JP3288272B2 - 電気めっき装置 - Google Patents

電気めっき装置

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JP3288272B2 JP22268697A JP22268697A JP3288272B2 JP 3288272 B2 JP3288272 B2 JP 3288272B2 JP 22268697 A JP22268697 A JP 22268697A JP 22268697 A JP22268697 A JP 22268697A JP 3288272 B2 JP3288272 B2 JP 3288272B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、連続式電気めっき
装置に関し、所謂「C反り」した鋼帯と陽極との接触で
生じる「めっき品質」の不良を防止すると共に、該鋼帯
と陽極間の距離を短縮して、めっきに要する電力(以
下、めっき電力)の低減を図る技術に係わる。
【0002】
【従来の技術】電気めっき鋼板を工業生産するには、図
9に示す連続式電気めっき装置が利用されることが多
い。その装置は、まず、めっき浴中に上下に浸漬、配置
した陽極1の間を、被めっき素材である鋼帯6が走行す
るようになっている。そして、めっき浴の両端部には、
走行する鋼帯6の下面を支持するバックアップ・ロール
4と、該バックアップ・ロール4と対向し、該鋼帯6の
上面と接触するように、陰極となるコンダクタ・ロール
5が配置してある。従って、鋼帯6の上下面は陰極的に
作用し、陽極1との間で電気回路が形成されると、該陽
極1からめっき液7に溶解した金属イオンは、鋼帯6の
上下面に析出し、所謂電気めっきが行われる。また、め
っき液7は、めっき槽の一端に槽幅方向に長いスリット
状ノズル9を設け、それを介してめっき浴内に噴射、供
給され、めっき液7の流れとなって、他端より排出され
る。なお、該めっき装置内を走行する鋼帯6は、コンダ
クタ・ロール5とバックアップ・ロール4によって発生
するL形反りによって、図8に示すような上向きに、あ
るいは下向きにC字形状に変化し、所謂「C反り」する
傾向にある。
【0003】ところで、電気めっき鋼板の工業生産にお
いては、電力コストの低減が重要な操業上の関心事であ
る。そこで、上記した電気回路に流す全ての電流のう
ち、電気めっき現象に用いられる電流の割合を高め、無
駄な電力を削減することが考えられる。具体的には、鋼
帯面と陽極間の距離(以後、極間距離12という)を縮
め、めっき液7の抵抗に起因する電流ロスを低減させる
ことである。
【0004】しかしながら、この極間距離12を縮める
と、上記鋼帯6の「C反り」によって鋼帯6の一部が上
方に配置した陽極1に接触して、スパークが発生し、製
品の不良につながるという問題があった。また、該極間
距離12を短縮すると、鋼帯6の幅方向端部と中央部と
では、「C反り」で生じた陽極1との距離差が相対的に
大きくなる。その結果、鋼帯幅方向での金属析出量(め
っき付着量)の差が大きくなり、めっき薬剤の使用量が
増加したり、あるいは、「付着量はずれ」が発生すると
いう問題もあった。
【0005】この鋼帯の「C反り」を抑制するため、実
開平5−30148号公報や特開平8−120432号
公報は、電磁石を用いて、鋼帯の平滑化を図る技術を開
示している。また、特公昭58−32239号公報は、
鋼帯幅方向の両側からめっき液を噴射し、静圧を生じさ
せて「C反り」効果を防止する方法を提案している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、実開平
5−30148号公報や特開平8−120432号公報
開示の方法は、設備の改造コストが大きくなるばかりで
なく、技術面でも改造し難い点がある。また、特公昭5
8−32239号公報記載の方法は、めっき液の鋼帯に
対する相対流速が変動するので、めっき品質に与える影
響が大きく、現状設備に対して適用するには、大幅な改
造を必要とする。
【0007】本発明は、かかる事情を鑑み、安価な設備
改造で、鋼帯の「C反り」を防止し、極間距離を従来よ
り短縮できる電気めっき装置を提供することを目的とし
ている。
【0008】
【課題を解決するための手段】発明者は、上記目的を達
成するため鋭意研究し、鋼帯「C反り」の矯正のため、
めっき液の圧力を利用することに着眼し、本発明を完成
させた。すなわち、本発明は、めっき浴内に上下に対向
して水平に配置した陽極と、これら陽極の間を走行する
鋼帯に陰極作用をさせるコンダクタ・ロールとを備えた
連続式電気めっき装置であって、前記陽極の鋼帯C反り
凸面と向き合う面に、陽極幅と同じ長さで、鋼帯の進行
方向に直交し、且つ天端には断面がU字形の凹溝を有す
る突起を設け、その長手方向中央部の凹溝の縁を両端部
の縁より高くしてなることを特徴とする電気めっき装置
である。
【0009】また、本発明は、めっき浴内に上下に対向
して水平に配置した陽極と、これら陽極の間を走行する
鋼帯に陰極作用をさせるコンダクタ・ロールとを備えた
連続式電気めっき装置であって、前記陽極の鋼帯C反り
凹面と向き合う面に、陽極幅と同じ長さで、鋼帯の進行
方向に直交し、且つ天端には断面がU字形の凹溝を有す
る突起を設け、その長手方向中央部の凹溝の縁を両端部
の縁より低くしてなることを特徴とする電気めっき装置
である。
【0010】さらに、本発明は、めっき浴内に上下に対
向して水平に配置した陽極と、これら陽極の間を走行す
る鋼帯に陰極作用をさせるコンダクタ・ロールとを備え
た連続式電気めっき装置であって、前記陽極の鋼帯C反
り凸面と向き合う面に、鋼帯の進行方向に直交し、且つ
天端には断面がU字形の凹溝を有する突起を、電極幅の
中央部のみに設けたことを特徴とする電気めっき装置で
ある。
【0011】さらに、本発明は、めっき浴内に上下に対
向して水平に配置した陽極と、これら陽極の間を走行す
る鋼帯に陰極作用をさせるコンダクタ・ロールとを備え
た連続式電気めっき装置であって、前記陽極の鋼帯C反
り凹面と向き合う面に、鋼帯の進行方向に直交し、且つ
天端には断面がU字形の凹溝を有する突起を、電極幅の
両端部に設け、電極幅の中央部には突起を設けないこと
を特徴とする電気めっき装置である。
【0012】さらに加えて、本発明は、前記突起を、陽
極面に複数本設けたり、あるいは前記突起を、電気絶縁
物質で形成したことを特徴とする電気めっき装置でもあ
る。本発明では、電気めっき装置を上記のような構成に
したので、めっき槽内の鋼帯面に沿って流れるめっき液
の圧力が、鋼帯の「C反り」を矯正するように働く。そ
の結果、操業中に、鋼帯が陽極と接触することがなくな
り、前記極間距離の縮小が可能となり、めっき品質に優
れた電気めっき鋼板の製造が効率良く行えるようにな
る。また、上記突起を電気絶縁物質で形成するようにし
たので、上記効果は一層促進する(現在公知のアノード
・プロテクタを利用しても良い)。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、発明の経緯を踏まえ、本発
明の内容を説明する。まず、発明者は、めっき槽内に凹
溝10を天端に有する突起を設けた場合、スリット・ノ
ズル9を介して噴流で一端に供給され、他端から排出さ
れるめっき液が、鋼帯面にいかなる圧力を及ぼすかにつ
いて解析した。その際に使用した突起2のモデルを図4
に示す。
【0014】図4のような突起2が陽極1上に存在する
と、突起2におけるめっき液7の圧力増加は、 ΔP=ρ/2{2A(A−1)−(1/CC −1)2
(u・h/(CC ε))2 となる。
【0015】ただし、 ρ:めっき液の密度 u:突起より上流側でのめっき液の流速 h:極間距離 ε:突起−鋼帯間距離 θ:突起天端から凹溝内へのめっき液層流部分の落込み
角度。
【0016】s:突起の長さ CC :突起高さと極間距離で決まる係数(0<CC
1) A:εCC (εCC +s・tanθ) 上記式より、凹溝10を有する突起2が高いほど、つま
り、εが小さいほど、めっき液7の鋼帯6に及ぼす圧力
は大きくなり、逆に、該突起2が低いほど、すなわちε
が大きいほど、めっき液7の鋼帯6に及ぼす圧力は小さ
くなることがわかる。
【0017】そこで、発明者は、この現象を利用し、鋼
帯6の「C反り」によって陽極幅方向で極間距離が狭く
なった(つまり、C反りの凸面)側の陽極1上に断面が
U字形の突起2を設け、該突起2の長手方向中央部の凹
溝10の縁8を両端部より高くしてやれば、鋼帯6の幅
方向中央部分にかかるめっき液7の圧力が両端部より大
きくなり、C反りを防止できると考え、第1の本発明に
係る電気めっき装置を創案した。また、鋼帯6の「C反
り」によって陽極幅方向で極間距離が広くなった(つま
り、C反りの凹面)側の陽極1上に突起3を設け、該突
起3の長手方向中央部の凹溝10の縁8を両端部の縁8
より低くしてやれば、鋼帯6の幅方向中央部分にかかる
めっき液7の圧力が両端部より小さくなり、C反りを防
止できると考え、第2の本発明を完成させた。
【0018】それらの装置を、図2及び5に示す。第1
及び第2の本発明で共通している部分は、めっき槽の両
端に配置したコンダクタ・ロール(陰極)5とバックア
ップ・ロール4とで支持し、めっき浴内に上下に配置し
た陽極間を鋼帯6が走行する点である。そして、両者で
異なるのは、鋼帯6を挟む陽極1のいずれか一方の構造
を第1の発明では、図1に示すように、第2の発明で
は、図6のようにした点である。つまり、本発明に係る
電気めっき装置は、めっき槽に配置する陽極1の一方
が、鋼帯幅方向に長く、凹溝10を有する突起2を有
し、且つその突起2の縁8が、突起長手方向の中央部分
で両端部より高くしたり、低くしてある。
【0019】なお、めっき液7の圧力は、鋼帯6と突起
間の距離が狭いほど大きくなるので、鋼帯6の「C反
り」が大きければ大きいほど、「C反り」矯正効果が働
き、鋼帯6は常に平坦に維持されるようになる。また、
図10に示す前記突起を電極幅の中央部のみに設ける場
合、あるいは、図11のような両端部にのみ設ける場合
を第3及び第4の本発明とした。そのようにすると、鋼
帯の「C反り」矯正効果に与える影響が大きいばかりで
なく、めっき槽内でのめっき液の流れも円滑になるから
である。さらに、本発明では、陽極面に設ける突起の数
を1本に限らず、複数本とするのが好ましい。本数が増
える程、「C反り」矯正効果が向上するからである。
【0020】
【実施例】第1の本発明に係る電気めっき装置(図1参
照)を、鋼種が極低炭素鋼で、走行中に下に凸の「C反
り」する厚み0.75mmの鋼帯の電気亜鉛めっきを施
す操業で使用してみた。その際、鋼帯の板幅は、700
mm〜1800mmの範囲で種々変更した。また、陽極
1としては、鋼帯6の上面側に幅2000mm、長さ1
000mm、高さが一様に3mmとしたものを2本配置
し、下面側に突起を長手方向中央部の凹溝10の縁8の
高さ6mm、その部分の幅526mmとし、両端部の凹
溝10の縁8より高くしたものを2本配置した。この場
合、極間距離は、13mmであった。
【0021】その結果、鋼帯幅方向の中央部へかかるめ
っき液7の圧力を両端部より高くすることができ、鋼帯
6の「C反り」量を、図3に示すように、いずれの板幅
でも3mm以内に低減することができた(○印:TYP
E2)。また、図3には、比較のため、従来装置(電極
の突起を長手方向で一様に同じ高さにした)での結果を
×印(TYPE1)で、第3の本発明に係る装置での結
果を△印(TYPE3)で示してある。なお、図3の各
プロットは、板幅の異なる鋼帯それぞれの平均値であ
る。
【0022】次に、第2の本発明に係る電気めっき装置
を、上記と同じ鋼帯の電気亜鉛めっきを施す操業で使用
してみた。その際、陽極1としては、鋼帯6の下面側に
幅2000mm、長さ1000mm、高さが一様に3m
mのものを2本配置し、上面側に突起を長手方向中央部
の凹溝10の縁8の高さ1mm、その部分の幅526m
mとし、両端部の凹溝10の縁より低くしたものを2本
配置した。
【0023】その結果、鋼帯幅方向の中央部へかかるめ
っき液の圧力を両端部より低くすることができ、鋼帯の
「C反り」を、図7に示すよう、3mm以内に低減する
ことができた(○印、TYPE2)。また、同図7に
は、比較のため、従来装置(電極の突起を長手方向で一
様に同じ高さにした)での結果を×印(TYPE1)
で、第4の本発明に係る装置(図11参照)での結果を
△印(TYPE3)で示してある。上記実施例では、鋼
帯6の「C反り」がいずれも下に凸の場合であったが、
逆に下に凹の場合には、上記電極の配置を逆転させるこ
とで、同様の効果が得られる。また、本発明の考え方
は、垂直型の電気めっき槽においても、反りの状況に応
じて、陽極1に同様の突起を持たせることで、「C反
り」の低減が得られる。さらに、突起凹溝10の縁8の
高さを高くしたり、低くする部分の幅については、特に
制約はないが、鋼帯幅の約半分程度が望ましい。少なく
とも板幅より狭ければC反り低減効果が得られるからで
ある。
【0024】なお、突起の材質としては、万一鋼帯が接
触しても鋼帯6に疵をつけない程度の硬度を有する電気
絶縁物質が望ましい。具体的には、テフロン、FRP等
が適当である。加えて、上記結果を基に、同一装置、同
一鋼帯で、極間距離を9mmに短くした操業も行った。
その結果、従来の極間距離13mmの時に比べ、使用電
力が20%も低減すると共に、使用薬剤も5%減少し
た。また、その際得られためっき品質は、製品としての
合格率が99.6%で従来のめっき品質に比べ格段優れ
ていた。
【0025】
【発明の効果】以上述べたように、本発明により、電気
めっき中の鋼帯の「C反り」を低減することができた。
その結果、従来より、極間距離が短縮し、「めっき電
力」のコストを削減し、また、「C反り」の低減効果と
して、鋼帯幅方向のめっき付着量が均一になり、めっき
品質を向上でき、さらには、めっき薬剤の使用量をも削
減できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の本発明の下側陽極の詳細図である。
【図2】第1の本発明に係る電気めっき装置全体の縦断
面図である。
【図3】第1及び第3の本発明の効果を示す図である。
【図4】凹溝を有する突起のモデルである。
【図5】第2の本発明に係る電気めっき装置の縦断面図
である。
【図6】図5の上側陽極の詳細図である。
【図7】第2及び第4の本発明の効果を示す図である。
【図8】鋼帯の「C反り」を示す斜視図である。
【図9】従来の電気めっき装置を示す縦断面図である。
【図10】第3の本発明に係る下側陽極の詳細図であ
る。
【図11】第4の本発明に係る上側陽極の詳細図であ
る。
【符号の説明】
1 陽極 2 長手方向中央部の凹溝の縁を両端部より高くした
突起 3 長手方向中央部の凹溝の縁を両端部より低くした
突起 4 バックアップ・ロール 5 コンダクタ・ロール 6 鋼帯 7 めっき液 8 縁 9 スリット状ノズル 10 凹溝 11 通常の天端に凹溝を有する突起
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 秀和 倉敷市水島川崎通1丁目(番地なし) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 (56)参考文献 特開 平10−102286(JP,A) 特開 平10−72698(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 7/06

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 めっき浴内に上下に対向して水平に配置
    した陽極と、これら陽極の間を走行する鋼帯に陰極作用
    をさせるコンダクタ・ロールとを備えた連続式電気めっ
    き装置であって、 前記陽極の鋼帯C反り凸面と向き合う面に、陽極幅と同
    じ長さで、鋼帯の進行方向に直交し、且つ天端には断面
    がU字形の凹溝を有する突起を設け、その長手方向中央
    部の凹溝の縁を両端部の縁より高くしてなることを特徴
    とする電気めっき装置。
  2. 【請求項2】 めっき浴内に上下に対向して水平に配置
    した陽極と、これら陽極の間を走行する鋼帯に陰極作用
    をさせるコンダクタ・ロールとを備えた連続式電気めっ
    き装置であって、 前記陽極の鋼帯C反り凹面と向き合う面に、陽極幅と同
    じ長さで、鋼帯の進行方向に直交し、且つ天端には断面
    がU字形の凹溝を有する突起を設け、その長手方向中央
    部の凹溝の縁を両端部の縁より低くしてなることを特徴
    とする電気めっき装置。
  3. 【請求項3】 めっき浴内に上下に対向して水平に配置
    した陽極と、これら陽極の間を走行する鋼帯に陰極作用
    をさせるコンダクタ・ロールとを備えた連続式電気めっ
    き装置であって、 前記陽極の鋼帯C反り凸面と向き合う面に、鋼帯の進行
    方向に直交し、且つ天端には断面がU字形の凹溝を有す
    る突起を、電極幅の中央部のみに設けたことを特徴とす
    る電気めっき装置。
  4. 【請求項4】 めっき浴内に上下に対向して水平に配置
    した陽極と、これら陽極の間を走行する鋼帯に陰極作用
    をさせるコンダクタ・ロールとを備えた連続式電気めっ
    き装置であって、 前記陽極の鋼帯C反り凹面と向き合う面に、鋼帯の進行
    方向に直交し、且つ天端には断面がU字形の凹溝を有す
    る突起を、電極幅の両端部に設け、電極幅の中央部には
    突起を設けないことを特徴とする電気めっき装置。
  5. 【請求項5】 前記突起を、陽極面に複数本設けてなる
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電気
    めっき装置。
  6. 【請求項6】 前記突起を、電気絶縁物質で形成したこ
    とを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気め
    っき装置。
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