JP3801293B2 - 耐蝕性ガラス繊維 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、B23 を少量しか含まず、F2 を含まないため、環境を汚染することがなく、現在最も多く生産されているEガラス繊維に比べて耐酸性や耐水性に優れているため、FRP、耐蝕FRP、プリント基板用樹脂等の複合材料や、バッテリーセパレーター等の耐蝕性材料として適した耐蝕性ガラス繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記の用途に使用されているB23 、F2 を含有しない繊維用ガラスとしては、USP3,847,627、USP3,876,481、USP4,026,715に記載されているSiO2 −TiO2 −Al23 −RO(RはCa等の2価金属)系のECRガラスが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ECRガラスは、B23 、F2 を含まず、Eガラスに比べ、耐酸性、耐水性に優れている。
【0004】
ところで通常、ガラスを繊維化するためには、所定割合に配合されたガラス原料を溶融して、均質なガラスとした後、多数のノズルを底部に形成したブッシングに溶融ガラスを供給し、ブッシングのノズルからガラスを引き出すことによって繊維化する方法が採られる。
【0005】
この場合、ガラスの失透温度が、ガラスを繊維化する際の温度である紡糸温度を越えると、ガラス融液中に失透物が生じ、ノズル付近で糸切れが起こり易くなるため、失透温度は、紡糸温度より低い温度であることが繊維化の条件であり、その差(ΔT)が大きいほど、紡糸性が良好となるが、ECRガラスは、失透温度が1150℃以上であり、また紡糸温度に相当する粘度が103 ポイズに相当する温度が1200℃前後であるため、ΔTが約50℃となり、紡糸時にブッシングノズルの部分で失透が生じ易く生産が困難であった。
【0006】
このようなガラスのΔTを大きくするためには、紡糸温度を高くすれば良いが、紡糸温度が1250℃以上の高温になると、ブッシングの温度調整が困難となり、バッチの溶融性も悪化するため、やはり生産性が低下する。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、 2 3 少量しか含まず、F2フリーであり、耐酸性、耐水性にすぐれているのみならず、失透性に優れ、高い生産性を有する耐蝕性ガラス繊維を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の耐蝕性ガラス繊維は、モル%で、SiO2 56〜63%、TiO2 0.5〜4.5%、MgO 0〜5%、TiO2 +MgO 1〜9%、Al23 4.5〜9%、CaO 16〜26%、ΣRO=ZnO+SrO+BaO 0〜7%、Na2 O 0〜1.5%、K2 O 0〜1.5%、Li2 O 0〜1.5% Na2 O+K2 O+Li2 O≦3%、B23 0.5〜3%を含有し、F2 を含まないことを特徴とする。
【0009】
また本発明の耐蝕性ガラス繊維は、好ましくはモル%で、SiO2 57〜62%、TiO2 0.5〜4%、MgO 0〜4%、TiO2 +MgO 1〜8%Al23 5〜8%、CaO 17〜25%、ΣRO=ZnO+SrO+BaO 0〜6%、Na2 O 0〜1%、K2 O 0〜1%、Li2 O 0〜1%、Na2 O+K2 O+Li2 O≦1.5%、B23 0.5〜2.5%を含有し、F2 を含まないことを特徴とする。
【0010】
【作用】
本発明の耐蝕性ガラス繊維は、B23 を少量しか含まず、酸に強いSiO2 、TiO2 をそれぞれ56〜63%、0.5〜4.5%含有し、しかもアルカリ金属酸化物含有量を3%以下に抑えているため、優れた耐蝕性を有している。また、B23 を少量しか含まず、F2 を含まないため、製造時に周囲環境を汚染することがない。さらにTiO2 +MgOを1〜9%含むため、これらがB23 やF2 に代わってフラックスとなり、バッチ溶融性を良好に維持する。
【0011】
本発明の耐蝕性ガラス繊維では、CaOが26%以下、TiO2 0.5〜4.5%、MgO 0〜4.5%であり、かつB23 を0.5〜3%含むため、メインの失透相であるディオプサイド Ca(Mg,Ti)Si26 の晶出を抑制し、失透温度は1130℃以下にできることを見いだした。また紡糸温度も1195℃〜1230℃となるため、その差ΔT>90℃となり紡糸性は向上する。
【0012】
次に本発明の耐蝕性ガラス繊維の構成成分を上記のように限定した理由を説明する。
【0013】
SiO2 はガラスの耐酸性を向上させる成分であり、その含有量は56〜63モル%、好ましくは57〜62モル%である。56モル%より少ない場合は、上記の作用が得られず、63モル%より多い場合は、高温粘度が上昇し、ガラスの溶融性や紡糸性が悪化する。
【0014】
TiO2 は、紡糸温度である粘度103 ポイズに相当する温度を低下させて、ブッシングの劣化を抑える成分である。またB23 、F2 に代わるフラックスとしてバッチの溶融性を向上させると共に耐酸性を向上させる成分であり、その含有量は、0.5〜4.5モル%、好ましくは0.5〜4モル%である。0.5モル%より少ない場合は、耐酸性が悪くなり、4.5モル%より多い場合は、ガラスが失透しやすくなる。
【0015】
MgOは、紡糸温度を低下させて、ブッシングの劣化を抑えると共にB23 やF2 に代わるフラックスとしてバッチの溶融性を向上させる成分であり、その含有量は、0〜4.5モル%、好ましくは0〜4モル%である。4.5モル%より多い場合は、ガラスが失透しやすくなる。
【0016】
但し本発明では、ガラスバッチの溶融性や、ガラス粘度を考慮して、TiO2 とMgOを合量で1〜9モル%、好ましくは1〜8モル%とする。この含量が、1モル%より少ない場合は、バッチ溶融性が悪化し、高温粘度が上昇する。一方、9モル%より多い場合は、ガラスが失透しやすくなる。
【0017】
Al23 は、ガラスの耐水性や失透性を向上させると共に溶融性を向上させる成分であり、その含有量は4.5〜9モル%、好ましくは5〜8モル%である。4.5モル%より少ない場合は、上記の作用が得られず、9モル%より多い場合は、耐酸性が悪くなる。
【0018】
CaOはガラスの耐水性、失透性を向上させると共にガラスの粘度を低下させて溶融性を向上させる成分であり、その含有量は16〜26モル%、好ましくは17〜25モル%である。16モルより少ない場合や、26モル%より多い場合は、ガラスが失透しやすくなる。
【0019】
ZnO、SrO、BaOは失透性を改善する成分であり、その含有量は合計でΣRO=0〜7モル%、好ましくは0〜6モル%である。7モル%を越えるとバッチの溶融性が悪化する。
【0020】
Li2 O、Na2 O、K2 Oといったアリカリ金属酸化物は、ガラスの粘度を低下させると共に、フラックス剤としてバッチの溶融性を向上させる成分であり、Li2 Oは、0〜1.5モル%、Na2 Oは、0〜1.5モル%、K2 Oは、0〜1.5モル%、Li2 O+Na2 O+K2 O≦3モル%であり、好ましくはLi2 Oは、0〜1モル%、Na2 Oは、0〜1モル%、K2 Oは、0〜1モル%、Li2 O+Na2 O+K2 O≦1.5モル%である。これらの合量が、3モル%を越えると、ガラスの耐水性が悪くなり、FRP使用時に強度が大幅に低下する。
【0021】
23 はガラスの溶融性を向上させるフラックスとしての役割を果たすと共に、失透性を大幅に改善する役割を有する。その含有量は0.5〜3モル%、好ましくは0.5〜2.5モル%である。0.5モル%より少ない場合は、上記の作用が得られず、3モル%を越えると、耐酸性が悪化すると共に、高温溶融時の揮発が増大し、製造時に周辺環境を害する。
【0022】
表1にB23 導入による液相温度に対する効果を示す。CaO置換、B23 2%導入により、液相温度は1150℃から1090℃へと大幅に低下する。
【0023】
【表1】
Figure 0003801293
【0024】
本発明においては、上記成分以外にも10モル%以下の範囲内で、MnO、MnO2 、FeO、Fe23 、P25 等の成分を添加しても良い。しかしながらこれらの添加成分の合計が、10モル%を越えると、紡糸性が悪くなるため好ましくない。さらにF2 は、製造工程において環境を汚染するため含有しないことが望ましい。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の耐蝕性ガラス繊維を実施例に基づいて詳細に説明する。
【0026】
表2、3は、本発明の実施例(試料No.1〜11)及び比較例(試料No.12〜14)の各試料のガラス組成と特性を示すものである。
【0027】
【表2】
Figure 0003801293
【0028】
【表3】
Figure 0003801293
【0029】
表1〜3に示した各試料は、次のようにして調製した。
【0030】
先ず各表に示す組成となるようにガラス原料を調合し、白金坩堝を用いて1500℃で4時間溶融した。溶融後、融液をグラファイト板状に流しだし、厚さ5mmの板状に変形して、以下の測定に供するガラス試料を得た。
【0031】
耐酸性は、板状ガラス試料を粉砕し、直径297〜500μmの粒度のガラスを比重グラム精秤し、これを10%HCl溶液100ml中に浸漬し、80℃、96時間の条件で震盪した後、その重量減少率を測定した。この重量減少率が小さい程、耐酸性が良いことを示している。
【0032】
耐水性は、JIS R3502の方法に基づいてアルカリ溶出量(mg)を測定することによって判定した。アルカリ溶出量が少ない程、耐水性がよいことを示している。
【0033】
粘度103 ポイズに相当する温度は、通常の白金球引き上げ法によって測定したものであり、また失透温度は、ガラス試料の一部を直径297〜500μmの粉末にしてから、白金ボートにいれ、温度勾配を有する電気炉内に16時間保持した後、放冷し、顕微鏡で失透出現位置を観察することによって測定したものである。
【0034】
表2、3から明らかなように実施例であるNo.1〜11の各試料は、いずれも耐酸性試験による重量減少率が1.2%以下であり、アルカリ溶出量は、0.006mg以下であり、良好な値を示した。また粘度103 ポイズに相当する温度も1230℃以下であり、ΔTが100℃以上であるため、ブッシングの温度コントロール、繊維化が容易であることが理解できた。
【0035】
それに対し、比較例であるNo.12の試料は、耐酸性試験による重量減少率が40%と非常に多かった。またNo.14の試料は、ΔTが60℃であり、失透し易く紡糸が困難であり、No.13の試料は、粘度103ポイズに相当する温度が1250℃であるため、ブッシングの温度コントロールが困難であると考えられる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明の耐蝕性ガラス繊維は優れた生産性、紡糸性を有し、しかも耐酸性、耐水性に優れているため、耐蝕FRPやプリント基板用樹脂等の複合材料の補強材として、またバッテッリーセパレータ等の耐蝕性材料として有用である。

Claims (2)

  1. モル%で、SiO2 56〜63%、TiO2 0.5〜4.5%、MgO 0〜5%、TiO2 +MgO 1〜9%、Al23 4.5〜9%、CaO 16〜26%、ΣRO=ZnO+SrO+BaO 0〜7%、Na2 O 0〜1.5%、K2 O 0〜1.5%、Li2 O 0〜1.5%、Na2 O+K2 O+Li2 O≦3%、B23 0.5〜3%を含有し、F2 を含まないことを特徴とする耐蝕性ガラス繊維。
  2. モル%で、SiO2 57〜62%、TiO2 0.5〜4%、MgO 0〜4%、TiO2 +MgO 1〜8%、Al23 5〜8%、CaO 17〜25%、ΣRO=ZnO+SrO+BaO 0〜6%、Na2 O 0〜1%、K2 O 0〜1%、Li2 O 0〜1%、Na2 O+K2 O+Li2 O≦1.5%、B23 0.5〜2.5%を含有し、F2 を含まないことを特徴とする耐蝕性ガラス繊維。
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