JP3148095B2 - 鉄損の低い鏡面方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
鉄損の低い鏡面方向性電磁鋼板の製造方法Info
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Description
の電気機器等の鉄心として利用される方向性電磁鋼板の
製造方法に関するものである。特に、その表面の鏡面化
手段及び磁区細分化手段を効果的に導入することによ
り、鉄損特性の向上を低コストで達成する製造方法を開
示するものである。
の電気機器に用いられている。方向性電磁鋼板は、Si
を0.8〜4.8%含有し製品の結晶粒の方位を{11
0}<001>方位に高度に集積させた鋼板である。そ
の磁気特性として磁束密度が高く(B8値で代表され
る)、鉄損が低い(W17/50値で代表される)こと
が要求される。特に、最近では省エネルギーの見地から
電力損失の低減に対する要求が高まっている。
を低減させる手段として、磁区を細分化する技術が開発
された。仕上げ焼鈍後の鋼板にレーザービームを照射す
ることにより磁区を細分化して鉄損を低減させる方法
が、例えば特開昭58−26405号公報に開示されて
いる。しかしながら、該方法による鉄損の低減はレーザ
ー照射によって導入された歪に起因するので、トランス
に成形したのちに歪取り焼鈍を必要とする巻鉄心トラン
ス用としては使用することができない。
117218号公報において、仕上焼鈍後に例えば歯車
型ロールにより加工歪を加え微細粒を形成させて磁区細
分化する方法が開示されている。しかしながら該方法に
おいては、歯車型ロールによって方向性電磁鋼板の表面
セラミックス層を破砕する必要があるために歯車ロール
の摩耗が大きく、製造コストに問題を生じる。
の磁区の動きを詳細に観察すると、静的には細分化した
磁区の中には動かない磁区も存在していることが判っ
た。方向性電磁鋼板の鉄損値を更に低減させるために
は、上記方法による磁区細分化技術と合わせて磁区の動
きを阻害する要因を排除する技術(磁区の活性化技術)
を導入する必要がある。
な要因である鋼板表面のグラス被膜等を除去し表面を鏡
面化する方法が有効である。その手段として、仕上げ焼
鈍後にグラス被膜を酸洗等により除去した後に、化学研
磨或いは電解研磨を行い表面を鏡面化させる方法が、例
えば特開昭64−83620号公報に開示されている。
しかしながら、化学研磨・電解研磨等の方法は、研究室
レベルでの少試料の材料を加工することは可能である
が、工業的規模で行うには薬液の濃度管理、温度管理、
公害防止設備の付与等の点で大きな問題があり、更にこ
のような工程を付加することにより製造コストが高くな
ってしまうために、未だ実用化されるに至っていない。
化処理の効果を最大限に発揮して大幅な低鉄損値を得る
ために酸洗・化学研磨等の表面処理を施した場合に、コ
ストが高くなるという問題点を解決するものである。す
なわち、歪取り焼鈍を施しても磁気特性が劣化せず、し
かも鉄損特性が大幅に向上する安価な方向性電磁鋼板の
製造方法を開示するものである。
機械的に局所応力を付加することにより溝を形成し、脱
炭焼鈍をFe系酸化物の形成しない酸化度の雰囲気ガス
中で行った後、焼鈍分離剤としてアルミナを塗布し、仕
上げ焼鈍を施した後、張力被膜を形成させることにより
最終製品の活動磁壁数を増加させ、歪取り焼鈍を施して
も特性劣化することがなく、且つ従来製品よりも低い鉄
損の方向性電磁鋼板を提供するものである。また、従来
製造工程と比較して付加工程がないので、製造コストも
実質的に高くならない。
法としては、小松等による(Al,Si)Nを主インヒ
ビターとして用いる製造法(例えば特公昭62−452
85号公報)、又は田口・坂倉等によるAlNとMnS
を主インヒビターとして用いる製造法(例えば特公昭4
0−15644号公報)を適用すればよい。
重要な元素である。含有量が4.8%を超えると、冷間
圧延時に材料が割れ易くなり圧延不可能となる。一方、
Si量を下げると仕上げ焼鈍時にα→γ変態を生じ、結
晶の方向性が損なわれるので、仕上げ焼鈍において結晶
の方向性に影響を及ぼさない0.8%を下限とする。酸
可溶性Alは、Nと結合してAlN又は(Al,Si)
Nとしてインヒビターとして機能するために必須の元素
である。磁束密度が高くなる0.012〜0.050%
を限定範囲とする。
リスターと呼ばれる鋼板中の空孔を生じるので、0.0
1%を上限とする。MnとSはMnSとして析出して、
インヒビターとしての役割を果たす。Mnが0.02%
より少なく、またSが0.005%より少ないと所定量
の有効なMnSインヒビターが確保できない。また、M
nが0.3%、Sが0.04%より多いとスラブ加熱時
の溶体化が不十分となり、二次再結晶が安定して行われ
なくなる。故にMn:0.02〜0.3%、S:0.0
05〜0.04%とする。他のインヒビター構成元素と
して、B,Bi,Se,Pb,Sn,Ti等を添加する
こともできる。
板とされる。小松等による(Al,Si)Nを主インヒ
ビターとして用いる製造法(例えば特公昭62−452
85号公報)では、熱間圧延時の温度確保の観点から1
100℃以上、またAlNの完全溶体化しない1280
℃以下の温度で加熱を行った後に熱間圧延を行う。ま
た、田口・坂倉等によるAlNとMnSを主インヒビタ
ーとして用いる製造法(例えば特公昭40−15644
号公報)では、完全溶体化する1300℃以上の温度で
加熱した後に熱延を行えば良い。
を経て冷間圧延される。焼鈍は750〜1200℃の温
度域で30秒〜30分間行われ、この焼鈍は製品の磁気
特性を高めるために有効である。望む製品の特性レベル
とコストを勘案して採否を決めるとよい。冷間圧延は、
基本的には上記特公昭40−15644号公報に開示さ
れているように、最終冷延圧下率80%以上とすれば良
い。
して溝を形成することにより、最終製品として活動磁壁
数を増加させることが本発明の重要なポイントである。
鋼板に形成する溝は、圧延方向に対して直角もしくは直
角から45度の範囲内で、その間隔は2〜10mmが鉄損
低下の観点から好ましい。溝の形状は連続的、不連続又
は点状のいずれでも良い。溝の幅及び深さは、それぞれ
10〜300μm、5〜50μmの範囲が鉄損低下の観
点から好ましい。溝の幅を狭くすると曲率半径の小さな
曲げ加工を施す際に折れの起点となり易い。また溝の幅
を広くすると磁束密度が低下してしまう。溝の深さも同
様にあまり深くすると磁束密度が低下してしまう。
を除去するために湿水素雰囲気中で、750〜900℃
の温度域で脱炭焼鈍を行う。この脱炭焼鈍において、F
e系の酸化物(Fe2 SiO4 、FeO等)を形成させ
ない酸化度で焼鈍を行い、焼鈍分離剤としてアルミナを
塗布することも本発明のポイントである。例えば、通常
脱炭焼鈍が行われる800〜850℃の温度域において
は、雰囲気ガスの酸化度(P H2 O /P H2 )<0.1
5に調整することにより、Fe系酸化物の生成を抑制す
ることができる。
が遅くなってしまい、工業的観点から好ましくない。こ
の両者を勘案すると、750〜900℃の温度域におい
て、雰囲気ガスの酸化度(P H2 O /P H2 ):0.0
1〜0.15の範囲で焼鈍することが好ましい。
ンヒビターとして用いる製造法(例えば特公昭62−4
5285号公報)においては、窒化処理を施す。この窒
化処理の方法は特に限定するものではなく、アンモニア
等の窒化能のある雰囲気ガス中で行う方法等がある。量
的には0.005%以上、望ましくは全窒素量として鋼
中のAl当量以上窒化すれば良い。
分離剤としてアルミナを水スラリーもしくは静電塗布法
等によりドライ・コートする。水スラリーで塗布する場
合には、例えば特願平5−211602号明細書で開示
する方法を採用することが好ましい。
結晶と窒化物の純化を行う。二次再結晶を特開平2−2
58929号公報で開示されるように、一定の温度で保
持する等の手段により所定の温度で行うことは、磁束密
度を上げるうえで有効である。二次再結晶完了後、窒化
物等の不純物の純化と表面の平滑化を行うために、10
0%水素で1100℃以上の温度で焼鈍する。
力被膜としては、例えば特開昭48−39338号公報
によるコロイド状シリカとリン酸アルミニウムを主体と
するコーティング液、特開昭50−79442号公報に
よるコロイド状シリカとリン酸マグネシウムを主体とす
るコーティング液、又は特開平6−65754号公報に
よるアルミナ・ゾルとホウ酸を主成分とするコーティン
グ液を焼き付ける方法等を採用すればよい。
Si: 3.3%、Mn: 0.1%、C:0.05%、S: 0.007
%、酸可溶性Al:0.03%、N: 0.008%、Sn:0.05
%、残部実質的にFe及び不可避的不純物からなる珪素
鋼スラブを1150℃で加熱した後、熱間圧延し板厚 2.3mm
とした。この熱延板を 1.8mmに冷延し、1100℃で2分間
焼鈍した後、最終板厚0.23mmに冷延した。
向と直角方向から10度の方向で、幅50μm、深さ1
5μmの溝を形成した後、窒素と水素の混合ガス中にお
いて酸化度(A:本発明法)0.06、及び(B:従来法)
0.44で 830℃の温度で 100秒焼鈍し一次再結晶させた。
次いでアンモニア雰囲気中で焼鈍することにより、窒素
量を 0.025%に増加して、インヒビターの強化を行っ
た。
アルミナ(Al2 O3 )、及び(B:従来法)マグネシ
ア(MgO)を水スラリーで塗布した後、仕上げ焼鈍を
施した。その後、コロイド状シリカとリン酸塩を主成分
とするコーティング液を塗布して850℃で2分間焼き
付けた。これらの試料の磁気特性を測定した後、更に80
0℃で4時間の歪取り焼鈍を行った。得られた製品の磁
気特性を表1に示す。表1より、本発明法は高価な工程
を付加することなく鉄損値を約20%も改良することが
できる。
的に応力を付加する方法は、例えば特開昭50−137
819号公報、特開昭59−197520号公報にも記
載されている。しかしながら、本発明のもう一つのポイ
ント技術である表面処理技術との組合せに関しては何ら
示唆するものはない。
みると、特開昭50−137819号公報は二次再結晶
粒の成長阻止領域形成によるものであり、特開昭59−
197520号公報はSeの純化促進に起因するもので
ある。本発明は、これまでに述べたように表面の鏡面化
手段、及び磁区細分化手段の効果的組合せによる磁区の
活性化によるもので、従来の技術と技術思想が全く異な
るものである。また、その鉄損効果も従来のものと比較
して格段に良い。
C:0.05%、S: 0.007%、酸可溶性Al:0.03%、
N: 0.008%、Sn:0.05%、残部実質的にFe及び不
可避的不純物からなる珪素鋼スラブを1150℃で加熱した
後、熱間圧延し板厚 2.3mmとした。この熱延板を1100℃
で2分間焼鈍した後、最終板厚0.30mmに冷延した。
方向から10度の方向で、幅50μm、深さ25μmの
溝を形成した後、酸化度0.06の窒素と水素の混合ガス中
において 830℃の温度で 150秒焼鈍し一次再結晶させ
た。次いでアンモニア雰囲気中で焼鈍することにより、
窒素量を 0.022%に増加して、インヒビターの強化を行
った。
O3 )を水スラリーで塗布した後、仕上げ焼鈍を施し
た。その後、コロイド状シリカとリン酸塩を主成分とす
るコーティング液を塗布して 850℃で2分間焼き付け
た。これらの試料の磁気特性を測定した後、更に 800℃
で4時間の歪取り焼鈍を行った。得られた製品の磁気特
性を表2に示す。
にアルミナ・ゾルとホウ酸を主成分とするコーティング
液を塗布して 870℃で2分間焼き付けた。これらの試料
の磁気特性を測定した後、更に 800℃で4時間の歪取り
焼鈍を行った。得られた製品の磁気特性を表3に示す。
n: 0.1%、C:0.05%、S: 0.007%、酸可溶性A
l:0.03%、N: 0.008%、Sn:0.05%、残部実質的
にFe及び不可避的不純物からなる珪素鋼スラブを1150
℃で加熱した後、熱間圧延し板厚 1.8mmとした。この熱
延板を 1.4mmに冷延し、1100℃で2分間焼鈍した後、最
終板厚0.15mmに冷延した。
方向に、幅40μm、深さ20μmの溝を形成した後、
窒素と水素の混合ガス中において酸化度(A:本発明
法)0.06、及び(B:従来法)0.44で 830℃の温度で70
秒焼鈍し一次再結晶させた。次いでアンモニア雰囲気中
で焼鈍することにより、窒素量を 0.025%に増加して、
インヒビターの強化を行った。
アルミナ(Al2 O3 )、及び(B:従来法)マグネシ
ア(MgO)を水スラリーで塗布した後、仕上げ焼鈍を
施した。その後、コロイド状シリカとリン酸塩を主成分
とするコーティング液を塗布して 850℃で2分間焼き付
けた。これらの試料の磁気特性を測定した後、更に 800
℃で4時間の歪取り焼鈍を行った。得られた製品の磁気
特性を表4に示す。
n:0.07%、C:0.07%、S: 0.025%、酸可溶性A
l: 0.026%、N: 0.008%、Sn: 0.1%、残部実質
的にFe及び不可避的不純物からなる珪素鋼スラブを13
50℃で加熱した後、熱間圧延し板厚 2.3mmとした。この
熱延板を酸洗後 1.8mmに冷延し、1100℃で2分間焼鈍し
た後、最終板厚0.23mmに冷延した。
方向から10度の方向で、幅50μm、深さ20μmの
溝を形成した後、酸化度 0.1の窒素と水素の混合ガス中
において 850℃の温度で 100秒焼鈍し一次再結晶させ
た。
O3 )を水スラリーで塗布した後、仕上げ焼鈍を施し
た。その後、コロイド状シリカとリン酸塩を主成分とす
るコーティング液を塗布して 850℃で2分間焼き付け
た。これらの試料の磁気特性を測定した後、更に 800℃
で4時間の歪取り焼鈍を行った。得られた製品の磁気特
性を表5に示す。
特性が劣化せず、且つ従来よりも格段に鉄損特性の良好
な方向性電磁鋼板をコストアップすることなく製造する
ことができる。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量比で、 Si:0.8〜4.8%、 酸可溶性Al:0.012〜0.05%、 N ≦0.01%、残部実質的にFe及び不可避的不純
物からなる珪素鋼スラブを1100℃以上1280℃以
下で加熱した後に熱間圧延し、一回もしくは中間焼鈍を
はさむ二回以上の冷間圧延により最終板厚とし、脱炭焼
鈍・窒化処理を行った後、仕上げ焼鈍を施す方向性電磁
鋼板の製造方法において、冷間圧延後、機械的に局所応
力を付加することにより溝を形成し、脱炭焼鈍をFe系
酸化物の形成しない酸化度の雰囲気ガス中で行った後、
焼鈍分離剤としてアルミナを塗布し、仕上げ焼鈍を施し
た後、張力被膜を形成させることにより最終製品の活動
磁壁数を増加させることを特徴とする鉄損の低い鏡面方
向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 重量比で、 Si:0.8〜4.8%、 酸可溶性Al:0.012〜0.05%、 N ≦0.01%、 Mn:0.02〜0.3%、 S :0.005〜0.040%、残部実質的にFe及
び不可避的不純物からなる珪素鋼スラブを1300℃以
上に加熱した後に熱間圧延し、一回もしくは中間焼鈍を
はさむ二回以上の冷間圧延により最終板厚とし、次いで
脱炭焼鈍・仕上げ焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法
において、冷間圧延後、機械的に局所応力を付加するこ
とにより溝を形成し、脱炭焼鈍をFe系酸化物の形成し
ない酸化度の雰囲気ガス中で行った後、焼鈍分離剤とし
てアルミナを塗布し、仕上げ焼鈍を施した後、張力被膜
を形成させることにより最終製品の活動磁壁数を増加さ
せることを特徴とする鉄損の低い鏡面方向性電磁鋼板の
製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP07272295A JP3148095B2 (ja) | 1995-03-30 | 1995-03-30 | 鉄損の低い鏡面方向性電磁鋼板の製造方法 |
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---|---|---|---|
JP07272295A JP3148095B2 (ja) | 1995-03-30 | 1995-03-30 | 鉄損の低い鏡面方向性電磁鋼板の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08269558A JPH08269558A (ja) | 1996-10-15 |
JP3148095B2 true JP3148095B2 (ja) | 2001-03-19 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP07272295A Expired - Lifetime JP3148095B2 (ja) | 1995-03-30 | 1995-03-30 | 鉄損の低い鏡面方向性電磁鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3148095B2 (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4288054B2 (ja) * | 2002-01-08 | 2009-07-01 | 新日本製鐵株式会社 | 方向性珪素鋼板の製造方法 |
-
1995
- 1995-03-30 JP JP07272295A patent/JP3148095B2/ja not_active Expired - Lifetime
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