JP3264174B2 - 無水イサト酸類の製造法 - Google Patents

無水イサト酸類の製造法

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JP3264174B2
JP3264174B2 JP10746996A JP10746996A JP3264174B2 JP 3264174 B2 JP3264174 B2 JP 3264174B2 JP 10746996 A JP10746996 A JP 10746996A JP 10746996 A JP10746996 A JP 10746996A JP 3264174 B2 JP3264174 B2 JP 3264174B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無水イサト酸類の
製造法に関し、詳しくは、対応するアントラニル酸又は
その塩とホスゲンを反応させることによる無水イサト酸
類の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】無水イ
サト酸類は、消炎剤、糖尿病合併症の治療剤等の中間体
として有用であり(例えば特開昭62-97476号公報)、そ
の製造法としては、例えば、水溶媒下に、対応するアン
スラニル酸又はその塩とホスゲンを反応させることによ
り製造することも知られている(J.Org.Chem.,26,613(19
61))。しかしながら、水溶媒を用いる上記方法では、目
的物の収率も満足し得るものではなく、更には反応混合
物がホイップクリーム状になるため、反応器の容積効率
が低いという工業上の難点があった。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる難
点を解決すべく、無水イサト酸類の製造法について鋭意
検討を重ねた結果、アルキルピリジニウム塩という特定
の化合物を共存させることにより、収率が向上するのみ
ならず反応混合物のホイップクリーム化が抑制し得、反
応器の容積効率も向上し得ることを見出すとともに、更
に種々の検討を加えて、本発明を完成した。
【0004】すなわち本発明は、アルキルピリジニウム
塩の共存下、水溶媒中でホスゲンと式(I)
【0005】 (式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲ
ン原子、ニトロ基、ハロゲン原子が置換していることも
ある低級アルキル基、ハロゲン原子が置換していること
もあるアラルキル基、ハロゲン原子が置換していること
もあるアルコキシ基、ハロゲン原子が置換していること
もあるアルコキシカルボニル基、アシロキシ基又はX1
NR45(X1は単なる結合、低級アルキレン基又はカ
ルボニル基を表す。X1が単なる結合又は低級アルキレ
ン基である場合は、R4、R5はそれぞれ独立に低級アル
キル基又はN、R4、R5が一緒になって他のヘテロ原子
を含んでいることもある5員複素環若しくは6員複素環
を表す。X1がカルボニル基である場合はR4、R5はそ
れぞれ独立に水素原子、低級アルキル基又はN、R4
5が一緒になって他のヘテロ原子を含んでいることも
ある5員複素環若しくは6員複素環を表す。5員複素環
若しくは6員複素環が他のヘテロ原子を含む場合は、該
ヘテロ原子は置換基を有することもできる。)を表す。
3は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロゲン
原子が置換していることもある低級アルキル基、ハロゲ
ン原子が置換していることもあるアラルキル基、ハロゲ
ン原子が置換していることもあるアルコキシ基又はハロ
ゲン原子が置換していることもあるアルコキシカルボニ
ル基を表す。) で示されるアントラニル酸類又はその塩を反応させるこ
とを特徴とする式(II)
【0006】 (式中、R1、R2、R3はそれぞれ前記と同じ意味を表
す。) で示される無水イサト酸類の工業的に優れた製造法を提
供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】以下本発明について、詳細に説明
する。本発明の原料であるアントラニル酸類(I)にお
ける置換基R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、ハロ
ゲン原子、ニトロ基、ハロゲン原子が置換していること
もある低級アルキル基、ハロゲン原子が置換しているこ
ともあるアラルキル基、ハロゲン原子が置換しているこ
ともあるアルコキシ基、ハロゲン原子が置換しているこ
ともあるアルコキシカルボニル基、アシロキシ基又はX
1NR45(X1は単なる結合、低級アルキレン基又はカ
ルボニル基を表す。X1が単なる結合又は低級アルキレ
ン基である場合は、R4,R5はそれぞれ独立に低級アル
キル基又はN、R4、R5が一緒になって他のヘテロ原子
を含んでいることもある5員複素環若しくは6員複素環
を表す。X1がカルボニル基である場合はR4、R5はそ
れぞれ独立に水素原子、低級アルキル基又はN、R4
5が一緒になって他のヘテロ原子を含んでいることも
ある5員複素環若しくは6員複素環を表す。5員複素環
若しくは6員複素環が他のヘテロ原子を含む場合は、該
ヘテロ原子は置換基を有することもできる。)を表し、
3は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロゲン
原子が置換していることもある低級アルキル基、ハロゲ
ン原子が置換していることもあるアラルキル基、ハロゲ
ン原子が置換していることもあるアルコキシ基又はハロ
ゲン原子が置換していることもあるアルコキシカルボニ
ル基を表す。
【0008】ここで、ハロゲン原子としては、例えば塩
素、臭素、フッ素等が挙げられる。ハロゲン原子が置換
していることもある低級アルキル基としては、例えばメ
チル、エチル、プロピル、i-プロピル、ブチル、i-ブチ
ル、t-ブチル、ペンチル、i-ペンチル、ヘキシル等の低
級アルキル基、クロロメチル、ブロモメチル、クロロプ
ロピル等のモノハロ低級アルキル基、1,2-ジクロロエチ
ル、1,2-ジブロモエチル、2,2-ジクロロエチル等のジハ
ロ低級アルキル基、トリフルオロメチル等のトリハロ低
級アルキル基等が挙げられる。ハロゲン原子が置換して
いることもあるアラルキル基としては、例えばベンジ
ル、フェニルエチル、4-クロロベンジル、2,4-ジクロロ
ベンジル、2,4-ジブロモベンジル等が挙げられる。
【0009】ハロゲン原子が置換していることもあるア
ルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、プロ
ポキシ、i-プロポキシ、ブトキシ、i-ブトキシ、t-ブト
キシ、ペンチルオキシ、i-ペンチルオキシ、ヘキシルオ
キシ等の低級アルコキシ基、クロロメトキシ、ブロモメ
トキシ、1-、2-クロロエトキシ、1-、2-、3-クロロプロ
ポキシ、ジクロロメトキシ、シブロモメトキシ、1,2-ジ
クロロエトキシ、2,2-ジクロロエトキシ、トリフルオロ
メトキシ等のハロゲン原子で置換された低級アルコキシ
基などが挙げられる。ハロゲン原子が置換していること
もあるアルコキシカルボニル基としては、例えば上記と
同様のハロゲン原子が置換していることもあるアルコキ
シ基を有するカルボニル基等が挙げられる。アシロキシ
基としては、例えばアセトキシ、プロピオニルオキシ、
ブチリルオキシ、i-ブチリルオキシ、バレリルオキシ、
i-バレリルオキシ、ピバロイルオキシ等の低級アルキル
カルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ等のアリールカ
ルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0010】またX1NR45における低級アルキレン
基としては、例えばメチレン、ジメチレン、トリメチレ
ン、テトラメチレン等が挙げられ、NR45における低
級アルキル基としてのR4、R5としては、前記と同様の
低級アルキル基が挙げられ、この場合の具体例として
は、例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピ
ルアミノ、ジブチルアミノ等が挙げられる。NR45
おけるN、R4、R5が一緒になって他のヘテロ原子を含
んでいることもある5員複素環若しくは6員複素環を表
す場合の具体例としては、例えばピロリル、2H,4H-ピロ
リル、ピロリジノ、ピラゾリル、ピペラジニル、モルホ
リノ、イミダゾリル等が挙げられる。他のヘテロ原子が
Nの場合は、該他のヘテロ原子(N)は置換基を有して
いてもよい。かかる置換基としては、例えば前記と同様
のハロゲン原子が置換していることもある低級アルキル
基、前記と同様のハロゲン原子が置換していることもあ
るアラルキル基、低級アルコキシ基が置換しているアラ
ルキル基、低級アルコキシ基が置換していることもある
フェニルカルボニル基等が挙げられる。
【0011】アントラニル酸類(I)の代表的化合物と
しては、例えばアントラニル酸、3-、4-、5-、6-クロロ
アントラニル酸、3-、4-、5-、6-ブロモアントラニル
酸、3-、4-、5-、6-フルオロアントラニル酸、3,4-、3,
5-、3,6-、4,5-、5,6-ジクロロアントラニル酸、3,4-、
3,5-、3,6-、4,5-、5,6-ジブロモアントラニル酸、3,4
-、3,5-、3,6-、4,5-、5,6-ジフルオロアントラニル
酸、3-ブロモ-4-クロロアントラニル酸、3-ブロモ-5-ク
ロロアントラニル酸、3-ブロモ-6-クロロアントラニル
酸、4-ブロモ-3-クロロアントラニル酸、4-ブロモ-5-ク
ロロアントラニル酸、4-ブロモ-6-クロロアントラニル
酸、5-ブロモ-3-クロロアントラニル酸、5-ブロモ-4-ク
ロロアントラニル酸、5-ブロモ-6-クロロアントラニル
酸、6-ブロモ-3-クロロアントラニル酸、6-ブロモ-4-ク
ロロアントラニル酸、6-ブロモ-5-クロロアントラニル
酸、3-クロロ-4-フルオロアントラニル酸、3-ブロモ-4-
フルオロアントラニル酸、3,4,5-、3,4,6-、3,5,6-、4,
5,6-トリクロロアントラニル酸、3,4,5-、3,4,6-、3,5,
6-、4,5,6-トリブロモアントラニル酸、3,4,5-、3,4,6
-、3,5,6-、4,5,6-トリフルオロアントラニル酸、3-、4
-、5-、6-ニトロアントラニル酸、3-、4-、5-、6-メチ
ルアントラニル酸、3-、4-、5-、6-エチルアントラニル
酸、3-、4-、5-、6-プロピルアントラニル酸、3-、4-、
5-、6-i-プロピルアントラニル酸、3-、4-、5-、6-メト
キシカルボニルアントラニル酸、3-、4-、5-、6-エトキ
シカルボニルアントラニル酸、3-、4-、5-、6-プロポキ
シカルボニルアントラニル酸、3-、4-、5-、6-i-プロポ
キシカルボニルアントラニル酸、3-、4-、5-、6-t-ブト
キシカルボニルアントラニル酸、
【0012】3-、4-、5-、6-(クロロメトキシ)アントラ
ニル酸、3-、4-、5-、6-(ブロモメトキシ)アントラニル
酸、3-、4-、5-、6-(1-クロロエトキシ)アントラニル
酸、3-、4-、5-、6-(2-クロロエトキシ)アントラニル
酸、3-、4-、5-、6-(1-クロロプロポキシ)アントラニル
酸、3-、4-、5-、6-(2-クロロプロポキシ)アントラニル
酸、3-、4-、5-、6-(3-クロロプロポキシ)アントラニル
酸、3-、4-、5-、6-(ジクロロメトキシ)アントラニル
酸、3-、4-、5-、6-(ジブロモメトキシ)アントラニル
酸、3-、4-、5-、6-(トリフルオロメトキシ)アントラニ
ル酸、3-、4-、5-、6-(クロロメトキシカルボニル)アン
トラニル酸、3-、4-、5-、6-(ブロモメトキシカルボニ
ル)アントラニル酸、3-、4-、5-、6-(1-クロロエトキシ
カルボニル)アントラニル酸、3-、4-、5-、6-(2-クロロ
エトキシカルボニル)アントラニル酸、3-、4-、5-、6-
(1-クロロプロポキシカルボニル)アントラニル酸、3-、
4-、5-、6-(ジクロロメトキシカルボニル)アントラニル
酸、3-、4-、5-、6-(ジブロモメトキシカルボニル)アン
トラニル酸、3-、4-、5-、6-(1,2-ジクロロエトキシカ
ルボニル)アントラニル酸、3-、4-、5-、6-(2,2-ジクロ
ロエトキシカルボニル)アントラニル酸、3-、4-、5-、6
-(トリフルオロメトキシカルボニル)アントラニル酸、3
-、4-、5-、6-クロロメチルアントラニル酸、3-、4-、5
-、6-ブロモメチルアントラニル酸、3-、4-、5-、6-(1-
クロロエチル)アントラニル酸、3-、4-、5-、6-(2-クロ
ロエチル)アントラニル酸、3-、4-、5-、6-(ジクロロメ
チル)アントラニル酸、3-、4-、5-、6-(1,2-ジクロロエ
チル)アントラニル酸、3-、4-、5-、6-(2,2-ジクロロエ
チル)アントラニル酸、
【0013】3,4-ジメチルアントラニル酸、3,4-ジエチ
ルアントラニル酸、3-ベンジルアントラニル酸、3-(2-
フェニルエチル)アントラニル酸、3-(4-クロロベンジ
ル)アントラニル酸、3-(2,4-ジクロロベンジル)アント
ラニル酸、3-(2,4-ジブロモベンジル)アントラニル酸、
3-メトキシアントラニル酸、3-エトキシアントラニル
酸、3-プロポキシアントラニル酸、3-i-プロポキシアン
トラニル酸、4,5-ジメトキシアントラニル酸、5,6-ジメ
トキシアントラニル酸、3,5-ジエトキシアントラニル
酸、3,6-ジプロポキシアントラニル酸、3-(N,N-ジメチ
ルアミノ)アントラニル酸、3-(N,N-ジエチルアミノ)ア
ントラニル酸、3-(N,N-ジプロピルアミノ)アントラニル
酸、3-(N,N-ジブチルアミノ)アントラニル酸、5-(1-ピ
ロリル)アントラニル酸、5-(1-イミダゾリル)アントラ
ニル酸、5-(1-ピラゾリル)アントラニル酸、5-(2H,4H-
ピロリル)アントラニル酸、5-ピペリジノアントラニル
酸、5-モルホリノアントラニル酸、5-(4-メチルピペラ
ジニル)アントラニル酸、5-(4-クロロメチルピペラジニ
ル)アントラニル酸、5-(4-ベンジルピペラジニル)アン
トラニル酸、5-(4-(3-メトキシベンジル)ピペラジニル)
アントラニル酸、5-(4-(フェニルカルボニルピペラジニ
ル)アントラニル酸、5-(4-(3,4-ジメトキシフェニルカ
ルボニル)ピペラジニル)アントラニル酸、5-(1-ピロリ
ルメチル)アントラニル酸、
【0014】5-モルホリノメチルアントラニル酸、4-
((4-メチルピペラジニル)メチル)アントラニル酸、5-(4
-(3-フェニルカルボニルプロピル)ピペラジニルカルボ
ニル)アントラニル酸、4,6-ジメチル-5-エチルオキシカ
ルボニルアントラニル酸、3-カルバモイルアントラニル
酸、3-(N-メチルカルバモイル)アントラニル酸、3-(N,N
-ジメチルカルバモイル)アントラニル酸、4-(4-メチル
ピペラジニルカルボニル)アントラニル酸、5-(4-ベンジ
ルピペリジノカルボニル)アントラニル酸、5-(4-(3-フ
ェニルカルボニルプロピル)ピペリジノカルボニル)アン
トラニル酸、3-クロロ-5,6-ジメトキシアントラニル
酸、4-アセトキシアントラニル酸、4-プロピオニルオキ
シアントラニル酸、4-ブチリルオキシアントラニル酸、
4-i-ブチリルオキシアントラニル酸、4-バレリルオキシ
アントラニル酸、4-i-バレリルオキシアントラニル酸、
4-ピバロイルオキシアントラニル酸、4-ベンゾイルオキ
シアントラニル酸等が挙げられる。
【0015】アントラニル酸類(I)は塩の形で使用す
ることもでき、アミノ基、カルボキシル基のいずれが塩
を形成していてもよい。かかる塩としては、例えば塩酸
塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0016】本発明は、アルキルピリジニウム塩の共存
下、水溶媒中で上記のようなアントラニル酸類(I)又
はその塩とホスゲンを反応させるものであるが、アルキ
ルピリジニウム塩としては、例えば下式(III)で示され
る化合物が挙げられる。
【0017】
【0018】(式中、R6は炭素数8〜20のアルキル基
を、R7は水素原子又は低級アルキル基を表し、X2はア
ニオンを表す。) ここで、炭素数8〜20のアルキル基としては、例えばn-
オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、i-デシ
ル、ウンデシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、
パルミチル、ステアリル、エイコシル等が、低級アルキ
ル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、i-プ
ロピル、ブチル、ペンチル等が挙げられる。X2として
は、例えばクロル、ブロム等のハロゲンアニオン、メタ
ンスルホニルオキシ、ベンゼンスルホニルオキシ、p-ト
ルエンスルホニルオキシ等のスルホニルオキシアニオン
などが挙げられる。
【0019】アルキルピリジニウム塩の代表例として
は、例えばラウリルピリジニウムクロライド、ラウリル
ピリジニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライ
ド、セチルピリジニウムブロマイド、ミリスチル-γ-ピ
コリウムクロライド、ラウリル-γ-ピコリウムベンゼン
スルホネート等が挙げられる。アルキルピリジニウム塩
は、アントラニル酸類(I)又はその塩に対して、通常
0.005〜0.5重量倍程度、好ましくは0.01〜0.2重量倍程
度使用される。
【0020】本発明は、アルキルピリジニウム塩の共存
下、水溶媒中でアントラニル酸類(I)又はその塩とホ
スゲンを反応させることを特徴とするものであるが、水
はアントラニル酸類(I)又はその塩に対して、通常1
〜20重量倍程度、好ましくは2〜10重量倍程度使用され
る。また本発明においては、溶媒として水とともに、水
と実質的に混和せずかつ反応に不活性な有機溶媒も併用
し得、このことにより目的物の收率を向上せしめること
ができる。かかる有機溶媒としては、例えばベンゼン、
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼ
ン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、ブロモ
ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭
素、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、エチ
ルエーテル、ジ-i-プロピルエーテル等のエーテル類が
挙げられる。なかでも芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化
水素等が好ましくとりわけトルエン、クロロベンゼン等
が好ましく用いられる。かかる有機溶媒を用いる場合、
その使用量は水に対して、通常0.01〜1重量倍程度、好
ましくは0.1〜0.5重量倍程度である。
【0021】ホスゲンとアントラニル酸類又はその塩と
を反応させるにあたり、アントラニル酸類は溶媒に溶解
又は懸濁して使用される。反応は、反応混合物のpHを通
常2〜10程度、好ましくは3〜9程度、より好ましくは
6〜7程度に調整しながら、ホスゲンを反応器内に導入
することにより実施される。反応温度は、通常0〜40
℃、好ましくは0〜20℃である。ここで、pHを調整する
にあたっては、アルカリが通常使用される。かかるアル
カリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水
酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属
水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ
金属炭酸塩、炭酸マグネウシム、炭酸カルシウム、炭酸
バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリ
ウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、
酸化カルシウム、酸化バリウム等のアルカリ土類金属酸
化物等が挙げられる。なかでも水酸化ナトリウム、水酸
化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸
カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭
酸カルシウム等が好ましく使用される。アルカリは、2
種以上混合して使用することもできるし、水等と混合し
て使用することもできる。
【0022】またホスゲンは、気体状態で導入してもよ
いし、加圧下に液体状態で導入してもよい。また有機溶
媒に溶解したホスゲンを導入することもできる。ホスゲ
ンの導入口は、反応器の気相部にあっても、液相部にあ
ってもよいが、後者の場合は、無水イサト酸類が析出し
て導入口を閉塞させることもあるので、この点を配慮し
て実施する必要がある。導入するホスゲンの量は、アン
トラニル酸類(I)又はその塩に対して、通常0.9〜2
モル倍程度、好ましくは1〜1.7モル倍程度である。ま
た反応混合物のpHを2〜10に保ちながら所定量のホスゲ
ンを導入した後、さらにpHが2未満、好ましくは1以下
になるまで、ホスゲンを導入するか、塩酸等の鉱酸を加
えるてpHを調整することが好ましく、これにより目的物
の収量をより向上させることができる。
【0023】かくして、目的とする無水イサト酸類が生
成するが、反応混合物からこれを取り出すにあたって
は、先ず残存するホスゲンを除害するのが通常である。
かかる除害方法としては、例えば窒素等の不活性ガスパ
ージによる方法、溶媒とともに留去させる方法、メタノ
ール等のアルコールを加えて反応させる方法等が挙げら
れる。除害後の反応混合物から、例えば有機溶媒を留去
した後、濾過等の分離手段を施すことにより、無水イサ
ト酸類を取り出すことができる。得られた無水イサト酸
類は、必要に応じてさらに精製することもできる。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、アルキルピリジニウム
塩の共存下、水溶媒中でアントラニル酸類(I)又はそ
の塩とホスゲンを反応させることにより、反応混合物の
ホイップクリーム化が抑制し得、反応器の容積効率が向
上して設備生産性が向上するのみならず、目的物である
無水イサト酸の収率も向上し得る。
【0025】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】実施例1 冷却器(-20℃)付きの200mlフラスコに水53g、ラウリル
ピリジニウムクロライド2.8g、4-クロロアントラニル酸
(純度98%)18gを加え、攪拌下に10℃まで冷却した後、p
Hが6〜7になるように水酸化ナトリウム水を加えた。
ついで、ホスゲンを反応器内の気相部に0.3g/分の流量
で導入し、温度が5〜15℃を保つように冷却、pHが6〜
7を保つように水酸化ナトリウム水を加えながら反応さ
せた。ホスゲンを23g導入した時点で、水酸化ナトリウ
ム水を加えるのを中止し、さらにpHが1になるまで、ホ
スゲンの導入を続けた。
【0027】反応終了後、メタノールを加えて過剰のホ
スゲンを除害した後、結晶を濾過、メタノール洗浄、乾
燥することにより、7-クロロ無水イサト酸18.5g(純度98
%)を得た。反応率98%、収率91%であった。また容積
効率(反応混合物の反応中の最大体積100mlあたりの目的
物の収量)は10g/100mlであった。
【0028】実施例2 実施例1において、ラウリルピリジニウムクロライド2.
8gの代わりに、トルエン17gとラウリルピリジニウムク
ロライド2.9gを用い、ホスゲンを0.2g/分の流量で導入
する以外は実施例1に準拠して実施することにより、7-
クロロ無水イサト酸19.6g(純度99.7%)を得た。反応率1
00%、収率97%、容積効率12g/100mlであった。
【0029】比較例1 実施例1において、フラスコを1lに代え、4-クロロアン
トラニル酸を4.5g、水とラウリルピリジニウムクロライ
ドの代わりに水88gを用い、水酸化ナトリウム水の代わ
りに炭酸ナトリウム水を用い、ホスゲンを5.2g用いる以
外は実施例1に準拠して実施することにより、7-クロロ
無水イサト酸4.1g(純度99%)を得た。反応率83%、収率
20%、容積効率1.2g/100mlであった。
【0030】比較例2 実施例1において、ラウリルピリジニウムクロライドを
用いずに、ホスゲンを導入したが、反応混合物がホイッ
プクリーム状になって増量し、冷却器を閉塞し始めたの
で、ホスゲンを約10g導入した時点で導入を中止した。
反応率33%であった。
【0031】比較例3 実施例2において、フラスコを300mlに代え、ラウリル
ピリジニウムクロライドを用いずに、水103g、トルエン
34g、4-クロロアントラニル酸を35g、ホスゲンを40g用
いる以外は実施例2に準拠して実施することにより、7-
クロロ無水イサト酸35.6g(純度73.8%)を得た。収率67
%、容積効率9g/100mlであった。
【0032】比較例4 実施例1において、ラウリルピリジニウムクロライドの
代わりに、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.7g
を用い、ホスゲンを30g導入する以外は、実施例1に準
拠して実施することにより、7-クロロ無水イサト酸を得
た。反応率69%、収率64%であった。
【0033】比較例5 実施例1において、ラウリルピリジニウムクロライドの
代わりに、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド
2.28gを用い、ホスゲンを30g導入する以外は、実施例1
に準拠して実施することにより、7-クロロ無水イサト酸
を得た。反応率73%であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−293745(JP,A) 仏国特許出願公開2436781(FR,A 1) Kappe,T.,et al.,Y lide von Heterocyc len,III,Monatsh.Ch em.,112,pp.1211−1219, (1981) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 265/00 - 265/38 C07D 279/00 - 279/36 B01J 31/00 - 31/02 CA(STN) REGISTRY(STN) WPI(DIALOG)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルキルピリジニウム塩の共存下、水溶媒
    中でホスゲンと式(I) (式中、R1、R2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲ
    ン原子、ニトロ基、ハロゲン原子が置換していることも
    ある低級アルキル基、ハロゲン原子が置換していること
    もあるアラルキル基、ハロゲン原子が置換していること
    もあるアルコキシ基、ハロゲン原子が置換していること
    もあるアルコキシカルボニル基、アシロキシ基又は 1
    NR45 1は単なる結合、低級アルキレン基又はカ
    ルボニル基を表す。 1が単なる結合又は低級アルキレ
    ン基である場合は、R4、R5はそれぞれ独立に低級アル
    キル基又はN、R4、R5が一緒になって他のヘテロ原子
    を含んでいることもある5員複素環若しくは6員複素環
    を表す。 1がカルボニル基である場合はR4、R5はそ
    れぞれ独立に水素原子、低級アルキル基又はN、R4
    5が一緒になって他のヘテロ原子を含んでいることも
    ある5員複素環若しくは6員複素環を表す。5員複素環
    若しくは6員複素環が他のヘテロ原子を含む場合は、該
    ヘテロ原子は置換基を有していてもよい。)を表す。R
    3は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロゲン原
    子が置換していることもある低級アルキル基、ハロゲン
    原子が置換していることもあるアラルキル基、ハロゲン
    原子が置換していることもあるアルコキシ基又はハロゲ
    ン原子が置換していることもあるアルコキシカルボニル
    基を表す。) で示されるアントラニル酸類又はその塩を反応させるこ
    とを特徴とする式(II) (式中、R1、R2、R3はそれぞれ前記と同じ意味を表
    す。) で示される無水イサト酸類の製造法。
  2. 【請求項2】アルキルピリジニウム塩が式(III) (式中、R6は炭素数8〜20のアルキル基を表し、R7
    水素原子又は低級アルキル基を表し、 2はアニオンを
    表す。) で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載
    の製造法。
  3. 【請求項3】水と実質的に混和せずかつ反応に不活性な
    有機溶媒の共存下に反応させることを特徴とする請求項
    1〜2の何れかに記載の製造法。
  4. 【請求項4】0〜40℃で実施することを特徴とする請求
    項1〜3の何れかに記載の製造法。
  5. 【請求項5】pHを2〜10に調整しながら、式(I)で示
    されるアントラニル酸類又はその塩に対して0.9〜2モ
    ル倍のホスゲンを使用した後、pHを2未満に調整するこ
    とを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の製造法。
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