JP3228945B2

JP3228945B2 - 低誘電率ガラス繊維

Info

Publication number: JP3228945B2
Application number: JP51817698A
Authority: JP
Inventors: 進一田邨; 政博森
Original assignee: Nitto Boseki Co Ltd
Current assignee: Nitto Boseki Co Ltd
Priority date: 1996-10-16
Filing date: 1997-10-08
Publication date: 2001-11-12
Anticipated expiration: 2017-10-08
Also published as: TW450948B; WO1998016482A1; US6309990B2; US20010008864A1

Description

【発明の詳細な説明】技術分野本発明は、低誘電率ガラス繊維に関し、特に低い誘電
正接を要求される高密度プリント配線基板及びその周辺
のプラスチック部材などを強化するのに用いるに好適な
低い誘電正接を有する低誘電率ガラス繊維に関する。

背景技術近年、高度情報化初回の時代を迎え、衛星放送や移動
無線などの通信機器は、デジタル化、信号の高速処理化
の傾向にある。これらには補強材、樹脂、改質剤、充填
材等の材料からなる複合材料から構成されるプリント配
線基板が使用されており、またその周辺のプラスチック
部材などにも、補強材としてガラス繊維が広く用いられ
ている。従来、この種の商業的に生産されているガラス
繊維としてはＥガラスが知られている。

一般に、ガラスに交流電流を流すと、ガラスは交流電
流に対してエネルギー吸収を行い熱として吸収する。吸
収される誘電損失エネルギーはガラスの成分及び構造に
より定まる誘電率及び誘電正接に比例し、次式で表され
る。

Ｗ＝kfv²×εtanδ ここに、Ｗは誘電損失エネルギー、ｋは定数、ｆは周
波数、v²は電位傾度、εは誘電率、tanδは誘電正接を
表す。

この式から誘電率及び誘電正接が大きい程、また周波
数が高い程、誘電損失が大きくなることがわかる。

Ｅガラスの場合、一例として室温における周波数1MHz
での誘電率が6.7、誘電正接が12×10^-4であって、Ｅガ
ラスを用いたプリント配線基板は、高密度化や信号の高
速処理化の要求に応えるには不十分である。そのため、
Ｅガラスより低い誘電率、誘電正接を持つガラスが望ま
れているが、その１つのガラスとして、Ｄガラスと呼ば
れているガラスがある。Ｄガラスは一例として、SiO₂
75.3％、B₂O₃ 20.5％、CaO 0.6％、MgO 0.4％、Li₂O
0.6％、Na₂O 1.1％、K₂O 1.5％の組成を有するガラ
スであり、一例として、室温における周波数1MHzでの誘
電率が4.3、誘電正接が10×10^-4である。

しかし、Ｄガラスは、溶融性が悪く脈理や泡が発生し
易いため、紡糸工程において、ガラス繊維の切断が多く
生産性、作業性が悪い、また紡糸温度が非常に高いた
め、炉の寿命が短いという欠点がある。更にＤガラス
は、耐水性が悪く、また樹脂との接着性が悪いため、プ
リント配線基板中の樹脂との剥離を起こしやすく、プリ
ント配線基板とした場合に高い信頼性が得られないとい
う問題もある。

特開平６−219780号公報では、SiO₂ 50.0〜65.0％、
Al₂O₃ 10.0〜18.0％、B₂O₃ 11.0〜25.0％、MgO 6.0
〜14.0％、CaO 1.0〜10.0％、ZnO ０〜10であって、M
gO＋CaO＋ZnO 10.5〜15％の低誘電率ガラスを開示して
いる。このガラスは、特にMgOを６％以上とし、かつCaO
＋MgO＋ZnOを10.5％以上とすることにより、紡糸温度を
下げて、生産性の改善を図るものであるが、分相性が強
く、また誘電正接が高くなりがちな成分であるMgOを６
％以上としているため、十分な耐水性が得られず、また
その誘電正接も比較的高いものとなる。

また、特開平７−10598号公報はSiO₂ 50.0〜65.0
％、Al₂O₃ 10.0〜18％、B₂O₃ 11.0〜25.0％、CaO ０
〜10.0％、MgO ０〜10.0％、MgO＋CaO 1.0〜15.0％、
ZnO ０〜10.0％、SrO ０〜10.0％、BaO １〜10.0％
の組成を有するガラスを開示している。しかし、このガ
ラスも、誘電率が高くなる成分であるBaOを必須成分と
しているため、十分に低い誘電率を得ることが困難であ
って、低い誘電率を得るためには、BaOの割合を下げざ
る得ず、その場合には、ガラスの粘度が高くなって、紡
糸作業性が悪くなるという問題がある。またBaOは、ガ
ラス溶融炉の炉材に対する浸食が大きいため、溶融炉の
寿命が短いという問題もある。

本出願人は先に、特願平７−137688号で、SiO₂ 50〜
60％、Al₂O₃ 10〜20％、B₂O₃ 20〜30％、CaO ０〜５
％、MgO ０〜４％、Li₂O＋Na₂O＋K₂O ０〜0.5％、TiO
₂ 0.5〜５％のガラスを提示した。このガラスは、低誘
電率、低誘電正接を維持しながら、紡糸工程における作
業性、生産性にも優れた特性を有するものであるが、な
お作業性、生産性においてやや難があった。

発明の開示本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、誘
電率、誘電正接が低いという特性を有し、かつ生産性、
作業性に優れ、しかも耐水性にも優れたガラスを提供す
ることを目的としている。

上記目的を達成するために、本発明者らは検討した結
果、ガラス繊維の組成において、特にSiO₂を60％以下、
TiO₂を0.5〜５％とし、更に、CaOを５％を越えて12％以
下として、ガラスの溶解性を良くしながら、Li₂O＋Na₂O
＋K₂Oを1.0％以下とすることによって、低誘電率、低誘
電正接のガラス繊維を得ることができることを見い出し
た。

従って、本発明は、重量％で、SiO₂ 45〜60％、Al₂O
₃ ８〜20％、B₂O₃ 15〜30％、MgO ０〜５％、CaO
５％を越えて15％以下、Li₂O＋Na₂O＋K₂O ０〜1.0％、
TiO₂ 0.5〜５％、F₂ ０〜２％以下のガラス組成を有
し、さらにZnO、SrO、Fe₂O₃、Cr₂O₃、As₂O₃、Sb₂O₃、P₂
O₅、ZrO₂、Cl₂、SO₃、MoO₂を合計で０〜３％含有するこ
とを特徴とする低誘電率ガラス繊維を要旨とする。

発明を実施するための最良の形態本発明において、ガラス繊維の組成を限定した理由は
以下の通りである。

SiO₂はAl₂O₃、B₂O₃とともに、ガラスの骨格を形成す
る部分であるが、SiO₂が45％未満では誘電率が大きくな
り過ぎるとともに、耐水性及び耐酸性が低下して、ガラ
ス繊維及びこれを補強材として用いたプリント配線基板
の劣化を引き起こす。60％を越えると、粘度が高くなり
過ぎて、紡糸時、繊維化が困難となる場合がある。従っ
てSiO₂は45〜60％に限定され、好ましくは50〜57％であ
る。更に好ましくは51〜56％である。

Al₂O₃は８％未満では、分相を生じ易く、そのため耐
水性が悪くなる。20％を越えると、液相温度が上昇し紡
糸性が悪くなる。従ってAl₂O₃は８〜20％に限定され、
好ましくは10〜18％である。更に好ましくは11〜14％で
ある。

B₂O₃は融剤として使用し、粘度を低下させ、溶融を容
易にする成分であるが、15％未満では、誘電率、誘電正
接が大きくなり過ぎる。30％を越えると、溶融時の揮発
量が増大し、均質なガラスが得られないとともに、耐水
性が悪くなり過ぎる。従ってB₂O₃は15〜30％に限定さ
れ、好ましくは18〜25％である。更に好ましくは20〜24
％である。

MgOは、融剤として使用し、粘度を低下させて、溶融
を容易にする成分であるが、MgOが５％を越えると分相
性が強くなって耐水性が低下し、また誘電率、誘電正接
が大きくなり過ぎるので、MgOは０〜５％に限定され、
好ましくは０〜４％である。

CaOは、MgOと同様に、融剤として使用し、粘度を低下
させて、溶融を容易にする成分であり、またB₂O₃のH₃BO
₃化を抑制するため、耐水性を向上させる成分でもあ
る。CaO含有量は５％を越え12％以下に限定される。５
％以下を排除した理由は本出願人の先願である特願平７
−137688号に記載のガラス繊維との重複を避けるためで
ある。また上限を12％に限定した理由は、12％を越える
と、誘電率、誘電正接が大きくなり過ぎるからである。
CaOの含有率は好ましくは５％を越えて10％以下であ
る。更に好ましくは６〜９％である。

MgOとCaOの合計量は、好ましくは５％を越えて12％以
下である。12％以下を好ましいとする理由は、12％を越
えると誘電率、誘電正接が大きくなり過ぎる場合がある
からである。更に好ましくは５％を越えて10％以下であ
る。

Li₂O、Na₂O、K₂Oは、ともに融剤として使用するが、L
i₂O、Na₂O、K₂Oの合計が1.0％を越えると誘電正接が高
くなり過ぎ、また耐水性も悪くなる。従ってLi₂O＋Na₂O
＋K₂Oは０〜1.0％に限定され、好ましくは０〜0.6％で
ある。更に好ましくは0.2〜0.5％である。

Li₂O及びNa₂Oは、0.3％を越えると、またK₂Oは0.5％
を越えると、誘電正接が高くなり過ぎる場合がある。従
って、好ましくはLi₂O、Na₂Oは、０〜0.3％、K₂Oは０〜
0.5％である。更に好ましくはLi₂Oは０〜0.2％、Na₂Oは
0.1〜0.2％、K₂Oは０〜0.2％である。

TiO₂は誘電正接を下げるのに有効であり、また粘性を
低下させ、更に初期溶融時における溶融分離を抑制する
効果が極めて優れており、炉表面で発生するスカムを減
少させる。0.5％未満ではこれらの効果が小さく、５％
を越えると分相を生じ易く、化学的耐久性が悪くなる。
従って、TiO₂は0.5〜５％に限定され、好ましくは１〜
４％である。更に好ましくは１〜３％である。

本発明のガラス組成においては、F₂は融剤としてガラ
スの粘性を低下させるだけでなく、誘電率及び特に誘電
正接を低下させる。しかしF₂は２％を越えると分相性が
強くなると共に耐熱性が悪くなる場合がある。従ってF₂
は０〜２％に限定され、好ましくは0.01〜1.8％であ
り、更に好ましくは0.2〜1.5％である。

本発明のガラス組成においては、更に上記成分以外に
もガラス特性を損なわない程度に、ZnO、SrO、Fe₂O₃、C
r₂O₃As₂O₃、Sb₂O₃、P₂O₅、ZrO₂、Cl₂、SO₃、MoO₂等の成
分を３％まで含有することが可能である。

本発明の低誘電率ガラス繊維の好ましい物性を挙げる
と、５以下の誘電率、10×10^-4以下の誘電正接、1330℃
以下の紡糸温度および0.1重量％未満のアルカリ溶出量
である。

本発明の低誘電率ガラス繊維は、重量％で、SiO₂ 50
〜57％、Al₂O₃ 10〜18％、B₂O₃ 18〜25％、MgO ０〜
５％、CaO ５％を超えて10％以下、Li₂O ０〜0.3％、
Na₂O ０〜0.3％、K₂O ０〜0.5％、TiO₂ 0.5〜５％で
あって、MgO＋CaO ５％を超えて12％以下、Li₂O＋Na₂O
＋K₂O ０〜0.6％のガラス組成を有することが好まし
い。

本発明のガラス繊維は、Ｅガラス、Ｃガラス、Ｄガラ
スなどの公知のガラスの製造技術に準じて製造される。

本発明のガラス繊維は、低誘電率、低誘電正接を有し
ており、プリント配線基板用のガラス繊維として、特に
高密度回路用プリント配線基板に強化用として優れてい
る。また生産性と耐水性及び低熱膨張性にも優れた特性
を有するため、特に高密度回路用プリント配線基板の強
化用として、品質の安定したガラス繊維を安定して供給
できる。

特に、本発明のガラス繊維織物を用いて得られるプリ
ント配線基板は、ドリル加工性においても、穴あけの位
置がずれにくく、ドリルの磨耗が少ないという特性を有
しており、信頼性の高いプリント配線基板が安定して得
られる。

また、本発明のガラス繊維からなる各種の基材、例え
ば、織物、不織布、編物、チョップドストランド、ロー
ビング、ガラスパウダー、マットなど、及びそれらの基
材と各種の熱硬化性樹脂との混合物からなる複合材料
（例えば、シートモールディングコンパウンド、バルク
モールディングコンパウンド、プリプレグ）は、低誘電
率、低誘電正接という特性を活かして、例えば通信機器
類の周辺部材などに各種の樹脂強化用基材として用いる
ことも可能である。

本発明の低誘電率ガラス繊維を実施例に基づき詳しく
説明する。

［実施例１〜６］表１に示す各試料のガラス組成になるように調合した
バッチを、白金ルツボに入れ電気炉中で1500〜1550℃で
８時間の条件で、撹拌を加えながら溶融した。次のこの
溶融ガラスをカーボン板上に流り出し、ガラスカレット
を作成した。このガラスカレットをガラス繊維製造炉に
投入後1300〜1400℃で溶融し、紡糸したところ、Ｄガラ
スを紡糸したときに生ずるB₂O₃の多量の揮発も見られ
ず、不都合なく紡糸できた。

一方、ガラスカレットを板状に溶融、徐冷し、直径45
mm、厚さ2mmの両面光学研磨した試料を作成し、測定器
としてプレシジョンエルシーアールメータ（ヒュー
レットパッカード社製）を使用して、室温における周
波数1MHzでの誘電率および誘電正接を測定した。また、
ガラスの粘度η（ポアズ）が10³のときの温度（℃）を
紡糸温度として測定した。更に、耐水性としては、JIS
Ｒ 3502に規定するアルカリ溶出試験方法に準じて、
紡糸で得られたガラス繊維から溶出するアルカリ成分の
重量（％）を測定した。これらの測定結果を表１に示
す。

表１に示すように実施例のガラス繊維は誘電率が5.0
以下、誘電正接は10×10^-4以下であって、いずれの値も
Ｅガラスより低く、またＤガラスよりは低いか或いは同
程度の値を示すことがわかる。

また、表１に示すとおり、Ｄガラスではアルカリ溶出
量が0.30％であるのに対し、実施例のガラス繊維は、い
ずれも0.1％未満であり、耐水性に優れている。

更に実施例のガラス繊維は、紡糸の目安となる温度で
ある粘度μ（ポイズ）がlogμ＝3.0のときの紡糸温度
は、いずれもＤガラスより低く1350℃以下であるので、
無水硼酸（B₂O₃）が揮発しにくく生産性に優れている。

産業上の利用の可能性本発明のガラス繊維は、低誘電率、低誘電正接を有し
ており、プリント配線基板用のガラス繊維として、特に
高密度回路用プリント配線基板に強化用として優れてい
る。また生産性と耐水性及び低熱膨張製にも優れた特性
を有するため、特に高密度回路用プリント配線基板の強
化用として、品質の安定したガラス繊維を安定して供給
できる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献特開平９−221338（ＪＰ，Ａ) 特開平９−74255（ＪＰ，Ａ) 特開平８−333137（ＪＰ，Ａ) 特開平６−211543（ＪＰ，Ａ) 特開平３−215329（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C03C 1/00 - 14/00

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】重量％で、SiO₂ 45〜60％、Al₂O₃ ８〜2
0％、B₂O₃ 15〜30％、MgO ０〜５％、CaO ５％を越
えて12％以下、Li₂O＋Na₂O＋K₂O ０〜1.0％、TiO₂ 0.
5〜５％、F₂ ０〜２％のガラス組成を有し、さらにZn
O、SrO、Fe₂O₃、Cr₂O₃、As₂O₃、Sb₂O₃、P₂O₅、ZrO₂、Cl
₂、SO₃、MoO₂を合計で０〜３％含有することを特徴とす
る低誘電率ガラス繊維。
【請求項２】重量％で、SiO₂ 50〜57％、Al₂O₃ 10〜1
8％、B₂O₃ 18〜25％、MgO ０〜５％、CaO ５％を越
えて10％以下、Li₂O ０〜0.3％、Na₂O ０〜0.3％、K₂
O ０〜0.5％、TiO₂ 0.5〜５％、F₂ ０〜２％であっ
て、MgO＋CaO ５％を越えて12％以下、Li₂O＋Na₂O＋K₂
O ０〜0.6％のガラス組成を有する請求項１に記載の低
誘電率ガラス繊維。
【請求項３】更にZnO、SrO、Fe₂O₃、Cr₂O₃、As₂O₃、Sb₂
O₃、P₂O₅、ZrO₂、Cl₂、SO₃、MoO₂から選ばれる少なくと
も１種をガラス特性を損なわない程度に含有する請求項
１に記載の低誘電率ガラス繊維。
【請求項４】誘電率が５以下、誘電正接が10×10^-4以
下、紡糸温度が1350℃以下、アルカリ溶出量が0.1重量
％未満である請求項１に記載の低誘電率ガラス繊維。
【請求項５】プリント配線基板用のガラス繊維として用
いられる請求項１に記載の低誘電率ガラス繊維。