JP3106469B2 - 緩衝器のオイルロック機構 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、車両等に使用する倒立型緩衝器のオイルロ
ック機構に関する。

（従来の技術） 車両等に使用する倒立型緩衝器としては、例えば第７
図に示すように、アウターチューブ101内に下方からイ
ンナーチューブ102を摺動自在に挿入し、このインナー
チューブ102内にダンパーシリンダ103を植設し、更にこ
のダンパーシリンダ103内には上方から中空ロッド104を
臨ませ、この中空ロッド104の先端部にはダンパーシリ
ンダ103内に摺接するピストン105を装着し、ダンパーシ
リンダ103の上端にはオイルロックカラー106を設け、更
に中空ロッド104には圧縮時にオイルロックカラー106に
内嵌するオイルロックピース107を取付け、緩衝器の圧
縮時に中空ロッド104のオイルロックピース107がダンパ
ーシリンダ103のオイルロックカラー106に嵌合すること
により、ダンパーシリンダ103内がオイルロック室とな
って最圧縮時の底付きを防止するようにしたものがあ
る。

（発明が解決しようとする課題） しかしながら、上述した緩衝器のオイルロック機構に
おいては、ダンパーシリンダ内油室のみがオイルロック
室になるだけであるので、オイルロックの受圧面積を大
きくするためにはダンパーシリンダを大型化しなければ
ならず、またダンパーシリンダにオイルロックカラーを
付設してるので安定性が悪く、強度的に弱い。

（課題を解決するための手段） 上記課題を解決すべく本発明は、請求項１では、アウ
ターチューブ内にインナーチューブを摺動自在に嵌装
し、前記インナーチューブ内下部にダンパーシリンダを
立設して、このダンパーシリンダ内に、基端部を前記ア
ウターチューブに装着したピストンロッドを挿通した倒
立型緩衝器において、前記ダンパーシリンダ外側とイン
ナーチューブとの間をオイルロック室とし、ピストンロ
ッド外周には前記オイルロック室に嵌合するオイルロッ
クカラーを設け、前記オイルロックカラーは内側部材と
外側部材に二分割し、このオイルロックカラーの内側部
材はピストンロッド外周に固定し、外側部材はスプリン
グシートを兼ね、且つアウターチューブ上端に設けたば
ね荷重調整機構によって昇降自在とした緩衝器のオイル
ロック機構である。

請求項２では、アウターチューブ内にインナーチュー
ブを摺動自在に嵌装し、前記インナーチューブ内下部に
ダンパーシリンダを立設して、このダンパーシリンダ内
に、基端部を前記アウターチューブに装着したピストン
ロッドを挿通し、インナーチューブとダンパーシリンダ
との間に懸架ばねを配設し、前記アウターチューブ内に
は、このアウターチューブ側で支持したスペーサーカラ
ーを設け、このスペーサーカラーの下端部で前記懸架ば
ねの上端部を支持した倒立型緩衝器において、前記スペ
ーサーカラーの下端部に、前記インナーチューブ内周に
摺接する外周面と、下方に向けて拡径するテーパー面を
備えた内周面と、前記懸架バネの上端部を支持する下端
面とを有する環状のオイルロックカラーを別体に設け、 前記環状のオイルロックカラーは、最圧縮時に、前記
内周面を前記ダンパーシリンダの外周に直接嵌合し、最
圧縮時に、下部にオイルロック室を形成する緩衝器のオ
イルロック機構である。

（作用） ダンパーシリンダ外側とインナーチューブとの間をオ
イルロック室としたので、オイルロックの受圧面積を大
きくとることができ、部品精度のバラツキによるオイル
ロック荷重の変化を少なくすることができる。

そして、オイルロックカラーを内側部材と外側部材に
二分割して、外側部材をばね荷重調整機構によって昇降
自在に設けてスプリングシートを兼ねさせることによ
り、ばね荷重の調整を行なってもオイルロックのストロ
ークが変化しない。

（実施例） 以下に本発明の実施例を添付図面を参照して説明す
る。

第１図は本発明に係るオイルロック機構を適用した緩
衝器の断面図、第２図は同緩衝器の伸び状態の要部拡大
断面図、第３図は同緩衝器の圧縮状態の要部拡大断面
図、第４図はばね荷重調整機構部の要部拡大断面図であ
る。

この緩衝器は、アウターチューブ１内に、下方からイ
ンナーチューブ２を摺動自在に嵌装し、インナーチュー
ブ２内にはダンパーシリンダ３を植設し、アウターチュ
ーブ１の上端部に固定するアジャストケース４に、ピス
トンロッドである中空ロッド５の基端部を螺着し、この
中空ロッド５は、ダンパーシリンダ３内に挿通するよう
に設けられている。

第２図に示すように、中空ロッド５の先端部にはピス
トンホルダ６を螺着し、このピストンホルダ６には、ダ
ンパーシリンダ３内周面に摺接するピストン７を固着す
る。このピストン７は油路８を備え、この油路８を開閉
する２枚のディスクバルブ９と、このディスクバルブ９
をシート面に付勢するバルブスプリングを装着し、２枚
のディスクバルブ９の内の一方のディスクバルブ９は、
油路８に対向する部分に開孔を形成し、この開孔下面に
他方のディスクバルブ９を配設している。また中空ロッ
ド５には、油孔10を形成している。

そして、ダンパーシリンダ３の上端部内周面にはケー
ス12を嵌装し、このケース12内にはブッシュ13を、ケー
ス12内周面との間にＯ−リング14を介装して取付ける。
また、ケース12の下側にはリバウンドスプリング15を配
設する。

第４図に示すように、アジャストケース４には、ニー
ドル16を進退自在に螺着し、このニードル16の先端部
を、中空ロッド５の基端部に装着したバルブカラー17に
臨ませ、アジャストケース４の側部に油孔18を形成し
て、ニードル16を進退させ、その先端部とバルブカラー
17との間のオリフィス流路の開口量を変えることによっ
て減衰力を調整できるようにした。

第１図に示すように、インナーチューブ２の下端部外
周面には、取付けブラケット21を装着する。また、ダン
パーシリンダ３の下端部内周面には、ボトムホルダ22を
嵌装し、このボトムホルダ22の上端部には、ダンパーシ
リンダ３内周面に接するボトムピストン23を装着する。
このボトムピストン23には油路24を形成し、前記ピスト
ン７の油路８と同様に油路24を開閉する２枚のディスク
バルブ25を装着し、ダンパーシリンダ３下端部には油孔
26を形成した。

また、ダンパーシリンダ３内油室と、ダンパーシリン
ダ３外油室を連通する油路27,28を形成し、取付けブラ
ケット21内に、この油路27,28の開口量を調整するニー
ドルアジャスタ29を進退自在に設けた。

第４図に示すように、アウターチューブ１の上端部内
周面にはフォークボルト31を螺着する。このフォークボ
ルト31内周面には、中空ロッド５の基端部を装着したア
ジャストケース４の外周面にアジャスター32を螺着して
進退自在に設け、このアジャスタ32の外周面にはＯ−リ
ング33を嵌装し、またアジャストケース４の外周面に
は、アジャスタ32内周面との間にＯ−リング34を嵌装す
る。更にフォークボルト31とアジャストケース４とは、
ロックネジ35にて固定し、アウターチューブ１に対して
中空ロッド５が回動しないようにした。

そして、アジャスタ32の前方側には、アジャスタプレ
ート36をフォークボルト31内周面に嵌装し、このアジャ
スタプレート36には三本のピン37を植設し、このピン37
はフォークボルト31に形成した透孔38内に挿通する。ま
たアジャスタプレート36の内径は、アジャストケース４
の外径より大きく形成して隙間が形成されるようにし
て、アジャスタプレート36が上下動したときにアジャス
トケース４のＯリング34が損傷しないようにした。

アジャスタプレート36のピン37には、アジャスタケー
ス４に上下動自在に嵌装したスライダー41を当接させ、
このスライダー41に調整カラー42の基端部を嵌着し、調
整カラー42はインナーチューブ２内に垂下し、この調整
カラー42の先端部には、二分割したオイルロックカラー
43の外側部材44を装着する。

この外側部材44の外周面には、インナーチューブ２内
周面に摺接するブッシュ45（第２図参照）を嵌装し、更
にこの外側部材44の下端面と、ダンパーシリンダ３下端
部外周に嵌装したスプリングシート46（第１図参照）と
の間に懸架ばね47を介設し、外側部材44にスプリングシ
ートを兼ねさせた。

また、中空ロッド５の外周面に嵌装した支持カラー50
の基端部をアジャスタケース４に固定し、この支持カラ
ー50の先端部には二分割したオイルロックカラー43の内
側部材51を固着し、この内側部材51には油路52を形成す
る。

以上のように構成した緩衝器のオイルロック機構の作
用について以下で説明する。

先ず、油圧緩衝器が第２図に示す伸び状態から圧縮行
程に移行すると、アウターチューブ１と一体的に中空ロ
ッド５が、インナーチューブ２及びダンパーシリンダ３
に対して下降する。

これにより、ダンパーシリンダ３内のピストン７より
下側の下部油室S1内の作動油が圧縮され、低速時には緩
衝器下部の油路27,28を通じて、中高速時には二枚のデ
ィスクバルブ25の内の一方のディスクバルブ25の開孔下
面に配設された他方のディスクバルブ25を撓めて油路24
及び油孔26を通じて、インナーチューブ２内周面とダン
パーシリンダ３外周面との間で形成される環状油室S2内
に流入し、更に上部油溜室S3内に流入し、またピストン
７の油路８を通って２枚のディスクバルブ９を上方に撓
めてダンパーシリンダ３内の上部油室S4内に流入する。

このとき、インナーチューブ２とともに、オイルロッ
クカラー43の外側部材44及び内側部材51も下降する。

この状態から更にアウターチューブ１が下降すると、
オイルロックカラー43の外側部材44のテーパ面44a及び
内側部材51のテーバ面51aがダンパーシリンダ３の上端
外周面に対向してオイルロックカラー43下側の油室から
油溜室S3への流路が絞られる。更にアウターチュープ１
が下降して最圧縮状態になると、第３図に示すように、
オイルロックカラー43の内側部材51がダンパーシリンダ
３の上端外周面に嵌合するので、オイルロックカラー43
下側の油室内の作動油は、内側部材51内周面とダンパー
シリンダ３上端外周面との僅かな隙間を介して油溜室S3
に流れるだけとなり、オイルロックカラー43より下側の
油室全体がオイルロック室となって底付きが防止され
る。

その後、圧縮状態から伸び行程に移行したときには、
アウターチューブ１及び中空ロッド５が一体的に上動し
てピストン７が上動するので、上部油室S4内の作動油
が、２枚のディスクバルブ９の一方のディスクバルブ９
の下面に配設されたディスクバルブ９を撓めて下部油室
S1内に流入し、また環状油室S2の作動油が、ダンパーシ
リンダ３下部の油孔26からボトムピストン23の油路24を
通って２枚のディスクバルブ25を開いて下部油室S1内に
流入し、中空ロッド５の退出相当分の作動油を補う。

このとき、オイルロックカラー43の内側部材51の油路
52を通じて上方の作動油が油溜室S3内に流入し、環状油
室S2内の作動油を補う。

また、懸架ばね47のばね荷重を調整するには、アジャ
スタ32をスパナ等で回すことによって、アジャスタ32は
フォークボルト31内に進入又は後退（下動又は上動）す
る。このときアジャスタプレート36はフォークボルト31
の透孔38に挿通したピン37にて回動が規制されているの
で、アジャスター32の進退動によってアジャスタプレー
ト36がピン37を伴って上下動し、スライダー41が上下動
する。

そして、アジャスター32を下動したときにはスライダ
ー41が下動し、調整カラー42を介して外側部材44が下動
してばね荷重が高くなり、またアジャスター32を上動し
たときには、懸架ばね47の反力によって外側部材44が調
整カラー42を介してスライダー41及びアジャスタプレー
ト36を押上げて上動するので、ばね荷重が低くなる。

この場合、中空ロッド５の基端部を固定したアジャス
トケース４は、フォークボルト31に固定されているの
で、アジャスター32を回動しても中空ロッド５が回転し
て上下動することがなく、アジャスター32の回動が重く
なったり、オイルロック位置が変化したり、中空ロッド
５が捻じられるようなことがない。

第５図は別実施例の伸び状態を示す図、第６図は同別
実施例の最圧縮状態を示す図であり、前記実施例と同一
の部材については同一の番号を付した。

この別実施例にあっては、フォークボルト60の下端に
ストッパプレート61を介してスペーサカラー62の上端を
支持する。このスペーサカラー62の下端に、オイルロッ
クカラー63を固着若しくは嵌合する。このオイルロック
カラー63の下端面63eが、懸架ばね47の上端を支持する
アッパーシートを兼ねるようにした。

オイルロックカラー63の外周面63dは、インナーチュ
ーブ２の内周面2aと摺接し、内周面63aは、下半部に下
方に向けて拡径するテーパー面63cと、第６図の最圧縮
時にダンパーシリンダ３の外周に直接嵌合する嵌合部63
bとを備える。

以上において、第５図に示す状態からアウターチュー
ブ１が下降すると、オイルロックカラー63の内周面63a
のテーパ面63cがダンパーシリンダ３の上端外周面に対
向してオイルロックカラー63下側の油室S2から油溜室S3
への流路が絞られる。

更にアウターチューブ１が下降し、最圧縮状態になる
と、第６図に示すように、オイルロックカラー63の内周
面63aの嵌合部63b内周が、ダンパーシリンダ３の上端外
周面に嵌合するので、オイルロックカラー63下側の油室
内の作動油は、ダンパーシリンダ３上端外周面との僅か
な隙間を介して油溜室S3に流れるだけとなり、オイルロ
ックカラー63より下側の油室全体がオイルロック室とな
って底付きが防止される。

尚、スペーサカラー62を前記実施例と同様に上下位置
調整可能なカラーとしてもよい。

（発明の効果） 以上説明したように本発明によれば、ダンパーシリン
ダ外側とインナーチューブとの間がオイルロック室とな
り、オイルロックの受圧面積を大きくとることができ、
部品精度のバラツキによるオイルロック荷重の変化を少
なくすることができる。

特に本発明では、オイルロックカラーを内側部材と外
側部材に二分割して、外側部材をばね荷重調整機構によ
って昇降自在に設けてスプリングシートを兼ねさせるこ
とにより、ばね荷重調整を行なっても内側部材の位置が
変化することがなく、オイルロック位置を一定にするこ
とができる。

また、ピストンロッドにオイルロックカラーを付設す
ることにより、安定性が良く、強度的にも強くなる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るオイルロック機構を適用した緩衝
器の断面図、第２図は同緩衝器の伸び状態の要部拡大断
面図、第３図は同緩衝器の圧縮状態の要部拡大断面図、
第４図はばね荷重調整機構部の要部拡大断面図、第５図
は別実施例の伸び状態を示す図、第６図は同別実施例の
最圧縮状態を示す図、第７図は従来の緩衝器の要部断面
図である。 尚、図面中、１はアウターチューブ、２はインナーチュ
ーブ、2aはインナーチューブの内周面、３はダンパーシ
リンダ、５は中空ロッド（ピストンロッド）、７はピス
トン、32はアジャスター、41はスライダー、42は調整カ
ラー、43はオイルロックカラー、44は外側部材、47は懸
架ばね、50は支持カラー、51は内側部材、62はスペーサ
ーカラー、63はオイルロックカラー、63aはオイルロッ
クカラーの内周面、63bはオイルロックカラーの嵌合
部、63cはオイルロックカラーのテーパー面、63dはオイ
ルロックカラーの外周面、63eはオイルロックカラーの
下端面である。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】アウターチューブ内にインナーチューブを
   摺動自在に嵌装し、前記インナーチューブ内下部にダン
   パーシリンダを立設して、このダンパーシリンダ内に、
   基端部を前記アウターチューブに装着したピストンロッ
   ドを挿通した倒立型緩衝器において、 前記ダンパーシリンダ外側とインナーチューブとの間を
   オイルロック室とし、ピストンロッド外周には前記オイ
   ルロック室に嵌合するオイルロックカラーを設け、 前記オイルロックカラーは内側部材と外側部材に二分割
   し、このオイルロックカラーの内側部材はピストンロッ
   ド外周に固定し、外側部材はスプリングシートを兼ね、
   且つアウターチューブ上端に設けたばね荷重調整機構に
   よって昇降自在とした、 ことを特徴とする緩衝器のオイルロック機構。
2. 【請求項２】アウターチューブ内にインナーチューブを
   摺動自在に嵌装し、前記インナーチューブ内下部にダン
   パーシリンダを立設して、このダンパーシリンダ内に、
   基端部を前記アウターチューブに装着したピストンロッ
   ドを挿通し、インナーチューブとダンパーシリンダとの
   間に懸架ばねを配設し、前記アウターチューブ内には、
   このアウターチューブ側で支持したスペーサーカラーを
   設け、このスペーサーカラーの下端部で前記懸架ばねの
   上端部を支持した倒立型緩衝器において、 前記スペーサーカラーの下端部に、前記インナーチュー
   ブ内周に摺接する外周面と、下方に向けて拡径するテー
   パー面を備えた内周面と、前記懸架バネの上端部を支持
   する下端面とを有する環状のオイルロックカラーを別体
   に設け、 前記環状のオイルロックカラーは、最圧縮時に、前記内
   周面を前記ダンパーシリンダの外周に直接嵌合し、 最圧縮時に、下部にオイルロック室を形成する、 ことを特徴とする緩衝器のオイルロック機構。