JP3260447B2 - ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

ポリエステル樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐衝撃性が改良された
相溶性良好なポリエステル樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に熱可塑性ポリエステル樹脂は、機
械的および電気的特性、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性な
どにすぐれているため、エンジニアリング樹脂として各
種の機械製品、電気絶縁材、自動車部品などの用途に広
く使用されるようになってきたが、耐衝撃性の点では満
足されないという問題がある。また、剛性を含めた機械
的強度や寸法安定性を向上させるため、ガラス繊維を配
合する方法も用いられているが、この場合にも耐衝撃性
は不十分である。
【0003】こうした欠点を補うために、他の種類の樹
脂のブレンドにより熱可塑性ポリエステル樹脂の改質
が、種々提案されている。このような提案の一例とし
て、各種のエチレン共重合体に無水マレイン酸をグラフ
トしたグラフト変性体を配合する方法があり一応の成果
を得ている。とくに出願人の提案に係るエステル含量の
多いエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体の
無水マレイン酸グラフト変性体を用いる処方(特公平4
−34571号)では高耐衝撃性のポリエステル樹脂組
成物が得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、そこに
具体的に開示されている配合例では、組成物の相溶性が
必らずしも充分でない場合があり、用途によっては層状
剥離やしわの発生等の問題が顕在化するおそれがあっ
た。
【0005】そこで本発明者らは、耐衝撃性改良効果が
充分に大きく、かつポリエステル樹脂に対する相溶性の
良好な改質剤を見出すべく検討を行った。その結果、後
記変性エチレン共重合体を用いるときにその目的が達成
できることを知った。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明によれ
ば、熱可塑性ポリエステル樹脂60〜95重量部と変性
エチレン共重合体40〜5重量部とからなり、該変性エ
チレン共重合体が、(メタ)アクリル酸エステル重合単
位が15〜40重量%、(メタ)アクリル酸重合単位が
1〜10重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸エステ
ル・(メタ)アクリル酸共重合体またはそのアイオノマ
ーに、不飽和カルボン酸もしくはその無水物をグラフト
共重合させたものであることを特徴とするポリエステル
樹脂組成物が提供される。ここに(メタ)アクリル酸エ
ステルとはアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エス
テルであり、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸または
メタクリル酸である。
【0007】本発明で用いられる熱可塑性ポリエステル
樹脂は、カルボン酸成分とアルコール成分とからなる
が、本発明では、芳香族ジカルボン酸成分を主成分とす
るカルボン酸成分と、炭素数2〜5程度の脂肪酸ジオー
ル成分または脂環族ジオール成分を主成分とするジオー
ル成分とからなる熱可塑性ポリエステル樹脂が好ましく
用いられている。
【0008】芳香族ジカルボン酸成分としては、具体的
には、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン
酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが好ましく用
いられるが、本発明では、イソフタル酸、脂肪族ジカル
ボン酸あるいは脂環族ジカルボン酸などを少量成分とし
て用いることもできる。
【0009】また、ジオール成分としては、具体的に
は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,
4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、ネオ
ペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ
ールなどが好ましく用いられるが、本発明では上記ジオ
ール類のほかにジエチレングリコール、トリエチレング
リコールなどを少量成分として用いることもできる。
【0010】本発明で用いられる熱可塑性ポリエステル
樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレー
ト、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレ
フタレート等のテレフタレート類、ポリエチレンナフタ
レート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナ
フタレート等のナフタレート類などが挙げられる。なか
でも、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレ
フタレートが特に好ましく用いられる。本発明では、上
記の熱可塑性ポリエステル樹脂を単独で、または2種以
上混合して用いてもよい。
【0011】本発明においてはポリエステル樹脂の改質
剤として、(メタ)アクリル酸エステル重合単位が15
〜40重量%、好ましくは15〜30重量%、(メタ)
アクリル酸重合単位が1〜10重量%、好ましくは1〜
5重量%のエチレン(メタ)アクリル酸エステル・(メ
タ)アクリル酸共重合体またはそのアイオノマーに、不
飽和カルボン酸またはその無水物をグラフト共重合して
得られる変性エチレン共重合体が用いられる。
【0012】変性エチレン共重合体の原料共重合体中の
(メタ)アクリル酸エステル重合単位が前記範囲より少
ないものを用いると耐衝撃性改良効果が充分でなく、ま
たその量が多くなりすぎると共重合体の製造が容易では
なくなるばかりではなく、そのグラフト共重合体の曲げ
弾性および耐熱性を低下させ、組成物にしたときの物性
を損なうことになる。
【0013】ここに(メタ)アクリル酸エステルとして
はアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数1〜10程度
のアルキルエステルを例示することができる。より具体
的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリ
ル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸
n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリ
ル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n
−ブチル、などを挙げることができるが、これらの中で
は、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル
酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等は臭い
の閾値が高く、これらのエステルを重合単位とする共重
合体又はそのアイオノマーは臭気が少なく、グラフト共
重合後の臭気も少ないので好ましい。すなわち、アクリ
ル酸エチル、アクリル酸n−ブチル等の臭いの閾値の低
いエステルを重合単位とする共重合体又はそのアイオノ
マーはその臭気が強いばかりでなく、それらを原料とし
たグラフト共重合の段階で臭気物質を生成し易くその除
去が容易でないのに対し、上記の臭いの閾値が高いエス
テルを重合単位として含有する共重合体又はそのアイオ
ノマーを原料としたグラフト共重合体にはこのような臭
気成分の発生が少ないので改質剤として優れている。
【0014】一方、原料共重合体において、(メタ)ア
クリル酸重合単位を含まないものを用いた場合には、ポ
リエステル樹脂との相溶性が必ずしも充分とは言えず、
成形物における層状剥離やしわ発生の現象が顕在化する
ことがあるのに対し、(メタ)アクリル酸重合単位を前
記範囲で含むものを用いた場合にはこのような現象は認
められず改質剤として優れた効果を示す。
【0015】グラフト共重合体の原料としてアイオノマ
ーを用いる場合は、リチウム、ナトリウム、カリウムな
どのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのア
ルカリ土類金属、亜鉛などの遷移金属などをイオン源と
し、中和度が例えば80%以下程度のものが用いられ
る。
【0016】本発明の変性エチレン共重合体の製造に用
いられる不飽和カルボン酸又はその無水物としては、ア
クリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタ
コン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、無水マ
レイン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物
などを例示することができる。これらの中では、2価カ
ルボン酸又はその無水物、とりわけ無水マレイン酸等の
2価カルボン酸無水物を用いた場合に、少量のグラフト
量で効果が著しいので好ましい。不飽和カルボン酸又は
その無水物のグラフト量は、通常0.1〜5重量%、好
ましくは0.3〜3重量%程度である。
【0017】エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・
(メタ)アクリル酸共重合体又はそのアイオノマーと、
不飽和カルボン酸又はその無水物からグラフト共重合体
を製造するには、エチレン重合体のグラフト反応に通常
使用されている方法を適用すればよい。すなわち有機過
酸化物をラジカル開始剤として、適当な溶媒の存在下又
は不存在下、120〜250℃程度の温度条件下でグラ
フト反応を行えばよい。
【0018】かくして得られる変性エチレン共重合体と
して、190℃、2160g荷重におけるメルトフロー
レートが0.01〜500g/10分、とくに0.1〜
100g/10分のものを使用するのがよい。
【0019】ポリエステル樹脂と変性エチレン共重合体
の配合比は、ポリエステル樹脂の優れた特性、例えば優
れた機械的性質、電気的性質、耐薬品性等を維持しつ
つ、耐衝撃性を改良するため、使用目的によっても異な
るが、ポリエステル樹脂60〜95重量部、好ましくは
70〜95重量部に対し、変性エチレン共重合体40〜
5重量部、好ましくは30〜5重量部である。
【0020】本発明のポリエステル樹脂組成物には、必
要に応じ酸化防止剤、耐候安定剤、滑剤、帯電防止剤、
顔料、難燃剤、難燃助剤、無機充填剤などの添加剤を適
宜配合することができる。またポリカーボネート、ポリ
エステルエラストマー、ポリアミドエラストマーなどの
他の重合体を配合することもできる。上記無機充填剤と
しては、具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、アルミニ
ウム繊維、真鍮繊維、アルミニウム粉、亜鉛粉、シリ
カ、アルミナ、亜鉛華、炭酸カルシウム、炭酸バリウ
ム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウ
ム、カオリン、タルク、雲母、ベントナイト、珪藻土、
珪砂、石英粉、カーボンブラック、ガラス粉などが挙げ
られる。なかでも、ガラス繊維を添加することにより、
本発明のポリエステル樹脂組成物の耐熱性、寸法安定
性、耐摩耗性などをより向上させることができる。
【0021】ガラス繊維の添加量は、樹脂成分100重
量部に対し、5〜100重量部、好ましくは10〜60
重量部である。
【0022】
【発明の効果】本発明に係るポリエステル樹脂組成物
は、熱可塑性ポリエステル樹脂が有する好ましい性質を
本質的に損なうことなく、耐衝撃性が顕著に改善されて
おり、しかも層状剥離現象は認められない。従って射出
成形、押出成形、中空成形、プレス成形などにより、種
々の製品に成形して利用することができる。
【0023】
【実施例】次に実施例について本発明を説明する。
【0024】[実施例1]ポリブチレンテレフタレート
樹脂(東レPBT樹脂1401−X06)80部(重量
部、以下同じ)およびエチレン・アクリル酸イソブチル
・メタクリル酸共重合体(アクリル酸イソブチル含有量
22重量%、メタクリル酸含有量4重量%、メルトフロ
ーレート30g/10分)の無水マレイン酸グラフト変
性体(グラフト量0.5重量%)20部を、2軸押出機
(30mm径、同軸回転)を用いて250℃で溶融混練
した。混練調製されたポリエステル樹脂組成物を成形温
度260℃、金型温度20℃で射出成形して、下記試験
法によって規定された形状の試験片を作製した。この試
験片についてアイゾット衝撃強度(試験片厚さ5mm;
ASTM D−256準拠、Vノッチ入り、23℃)、
曲げ弾性率(試験片厚さ2mm;ASTM D−790
準拠)および加熱収縮率(2mm射出角板を90℃で1
時間加熱した時の角板の収縮率)、引張特性(試験片厚
さ3mm;JIS K−7113準拠、試験速度50m
m/分)を測定した。
【0025】また、同様に射出成形により作製した厚さ
2mm角板を折り曲げることを10回繰り返し、折り曲
げ部分の“しわ”の発生状況を観察することによりポリ
ブチレンテレフタレート樹脂とグラフト変性体との相溶
性を評価し、次の2段階で表わした。 ○・・・しわの発生が少なく、相溶性良好 ×・・・しわの発生が多く、相溶性不良
【0026】更に混練調製されたポリエステル樹脂組成
物のペレット100gを300mlのフラスコに入れ1
40℃で3時間加熱後の臭気を官能評価し、臭気の有無
を次の2段階で表わした。 ○・・・異臭なし ×・・・異臭あり
【0027】[実施例2]実施例1において無水マレイ
ン酸グラフト変性体として無水マレイン酸グラフト量が
1.3重量%のものを用い、得られたポリエステル樹脂
組成物について実施例1と同様にして物性を測定した。
【0028】[実施例3]実施例1において無水マレイ
ン酸グラフト変性体として、エチレン・アクリル酸イソ
ブチル・メタクリル酸共重合体(アクリル酸イソブチル
含有量22重量%、メタクリル酸含有量4重量%、メル
トフローレート30g/10分)のメタクリル酸単位の
33%を亜鉛イオンでイオン化したアイオノマー樹脂の
無水マレイン酸グラフト変性体(グラフト量0.8重量
%)が用いられた。
【0029】[実施例4]実施例1において無水マレイ
ン酸グラフト変性体としてエチレン・アクリル酸イソブ
チル・メタクリル酸共重合体(アクリル酸イソブチル含
有量20重量%、メタクリル酸含有量8重量%、メルト
フローレート25g/10分)のメタクリル酸単位の7
0%を亜鉛イオンでイオン化したアイオノマー樹脂の無
水マレイン酸グラフト変性体(グラフト量0.8重量
%)が用いられた。
【0030】[比較例1]実施例1で用いたポリブチレ
ンテレフタレート樹脂に無水マレイン酸グラフト変性体
を配合せずに、実施例1と同様にして物性を測定した。
【0031】[比較例2]実施例1において無水マレイ
ン酸グラフト変性体としてエチレン・アクリル酸エチル
共重合体(アクリル酸エチル含有量25重量%、メルト
フローレート5g/10分)の無水マレイン酸グラフト
変性体(グラフト量1.0重量%)が用いられた。
【0032】[比較例3]実施例1において無水マレイ
ン酸グラフト変性体の代りにそれのベースポリマーであ
るエチレン・アクリル酸イソブチル・メタアクリル酸共
重合体が用いられた。
【0033】[比較例4]実施例1において無水マレイ
ン酸グラフト変性体としてエチレン・アクリル酸n−ブ
チル共重合体(アクリル酸n−ブチル含有量32重量
%、メルトフローレート34g/10分)の無水マレイ
ン酸グラフト変性体(グラフト量2.5重量%)が用い
られた。
【0034】上記各実施例および比較例で得られたポリ
エステル樹脂組成物の物性値の測定結果を表1に示し
た。
【0035】
【表1】

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性ポリエステル樹脂60〜95重
    量部と変性エチレン共重合体40〜5重量部とからな
    り、該変性エチレン共重合体が、(メタ)アクリル酸エ
    ステル重合単位が15〜40重量%、(メタ)アクリル
    酸重合単位が1〜10重量%のエチレン・(メタ)アク
    リル酸エステル・(メタ)アクリル酸共重合体またはそ
    のアイオノマーに、不飽和カルボン酸もしくはその無水
    物をグラフト共重合させたものであることを特徴とする
    ポリエステル樹脂組成物。
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