JP3191121B2 - 超低鉄損一方向性電磁箔帯の製造方法 - Google Patents

超低鉄損一方向性電磁箔帯の製造方法

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JP3191121B2 JP12089992A JP12089992A JP3191121B2 JP 3191121 B2 JP3191121 B2 JP 3191121B2 JP 12089992 A JP12089992 A JP 12089992A JP 12089992 A JP12089992 A JP 12089992A JP 3191121 B2 JP3191121 B2 JP 3191121B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は主として変圧器その他の
電子機器等の鉄心として利用される一方向性電磁箔帯の
製造方法に関するものである。特に、出発材である一方
向性電磁鋼板の表面を効果的に仕上げることにより、製
造工程の簡略化と鉄損特性の向上を図ろうとするもので
ある。
【0002】
【従来の技術】一方向性電磁箔帯は、磁気鉄心として多
くの電子機器に用いられている。一方向性電磁箔帯は、
製品の結晶粒の方位を{110}〈001〉方位に高度
に集積させたものであり、磁気特性として磁束密度が高
く(B8値で代表される)、鉄損が低いことが要求され
る。特に、最近では省エネルギーの見地から電力損失の
低減に対する要求が高まっている。
【0003】これまでの一方向性電磁箔帯の製造方法で
は、出発材に絶縁被膜が形成されているために、冷間圧
延を施して150μm以下の最終板厚とする場合の前処
理として、H2SO4、HF等の酸による絶縁被膜除去が
必要であった。ところが、この酸洗による絶縁被膜除去
の方法は、鋼帯の水素脆性を誘起し、圧延時に鋼帯の破
断を生じさせる問題点がある。また、薬液の濃度管理、
温度管理、公害設備の付与等の点でも大きな問題があ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、一方
向性電磁箔帯の製造方法において、出発材の仕上焼鈍に
おいて絶縁被膜を形成させないようにすることによっ
て、酸洗工程を経ずに冷間圧延を施して150μm以下
の最終板厚にするところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等はまず界面に
関する種々の検討の結果、出発材の仕上焼鈍前の一次再
結晶板を積層する際、アルミナ等の鋼板表面に存在する
酸化層(シリカ)と反応しないか、あるいは反応しにく
い物質を焼鈍分離剤として用い、かつこの焼鈍分離剤を
従来のように水スラリーではなく、水分を持ち込まない
ように塗布することにより絶縁被膜の不形成化が可能で
あることを見出した。
【0006】ところが、このような焼鈍分離剤を用いた
場合、鋼板中のインヒビターは温度を上げるに従って早
く弱まってしまい、二次再結晶による方位制御が充分に
行われにくいことが分かった。このような出発材に圧延
・再結晶を施して電磁箔を作製しても鉄損の優れたもの
とならないことは、例えば特願昭63−322030号
に述べられている。
【0007】その対策として、鋼板表面でのシリカを濃
化させる焼鈍を行うことにより、絶縁被膜の存在しない
高磁束密度の出発材を得ることができ、これを出発材と
することによって絶縁被膜除去を不必要として、水素脆
性による破断も生じることなく圧延できることを見出し
た。以下に本発明を詳細に説明する。
【0008】現在、通常の出発材となる一方向性電磁鋼
板は、一次再結晶焼鈍後にマグネシアを主成分とする焼
鈍分離剤をスラリー状で塗布し、仕上焼鈍を行ってい
る。この製造法では、一次再結晶焼鈍後の鋼板表面に存
在するSiO2を主成分とする酸化層と焼鈍分離剤とし
てスラリー状で塗布したMgOとが反応して、グラス
(フォルステライト)被膜を形成したり、インヒビター
構成元素として鋼中に存在するアルミニウムがマグネシ
アにより持ち込まれた水分と反応して鋼中に介在物を形
成することが分かった。
【0009】そこで検討の結果、フォルステライトを形
成させないために、焼鈍分離剤としてアルミナ等のシリ
カと反応しないか、もしくは反応しにくい物質を用いる
ことが重要であり、また鋼中にインヒビター構成元素と
して添加したアルミニウムを鋼中介在物として析出させ
ないためには仕上焼鈍の酸素分圧を低く保つことが重要
であることを見出した。この実行手段としては、水分を
持ち込まない静電塗布法が有効である。
【0010】このような焼鈍分離剤を用いて、一次再結
晶板を積層して仕上焼鈍を施したところ、シリカ濃化焼
鈍を行うと絶縁被膜が形成されず、二次再結晶が安定
し、磁束密度が向上することが分かった。重量で、S
i:3.3%、Mn:0.14%、C:0.05%、
S:0.007%、酸可溶性Al:0.028%、N:
0.008%を含み、残部はFeおよび不可避的不純物
からなる珪素鋼スラブを1150℃で加熱した後、板厚
1.6mmに熱延した。この熱延板を1100℃で2分間
焼鈍した後、最終板厚0.15mmに冷延した。この冷延
板を湿潤ガス中で、脱炭を兼ねて、(1)830℃およ
び(2)850℃で70秒間焼鈍し、一次再結晶させ
た。
【0011】その後、アンモニア窒化により窒素量を
0.02%まで高めてインヒビターを強化し、酸素ポテ
ンシャルPH2O/PH2=0.1の雰囲気中700℃で
焼鈍し、表面にシリカを濃化させた。この一次再結晶板
にアルミナを主成分とする焼鈍分離剤を静電塗布した
後、仕上焼鈍を施した。仕上焼鈍は1200℃まではN
2:100%の雰囲気ガス中で15℃/hrの昇温速度
で行い、1200℃でH2:100%に切りかえ、20
時間純化焼鈍を行った。これらの出発材を、そのまま最
終板厚50μmに圧延を施した時の圧延材料百本あたり
の破断回数を表1に示す。比較として、絶縁被膜を酸洗
除去した後、圧延した時の圧延材料百本あたりの破断回
数を示す。
【0012】
【表1】
【0013】表1より、絶縁被膜除去のための酸洗処理
を必要としないために、圧延破断が皆無であることが分
かる。圧延破断の原因の一つとして、出発材の酸洗処理
による水素脆性が考えられることは前述したが、表2に
サンプリング材百点平均の鋼中水素量を示す。
【0014】
【表2】
【0015】表2より、酸洗処理する従来材は20ppm
以上の水素を含んでいることがわかる。これに対して本
発明材は10ppm 以下であることがわかる。このような
初めから絶縁被膜を形成せず、かつ高磁束密度を有する
一方向性電磁鋼板を出発材として製造するにあたり、仕
上焼鈍前のシリカの濃化焼鈍の条件としては、温度は6
00〜900℃、雰囲気の酸素ポテンシャル(PH2
/PH2 )は0.01〜0.1とする。焼鈍温度が90
0℃を超えると一次再結晶の粒組織が変化するので二次
再結晶が不安定になる。焼鈍温度が600℃未満だとシ
リカを表面に濃化するのに長時間を要し、非効率であ
る。酸素ポテンシャルは、ファイアライト(Fe2 Si
4 )を形成しない酸素ポテンシャル(PH2 O/PH
2 <0.1)で行えば良い。0.01未満となるとシリ
カを表面に濃化するのに長時間を要し、非効率となる。
【0016】焼鈍分離剤として、シリカと反応しにくい
物質としては、コスト的にはアルミナが望ましいと考え
られるが、その他SiO2、ZrO2、BaO、CaO、
SrO等を用いることもできる。またこれらの粉末を混
合して用いることもできる。これらの物質を溶射等の方
法で付着させたシートを積層する際のスペーサーとして
用いることも有効である。特に、このようなシートをス
ペーサーとして用いた場合、板厚の薄い製品を製造する
際に焼鈍中の座屈等による形状の劣化を防止する上でも
有効である。
【0017】
【実施例】実施例を図面に基づいて説明する。 実施例1 重量で、Si:3.3%、Mn:0.14%、C:0.
05%、S:0.007%、酸可溶性Al:0.028
%、N:0.008%を含み、残部はFeおよび不可避
的不純物からなる珪素鋼スラブを1150℃で加熱した
後、板厚1.6mmに熱延した。この熱延板を1100℃
で2分間焼鈍した後、最終板厚0.15mmに冷延した。
この冷延板を湿潤ガス中で、脱炭を兼ねて830℃で7
0秒間焼鈍し、一次再結晶させた。次いでアンモニア雰
囲気中で750℃で焼鈍することにより、窒素量を0.
02%に増加して、インヒビターの強化を行った。この
板を、酸素ポテンシャル0.05、温度850℃で焼鈍
し、表面のシリカの濃化を行った。これらの鋼板をその
後、一部は(1)アルミナを溶射した鋼板をスペーサー
として用い、一部は(2)シリカを溶射した鋼板をスペ
ーサーとして用いた試料を積層した後、仕上焼鈍を施し
た。
【0018】仕上焼鈍は1200℃まではN2:50%
+H2:50%の雰囲気ガス中で15℃/hrの昇温速
度で行い、1200℃でH2:100%に切りかえ、1
0時間純化焼鈍を行った。このようにして得られた出発
材を冷間圧延した時の圧延材料百本あたりの破断回数と
サンプリング材100点平均の水素含有量を表3に示
す。
【0019】
【表3】
【0020】実施例2 実施例1と同一の窒化処理した板を酸洗し、次いでアル
ミナを静電塗布して積層した後、仕上焼鈍を施した。仕
上焼鈍は1200℃まではN2:50%+H2:50%の
雰囲気ガス中で15℃/hrの昇温速度で行い、120
0℃でH2:100%に切りかえ、10時間純化焼鈍を
行った。
【0021】このようにして得られた出発材を冷間圧延
した時の圧延材料百本あたりの破断回数とサンプリング
材100点平均の水素含有量を表4に示す。
【0022】
【表4】
【0023】
【発明の効果】本発明により、冷間圧延を施して板厚1
50μm以下の箔帯にするにあたって、酸による出発材
の絶縁被膜除去を必要としないため、水素脆性が生じな
い。従って、製造工程の簡素化が可能となるだけでな
く、歩留りも著しく向上する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 38/00 303 C22C 38/00 303U 38/06 38/06 H01F 3/04 H01F 3/04 (56)参考文献 特開 平5−255755(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/12 B21B 1/40 C21D 1/70 C21D 1/74 C21D 9/46 501 C22C 38/00 303 C22C 38/06 H01F 3/04

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量で、Si:0.8〜4.8%、酸可
    溶性Al:0.012〜0.050%、N≦0.01
    %、残部Feおよび不可避的不純物からなる電磁鋼帯
    を、一回もしくは中間焼鈍をはさむ二回以上の冷間圧延
    により所定の板厚とし、次いで一次再結晶焼鈍および仕
    上焼鈍を施して得られた一方向性電磁鋼板を出発材と
    し、この出発材に60〜80%の圧延率を適用する少な
    くとも1回の冷間圧延を施して150μm以下の最終板
    厚とし、次いで再結晶焼鈍を施すことからなる一方向性
    電磁箔帯の製造方法において、前記出発材の仕上焼鈍前
    雰囲気の酸素ポテンシャル(PH 2 O/PH 2 )を
    0.01〜0.1とし、600〜900℃の温度でシリ
    カの濃化焼鈍を行った後、得られた一次再結晶板を積層
    する際に焼鈍分離剤を静電塗布することにより、仕上焼
    鈍において表面を鏡面化すると共に二次再結晶および純
    化を行うことを特徴とする超低鉄損一方向性電磁箔帯の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 焼鈍分離剤として、Al2 3 、SiO
    2 、ZrO2 、BaO、CaO、SrOからなる酸化物
    群のうち1種または2種以上の物質の粉末を静電塗布す
    ることを特徴とする請求項1記載の超低鉄損一方向性電
    磁箔帯の製造方法。
  3. 【請求項3】 重量で、Si:0.8〜4.8%、酸可
    溶性Al:0.012〜0.050%、N≦0.01
    %、残部Feおよび不可避的不純物からなる電磁鋼帯
    を、一回もしくは中間焼鈍をはさむ二回以上の冷間圧延
    により所定の板厚とし、次いで一次再結晶焼鈍および仕
    上焼鈍を施して得られた一方向性電磁鋼板を出発材と
    し、この出発材に60〜80%の圧延率を適用する少な
    くとも1回の冷間圧延を施して150μm以下の最終板
    厚とし、次いで再結晶焼鈍を施すことからなる一方向性
    電磁箔帯の製造方法において、前記出発材の仕上焼鈍前
    雰囲気の酸素ポテンシャル(PH 2 O/PH 2 )を
    0.01〜0.1とし、600〜900℃の温度でシリ
    カの濃化焼鈍を行った後、得られた一次再結晶板を積層
    する際に焼付き防止の板を挿入することにより、仕上焼
    鈍において表面を鏡面化すると共に二次再結晶および純
    化を行うことを特徴とする超低鉄損一方向性電磁箔帯の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 仕上焼鈍時のスペーサーとして、Al2
    3 、SiO2 、ZrO2 、BaO、CaO、SrO
    らなる酸化物群のうち1種または2種以上の物質を付着
    したシートを用いることを特徴とする請求項3記載の超
    低鉄損一方向性電磁箔帯の製造方法。
  5. 【請求項5】 仕上焼鈍前シリカ濃化焼鈍を行う前に、
    鋼板表面の酸化膜を除去することを特徴とする請求項
    〜4のいずれかに記載の超低鉄損一方向性電磁箔帯の製
    造方法。
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JP6911597B2 (ja) * 2017-07-13 2021-07-28 日本製鉄株式会社 皮膜密着性に優れる一方向性珪素鋼板及びその製造方法
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