JP3132588B2 - クロス複合材の耐熱性評価方法 - Google Patents

クロス複合材の耐熱性評価方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、クロス複合材の耐熱
性評価方法に関するものである。さらに詳しくは、この
発明は、各種の複合材、特にプリント配線基板等に用い
られる積層板状のクロス複合材の吸湿処理後に半田耐熱
性(耐ミーズリング性)の評価等に適した新しい評価方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、各種の繊維クロスが有機合成
樹脂の補強材として広く用いられており、プリント配線
基板については特にガラスクロスがよく利用されてい
る。また有機合成樹脂ではエポキシ樹脂がこのプリント
配線基板用として多く使われており、最近ではポリイミ
ド樹脂等の電気特性に優れた樹脂も使われいる。
【0003】近年、コンピューターやその他の電子機器
に用いられるこれらのプリント配線基板については、そ
の品質特性に対するる要求が厳しくなってきており、特
に、吸湿処理後の半田耐熱性(耐ミーズリング性)の向
上は重要な課題の一つとなっている。このミーズリング
は、ガラスクロス等の補強材と有機合成樹脂との間の界
面が吸湿と熱衝撃により剥離する劣化現象であることが
知られている。そこで従来より、シランカップリング剤
をガラスクロスの表面に施すことや、有機合成樹脂、あ
るいは有機合成樹脂に添加する添加剤の改良によってガ
ラスクロスと有機合成樹脂との接着力を高め、半田耐熱
性を高めるようにしてきている。そしてまた、より、高
度の品質を求めて、新しいシランカップリング剤の開発
や表面処理方法の開発、そしてさらに高品質の樹脂や添
加剤の開発がなされてきてもいる。
【0004】一方、現在一般的に、プリント配線基板の
吸湿処理後の半田耐熱性の評価は、複数枚のクロスと有
機合成樹脂から作成される積層板を使用して行ってい
る。たとえばガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて
半硬化させたプリプレグを複数枚積層して外側に金属箔
を載置した後プレスによる加熱加圧成型を行い、次いで
エッチングによって金属箔を所定のパターンに除去して
積層板を製造し、これを吸湿処理した後に、溶融した半
田槽に浸漬して半田耐熱性を評価している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来の評価方法の場合には、同じ性能のクロスや
有機合成樹脂を用いて積層板を得たとしても、積層板の
成型条件によって半田耐熱性の評価結果に差が生じやす
いという問題があった。たとえば、積層板の樹脂量が異
なる場合、樹脂量が多いと半田耐熱性は良くなる傾向に
あり、逆に少ないと半田耐熱性は悪くなる傾向を示す。
また、樹脂量が少ないと各層間が剥離するデラミネーシ
ョンやブリスターが発生し、この劣化部にはクロスと樹
脂間の剥離が起にくくなり、積層板の半田耐熱性性能の
正当な評価が困難となる。このような樹脂量は主にプリ
プレグのゲルタイムと成型時のプレスタイミングによっ
て左右され、ゲルタイムに対しプレスタイミングが早過
ぎると樹脂流れが多くなり積層板の樹脂量は少なくな
る。逆に遅過ぎると樹脂量は多くなる。従って、前述の
通りその耐熱性の正当な評価ができないのである。この
ため、正当な評価を行うためには、積層板作成条件が積
層板特性に与える影響を取り除かなくてはならず、その
ための技術的検討が必要不可欠とされていた。
【0006】また、異なった性能をもつ複数のクロスま
たは有機合成樹脂、あるいは添加剤の比較評価するに
は、各々材料について積層板を作成せねばならず、多く
の時間が費やされることになる。また、設備的にはプリ
プレグの常温硬化や吸湿によるゲルタイム等の品質の変
化を防止するために保存管理を厳しくせねばならず、積
層板作成条件による影響を最小限に抑えるためにも精度
の良いプレス機が必要であり、整った設備が要求される
という欠点がある。
【0007】この発明は以上の通りの事情に鑑みてなさ
れたものであり、従来の評価方法の欠点を解消し、積層
板作成条件に影響されることなく、より簡単な設備と工
程によって、短時間で簡便かつ正確に半田耐熱性を評価
することのできる新しい方法を提供することを目的とし
ている。
【0008】
【問題点を解決するための手段】この発明は、上記の課
題を解決するものとして、1枚のクロスのみを有機合成
樹脂と一体化し、得られる1枚の複合材シートにより耐
熱性を評価することを特徴とするクロス複合材の耐熱性
評価方法を提供するものである。以下この発明について
詳細に説明する。
【0009】まず、この発明で使用されるクロス及び有
機合成樹脂については、その種類は特に限定されず、評
価を行おうとする複合材に使用されている材料を適宜に
使用することができる。一般的に複合材によく使用され
ている材料を例示すると、クロスとしてはガラス繊維や
アラミド繊維等より得られたクロス、また、有機合成樹
脂としてはエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール
樹脂、ポリエステル樹脂等がある。
【0010】また、一枚のクロスと有機合成樹脂とを一
体化させることによって得られるこの発明の複合材は、
クロスに有機合成樹脂を含浸させた後に加熱成型し得ら
れるが、有機合成樹脂を含浸させる際に、ストランド内
まで充分含浸していることが望ましく、たとえば減圧下
で含浸させるといった方法等を採用することが好まし
い。
【0011】加熱成型の際には、乾燥機を用いることが
でき、熱処理条件が同一の場合は複数種の複合剤シート
を同時に作成しても良い。この発明の評価方法は積層板
状の複合材に適した評価方法であるが、たとえば多層プ
リント配線基板の作成時に使用するボンディングシート
用のプリプレグなど、クロス1枚を使用した有機合成樹
脂複合材の評価方法としても使用できることは当然のこ
とである。
【0012】なおこの発明の評価方法によって発生する
劣化現象は白点状であり、この部分を顕微鏡にて観察す
るとクロスと有機合成樹脂との界面を剥離しておりミー
ズリングと類似した劣化現象であることが確認される。
以下、実施例によってさらに詳しくこの発明の耐熱性の
評価方法について説明する。
【0013】
【実施例】実施例 防止糊剤と経糸糊剤を熱処理して除去したいわゆるヒー
トクリーニングガラスクロス(E−18S ユニチカ
(株)製厚さ180μm 重量210g/m2 )を、異
なったシランカップリング剤、すなわちγ−アミノプ
ロピルトリエトキシシラン(A−1100 日本ユニカ
ー(株)製)、グリシドキシプロピルトリメトキシシ
ラン(A−187 日本ユニカー(株)製)、N−β
−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプ
ロピルメトキシシラン塩酸塩(SZ−6032 東レ・
ダウコーニング・シリコーン(株)製)、およびγ−
アニリノプロピルトリメトキシシラン(SZ−6083
東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)の酢酸
pH調整した4g/1溶液にそれぞれ浸漬し、パッダロ
ールで絞った後に、乾燥機内で130℃で5分間熱処理
をした。次に、このガラスクロスを下記に示す組成のエ
ポキシ樹脂ワニスに浸漬し、60mmHgの減圧下で5分、
次いで常圧に戻したあと5分、この組合せによる浸漬を
5回繰り返した後に、乾燥機内で130℃で5分間、次
いで170℃で90分間熱処理した。完全にエポキシ樹
脂を硬化させた1枚のガラスクロスとエポキシ樹脂を一
体化させた1枚の複合材シートを得た。
【0014】この作業を三回に分け行い作業毎に試料数
3を得た。 <ワニス組成> エピコート5045(油化シェル(株)製) 80重量部 エピコート154(油化シェル(株)製) 20重量部 ジシアンジアミド 3.2 重量部 ベンジルジメチルアミン 0.18重量部 メチルセロソルブ 20重量部 ジメチルホルムアミド 20重量部 メチルエチルケトン 25重量部 以上の手順により作成した試料を用いて半田耐熱性を
評価した。その結果を示したものが表1である。なおこ
の評価では、プレッシャークッカー(温度121℃)で
各時間吸湿処理した後に、260℃の半田浴槽に30秒
浸漬し、劣化現象の発生の有無を評価しその平均を記載
した。表1から明らかなように、この発明の実施例では
殆ど評価結果にばらつきはないが、比較例では、同一の
クロスを使用したにもかかわらず、板厚により評価結果
にはばらつきが見られた。比較例 実施例に用いた各シランカップリング剤処理ガラスクロ
スに、実施例と同様の組成のエポキシ樹脂ワニスを含浸
させた後、150℃で5分間熱処理しプリプレグを得
た。このプリプレグを8枚重ね外側表面に35μmの銅
箔を載置した積層体を温度170℃圧力40kg/cm2 で
60分間加圧成型し、銅張り積層板を作成し、銅箔をエ
ッチングにより除去した。得られた積層板より板厚がそ
れぞれ1.50mm、1.60mm、1.67mm付近の試料を各3枚ずつ
選び出し、実施例と同様にして評価に用いた。
【0015】この比較例の場合には、ミーズリング発生
の有無について評価した。その平均を記載したものが表
1である。前記の通り、評価結果にはばらつきが見られ
た。
【0016】
【表1】
【0017】
【発明の効果】この発明の方法によるクロス1枚を使っ
た1枚の複合材シートによる耐熱性評価は、積層板によ
る評価方法に比べて成型条件の影響が少ないためより正
確な半田耐熱性評価が可能となる。設備的にも簡易であ
るうえに省工程で行い得る。また、この発明の方法では
複数種の試料を同時に作成することもできる。従って、
この発明は短時間で簡便に、かつ正確に吸湿処理後の半
田耐熱性の評価を行える点で非常に効果がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 70/06 G01N 33/44

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1枚のクロスのみを有機合成樹脂と一体
    化し、得られる1枚の複合材シートにより耐熱性を評価
    することを特徴とするクロス複合材の耐熱性評価方法。
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