JP3204524U - 水田排水桝用の余水調整装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】水田に既設の排水桝に容易に設置できて、少雨や豪雨の際でも自動的に一定量の雨水を貯留して河川への雨水の流出を抑制することができる余水調整装置を提供する。【解決手段】既設桝4に適用可能な余水調整装置は、少なくとも余水調整板1と止水板2とを備える。余水調整板1は、田面高S0より5〜15cm高い位置S2で天端11と、天端11から下端12に向かって切欠き幅Bが5〜15cmで切り欠かれた制水スリット13とを備える。止水板2は、制水スリット13の田面高S0より高くかつS2より低い高さS1だけ開口するように、余水調整板1の前面F側に配設可能である。通常雨量の降雨の場合は、水田から止水板2を越えた雨水を、制水スリット13を通してS1からS2までの水位を保持させながら既設桝4に流入させる。豪雨の場合は、雨水を余水調整板1の天端11の全幅に亘って越流させることで、多量の雨水を既設桝4に流入させる。【選択図】図1

Description

本考案は、豪雨の際に水田に一定量の雨水を貯留して水害を防止する「田んぼダム」を実現するための水田排水桝用の余水調整装置に関し、より具体的には、既設の排水桝に適用可能な余水調整装置に関する。
近年においては地球温暖化の影響により、ゲリラ的な集中豪雨が増えており、この短時間に集中的に降る雨による洪水被害が頻発している。しかし、洪水対策としてダムや河川改修、貯水池などの従来からの治水対策では巨額な費用がかかり、また、局所的なゲリラ豪雨に対応することは難しい。
このような集中豪雨の際の対策として、水田を利用した「田んぼダム」が提案されている。これは、豪雨時に水田に雨水を一時的に貯留させて、河川への雨水の流出量を抑制して、下流域の住宅地や農地への浸水被害を緩和しようというものである。この提案は、互助互恵の前提の下、下流域の浸水被害を抑制するために、より上流域の農家自身の水田でも一時的な雨水の貯留をお願いするものである。
従来の「田んぼダム」の手法は、5cm程度の直径を有した小さな流出口(貫通孔)を設けた平板(調整板や穴あけ板とも呼ばれる。)で排水桝の排水口を遮るなどして、水田からの雨水の流出量を抑制している。
しかしながら、この従来手法では、豪雨が予想される場合は、水田の所有者又は水田を担当する農家が、その都度、調整板の取付けや、豪雨後(洪水リスク回避後)の調整板の取外しのために、水田の各排水桝まで出向く必要があり、農家などの管理者に多大な労務を強要するだけでなく、煩わしさを与えるものであった。
さらに、上記調整板を利用した従来手法では、大雨が断続的又は波状的に続く場合は、流出口での流出量よりも水田での貯水量が増加するために水田の湛水深が上昇し、これに伴い、畦畔の漏水や決壊、稲の生育不良が発生する危険が高まる。農家にとっては、畦畔が決壊すれば、復旧の費用や労務がさらに課せられ、稲の収量や品質にも悪影響を及ぼすものであるから、「田んぼダム」のために、上記負担や煩わしさに係わりたくないのが実情である。
本願考案者らは、このような従来技術が抱える問題点を克服するために、特許文献1に開示の水田用貯水量調整装置を既に想到・提案している。
しかしながら、特許文献1では、当該文献の図面に開示されているように、少なくとも2つ(図示では3つ)の差し戸口を設け、水田での所望範囲内の貯留水位を保つのに必要な流量調整を行う為に、これらの差し戸口間を所定隙間だけ離した排水桝を用意する必要がある。すなわち、特許文献1に開示の寸法及び構成を有した新品の排水桝を水田に設置していく必要がある。
ところが、水田には排水桝が既に設置された所も多くあるため、上記特許文献1の技術を適用しようとする場合、上記構成の排水桝を新設するために、既設の排水桝を掘り起こして廃棄する必要があり、廃棄物の増大や資源の無駄を招来してしまうことが懸念される。従って、この既設の排水桝を有効に利用したままで、従来手法が有する上記課題を解決できないかとの要望があった。
特許第5311150号公報
本考案は、従来の実情に鑑みて提案されたものであり、水田に既設の排水桝に容易に設置でき、かつ、少雨の際でも豪雨の際でも、水田に「田んぼダム」機能を働かせて、自動的に一定量の雨水を貯留して河川への雨水の流出を抑制することができる余水調整装置を提供することを目的とする。
本考案者は、鋭意検討した末、既設の排水桝に対して、少なくとも、(1)所望の天端高さと、雨水排出のための所望寸法の切欠きを有した余水調整板と、(2)この余水調整板の切欠き前面に配設可能な止水板とを適用すれば、少雨の際でも豪雨の際でも、水田に「田んぼダム」機能を働かせて、自動的に一定量の雨水を貯留して、河川への雨水の流出を抑制することができることなどを見出し、本考案を完成するに至った。
すなわち、本考案は、例えば、次の構成・特徴を採用するものである。
(態様1)
水田に既設の排水桝に適用可能な余水調整装置であって、
前記余水調整装置は、少なくとも余水調整板と止水板とを備え、
前記排水桝は、有底方形状の外形を成し、前記水田に面して前面が開口したコの字状断面を成すとともに田面高より30cm以上の高さを有した側壁を備え、かつ、前記側壁には前記水田の雨水を排水路に導水する排水孔が配設され、
前記余水調整板は、前記排水桝の底盤に立設して既設桝の開口部を閉鎖可能とし、かつ、天端が田面高S0より5〜15cm高い位置S2に設置可能とする横幅及び高さを有しており、該天端中央から下端へ切欠き幅が5〜15cmで切り欠かれた制水スリットを備え、
前記止水板は、前記制水スリットの上下方向開口面積を制限して前記田面高S0より高くかつS2より低い高さS1(S0<S1<S2)だけ開口するように、前記余水調整板の前面側に配設可能であり、
通常雨量の降雨の場合は、前記水田から前記止水板を越えた雨水を、前記制水スリットを通してS1からS2までの水位を保持させながら前記排水桝に流入させて前記排水孔から排水させ、
豪雨の場合は、前記制水スリットより水位が高くなった雨水を前記余水調整板の前記天端の全幅に亘って越流させることで、通常雨量より多量の雨水を前記排水桝に流入させて前記排水孔から排水させることを特徴とする余水調整装置。
(態様2)
前記制水スリットは、前記田面高S0よりもさらに下方に延びるよう切り欠かれており、前記水田の溝切りの際には、前記止水板を一時的に取り外すことで、溝切りされた前記水田の前記田面高S0より下位にある水を、前記制水スリットを通して前記排水桝内へ導水することを特徴とする態様1に記載の余水調整装置。
(態様3)
前記余水調整板の前記天端は前記排水桝の内面側で面取りされていることを特徴とする態様1又は2に記載の余水調整装置。
(態様4)
前記余水調整装置は、垂直止水板をさらに備え、
前記垂直止水板は、前記制水スリットの幅方向開口面積を制限するように前記余水調整板の前記前面側に配設可能であることを特徴とする態様1〜3のいずれかに記載の余水調整装置。
本考案は上記構成を採用するため、以下に示す効果を奏する。
(1)本考案によれば、耐用期間が長い既設桝を撤去(廃棄)すること無く、すなわち、これを有効に活用しながら極めて簡素な部材のみを採用するだけで、農家への管理労務の負担を軽減できる、優れた「田んぼダム」を実現することが可能となる。
(2)従来技術では、「田んぼダム」への農家の負担や煩わしさが甚大で、結局のところ、従来の調整板は使用されずに「田んぼダム」を実施していない水田の排水は、排水桝内幅の全幅から最大の排水量で実施されている。この排水は、農家にとっては全て余水(不要な水)として認識されている。また、従来の「田んぼダム」は、貯水に主眼を置き過ぎて雨水を十分に余水として扱う考えが無かったため、湛水深の不慮の上昇が懸念されていた。
これに対し、本考案によれば、以下に詳述するように、余水対策を取り込んだ構成であるため、豪雨に対する農家の負担や心配を著しく軽減させることができる。
(3)本考案の余水調整装置によれば、この余水排除の優位性を組み入れて、湛水深の上昇を抑制させ、農家の不安を払拭させるものである。
(4)本考案の余水調整装置は、少雨や豪雨の如何なる雨量にも対応した余水を自動的に実現するため、本装置を設置した農家は、豪雨予想時に装置の操作や調整に水田に出向く必要は無い。
(5)本考案によれば、本装置を設けたことによる浮遊塵芥の流下阻害を防ぐために、制水スリットの切欠き幅は約10cmを基本とした。これにより、塵芥の詰まりの心配は少ない。
(6)本考案の好適な態様によれば、制水スリットを田面高S0より低い位置(望ましくはS0より約10cm下位)まで切り欠かれているために、中干し期や農閑期に実施される溝切り排水にも対応可能としたものである。これにより、水田は乾田化されるため、コンバイン等の農業機械を良好に稼働させることができる。
(7)以上の理由により、本考案の余水調整装置は、水田での貯留量を確保しつつも、湛水深上昇の抑制(余水対策)を行って過剰な水深による畦畔や水稲の被害を防ぐため、農家の管理労務の軽減が図られる。
(8)従って、本考案によれば、「田んぼダム」構想の取組みに躊躇している者にとっても容易に採用できる装置を提供することができる。
本考案の余水調整装置を構成する各部材及び既設桝を示した斜視図である。 本考案の余水調整装置を構成する各部材を示した正面図及び断面図である。 本考案の余水調整装置を既設桝に組み込んだ状態を示した斜視図である。 本考案の余水調整装置を使用した際の貯水及び排水を説明した図である。
以下、本考案を図面に示す実施例に基づき説明するが、本考案は、下記の具体的な実施例に何等限定されるものではない。なお、各図において同一又は対応する要素には同一符号を用いる。
図1は、本考案の余水調整装置(以下、単に「本装置」又は「装置」とも呼ぶ。)を構成する後述する各部材1〜3及び既設桝4を示した分解斜視図である。図2(a)〜(c)は上記部材1〜3の各正面図を示し、図2(d)はこれらの各部材1〜3の組み込み状態を示した断面図を示す。図3は本装置としての各部材1〜3を既設桝4に組み込んだ状態を示した斜視図である。図4は、本装置を水田6に設置して使用した際の貯水及び排水を説明した図である。
(既設桝の利用)
本考案の余水調整装置では、水田6に既に設置された排水桝4(以下、「既設桝」とも呼ぶ。)を最大限に活用できる点が重要である。ここで、既設桝4とは、今から約40年前に開発され、溝切りに対応可能な深型方形状の排水桝であって、既に水田6の水尻に設置されたものである。既設桝4は、通常、既設桝4の底盤41が田面高S0より下方に約40cmの深さに位置し、かつ、既設桝4の上端42が田面高S0より上方に約30〜40cmの高さに位置するよう、水田脇(畦畔7)に埋設される。底盤41が田面高S0より下方に約40cmの深さにあることから、溝切り時に田面高S0より下位に位置する溝内の水を既設桝4へ容易に導水・排水することができる。一方、上端42が田面高S0より上方に30cm以上(通常は、約30〜40cm)の高さに突出させているのは、畦畔7の最低の高さに合わせたものであり、既設桝4に隣接する畦畔7や水田6中の稲10を洪水被害から守るためである。この種の排水桝4は、このような長所を有することから、全国各地で採用・設置されている。
次に、既設桝4の構造について詳述する。既設桝4は、通常、有底方形状の外形を成し、水田6に面して前面が開口したコの字状断面を成す(図中、開口部を符号43で示す。)とともに田面高S0より30cm以上(通常、約30〜40cm)の高さを有した側壁44を備える。言い換えれば、側壁44は、底盤41を基点にすれば、田面高S0まで約40cmの距離を持つため、約70cmの高さを有することになる。また、水田6からの雨水9を通す開口部43は、約30〜40cmの開口幅を有する。そして、水田6に対向し、かつ、両端から側壁44a,44cが前方へ張り出した背面側の側壁44bには、水田6の雨水9を排水管5a(ひいては排水路5b)に導水する排水孔45が配設される。
また、既設桝4には、通常、営農水位を調整する板(図示せず)や、止水又は排水量制御用の板(図示せず)を挿入するための差し戸口46が少なくとも一つ以上、設けられるが、図1に示すように差し戸口46が一つだけしかないものや戸口が全く設置されていないものもある。
本考案の余水調整装置は、差し戸口46が一つあれば、該装置を既設桝4に好適に組み込むことができる。仮に、差し戸口46が全く設置されていない既設桝4であっても、水田6に面した既設桝4の開口部43の前面側に、かつ、この開口部43の全幅(内幅)に亘って、余水調整装置としての各部材1〜3を組み込むことで、本考案を実施することが可能である。
(余水調整装置の構成部材)
本考案の余水調整装置は、少なくとも余水調整板1と止水板2との二部材を備えていればよく、好ましくは、後述する垂直止水板3をさらに備える。次に、各部材1〜3の構造や特徴について詳述する。
(余水調整板)
余水調整板1は、既設桝4の差し戸口46に挿入する(又は開口部43の前面側に置く)ことで、既設桝4の底盤41に垂直に立設して既設桝4の開口部43を閉鎖できるように、かつ、その天端11が田面高S0より約10cm(5〜15cm、好ましくは10cm)高い位置S2に設けられるように、余水調整板1の横幅及び高さが設定されている。すなわち、余水調整板1の横幅は、既設桝4の開口部43の幅及び差し戸口46の奥行に対応して、約30〜40cm程度に設定され、余水調整板1の上下方向の長さ(底盤41からの高さ)は、約40〜60cm程度に設定される。また、余水調整板1の材料は入手容易性や加工容易性の面で防腐木材(例えば、耐水ベニヤ板)が好ましいが、剛性や強度が高くて防錆性を有した金属や合成樹脂(例えば、廃プラスチック材)でもよい。防腐木材を採用した場合余水調整板1の厚みは12mm程度が好ましく、上記金属を採用した場合は2〜5mm程度の厚みが好ましく、上記合成樹脂を採用した場合は15〜20mm程度の厚みが好ましい。
(制水スリット)
余水調整板1には、天端11から下端12に向かって切欠き幅Bが5〜15cm(好ましくは、約10cm)で切り欠かれた制水スリット13が設けられる。この切り欠かれたスリット開口の一部は後述する止水板2によって閉鎖されるが、閉鎖されずに残ったスリット開口が通常雨量の降雨時に湛水深Sが上昇した際に、当該開口エリアから雨水9を既設桝4へ流入させることで湛水深Sの上昇を防ぐのである。
(溝切り時の落水対策)
さらに、制水スリット13は、天端11から田面高S0を通過しさらに下端12へ向かって切り欠かれていてもよい。つまり、田面高S0を基準に、S0より上にも下にも水田6から排水桝4まで貫通したスリット13が存在することになる。図示の例では、制水スリット13の切欠き長は、田面高S0を基準に上方に約10cm(上側を第1スリット13a)、及び、下方にも約10cm(下側を第2スリット13b)切り込まれている。
これにより、中干し期や農閑期での水田6の溝切りの際には、余水調整板1をそのまま残しつつ、後述する止水板2のみを一時的に取り外すことで、溝切りされた水田6の田面高S0より下位にある水を、制水スリット13(具体的には、第2スリット13b)を通して既設桝4内へ導水することができる。つまり、第2スリット13bを設けた制水スリット13は、降雨時の雨水9の貯留・排水を行うだけでなく、溝切り時の落水も安全に行えるのである。なお、第2スリット13bの下側には、切欠き幅Bが徐々に狭まる逆三角形を成す縮小部13cが設けられることが好ましい。これにより、田面高S0より低位の土壌8を既設桝4内へ流入することを防ぐとともに、余水調整板1の切欠き面積を可能な限り小さくすることで、余水調整板1自体の強度や剛性の低下を抑制することができる。
(越流の円滑化・整流化)
余水調整板1の天端11は既設桝4の内面側で面取りされていることが好ましい(例えば、図4中の面取り部11tを参照)。防腐木材から作られた余水調整板1においては、断面視で奥行方向及び高さ方向に5mm×5mm程度に面取りされていることが好ましい。これにより、後述する豪雨の際での天端11から既設桝4への雨水9の越流(図4中の二点鎖線で示した流れS’を参照)が円滑になり、天端11を越えた水流の乱れ、既設桝4外への飛沫や泡沫を抑制することができる。
(止水板)
止水板2は、制水スリット13の上下方向開口面積を制限して田面高S0より高くかつS2より低い高さS1(S0<S1<S2)だけ開口するように、余水調整板1の前面F側に配設可能である。止水板2は、例えば、縦横寸法が約20cm×約20cmの金属製の薄板(例えば、厚みが約1〜2mm)であり、好ましくは、錆に強いステンレス等の金属や防錆処理された金属から作られている。上述したように、既設桝4の開口部は余水調整板1によって閉ざされるため、余水調整板1の水田6側は田面高S0まで土壌8に埋設される。従って、止水板2は、余水調整板1のさらに前面F側から余水調整板1に接触させつつ、所望の高さS1(すなわち、目標の湛水深)になるまで、止水板2の下方部分を土壌8に埋設して固定する。埋設後は土壌8が堅く固化する場合もあり、取付け・取外しを容易にするため、止水板2の面積は、制水スリット13を閉鎖するだけの面積は必要だが、不必要に大きく取るべきではない。
(型折部の形成)
また、止水板2の上端21には、水田6に面する側に突出したL字状、又は、コの字或はU字状に折り曲げられた型折部22が形成されていることが好ましい(図2(d)や図3などを参照)。突出長として、15〜30mm程度にすることが好ましい。これにより、止水板2の埋設や取外し、湛水深の調整を容易にするとともに、これらを実行する際に誤って力が入った場合でも手指を傷付けずに済む。
(垂直止水板)
また、上述したように、余水調整装置には垂直止水板3も適用可能である(図1〜3を参照)。この垂直止水板3は、制水スリット13の切欠き幅Bや幅方向開口面積を制限するように余水調整板1の前面F側に配設可能であることが好ましい(図3では制限された切欠き幅をB’で示す)。垂直止水板3の材料及び寸法(縦×横×厚み)の一例として、例えば、防錆性を有した金属及び約25cm×約10cm×約2mmとすることができる。
このように、垂直止水板3を上述の止水板2とともに余水調整板1に組み合わせることにより、既設桝4への排水量をさらに抑制できる。なお、畦畔7によっては、その規模も十分に大きくその構造も堅固であり、湛水深や貯水量に余裕がある場合には、地域によっては排水量をさらに小さくしても良い場合がある。このような場合には、止水板2と垂直止水板3との組み合わせでこうした事情・要望に対応できる。
また、垂直止水板3の上端31にも、止水板2に設けたような型折部32を同様の趣旨から設けてもよい。型折部32は余水調整板1の天端11に引っ掛けて配置することが安定的な設置の観点から好ましく、この場合には型折部32は垂直止水板3の上端31から単に水平に突出したL字状を成すことが好ましい。
(余水調整装置の使用)
次に、図4を参照しながら、本装置を既設桝4に組み込んで使用する方法について説明する。以下に説明するように、天候変化により降雨量が変化しても、本装置は水量を自動的に調節して既設桝4内に流入させるため、農家は現場(水田6)に出向く必要はない。
通常雨量での降雨の場合は、田面高S0から止水板2の上端21で設定したS1までの高さまで、貯留水位Sが上昇する。雨が止んでしまった場合は、水田6にS0からS1までの間の高さS(営農水位)で雨水9が貯留される。
通常雨量がさらに継続する場合には、止水板2の上端21よりも水田6の水位Sが上昇するために、本装置は、止水板2の上端21より上に開口した制水スリット13(具体的には、第1スリット13a)を通して、雨水9の水位SをS1からS2までの間に保持させながら既設桝4内に流入させて排水孔45及び排水管5aを介して排水路5bに排水させる。つまり、降雨の強弱により水位SはS1からS2の間で緩やかに変動する。
なお、垂直止水板3を追加設置する場合には、これにより、制水スリット13はさらに狭められた切欠き幅B’を有するようになるため、既設桝4への流入量ひいては排水路5bへの排水量を抑制・調整できる。この際に、以下の四角堰の公式(数1)も利用することにより、排水量の目安を予測できる。ここで、式(数1)中、Qは流量(排出量)、Cは流量係数、gは重力加速度、Bは四角堰(制水スリット13)の幅、Hは越流水深(止水板2の上端21を基準にした制水スリット13の水位)である。
一方、豪雨の場合は、雨水9の水位Sは制水スリット13の最大高さS2(すなわち、余水調整板1の天端11)より高くなり、例えば、図4中の二点鎖線で示した水位S’にまで上昇するため、この雨水9を、余水調整板1の天端11の全幅(つまり、既設桝4の開口部43の内幅と同一であり、制水スリット13の切欠き幅Bよりも極めて広い)に亘って越流させることができる。従って、通常雨量の降雨の場合より多量の雨水9を既設桝4内に継続して流入させることができる。既設桝4に流入した多量の雨水9は、ひいては、排水孔45及び排水管5aを介して排水路5bに排出する。
以上のように、少雨と豪雨との間で降雨量が変化した場合でも、本考案の余水調整装置は、上記排水処理を自動的に行うため、一旦設置すれば何らの調整も一切不要で、水田6の管理者(農家)は、天候変化を心配して貯留状況をいちいち確認するために、水田6に出向く必要はない。
本考案によれば、耐用期間が長い既設桝を撤去(廃棄)すること無く、すなわち、これを有効に活用しながら極めて簡素な部材のみを採用するだけで、農家への管理労務の負担を軽減できる、優れた「田んぼダム」を実現することが可能となる。このように、本考案は、産業上の利用価値及び産業上の利用可能性が非常に高い。
1 余水調整板
2 止水板
3 垂直止水板
4 排水桝(既設桝)
5a 排水管
5b 排水路
6 水田
7 畦畔
8 土壌
9 雨水
11 余水調整板の天端
12 余水調整板の下端
13 制水スリット
21 止水板の上端
22 止水板の型折部
31 垂直止水板の上端
32 垂直止水板の型折部
41 排水桝の底盤
42 排水桝の上端
43 排水桝の開口部
44,44a,44b,44c 排水桝の側壁
45 排水桝の排水孔
46 排水桝の差し戸口
B,B’ 制水スリットの切欠き幅
F 余水調整板の前面
S,S’ 水田内の雨水の水位
S0 田面高
S1 止水板の上端の高さ
S2 余水調整板の天端高

Claims (4)

  1. 水田に既設の排水桝に適用可能な余水調整装置であって、
    前記余水調整装置は、少なくとも余水調整板と止水板とを備え、
    前記排水桝は、有底方形状の外形を成し、前記水田に面して前面が開口したコの字状断面を成すとともに田面高より30cm以上の高さを有した側壁を備え、かつ、前記側壁には前記水田の雨水を排水路に導水する排水孔が配設され、
    前記余水調整板は、前記排水桝の底盤に立設して既設桝の開口部を閉鎖可能とし、かつ、天端が田面高S0より5〜15cm高い位置S2に設置可能とする横幅及び高さを有しており、該天端中央から下端へ切欠き幅が5〜15cmで切り欠かれた制水スリットを備え、
    前記止水板は、前記制水スリットの上下方向開口面積を制限して前記田面高S0より高くかつS2より低い高さS1(S0<S1<S2)だけ開口するように、前記余水調整板の前面側に配設可能であり、
    通常雨量の降雨の場合は、前記水田から前記止水板を越えた雨水を、前記制水スリットを通してS1からS2までの水位を保持させながら前記排水桝に流入させて前記排水孔から排水させ、
    豪雨の場合は、前記制水スリットより水位が高くなった雨水を前記余水調整板の前記天端の全幅に亘って越流させることで、通常雨量より多量の雨水を前記排水桝に流入させて前記排水孔から排水させることを特徴とする余水調整装置。
  2. 前記制水スリットは、前記田面高S0よりもさらに下方に延びるよう切り欠かれており、前記水田の溝切りの際には、前記止水板を一時的に取り外すことで、溝切りされた前記水田の前記田面高S0より下位にある水を、前記制水スリットを通して前記排水桝内へ導水することを特徴とする請求項1に記載の余水調整装置。
  3. 前記余水調整板の前記天端は前記排水桝の内面側で面取りされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の余水調整装置。
  4. 前記余水調整装置は、垂直止水板をさらに備え、
    前記垂直止水板は、前記制水スリットの幅方向開口面積を制限するように前記余水調整板の前記前面側に配設可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の余水調整装置。
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