JP3185967B2 - 反強誘電性液晶組成物 - Google Patents

反強誘電性液晶組成物

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JP3185967B2
JP3185967B2 JP12656496A JP12656496A JP3185967B2 JP 3185967 B2 JP3185967 B2 JP 3185967B2 JP 12656496 A JP12656496 A JP 12656496A JP 12656496 A JP12656496 A JP 12656496A JP 3185967 B2 JP3185967 B2 JP 3185967B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、応答速度の温度依
存性が小さい反強誘電性液晶組成物に関する。
【0002】
【従来技術】液晶表示素子は、1)低電圧作動性、2)
低消費電力性、3)薄形表示、4)受光型などの優れた
特徴を有するため、現在まで、TN方式、STN方式、
ゲスト−ホスト(Gest−Host)方式などが開発
され実用化されている。しかし、現在広く利用されてい
るネマチック液晶を用いたものは、応答速度が数mse
c〜数十msecと遅い欠点があり、応用上種々の制約
を受けている。
【0003】これらの問題を解決するため、STN方式
や薄層トランジスタなどを用いたアクティブマトリック
ス方式などが開発されたが、STN型表示素子は、表示
コントラストや視野角などの表示品位は優れたものとな
ったが、セルギャップやチルト角の制御に高い精度を必
要とすることや応答がやや遅いことなどが問題となって
いる。このため、応答性のすぐれた新しい液晶表示方式
の開発が要望されており、光学応答時間がμsecオー
ダーと極めて短かい超高速デバイスが可能になる強誘電
性液晶の開発が試みられていた。
【0004】強誘電性液晶は、1975年、Meyor
等によりDOBAMBC(p−デシルオキシベンジリデ
ン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメート)が初
めて合成された(Le Journal de Phy
sique,36巻1975,L−69)。さらに、1
980年、ClarkとLagawallによりDOB
AMBCのサブマイクロ秒の高速応答、メモリー特性な
ど表示デバイス上の特性が報告されて以来、強誘電性液
晶が大きな注目を集めるようになった〔N.A.Cla
rk,etal.,Appl.Phys.Lett.3
6.899(1980)〕。
【0005】しかし、彼らの方式には、実用化に向けて
多くの技術的課題があり、特に室温で強誘電性液晶を示
す材料は無く、表示ディスプレーに不可欠な液晶分子の
配列制御に有効かつ実用的な方法も確立されていなかっ
た。この報告以来、液晶材料/デバイス両面からの様々
な試みがなされ、ツイスト二状態間のスイッチングを利
用した表示デバイスが試作され、それを用いた高速電気
光学装置も例えば特開昭56−107216号などで提
案されているが、高いコントラストや適正なしきい値特
性は得られていない。
【0006】このような視点から他のスイッチング方式
についても探索され、過渡的な散乱方式が提案された。
その後、1988年に本発明者らによる三安定状態を有
する液晶の三状態スイッチング方式が報告された〔A.
D.L.Chandani,T.Hagiwara,
Y.Suzuki etal.,Japan.J.of
Appl.Phys.,27,(5),L729−L7
32(1988)〕。
【0007】前記「三状態を有する」とは、第一の電極
基板と所定の間隙を隔てて配置されている第二の電極基
板の間に強誘電性液晶が挟まれてなる液晶電気光学装置
において、前記第一及び第二の電極基板に電界形成用の
電圧が印加されるよう構成されており、図1(A)で示
される三角波として電圧を印加したとき、図1(D)の
ように前記強誘電性液晶が、無電界時に分子配向が第一
の安定状態〔図3(a)〕になり、液晶電気光学装置の
透過率が第一の安定状態〔図1(D)の1〕を示し、か
つ、電界印加時に一方の電界方向に対し分子配向が前記
第一の安定状態とは異なる第二の安定状態〔図3
(b)〕になり液晶電気光学装置の透過率が第2の安定
状態〔図1(D)の2〕を示し、さらに他方の電界方向
に対し前記第一及び第二の安定状態とは異なる第三の分
子配向安定状態〔図3(c)〕になり液晶電気光学装置
の透過率が第三の安定状態〔図1(D)の3〕を示すこ
とを意味する。なお、この三安定状態、すなわち三状態
を利用する液晶電気光学装置については、本出願人は特
願昭63−70212号として出願し、特開平2−15
3322号として公開されている。
【0008】三安定状態を示す反強誘電性液晶の特徴を
さらに詳しく説明する。クラーク/ラガウェル(Cla
rk−Lagawall)により提案された表面安定化
強誘電性液晶素子では、S*C相において強誘電性液晶
分子が図2(a),(b)のように一方向に均一配向し
た2つの安定状態を示し、印加電界の方向により、どち
らか一方の状態に安定化され、電界を切ってもその状態
が保持される。
【0009】しかしながら実際には、強誘電性液晶分子
の配向状態は、液晶分子のダイレクターが捩れたツイス
ト二状態を示したり、層がくの字に折れ曲ったシエブロ
ン構造を示す。シエブロン層構造では、スイッチング角
が小さくなり低コントラストの原因になるなど、実用化
へ向けて大きな障害になっている。
【0010】一方、“反”強誘電性液晶は三安定状態を
示すS*(3)相では、上記液晶電気光学装置において、無
電界時には、図3(a)に示すごとく隣り合う層毎に分
子は逆方向に傾き反平行に配列し、液晶分子の双極子は
お互に打ち消し合っている。したがって、液晶層全体と
して自発分極は打ち消されている。この分子配列を示す
液晶相は、図1(D)の1に対応している。さらに、
(+)又は(−)のしきい値より充分大きい電圧を印加
すると、図3(b)および(c)に示す液晶分子が同一
方向に傾き、平行に配列する。この状態では、分子の双
極子も同一方向に揃うため自発分極が発生し、強誘電相
となる。
【0011】すなわち、“反”強誘電性液晶のS*(3)相
においては、無電界時の“反”強誘電相と印加電界の極
性による2つの強誘電相が安定になり、“反”強誘電相
と2つの強誘電相間を直流的しきい値を持って三安定状
態間スイッチングを行うものである。このスイッチング
に伴う液晶分子配列の変化により図4に示すダブル・ヒ
ステリシスを描いて光透過率が変化する。このダブル・
ヒステリシスに、図4の(A)に示すようにバイアス電
圧を印加して、さらにパルス電圧を重畳することにより
メモリー効果を実現できる特徴を有する。さらに、電界
印加により強誘電相は層がストレッチされ、ブックシエ
ルフ構造となる。一方、第三安定状態の“反”強誘電相
では類似ブックシエルフ構造となる。この電界印加によ
る層構造スイッチングが液晶層に動的シエアーを与える
ため駆動中に配向欠陥が改善され、良好な分子配向が実
現できる。そして、“反”強誘電性液晶では、プラス側
とマイナス側の両方のヒステリシスを交互に使い画像表
示を行なうため、自発分極に基づく内部電界の蓄積によ
る画像の残像現象を防止することができる。
【0012】以上のように、“反”強誘電性液晶は、
1)高速応答が可能で、2)高いコントラストと広い視
野角および3)良好な配向特性とメモリー効果が実現で
きる、非常に有用な液晶化合物と言える。
【0013】“反”強誘電性液晶の三安定状態を示す液
晶相については、1)A.D.L.Chandani
etal.,Japan J.Appl.Phys.,
,L−1265(1989)、2)H.Orihar
a etal.,JapanJ.Appl.Phys.,
29,L−333(1990)に報告されており、
“反”強誘電的性質にちなみS*CA相(Antife
rroelectric Smectic C*相)と
命名している。本発明者らは、この液晶相が三安定状態
間のスイッチングを行なうためS*(3)相と定義した。
【0014】三安定状態を示す“反”強誘電相S*(3)を
相系列に有する液晶化合物は、本発明者の出願した特開
平1−316367号、特開平1−316372号、特
開平1−316339号、特開平2−28128号及び
市橋等の特開平1−213390号公報があり、また三
安定状態を利用した液晶電気光学装置としては本出願人
は特開平2−40625号、特開平2−153322
号、特開平2−173724号において新しい提案を行
っている。
【0015】“反”強誘電性液晶を液晶ディスプレイへ
応用する場合、1)動作温度範囲、2)応答速度、3)
自発分極、4)ヒステリシス特性等を単一液晶で全て満
足させることは困難であり、通常十数種類の混合液晶と
して調製される。
【0016】現在、一般的に反強誘電性液晶材料として
知られている反強誘電性液晶化合物には、その構造のた
め、応答速度に温度依存性があることが知られている。
しかし、この温度依存性が大きい場合には、ディスプレ
ー上での動画表示に問題を生じるという欠点がある。そ
こで、実用化に向けての一つの課題として、応答速度の
温度依存性の小さな反強誘電性液晶化合物の開発が要求
されている。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、応答
速度に関する温度依存性の小さな反強誘電性液晶組成物
を提供する点にある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために、従来の反強誘電性液晶化合物の光学
活性側でないアルキル鎖の末端に二重結合を導入した反
強誘電性液晶化合物を特定の液晶組成物に配合すること
により、従来の反強誘電性液晶組成物よりも応答速度の
温度依存性が小さい反強誘電性液晶組成物が得られるこ
とを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】本発明の第一は、(A)下記一般式〔1〕
【化7】 (式中、R1およびR2は炭素数2〜16のアルキル基よ
りなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Y1
はO、COO、OCOおよび単結合よりなる群から選ば
れた基であり、*は光学活性炭素を示す)で示されるC
3系化合物と、(B)下記一般式〔2〕
【化8】 (式中、R3は炭素数2〜10のアルキル基から選ばれ
た基であり、Y2はO、COO、OCOおよび単結合よ
りなる群から選ばれた基であり、rは2〜16の整数、
*は光学活性炭素を示す)で示されるビニル基含有CF
3系化合物、とを含有することを特徴とする光学活性部
位がCF3基をもつ化合物のみより構成されている反強
誘電性液晶組成物に関する。
【0020】本発明の第二は、(A)下記一般式〔1〕
【化9】 (式中、R1およびR2は炭素数2〜16のアルキル基よ
りなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Y1
はO、COO、OCOおよび単結合よりなる群から選ば
れた基であり、*は光学活性炭素を示す)で示されるC
3系化合物と、(B)下記一般式〔2〕
【化10】 (式中、R3は炭素数2〜10のアルキル基から選ばれ
た基であり、Y2はO、COO、OCOおよび単結合よ
りなる群から選ばれた基であり、rは2〜16の整数、
*は光学活性炭素を示す)で示されるビニル基含有CF
3系化合物および(C)下記一般式〔3〕
【化11】 (式中、R4およびR5は炭素数2〜16のアルキル基よ
りなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、X1
およびX2は水素およびハロゲンよりなる群からそれぞ
れ独立して選ばれた基であって、X1およびX2のうち少
なくとも1つはハロゲンであり、*は光学活性炭素を示
す)で示される核置換ハロゲン含有CF3系化合物とを
含有することを特徴とする光学活性部位がCF3基をも
つ化合物と光学活性部位がCH3基をもつ化合物とから
構成されている反強誘電性液晶組成物に関する。
【0021】本発明においては、前記液晶組成物に下記
一般式〔4〕
【化12】 (式中、R6は炭素数1〜16のアルキル基であり、X3
およびX4は水素およびOCF3よりなる群から独立して
選ばれた基であって、X3およびX4のうち少なくとも1
つはOCF3である)
【0022】前記一般式〔1〕で示されるCF3系化合
物は、全液晶組成物中10〜80重量%、好ましくは1
5〜60重量%を占めることができ、前記一般式〔2〕
で示されるビニル基含有CF3系化合物は、全液晶組成
物中10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%を
占めることができる。また、前記一般式〔3〕で示され
る核置換ハロゲン含有CH3系化合物は、全液晶組成物
中10〜50重量%、好ましくは15〜30重量%を占
めることができる。さらに前記一般式〔4〕で示される
液晶特性改善剤は、全液晶組成物中3〜20重量%、好
ましくは5〜10重量%を占めることができる。配合比
率が前記範囲からはずれると反強誘電性の安定はもちろ
ん、ディスプレイ表示上重要であるコントラスト等への
悪影響が生じる。
【0023】本発明に用いる化合物の一般的な合成方法
を以下に示す。この説明はY1がOである場合について
述べたが、これが他の基に変わっても製法は本質的に変
わるものではない。下記反応式に示すように4′−アル
ケニルオキシ−4−ビフェニルカルボン酸(5)(市販
のアルケニルオキシアルコールと4′−ブロモ−4−ビ
フェニルカルボン酸とを公知の方法で反応させて調整し
た)と塩化チオニル等の塩素化剤とを反応させることに
より、4′−アルケニルオキシ−4−ビフェニルカルボ
ン酸クロリド(6)を調整する。これに、従来の方法で
調整した(1,1,1−トリフルオロ−2−アルキル)
−4−ヒドロキシベンゾエート(7)を塩化メチレンを
溶媒とし、トリエチルアミンを触媒として、窒素雰囲気
下室温で一晩以上反応させる。この反応溶液を塩酸溶液
で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水し、塩化メチレ
ンを蒸留することにより、粗生成物を得る。この粗生成
物をヘキサン/酢酸エチルの混合溶液でシリカゲルを用
いて分離精製し、4−(1,1,1−トリフルオロ−2
−アルコキシカルボニル)フェニル−4′−アルケニル
オキシビフェニル−4−カルボキシレート(8)を得
る。これは、エタノールを用いて更に精製することがで
きる。また、上記の粗生成物の分離精製、エステル合成
及び液晶の再結晶は記載の方法以外にも公知の手法によ
り代替することができる。
【0024】
【化13】
【0025】本発明における応答速度の測定方法は以下
のとおりである。すなわち、ポリイミドを塗布しラビン
グ処理を施した透明電極付きガラスからなる厚さ2μm
のセルに測定用化合物または組成物を注入し、こうして
作製した液晶物性測定セルをホットステージにセット
し、これを2枚の偏向板を直交させた光電子倍増管付き
偏向顕微鏡に無電界の状態で暗視野となるように配置し
た。セル中の液晶が反強誘電相である時に、セルに図5
に示すような±50Vの矩形波を印加した時の光の相対
透過率の変化から応答速度τを求めることができる。τ
は強誘電相の状態(マイナス側の矩形波電圧終了時)か
ら反強誘電相の状態を経由して次の強誘電相の状態(プ
ラス側の矩形波電圧印加により相対透過率が90%に達
した時)になるまでの時間であり、その単位はμsec
である。
【0026】
【実施例】以下の実施例において、前記一般式〔2〕で
示されるビニル基含有化合物を含有させることにより、
前記一般式〔1〕で示される反強誘電性液晶化合物を含
む反強誘電性液晶組成物が応答速度において優れた温度
依存性を示すことについて述べるが、本発明は以下の実
施例によって限定されるものではない。また、応答速度
の温度依存性の指標として今回用いたτI(応答速度指
数)は下式(A)よりもとめることとする。
【数1】 τI(40/80) = (log10τ40) ÷ (log10τ80) …式(A) τ40 ; 40℃における応答速度(μ秒) τ80 ; 80℃における応答速度(μ秒)
【数2】 τI(30/60) = (log10τ30) ÷ (log10τ60) …式(B) τ30 ; 30℃における応答速度(μ秒) τ60 ; 60℃における応答速度(μ秒)
【0027】製造例1 4−(1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシロキシカ
ルボニル)フェニル−4′−(9−デセニルオキシ)ビ
フェニル−4−カルボキシレートの合成
【化14】 4′−(9−デセニルオキシ)−4−ビフェニルカルボ
ン酸と塩化チオニル等の塩素化剤とを反応させることに
より、4′−(9−デセニルオキシ)−4−ビフェニル
カルボン酸クロリドを調製する。この4′−(9−デセ
ニルオキシ)−4−ビフェニルカルボン酸クロリド0.
25g(0.7mmol)に、従来の方法で調製した
(1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシル)−4−ヒ
ドロキシベンゾエート0.20g(0.7mmol)を
塩化メチレンを溶媒とし、トリエチルアミン0.07g
(0.7mmol)を触媒として、窒素雰囲気下室温で
一晩以上反応させる。この反応溶液を塩酸溶液で洗浄
し、無水硫酸マグネシウムで脱水し、塩化メチレンを蒸
留することにより、粗生成物を得る。この粗生成物をヘ
キサン/酢酸エチルの20/1(v/v)混合溶液でシ
リカゲルを用いて分離精製し、4−(1,1,1−トリ
フルオロ−2−ヘキシロキシカルボニル)フェニル−
4′−(9−デセニルオキシ)ビフェニル−4−カルボ
キシレート0.36g(81%)を得る。これは、エタ
ノールを用いて更に精製することができる。
【0028】本化合物の1H−NMR(CDCl3中、T
MS基準、δ値ppm)は8.3〜6.9(m,12
H),5.9〜5.75(m,1H),5.7〜5.5
(m,1H),5.1〜4.9(dd,2H),4.1
〜3.9(t,2H),2.1〜2.0(q,2H),
1.95〜0.85(m,23H)であった。
【0029】また、上記化合物をポリイミドを塗布しラ
ビング処理を施した透明電極付ガラスからなる厚さ2μ
mのセルに注入し、ホットステージ付偏光顕微鏡観察に
よる相転移温度を表1に示す。また、τ40、τ80及びτ
I(40/80)も表1に示す。
【0030】製造例2 4−(1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシロキシカ
ルボニル)−3−フルオロフェニル−4′−(9−デセ
ニルオキシ)ビフェニル−4−カルボキシレートの合成
【化15】 4′−(9−デセニルオキシ)−4−ビフェニルカルボ
ン酸と塩化チオニル等の塩素化剤とを反応させることに
より、4′−(9−デセニルオキシ)−4−ビフェニル
カルボン酸クロリドを調製する。この4′−(9−デセ
ニルオキシ)−4−ビフェニルカルボン酸クロリド0.
23g(0.6mmol)に、従来の方法で調製した
(1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシル)−2−フ
ルオロ−4−ヒドロキシベンゾエート0.20g(0.
7mmol)を塩化メチレンを溶媒とし、トリエチルア
ミン0.07g(0.7mmol)を触媒として、窒素
雰囲気下室温で一晩以上反応させる。この反応溶液を塩
酸溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水し、塩化
メチレンを蒸留することにより、粗生成物を得る。この
粗生成物をヘキサン/酢酸エチルの20/1(v/v)
混合溶液でシリカゲルを用いて分離精製し、4−(1,
1,1−トリフルオロ−2−ヘキシロキシカルボニル)
−3−フルオロフェニル−4′−(9−デセニルオキ
シ)ビフェニル−4−カルボキシレート0.36g(8
1%)を得る。これは、エタノールを用いて更に精製す
ることができる。
【0031】本化合物の1H−NMR(CDCl3中、T
MS基準、δ値ppm)は8.3〜6.9(m,11
H),5.9〜5.75(m,1H),5.7〜5.5
(m,1H),5.1〜4.9(dd,2H),4.1
〜3.9(t,2H),2.1〜2.0(q,2H),
1.95〜0.85(m,23H)であった。
【0032】また、上記化合物をポリイミドを塗布しラ
ビング処理を施した透明電極付ガラスからなる厚さ2μ
mのセルに注入し、ホットステージ付偏光顕微鏡観察に
よる相転移温度を表1に示す。また、τ40、τ80及びτ
I(40/80)も表1に示す。
【0033】対照例1 4−(1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシロキシカ
ルボニル)フェニル−4′−(n−デシルオキシ)ビフ
ェニル−4−カルボキシレート
【化16】 をポリイミドを塗布しラビング処理を施した透明電極付
ガラスからなる厚さ2μmのセルに注入し、ホットステ
ージ付偏光顕微鏡観察による相転移温度を表1に示す。
また、τ40、τ80及びτI(40/80)も表1に示す。
【0034】対照例2 4−(1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシロキシカ
ルボニル)−3−フルオロフェニル−4′−(n−デシ
ルオキシ)ビフェニル−4−カルボキシレート
【化17】 をポリイミドを塗布しラビング処理を施した透明電極付
ガラスからなる厚さ2μmのセルに注入し、ホットステ
ージ付偏光顕微鏡観察によるSmCA*の温度範囲を表
1に示す。また、τ40、τ80及びτI(40/80)も表1
に示す。
【0035】
【表1】 * ) 40℃でのτが測定不可能なため、算出できない。
【0036】製造例3 4−(1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシロキシカ
ルボニル)フェニル−4′−(9−デセノイルオキシ)
フェニル−4−カルボキシレートの合成(m=8、
2:n−C49
【化18】 4−(9−デセノイルオキシ)安息香酸と塩化チオニル
等の塩素化剤とを反応させることにより、4−(8−デ
セノイルオキシ)安息香酸クロリドを調製する。この4
−(8−デセノイルオキシ)安息香酸クロリド2.3g
(7mmol)に、(1,1,1−トリフルオロ−2−
ヘキシル)−4−ヒドロキシベンゾエート2.1g(8
mmol)を塩化メチレンを溶媒とし、トリエチルアミ
ン0.7g(7mmol)、ジメチルアミノピリジン
0.3g(2mmol)を触媒として、窒素雰囲気下室
温で一晩以上反応させる。この反応溶液を塩酸溶液で洗
浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水し、塩化メチレンを
蒸留することにより、粗生成物を得る。この粗生成物を
ヘキサン/酢酸エチルの20/1(v/v)混合溶液で
シリカゲルを用いて分離精成し、4−(1,1,1−ト
リフルオロ−2−ヘキシロキシカルボニル)フェニル−
4′−(9−デセノイルオキシ)フェニル−4−カルボ
キシレート2.8g(70%)を得る。これは、エタノ
ールを用いて更に精製することができる。
【0037】本化合物の1H−NMR(CDCl3中、T
MS基準、δ値ppm)は、8.3〜6.9(m,8
H),5.9〜5.7(m,2H),5.7〜5.5
(m,1H),5.1〜4.9(dd,2H),4.1
〜3.9(t,2H),2.2〜2.0(q,2H),
2.0〜0.8(m,23H)であった。
【0038】また、上記化合物をポリイミドを塗布しラ
ビング処理を施した透明電極付ガラスからなる厚さ2μ
mのセルに注入し、ホットステージ付偏向顕微鏡観察に
よる相転移温度(降温時のデータ)は以下の通りであっ
た。
【表2】 非常に低温でも、反強誘電性を示すことが確認された。
【0039】実施例1
【化19】 で示される組成物のτ30、τ60およびτI(30/60)を
表3に示す。
【0040】比較例1
【化20】 で示される組成物のτ30、τ60およびτI(30/60)を
表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】実施例2
【化21】 で示される反強誘電性液晶組成物のτ30、τ60およびτ
I(30/60)を表4に示す。
【0043】比較例2
【化22】 で示される反強誘電性液晶組成物のτ30、τ60およびτ
I(30/60)を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】実施例3
【化23】 で示される反強誘電性液晶組成物のτ30、τ60およびτ
I(30/60)を表5に示す。
【0046】比較例3
【化24】 で示される反強誘電性液晶組成物のτ30、τ60およびτ
I(30/60)を表5に示す。
【0047】
【表5】
【0048】以下に、本発明の実施態様項を列記する。 (1) (A)下記一般式〔1〕
【化25】 (式中、R1およびR2は炭素数2〜16のアルキル基よ
りなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Y1
はO、COO、OCOおよび単結合よりなる群から選ば
れた基であり、*は光学活性炭素を示す)で示されるC
3系化合物と、(B)下記一般式〔2〕
【化26】 (式中、R3は炭素数2〜10のアルキル基から選ばれ
た基であり、Y2はO、COO、OCOおよび単結合よ
りなる群から選ばれた基であり、rは2〜16の整数、
*は光学活性炭素を示す)で示されるビニル基含有CF
3系化合物、とを含有することを特徴とする光学活性部
位がCF3基をもつ化合物のみより構成されている反強
誘電性液晶組成物。 (2)全液晶組成物に対して、前記(A)成分10〜8
0重量%、前記(B)成分10〜60重量%を含有する
ものである前項(1)記載の反強誘電性液晶組成物。 (3) (A)下記一般式〔1〕
【化27】 (式中、R1およびR2は炭素数2〜16のアルキル基よ
りなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Y1
はO、COO、OCOおよび単結合よりなる群から選ば
れた基であり、*は光学活性炭素を示す)で示されるC
3系化合物と、(B)下記一般式〔2〕
【化28】 (式中、R3は炭素数2〜10のアルキル基から選ばれ
た基であり、Y1はO、COO、OCOおよび単結合よ
りなる群から選ばれた基であり、rは2〜16の整数、
*は光学活性炭素を示す)で示されるビニル基含有CF
3系化合物および(C)下記一般式〔3〕
【化29】 (式中、R4およびR5は炭素数2〜16のアルキル基よ
りなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、X1
およびX2は水素およびハロゲンよりなる群からそれぞ
れ独立して選ばれた基であって、X1およびX2のうち少
なくとも1つはハロゲンであり、*は光学活性炭素を示
す)で示される核置換ハロゲン含有CH3系化合物とを
含有することを特徴とする光学活性部位がCF3基をも
つ化合物と光学活性部位がCH3基をもつ化合物とから
構成されている反強誘電性液晶組成物。 (4)全液晶組成物に対して、前記(A)成分10〜8
0重量%、前記(B)成分10〜60重量%、前記
(C)成分10〜50重量%を含有するものである前項
(3)記載の反強誘電性液晶組成物。 (5)下記一般式〔4〕
【化30】 (式中、R6は炭素数1〜16のアルキル基であり、X3
およびX4は水素およびOCF3よりなる群から独立して
選ばれた基であって、X3およびX4のうち少なくとも1
つはOCF3である)で示される液晶特性改善剤を含有
する請求項1または2記載の反強誘電性液晶組成物。 (6)全液晶組成物に対して、前記(A)成分10〜8
0重量%、前記(B)成分10〜60重量%、前記
(C)成分10〜50重量%、前記一般式〔4〕の化合
物3〜20重量%を含有するものである前項(5)記載
の反強誘電性液晶組成物。 (7)前記一般式〔1〕の化合物が
【化31】 (式中、R1およびR2は炭素数2〜16のアルキル基よ
りなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、*は
光学活性炭素を示す)である前項(1)、(2)、
(3)、(4)、(5)または(6)記載の反強誘電性
液晶組成物。 (8)前記一般式〔2〕の化合物が
【化32】 (式中、R3は炭素数2〜10のアルキル基から選ばれ
た基であり、rは2〜16の整数、*は光学活性炭素を
示す)である前項(1)、(2)、(3)、(4)、
(5)または(6)記載の反強誘電性液晶組成物。 (9)前記一般式〔3〕の化合物におけるX1およびX2
のうちの少なくとも1つがFである前項(1)、
(2)、(3)、(4)、(5)または(6)記載の反
強誘電性液晶組成物。 (10)前記一般式〔4〕の化合物におけるX3およびX4
のうちの少なくとも1つがOCF3である前項(1)、
(2)、(3)、(4)、(5)または(6)記載の反
強誘電性液晶組成物。
【0049】
【効果】 (1)実施例1と比較例1を比較すると、製造例1の反
強誘電性液晶化合物を比較例1のような光学活性部位が
CF3系の組成物に配合することにより、具体的には、
製造例1の反強誘電性液晶化合物を30重量%配合する
ことにより、応答速度の温度依存性を示すτI(30/6
0)が約3%も低下することが確認された。 (2)実施例2と比較例2を比較すると、製造例1の反
強誘電性液晶化合物を比較例2のような光学活性部位が
CF3系とCH3系の混合してある組成物に配合すること
により、具体的には、製造例1の反強誘電性液晶化合物
を30重量%配合することにより、応答速度の温度依存
性を示すτI(30/60)が約0.5%も低下することが
確認された。 (3)実施例3と比較例3を比較すると、製造例1の反
強誘電性液晶化合物を比較例3のような光学活性部位が
CF3系、CH3系と反強誘電性液晶化合物でない化合物
の混合してある組成物に配合することにより、具体的に
は、製造例1の反強誘電性液晶化合物を30重量%配合
することにより、応答速度の温度依存性を示すτI(30
/60)が約0.8%も低下することが確認された。 (4)(1)、(2)、(3)より、光学活性側でない
アルキル鎖の末端に二重結合を導入した反強誘電性液晶
化合物を配合することにより、様々な反強誘電性液晶組
成物の応答速度の温度依存性を示すτIが大きく改善さ
れたことが確認された。つまり、光学活性側でないアル
キル鎖の末端に二重結合を導入した反強誘電性液晶化合
物を配合することにより、反強誘電性材料を利用したデ
ィスプレー材料に不可欠な応答速度の温度依存性が大き
く改善されたことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は印加される三角波を、(B)は市販の
ネマチック液晶の、(C)は二状態液晶の、(D)は三
安定状態液晶の、それぞれの光学応答特性を示す。
【図2】クラーク/ラガウェルにより提案された強誘電
性液晶分子の二つの安定した配向状態を示す。
【図3】(A)は、本発明の“反”強誘電性液晶分子の
三つの安定した配向状態を示す。(B)は、Aの各
(a)、(b)、(c)に対応した三状態スイッチング
と液晶分子配列の変化を示す。
【図4】“反”強誘電性液晶分子が印加電圧に対してダ
ブルヒステリシスを描いて光透過率が変化することを示
す印加電圧−光透過率特性図である。
【図5】(A)は印加電圧と時間の関係を示し、(B)
はその印加電圧がかかったときの液晶分子の応答状態を
示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−53073(JP,A) 特開 平3−197444(JP,A) 特開 平3−123759(JP,A) 特開 平9−188879(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09K 19/20 CA(STN) REGISTRY(STN) LIQ.CRYST

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)下記一般式〔1〕 【化1】 (式中、R1およびR2は炭素数2〜16のアルキル基よ
    りなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Y1
    はO、COO、OCOおよび単結合よりなる群から選ば
    れた基であり、*は光学活性炭素を示す)で示されるC
    3系化合物と、(B)下記一般式〔2〕 【化2】 (式中、R3は炭素数2〜10のアルキル基から選ばれ
    た基であり、Y2はO、 COO、OCOおよび単結合よりなる群から選ばれた基
    であり、rは2〜16の整数、*は光学活性炭素を示
    す)で示されるビニル基含有CF3系化合物、とを含有
    することを特徴とする光学活性部位がCF3基をもつ化
    合物のみより構成されている反強誘電性液晶組成物。
  2. 【請求項2】(A)下記一般式〔1〕 【化3】 (式中、R1およびR2は炭素数2〜16のアルキル基よ
    りなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、Y1
    はO、COO、OCOおよび単結合よりなる群から選ば
    れた基であり、*は光学活性炭素を示す)で示されるC
    3系化合物と、(B)下記一般式〔2〕 【化4】 (式中、R3は炭素数2〜10のアルキル基から選ばれ
    た基であり、Y2はO、 COO、OCOおよび単結合よりなる群から選ばれた基
    であり、rは2〜16の整数、*は光学活性炭素を示
    す)で示されるビニル基含有CF3系化合物および
    (C)下記一般式〔3〕 【化5】 (式中、R4およびR5は炭素数2〜16のアルキル基よ
    りなる群からそれぞれ独立して選ばれた基であり、X1
    およびX2は水素およびハロゲンよりなる群からそれぞ
    れ独立して選ばれた基であって、X1およびX2のうち少
    なくとも1つはハロゲンであり、*は光学活性炭素を示
    す)で示される核置換ハロゲン含有CH3系化合物とを
    含有することを特徴とする光学活性部位がCF3基をも
    つ化合物と光学活性部位がCH3基をもつ化合物とから
    構成されている反強誘電性液晶組成物。
  3. 【請求項3】 下記一般式〔4〕 【化6】 (式中、R6は炭素数1〜16のアルキル基であり、X3
    およびX4は水素およびOCF3よりなる群から独立して
    選ばれた基であって、X3およびX4のうち少なくとも1
    つはOCF3である)で示される液晶特性改善剤を含有
    する請求項1または2記載の反強誘電性液晶組成物。
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