JP3148096B2 - 鉄損の低い鏡面方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
鉄損の低い鏡面方向性電磁鋼板の製造方法Info
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Description
の電気機器等の鉄心として利用される方向性電磁鋼板の
製造方法に関するものである。特に、その表面の鏡面化
手段及び磁区細分化手段を効果的に導入することによ
り、鉄損特性の向上を低コストで達成する製造方法を開
示するものである。
の電気機器に用いられている。方向性電磁鋼板は、Si
を0.8〜4.8%含有し製品の結晶粒の方位を{11
0}<001>方位に高度に集積させた鋼板である。そ
の磁気特性として磁束密度が高く(B8値で代表され
る)、鉄損が低い(W17/50値で代表される)こと
が要求される。特に、最近では省エネルギーの見地から
電力損失の低減に対する要求が高まっている。
を低減させる手段として、磁区を細分化する技術が開発
された。仕上げ焼鈍後の鋼板にレーザービームを照射す
ることにより磁区を細分化して鉄損を低減させる方法
が、例えば特開昭58−26405号公報に開示されて
いる。しかしながら、該方法による鉄損の低減はレーザ
ー照射によって導入された歪に起因するので、トランス
に成形したのちに歪取り焼鈍を必要とする巻鉄心トラン
ス用としては使用することができない。
117284号公報において、仕上焼鈍後に方向性電磁
鋼板の表面グラス層の一部をレーザー照射等により除去
し、塩酸、硝酸等の酸を用いて鋼板地鉄を溶解して溝を
形成し、その後張力被膜を形成し、上記溝部に地鉄より
熱膨脹率の小さな張力被膜を埋め込むことにより、磁区
細分化する方法が開示されている。しかしながら該方法
においては、鋼板の表面に溝を形成するために、レーザ
ー照射等のグラス被膜を部分的に除去する工程、及び酸
洗等により地鉄を溶解する工程を付加する必要があるた
め製造コストが高くなってしまう。。
施した鋼板の磁区の動きを詳細に観察すると、静的には
細分化した磁区の中には動かない磁区も存在しているこ
とが分かった。方向性電磁鋼板の鉄損値を更に低減させ
るためには、上記方法による磁区細分化技術と合わせて
磁区の動きを阻害する要因を排除する技術(磁区の活性
化技術)を導入する必要がある。
な要因である鋼板表面のグラス被膜等を除去し表面を鏡
面化する方法が有効である。その手段として、仕上げ焼
鈍後にグラス被膜を酸洗等により除去した後に、化学研
磨或いは電解研磨を行い表面を鏡面化させる方法が、例
えば特開昭64−83620号公報に開示されている。
法は、研究室レベルでの少試料の材料を加工することは
可能であるが、工業的規模で行うには薬液の濃度管理、
温度管理、公害防止設備の付与等の点で大きな問題があ
り、更にこのような工程を付加することにより製造コス
トが高くなってしまうために、未だ実用化されるに至っ
ていない。
に方向性電磁鋼板の表面グラス層の一部をレーザー照射
等により除去し、塩酸、硝酸等の酸を用いて鋼板地鉄を
溶解して溝を形成し、その後張力被膜を形成する方法
は、コストが高くなってしまうという問題点、及びこの
磁区細分化処理の効果を最大限に発揮して大幅な低鉄損
値を得るためには更に化学研磨等の表面処理を施す必要
があるためコストが高くなるという問題点を同時に解決
するものである。すなわち、歪取り焼鈍を施しても磁気
特性が劣化せず、しかも従来製品よりも鉄損特性の良好
な方向性電磁鋼板を低コストで製造する方法を開示する
ものである。
ら仕上げ焼鈍前の過程で、化学的処理もしくは熱的処理
により溝を形成し、脱炭焼鈍をFe系酸化物の形成しな
い酸化度の雰囲気ガス中で行った後、焼鈍分離剤として
アルミナを塗布し、仕上げ焼鈍を施した後、張力被膜を
形成して活動磁壁数を増加させることにより、歪取り焼
鈍を施しても特性劣化することがなく、且つ従来製品よ
りも低い鉄損の方向性電磁鋼板を提供するものである。
また、従来製造工程と比較して付加工程がないので、製
造コストも実質的に高くならない。
法としては、小松等による(Al,Si)Nを主インヒ
ビターとして用いる製造法(例えば特公昭62−452
85号公報)、又は田口・坂倉等によるAlNとMnS
を主インヒビターとして用いる製造法(例えば特公昭4
0−15644号公報)を適用すればよい。
重要な元素である。含有量が4.8%を超えると、冷間
圧延時に材料が割れ易くなり圧延不可能となる。一方、
Si量を下げると仕上げ焼鈍時にα→γ変態を生じ、結
晶の方向性が損なわれるので、仕上げ焼鈍において結晶
の方向性に影響を及ぼさない0.8%を下限とする。
(Al,Si)Nとしてインヒビターとして機能するた
めに必須の元素である。磁束密度が高くなる0.012
〜0.050%を限定範囲とする。Nは製鋼時に0.0
1%以上添加するとブリスターと呼ばれる鋼板中の空孔
を生じるので、0.01%を上限とする。
ビターとしての役割を果たす。Mnが0.02%より少
なく、またSが0.005%より少ないと所定量の有効
なMnSインヒビターが確保できない。また、Mnが
0.3%、Sが0.04%より多いとスラブ加熱時の溶
体化が不十分となり、二次再結晶が安定して行われなく
なる。故にMn:0.02〜0.3%、S:0.005
〜0.04%とする。他のインヒビター構成元素とし
て、B,Bi,Se,Pb,Sn,Ti等を添加するこ
ともできる。
板とされる。小松等による(Al,Si)Nを主インヒ
ビターとして用いる製造法(例えば特公昭62−452
85号公報)では、熱間圧延時の温度確保の観点から1
100℃以上、またAlNの完全溶体化しない1280
℃以下の温度で加熱を行った後に熱間圧延を行う。ま
た、田口・坂倉等によるAlNとMnSを主インヒビタ
ーとして用いる製造法(例えば特公昭40−15644
号公報)では、完全溶体化する1300℃以上の温度で
加熱した後に熱延を行えば良い。
を経て冷間圧延される。焼鈍は750〜1200℃の温
度域で30秒〜30分間行われ、この焼鈍は製品の磁気
特性を高めるために有効である。望む製品の特性レベル
とコストを勘案して採否を決めるとよい。
15644号公報に開示されているように、最終冷延圧
下率80%以上とすれば良い。冷間圧延後から仕上げ焼
鈍前の過程で、化学的処理もしくは熱的処理により溝を
形成し、冷延仕上げ焼鈍後、張力被膜を形成させること
により活動磁壁数を増加させることが、本発明の重要な
ポイントである。
くは直角から45度の範囲内で、その間隔は2〜10mm
が鉄損低下の観点から好ましい。溝の形状は連続的、不
連続的な線状又は点状のいずれでも良い。溝の幅及び深
さは、それぞれ10〜300μm、5〜50μmの範囲
が鉄損低下の観点から好ましい。溝の幅を狭くすると曲
率半径の小さな曲げ加工を施す際に折れの起点となり易
い。また溝の幅を広くすると磁束密度が低下してしま
う。溝の深さも同様にあまり深くすると磁束密度が低下
してしまう。
を除去するために湿水素雰囲気中で、750〜900℃
の温度域で脱炭焼鈍を行う。この脱炭焼鈍において、F
e系の酸化物(Fe2 SiO4 、FeO等)を形成させ
ない酸化度で焼鈍を行い、焼鈍分離剤としてアルミナを
塗布することも本発明のポイントである。
850℃の温度域においては、雰囲気ガスの酸化度(P
H2 O /P H2 )<0.15に調整することにより、F
e系酸化物の生成を抑制することができる。但し、あま
りに酸化度を下げると脱炭速度が遅くなってしまい、工
業的観点から好ましくない。この両者を勘案すると、雰
囲気ガスの酸化度(P H2 O /P H2 ):0.01〜
0.15の範囲で焼鈍することが好ましい。
ンヒビターとして用いる製造法(例えば特公昭62−4
5285号公報)においては、窒化処理を施す。この窒
化処理の方法は特に限定するものではなく、アンモニア
等の窒化能のある雰囲気ガス中で行う方法等がある。量
的には0.005%以上、望ましくは全窒素量として鋼
中のAl当量以上窒化すれば良い。
分離剤としてアルミナを水スラリーもしくは静電塗布法
等によりドライ・コートする。水スラリーで塗布する場
合には、例えば特願平5−211602号明細書で開示
する方法を採用することが好ましい。
結晶と窒化物の純化を行う。二次再結晶を特開平2−2
58929号公報で開示されるように、一定の温度で保
持する等の手段により所定の温度で行うことは、磁束密
度を上げるうえで有効である。二次再結晶完了後、窒化
物等の不純物の純化と表面の平滑化を行うために、10
0%水素で1100℃以上の温度で焼鈍する。
力被膜としては、例えば特開昭48−39338号公報
によるコロイド状シリカとリン酸アルミニウムを主体と
するコーティング液、特開昭50−79442号公報に
よるコロイド状シリカとリン酸マグネシウムを主体とす
るコーティング液、又は特開平6−65754号公報に
よるアルミナ・ゾルとホウ酸を主成分とするコーティン
グ液を焼き付ける方法等を採用すればよい。
Si: 3.3%、Mn: 0.1%、C:0.05%、S: 0.007
%、酸可溶性Al:0.03%、N: 0.008%、Sn:0.05
%、残部実質的にFe及び不可避的不純物からなる珪素
鋼スラブを1150℃で加熱した後、熱間圧延し板厚 2.3mm
とした。この熱延板を 1.8mmに冷延し、1100℃で2分間
焼鈍した後、最終板厚0.23mmに冷延した。
により圧延方向と直角方向から10度の方向で、幅50
μm、深さ15μmの溝を形成した(試料A)。その
後、酸化度0.06の窒素と水素の混合ガス中において 830
℃の温度で 100秒焼鈍し一次再結晶させた。次いでアン
モニア雰囲気中で焼鈍することにより、窒素量を 0.025
%に増加して、インヒビターの強化を行った。これらの
試料の一部にフォトエッチング法により圧延方向と直角
方向から10度の方向で、幅50μm、深さ15μmの
溝を形成した(試料B)。
水スラリーで塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。その
後、コロイド状シリカとリン酸塩を主成分とするコーテ
ィング液を塗布して 850℃で2分間焼き付けた。これら
の試料の磁気特性を測定した後、更に 800℃で4時間の
歪取り焼鈍を行った。得られた製品の磁気特性を表1に
示す。表1より、本発明法は高価な工程を付加すること
なく鉄損値を約20%も改良できることが分かる。
C:0.05%、S: 0.007%、酸可溶性Al:0.03%、
N: 0.008%、Sn:0.05%、残部実質的にFe及び不
可避的不純物からなる珪素鋼スラブを1150℃で加熱した
後、熱間圧延し板厚 2.3mmとした。この熱延板を1100℃
で2分間焼鈍した後、最終板厚0.30mmに冷延した。
向から10度の方向で、幅30μm、深さ25μmの溝
を形成した後、酸化度0.06の窒素と水素の混合ガス中に
おいて 830℃の温度で 150秒焼鈍し一次再結晶させた。
次いでアンモニア雰囲気中で焼鈍することにより、窒素
量を 0.022%に増加して、インヒビターの強化を行っ
た。
O3 )を水スラリーで塗布した後、仕上げ焼鈍を施し
た。その後、コロイド状シリカとリン酸塩を主成分とす
るコーティング液を塗布して 850℃で2分間焼き付け
た。これらの試料の磁気特性を測定した後、更に 800℃
で4時間の歪取り焼鈍を行った。得られた製品の磁気特
性を表2に示す。
に、アルミナ・ゾルとホウ酸を主成分とするコーティン
グ液を塗布して 870℃で2分間焼き付けた。これらの試
料の磁気特性を測定した後、更に 800℃で4時間の歪取
り焼鈍を行った。得られた製品の磁気特性を表3に示
す。
n: 0.1%、C:0.05%、S:0.007 %、酸可溶性A
l:0.03%、N: 0.008%、Sn:0.05%、残部実質的
にFe及び不可避的不純物からなる珪素鋼スラブを1150
℃で加熱した後、熱間圧延し板厚 1.8mmとした。この熱
延板を酸洗後 1.4mmに冷延し、1100℃で2分間焼鈍した
後、最終板厚0.15mmに冷延した。
混合ガス中において 830℃の温度で70秒焼鈍し一次再結
晶させた。次いでアンモニア雰囲気中で焼鈍することに
より、窒素量を 0.025%に増加して、インヒビターの強
化を行った。
いて圧延方向と直角方向に、幅30μm、深さ25μm
の溝を形成した後、アルミナ(Al2 O3 )を水スラリ
ーで塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。その後、コロイ
ド状シリカとリン酸塩を主成分とするコーティング液を
塗布して 850℃で2分間焼き付けた。これらの試料の磁
気特性を測定した後、更に 800℃で4時間の歪取り焼鈍
を行った。得られた製品の磁気特性を表4に示す。
n:0.07%、C:0.07%、S: 0.025%、酸可溶性A
l: 0.026%、N: 0.008%、Sn: 0.1%、残部実質
的にFe及び不可避的不純物からなる珪素鋼スラブを13
50℃で加熱した後、熱間圧延し板厚 2.3mmとした。この
熱延板を酸洗後 1.8mmに冷延し、1100℃で2分間焼鈍し
た後、最終板厚0.23mmに冷延した。
方向から10度の方向で、幅30μm、深さ20μmの
溝を形成した後、酸化度 0.1の窒素と水素の混合ガス中
において 850℃の温度で 100秒焼鈍し一次再結晶させ
た。これらの鋼板をその後、アルミナ(Al2 O3 )を
水スラリーで塗布した後、仕上げ焼鈍を施した。
成分とするコーティング液を塗布して 850℃で2分間焼
き付けた。これらの試料の磁気特性を測定した後、更に
800℃で4時間の歪取り焼鈍を行った。得られた製品の
磁気特性を表5に示す。
特性が劣化せず、且つ従来よりも格段に鉄損特性の良好
な方向性電磁鋼板をコストアップすることなく製造する
ことができる。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量比で、 Si:0.8〜4.8%、 酸可溶性Al:0.012〜0.05%、 N ≦0.01%、残部実質的にFe及び不可避的不純
物からなる珪素鋼スラブを1100℃以上1280℃以
下で加熱した後に熱間圧延し、一回もしくは中間焼鈍を
はさむ二回以上の冷間圧延により最終板厚とし、脱炭焼
鈍・窒化処理を行った後、仕上げ焼鈍を施す方向性電磁
鋼板の製造方法において、冷間圧延後から仕上げ焼鈍前
の過程で、化学的処理もしくは熱的処理により溝を形成
し、脱炭焼鈍をFe系酸化物の形成しない酸化度の雰囲
気ガス中で行った後、焼鈍分離剤としてアルミナを塗布
し、仕上げ焼鈍を施した後、張力被膜を形成して活動磁
壁数を増加させることを特徴とする鉄損の低い鏡面方向
性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 重量比で、 Si:0.8〜4.8%、 酸可溶性Al:0.012〜0.05%、 N ≦0.01%、 Mn:0.02〜0.3%、 S :0.005〜0.040%、残部実質的にFe及
び不可避的不純物からなる珪素鋼スラブを1300℃以
上に加熱した後に熱間圧延し、一回もしくは中間焼鈍を
はさむ二回以上の冷間圧延により最終板厚とし、次いで
脱炭焼鈍・仕上げ焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法
において、冷間圧延後から仕上げ焼鈍前の過程で、化学
的処理もしくは熱的処理により溝を形成し、脱炭焼鈍を
Fe系酸化物の形成しない酸化度の雰囲気ガス中で行っ
た後、焼鈍分離剤としてアルミナを塗布し、仕上げ焼鈍
を施した後、張力被膜を形成させることにより最終製品
の活動磁壁数を増加させることを特徴とする鉄損の低い
鏡面方向性電磁鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP07272395A JP3148096B2 (ja) | 1995-03-30 | 1995-03-30 | 鉄損の低い鏡面方向性電磁鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
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Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH08269559A JPH08269559A (ja) | 1996-10-15 |
JP3148096B2 true JP3148096B2 (ja) | 2001-03-19 |
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ID=13497569
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP07272395A Expired - Lifetime JP3148096B2 (ja) | 1995-03-30 | 1995-03-30 | 鉄損の低い鏡面方向性電磁鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3148096B2 (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4288054B2 (ja) * | 2002-01-08 | 2009-07-01 | 新日本製鐵株式会社 | 方向性珪素鋼板の製造方法 |
JP6638599B2 (ja) * | 2016-09-01 | 2020-01-29 | 日本製鉄株式会社 | 巻鉄芯、及び巻鉄芯の製造方法 |
CN108660295A (zh) * | 2017-03-27 | 2018-10-16 | 宝山钢铁股份有限公司 | 一种低铁损取向硅钢及其制造方法 |
-
1995
- 1995-03-30 JP JP07272395A patent/JP3148096B2/ja not_active Expired - Lifetime
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