JP3261088B2 - マグネタイト粒子およびその製造方法 - Google Patents

マグネタイト粒子およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はマグネタイト粒子に
関し、詳しくは粒子内にケイ素成分とアルミニウム成分
と鉄以外の金属元素を含有し、とりわけ粒子表面近傍に
分散したケイ素成分やアルミニウム成分と金属元素の
量、及び表面に露出したケイ素成分やアルミニウム成分
を制御することにより、吸油量、電気抵抗、磁気特性、
耐環境性等の諸特性をバランス良く向上させた、特に静
電複写磁性トナー用材料粉、塗料用黒色顔料粉の用途に
主に用いられるマグネタイト粒子およびその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】最近電子複写機、プリンター等の磁性ト
ナー用材料として、水溶液反応によるマグネタイト粒子
が広く利用されている。磁性トナーとしては各種の一般
的現像特性が要求されるが、近年、電子写真技術の発達
により、特にデジタル技術を用いた複写機、プリンター
が急速に発達し、要求特性がより高度になってきた。す
なわち、従来の文字以外にもグラフィックや、写真等の
出力も要求されており、特にプリンターの中には1イン
チ当たり1200ドット以上の能力の物も現れ、感光体
上の潜像はより精密になってきている。その為、現像で
の細線再現性の高さが強く要求されている。
【0003】例えば特開平5−72801号公報におい
て、磁性トナーについて開示されている。それによると
磁性粉として、抵抗は高く、流動性の良い物が望まれて
いる。
【0004】特開平5−100474号公報において、
磁性トナーについて開示されている内容に、磁性酸化鉄
は耐環境性の面でいまだ改良すべき点を有していると記
載のある様に、トナー製造において種々の特性を満足し
た上に、更に耐環境性(耐吸湿性)に優れた磁性粉が望
まれている。
【0005】特開平7−239571号公報においても
同様に磁性粉の耐環境性、特に高温高湿下における問題
点がある事を指摘している。
【0006】特開平3−1160号公報にて磁性トナー
について開示されている内容に、多様な環境下において
満足させる為には、高抵抗化や低吸湿が必要となる旨が
記載されている。又、画像への飛び散りをなくす為に
は、低保磁力、低残留磁化の物が望まれている。又、ト
ナーには、負荷電性、正荷電性のトナーがあり、又、マ
グネタイト等を用いた樹脂キャリア等においても、負又
は正荷電性のものがある。
【0007】つまり、これらの要求を満足させる為に
は、通常磁性粉に要求される特性のみならず、特に抵
抗、流動性、耐環境性、磁気特性のバランスに優れ、任
意に帯電性を調整できる磁性粉を提供する必要がある。
従来、マグネタイト粒子において種々の改善が行われて
きた。
【0008】例えば特開昭61−155223号公報、
特開昭62−278131号公報、特開昭62−244
12号公報等においては、ケイ素成分を粒子粉末内部の
みに含有したマグネタイト粒子がそれぞれ開示されてい
る。これらの粒子では、画像濃度が改善された画質が得
られるものの未だ不十分である。さらに、これらの提案
によるマグネタイト粒子は、流動性が悪くしかも、輸送
時の振動等により、粉体の充填密度が上がりすぎ、トナ
ー化時の作業性を著しく低下させるという問題がある。
【0009】特開平7−110598号公報には、ケイ
素成分を粒子粉末内部に含有し、ケイ素成分とアルミニ
ウム成分とを中和により付着させるマグネタイト粒子が
開示されている。上記同様に画像濃度の改善並びに流動
性の改善が未だ不十分である。又、表面がケイ素やアル
ミニウム成分に覆われる為、吸湿による耐環境性に問題
がある上、凝集塊の存在が多いという欠点を有する。
【0010】特開平4−170325号公報には、ケイ
素成分やアルミニウム成分を粉末内部に含有又は含有し
ない粉末粒子表面をケイ素やアルミニウムで中和処理を
行い、酸化還元にて高い保持力,高い残留磁化の粒子製
造方法が開示されている。しかしながら、上記特開平4
−170326号公報には、残留磁化と保磁力が低く、
電気抵抗が高く、しかも作業性、流動性、分散性及び耐
環境性に優れ、目的に応じ任意、帯電調整のできるマグ
ネタイト粒子およびその製造方法を提供するという課題
はなく、酸化還元前の中間生成物についても上記と同様
の欠点を有する。
【0011】特開平5−213620号公報において
は、ケイ素成分を中心と表面部にわけ、残留磁化のバラ
ンスよく、流動性も良好であり、抵抗の高いマグネタイ
ト粒子が開示されている。ところが、細線再現性が改善
された画質が得られるものの、吸湿により環境安定性に
問題がある。
【0012】又、特開平7−267646号公報におい
ては、無水ケイ酸を用いて、耐吸湿性、磁気特性に優れ
た磁性粉が開示されている。しかし、使用されているケ
イ素成分が無水ケイ酸であり、粒子生成反応途中から無
水ケイ酸を添加するという記載にあるように、マグネタ
イト粒子内で無水ケイ酸が独立した微粒子として存在す
る上、粒子中心部にはケイ素成分がないことにより、残
留磁化が高く、又、流動性においても未だ不十分であ
る。
【0013】さらに、特開平9−59025号公報にお
いては、ケイ素等を使用し、流動性や黒色度に優れた磁
性粉が開示されている。しかし粒子径の割に保磁力が高
いため、画像の細線化の改良及び流動性において、未だ
不十分である、という問題がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこれら従来技
術の課題を解決すべくなされたもので、残留磁化と保磁
力が低く、電気抵抗が高く、しかも作業性、流動性、分
散性及び耐環境性に優れ、目的に応じ任意に帯電調整の
できるマグネタイト粒子およびその製造方法を提供する
ことを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成すべく鋭意検討の結果、マグネタイト粒子内に
イ素成分、アルミニウム成分、鉄以外の金属成分を含有
するのみならず、粒子の外殻部にケイ素成分,アルミニ
ウム成分と結合した、Zn,Mn,Cu,Ni,Co,
Cr,Cd,Zr,Sn,Mg,Tiの中から選ばれる
少なくとも一種以上の金属成分からなる金属化合物によ
って粒子外殻を被覆させ、かつ粒子表面にケイ素成分と
アルミニウム成分の総量を0.01〜0.5wt%露出
させることで上記目的が達成しうることを知見して本発
明に到達した。 なお、本発明で外殻部とは、粒子表面
より鉄(Fe)を粒子内の全Feに対して、40wt%
溶解させたところまでの部分を粒子外殻部とし、そこよ
り中心までを内殻部とする。
【0016】かかる知見に基づく、本発明の[請求項
1]のマグネタイト粒子の発明は、粒子が内殻部と外殻
部とからなり、上記内殻部中心から外殻部表面へ連続的
にケイ素成分とアルミニウム成分とを、マグネタイトに
対してその存在量をケイ素及びアルミニウム成分に換算
して0.2〜1.2wt%含有し、上記外殻部の表面に
はその存在量をケイ素及びアルミニウム成分に換算して
0.01〜0.5wt%露出し、上記外殻部が、鉄及び
ケイ素及びアルミニウム成分と結合したZn,Mn,C
u,Ni,Co,Cr,Cd,Zr,Sn,Mg,Ti
の中から選ばれる少なくとも一種以上の金属成分からな
る複合酸化物であると共に、粒子の外殻部と内殻部とで
Feに対するZn,Mn,Cu,Ni,Co,Cr,C
d,Zr,Sn,Mg,Ti各成分の濃度が外殻部の方
が高く、かつ表層部の方が高くなるように勾配をつけ、
かつ、粒子全体中のZn,Mn,Cu,Ni,Co,C
r,Cd,Zr,Sn,Mg,Ti各成分の総量が各金
属元素に換算してマグネタイト粒子に対して0.2〜
4.0wt%であることを特徴とする。なお、以下ケイ
素成分量,アルミニウム成分量はケイ素,アルミニウム
に換算していることを指す。
【0017】
【0018】本発明の[請求項2]のマグネタイト粒子
の発明は、請求項1において、吸油量が20mL/10
0g以下、電気抵抗が1×104 Ωcm以上、高温高湿
下で吸湿させた後の含有水分率が0.6%以下であるこ
とを特徴とする。
【0019】本発明の[請求項]のマグネタイト粒子
の発明は、請求項1において、残留磁化σr が6emu/g
以下、凝集度が35%以下であることを特徴とする。
【0020】本発明の[請求項]のマグネタイト粒子
製造方法の発明は、主成分が第一鉄塩である水溶液と、
ケイ素成分とアルミニウム成分及び、鉄に対して1.0
〜1.1当量のアルカリを混合し、pHを7〜10に維
持して酸化反応を行い、反応の途中で当初のアルカリに
対して0.9〜1.2当量となる不足の鉄を追加した
後、引き続きpH6〜10に維持して酸化反応を行い、
不足の鉄を追加した以降にZn,Mn,Cu,Ni,C
o,Cr,Cd,Zr,Sn,Mg,Tiの中から選ば
れる少なくとも一種以上の金属成分を各成分の総量が各
金属元素に換算してマグネタイト粒子に対して0.2〜
4.0wt%となるように添加し、該金属成分の濃度が
粒子外殻部の方が高く、かつ表層部の方が高くなるよう
に調整することを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。
【0022】本発明のマグネタイト粒子は、粒子が内
殻部と外殻部とからなり、上記内殻部中心から外殻部
面へ連続的にケイ素成分とアルミニウム成分とを、マグ
ネタイトに対してその存在量をケイ素及びアルミニウム
成分に換算して0.2〜1.2wt%含有し、上記外
殻部の表面にはその存在量をケイ素及びアルミニウム成
に換算して0.01〜0.5wt%露出し、上記外
殻部が、鉄及びケイ素及びアルミニウム成分成分と結合
したZn,Mn,Cu,Ni,Co,Cr,Cd,Z
r,Sn,Mg,Tiの中から選ばれる少なくとも一種
以上の金属成分からなる複合酸化物である。
【0023】本発明のマグネタイト粒子は粒子のケイ素
成分やアルミニウム成分が中心から表面へ連続的に含有
すること、及び表面にケイ素成分やアルミニウム成分を
含有することが必要である。マグネタイト粒子の中心に
ケイ素やアルミニウムが存在しても、表面にケイ素成分
やアルミニウム成分の一部が露出していなければ流動性
に劣り、電気抵抗の改善寄与が少なくなる方向となる。
又、粒子表面のみにケイ素成分やアルミニウム成分が存
在する場合、粒子径の割に残留磁化と保磁力の高いもの
となりバランスが悪くなる。又、中心から表面に連続し
ない場合は、後述する金属成分との結合による効果が劣
るものとなる。
【0024】マグネタイト粒子に対する前記ケイ素成分
とアルミニウム成分のケイ素,アルミニウムに換算した
総量は粒子全体(以下、「総Si,Al量」という。)
で0.2〜1.2wt%である。これは総Si,Al量
が0.2wt%未満の場合では残留磁化、保磁力、流動
性において効果が少なく劣るものとなるからである。
又、総Si,Al量が1.2wt%を超えた場合では電
気抵抗、残留磁化、保磁力、流動性の改善効果は充分に
得られるものの、耐環境性、特に吸湿性の高い物となる
うえ、経済的でないからである。
【0025】なお、ここでいう鉄及びケイ素成分やアル
ミニウム成分と金属成分との化合物は、金属酸化物また
は水酸化物に取り込まれたケイ素成分やアルミニウム成
分をもつ複合酸化物をいう。
【0026】又、ここでいう表面露出ケイ素成分やアル
ミニウム成分とは、下記の分析方法によって得られた値
である。すなわち、試料0.900gを秤量し、1N−
NaOH溶液25mLを加える。液を攪拌しながら45
℃に加温し、粒子表面のケイ素成分やアルミニウム成分
を溶解する。未溶解物を濾過した後、溶出液を純水で1
25mLに定量し、溶出液に含まれるケイ素やアルミニ
ウムをプラズマ発光分析(ICP)で定量する。 表面露出ケイ素成分,アルミニウム成分={[溶出液に
含まれるケイ素,アルミニウム(g/L)× 125÷1000]/
0.900(g)}×100
【0027】なお、マグネタイト粒子全体の総Si,A
l量は試料を塩−フッ酸溶液に溶解し、プラズマ発光
分析(IPC)で定量する。
【0028】本発明のマグネタイト粒子は上述のように
マグネタイト粒子の中心と表面の双方にケイ素成分やア
ルミニウム成分が存在することが必要である。
【0029】また、本発明は粒子の外殻部に、鉄及び
n,Mn,Cu,Ni,Co,Cr,Cd,Zr,S
n,Mg,Tiの中から選ばれる少なくとも一種以上の
金属成分とケイ素成分やアルミニウム成分の複合酸化
が存在することが必要である。
【0030】さらには、Zn,Mn,Cu,Ni,C
o,Cr,Cd,Zr,Sn,Mg,Tiは粒子内のそ
の存在量が総量で金属元素に換算して(以下、「金属成
分量」とは金属元素に換算したことを指す。)0.2〜
4.0wt%含有していることが好ましい。これは金属
成分の総量が0.2wt%に満たない場合では、粒子外
殻の鉄及びケイ素成分やアルミニウム成分と結合したZ
n,Mn,Cu,Ni,Co,Cr,Cd,Zr,S
n,Mg,Tiの中から選ばれる少なくとも一種以上の
金属成分からなる複合酸化物の形成が不十分となり、本
発明の目的である、耐環境性、電気抵抗等の改善効果が
小さくなるからである。また、総量が4.0wt%を超
える場合では、飽和磁化を低下させ、吸油量を高くし、
経済的にも好ましくないからである。
【0031】更に好ましくは、粒子内のZn,Mn,C
u,Ni,Co,Cr,Cd,Zr,Sn,Mg,Ti
の中から選ばれる少なくとも一種以上の金属成分の分布
について、マグネタイト粒子の外殻部と内殻部とでFe
に対するZn,Mn,Cu,Ni,Co,Cr,Cd,
Zr,Sn,Mg,Ti各成分の濃度を外殻部の方が高
くなるように勾配をつけ、かつ、粒子全体中のZn,M
n,Cu,Ni,Co,Cr,Cd,Zr,Sn,M
g,Ti各成分の総量が各金属元素に換算してマグネタ
イト粒子に対して0.2〜4.0wt%であるマグネタ
イト粒子が好ましい。上記濃度を外殻部の方が高くなる
ように勾配をつける方法としては、例えば連続的に変化
させる方法、pHを調節する方法、段階的に添加する方
法等、公知の手法があげられるが、何等限定されるもの
ではない。ただし、粒子生成完了後の表面無機コートな
どの方法で粒子表面に酸化物などを固着させる方法で
は、本発明の効果は十分に得ることができない。
【0032】更に好ましくは、粒子表面よりFeを粒子
中の全Feに対して溶解率で20%及び40%溶解させ
た時のZn,Mn,Cu,Ni,Co,Cr,Cd,Z
r,Sn,Mg,Tiの各成分の存在量の総量が各々の
時点での溶解Feに対してA 20(原子%)、A40(原子
%)とすると、A20(原子%)>A40(原子%)の条件
を満たすことである。さらに、好ましくは、0.01≦
(2×A40−A20)/A 20<1を満たすことである。こ
れは、この条件外では本目的とする特性値に達するため
に使用する金属成分が多く必要となり経済的でなく、飽
和磁化の低下をまねいたり、外殻部のケイ素成分やアル
ミニウム成分とのバランスにより目的とする流動性と吸
湿性のバランスが取りにくくなる方向になるからであ
る。
【0033】又、本発明のマグネタイト粒子は吸油量
が、20ml/100g以下が好ましい。これは、吸油
量が20ml/100gを超える場合、樹脂との混合分
散性が悪くなる恐れがありトナー化後の磁性粉の露出又
は、こぼれによる画像特性に影響がでる可能性があるか
らである。
【0034】又、本発明のマグネタイト粒子は電気抵抗
が1×104 Ωcm以上が好ましい。これは、1×10
4 Ωcm以下の場合トナーが必要とする帯電量を保持す
る事が困難な方向にあり画像濃度低下等のトナー特性に
影響を及ぼす可能性があるからである。
【0035】又、本発明のマグネタイト粒子は、高温高
湿下で吸湿させた後の含有水分率が0.6%以下である
事が好ましい。これは、0.6%を超える場合、環境
性、特に高湿度下における長期放置等において帯電特性
の劣化を生じるおそれがあるからである。
【0036】ここでいう高温高湿下の吸湿、及び含有水
分率とは、35℃、湿度85%で3日間、吸湿させた
後、カールフィッシャー法にて150℃における水分率
を測定した値の事をいう。
【0037】すなわち、粒子の中心から表面に連続的に
ケイ素成分とアルミニウム成分を存在させ、かつケイ素
成分やアルミニウム成分を表面に露出させ、かつ金属成
分を含有させる事、更に好ましくは、ケイ素成分やアル
ミニウム成分及び金属成分をマグネタイト粒子のより外
側に偏らせて存在させることで、より少量のケイ素成分
やアルミニウム成分、金属成分で本発明の課題を達成で
きる事を本願出願人等は見出した。
【0038】なぜ、本発明のマグネタイト粒子が本目的
を達成したのかについての原因は定かではないが、鉄及
ケイ素成分やアルミニウム成分とZn,Mn,Cu,
Ni,Co,Cr,Cd,Zr,Sn,Mg.Tiの中
から選ばれる少なくとも一種以上の金属成分と結合した
複合酸化物が、粒子外殻を均一に被覆したためと推測す
る。すなわち、この複合酸化物形成のため、本発明のケ
イ素成分やアルミニウム成分は非常に微細な粒子とな
り、それが故に、マグネタイト粒子の成長につれて母体
粒子内に円滑に、かつ、均一に取り込まれ、更には表面
に薄く均一なケイ素成分が露出することになり少量の表
面露出ケイ素成分やアルミニウム成分においても流動性
が十分になり、更にはその相乗効果により、電気抵抗が
高く、耐環境性に優れた粒子表面の平滑なマグネタイト
粒子が得られたものと推察できる。
【0039】又、本発明のマグネタイト粒子は、粒子径
に対し磁気特性のバランスの良い、とりわけ残留磁化、
及び保磁力の低い物であることに加え、粒子表面をケイ
素成分やアルミニウム成分並びにFe以外の金属成分の
存在濃度が高い為、磁気凝集の低下により、更に、流動
性、及び分散性に寄与しているものと思われる。
【0040】次に、本発明の好ましい製造方法を説明す
る。
【0041】先づ、主成分が第一鉄塩である水溶液と、
ケイ素成分とアルミニウム成分、及び、鉄に対して1.
0〜1.1当量のアルカリを混合する。ここに用いられ
る第一鉄塩としては硫酸第一鉄が好ましい。又、ケイ素
成分としては、ケイ酸化合物から調整された含水ケイ酸
コロイドを含む溶液が好ましい。例えば、ケイ酸ソーダ
等の使用により生成粒子中にケイ酸化合物(含水化合物
を含む。)を生じせしめる事ができる。アルミニウム成
分も同様に、例えばアルミン酸ソーダ、硫酸アルミニウ
ム等の使用により、生成粒子中にアルミン酸化合物(含
水化合物を含む)を生じせしめる事ができる。
【0042】この混合液に酸素含有ガス、望ましくは空
気を吹き込み、60〜100℃、好ましくは80〜90
℃で、酸化反応を行い、種晶を生成させる。この酸化反
応量の制御は、反応中に未反応の水酸化第一鉄の分析と
通気酸素含有ガス量を調節して行う。この酸化反応にお
いては、pHを7〜10、好ましくはpH7〜9に維持
することが肝要である。
【0043】この酸化反応の途中で、種晶生成量が全酸
化量の1〜30%、好ましくは5〜25%となったとき
に、当初のアルカリに対して0.9〜1.2当量、好ま
しくは1.05〜1.15当量となる不足の鉄を追加す
る。ここで用いられる鉄としては、硫酸第一鉄等の第一
鉄塩溶液が望ましい。
【0044】さらに、pH6〜10、好ましくはpH6
〜9に維持しながら酸化反応を維持し、粒子を成長させ
る。この間、すなわち不足の鉄を追加してから反応が完
結するまでの間に、Zn,Mn,Cu,Ni,Co,C
r,Cd,Zr,Sn,Mg,Tiの中から選ばれる少
なくとも一種以上の金属成分を含有する水溶液を反応系
に添加する。
【0045】この際、添加される金属元素は水溶液であ
っても、水酸化物の状態であってもかまわない。又、2
種以上の成分を添加する場合、2種別々に添加しても、
2種混合したものを添加してもかまわない。
【0046】そして反応終了後、常法により洗浄、濾
過、乾燥、粉砕し、マグネタイトを得る。
【0047】本発明では、上述の様に酸化反応中のpH
を6〜10好ましくはpHを6〜9に調整することが好
ましい。これは、酸化反応時のpHを10より高くする
と、ケイ素成分やアルミニウム成分がマグネタイト粒子
中心に取り込まれやすくなり、その結果、粒子外殻及び
表面露出のケイ素成分の存在量が不十分となるからであ
る。また、金属成分と結合した化合物の形成において不
十分となるからである。また、逆の場合は中心に取り込
まれにくく表面に析出するからである。
【0048】本発明者等が酸化反応途中の粒子形状につ
いて観察した結果では、最初の反応で生成する種晶は不
定形ではあるが粒度分布の狭い粒子の生成が認められ
る。その後、後半の中性域、弱アルカリ域(pH6〜1
0)での反応で徐々に擬球状に変化していく。
【0049】
【実施例】以下実施例について説明する。
【0050】[実施例1」Fe2+1.8mol/Lを含
む硫酸第一鉄水溶液70Lと、Si品位13.4%のケ
イ酸ソーダ546g,Al品位4.2%の硫酸アルミニ
ウム1767g、水酸化ナトリウム10.6kgを混合
し、全量を140Lとし、温度を90℃に維持しながら
20L/minの空気を吹き込み、当初の水酸化第一鉄
に対して、20%消費された時点で種晶生成を確認し
た。次いで、上記種晶粒子を含む水酸化鉄スラリーに反
応当初に用いたものと同濃度の硫酸第一鉄水溶液10L
を加え、全量を150Lとし、充分均一に混合されたの
を確認してからpH6〜9、温度90℃にて、20L/
minの空気を吹き込み酸化反応を進行した。途中、未
反応の水酸化第一鉄濃度を調べながら、反応の進行率を
調べ、その進行率が反応当初に対して45%進行した時
点で0.1mol/Lの硫酸ニッケル水溶液10Lを約
100分間かけて、酸化反応継続中のマグネタイトを含
んだ水酸化第一鉄スラリーに添加し、pHを6〜9に維
持して酸化反応を完結した。反応が終了したマグネタイ
トスラリーは、常法により洗浄、濾過、乾燥、粉砕し
た。こうして得られたマグネタイトは、Si量が0.6
wt%,Al量が0.6wt%となり、総Si,Al量
が1.2wt%、表面露出Si量が0.13wt%、表
面露出Al量が0.17wt%、表面露出Si,Al総
量が0.30wt%及びNi総量が0.5wt%であっ
た。
【0051】このようにして得られたマグネタイトを、
前記記載のA20原子%、A40原子%、粒径、磁気特性、
電気抵抗、凝集度、高温高湿での吸湿後の含有水分率、
吸油量及び帯電量を測定し、結果を「表1」に示す。
【0052】測定方法 粒径…透過型電子顕微鏡写真(倍率30000倍)
より写真上の粒子径を測定し、その平均値をもって粒径
とした。 磁気特性…東英工業製、振動試料型磁力計「VSM
−P7型」(商品名)を用いて、印加磁場10KOeで
測定した。 電気抵抗…試料10gをホルダーに入れ600kg
/cm2 の圧力を加えて25mmφの錠剤型に成形後、
電極を取り付け150kg/cm2 の加圧状態で測定す
る。測定に使用した試料の厚さ、及び断面積と抵抗値か
ら算出して、マグネタイト粒子の電気抵抗値を求めた。 高温高湿で吸湿後の含有水分率(カールフィッシャ
ー法)…乾燥機で150℃であらかじめ乾燥させたもの
を、高温高湿機(TABAI ESPEC CORP製「LHL-111」( 商
品名) )を使用し、35℃,85%RHで3日間吸湿さ
せたものを、Mitsubishi Chemical Itd 製「WATER VAPO
RIZER VA-05 」(商品名)にて150℃でマグネタイト
粒子中の水分を蒸発させ、MITSUBISHI KASEI Corporati
on製「MOISTUR METER CA-03 」(商品名)にて検出し、
マグネタイト粒子中の含有水分率を測定した。 吸油量…JIS K 5101によって測定した。 A20原子%、A40原子%…試料25gを1N−H2
SO4 水溶液中に加え、60℃にて徐々に溶解し、その
溶解過程で溶解液を各20mL採取し、メンブランフィ
ルターで不溶解分を濾別した後、溶解分をプラズマ発光
分析(ICP)で定量した。鉄が40%、20%溶解し
た時点での添加した金属成分の合計量を、溶解した鉄に
対する存在率とした。 凝集度…Hosokawa Micron 製「Powder Tester Type
PT-E」(商品名)を用いて、振動時間65secにて測
定した。測定結果を所定の計算式にて計算し、凝集度を
求めた。そして、凝集度35%未満を低とし、35%以
上を高とした。 帯電量…鉄粉キャリアを用いてブローオフ方式によ
り求めた。
【0053】[実施例2]Si量を0.3wt%、Al量
を0.2wt%、表面露出Si,Al総量を0.14w
t%及び金属総量を4.0wt%となるように調整し、
反応途中に添加する金属の種類をZn,Co,Ni,M
g,Ti,Mnとし,不足の鉄追加後の反応pHをpH
6〜10と変化させた以外は、実施例1と同様の操作によ
り、マグネタイトを得た。
【0054】[実施例3]Si量を0.8wt%、Al量
を0.1wt%、表面露出Si,Al総量を0.41w
t%及び金属総量を3.0wt%となるように調整し、
反応途中に添加する金属の種類をZn,Mn,Cuと
し、不足の鉄追加後の反応pHをpH6〜8と変化させ
た以外は、実施例1と同様の操作により、マグネタイト
を得た。
【0055】[実施例4]Si量を0.1wt%、Al量
を0.4wt%、表面露出Si,Al総量を0.10w
t%及び金属総量を1.4wt%となるように調整し、
反応途中に添加する金属の種類をZn,Mn,Zrとし
た以外は実施例1と同様の操作により、マグネタイトを
得た。
【0056】[実施例5]Si量を0.2wt%、Al量
を0.1wt%、表面露出Si,Al総量を0.04w
t%及び金属総量を2.6wt%となるように調整し、
反応途中に添加する金属の種類をZn,Mn,Cu,N
iとした以外は実施例1と同様の操作により、マグネタ
イトを得た。
【0057】[実施例6]Si量を0.1wt%、Al量
を0.8wt%、表面露出Si,Al総量を0.02w
t%及び金属総量を0.3wt%となるように調整し、
反応途中に添加する金属の種類をCoとし,不足の鉄追
加後の反応pHをpH6〜9と変化させた以外は、実施
例1と同様の操作により、マグネタイトを得た。
【0058】[実施例7]Si量を0.01wt%、Al
量を0.99wt%、表面露出Si,Al総量を0.3
0wt%及び金属総量を1.9wt%となるように調整
し、反応途中に添加する金属の種類をCr,Zr,S
n,Cuとし,不足の鉄追加後の反応pHをpH6〜9
と変化させた以外は、実施例1と同様の操作により、マ
グネタイトを得た。
【0059】[比較例1」粒子内の金属成分の勾配を変
化させた以外は実施例4と同様の操作により、マグネタ
イトを得た。
【0060】[比較例2」金属を添加せず、Si量を1.
2wt%、Al量を0.6wt%、表面露出量を0.73
wt%とした以外は実施例1と同様の操作により、マグ
ネタイトを得た。
【0061】[比較例3」Si量を0.4wt%、Al量
を0.2wt%とし、金属総量を2.9wt%とし、表面
露出量を零とし、反応途中に添加する金属の種類をZ
n,Mn,Niとし、不足の鉄追加後の反応pHをpH
10〜11と変化させた以外は、実施例1と同様の操作によ
り、マグネタイトを得た。
【0062】[比較例4」金属総量を5.5wt%とした
以外は実施例2と同様の操作により、マグネタイトを得
た。
【0063】[比較例5」SiやAlを添加せず、金属
総量1.9wt%とし、反応途中に添加する金属の種類
をZn,Mn,Zrとした以外は実施例1と同様の操作
により、マグネタイトを得た。
【0064】以上の 結果を「表1」に示す。
【0065】
【表1】
【0066】「表1」の結果に示されるように、本発明
によって得られた実施例1〜7のマグネタイト粒子は、
電気抵抗、残留磁化、吸油量、含有水分率及び凝集度の
いずれの特性も良好であった。又、帯電量も−側から+
側まで調整可能であった。
【0067】これに対して、比較例1のマグネタイト粒
子は、粒子表面に金属成分が少ないため、電気抵抗及び
凝集度が共に劣る粒子となった。
【0068】又、比較例2のマグネタイト粒子は、総S
i,Al量の存在量も多く、又、粒子表面にSiとAl
が多く露出しているため、電気抵抗及び凝集度は良好な
ものの、吸油量及び含有水分率が共に高い粒子となっ
た。
【0069】これに対して、粒子中心にはケイ素成分と
アルミニウム成分を含有するものの、表面には全く存在
しない比較例3においては、吸油量及び含有水分率は良
好なものの、粒子表面にケイ素成分やアルミニウム成分
がないことにより、添加量の割に電気抵抗が低く、そし
て凝集度が高く、流動性に劣るものとなった。
【0070】又、金属量の多い比較例4については、電
気抵抗は十分に改良されているが、吸油量、含有水分率
及び凝集度が共に高く、かつ、飽和磁化の低下を招い
た。
【0071】又、更には、粒子中心にケイ素成分やアル
ミニウム成分を含有しない比較例5においては、粒子中
心にケイ素が含有されていないために、残留磁化が粒子
径の割に高く、かつ電気抵抗が低く、流動性に劣るもの
となった。
【0072】
【発明の効果】以上のことより、本発明によるマグネタ
イト粒子は、ケイ素成分とアルミニウム成分が粒子中心
から表面まで連続的に存在し、かつ、粒子表面を鉄及び
ケイ素成分やアルミニウム成分と結合した請求項記載の
金属成分が被覆することにより、吸油量が低く、電気抵
抗が高く、磁気特性、耐環境性、流動性に優れているこ
とにより、静電複写磁性トナー用として好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 49/00 - 49/08 G03G 9/083 H01F 1/11

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粒子が内殻部と外殻部とからなり、 上記内殻部中心から外殻部表面へ連続的にケイ素成分と
    アルミニウム成分とを、マグネタイトに対してその存在
    量をケイ素及びアルミニウム成分に換算して0.2〜
    1.2wt%含有し、 上記外殻部の表面にはその存在量をケイ素及びアルミニ
    ウム成分に換算して0.01〜0.5wt%露出し、 上記外殻部が、鉄及びケイ素及びアルミニウム成分と結
    合したZn,Mn,Cu,Ni,Co,Cr,Cd,Z
    r,Sn,Mg,Tiの中から選ばれる少なくとも一種
    以上の金属成分からなる複合酸化物であると共に、 粒子の外殻部と内殻部とでFeに対するZn,Mn,C
    u,Ni,Co,Cr,Cd,Zr,Sn,Mg,Ti
    各成分の濃度が外殻部の方が高く、かつ表層部の方が高
    くなるように勾配をつけ、かつ、 粒子全体中のZn,Mn,Cu,Ni,Co,Cr,C
    d,Zr,Sn,Mg,Ti各成分の総量が各金属元素
    に換算してマグネタイト粒子に対して0.2〜4.0w
    t%であることを特徴とするマグネタイト粒子。
  2. 【請求項2】 請求項1において、 吸油量が20mL/100g以下、 電気抵抗が1×104 Ωcm以上、 高温高湿下で吸湿させた後の含有水分率が0.6%以下
    としたことを特徴とするマグネタイト粒子。
  3. 【請求項3】 請求項1において、 残留磁化σr が6emu/g 以下、 凝集度が35%以下としたことを特徴とするマグネタイ
    ト粒子。
  4. 【請求項4】 主成分が第一鉄塩である水溶液と、ケイ
    素成分とアルミニウム成分及び、鉄に対して1.0〜
    1.1当量のアルカリを混合し、pHを7〜10に維持
    して酸化反応を行い、反応の途中で当初のアルカリに対
    して0.9〜1.2当量となる不足の鉄を追加した後、
    引き続きpH6〜10に維持して酸化反応を行い、不足
    の鉄を追加した以降にZn,Mn,Cu,Ni,Co,
    Cr,Cd,Zr,Sn,Mg,Tiの中から選ばれる
    少なくとも一種以上の金属成分を各成分の総量が各金属
    元素に換算してマグネタイト粒子に対して0.2〜4.
    0wt%となるように添加し、該金属成分の濃度が粒子
    外殻部の方が高く、かつ表層部の方が高くなるように調
    整することを特徴とするマグネタイト粒子の製造方法。
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