JP3104891B2 - 中空複合繊維およびその製造方法 - Google Patents

中空複合繊維およびその製造方法

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JP3104891B2 JP20737492A JP20737492A JP3104891B2 JP 3104891 B2 JP3104891 B2 JP 3104891B2 JP 20737492 A JP20737492 A JP 20737492A JP 20737492 A JP20737492 A JP 20737492A JP 3104891 B2 JP3104891 B2 JP 3104891B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、無機微粒子を含有する
ポリエステル系ポリマ−部を、該ポリエステル系ポリマ
−よりもアルカリ分解速度が遅いかまたはアルカリに分
解しない繊維形成性ポリマ−部が完全に包囲した横断面
形状を有し、かつそれら2つのポリマ−の間に中空部を
有する複合繊維に関する。詳細には、無機微粒子の種類
によって紫外線遮蔽性を有し太陽光による日焼けを防
ぎ、また盛夏時には清涼感を、酷寒時には保温性を付与
することができ、さらには吸水性、軽量感、膨らみ等を
付与することができる複合繊維およびその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルやポリアミド等の合成繊維
は、その優れた物理的および化学的特性によって、衣料
用のみならず産業用にも広く使用されており、工業的に
重要な価値を有している。しかしながら、これらの合成
繊維は、その単糸繊度が大きいことやその横断面形状が
単純であることにより、絹、綿、麻等の天然繊維に比較
して風合や光沢が単調である。またこれらの合成繊維は
吸水性に劣り、しかも冷たくてぬめり感のある触感を有
し、品位の低いものであった。そこで、合成繊維の上記
のような欠点を改良するために、複数のポリマ−を複合
し繊維にしたり、合成繊維の横断面形状を異形化した
り、繊維を中空化することが広く行われている。また、
繊維に各種の性能を付与するために、目的に応じて無機
微粒子を選択し、その無機微粒子を繊維形成性ポリマ−
に多量に練り込み紡糸することが頻繁に行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うにして得られた無機微粒子含有繊維は無機微粒子を多
量に含有するので重く、そのうえ膨らみが不足し、軽量
感が要求される衣料分野には不適であった。さらに、中
空繊維の場合、中空紡糸ノズルから紡出して製造するこ
とが一般に行われているが、繊維に一旦中空構造が付与
されても、固化するまでの間に、溶融状態にあるポリマ
−の表面張力や紡糸時の引取り張力等によって中空部の
割合が減少しやすく、中空率の高い中空繊維を製造する
ことは困難であった。また、従来、知られているポリエ
ステルやポリアミド等単独からなる中空繊維は、低吸水
性であり、冷たくて、ぬめり感のある不快な触感を解消
できなかった。
【0004】また、最近、ポリアミドを鞘成分とし、ポ
リエステルを芯成分とする芯鞘型複合繊維をアルカリ処
理してポリエステルの芯成分の表面部分をアルカリで分
解除去してポリアミドの鞘成分とポリエステルの芯成分
との間に中空部を形成させた芯鞘型複合繊維が提案され
ている(特開平3−124857号公報)。しかしなが
ら、この複合繊維は芯が1個しかないため、繊維がへた
りやすく、保温性、吸水性、ソフト感、膨らみ等におい
て満足できるものではなかった。本発明は無機微粒子を
含有するにもかかわらず軽量であり、高い保温性、吸水
性、ソフト感、膨らみ等を有する複合繊維の提供を目的
とする。また、無機微粒子を含有することから、無機微
粒子の種類により各性能が付与された複合繊維の提供を
目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、無
機微粒子を含有するポリエステル系ポリマ−部を、該ポ
リエステル系ポリマ−よりもアルカリ分解速度が遅いか
またはアルカリに分解しない繊維形成性ポリマ−部が完
全に包囲した横断面形状を有し、ポリエステル系ポリマ
−部と繊維形成性ポリマ−部との間に中空部が存在し、
かつ芯が2個以上の多芯芯鞘型複合繊維であって、下記
式(I)および式(II)を満足することを特徴とする
中空複合繊維:
【0006】 0.3×T≦B≦0.9×T (I)
【0007】 20≦100−{B/(T−A)}×100<100 (II)
【0008】上記式(I)および式(II)において、 T: 中空部をも含めた複合繊維の横断面積 A: 複合繊維の横断面積に占める繊維形成性ポリマ−
部の面積 B: 複合繊維の横断面積に占めるポリエステル系ポリ
マ−部の面積である。
【0009】そして、本発明は、繊維形成性ポリマ−を
鞘成分としポリエステル系ポリマ−を芯成分とする多芯
芯鞘型複合繊維をアルカリ減量処理して複合繊維中のポ
リエステル系ポリマ−の一部を除去することにより上記
した中空複合繊維を製造する方法である。
【0010】本発明の複合繊維ではポリエステル系ポリ
マ−部と繊維形成性ポリマ−部との間の空隙は、通常、
繊維軸方向に通連した環状中空チャンネル状になってお
り、該環状中空チャンネルは、2個以上存在する。
【0011】本発明で使用するポリエステル系ポリマ−
(以下、PES系ポリマ−と称する)としてはアルカリ
による分解除去が容易でかつ繊維形成性の良好なものが
好ましい。そのようなPES系ポリマ−としては、酸成
分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン−
2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カル
ボキシフェノキシ)エタン、4,4´−ジカルボキシジ
フェニ−ル等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバ
シン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル
類を用い、ジオ−ル成分としてエチレングリコ−ル、ジ
エチレングリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,6
−ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、シクロ
ヘキサン−1,4−ジメタノ−ル、ポリエチレングリコ
−ル、テトラメチレングリコ−ル等を用いて合成される
繊維形成性のポリエステルを挙げることができるが、エ
チレンテレフタレ−ト単位からなるポリエステルが好ま
しい。
【0012】上記したPES系ポリマ−において、5−
ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイ
ソフタル酸等の金属スルホネ−ト基を有するイソフタル
酸;ポリオキシエチレングリコ−ル、ポリオキシテトラ
メチレングリコ−ル等のポリオキシアルキレングリコ−
ル;ポリオキシエチレングリコ−ル−メチル−グリシジ
ルエ−テル、ポリオキシエチレングリコ−ル−メチル−
2,3−ジヒドロキシプロピルエ−テル等の片末端封鎖
ポリオキシアルキレングリコ−ルなどの第3成分を約2
〜20モル%の範囲内で共重合させたPES系ポリマ−
がアルカリによる分解除去が容易であることから、とく
に好適である。
【0013】かかるPES系ポリマ−は任意の製造方法
によって得ることができる。例えば、ポリエチレンテレ
フタレ−トについて説明すれば、テレフタル酸とエチレ
ングリコ−ルとを直接エステル化反応させるか、テレフ
タル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエ
ステルとエチレングリコ−ルとをエステル交換反応させ
るか、またはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反
応させるかして、テレフタル酸のグリコ−ルエステルお
よび/またはその低重合体を生成させる第1段反応、次
いでかかる生成物を減圧下加熱して所望の重合度になる
まで重縮合反応させる第2段反応とによって容易に製造
される。
【0014】上記のPES系ポリマ−に添加する無機微
粒子としてはアルカリにより分解しない、すなわち耐ア
ルカリ性の無機微粒子であればその種類に限定はなく、
例えば、紫外線遮蔽繊維を得ることが目的である場合は
紫外線を反射または吸収する無機微粒子、すなわち紫外
線を実質的に透過しない無機微粒子を使用することがで
きる。その具体例として、二酸化チタン、二酸化マンガ
ン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、
アルミナ、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、炭酸カルシウ
ム、炭酸ナトリウム、タルク、カオリン等の無機微粒子
またはこれらの無機微粒子を各種処理したものが挙げら
れ、これらは1種類または2種類以上を混合して使用す
ることができる。これらの中でも二酸化チタン、酸化亜
鉛、アルミナが好ましく、特に二酸化チタンが好まし
い。
【0015】紫外線遮蔽効果を付与するためには、無機
微粒子の添加量はPES系ポリマ−に対して5重量%以
上であることが好ましい。無機微粒子の添加量の上限に
関しては特に限定はないが、紡糸性の点から85重量%
以下が好ましく、10〜70重量%の範囲が特に好まし
い。無機微粒子の平均粒径は5μ以下、特に1μ以下が
好ましい。平均粒径が大きすぎると、紡糸時のフィルタ
−の詰まりや糸切れ等の問題が生じ、さらに延伸時にも
糸切れが発生するので好ましくない。ここで言う平均粒
径とは、堀場製作所粒度分布測定装置(CAPA−50
0)を用いて測定した値である。
【0016】本発明において、無機微粒子含有PES系
ポリマ−には曳糸性を高めるためにステアリン酸金属塩
またはチタン系カップリング剤等の化合物が添加されて
いるのが好ましく、特にステアリン酸マグネシウム、ス
テアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等が好まし
い。無機微粒子が二酸化チタンまたはそれを含むもので
ある場合にはステアリン酸マグネシウムが好ましい。そ
してこれら化合物の添加量は無機微粒子に対して1〜1
0重量%の範囲であることが好ましい。
【0017】本発明の他の成分である繊維形成性のポリ
マ−とは上記のPES系ポリマ−よりもアルカリ分解速
度が極端に遅いかまたはアルカリに全く分解しないポリ
マ−である。当然のことながらアルカリ水溶液を通すも
のでかつアルカリ分解処理条件下でほとんどアルカリ分
解されないポリマ−が好ましく用いられ、具体的にはポ
リアミド、ポリエ−テル系ポリウレタン、ポリエチレン
等が挙げられる。なかでも容易に中空部が形成できるこ
とから、ポリアミドが最適である。ポリアミドは吸水性
を有し、かつ染色性にも優れていることから、衣料用と
して用いる場合には特に優れている。ポリアミドは、ナ
イロン4、ナイロン6、ナイロン610、ナイロン6
6、ナイロン12等を主成分とするポリアミドであり、
少量の第3成分を含むポリアミドでもよい。これらには
少量の添加剤、蛍光増白剤、安定剤等が含まれていても
よい。また、PES系ポリマ−として、第3成分が共重
合された共重合ポリエステルを使用する場合、繊維形成
性ポリマ−として第3成分の共重合割合が前者よりも小
さいポリエステルを使用することもできる。
【0018】本発明では上記のPES系ポリマ−と繊維
形成性ポリマ−から、PES系ポリマ−を芯成分、繊維
形成性ポリマ−を鞘成分とする多芯芯鞘型複合繊維を形
成し、あるいは、該複合繊維を構成成分とする糸または
繊維製品を形成した後、アルカリ処理によって複合繊維
中のPES系ポリマ−の一部、すなわち表面部分を分解
除去してPES系ポリマ−部と繊維形成性ポリマ−部と
の間に中空部を有する複合繊維、該複合繊維からなる糸
または繊維製品を製造する。
【0019】本発明では、鞘成分としてポリアミド等の
アルカリに対する分解性が低い繊維形成性ポリマ−を使
用し、芯成分としてPES系ポリマ−を使用したことに
よって、中空複合繊維の原料繊維である複合繊維の形成
が極めて容易に行えるとともに、比較的低濃度および低
温のアルカリ液によって、繊維形成性ポリマ−を分解せ
ずにPES系ポリマ−の一部を選択的に分解除去するこ
とができる。しかもアルカリ分解により生じたPES系
ポリマ−の低重合物は、アルカリ液に溶解しており繊維
形成性ポリマ−中を容易に通過するので、形成される中
空複合繊維中に残留することはない。また、比較的低濃
度でかつ低温のアルカリ液で処理して中空複合繊維を得
ることができるため、得られる中空複合繊維の黄変等の
トラブルが生じにくい。
【0020】原料複合繊維におけるPES系ポリマ−と
繊維形成性ポリマ−との複合割合は、繊維横断面の面積
比率で、PES系ポリマ−:繊維形成性ポリマ−=9
0:10〜30:70、特に70:30〜40:60の
範囲にするのが好ましい。繊維形成性ポリマ−の複合割
合が10%未満の場合、複合比率がアンバランスにな
り、紡糸性が不良になり易く、一方70%を越えると得
られる中空複合繊維における中空率が低下し、無機微粒
子を含有する繊維の柔軟性、軽量性、嵩高性、断熱性等
が不足した繊維になり易い。また、複合繊維の単繊維繊
度は、柔軟性、軽量性、膨らみ感等を有する繊維を得る
ために、5デニ−ル以下、特に0.2〜3デニ−ルの範
囲にするのがよい。そして複合繊維は海島型の複合繊維
を製造する際に通常採用されている溶融複合紡糸、溶融
複合紡糸延伸等の方法により製造することができる。
【0021】アルカリ処理する前の複合繊維における各
成分の複合状態はPES系ポリマ−が芯成分を構成し、
繊維形成性ポリマ−が鞘成分を構成する形状であればど
のようなものであってもよい。アルカリ処理前の多芯芯
鞘型複合繊維の代表例をその横断面図により示すと、図
1を挙げることができる。図1の多芯芯鞘型複合繊維で
は、ほぼ同じ形状と寸法を有する複数の無機微粒子を含
有するPES系ポリマ−の芯成分1が繊維形成性ポリマ
−の鞘成分2中に不均一に分散している。繊維横断面に
おける全ての芯成分1の合計面積と鞘成分2の面積との
割合を上記の複合比率の範囲から適宜選択するのが好ま
しい。芯成分の形状、数、分布状態、鞘成分の輪郭(外
形)等を各々の状況に応じて適宜変えることができる。
【0022】そして多芯芯鞘型複合繊維の断面形状(外
形)はどのようなものであってもよく、図1に示した円
形形状の他に種々の異形形状とすることができる。異形
断面の場合、例えば偏平形、楕円形、三角形〜八角形等
の多角形、T字型、3〜8葉等の多葉形等の任意の形状
とすることができる。
【0023】上記の複合繊維、または該繊維を構成成分
とする糸、あるいは布帛等の繊維製品をアルカリ処理す
ることにより、本発明の中空複合繊維、または該繊維を
構成成分とする糸、あるいは布帛等の繊維製品を製造す
ることができる。アルカリ処理は繊維形成性ポリマ−部
と無機微粒子含有PES系ポリマ−部との間に形成され
る中空部の割合が下記式(I)および式(II)
【0024】 0.3×T≦B≦0.9×T (I)
【0025】 20≦100−{B/(T−A)}×100<100 (II)
【0026】上記式(I)および式(II)において、 T: 中空部をも含めた複合繊維の横断面積 A: 複合繊維の横断面積に占める繊維形成性ポリマ−
部の面積 B: 複合繊維の横断面積に占めるポリエステル系ポリ
マ−部の面積を満足するように、アルカリ液のアルカリ
濃度、温度、処理時間等を調節して行うことが必要であ
る。
【0027】アルカリ処理を行うに当たっては、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化
物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカ
リ土類金属の水酸化物などのアルカリ水溶液を使用する
ことができ、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等
のアルカリ金属の水酸化物のアルカリ水溶液が好まし
い。アルカリ水溶液中のアルカリ濃度は、複合繊維の単
繊維繊度、複合繊維における島成分の割合やそれを構成
するPES系ポリマ−の種類等の種々の要件により異な
るが、例えば水酸化ナトリウム水溶液を使用する場合
は、水酸化ナトリウムの濃度が5〜50g/リットルの
水溶液を使用するのがよい。
【0028】そして、上記したアルカリ水溶液中に、第
4級アンモニウム塩をさらに共存させると、アルカリ侵
食によるPES系ポリマ−の除去が促進され、アルカリ
処理時間を短縮したり、アルカリ水溶液中のアルカリ濃
度を低下することができる。第4級アンモニウム塩とし
ては、一般式:
【0029】[N(R↑1)(R↑2)(R↑3)(R
↑4)]↑+X↑− (式中、R↑1、R↑2、R↑3およびR↑4は互いに
同じか、または異なっていてもよいアルキル基、フェニ
ル基、アルキル基置換フェニル基またはフェニル基置換
アルキル基を示し、Xはハロゲン元素を示す)で表わさ
れる第4級アンモニウム塩が挙げられる。第4級アンモ
ニウム塩の好ましい具体例としては、ベンジルジメチル
ドデシルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルド
デシルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアン
モニウムクロライド等を挙げることができる。第4級ア
ンモニウム塩は通常、0.2〜2g/リットルの割合で
使用するのが望ましい。
【0030】アルカリ侵食によるPES系ポリマ−の一
部分解除去は、糸または布帛等の繊維製品にする以前の
複合繊維自体に対して直接行っても、また複合繊維から
糸、布帛等の繊維製品を形成した後に、該糸や繊維製品
に対して行ってもよい。アルカリ侵食処理のし易さ、得
られる中空複合繊維または製品の取扱い性の点から、複
合繊維から糸または布帛等の繊維製品を形成した後にア
ルカリ処理を行うのが望ましい。
【0031】アルカリ侵食時の温度、処理時間は、該複
合繊維の繊維繊度、複合繊維における芯成分の割合、そ
れを構成するPES系ポリマ−の種類、目的とする中空
複合繊維における中空率、第4級アンモニウム塩の使用
の有無およびその量、複合繊維から形成された布帛等の
繊維製品の内容等の種々の要件により適宜調節できる。
例えば、第4級アンモニウム塩を用いないでアルカリ処
理する場合にはアルカリ水溶液の温度を80〜100℃
にして1〜5時間処理するのがよい。また第4級アンモ
ニウム塩を用いる場合にはアルカリ水溶液の温度を70
〜90℃にして1〜3時間処理するのがよい。アルカリ
処理の方法としては、アルカリ水溶液中に複合繊維、糸
または繊維製品を浸漬する方法、あるいはそれらにアル
カリ水溶液をパッド、スプレ−、シャワ−等で塗布、噴
霧する方法等を挙げることができる。
【0032】上記のアルカリ処理によって、複合繊維中
の芯成分であるPES系ポリマ−の一部がその表面部分
から分解除去されて、本発明の中空複合繊維、すなわち
繊維形成性ポリマ−部と無機微粒子含有PES系ポリマ
−部との間に中空部を有し、該中空部は繊維軸方向に連
通しており、特定の中空率を有している中空複合繊維が
形成される。
【0033】そして、本発明では繊維形成性ポリマ−部
と無機微粒子含有PES系ポリマ−部との間の中空率を
上記した式(I)および式(II)を満足する範囲内とす
ることによって、無機微粒子の種類による各特性、保温
性(断熱性)、軽量性、柔軟性、膨らみ感等を兼ね備え
た中空複合繊維が得られる。ここで上記式(II):10
0−{B/(T−A)}×100で表わされる中空率が
20未満であると、保温性、軽量性、柔軟性、膨らみ感
等の欠けたものとなり、一方中空率が100になる、す
なわちPES系ポリマ−が完全に分解除去されて繊維中
に残留しなくなると、繊維の弾性率が低下し耐へたり性
が低下する。式(II)で表わされる中空率は30〜80
の範囲、特に50〜70の範囲内であることが好まし
い。その際に、(中空複合繊維の横断面積中に占める繊
維形成性ポリマ−部の面積):(中空複合繊維の横断面
積中に占めるPES系ポリマ−部および中空部の面積の
合計)=10:90〜70:30にするのが望ましい。
【0034】本発明の中空複合繊維の横断面形状の具体
例を図示すると、例えば図1に示した複合繊維から得ら
れた図2の中空複合繊維を挙げることができる。図1の
多芯芯鞘型複合繊維からは、繊維形成性ポリマ−の鞘成
分2中にほぼ同じ形状と寸法を有する複数の環状の中空
部3と、減量された無機微粒子を含有するPES系ポリ
マ−の芯成分4の各々がほぼ均一に分散している中空複
合繊維が形成される。
【0035】本発明の中空複合繊維は図2に示すものに
限定されず、減量された芯成分の数、位置、形状、繊維
の外側輪郭等は、上記の多芯芯鞘型複合繊維における芯
成分の数、位置、形状、繊維の外側輪郭等を適宜変える
ことによって、任意のものとすることができる。
【0036】本発明の中空複合繊維は、繊維形成性ポリ
マ−とPES系ポリマ−との間に形成された中空部に無
機微粒子が独立して存在しているか、またはPES系ポ
リマ−部と中空部との境界表面部分に大部分が露出した
形で存在し、かつ芯が2個以上の多芯芯鞘型複合繊維で
あるため、中空部の形成による繊維のへたり感がなく、
中空部を有していても反発感がある。また本発明の中空
複合繊維は多芯芯鞘型構造を形成、すなわち中空部が2
以上形成されているため、中空部が1つの場合に比べ、
中空複合繊維中での無機微粒子の偏在が少なく、光沢斑
が生じにくい。さらに、染色物の発色性の低下も少な
い。
【0037】本発明でいう繊維および糸とは、モノフィ
ラメント等の長繊維、ステ−プル等の短繊維、フィラメ
ント糸、紡績糸、本発明の空孔複合繊維と天然繊維、半
合成繊維、他の合成繊維との混繊糸や混紡糸、合撚糸、
交絡糸、捲縮糸等のその他の加工糸等のいずれであって
もよい。さらに本発明の繊維製品は、それらの繊維や糸
をその一部または全部として形成された編織物、不織
布、最終的な衣類、タオル等の繊維製品などのいずれで
もよい。本発明の中空複合繊維は、その保温性、軽量
性、柔軟性、膨らみ感等の風合とともに耐へたり性とい
う特性により、タフタ、デシン、ジョ−ゼット、ちりめ
ん、加工糸、ツイル等の織物、インタ−ロック、トリコ
ット等の編物に適している。
【0038】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれによって何ら限定されるものではな
い。実施例において各物性値は下記の方法によって測定
した。 (1)固有粘度[η] テトラクロロエタン:フェノ−ル=1:1の混合溶媒を
用いて30℃で測定した固有粘度(dl/g)である。 (2)減量率(%) 下記の式により求めた。 減量率(%)={(N↓1−N↓2)/N↓1}×10
0 N↓1:アルカリ減量前の絶乾重量(g) N↓2:アルカリ減量後の絶乾重量(g) 絶乾重量の測定:試料を1mmHgの減圧下に、温度5
0℃で8時間、真空乾燥した後の重量(g)を測定し
た。 (3)中空率(%) アルカリ処理後の布帛を切断して、その切断面をSEM
写真撮影し、各繊維横断面における上記したT、A、お
よびBを該写真から算出して、 中空率(%)=100−{B/(T−A)}×100 から各繊維の中空率を求め、切断面における複数本の繊
維の平均値を算出した。 (4)紫外線遮蔽性 東レテクノ(株)社製の紫外線強度積算計を用い、試料
の紫外線透過率を測定することにより求めた。すなわ
ち、紫外線強度積算計のセンタ−部に試料を載置し、別
の積算計のセンタ−部には試料を載置せずに各々の紫外
線量を測定し、下記式により求めた。 紫外線透過率(%)=100×(U/U↓0) U:試料載置側の紫外線量 U↓0:試料を載置しない側の紫外線量 (5)吸水率(%) 布帛を乾燥して得られる試料を水中に30分以上浸漬し
た後、家庭用電気洗濯機(日立製作所製PF−250
0)の脱水機で5分間脱水して、下記の式により求め
た。 吸水率(%)={(W−D)/D}×100 W:5分間脱水後の試料の重量(g) D:乾燥試料の重量(g) (6)保温率(%) ASTM D−1518−57Tに準拠して作成された
保温性試験機によって測定した値(%)である。
【0039】実施例1 [η]=0.65のポリエチレンテレフタレ−ト(以
下、PETと略称する)79.5重量部に、平均粒径
0.4μの二酸化チタン(チタン工業(株)社製:紫外
線透過率はほとんどゼロ)20重量部とステアリン酸マ
グネシウム0.5重量部を添加し、290℃の温度で二
軸混練機で混練押し出し、押し出されたストランドを切
断しペレットを得た。得られた二酸化チタン含有PET
とナイロン6の複合比率を1:1にして、二酸化チタン
含有PETが芯層、ナイロン6が鞘海層となるように、
紡糸温度290℃、紡糸速度1000m/分で図1に示
すごとく複合紡糸を行い、得られた未延伸糸を75℃の
熱ロ−ラ−および150℃の熱プレ−トに接触させて延
伸して75デニ−ル/24フィラメントの紡糸延伸複合
糸を得た。
【0040】得られた複合糸を経糸および緯糸として用
いてタフタを製織した。その生機密度は経糸117本/
寸、緯糸106本/寸であった。このタフタを炭酸ナト
リウムを2g/リットルの割合で含む水溶液中で30分
間煮沸して糊抜きした後、160℃で約40秒間プレセ
ットを行った。次に水酸化ナトリウムを40g/リット
ルおよびベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロラ
イドを2g/リットルの割合で含むアルカリ水溶液中に
浴比50:1、温度95℃で表1に示した時間浸漬して
アルカリ処理を行った。その後、酢酸を2cc/リット
ルの割合で含む水溶液中に浸漬して中和した後、十分に
水洗して表1に示す減量率および中空率を有するタフタ
を得た。
【0041】この得られたタフタの紫外線遮蔽性、吸水
率および保温率を測定し、結果を表2に示す。
【0042】実施例2〜3 実施例1において、二酸化チタンの添加量を13.3重
量%(実施例2)、10.3重量%(実施例3)にし、
アルカリ処理を表1に示す時間で行う以外は同様にして
表1に示す減量率および中空率を有するタフタを得た。
この得られたタフタの紫外線遮蔽性、吸水率および保温
率を測定し、結果を表2に示す。
【0043】実施例4 実施例1において、二酸化チタンの添加量、ナイロン6
との複合比率を表1に示すように代え、アルカリ処理を
表1に示す時間で行う以外は同様にして表1に示す減量
率および中空率を有するタフタを得た。この得られたタ
フタの紫外線遮蔽性、吸水率および保温率を測定し、結
果を表2に示す。
【0044】比較例1 実施例1において、アルカリ処理を行わない、すなわち
中空部を形成しない以外は同様にしてタフタを得た。こ
の得られたタフタの紫外線遮蔽性、吸水率および保温率
を測定し、結果を表2に示す。中空部を有しないため、
吸水性、保温性に劣り、膨らみ感が全くないものであっ
た。
【0045】比較例2〜3 実施例1において、中空率が2%(比較例2)、100
%(比較例3)になるようにアルカリ処理する以外は同
様にしてタフタを得た。この得られたタフタの紫外線遮
蔽性、吸水率および保温率を測定し、結果を表2に示
す。中空率が2%しかないタフタは吸水性、保温性に劣
り、膨らみ感がないものであった。また、中空率が10
0%、すなわちナイロン6のみからなる中空繊維はポリ
エステル繊維の特性である弾力性がなく、膨らみ感のま
ったくないものであった。
【0046】比較例4 実施例2において、アルカリ処理を行わない、すなわち
中空部を形成しない以外は同様にしてタフタを得た。こ
の得られたタフタの紫外線遮蔽性、吸水率および保温率
を測定し、結果を表2に示す。中空部を有しないため、
吸水性、保温性に劣り、膨らみ感が全くないものであっ
た。
【0047】比較例5〜6 実施例1において、無機微粒子を添加しないPETとナ
イロン6の複合比率を表1に示すように代える以外は同
様にして紡糸したが、紡糸工程性が悪くタフタを得るこ
とはできなかった。
【0048】
【発明の効果】本発明の中空複合繊維は吸水性、保温性
に優れ、無機微粒子を含有しているにもかかわらず軽量
で柔軟性があり、膨らみ感のある良好な風合を有してい
る。そのうえ中空複合繊維中に残留しているPES系ポ
リマ−の高弾性率により耐へたり性をも有している。本
発明の製造方法により、繊維繊度が小さく、繊維横断面
にしめる中空の割合が高い複合繊維を繊維化工程および
アルカリ処理工程におけるトラブル、着色等を生ずるこ
となく、簡単に円滑に製造することができる。また本発
明の製造方法において、アルカリ水溶液中に第4級アン
モニウム塩を共存させることによってアルカリ処理を促
進することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の中空複合繊維を製造するのに使用する
多芯芯鞘型複合繊維の繊維横断面の一例を示した図であ
る。
【図2】図1の多芯芯鞘型複合繊維から形成された本発
明の中空複合繊維の繊維横断面を示した図である。
【符号の説明】
1 芯成分 2 鞘成分 3 中空部 4 減量された芯成分
【表1】
【表2】

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】無機微粒子を含有するポリエステル系ポリ
    マ−部を、該ポリエステル系ポリマ−よりもアルカリ分
    解速度が遅いかまたはアルカリに分解しない繊維形成性
    ポリマ−部が完全に包囲した横断面形状を有し、ポリエ
    ステル系ポリマ−部と繊維形成性ポリマ−部との間に中
    空部が存在し、かつ芯が2個以上の多芯芯鞘型複合繊維
    であって、下記式(I)および式(II)を満足するこ
    とを特徴とする中空複合繊維。 0.3×T≦B≦0.9×T (I) 20≦100−{B/(T−A)}×100<100 (II) 上記式(I)および式(II)において、 T: 中空部をも含めた複合繊維の横断面積 A: 複合繊維の横断面積に占める繊維形成性ポリマ−
    部の面積 B: 複合繊維の横断面積に占めるポリエステル系ポリ
    マ−部の面積
  2. 【請求項2】繊維形成性ポリマ−を鞘成分としポリエス
    テル系ポリマ−を芯成分とする多芯芯鞘型複合繊維をア
    ルカリ減量処理して複合繊維中のポリエステル系ポリマ
    −の一部を除去することを特徴とする請求項1の中空複
    合繊維の製造方法。
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