JP3163217B2 - 発光ダイオード及びその製造方法 - Google Patents

発光ダイオード及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、発光ダイオードの製造
方法に関し、特に、屋外表示装置等に使用される高輝度
GaP黄緑色発光ダイオードを製造する際に用いられる
液相エピタキシャル成長方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、表示装置等に使用される発光ダ
イオードは輝度が高いほど消費電力が少なくて済むた
め、特に屋外での使用にはより高輝度化された発光ダイ
オードが望まれている。
【0003】GaP黄緑色発光ダイオードの場合、本来
GaPはその再結合過程が間接遷移のため発光効率が悪
いが、結晶内にNが入ることで直接遷移再結合過程が得
られる。一般の高輝度GaP黄緑色発光ダイオードには
このタイプのものが使用されている。以下の説明におい
て、Nを含むGaPについてGaP:Nと記す。
【0004】ところで、GaP:N発光ダイオードの高
輝度化のためには、PN接合部の結晶性を良くすること
が重要である。
【0005】以下、従来例によるGaP:N発光ダイオ
ードの液相エピタキシャル成長について、図5を参照し
て説明する。図5(a)及び(b)はそれぞれ、Ga
P:N発光ダイオードのエピタキシャル成長層の模式図
と、そのキャリア濃度プロファイルである。
【0006】図5(a)及び(b)に示すように、ま
ず、n型GaP基板20上にn型GaP層21をGa融
液にて液相エピタキシャル成長させる。ここで、n型G
aP基板20の表面を未飽和のGa融液にてメルトバッ
クして、結晶の整合性をとる手法が一般的に用いられて
いる。そして、n型GaP層21を所定の厚みに成長さ
せた後(図5A部)、Nを含むn型GaP:N層22を
形成する。ここで、Nは一般的にNH3ガスをGa融液
と接触させることで得られる。
【0007】そして、n型GaP:N層22を所定の厚
みに成長させた後(図5B部)、p型GaP:N層23
を形成する(図5C部)。ここで、p型ドーパントとし
ては一般的にZnが用いられ、蒸気化されたZnをGa
融液に接触させることにより得ている。
【0008】上記第1のn型GaP層21、第2のn型
GaP:N層22そしてp型GaP:N層23のキャリ
ア濃度をそれぞれ、n1、n2、pとすると、n1>n2
<pが一般的である。また、p型GaP:N層23
を2層に分け、それぞれのキャリア濃度をp、p2
した場合、n1<n2、p1<p2、n2>pとする場合も
ある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記エピタ
キシャル成長方法において、下記のような問題点があっ
た。即ち、図5におけるPN接合両側のn型GaP:N
層22、p型GaP:N層23のキャリア濃度をそれぞ
れn2、pとすると、n2《pの状態では結晶性はある程
度保持できるが、n2》pの場合に比べると注入効率が
悪いという問題点があった。逆にn2》pの場合、ドナ
ーによる欠陥が導入されやすいという問題点がある。
【0010】また、n型GaP基板20をメルトバック
してn型GaP層21を成長させる場合、メルトバック
によってGa融液中にn型ドーパント及びそれ以外の不
純物が混入し、後工程で形成されるPN接合部のキャリ
ア濃度の不安定性、非発光準位が形成されやすくなると
いう問題がある。
【0011】さらに、このメルトバックの際、n型Ga
P基板20とGa融液の界面のP分圧が小さく、また面
内バラツキが発生しエピタキシャル層結晶品位の良化を
妨げることになりやすい、という問題点もある。
【0012】そこで、本発明はPN接合部のキャリア濃
度を低く設定することによって、注入効率の低下やドナ
ー欠陥の防止を図れ、しかもPN接合部の安定性に影響
を与えるメルトバックの工程を省略でき、高輝度のGa
P黄緑色発光ダイオードを実現できる発光ダイオード
びその製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明は、n型GaP基板上に、N(窒素)を含む
GaPのPN接合を形成してなる発光ダイオードにおい
て、第1のn型GaP層及び、N(窒素)を含む第2のn
型GaP層と、N(窒素)を含む第1のp型GaP層及
びオーミックコンタクト用の第2のp型GaP層が形成
され、前記第2のn型GaP層は層内で漸次低下するn
型キャリア濃度分布を有し、前記第1のp型GaP層は
前記第2のn型GaP層のp側端部の低n型キャリア濃
度とほぼ同濃度のp型キャリア濃度を有してなることを
特徴とする。また、本発明は、n型GaP基板上に、N
(窒素)を含むGaPのPN接合を形成する発光ダイオ
ードの製造方法において、少なくとも、前記n型GaP
基板に過飽和度を持たせたGa融液を接触させて、n型
GaP層をエピタキシャル成長させる工程と、前記Ga
融液にNH3ガスを接触させて、前記型GaP層上に
層内で漸次低下するn型キャリア濃度分布を有するn型
GaP:N層をエピタキシャル成長させる工程と、前記
n型GaP:N層上に、該n型GaP:N層端部とほぼ
同等のキャリア濃度を有するp型GaP:Nをエピタ
キシャル成長させる工程と、を含んでなることを特徴と
する。
【0014】また、前記p型GaP:N層は、液相エピ
タキシャル成長ボート材を構成するC(カーボン)によ
るp型キャリアによって形成してなることを特徴とす
る。
【0015】また、n型ドーパントとしてSiを使用し
てなることを特徴とする。
【0016】
【作用】本発明のGaP発光ダイオードは、Ga融液を
過飽和度を持たせた後にエピタキシャル成長するので、
n型GaP基板とGa融液の界面のP分圧が充分であ
り、初期成長レートが速く、欠陥導入が抑制され結晶性
の良いn型GaP層が形成される。
【0017】また、従来のような、n型GaP基板上に
成長層を形成する際の基板のメルトバックを行わないた
め、Ga融液に基板の不純物が混入せず非発光準位が減
少する。さらに、Ga融液中のバックグラウンド濃度が
安定し、このため後工程で得られるPN接合の低キャリ
ア濃度化を安定して実現できる。
【0018】また、n型GaP層の次に、NH3ガスを
Ga融液に接触させてn型GaP:N層を形成するが、
この際、NH3ガスとGa融液との接触によりGaNや
Si34等が形成され、ドーパントSiは液相成長の系
外に移行し、その結果Si濃度は減少する。このように
して、エピタキシャル層にはNが取り込まれSiは減少
する。つまり、N濃度nTが増え、n型キャリア濃度nD
が低下したn型GaP:N層が形成される。
【0019】次いで、n型キャリア濃度と略同等の濃度
のp型バックグラウンド濃度を持つp型GaP:N層が
形成される。この工程の結果、n型GaP層1、n型G
aP:N層2、第1のp型GaP:N層3、第2のp型
GaP:N層4のそれぞれのキャリア濃度をn1,n2
1,p2とすると、n1>n2、p1<p2となり、n2
1は略同等であり、ドナーによる欠陥の導入を抑えた
結晶性が良く、かつ注入効率の良いPN接合を実現でき
る。
【0020】上記構造によって高輝度の発光ダイオード
を実現できる。
【0021】
【実施例】本発明の一実施例について、図1乃至図4を
参照して説明する。図1は本実施例によるGaP発光ダ
イオードの液相エピタキシャル成長温度プログラム図、
図2(a)及び(b)はそれぞれ、本実施例によって得
られるGaP発光ダイオードのエピタキシャル層及びそ
のキャリア濃度プロファイル、図3は液相エピタキシャ
ル成長に用いられるGa融液の過飽和度と発光ライフタ
イムの関係を示す特性図、図4は従来例及び本案によっ
て得られた発光ダイオードの特性を示す図である。
【0022】図1及び図2に示すように、n型GaP基
板20に対して液相エピタキシャル成長する前に、ま
ず、n型ドーパントとしてSiの多結晶を添加したGa
融液を、最高保持温度Tmax=980℃にて飽和状態に
させる。この後、冷却速度0.5℃/min で970℃付
近まで徐冷することによって、Ga融液に過飽和度ΔT
(=10℃)を持たせる。なお、n型GaP基板20の
キャリア濃度は、例えば3〜4×1017cm-3である。
【0023】そして、この過飽和度ΔTを持たせた状態
のGa融液を、n型GaP基板20上に接触させエピタ
キシャル成長させる。そして、920℃まで冷却速度
0.5℃/minにてn型GaP層1を冷却しながら成長
させる(図2A部)。ここで、n型GaP層1のキャリ
ア濃度は約2×1017cm-3である。
【0024】上記プロセスにおいて、過飽和度ΔT=1
0℃としたが、これは最終的に得られる発光ダイオード
の発光ライフタイムが最適になるような値を選んだもの
である。図3に本実施例の試作過程で得られたGa融液
の過飽和度と発光ライフタイムの関係を示す特性図を示
す。図3に示すように、過飽和度によって発光ダイオー
ドの発光ライフタイムが異なる。これは、以下のような
理由によると考えられる。即ち、過飽和度ΔTが大きい
ほど、初期エピタキシャル成長レートが速いことにより
結晶性の良化につながる傾向にあるが、過大になるとG
a融液中に微結晶が偏析し、これによって悪影響が及ぼ
されるものと考えられる。
【0025】その後、920℃においてNH3ガスを流
入させ40分間の温度保持期間を設ける。この時、NH
3ガスとGa融液の接触によりGaNやSi34等が形
成され、ドーパントSiは液相成長の系外に移行し、そ
の結果Si濃度は減少する。このようにして、エピタキ
シャル層にはNが取り込まれSiが減少する。この92
0℃の温度保持期間の間、Ga融液の過飽和分だけエピ
タキシャル成長が進行する。この層はNH3ガス流入に
よりN濃度nTが増え、n型キャリア濃度nDが低下した
層、n型GaP:N層2となる(図2B部)。成長厚さ
は約2〜4μmである。
【0026】次に、再び920℃から880℃まで冷却
速度0.5℃/min にて徐冷させながらエピタキシャル
成長させる。この時、Ga融液中のSi濃度よりもエピ
タキシャル成長ボート材(ボート材はカーボン:Cより
構成されている)より供給されるCのC濃度が優位とな
り、いわゆるバックグラウンド濃度層であるp型Ga
P:N層3が形成される(図2C部)。このようにし
て、p型GaP:N層3のキャリア濃度はn型GaP:
N層2の低キャリア濃度領域と略同等となる。この成長
膜厚は約20μm、またキャリア濃度は1016cm-3
下である。
【0027】この後、880℃において、p型ドーパン
トであるZnを蒸気化させてGa融液に接触、導入させ
る。そして、オーミックコンタクトを形成するに充分な
p型キャリア濃度を持つp型GaP:N層4を形成させ
エピタキシャル成長を終了する(図2D部)。
【0028】以上のようにして得られた本実施例のGa
P発光ダイオードは、Ga融液を成長温度プログラムの
最高保持温度にて過飽和度を持たせた後にエピタキシャ
ル成長するので、n型GaP基板20とGa融液の界面
のP分圧が充分であり、初期成長レートが速く、欠陥導
入が抑制され結晶性の良いn型GaP層1が形成され
る。
【0029】また、n型GaP基板20をメルトバック
させないため、Ga融液に基板の不純物が混入せず非発
光準位が減少する。さらに、Ga融液中のバックグラウ
ンド濃度が安定し、このため後工程で得られるPN接合
の低キャリア濃度化を安定して実現できる。
【0030】また、n型GaP層1の次にGa融液の過
飽和度分だけn型GaP:N層2を形成させ、次いで徐
冷しながらp型バックグラウンド濃度を持つp型Ga
P:N層3が形成される。この工程の結果、n型GaP
層1、n型GaP:N層2、第1のp型GaP:N層
3、第2のp型GaP:N層4のそれぞれのキャリア濃
度をn1,n2,p1,p2とすると、n1>n2、p1<p2
となり、n2とp1は略同等であり、ドナーによる欠陥の
導入を抑えた結晶性が良く、かつ注入効率の良いPN接
合を実現できる。
【0031】図4は、過飽和度ΔT=10℃における本
実施例と従来例との発光ライフタイム(20mA)の比
較結果を示した図である。横軸に接合容量Cjを、縦軸
には発光ライフタイムτを示している。ここで、N濃度
Tは約1018cm-3である。従来は発光ライフタイム
τ〜480nsec(図4A部)であるのに対して、本実施
例ではτ=570nsecと約1.2倍増加した(図4B
部)。
【0032】また、TO−18金ステム上にLEDチッ
プをアッセイし、光度を測定したところ、従来の平均輝
度に対して1.2〜1.3倍の向上が見られ、本発明の
効果が確認された。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の発光ダイ
オード及びその製造方法によれば、基板に対するメルト
バックを行わないので、結晶性の良いエピタキシャル成
長層が形成され、また、基板の不純物がGa融液に混入
しないことにより安定したキャリア濃度、非発光準位の
減少を実現できる。
【0034】また、ドナーによる欠陥の導入を抑えた結
晶性の良好な、かつ注入効率の良いPN接合を形成で
き、従来の発光ダイオードより輝度の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例によるGaP発光ダイオード
の液相エピタキシャル成長温度プログラム図である。
【図2】(a)及び(b)はそれぞれ、本発明の一実施
例によって得られるGaP発光ダイオードのエピタキシ
ャル層の概略図及びそのキャリア濃度プロファイルを示
した図である。
【図3】液相エピタキシャル成長に用いられるGa融液
の過飽和度と発光ライフタイムの関係を示す特性図であ
る。
【図4】従来例及び本発明の実施例によって得られた発
光ダイオードの特性を示す図である。
【図5】(a)及び(b)はそれぞれ、従来例によって
得られるGaP発光ダイオードのエピタキシャル層の概
略図及びそのキャリア濃度プロファイルを示した図であ
る。
【符号の説明】
1 n型GaP層 2 n型GaP:N層 3 p型GaP:N層 20 n型GaP基板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 新井 康彦 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シャープ株式会社内 (56)参考文献 特開 昭60−236221(JP,A) 特開 平3−209883(JP,A) 特開 昭55−108785(JP,A) 特開 昭55−120184(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 33/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 n型GaP基板上に、N(窒素)を含む
    GaPのPN接合を形成してなる発光ダイオードにおい
    て、 第1のn型GaP層及び、N(窒素)を含む第2のn型G
    aP層と、N(窒素)を含む第1のp型GaP層及びオ
    ーミックコンタクト用の第2のp型GaP層が形成さ
    れ、前記第2のn型GaP層は層内で漸次低下するn型
    キャリア濃度分布を有し、前記第1のp型GaP層は前
    記第2のn型GaP層のp側端部の低n型キャリア濃度
    とほぼ同濃度のp型キャリア濃度を有してなることを特
    徴とする発光ダイオード。
  2. 【請求項2】 n型GaP基板上に、N(窒素)を含む
    GaPのPN接合を形成する発光ダイオードの製造方法
    において、 少なくとも、前記n型GaP基板に過飽和度を持たせた
    Ga融液を接触させて、n型GaP層をエピタキシャル
    成長させる工程と、 前記Ga融液にNH3ガスを接触させて、前記型Ga
    上に層内で漸次低下するn型キャリア濃度分布を有
    するn型GaP:N層をエピタキシャル成長させる工程
    と、 前記n型GaP:N層上に、該n型GaP:N層端部と
    ほぼ同等のキャリア濃度を有するp型GaP:Nをエ
    ピタキシャル成長させる工程と、 を含んでなることを特徴とする発光ダイオードの製造方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の発光ダイオードの製造
    方法において、前記低キャリア濃度のp型GaP:N層
    は液相エピタキシャル成長ボート材を構成するC(カー
    ボン)によるp型キャリアによって形成してなることを
    特徴とする発光ダイオードの製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項2または3に記載の発光ダイオー
    ドの製造方法において、n型ドーパントとしてSiを使
    用してなることを特徴とする発光ダイオードの製造方
    法。
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