JP3459269B2 - 空孔を有する複合繊維およびその製造方法 - Google Patents

空孔を有する複合繊維およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリエステル系重合体
部をエチレン−ビニルアルコール系共重合体部が完全に
包囲した横断面形状を有し、且つそれら2つの重合体部
の間に空隙を有する複合繊維、それから製造された糸お
よび繊維製品、ならびにそれらの製造方法に関する。詳
細には、弾性率が高く耐へたり性があり、吸水性および
保温性に優れ、且つ軽量でふくらみのある極めて良好な
風合を有する、エチレン−ビニルアルコール系共重合体
とポリエステル系重合体からなる複合繊維、糸および繊
維製品に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルやポリアミド等の合成繊維
は、その優れた物理的および化学的特性によって、衣料
用のみならず産業用にも広く使用されており、工業的に
重要な価値を有している。しかしながら、これらの合成
繊維は、その単糸繊度が大きいことやその横断面形状が
単純であることにより、絹、綿、麻等の天然繊維に比較
して風合や光沢が単調である。またこれらの合成繊維
は、吸水性に劣り、しかも冷たくて、ぬめり感のある触
感を有し、品位の低いものであった。
【0003】そこで、合成繊維の上記のような欠点を改
良するために、複数の重合体を複合して複合繊維にした
り、合成繊維の横断面形状を異形化したり、繊維を中空
化することが広く行われている。しかしながら、吸水
性、保温性、軽量性および嵩高性等の特性兼ね備えたふ
くらみのある良好な風合を有する繊維は未だ得られてい
ない。そして、中空繊維の場合は、中空紡糸ノズルから
紡出して製造することが一般に行われているが、繊維に
一旦中空構造が付与されても、固化するまでの間に、溶
融状態にある樹脂の表面張力や紡糸時の引き取り張力等
によって中空部の割合が減少し易く、中空率の高い中空
繊維を製造することは困難であり、これまで知られてい
るポリエステルやポリアミド等からなる中空繊維は、低
吸水性であり、冷たくて、ぬめり感のある不快な触感を
解消できなかった。
【0004】一方、エチレン−ビニルアルコール系共重
合体は、ビニルアルコール単位の存在により、ポリエス
テルやポリアミド等の合成樹脂に比べて吸水性が高く、
繊維にした場合にポリアミド繊維等に比べてぬめり感が
なく、且つ人の肌になじみ易いという特徴を有してい
る。そして、エチレン−ビニルアルコール系共重合体か
ら中空繊維を製造することも行われており、その場合に
は上記したような中空ノズルからの溶融中空押出しによ
る紡糸法が採用されている。しかしながら、エチレン−
ビニルアルコール系共重合体はポリエステルやポリアミ
ド等の他の繊維形成性重合体に比べて紡糸性が劣ること
により、中空割合が大きく且つ衣料用に適する小さな繊
度の中空繊維を得ることが従来不可能であり、繊維繊度
が約10デニール以上の極めて太いものしか得られなか
った。
【0005】中空繊維が衣料用に用いられるためには、
衣料用に適する小さな繊度を有していることが必要であ
り、更に保温性、吸水性、ソフト感、軽量性、ふくらみ
等を有するためには中空率の高いことが好ましいが、上
記した従来のエチレン−ビニルアルコール系共重合体中
空繊維は、その繊維繊度が極めて大きいことに起因し
て、柔軟性、軽量性、嵩高性、ソフト感等が不足してお
り、衣料用には使用できず、人工腎臓の透析用中空繊維
等の医療用に用いられてきた。
【0006】また、最近、ポリアミドを鞘成分とし、ポ
リエステルを芯成分とする芯鞘型複合繊維をアルカリ処
理してポリエステル芯成分の表面部分をアルカリで分解
除去して、ポリアミドの鞘成分とポリエステルの芯成分
との間に中空部を形成させた芯鞘型中空複合繊維に係る
発明が出願されている(特開平3−124857号およ
び特開平3−12858号)。しかしながら、そこで得
られるポリアミドとポリエステルの複合繊維は、繊維表
面に位置するポリアミド成分に起因してぬめり感があ
り、その感触および風合が衣料用として必ずしも適した
ものではない。しかも、鞘成分を構成するポリアミドは
アルカリ液の通過性が低く、ポリエステルの芯成分をア
ルカリ分解除去するためには、アルカリ液の濃度を高め
ると共に温度をも高める必要があり、その結果工程上の
危険性やアルカリ液による繊維の黄変等を招き易いとい
う欠点がある。その上、分解により生じたポリエステル
の低重合物が除去されにくく中空部内壁に付着したまま
残り、それがその後の工程または衣料にした場合に徐々
に出てきて繊維の品質や処理工程等に悪い影響を及ぼす
等の欠点を有している。
【0007】
【発明の内容】本発明者らは、上記した従来技術におけ
るような欠点のない、保温性、吸水性、ソフト感、軽量
性、ふくらみ等の特性を兼ね備えた天然繊維に似た良好
な風合をする繊維を、ポリマー設計や繊維化工程におけ
るトラブルや望ましくない着色等を生ずることなく得る
ことを目的として研究を続けてきた。
【0008】その結果、上記した特開平3−12485
7号公報や特開平3−12858号公報に記載されてい
るポリアミドとポリエステルの複合繊維とは重合体の組
み合わせが大きく異なる、エチレン−ビニルアルコール
系共重合体とポリエステル系重合体との芯鞘型または海
島型複合繊維を使用してアルカリ処理を行うと、比較的
低濃度および低温のアルカリ液を使用した場合にもアル
カリ液がエチレン−ビニルアルコール系共重合体の鞘部
分または海部分を容易に通過して、その内側のポリエス
テル系重合体の一部(表面部分)を分解除去することが
できること、それによってエチレン−ビニルアルコール
系共重合体の鞘成分または海成分とポリエステル系重合
体の芯成分または島成分との間に空隙が形成された空孔
複合繊維が生成すること、しかもこの空孔を有する複合
繊維は、上記した従来の繊維繊度の大きなエチレン−ビ
ニルアルコール系共重合体の中空繊維や、ポリアミド/
ポリエステル中空複合繊維とは異なり、保温性、吸水
性、ソフト感、軽量性、ふくらみ感のすべてにおいて優
れ、しかもポリエステル系重合体に由来する高弾性率に
よる耐へたり性という特性をも備えていることを見出し
て本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、ポリエステル系重合
体部をエチレン−ビニルアルコール系共重合体部が完全
に包囲した横断面形状を有するエチレン−ビニルアルコ
ール系共重合体とポリエステル系重合体からなる複合繊
維であって、エチレン−ビニルアルコール系共重合体部
とポリエステル系重合体部との間に下記の式(I)および
式(II)を満足する空隙が存在することを特徴とする空孔
を有する複合繊維、該複合繊維を構成成分とする糸およ
び繊維製品;
【数3】 20≦100−{B/(T−A)}×100<100 (I)
【数4】 T−A=B+C (II) 上記式(I)および式(II)において、 T:空隙をも含めた複合繊維の横断面積 A:複合繊維の横断面積に占めるエチレン−ビニルアル
コール系共重合体部の面積 B:複合繊維の横断面積に占めるポリエステル系重合体
部の面積 C:複合繊維の横断面積に占める空隙の面積;である。
【0010】 そして、本発明は、エチレン−ビニルア
ルコール系共重合体を鞘成分としポリエステル系重合体
を芯成分とする芯鞘型複合繊維およびエチレン−ビニル
アルコール系共重合体を海成分としポリエステル系重合
体を島成分とする海島型複合繊維の少なくとも一方を構
成成分とする糸または繊維製品をアルカリ減量処理して
複合繊維中のポリエステル系重合体の一部を除去するこ
とによって、上記した空孔を有する複合繊維を構成成分
とする糸および繊維製品を製造する方法である。
【0011】ここで、上記本発明の製造方法からも明ら
かなように、本発明の複合繊維ではエチレン−ビニルア
ルコール系共重合体部とポリエステル系重合体部との間
の空隙は、通常、繊維軸方向に連通した環状中空チャン
ネル状になっており、使用する複合繊維の種類により該
環状中空チャンネルは、1個(芯鞘型複合繊維の場合)
または2個以上(海島型複合繊維の場合)存在する。
【0012】本発明で使用するエチレン−ビニルアルコ
ール系共重合体(以後「Et/VA系共重合体」とい
う)は、エチレンからなる繰り返し単位の割合が約30
〜70モル%であり、残余がビニルアルコール単独、ま
たはビニルアルコールとその他のビニル系モノマーの繰
り返し単位からなるものが好ましい。
【0013】共重合体におけるエチレン単位の割合が3
0モル%よりも少なくなる、すなわちビニルアルコール
単位の割合が70モル%よりも多くなると、繊維化する
際の曳糸性が不良となって紡糸または延伸時に単糸切
れ、断糸が多くなり、しかも柔軟性の欠けたものとなる。
また、ポリエステル系重合体としてポリエチレンテレフ
タレートのような高融点ポリエステルを採用してEt/
VA系共重合体と複合紡糸する場合は通常250℃以上
の高い紡糸温度を使用するが、その場合にエチレン単位
の割合が30モル%よりも少ないとEt/VA系共重合
体の耐熱性が不充分になり、良好な複合繊維が得られな
くなる。
【0014】一方、エチレン単位の割合が70モル%を
超えると、ビニルアルコール単位、すなわち水酸基の割
合が必然的に少なくなり、その結果、吸湿性や吸水性が
低下することになり、好ましくない。紡糸性や吸水性等
の点から、Et/VA系共重合体におけるビニルアルコ
ール単位の割合は、約30〜70モル%、特に約40〜
70モル%であるのが望ましい。
【0015】ここで、基本骨格をなすEt/VA系共重
合体は、架橋されていない鎖状のものであっても、また
は後記するように適当な方法によって架橋されたもので
あってもよい。Et/VA系共重合体は、エチレン/酢
酸ビニル系共重合体の酢酸ビニル部分をケン化すること
により得ることができ、その場合のケン化度は約95%
以上であるのがよい。ケン化度が低くなると、共重合体
の結晶性が低下して強度等の物性が低下するだけでな
く、共重合体が軟化し易くなり、繊維化工程でトラブル
が発生し、しかも得られる繊維の風合が劣ったものにな
り好ましくない。
【0016】Et/VA系共重合体としては、通常、数
平均分子量約5000〜25000のものを使用するの
がよい。Et/VA系共重合体は、(株)クラレよりエ
バールRの商品名で、また日本合成化学工業(株)より
ソアノールRの商品名で市販されており、容易に入手可
能である。しかしながら、市販されているエチレンと酢
酸ビニルとの共重合体を購入しそれをケン化して、また
はエチレンと酢酸ビニルからラジカル重合等によってE
t/酢酸ビニル共重合体を製造しそれをケン化して使用
してもよい。
【0017】いずれの場合も、Et/VA系共重合体中
にナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属
イオンやカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金
属イオンが存在すると、共重合体中に主鎖切断、側鎖脱
離、過度の架橋等が生じて、共重合体の熱安定性の低
下、共重合体のゲル化による紡糸時の断糸、紡糸フィル
ターの目詰まり、それに伴う紡糸パックの圧力の急上
昇、ノズル寿命の短期化等を招くので、それらのイオン
の含有量を極力少なくする、通常約100ppm以下、
特に50ppm以下にするのがよい。
【0018】上記のEt/VA系共重合体は、共重合体
中におけるエチレン単位とビニルアルコール単位の割合
等の応じて、通常、約120〜180℃の融点を有して
おり、熱水中では融点降下の現象が生じて上記した融点
以下の温度でも軟化し易くなる。そのため、加工方法や
条件によっては軟化現象を生じて単繊維間の膠着を引き
起こして風合が硬くなる場合もあるので、下記に記載す
るようにEt/VA系共重合体を架橋してもよい。
【0019】Et/VA系共重合体の軟化点、耐熱性、
耐熱水性等を向上させるための架橋方法としては、ビニ
ルアルコール単位含有共重合体の架橋法として知られて
いるいずれの方法も採用でき、例えば、ジビニル化合
物、ホルムアルデヒドで代表されるモノアルデヒド、ジ
アルデヒド等のアルデヒド化合物、ジイソシアネート等
のポリイソシアネート等の有機架橋剤による架橋、ホウ
素化合物等の無機架橋剤による架橋、γ線や電子線等の
放射線や光による架橋等を挙げることができる。
【0020】例えばジアルデヒドで架橋アセタール化処
理を行う場合は、硫酸、塩酸、ギ酸等の強酸を使用して
行うのがよく、その場合の強酸の使用濃度は約0.05
〜5規定、ジアルデヒド溶液の濃度を約0.2〜500
g/リットル、反応温度を約15〜135℃程度にする
のがよい。ジアルデヒドとしてはグルタルアルデヒド、
1,9−ノナンジアール、2−メチルー1,8−オクタ
ンジアール等が反応速度が大きく実用上好ましい。ジア
ルデヒドによる架橋アセタール化度は、110℃以上の
高温染色における耐性および耐アイロン性等の点からア
ルコール性水酸基単位に対して約2〜6モル%程度にす
るのがよく、6モル%よりも高くなると、吸水性が低下
して望ましくない。架橋アセタール化処理後に未反応の
アルデヒドが残留すると染色物の退色等を招くことがあ
るので、酸化剤により酸化処理してカルボン酸やその塩
にしておくのが望ましい。
【0021】上記した架橋処理は、芯鞘型または海島型
の複合繊維、またはそれからなる糸や繊維製品をアルカ
リ処理して、本発明の空隙を有する複合繊維を製造する
前の段階で行っても、或いはアルカリ処理後に行っても
よいが、空隙部の発現の容易性等を考慮するとアルカリ
処理により空隙部を形成した後に行うのが望ましい。し
たがって、本発明の複合繊維、糸および繊維製品におけ
るEt/VA系共重合体は、上記のような架橋処理を施
していないもの、および架橋処理を施したもの両方を包
含する。
【0022】そして、本発明では上記したEt/VA系
共重合体とポリエステル系重合体(以後「PEs系重合
体」という)から、Et/VA系共重合体を鞘成分と
し、PEs系重合体を芯成分とする芯鞘型複合繊維、ま
たはEt/VA系共重合体を海成分とし、PEs系重合
体を島成分とする海島型複合繊維を形成し、或いはそれ
らの複合繊維の少なくとも一方を構成成分とする糸また
は繊維製品を形成した後、アルカリ処理によって複合繊
維中のPEs系重合体の芯成分または島成分の一部、す
なわち表面部分を分解除去して、Et/VA系共重合体
部とPEs系重合体部との間に空隙を有する空孔複合繊
維、或いは該繊維からなる糸または繊維製品を製造す
る。
【0023】本発明では、鞘成分または海成分としてE
t/VA系共重合体を使用し、且つ芯成分または島成分
を構成する重合体として多数の重合体のうちから特にP
Es系重合体を選んで使用したことによって、空孔複合
繊維の原料繊維である複合繊維の形成が極めて容易に行
えるとともに、上記したように、比較的低濃度および低
温のアルカリ液によって、Et/VA系共重合体を分解
せずにPEs系重合体の芯成分または島成分の一部を選
択的に分解除去することができる。しかも、アルカリ分
解により生じたPEs系重合体の低重合物は、Et/V
A系共重合体を容易に通過するので、形成される空孔複
合繊維中に残留することがない。更に、比較的低濃度で
且つ低温のアルカリ液で目的とする空孔複合繊維を得る
ことができるため、得られる繊維の黄変等のトラブルが
生じない。
【0024】複合繊維の芯成分または島成分を構成する
PEs系重合体としては、アルカリによる分解除去が容
易で且つ繊維形成性の良好なものが好ましい。そのよう
なPEs系重合体としては、酸成分としてテレフタル
酸、イソフタル酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン
酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)
エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニ−ル、5−ナ
トリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、
アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸、また
はこれらのエステル類を用い、ジオール成分としてエチ
レングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタ
ンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ネオペンチル
グリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノ−ル、
ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコー
ル等を用いて合成される繊維形成性のポリエステルを挙
げることができ、構成単位の80モル%以上、特に90
モル%以上がエチレンテレフタレート単位からなるポリ
エステルが好ましい。
【0025】上記したPEs系重合体において、ポリエ
チレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の
ポリオキシアルキレングリコールを1重量%以上の割合
で共重合させたPEs系重合体、またはポリオキシアル
キレングリコールと共に5−ナトリウムスルホイソフタ
ル酸を共重合させたPEs系重合体、或いは上記の酸成
分およびジオール成分の他に第3成分として5−ナトリ
ウムスルホイソフタル酸を約2〜20モル%の範囲で共
重合させたPEs系重合体は、アルカリによる分解除去
が容易であり、そのようなPEs系重合体を使用した複
合繊維からは本発明の空孔複合繊維を容易に得ることが
できる。
【0026】原料複合繊維におけるEt/VA系共重合
体とPEs系重合体の複合割合は、体積比率で、Et/
VA系共重合体:PEs系重合体=約10:90〜約7
0:30にするのが望ましい。Et/VA系共重合体の
割合が10%よりも少なくなると、複合比率がアンバラ
ンスになり紡糸性が不良になり易く、一方Et/VA系
共重合体の割合が70%を超えると、得られる空孔複合
繊維における空隙率が低くなって、繊維の柔軟性、軽量
性、嵩高性、断熱性等が不足したものになり易い。ま
た、複合繊維の繊維繊度は、柔軟性、軽量性、ふくらみ
感等を有する繊維を得るために、5デニール以下、特に
約0.2〜3デニールにするのがよい。そして、複合繊
維は、芯鞘型または海島型の複合繊維を製造する際に通
常採用されている溶融複合紡糸、溶融複合紡糸延伸等の
方法により製造することができる。
【0027】アルカリ処理する前の芯鞘型または海島型
複合繊維における各成分の複合状態は、PEs系重合体
が芯成分または島成分を構成し、Et/VA系共重合体
が鞘成分または海成分を構成する形状であればどのよう
なものでもよい。アルカリ処理前の芯鞘型複合繊維およ
び海島型複合繊維の代表例をその横断面図により示す
と、図1〜図4のようなものを挙げることができる。図
1〜図2は、芯鞘型複合繊維の横断面を示したものであ
り、図3〜図4は海島型複合繊維の横断面を示したもの
である。
【0028】図1の芯鞘型複合繊維では、PEs系重合
体の芯成分1がEt/VA系共重合体の鞘成分2に包囲
されてその中心にあり、または図2の芯鞘型複合繊維で
は、PEs系重合体の芯成分1がEt/VA系共重合体
の鞘成分2中に偏芯して存在している。図2における偏
芯の度合いは、アルカリ処理後のEt/VA系共重合体
繊維中に空隙部が保たれる範囲で適宜選択することがで
きる。また、繊維横断面における芯成分1と鞘成分2と
の面積割合は、上記したように鞘成分2:芯成分1=約
10:90〜70:30の範囲から適宜選択するのが好
ましい。図1および図2では、芯成分1および鞘成分2
とも円形断面となっているが、円形に限定されず、方
形、楕円形、星型等々の任意の形状にすることができ、
例えば芯成分1を方形にして鞘成分2を円形にしたり、
芯成分1を円形にし鞘成分2を多角形等の異形にするこ
ともできる。
【0029】また、図3の海島型複合繊維では、ほぼ同
じ形状と寸法を有する複数のPEs系重合体の島成分3
が、Et/VA系共重合体の海成分4中に均一に分散し
ており、図4の海島型複合繊維では、形状および寸法の
異なった複数のPEs系重合体の島成分3が、Et/V
A系共重合体の海成分4中に不均一に分散している。こ
の海島型複合繊維においても、繊維横断面における全て
の島成分3の合計面積と海成分4の面積との割合を、上
記した海成分4:島成分3=約10:90〜70:30
の範囲から適宜選択するのが好ましい。海島型複合繊維
でも、島成分の数、形状、分布状態、海成分の輪郭(外
形)等を各々の状況に応じて適宜変えることができる。
【0030】そして、上記したように芯鞘型または海島
型複合繊維の断面形状(外形)はどのようなものであっ
てもよく、図1〜図4に示した円形形状の他に種々の異
形形状とすることができる。そして、異形断面の場合
は、例えば偏平形、楕円形、三角形〜八角形等の角形、
T字形、3〜8葉形等の多葉形等の任意の形状とするこ
とができる。更に、上記の複合繊維は、繊維形成性重合
体において通常使用されている蛍光増白剤、安定剤、難
燃剤、着色剤等の任意の添加剤を必要に応じて含有する
ことができる。
【0031】上記した芯鞘型複合繊維または海島型複合
繊維、或いはそれらの少なくとも一方を構成成分とする
糸、または布帛等の繊維製品をアルカリ処理してPEs
系重合体成分の一部を分解除去して、本発明の空孔を有
する複合繊維、糸または繊維製品を製造する。アルカリ
処理は、Et/VA系共重合体部とPEs系重合体部と
の間の空隙の割合(空隙率)が、下記の式(I)および式
(II)
【数5】 20≦100−{B/(T−A)}×100<100 (I)
【数6】 T−A=B+C (II) 上記式(I)および式(II)において、 T:空隙をも含めた複合繊維の横断面積 A:複合繊維の横断面積に占めるエチレン−ビニルアル
コール系共重合体部の面積 B:複合繊維の横断面積に占めるポリエステル系重合体
部の面積 C:複合繊維の横断面積に占める空隙の面積。 を満足するように、アルカリ液のアルカリ濃度や温度、
処理時間等を調節して行うことが必要である。
【0032】アルカリ処理を行うに当たっては、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化
物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカ
リ土類金属の水酸化物等のアルカリ水溶液を使用するこ
とができ、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのア
ルカリ水溶液が望ましい。
【0033】アルカリ水溶液中のアルカリ濃度は、複合
繊維の繊度、複合繊維における芯成分または島成分の割
合やそれを構成するPEs系重合体の種類、Et/VA
系共重合体におけるエチレン単位とビニルアルコール単
位の比率、空孔複合繊維中に残留させるPEs系重合体
の割合(すなわち空隙率)等の種々の要件により異なり
得るが、水酸化ナトリウム水溶液を使用する場合は、水
酸化ナトリウム濃度が約5〜50g/リットルの水溶液
を使用するのがよい。
【0034】そして、上記したアルカリ水溶液中に、第
4級アンモニウム塩を更に共存させると、アルカリによ
るPEs系重合体成分の一部分解除去を促進し、処理時
間を短縮したり、アルカリ水溶液中のアルカリ濃度を低
下することができ望ましい。第4級アンモニウム塩とし
ては、一般式:
【0035】
【化1】[N(R1)(R2)(R3)(R4)]+-
【0036】(式中、R1、R2、R3およびR4は互いに
同じかまたは異なってもよいアルキル基、フェニル基、
アルキル基置換フェニル基またはフェニル基置換アルキ
ル基を示し、Xはハロゲン元素を示す)で表される第4
級アンモニウム塩がよい。第4級アンモニウムの好まし
い具体例としては、ベンジルジメチルドデシルアンモニ
ウムクロライド、ベンジルジメチルドデシルブロマイ
ド、セチルトリイメチルアンモニウムクロライド、セチ
ルトリメチルアンモニウムクロライド等を挙げることが
できる。第4級アンモニウム塩は、通常、約0.2〜2
g/リットルの割合で使用するのが望ましい。
【0037】アルカリ処理によるPEs系重合体成分の
一部分解除去は、糸または布帛等の繊維製品にする前の
複合繊維自体に対して直接行っても、また複合繊維から
糸、布帛等の繊維製品を形成した後に、該糸や繊維製品
に対して行ってもよい。アルカリ処理のし易さ、得られ
るEt/VA系共重合体中空繊維または製品の取り扱い
性等の点から、複合繊維から糸または布帛等の繊維製品
を形成した後にアルカリ処理を行うのが望ましい。
【0038】アルカリ処理時の温度および処理時間は、
複合繊維の繊度、複合繊維における芯成分または島成分
の割合やそれを構成するPEs系重合体の種類、目的と
する空孔複合繊維における空隙率(すなわちPEs系重
合体の分解除去割合)、Et/VA系共重合体における
エチレン単位とビニルアルコール単位の比率、架橋処理
の有無およびその程度、前記第4級アンモニウム塩の使
用の有無およびその量、複合繊維から形成された布帛の
内容(厚さや織方等)等の種々の要件により適宜調節で
きる。例えば、架橋処理が行われておらずかつ第4級ア
ンモニウム塩が使用されていない場合にはアルカリ水溶
液の温度を60〜90℃にして約1〜5時間、架橋処理
が行われておりかつ第4級アンモニウム塩が使用されて
いる場合にはアルカリ水溶液の温度を80〜100℃に
して約0.5〜2時間、架橋処理が行われているが第4
級アンモニウム塩が添加されていない場合にはアルカリ
水溶液の温度を80〜100℃にして約1〜4時間行う
のがよい。アルカリ処理の方法としては、アルカリ水溶
液中に複合繊維、糸または繊維製品を浸漬する方法、或
いはそれらにアルカリ水溶液をパッド、スプレー、シャ
ワー等の方式で施す方法等を挙げることができる。
【0039】そして、上記のアルカリ処理によって、複
合繊維中のPEs系重合体芯成分または島成分の一部が
その表面部分から分解除去されて、Et/VA系共重合
体の鞘成分または海成分とPEs系重合体の芯成分また
は島成分との間に、上記の式(I)および(II)を満足する
繊維軸方向に連通した空隙部を介して、PEs系重合体
の減量された芯成分または島成分が存在する、Et/V
A系共重合体を主体とする本発明の空孔複合繊維が形成
される。
【0040】そして、本発明では、Et/VA系共重合
体の鞘成分または海成分とPEs系重合体の鞘成分また
は島成分との間の空隙の割合(空隙率)を上記した式
(I)および式(II)を満足する範囲内とすることによっ
て、耐へたり性、嵩高性、断熱性およびふくらみ感を兼
ね備えた空孔複合繊維が得られる。ここで、上記式
(I):100−{B/(T−A)}×100で表される
空隙率が20未満であると、断熱性、軽量性、柔軟性、
ふくらみ感等の欠けたものとなり、一方該空隙率が10
0になる、すなわちPEs系重合体の芯成分または島成
分が完全に分解除去されて繊維中に残留しなくなると、
繊維の弾性率が低くなり耐へたり性が低下する。式(I)
で表される空隙率は、約30〜80の範囲であるのが特
に好ましい。また、その際に、A:(B+C)=約1
0:90〜70:30[A、BおよびCは上記式(I)お
よび式(II)におけるA、BおよびCと同じ]にするのが
望ましい。
【0041】本発明の空孔複合繊維の横断面形状の具体
例を図示すると、例えば先の図1〜図4に示した複合繊
維から得られた図5〜図8の空孔複合繊維を挙げること
ができる。図1の芯鞘型複合繊維からは図5に示す、E
t/VA系共重合体の鞘成分2の中心に環状の空隙5を
介してPEs系重合体の減量された芯成分6が存在する
空孔複合繊維が形成される。また、図2の芯鞘型複合繊
維からは図6に示す、Et/VA系共重合体の鞘成分2
中に環状の空隙5を介してPEs系重合体の減量された
芯成分6が偏芯して存在する空孔複合繊維が得られる。
更に、図3の海島型複合繊維からは、Et/VA系共重
合体の海成分4中にほぼ同じ形状と寸法の複数の環状の
空隙5と減量されたPEs系重合体の島成分7の各々が
ほぼ均一に分散している空孔複合繊維が形成され、図4
の海島型複合繊維からは、形状および寸法の異なった複
数の環状の空隙5とPEs系重合体の減量された島成分
7の各々がEt/VA系共重合体の海成分4中に不均一
に分散した空孔複合繊維が形成される。
【0042】本発明の空孔複合繊維は勿論図5〜図8に
示すものに限定されず、減量された芯成分または島成分
の数、位置、形状、繊維の外側輪郭等は、上記の芯鞘型
複合繊維における芯成分の位置や形状、海島型複合繊維
における島成分の数、位置、形状、複合繊維の外側輪郭
等を適宜変えることによって、任意のものとすることが
できる。
【0043】ここで、上記本発明でいう繊維および糸と
は、モノフィラメント等の長繊維、ステープル等の短繊
維、フィラメント糸、紡績糸、本発明の繊維と天然繊
維、半合成繊維、他の合成繊維との混繊糸や混紡糸、合
撚糸、交絡糸や捲縮糸等のその他の加工糸等のいずれで
あってもよい。更に本発明の繊維製品は、それらの繊維
や糸をその一部または全部として形成された編織物、不
織布、最終的な衣類、タオル等の繊維製品等のいずれで
もよい。本発明の空孔複合繊維は、その吸水性、保温
性、軽量性、柔軟性、ふくらみ感のある風合と共にPE
s系重合体の高弾性率による耐へたり性という特性によ
り、特にタフタ、デシン、ジョーゼット、地理面、加工
糸、ツイルなどの織物、またはインターロック、トリコ
ットなどの編物にするのに適している。
【0044】
【実施例】以下に、実施例等により本発明を具体的に説
明するが、本発明はこれによって何ら限定されるもので
はない。以下の実施例および比較例において、[η](固
有粘度)はテトラクロロエタン:フェノール=1:1の
混合溶媒を用いて30℃で測定した固有粘度(dl/
g)を示す。また、減量率、空隙率、保温率および吸水
率は次の方法により測定した。
【0045】減量率の測定 下記の式により減量率を求めた。 減量率(%)={(N1−N2)/N1}×100 N1:アルカリ減量前の絶乾重量(g) N2:アルカリ減量後の絶乾重量(g) 絶乾重量の測定: 試料を1mmHgの減圧下に、温度50℃で8時間、真
空乾燥した後の重量(g)を測定した。
【0046】空隙率の測定 アルカリ処理後の布帛を切断して、その切断面をSEM
写真撮影し、各繊維横断面における上記したT、A、B
およびCを該写真から算出して、 空隙率(%)=100−{B/(T−A)}×100
[上記式(I)] から各繊維の空隙率を求め、切断面における複数本の繊
維の平均値を採った。
【0047】保温率の測定 ASTM D−1518−57Tに準じて作成された保
温性試験機によって測定した値(%)である。
【0048】吸水率の測定 布帛を乾燥して得られる試料を水中に30分以上浸漬し
た後、家庭用電気洗濯機(日立製作所製PF−250
0)の脱水機で5分間脱水して、下記の式により吸水率
(%)を求めた。 吸水率(%)={(W−D)/D}×100 W:5分間脱水後の試料の重量(g) D:乾燥試料の重量(g)
【0049】《実施例 1》エチレン含量が44モル%
であり且つ酢酸ビニル単位のケン化度が99%であるE
t/VA系共重合体(数平均重合度約350)と、5−
ナトリウムスルホイソフタル酸を5.0モル%共重合し
た[η]=0.53のポリエチレンテレフタレート(sPE
T)を用いて、下記の表1に示したように複合比率(体
積比率)を変化させて、紡糸温度270℃、紡糸速度1
000m/分で紡糸した後、この未延伸糸を75℃の熱
ローラおよび120℃の熱プレートに接触させて延伸し
て、断面形状が真円形で且つEt/VA共重合体の鞘成
分の中心にポリエチレンテレフタレートの芯成分が存在
する図1に示した芯鞘型複合繊維からなる75デニール
/24フィラメント(以後「75dr/24f」とい
う)の紡糸延伸複合糸を各々製造した。
【0050】各複合糸を経糸および緯糸として用いて平
織物を各々作成した。その生機密度は経糸96本/寸、
緯糸87本/寸であった。上記で作成した各生機平織物
を炭酸ナトリウムを2g/リットルの割合で含む水溶液
中に80℃で30分間浸漬して糊抜きした後、150℃
で約40秒間プレセットを行った。次に、水酸化ナトリ
ウムを40g/リットルの割合で含むアルカリ水溶液中
に浴比50:1、温度90℃で表1に示した時間浸漬し
てアルカリ処理を行った。その後、酢酸を2cc/リッ
トルの割合で含む水溶液中に浸漬して中和した後、充分
に水洗して、表1に示す減量率および空隙率を有する平
織物を得た。
【0051】上記の平織物の保温率および吸水率を上記
方法により測定すると共に、その風合を調べた。また、
Et/VA系共重合体とポリエチレンテレフタレートの
複合比率が50:50の複合繊維から得られたアルカリ
処理を行わない平織物(表1のf)についても、参考の
ために、その保温率および吸水率を測定すると共にその
風合を調べた。上記の結果を下記の表1に示す。
【0052】
【表1】 複合比率 紡糸性 アルカリ 減量率 空隙率 保温率 吸水率 風 合 Et/VA:sPET 処理時間 (%) (%) (%) (%) (体積比率) (hr) a 50:50 良好 1.7 25 50 40 68 ○2) b 50:50 良好 0.5 10 20 34 68 ○ c 50:50 良好 0.1 1 2 8 29 ×3) d 5:95 紡糸不能 − − − − − − e 95: 5 紡糸不能 − − − − − − f 50:50 良好 処理せず 01) 0 4 27 × 1) アルカリ処理をしてないため平織物を構成する複合
繊維に空隙なし 2) ふくらみが有る 3) ふくらみが無い
【0053】上記表1の結果から、空隙率が20〜50
%である本発明の空孔複合繊維からなる本発明の織物a
およびbは、保温性、吸水性が極めて良好で、ソフトで
ふくらみのある優れた風合を有することが、それに対し
て空隙率が2%しかない空孔複合繊維から得られた織物
cは保温性、吸水性が劣り、しかもふくらみ感がないこ
とがわかる。また、表1の結果から、複合繊維における
Et/VA系共重合体とPEs系重合体との複合比率を
適性な範囲にすることによって、本発明の空孔複合繊維
の原料であるアルカリ処理前の複合繊維を良好な紡糸性
を保ちながら製造できることがわかる。
【0054】《実施例 2》実施例1で使用したのと同
じEt/VA系共重合体(数平均重合度約350)と、
5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合したポリエ
チレンテレフタレート(sPET)を、1:1の複合比率
(体積比率)で、紡糸温度270℃、紡糸速度1000
m/分で紡糸した後、この未延伸糸を75℃の熱ローラ
および120℃の熱プレートに接触させて延伸して、断
面形状が真円形で且つEt/VA共重合体の鞘成分の中
心にポリエチレンテレフタレートの芯成分が存在する図
3に示した海島型複合繊維からなる75dr/24fの
紡糸延伸複合糸を製造した。
【0055】この複合糸を経糸および緯糸として用いて
タフタ織物を作成した。その生機密度は経糸95本/
寸、緯糸87本/寸であった。上記で作成した生機タフ
タ織物を実施例1と同じ条件下で糊抜きおよびプレセッ
トした。次に、水酸化ナトリウムを20g/リットルお
よびベンジルジメチルドデシルアンモニウムクロライド
を1g/リットルの割合で含むアルカリ水溶液中に浴比
50:1、温度90℃で下記の表2に示した時間アルカ
リ処理を行った。その後、酢酸を2cc/リットルの割
合で含む水溶液中に浸漬して中和した後、充分に水洗し
て、表2に示す減量率および空隙率を有するタフタ織物
を得た。
【0056】上記のタフタ織物の保温率および吸水率を
上記方法により測定すると共に、その風合を調べた。ま
た、アルカリ処理を行わないタフタ織物についても参考
のために、その保温率および吸水率を測定すると共にそ
の風合を調べた。上記の結果を下記の表2に示す。
【0057】
【表2】 アルカリ 減量率 空隙率 保温率 吸水率 風 合 処理時間 (%) (%) (%) (%) (分) a 120 30 60 26 70 ○2) b 60 15 30 23 64 ◎3) c 5 1 2 7 21 ×4) d 01) 0 0 5 20 ×4) 1) 未アルカリ処理のためタフタ織物を構成する複合繊
維に空隙なし 2) ふくらみが有り、ソフトな触感 3) ふくらみが有り、非常にソフトな触感 4) ふくらみが無い
【0058】また、上記のタフタ織物a〜dの切断面の
SEM断面写真撮影を行ったところ、aおよびbのタフ
タ織物では、ポリエチレンテレフタレートの島成分の一
部が残留し、その周囲を環状の空隙が包囲している図7
に示す空孔複合繊維であった。またcのタフタ織物で
は、空隙が極めてすくなく、dのタフタ織物ではPEs
系重合体の島成分の周囲の空隙がなかった。
【0059】そして、上記表2の結果から、空隙率が上
記した20%以上である本発明のEt/VA系共重合体
空孔複合繊維からなるタフタ織物aおよびbは、保温
性、吸水性が極めて良好で、ソフトでふくらみのある優
れた風合を有するのに対して、空隙率が極めて少ないか
または空隙のない複合繊維からなる表2のタフタ織物c
およびdは、保温性、吸水性、ふくらみ感のすべてが劣
ることがわかる。
【0060】
【発明の効果】本発明の空孔を有するEt/VA系共重
合体を主体とする複合繊維、それから製造された糸およ
び繊維製品は、ぬめり感や冷たい感触がなく、吸水性お
よび保温性に優れ、しかも軽量で柔軟性があり、ふくら
みのある良好な風合を有し、その上複合繊維中に残留し
ているPEs系重合体の高弾性率により耐へたり性を有
している。本発明の方法により、繊維繊度が小さく、且
つ繊維横断面に占める空孔の割合が高いEt/VA系共
重合体系の空孔複合繊維を、ポリマー設計や繊維化工程
およびアルカリ処理工程におけるトラブルや望ましくな
い着色等を生ずることなく、簡単に且つ円滑に製造する
ことができる。本発明の製造方法による場合は、芯鞘型
または海島型複合繊維におけるPES系重合体からなる
芯成分または島成分を、比較的低濃度のアルカリ水溶液
を使用して、部分的に分解除去することができる。特
に、アルカリ水溶液中に第4級アンモニウム塩を共存さ
せることによって上記アルカリ処理を促進することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空孔複合繊維を製造するのに使用する
芯鞘型複合繊維の繊維横断面の一例を示した図である。
【図2】本発明の空孔複合繊維を製造するのに使用する
芯鞘型複合繊維の繊維横断面の他の例を示した図であ
る。
【図3】本発明の空孔複合繊維を製造するのに使用する
海島型複合繊維の繊維横断面の一例を示した図である。
【図4】本発明の空孔複合繊維を製造するのに使用する
海島型複合繊維の繊維横断面の他の例を示した図であ
る。
【図5】図1の芯鞘型複合繊維から形成された本発明の
空孔複合繊維の繊維横断面を示した図である。
【図6】図2の芯鞘型複合繊維から形成された本発明の
空孔複合繊維の繊維横断面を示した図である。
【図7】図3の海島型複合繊維から形成された本発明の
空孔複合繊維の繊維横断面を示した図である。
【図8】図4の海島型複合繊維から形成された本発明の
空孔複合繊維の繊維横断面を示した図である。
【符号の説明】
1 芯成分 2 鞘成分 3 島成分 4 海成分 5 空隙 6 減量された芯成分 7 減量された島成分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D03D 15/00 D03D 15/00 A (72)発明者 田中 和彦 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社ク ラレ内 (72)発明者 河本 正夫 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社ク ラレ内 (56)参考文献 特開 平3−113015(JP,A) 特開 平3−124857(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 8/14 D01D 5/30,5/34 Fターム

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステル系重合体部をエチレン−ビ
    ニルアルコール系共重合体部が完全に包囲した横断面形
    状を有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体とポ
    リエステル系重合体からなる複合繊維であって、エチレ
    ン−ビニルアルコール系共重合体部とポリエステル系重
    合体部との間に下記の式(I)および式(II)を満足する空
    隙が存在することを特徴とする空孔を有する複合繊維; 【数1】 20≦100−{B/(T−A)}×100<100 (I) 【数2】 T−A=B+C (II) 上記式(I)および式(II)において、 T:空隙をも含めた複合繊維の横断面積 A:複合繊維の横断面積に占めるエチレン−ビニルアル
    コール系共重合体部の面積 B:複合繊維の横断面積に占めるポリエステル系重合体
    部の面積 C:複合繊維の横断面積に占める空隙の面積。
  2. 【請求項2】 芯鞘型または海島型の複合繊維である請
    求項1の複合繊維。
  3. 【請求項3】 請求項1または2の複合繊維を構成成分
    とする糸。
  4. 【請求項4】 請求項1または2の複合繊維を構成成分
    とする繊維製品。
  5. 【請求項5】 エチレン−ビニルアルコール系共重合体
    を鞘成分としポリエステル系重合体を芯成分とする芯鞘
    型複合繊維およびエチレン−ビニルアルコール系共重合
    体を海成分としポリエステル系重合体を島成分とする海
    島型複合繊維の少なくとも一方を構成成分とする糸をア
    ルカリ減量処理して複合繊維中のポリエステル系重合体
    の一部を除去することを特徴とする請求項3の糸の製造
    方法。
  6. 【請求項6】 エチレン−ビニルアルコール系共重合体
    を鞘成分としポリエステル系重合体を芯成分とする芯鞘
    型複合繊維およびエチレン−ビニルアルコール系共重合
    体を海成分としポリエステル系重合体を島成分とする海
    島型複合繊維の少なくとも一方を構成成分とする繊維製
    品をアルカリ減量処理して複合繊維中のポリエステル系
    重合体の一部を除去することを特徴とする請求項4の繊
    維製品の製造方法。
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