JP3164889B2 - 芳香族ポリエステルの製造方法 - Google Patents

芳香族ポリエステルの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は非晶性芳香族ポリエステ
ルの製造方法に関し、更に詳しくは、溶融成形により優
れた耐熱性、機械特性、耐溶剤性を有する成形品を与え
る非晶性芳香族ポリエステルの製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリエステルは、その構成成分の
組合せあるいは組成により非晶性ポリマー、結晶性ポリ
マーまたは液晶性ポリマーと種々の特性のものが得られ
る。これらのうち、非晶性ポリマーは、寸法安定性、透
明性、機械特性、耐熱性に優れており、いわゆる非晶性
エンプラとして種々検討されている。特に酸成分として
テレフタル酸とイソフタル酸を用いジオール成分とし
て、2,2―ビス(4―ヒドロキシフェニル)プロパン
(以下ビスフェノールAという)を用いたポリマーは比
較的バランスのとれた物性を有しておりこれを生かして
開発が進められているが、このポリマーは通常の非晶性
ポリマーと同様、耐溶剤性が不十分であり、各種有機溶
剤に溶解乃至膨潤しやすく、その用途が制限されてい
る。
【0003】この耐溶剤性を改良する目的でジオール成
分としてハイドロキノンを一部使用したものが提案され
ている(特開昭52―78999号)。ハイドロキノン
成分の導入されたポリマーは、ジオール成分としてビス
フェノールAだけを用いたものに比べ確かに耐溶剤性、
耐ストレスクラック性は改良される。しかしながら、そ
の製造方法としてはハイドロキノン成分が、極めて酸化
を受けやすいことあるいはポリマーの溶解性が不十分で
あること等のために、ビスフェノールA単独系の製造方
法として用いられている溶液重合法乃至界面重合法を採
用することはできない。
【0004】そこで上述の特開昭52―78999号に
よればハイドロキノン成分の導入されたポリマーの製造
方法として溶融重合法による製造が試みられている。し
かしこの方法は、その実施例に記載されている如く、溶
融重合過程においてポリマーを固化乃至結晶化せしめた
後、引き続きこれを固相重合せしめることによって目的
とする芳香族ポリエステルを製造している。これは30
0℃以下程度の比較的低い溶融重合温度ではポリマーの
溶融粘度が高いため、十分な靭性を発現しうる高重合度
ポリマーを得ることが、困難であること、更にハイドロ
キノン成分により得られるポリマーが結晶化し得る特性
となるためと考えられる。しかしながら、この固相重合
を併用する方法は、製造プロセスが複雑となり、かつ生
産性が悪く、コスト高であるという問題がある。
【0005】またこのハイドロキノン成分を導入したポ
リマーは前述の特開昭52―78999号によれば熱変
形温度が165〜170℃であり、前述の酸成分として
テレフタル酸とイソフタル酸を用いジオール成分として
ビスフェノールAを用いたポリマーが172℃に比較し
てやや耐熱性に劣るという問題点がある。
【0006】
【発明の目的】そこで、本発明者らは、耐熱性、耐溶剤
性、耐ストレスクラック性に優れた非晶性芳香族ポリエ
ステルを固相重合を併用することなく溶融重合法によ
り、工業的に安価に製造する方法を提供しようとするも
のである。
【0007】
【発明の構成】すなわち、本発明は、(A)イソフタル
酸及び/またはそのエステル形成性誘導体、(B)ハイ
ドロキノン及び/またはそのエステル形成性誘導体及び
(C)下記式(I)
【0008】
【化2】
【0009】で表される化合物及び/またはそのエステ
ル形成性誘導体を、成分(B)と成分(C)のモル比
(B/C)が50/50〜80/20、成分(B)と成
分(C)の合計量が成分(A)に対して95〜120モ
ル%範囲とし、これらを触媒の存在下重合温度300〜
400℃で加熱溶融重縮合せしめ、固有粘度(フェノー
ル/テトラクロルエタン混合溶媒(重量比60/40)
中、35℃)0.3〜1.0のポリマーを得ることを特
徴とする非晶性全芳香族ポリエステルの製造方法であ
る。
【0010】本発明はイソフタル酸及び/またはそのエ
ステル形成性誘導体を成分(A)とする。ここでエステ
ル形成性誘導体としては、アルキルエステル、アリール
エステル、酸クロライドを例示できる。成分(A)とし
てはイソフタル酸ジアリールエステルが好ましく、イソ
フタル酸ジフェニルが特に好ましい。
【0011】次に本発明ではハイドロキノン及び/また
はそのエステル形成性誘導体を成分(B)とする。ここ
でエステル形成性誘導体としては、低級脂肪族カルボン
酸エステルが挙げられ、特に酢酸エステルを好ましく例
示できる。ここで成分(B)としてはハイドロキノンが
好ましい。
【0012】次に本発明では下記式(I)
【0013】
【化3】
【0014】で表される化合物及び/またはそのエステ
ル形成性誘導体を成分(C)とする。ここで、Xは置換
基を有してもよいメチレン基を表すが、具体的にはメチ
レン基、メチルメチレン基、ハロゲン化メチレン基等を
例示することができ、このちうメチレン基が好ましい。
nは置換基を有してもよいメチレン鎖の長さを表すが、
4または5を示す。このうちn=5が好ましい。エステ
ル形成性誘導体としては低級脂肪族カルボン酸エステル
が挙げられ、特に酢酸エステルを好ましく例示できる。
成分(C)としては、1,1―ビス(4―ヒドロキシフ
ェニル)シクロヘキサン(以下ビスフェノールZとい
う)が好ましい。
【0015】成分(B)と成分(C)の使用割合はモル
比(B/C)で50/50〜80/20とする。成分
(B)のモル分率が50%より小さいと本発明の目的と
する耐溶剤性、耐ストレスクラック性が今だ不十分とな
り、また80モル%より大きいと得られるポリマーが結
晶性となる傾向となり、透明性が不十分となる。成分
(B)と成分(C)のモル比(B/C)は好ましくは5
5/45〜75/25、特に好ましくは60/40〜7
0/30である。本発明の芳香族ポリエステルの製造方
法においては、成分(A)に対し、成分(B)と成分
(C)の合計量が95〜120モル%の範囲とし、これ
を加熱重縮合せしめる。成分(B)と成分(C)の合計
量は97〜115モル%の範囲が好ましく、99〜11
0モル%の範囲とすることが特に好ましい。
【0016】本発明では上述の各成分を触媒の存在下に
加熱溶融重縮合せしめる。ここで用いる触媒としてはポ
リエステルの製造時に用いられる従来公知のものが使用
できるが、例えば、三酸化アンチモン等のアンチモン化
合物、酢酸第1錫等の錫化合物、チタンテトラブトキシ
ド等のチタン化合物、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウ
ム化合物等を挙げることができる。また該触媒の使用量
は特に制限はないが、上記成分(A)に対して0.1モ
ル%以下程度の量とすることが好ましい。
【0017】加熱重縮合する際の重合温度は300〜4
00℃とすることが必要である。ここで重合温度とは重
合後期あるいはその終了時における温度を意味する。重
合温度が300℃より低いとポリマーの溶融粘度が高く
なり、またポリマーの結晶化がおこるため、高重合度で
かつ透明なポリマーを得ることはできない。また400
℃より高いとポリマーの劣化等が生じ易く好ましくな
い。
【0018】本発明の製造方法では重合反応の初期は比
較的低温とし、これを徐々に昇温して最終的に上記重合
温度とすることが好ましい。この際の初期重合反応の反
応温度は、好ましくは150〜280℃、より好ましく
は180〜250℃である。この重合反応は常圧下、ま
たは減圧下で実施されるが、初期重合反応時は常圧下と
し、徐々に減圧とすることが好ましい。また常圧時に
は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下とすること
が好ましい。重縮合反応時間は特に制限はないが大略1
〜10時間程度である。
【0019】上述の製造方法により得られる本発明の芳
香族ポリエステルはフェノール/テトラクロルエタン混
合溶媒(重量比60/40)中、35℃にて測定した固
有粘度が、0.3〜1.0となることが必要である。固
有粘度が0.3より低いと得られるポリマーの耐熱性、
靭性が不十分であり、1.0より高いと溶融成形時の流
動性が低下するため好ましくない。固有粘度としては、
0.4〜0.8が好ましい。
【0020】本発明の好ましい態様としては、成分
(A)としてイソフタル酸ジフェニル、成分(B)とし
てハイドロキノン、成分(C)としてビスフェノールZ
を用い、これを加熱溶融し、温度を徐々に上げ、また反
応系を常圧から徐々に減圧として、生成するフェノール
を徐々に系外へ留出させて重縮合を進める方法が挙げら
れる。更に本発明により得られる芳香族ポリエステルは
比較的溶融粘度が高いため、高重合度とするためにエク
ストルーダー型の反応装置で重合することも好ましく実
施できる。
【0021】上述の製造法により得られる本発明の芳香
族ポリエステルは、非晶性ポリマーであり、これを例え
ば射出成形等の溶融成形法により透明な成形品を得るこ
とができる。また本発明のポリマーが非晶性であること
は例えばDSCによりその融点が観測されないことなど
から確認することができる。
【0022】本発明の芳香族ポリエステルはその製造
時、必要に応じて酸化安定剤、着色防止剤などの各種安
定剤、着色剤、顔料、滑剤等の各種添加剤を添加しても
差し支えない。
【0023】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、耐熱性、靱
性、耐溶剤性、及び耐ストレスクラック性の良好な非晶
性全芳香族ポリエステルが、安価な溶融重合プロセスに
より製造することができる。
【0024】
【実施例】以下実施例を挙げて本発明を詳述するが、実
施例中「部」は「重量部」を意味する。固有粘度は、フ
ェノール/テトラクロルエタン混合溶媒(重量比60/
40)中、濃度1.2g/dl、温度35℃にて測定し
た。ポリマーの熱特性は荷重たわみ温度測定機を用い2
℃/分の昇温速度にて測定した。
【0025】
【実施例1〜3及び比較例1】イソフタル酸ジフェニル
318部、ハイドロキノン及びビスフェノールZの所定
量、三酸化アンチモン0.09部(触媒)及びリン酸ト
リフェニル0.33部(安定剤)を撹拌装置及び窒素導
入口を備えた真空留出系を有する反応容器に入れ、常圧
下窒素気流中240℃で30分間反応後、1.5時間か
けて340℃まで昇温した。次いで同温度にて徐々に減
圧とし、30分後に約1mmHgとした。
【0026】この間フェノールが発生留去した。同条件
下にて約90分間重合を行ないポリマーを得た。得られ
たポリマーは淡茶色透明であった。
【0027】次にこのポリマーを射出成形機(日本製
鋼、N40A型)を用いてシリンダー温度340℃、金
型温度100℃、成形サイクル約80秒の条件下で射出
成形した。得られた成形品の物性を表1に示す。
【0028】表1には比較として非晶性芳香族ポリエス
テル樹脂(ユニチカ(株)製、UポリマーU―100)
についても併記したが、本発明の芳香族ポリエステル
は、耐熱性が良好で、かつ耐溶剤性が極めて優れている
ことがわかる。
【0029】
【表1】
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/00 - 63/91 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)イソフタル酸及び/またはそのエ
    ステル形成性誘導体、(B)ハイドロキノン及び/また
    はそのエステル形成性誘導体及び(C)下記式(I) 【化1】 で表される化合物及び/またはそのエステル形成性誘導
    体を、成分(B)と成分(C)のモル比(B/C)が5
    0/50〜80/20、成分(B)と成分(C)の合計
    量が成分(A)に対して95〜120モル%の範囲と
    し、これらを触媒の存在下重合温度300〜400℃で
    加熱溶融重縮合せしめ、固有粘度(フェノール/テトラ
    クロルエタン混合溶媒(重量比60/40)中、35
    ℃)0.3〜1.0のポリマーを得ることを特徴とする
    非晶性全芳香族ポリエステルの製造方法。
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