令を出してエレベータに制動をかけられるようになっている。
【0056】
すなわち、演算処理装置1は、乗りかご5の昇降のための電圧指令値を電動機駆動装置2に与える。電動機駆動装置2はその電圧指令値に基づいて永久磁石回転子同期電動機3を駆動する。永久磁石回転子同期電動機3の回転軸はメインシーブ4に接続されており、永久磁石回転子同期電動機3により駆動される。
【0057】
永久磁石回転子同期電動機3のU相には電流センサ8uが取り付けられ、その電流センサ8uで検出されたU相電流iuは演算処理装置1に入力され、同様に、永久磁石回転子同期電動機3のW相には電流センサ8wが取り付けられ、その電流センサ8wで検出されたW相電流iwは演算処理装置1に入力される。さらに、進行方向センサ15は、かご位置センサ13の出力の極性を判定して乗りかご5の進行方向を検出し演算処理装置1に入力している。
【0058】
そして、メインシーブ4は電磁ブレーキ9により制動をかけられるようになっており、演算処理装置1により電磁ブレーキ9に指令が出力され、ブレーキのオンオフが行われる。
【0059】
ここで、本発明においては、演算処理装置1により、かご位置センサ13からのかご位置信号、回転センサ7からの磁極位置、永久磁石回転子同期電動機の相電流センサ8からの相電流に基づいて乗りかご5の昇降制御中に、回転センサ7が故障した場合には、演算処理装置は磁極位置推定のための電圧指令値Vθ1*を電動機駆動装置2に出力し、永久磁石回転子同期電動機4の電機子インダクタンスLを同定して磁極位置を推定する。
【0060】
そして、その磁極位置に基づいて救出運転を行うが、その際に乗りかご5の進行方向が回転指令方向と同じ正転方向であるときは、救出運転を行って着床制御を行う。一方、乗りかご5の進行方向が回転指令方向と異なる逆転方向であるときは、エレベータを停止させる。
【0061】
次に、動作について説明する。図10は第3の実施の形態における回転センサ故障時の救出運転の手順を示すフローチャートである。エレベータが回転センサ7の故障により停止したとすると、S101にて電機子電流の測定を行う。すなわち、U相電流iuθ1およびW相電流iwθ1を検出する。この場合、メインシーブ4は電磁ブレーキ9により固定され永久磁石回転子同期電動機3の軸は固定される。磁極位置は電機子電流ベクトルをある方向に固定して永久磁石回転子同期電動機3の電機子電流値を測定する。
【0062】
図5に示すように、演算処理装置1はある方向θ1に図3のようなステップ状の電流指令値i*を流すように電動機駆動装置2へ電圧指令値Vθ1*(Vuθ1*、Vvθ1*、Vwθ1*)を与える。電動機駆動装置2は永久磁石回転子同期電動機3に対して電流を通電して、U相電流センサ8uおよびW相電流センサ8wにより、それぞれの相電流iuθ1およびiwθ1を△tの時間間隔で検出して、各時刻における電圧指令値Vθ1*(Vuθ1*、Vvθ1*、Vwθ1*)とそれに対する相電流iθ1(iuθ1、ivθ1、iwθ1)をメモリ11に記録する。
【0063】
次にS102へ進み、電機子電流と電圧値から電機子インダクタンスLを同定し、磁極の電機子電流ベクトルに対する相対角度を推定する。記録した時系列データから、例えば、最小二乗法により電機子インダクタンスLθ1を同定する。そして、S103へ進み、同定した電機子インダクタンスLθ1より永久磁石回転子同期電動機3の磁極位置は、図6に示すようにγ=γ1あるいはγ1’のいずれかであると推定される。ここで、γは図5に示すように不明の磁極の軸に対する電流ベクトルの相対角度を表す。
【0064】
次にS104へ進み、電流ベクトルの方向を変えて電機子電流を測定する。すなわち、演算処理装置1は、ある方向θ1に△θをプラスした方向θ1+Δθに対して、図3のようなステップ状の電流指令i*を流すように電動機駆動装置2へ電圧指令値Vθ1+△θ*(Vuθ1+△θ*、Vvθ1+△θ*、Vwθ1+△θ*)を与える。電動機駆動装置2は永久磁石回転子同期電動機3に対して電流を通電して、U相電流センサ8uおよびW相電流センサ8wにより、それぞれの相電流iuθ1+△θおよびiWθ1+△θを△tの時間間隔で検出して、各時刻における電圧指令値Vθ1+△θ*(Vuθ1+△θ*、Vvθ1+△θ*、Vwθ1+△θ*)とそれに対する相電流iθ1+△θ(iuθ1+△θ、ivθ1+△θ、iwθ1+△θ)をメモリ11に記録する。
【0065】
次に、S105へ進み電機子インダクタンスを同定する。記録した時系列データから、例えば、最小二乗法により電機子インダクタンスLθ1+△θを同定できる。次にS106に進み同定した電機子インダクタンスの値を比較する。比較の結果、Lθ1>Lθ1+△θであればS107aに進み磁極位置γ=γ1と推定する。一方、Lθ1<Lθ1+△θであればS107bに進みγ=γ1’と推定される。
【0066】
次に、磁極位置γが推定されるとS113へ進み、推定した磁極位置γを用いて電機子電流ベクトルを磁極位置γから90°進めて回転させるように制御し、永久磁石回転子同期電動機3の回転子を静止させる静止制御を行う。そして、S114に進み電磁ブレーキ9を解除する。電磁ブレーキ9を解除するのは、電磁ブレーキ9を解除した場合に永久磁石回転子同期電動機3が正転または逆転のいずれの方向に回転するかを判定するためである。例えば、推定した磁極位置γに誤差があった場合には、その磁極位置γを使用して制御した場合には永久磁石回転子同期電動機3は逆転することが考えられるからである。
【0067】
すなわち、S115にて、進行方向センサ15からの乗りかご5の進行方向を検出し、S116にて、かごの進行方向が演算処理装置1の出した回転指令方向と同じ正転方向であるか否かを判定する。そして、回転指令方向に対し逆転(反対)方向であればS110に進み、演算処理装置1は電磁ブレーキ9を動作させて乗りかご5を停止させる。
【0068】
一方、S116の判定において、正転(同一)方向であればS108に進み救出運転に入る。演算処理装置1はオープンループ制御で永久磁石回転子同期電動機3を乗りかご5が下降するように回転させる。次にS109へ進み乗りかご5が着床したかの判断をする。かご位置センサ13により乗りかご5の位置を検出して、着床していなければS108へ戻り運転を継続する。乗りかご5がフロア12に到着すると、S110へ進みエレベータを停止させる。永久磁石回転子同期電動機3を停止させ、電磁ブレーキ9を作動させてメインシーブ4を固定する。乗りかご5はドアを開いて乗客を降ろし、救出運転を終了する。
【0069】
以上説明したように、第3の実施の形態では、永久磁石回転子同期電動機3の磁極位置推定に誤差を生じ永久磁石回転子同期電動機3が逆転を始めたときに、かごの進行方向を検出して電磁ブレーキ9をかけることにより逆転を防止することができる。
【0070】
次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。図11は本発明の第4の実施の形態に係わるエレベータの制御装置の構成図である。この第4の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、エレベータの乗りかご5の荷重を検出するかご荷重センサ16を設け、演算処理装置1は、かご荷重が所定値より小さいときは上昇方向の運転とし、かご荷重が所定値より大きいときは下降方向の運転とするようにしたものである。
【0071】
すなわち、エレベータの乗りかご5の荷重を検出するかご荷重センサ16からの信号に基づいて、救出運転の際には永久磁石回転子同期電動機3に必要なトルクが小さくてすむ方向に進行方向を決定しエレベータの救出運転を行う。
【0072】
図11において、エレベータの乗りかご5とカウンターウエート6とは、主ロープ10で接続されメインシーブ4につるべ式に吊られており、メインシーブ4は永久磁石回転子同期電動機3からの動力で駆動される。これにより、乗りかご5を昇降し、乗りかご5を所定のフロア12に停止させて乗客が乗り降りできるようにする。
【0073】
永久磁石回転子同期電動機3は、演算処理装置1からの電圧指令に基づいて電動機駆動装置2で駆動される。すなわち、演算処理装置1には、かご位置センサ13からのかご位置信号、かご荷重センサ16からの乗りかご5のかご荷重信号、回転センサ7からの磁極位置、永久磁石回転子同期電動機の相電流センサ8からの相電流が入力され、これらのデータをメモり11に保存すると共に、乗りかご5を所定のフロア12に昇降制御するための電圧指令を電動機駆動装置2に出力する。また、演算処理装置1は、緊急事態には電磁ブレーキ9に指令を出してエレベータに制動をかけられるようになっている。
【0074】
すなわち、演算処理装置1は、乗りかご5の昇降のための電圧指令値を電動機駆動装置2に与える。電動機駆動装置2はその電圧指令値に基づいて永久磁石回転子同期電動機3を駆動する。永久磁石回転子同期電動機3の回転軸はメインシーブ4に接続されており、永久磁石回転子同期電動機3により駆動される。
【0075】
永久磁石回転子同期電動機3のU相には電流センサ8uが取り付けられ、その電流センサ8uで検出されたU相電流iuは演算処理装置1に入力され、同様に、永久磁石回転子同期電動機3のW相には電流センサ8wが取り付けられ、その電流センサ8wで検出されたW相電流iwは演算処理装置1に入力される。さらに、かご荷重センサ16は、乗りかご5の荷重を検出し演算処理装置1に入力している。
【0076】
そして、メインシーブ4は電磁ブレーキ9により制動をかけられるようになっており、演算処理装置1により電磁ブレーキ9に指令が出力され、ブレーキのオンオフが行われる。
【0077】
ここで、本発明においては、演算処理装置1により、かご位置センサ13からのかご位置信号、回転センサ7からの磁極位置、永久磁石回転子同期電動機の相電流センサ8からの相電流に基づいて乗りかご5の昇降制御中に、回転センサ7が故障した場合には、演算処理装置は磁極位置推定のための電圧指令値Vθ1*を電動機駆動装置2に出力し、永久磁石回転子同期電動機4の電機子インダクタンスLを同定して磁極位置を推定する。
【0078】
そして、その磁極位置に基づいて救出運転を行うが、その際に乗りかご5の荷重が所定値より小さいときは上昇方向の運転とし、かご荷重が所定値より大きいときは下降方向の運転とする。これにより、救出運転の際には永久磁石回転子同期電動機3に必要なトルクが小さくてすむ方向に進行方向を決定しエレベータの救出運転を行う。
【0079】
次に、動作について説明する。図12は第4の実施の形態における回転センサ故障時の救出運転の手順を示すフローチャートである。エレベータが回転センサ7の故障により停止したとすると、S101にて電機子電流の測定を行う。すなわち、U相電流iuθ1およびW相電流iwθ1を検出する。この場合、メインシーブ4は電磁ブレーキ9により固定され永久磁石回転子同期電動機3の軸は固定される。磁極位置は電機子電流ベクトルをある方向に固定して永久磁石回転子同期電動機3の電機子電流値を測定する。
【0080】
図5に示すように、演算処理装置1はある方向θ1に図3のようなステップ状の電流指令値i*を流すように電動機駆動装置2へ電圧指令値Vθ1*(Vuθ1*、Vvθ1*、Vwθ1*)を与える。電動機駆動装置2は永久磁石回転子同期電動機3に対して電流を通電して、U相電流センサ8uおよびW相電流センサ8wにより、それぞれの相電流iuθ1およびiwθ1を△tの時間間隔で検出して、各時刻における電圧指令値Vθ1*(Vuθ1*、Vvθ1*、Vwθ1*)とそれに対する相電流iθ1(iuθ1、ivθ1、iwθ1)をメモリ11に記録する。
【0081】
次にS102へ進み、電機子電流と電圧値から電機子インダクタンスLを同定し、磁極の電機子電流ベクトルに対する相対角度を推定する。記録した時系列データから、例えば、最小二乗法により電機子インダクタンスLθ1を同定する。そして、S103へ進み、同定した電機子インダクタンスLθ1より永久磁石回転子同期電動機3の磁極位置は、図6に示すようにγ=γ1あるいはγ1’のいずれかであると推定される。ここで、γは図5に示すように不明の磁極の軸に対する電流ベクトルの相対角度を表す。
【0082】
次にS104へ進み、電流ベクトルの方向を変えて電機子電流を測定する。すなわち、演算処理装置1は、ある方向θ1に△θをプラスした方向θ1+Δθに対して、図3のようなステップ状の電流指令i*を流すように電動機駆動装置2へ電圧指令値Vθ1+△θ*(Vuθ1+△θ*、Vvθ1+△θ*、Vwθ1+△θ*)を与える。電動機駆動装置2は永久磁石回転子同期電動機3に対して電流を通電して、U相電流センサ8uおよびW相電流センサ8wにより、それぞれの相電流iuθ1+△θおよびiWθ1+△θを△tの時間間隔で検出して、各時刻における電圧指令値Vθ1+△θ*(Vuθ1+△θ*、Vvθ1+△θ*、Vwθ1+△θ*)とそれに対する相電流iθ1+△θ(iuθ1+△θ、ivθ1+△θ、iwθ1+△θ)をメモリ11に記録する。
【0083】
次に、S105へ進み電機子インダクタンスを同定する。記録した時系列データから、例えば、最小二乗法により電機子インダクタンスLθ1+△θを同定できる。次にS106に進み同定した電機子インダクタンスの値を比較する。比較の結果、Lθ1>Lθ1+△θであればS107aに進み磁極位置γ=γ1と推定する。一方、Lθ1<Lθ1+△θであればS107bに進みγ=γ1’と推定される。
【0084】
磁極位置が推定されるとS117へ進み、乗りかご5のかご荷重Wcをかご荷重センサ16より検出し、S118にて、かご荷重センサ16からの検出値Wcとエレベータを上昇させるか下降させるかの基準値WBLとを比較する。ここで、基準値WBLは、例えばバランス荷重とする。かご荷重Wcが基準値WBLより小さい場合にはS119aに進み、進行方向を上昇とする。一方、かご荷重Wcが基準値WBLより大きい場合には、S119bに進み進行方向を下降とする。
【0085】
そして、S108に進み救出運転に入る。救出運転では、推定した磁極位置γを用いて電機子電流ベクトルを磁極位置から90°進めて回転させるように制御する。演算処理装置1は電磁ブレーキ9を解除してエレベータを起動する。演算処理装置1は、オープンループ制御で永久磁石回転子同期電動機3を乗りかご5が下降するように回転させる。その後に、S109に進み着床したかの判断をする。かご位置センサ13により乗りかご5の位置を検出して、着床していなければS108へ戻り運転を継続する。乗りかご5がフロア12に到着するとS110へ進みエレベータを停止させる。これにて、永久磁石回転子同期電動機3を停止させ、電磁ブレーキ9を作動させてメインシーブ4を固定する。乗りかご5はドアを開いて乗客を降ろし救出運転を終了する。
【0086】
以上説明したように、第4の実施の形態では、永久磁石回転子同期電動機3の磁極位置を正確に推定できなくても、かご内荷重を検出して永久磁石回転子同期電動機3に必要なトルクが小さくて良い方向に救出運転を行うので、乗りかご5の吊り落しを防止することができる。
【0087】
次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。図13は本発明の第5の実施の形態に係わるエレベータの制御装置の構成図である。この第5の実施の形態は、永久磁石回転子同期電動機3の電機子電流の立ち上がりを検出する電流変化センサ17を設け、演算処理装置1は、永久磁石回転子同期電動機3の電機子インダクタンスLを電機子に流れる電流の立ち上がり早さから同定するようにしたものである。
【0088】
すなわち、永久磁石回転子同期電動機3の電機子電流の立ち上がり度を検出して、その立ち上がり度から永久磁石回転子同期電動機3の電機子インダクタンスLを同定し、得られた電機子インダクタンスより磁極位置を推定する。そして、推定して得られた磁極位置を基にベクトル制御を行いエレベータの救出運転を行う。
【0089】
図13において、演算処理装置1は電動機駆動装置2に接続され、電圧指令値を電動機駆動装置2に与える。電動機駆動装置2は永久磁石回転子同期電動機3に接続され永久磁石回転子同期電動機3を駆動する。永久磁石回転子同期電動機3の回転軸はメインシーブ4に接続されメインシーブ4を駆動する。また、演算処理装置1は電磁ブレーキ9に接続され、電磁ブレーキ9のオンオフができるようになっている。これにより、メインシーブ4は電磁ブレーキ9により制動をかけられる。
【0090】
永久磁石回転子同期電動機3のU相には電流センサ8uが取り付けられ、電流センサ8uで検出されたU相電流は演算処理装置1に入力される。また、永久磁石回転子同期電動機3のW相には電流センサ8wが取り付けられ、電流センサ8wで検出されたW相電流iwは演算処理装置1に入力される。さらに、U相電流の電流変化率を検出するU相電流変化センサ17uが設けられると共に、W相電流の電流変化率を検出するW相電流変化センサ17wが設けられ、それらの検出信号は演算処理装置1に入力される。さらに、永久磁石回転子同期電動機3には回転センサ7が取り付けられており、永久磁石回転子同期電動機3の磁極位置は演算処理装置1に入力される。そして、演算処理装置1にはメモリ11が接続されており、これらのデータの読み込み書込ができるようになっている。
【0091】
一方、エレベータの乗りかご5とカウンターウエート6とは主ロープ10で接続され、メインシーブ4につるべ式に吊られている。乗りかご5はかご位置センサ13に接続され、かご位置センサ13の出力は演算処理装置1に入力され、乗りかご5の位置を検出できるようになっている。フロア12はエレベータが停止して乗客が乗り降りできるようになっている。
【0092】
次に動作について説明する。図14は、本発明の第5の実施の形態における回転センサ故障時の救出運転の手順を示すフローチャートである。
エレベータが回転センサ7の故障により停止したとすると、S301へ進み電機子電流の変化率の測定を行う。
【0093】
すなわち、メインシーブ4は電磁ブレーキ9により固定し、永久磁石回転子同期電動機3の軸を固定する。そして、電機子電流ベクトルをある方向に固定して永久磁石回転子同期電動機3の電機子電流値の変化率を測定する。図5に示すように、演算処理装置1はある方向θ1に図3のようなステップ状の電流i*を流すように電動機駆動装置2へ電圧指令値Vθ1*(Vuθ1*、Vvθ1*、Vwθ1*)を与える。電動機駆動装置2は永久磁石回転子同期電動機3に対して電流を通電して、U相電流センサ8uおよびW相電流センサ8wからのそれぞれの相電流iuθ1、iwθ1をU相電流変化センサ17uおよびW相電流変化センサ17wに供給する。そして、U相電流変化センサ17uおよびW相電流変化センサ17wにてそれぞれ各相電流の立ち上がり度diuθ1/dtおよびdiwθ1/dtを検出してメモリ11に書き込む。
【0094】
次にS102へ進み電動機インダクタンスを同定する。図15に電機子インダクタンスLの同定方法を示す。例えば、基準となる電流の立ち上がり度を最小値から最大値まで6分割して、基準値をDi1〜Di6まで設ける。電機子インダクタンスLも最小値から最大値までの間を6分割して最小値をL1、最大値をL6とする。
【0095】
まず、S201にて、電流の立ち上がり度diuθ1/dtをメモリ11からロードする。次にS202にて、diuθ1/dtをDi1と比較し、diuθ1/dtがDi1より小さければS208へ進み、Lθ1=L1として電機子インダクタンスの同定を終わる。一方、diuθ1/dtがDi1より大きければS203へ進む。diuθ1/dtをDi2と比較し、diuθ1/dtがDi2より小さければS209へ進み、Lθ1=L2として電機子インダクタンスの同定を終わる。
【0096】
以下同様に、diuθ1/dtがDi2より大きければS204へ進み、diuθ1/dtをDi3と比較し、diuθ1/dtがDi3より小さければS210へ進み、Lθ1=L3として電機子インダクタンスの同定を終わる。diuθ1/dtがDi3より大きければS205へ進み、diuθ1/dtをDi4と比較し、diuθ1/dtがDi4より小さければS211へ進み、Lθ1=L4として電機子インダクタンスの同定を終わる。diuθ1/dtがDi4より大きければS206へ進み、diuθ1/dtをDi5と比較し、diuθ1/dtがDi5より小さければS212へ進み、Lθ1=L5として電機子インダクタンスの同定を終わる。そして、diuθ1/dtがDi5より大きければS207へ進み、Lθ1=L6として電機子インダクタンスの同定を終わる。
【0097】
電機子インダクタンスの同定を終わると、次にS103へ進み、同定した電機子インダクタンスLθ1より永久磁石回転子同期電動機3の磁極位置が図6に示すようにγ=γ1あるいはγ1’のいずれかと推定される。ここで、γは図5に示すように不明の磁極の軸に対する電流ベクトルの相対角度を表す。
【0098】
次にS302へ進み電流ベクトルの方向を変えて電機子電流を測定する。演算処理装置1はある方向θ1+△θに図3のようなステップ状の電流i*を流すように電動機駆動装置2へ電圧指令値Vθ1+△θ*(Vuθ1+△θ*、Vvθ1+△θ*、Vwθ1+△θ*)を与える。電動機駆動装置2は永久磁石回転子電動機3に対して電流を通電して、U相電流センサ8u、W相電流センサ8wによりそれぞれの相電流iuθ1+△θ、iwθ1+△θをU相電流変化センサ17u、W相電流変化センサ17wを介して、各相電流の立ち上がり度diuθ1+△θ/dt、diwθ1+△θ/dtを検出してメモリ11に書き込む。
【0099】
次にS105へ進み、方向θ1+△θでの電機子インダクタンスLθ1+Δθを同定する。その場合も、図15に示したと同様に電機子インダクタンスの同定が行われる。すなわち、S201にて、電流の立ち上がり度diuθ1+△θ/dtをメモリ11からロードする。次にS202にて、diuθ1+△θ/dtをDi1と比較し、diuθ1+△θ/dtがDi1より小さければS208へ進み、Lθ1+△θ=L1として電機子インダクタンスの同定を終わる。
【0100】
一方、diuθ1+△θ/dtがDi1より大きければS203へ進み、diuθ1+△θ/dtをDi2と比較し、diuθ1+△θ/dtがDi2より小さければS209へ進み、Lθ1+△θ=L2として電機子インダクタンスの同定を終わる。
【0101】
以下同様に、diuθ1+△θ/dtがDi2より大きければS204へ進み、diuθ1+△θ/dtをDi3と比較し、diuθ1+△θ/dtがDi3より小さければS210へ進み、Lθ1+△θ=L3として電機子インダクタンスの同定を終わる。diuθ1+△θ/dtがDi3より大きければS205へ進み、diuθ1+△θ/dtをDi4と比較し、diuθ1+△θ/dtがDi4より小さければS211へ進み、Lθ1+△θ=L4として電機子インダクタンスの同定を終わる。diuθ1+△θ/dtがDi4より大きければS206へ進み、diuθ1+△θ/dtをDi5と比較し、diuθ1+△θ/dtがDi5より小さければS212へ進み、Lθ1+△θ=L5として電機子インダクタンスの同定を終わる。diuθ1+△θ/dtがDi5より大きければS207へ進み、Lθ1+△θ=L6として電機子インダクタンスの同定を終わる。
【0102】
方向θ1+△θでの電機子インダクタンスLθ1+Δθの同定が終わると、次にS106に進み、同定した電機子インダクタンスの値を比較する。Lθ1>Lθ1+△θであればS107aに進み磁極位置γ=γ1と判定する。一方、Lθ1<Lθ1+△θであればS107bに進みγ=γ1’と推定される。
【0103】
次に、S108に進み救出運転に入る。推定した磁極位置γを用いて電機子電流ベクトルを磁極位置から90°進みで回転させるように制御する。演算処理装置1は電磁ブレーキ9を解除してエレベータを起動する。演算処理装置1はオープンループ制御で永久磁石回転子同期電動機3を乗りかご5が下降するように回転させる。その後に、S109に進み着床したかの判断をする。つまり、かご位置センサ13により乗りかご5の位置を検出して、着床していなければS108へ戻り運転を継続する。
【0104】
乗りかご5がフロア12に到着すると、S110へ進みエレベータを停止させる。つまり、永久磁石回転子同期電動機3を停止させ、電磁ブレーキ9を作動させてメインシーブ4を固定する。乗りかご5はドアを開いて乗客を降ろし救出運転を終了する。
【0105】
以上説明したように、この第5の実施の形態では、電機子電流の立ち上がり度の変化より、永久磁石回転子同期電動機3の電機子インダクタンスの変化を判定し、その電機子インダクタンスから磁極位置を推定する。これにより、位置センサが故障したときの永久磁石回転子同期電動機3のベクトル制御を可能とし、救出運転を行うことができる。
【0106】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、永久磁石回転子同期電動機の回転センサが故障して停止した場合には、モータの磁極位置を推定して永久磁石回転子同期電動機を起動するので、回転センサが故障しても救出運転を行える。
【0107】
すなわち、請求項1の発明によれば、永久磁石回転子同期電動機の電機子インダクタンスの変化から磁極位置を推定し、位置センサが故障したときの永久磁石回転子同期電動機のベクトル制御を可能としているので、救出運転を行うことができる。
【0108】
請求項2の発明によれば、永久磁石回転子同期電動機の磁極位置推定に誤差を生じ十分なトルクが出せなかった場合でも、乗りかごの異常速度を検出してブレーキをかけるので、乗りかごの吊り落しを防止することができる。
【0109】
請求項3の発明によれば、永久磁石回転子同期電動機の磁極位置推定に誤差を生じ電動機が逆転を始めた場合には、乗りかごの移動方向を検出してブレーキをかけるので、永久磁石回転子同期電動機の逆転を防止することができる。
【0110】
請求項4の発明によれば、永久磁石回転子同期電動機の磁極位置推定を正確に推定できなくても、かご内荷重を検出して永久磁石回転子同期電動機に必要なトルクが小さくて良い方向に救出運転を行うので、乗りかごの吊り落しを防止することができる。
【0111】
請求項5の発明によれば、永久磁石回転子同期電動機の電機子電流の立ち上がり度の変化により、永久磁石回転子同期電動機の電機子インダクタンスの変化から磁極位置を推定するので、回転センサが故障したときの永久磁石回転子同期電動機のベクトル制御を可能とし救出運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係わるエレベータの制御装置の構成図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態における永久磁石回転子同期電動機のシステムモデル図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態における磁極推定のための電流指令の波形図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態における回転センサ故障時の救出運転の手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態において磁極位置推定のための電流指令を与えた場合の磁極と電流ベクトルとの関係図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施の形態で電機子インダクタンスと磁極位置との関係から磁極位置を推定した場合の説明図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態に係わるエレベータの制御装置の構成図である。
【図8】図8は、本発明の第2の実施の形態における回転センサ故障時の救出運転の手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本発明の第3の実施の形態に係わるエレベータの制御装置の構成図である。
【図10】図10は、本発明の第3の実施の形態における回転センサ故障時の救出運転の手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の第4の実施の形態に係わるエレベータの制御装置の構成図である。
【図12】図12は、本発明の第4の実施の形態における回転センサ故障時の救出運転の手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、本発明の第5の実施の形態に係わるエレベータの制御装置の構成図である。
【図14】図14は、本発明の第5の実施の形態における回転センサ故障時の救出運転の手順を示すフローチャートである。
【図15】図15は、本発明の第5の実施の形態における回転センサ故障時の電機子インダクタンスの同定を行うための手順を示すフローチャートである。
【図16】図16は、永久磁石回転子同期電動機の特性の説明図である。
【図17】図17は、磁極位置と全磁束および電機子インダクタンスとの関係図である。
【符号の説明】
1 演算処理装置
2 電動機駆動装置
3 永久磁石回転子同期電動機
4 メインシーブ
5 乗りかご
6 カウンターウエート
7 回転センサ
8u U相電流センサ
8w W相電流センサ
9 電磁ブレーキ
10 主ロープ
11 メモリ
12 フロア
13 かご位置センサ
14 かご速度センサ
15 進行方向センサ
16 かご荷重センサ
17u U相電流変化センサ
17w W相電流変化センサ

Claims (3)

  1. 乗りかごの巻上機を駆動する永久磁石回転子同期電動機の磁極位置を検出する回転センサと、前記永久磁石回転子同期電動機の相電流を検出する相電流センサと、前記乗りかごの位置を検出するかご位置センサと、前記磁極位置と前記相電流および乗りかご位置に基づいて前記乗りかごの昇降運転のための前記永久磁石回転子同期電動機への電圧指令を演算するとともに電磁ブレーキにオンオフ指令を出力する演算処理装置と、前記演算処理装置からの電圧指令に基づいて前記永久磁石回転子同期電動機を駆動する電動機駆動制御装置とを備えたエレベータの制御装置において、前記乗りかごの移動速度を検出するかご速度センサを有し、前記演算処理装置は、前記回転センサからの磁極位置の検出が不能となったときは、前記電磁ブレーキにより前記永久磁石回転子同期電動機の軸を固定して前記永久磁石回転子同期電動機の電機子インダクタンスから前記磁極位置を推定し、前記電磁ブレーキを解除して推定された磁極位置に基づいて救出運転を行い、その救出運転開始後に前記かご速度センサで検出された乗りかごの移動速度が所定値より小さいときは救出運転を継続し、乗りかごの移動速度が所定値より大きくなったときは前記電磁ブレーキを作動させてエレベータを停止させるようにしたことを特徴とするエレベータの制御装置。
  2. 乗りかごの巻上機を駆動する永久磁石回転子同期電動機の磁極位置を検出する回転センサと、前記永久磁石回転子同期電動機の相電流を検出する相電流センサと、前記乗りかごの位置を検出するかご位置センサと、前記磁極位置と前記相電流および乗りかご位置に基づいて前記乗りかごの昇降運転のための前記永久磁石回転子同期電動機への電圧指令を演算するとともに電磁ブレーキにオンオフ指令を出力する演算処理装置と、前記演算処理装置からの電圧指令に基づいて前記永久磁石回転子同期電動機を駆動する電動機駆動制御装置とを備えたエレベータの制御装置において、前記乗りかごの進行方向を検出する進行方向センサを有し、前記演算処理装置は、前記回転センサからの磁極位置の検出が不能となったときは、前記電磁ブレーキにより前記永久磁石回転子同期電動機の軸を固定して前記永久磁石回転子同期電動機の電機子インダクタンスから前記磁極位置を推定し、その磁極位置に基づいて前記乗りかごを静止制御した後に前記電磁ブレーキを解除し、前記進行方向センサにより前記永久磁石回転子同期電動機の回転方向が回転指令方向と同一方向であると検知されたときは推定した磁極位置に基づいて救出運転を行い、前記永久磁石回転子同期電動機の回転方向が回転指令方向と反対方向であると検知されたときは前記電磁ブレーキを作動させてエレベータを停止させるようにしたことを特徴とするエレベータの制御装置。
  3. 乗りかごの巻上機を駆動する永久磁石回転子同期電動機の磁極位置を検出する回転センサと、前記永久磁石回転子同期電動機の相電流を検出する相電流センサと、前記乗りかごの位置を検出するかご位置センサと、前記磁極位置と前記相電流および乗りかご位置に基づいて前記乗りかごの昇降運転のための前記永久磁石回転子同期電動機への電圧指令を演算するとともに電磁ブレーキにオンオフ指令を出力する演算処理装置と、前記演算処理装置からの電圧指令に基づいて前記永久磁石回転子同期電動機を駆動する電動機駆動制御装置とを備えたエレベータの制御装置において、エレベータの乗りかごの荷重を検出するかご荷重センサを有し、前記演算処理装置は、前記回転センサからの磁極位置の検出が不能となったときは、前記電磁ブレーキにより前記永久磁石回転子同期電動機の軸を固定して前記永久磁石回転子同期電動機の電機子インダクタンスから前記磁極位置を推定し、前記かご荷重センサで検出されたかご荷重が所定値より小さいときは上昇方向の運転とし、かご荷重が所定値より大きいときは下降方向の運転とし、この上昇方向の運転または下降方向の運転の判定後に、前記電磁ブレーキを解除して推定された磁極位置に基づいて救出運転を行ようにしたことを特徴とするエレベータの制御装置。
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