JPH0723580B2 - フィブリル化布帛およびその製造法 - Google Patents

フィブリル化布帛およびその製造法

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JPH0723580B2
JPH0723580B2 JP1253896A JP25389689A JPH0723580B2 JP H0723580 B2 JPH0723580 B2 JP H0723580B2 JP 1253896 A JP1253896 A JP 1253896A JP 25389689 A JP25389689 A JP 25389689A JP H0723580 B2 JPH0723580 B2 JP H0723580B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は合成繊維特有の欠点であるぬめり感のある風合
を脱した天然繊維或いはセルローズ系再生繊維等に似た
プリプリ感があり、かつソフト感を有する風合及び表面
外観を賦与したフイブリル化布帛物の製造法に関するも
のである。
(従来の技術) 従来、合成繊維、例えばポリエステル、ポリアミドのフ
イラメントからなる布帛物は、その単糸繊度が太いこと
や横断面形状が単純であるためにシルク、綿、麻等の天
然繊維に比較して風合、光沢が単純であり、プラスチツ
ク的なために冷たく感じ品位の低いものであつた。最近
これらの欠点を改良するために、合成繊維のフイブリル
化技術の進歩によりフイブリル化繊維で構成された布帛
も可能となつた。
そのひとつの技術として特公昭53−35633号公報、特公
昭56−16231号公報、特公昭56−21846号公報等にはポリ
アミドとポリエステルからなる複合型ポリエステルフイ
ラメントをフイブリル化することが開示されている。し
かし、ここで繊維が極細繊維にフイブリル化し風合がソ
フトになる効果については見い出されるが、該ポリアミ
ドからなるフイブリル化布帛の場合にはポリアミドの特
有の欠点であるぬめり感のあるプラスチツクライクな風
合となり、また該極細繊度なるが故に柔軟に過ぎ、腰、
張りのない、風合となり、到底、天然繊維或いはセルロ
ーズ系再生繊維様の風合とは言い難い。
それを回避する手段として分子中に水酸基をもつエチレ
ン・ビニルアルコールコポリマーを一成分とした極細繊
度使いを狙つた複合繊維を使用することが考えられる。
このような水酸基をもつ複合成分からなる繊維は水に対
する膨潤性が高く、布帛にした場合該布帛の加工工程に
於いて、布帛の膨潤のために織ウエーブが高くなり、フ
イブリル化によつてその単糸がいかに極細化されようと
も、前述のような腰のない風合にはなり難く、天然繊維
或いはセルローズ系再生繊維に似たプリプリ感のある風
合で且つ極細繊度に基く繊細なソフト感を有し、ぬめり
感のない風合及び上品な光沢の表面外観を与えることが
期待される。
しかしながら該複合繊維を構成するエチレン・ビニルア
ルコールコポリマー部分の繊維は融点や軟化点が低いた
め、特に高温熱水やスチーム等の耐熱安定性に劣る欠点
を有していた。このため高温高圧染色や縫製あるいは使
用中のスチームアイロン等により繊維表面に露出するエ
チレン・ビニルアルコールコポリマー系成分のフイブリ
ル化繊維が部分的に軟化や微膠着を生起しフイブリル極
細化した繊維が接着され太デニール化され風合を硬化さ
せたり、外観を悪化させたりして本発明の狙いとする天
然繊維或いは再生セルローズ系繊維様の風合及び外観等
の目標には到底達成されていないのが現状である。
エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物とポリエステ
ル、ポリプロピレン、ポリアミドなど疎水性熱可塑性樹
脂との複合繊維は特公昭56−5846号、特公昭55−1372号
等で開示されている。前述の如くエチレン−酢酸ビニル
共重合体けん化物単独では耐熱水性が不充分であり、伸
度も小さくて実用には不満足であるため複合繊維とする
ことで改良されたものである。しかしながらこの複合繊
維は、染色温度は90℃以下と低くしなければならず、こ
れを越えるとエチレン・ビニルアルコールコポリマー成
分が軟化融着を生じ、所望の製品が得らない。一方複合
した他成分の方は90℃以下では染着が充分できず、結局
複合繊維として2成分共に染着しうる条件が見い出すこ
とができず染色適性を有しない繊維となつている。また
実用面での縫製時のアイロンや使用時のスチームアイロ
ンで著しい外観変化を生ずる問題が残存する。このよう
な問題点により、この種繊維は工業化に及ばなかつたと
考えられる。
(発明が解決しようとする課題) 本発明はかかる問題点を解決しエチレン酢酸ビニル共重
合体けん化ポリマー(A)成分による膠着あるいは接着
を生ずることのないような耐熱安定性の優れたフイブリ
ル化布帛およびその製造法を提供せんとするものであ
り、それによつて布帛が天然繊維或いはセルローズ系再
生繊維に似たプリプリ感を有し、しかも極細繊維に基く
繊細なソフト感を有し、かつぬめり感のない風合及び上
品な光沢の表面外観を与えるエチレン・ビニルアルコー
ルコポリマー系フイブリル化布帛物を得んとするもので
ある。
また更に本発明は、上記A成分による膠着あるいは接着
を防止すると共に、アセタール化時における着色、アセ
タール化後における染着物の退色、染色時の収縮、劣化
等を解決する処理法を提供せんとするものである。
(課題を解決するための手段) 即ち本発明は、 エチレン含有量30〜70モル%のエチレン−酢酸ビニル共
重合体のケン化ポリマー(A成分)とポリエステル系ポ
リマー(B成分)からなる複合繊維で構成され、A成分
中のアルコール性水酸基がアルコール性水酸基の酸素原
子を介して式[I]で表される基の少なくとも1種によ
って変性され、かつA成分とB成分とが分割されている
ことを特徴とするフィブリル化布帛であり、 >CH−CnH2n−CH< ……[I] (但し、nは0〜10の整数である。) 前記複合繊維を、該複合繊維の段階または該複合繊維を
含む布帛の段階で、次の工程(a)および(b)を、
(a)−(b)または(b)−(a)の順序で施すこと
を特徴とするフィブリル化布帛の製造方法。
(a):複合繊維をA成分繊維とB成分繊維とに分割剥
離する工程 (b):複合繊維のA成分を下記一般式[Ia]で示され
る化合物でアセタール化する工程 OCH−CnH2n−CHO ……[Ia] (但し、nは0〜10の整数である。) にある。
本発明の複合繊維とは上記ポリマー成分とBポリマー成
分とが単一複合繊維内で該Aポリマー成分が該Bポリマ
ー成分を完全に包囲しない形状で単一フイラメント内の
長さ方向に沿つて均一に接合されている状態の繊維、例
えば第1図〜第3図を示す如き複合繊維、あるいは紡糸
時にAポリマ成分とBポリマー成分を混練させるような
静止型混練器を用いて一定条件で不均一混合し、Bポリ
マー成分が部分的に繊維表面に露出している状態の繊
維、例えば第4図に示す如き複合繊維等を指す。
このような複合繊維は高速紡糸で得られる紡糸原糸であ
つてもよく、また通常の紡糸からの延伸糸であつてもよ
い。
本発明においては、このような複合繊維を、該複合繊維
の段階で、あるいは該複合繊維を布帛にした布帛の段階
で、該複合繊維の分割剥離工程とアセタール化工程とを
行なうものである。
複合繊維を分割剥離せしめてフイブリル化させる手段と
しては、上記複合繊維あるいは該複合繊維からなる布帛
をアルカリ水溶液により処理し、Bポリマーポリエステ
ル成分側を加水分解して減量せしめ、AポリマーとBポ
リマーの境界面を剥離する方法がある。その減量方法及
び減量条件等は特に限定されるものではない。該方法に
ついては浸漬法及びパツド法等が挙げられるが、アルカ
リ減量率の均一性の点より浸漬法が好ましい。減量条件
については処理温度に合せて処理濃度、時間等を適宜、
選定されるが、処理温度95℃の場合にはA成分ポリマー
のアルカリ処理時の熱水劣化及び減量速度の操業上のコ
ントロール性等の点よりアルカリ物質としての水酸化ナ
トリウムの使用では、該処理濃度の範囲は10g/〜50g/
が好ましい。該処理濃度が50g/を越えると減量速度
が大きくなり過ぎ、再現性よく減量することがむつかし
くなる。またA成分ポリマーの該アルカリ処理時の劣化
融着のために該複合繊維を分割剥離し難くくなるので好
ましくない。また該処理濃度が10g/より少くなると、
減量速度が遅くなり過ぎるために該複合繊維を分割剥離
し難くくなるので好ましくない。
また該複合繊維がマルチフイラメントの場合には該複合
フイラメントを仮撚加工し、その仮撚加工による機械的
な糸への捩り効果によつてAポリマーとBポリマーの境
界面を剥離し分割混合とする方法がある。その仮撚加工
方法としては該複合繊維の紡糸直後のマルチフイラメン
ト原糸の単独もしくは、他のポリエステルフイラメン
ト、ポリアミドフイラメント等を混繊して延伸仮撚して
構造加工糸とすることも可能であり、通常は延伸糸の仮
撚加工が挙げられる。このような仮撚温度条件としては
A成分ポリマーの融点以下で仮撚加工することが好まし
い。A成分ポリマーの融点を越えた温度で仮撚加工を行
うとA成分ポリマーが融着し該複合フイラメントがフイ
ブリル化し難くくなるので好ましくない。
またその他の分割剥離せしめてフイブリル化させる手段
としては、該繊維あるいは布帛を熱水中で衝突および撹
拌作用を与えてA成分繊維とB成分繊維とに分離剥離さ
せることも挙げられる。この場合A成分ポリマーないし
B成分ポリマーのいずれか一方を過度に膨潤させるよう
な物質を適宜添加してA成分ポリマーとB成分ポリマー
との膨潤差を拡大せしめて該成分ポリマー間の境界線の
歪を発現させて分割剥離を促進せしめることも可能であ
る。
本発明で言う複合繊維を含む布帛とは該複合繊維を緯糸
あるいは経糸の一方に使用するか、または経糸及び緯糸
に使用する織物または編物・不織布等を意味する。本発
明は本発明の要件を満足した繊維を用いるかぎり、長繊
維のみならず短繊維で同様の効果が期待できることは言
うまでもない。
本発明に言うフイブリル化とはA成分ポリマーとB成分
ポリマーから成る複合フイラメントがA成分ポリマーか
らなる繊維とB成分ポリマーから繊維とに70%以上分割
されることを意味する。
本発明に用いられる該複合繊維で、そのB成分であるポ
リエステルとは、主成分がポリエチレンテレフタレート
であり、必要により他成分が約15モル%以下の共重合さ
れたポリエステル等でも良い。他成分としてはジエチレ
ングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサ
ンジメタノール、イソフタル酸、スルホイソフタル酸、
ポリアルキレングリコール等の共重合成分が挙げられ、
更には添加物(例えば顔料、カーボン、シリカ等)、制
電性向上剤(例えばポリエチレングリコール、末端に を有するポリアルキレングリコール、ドデシルベンゼン
スルホン酸等)、難燃剤あるいは染色性改良剤を含んで
いてもよい。
また本発明において用いられるA成分ポリマーとは、エ
チレン含有量30〜70モル%のエチレン酢酸ビニル共重合
体のけん化物である。該ポリマーにおいてエチレンの含
有量が70モル%を越えて高くなるとビニルアルコール成
分含量が低くなり、水酸基の減少のために親水性などの
特性が低下することとなり、また逆にエチレン含有量が
30モル%より低くなつてビニルアルコール成分含量が多
くなり過ぎると溶融成型性が低下すると共に、熱溶融性
ポリマーと複合繊維化する際曳糸性が不良となり、単糸
切れ、断糸が多くなり好ましくない。従つてエチレン酢
酸ビニル共重合体けん化ポリマー中のエチレン含有量は
30〜70モル%のものが適している。
本発明においては、このようなA、B成分からなる複合
繊維から、前述した分割剥離手段によつてA成分繊維と
B成分繊維とに剥離してフイブリル化するものである
が、このフイブリル化の前あるいは後に該複合フイラメ
ントからなる布帛に後述するアセタール化を行なうもの
である。この場合ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド
等のモノアルデヒドより好ましいのが前記[Ia]式で示
されるジアルデヒド類例えばグリオキザール、マロンア
ルデヒド、グルタールアルデヒド等のジアルデヒド類に
よりアセタール化を行うもので、これによつて90℃を越
える高温染色、例えばポリエステルで採用されている13
0℃下の高温染色の場合においても驚くべきことに軟化
融着を完全に防止しこのフイブリル繊維をそのままに存
在させることが可能となり、また付随的に架橋アセター
ル化されることによつて水膨潤性が高まり、Aポリマー
部分の膨潤効果を最大限に発揮せしめ、布帛の織ウエー
ブを大きくさせ、自然的なふくらみを織物に賦与し、合
成繊維特有のぬめり感およびプラスチツク感等を脱した
天然調のふくらみを有する風合とすることが可能となつ
たものである。また商品の消費性能上からは、縫製時の
アイロン、使用時のスチームアイロンによつても軟化融
着を防ぐことができ、実用可能な耐熱安定性に優れたエ
チレンビニルアルコールコポリマーのフイブリル化物を
含有する布帛物の製造方法が可能となつたものである。
ところでアセタール化されない従来技術で得られる複合
繊維の場合には前記の130℃以下の高温染色ではAポリ
マー成分が軟化融着し布帛が硬化し商品価値が全くない
ものしか得られないと言う問題点があるのである。
これも解決するためのアセタール化の方法を説明する
と、本発明で対象とする複合繊維、を綿、糸条あるいは
布帛の形態で、強酸濃度(N)を0.05規定〜2規定に
し、15℃〜135℃の温度(T)の範囲にて、基[I]を
与える化合物[Ia]を0.2g/〜500g/の範囲の濃度
(C)であつて、下記式[II]を満足する条件下でアセ
タール化するものである。
OHC−CnH2n−CHO −[Ia] n=0〜10 N≦1.7−0.576×logC−6.3×10-3×T −[II] ただし N:強酸濃度(規定) C:[I]式で示されるジアルデヒド濃度 (g/) T:アセタール化温度(℃) 上記のアセタール化は硫酸、ギ酸、塩酸等の強酸下で行
なわれるが、アセタール化反応の効率上の点からは硫酸
の使用が好ましい。強酸の使用濃度としては0.05規定以
上、2規定以下である。アセタール化反応温度としては
15℃以上、135℃以下がよく、[Ia]で示される化合物
のジアルデド類の濃度としては0.2g/以上、500g/以
下等の限定範囲下で上記式[II]を満足する条件下で行
なわれる。この場合に強酸の使用濃度が0.05規定より小
さいと耐熱安定性の優れた満足な繊維フイブリル化布帛
物とすることが出来ない。また核強酸の使用濃度が2規
定より大きくなると該繊維布帛物が脆化するので好しく
ない。またアセタール化反応温度が15℃より小さい場合
に、たとえ式[II]を満足する条件下で処理を行なつて
も、アセタール化反応速度が非常に遅いので耐熱安定性
の優れた繊維、フイブリル化布帛物とすることが出来な
い。さらにアセタール化反応温度が135℃より大きい場
合で式[II]を満足する条件下での処理を行なつても、
該繊維、該繊維からなる布帛に変色及び脆化等を引き起
すので好ましくない。そしてジアルデヒド濃度が0.2g/
より少い場合に式[II]を満足する条件下で処理を行
なつてもアセタール化度が非常に小さくなるのでポリエ
ステルの加工工程時に受ける乾熱処理及び高温染色等に
耐え得る熱安定性の優れた繊維、フイブリル化布帛物と
することが出来ない。更に式[II]においてジアルデヒ
ド濃度(C)の範囲が0.2g〜500g/で、且つアセター
ル化温度(T)の範囲が15℃〜135℃であり、式[II]
を満足しない場合、例えば強酸濃度(規定)Nが0.05よ
り少くなるとアセタール化反応速度が非常に遅くなり、
耐熱安定性の優れた繊維、フイブリル化布帛物とするこ
とが不可能となり好ましくない。また強酸濃度(規定)
Nが式[II]で示される1.7−0.576×logC−6.3×10-3
×Tより求められた値より大きくなるとアセタール化し
た繊維、該布帛物に脆化及び黄変を来たし好ましくな
い。
上記処理条件と[II]式との関係で、本処理における好
適な範囲を図示したのが第5図で、該図は、[II]式に
おけるジアルデヒド濃度logCを横軸、酸濃度Nを縦軸と
し、アセタール化温度Tをパラメータとしてアセタール
化処理に際しての好適範囲を斜線で示したものである。
本発明は以上で述べた好適な範囲でのアセタール化で、
本発明の対象繊維の耐熱安定性の十分な向上を得たもの
であるが、このアセタール化時に該繊維に着色する傾向
が生ずることがわかつた。したがつて本発明は、この点
をも解決せんとするものであり、その解決手段として、
前記アセタール化条件でアセタール化するに際して、浴
濃度が5g/以上の強酸・強塩基の塩を含有する水溶液
にてアセタール化することによつて上記の不都合を解消
したものである。
ここで用いられる強酸・強塩基の塩の例としては、硫酸
ナトリウム、硫酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリ
ウム等が挙げられるが、好ましくは硫酸ナトリウムが用
いられる。
強酸・強塩基の塩の浴濃度が5g/未満では効果が十分
ではなく5g/以上が必要である。しかし逆に、この浴
濃度が50g/を超えてもアセタール化の反応速度が遅く
なる。したがつてこの浴濃度は5g/〜50g/の範囲で
決められるべきであり、より好ましい範囲は10g/〜30
g/である。
以上のようなアセタール化で耐熱安定性の十分な向上と
着色防止が達成されるが本発明は更に好ましくはアセタ
ール化の後に次の方法が採られる。
即ち、アセタール化後、染色前およびまたは染色後140
℃以上の温度にさらさられる以前に、NaHSO3の溶液また
はその分散混合物により処理するか、または、アセター
ル化後染色前およびまたは染色後140℃以上の温度にさ
らされる以前に、過マンガン酸塩、過酸化水素、酸化
銀、硝酸、次亜塩素酸、過ホウ酸ナトリウム等酸化剤の
水溶液、ガス等により処理するものである。
上記処理の目的について述べると、ジアルデヒトによる
アセタール化は架橋型の反応の他に非架橋型のフリーの
アルデヒトが残存する場合があり、このアルデヒトが染
色物の退色を加熱時に発生したりすることがあるので、
これを防止せんとするためである。即ち、そのために、
NaHSO3により−CnH2nCHO−NaHSO3付加物、例えばRCH(O
H)OSH2NaやR−CH(OH)SO3Naの形に変えてアルデヒト
を封鎖するとか、或いはアルデヒトの酸化によりカルボ
ン酸およびまたはカルボン酸塩とするものである。
さらにまた本発明において、複合繊維のB成分であるポ
リエステル系ポリマー側を染めるために染色工程として
は高温熱水下の条件において行なう高温染色が必須不可
欠であるが、そのような高温染色においてもA成分につ
いての支障のない、次の如き方法が見出された。
即ち、アセタール化後染色するに際して、温度95℃以
上、浴濃度が5g/以上の強酸・強塩基の塩、あるいは
浴濃度が10g/以上の硼酸を含有する水溶液、または強
酸・強塩基の塩1g/以上と硼酸5g/以上との両者を含
有する染色浴中で染色するものである。
上記処理は、Aポリマー成分がフイブリル状に露出して
なる前記複合繊維を含有する布帛を95℃以上の高温での
染色を行なうに際して、ジアルデヒド類によりアセター
ル化された上記Aポリマー成分であるエチレン・ビニル
アルコールポリマー成分による糸の染色時の収縮、劣化
を防止し風合及び染色物の外観を損うことなく染色出来
るようにせんとするものである。
従来の染色法によれば、通常のポリエステル繊維では13
0℃下の高温染色が採用されている。しかし本発明の方
法の前提となる上記Aポリマー成分とポリエステル系ポ
リマーで特に通常のポリエステルであるポリエチレンテ
レフタレートを用いたBポリマー成分とからなる複合繊
維を含む布帛を該ポリエステル側を染着可能とする高温
染色下で染色すれば、該布帛を構成する該Aポリマー成
分による非常に大きな収縮と、高収縮によつて引き起こ
される該Aポリマー成分の劣化に基く染色時の布帛の白
化現象が現れる場合があるのであり商品価値がないもの
となることがあるのである。
本発明の上記の処理方法では、驚くべきことにポリエス
テル繊維の高温染色の場合に採用されている高温熱水下
の条件においても該水溶液中に強酸・強塩基の塩あるい
は硼酸のそれぞれ単独もしくは両者混合物を存在させる
と、Aポリマー成分部分に基く布帛の収縮を防止するこ
とが可能となり、付随的に該ポリマー成分が劣化しなく
なり、染色時に自化現象が消失することを見い出したも
のである。
上記処理方法の、より好ましい態様としては、強酸・強
塩基の塩と硼酸とを併用することが挙げられるが、各々
単独でも実施できる。この方法で用いられる強酸・強塩
基の塩の単独使用の場合には浴温度として5g/以上、
同じく硼酸単独使用の場合には該濃度として10g/以上
の範囲が適用されるが、本発明の目的とする作用効果を
最大限に発揮させるためには強酸・強塩基の塩の単独使
用の場合には浴濃度が15g/以上が好ましい。また同様
に硼酸の単独使用の場合には10g/以上が好ましい。強
酸・強塩基の塩の浴濃度が5g/及び硼酸の浴濃度が10g
/より少くなると上記効果が認められなくなり好まし
くない。強酸強塩基の塩と硼酸とを併用して使用する場
合の浴濃度としては強酸強塩基の塩1g/以上及び硼酸5
g/以上が好ましい。強酸強塩基の塩の浴濃度が1g/
より少くて、また硼酸の同濃度が5g/より少いと前記
効果が認められなくなり好ましくない。
ここで用いられる強酸強塩基の塩の例としては、前述の
如く硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化ナトリウム、
塩化カリウム等が挙げられるが、好ましくは硫酸ナトリ
ウムが用いられる。
以下さらに本発明を実施例により説明するが、耐熱安定
性の評価としては100℃を越える高温高圧染色時や170℃
の乾燥やセツト時の綿、糸条、布地等繊維集合体の硬化
の度合に着目し、繊維間膠着が触感として感じられない
ものを良とした。またその織物を構成する複合繊維のフ
イブリル化度(分割剥離化度)について光学顕微鏡で観
察し複合二成分の分割剥離程度について優劣を判定し
た。また一方アイロンテストでは当て布をしてスチーム
アイロンを掛けた時の布の風合変化により判定した。ま
た染色物の耐熱堅牢性は乾熱170℃約1分の仕上セツト
により退色変化の有無を調べ、退色のなさを外観検査に
より評価した。
(実施例) 実施例1〜4及び比較例1〜7 A側ポリマーとしてけん化度が99%でエチレン含量が44
モル%のエチレン酢酸ビニル共重合体けん化物(以下EV
ALと略記)で、85%含水フエノールを用い30℃で測定し
た固有粘度が[η]=1.05dl/gのチツプを用いた。B側
ポリマーとしては、イソフタル酸を8モル%共重合した
ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略記)系ポリ
マーでテトラクロロエタン:フエノール=1:1の混合溶
媒を用いて30℃で測定した固有粘度[η]=0.64のチツ
プを用いた。A側とB側との複合比率を3:7とし、その
横断面は第2図で示されるようなEVALが5層、ポリエス
テル層が6層の多層複合繊維となるよう、該複合ポリマ
ーを紡糸温度265℃、紡糸速度1000m/分の紡糸条件下で
巻取り、得られた紡糸原糸を通常のローラープレート方
式の延伸機により70℃の熱ローラ、及び120℃の熱プレ
ートに接触させて延伸して75dr/24fの複合フイラメント
を得た。
この複合フイラメントを経糸及び緯糸として使いタフタ
製織した。その生機密度は経糸108本/吋、緯糸98本/
吋であつた。この生機タフタをアクチノールR−100 1g
/で80℃20分間糊抜きした後に、第1表に示されるグ
ルタルジアルデヒド(以下GAと略記)を含有するそれぞ
れの組成液にて所定の温度まで昇温しその温度で50分間
アセタール化(以下GA化と略記する)を行なつた。次い
で160℃のプレセツトを行ない、更に、水酸化ナトリウ
ム40g/の水酸化ナトリウム溶液を用い、処理温度95
℃、60分間でアルカリ減量率20%の減量加工を行なつ
て、前記多層繊維の分割を行なつた。
実施例1〜4はGA化反応での条件を前述した本発明で規
定する範囲内での条件としたものであるが、比較例1は
GA化を行なわなかつた例、比較例2,3はGA濃度が条件を
外れた例、比較例4,5はGA化温度が条件を外れた例、比
較例6,7は硫酸濃度が条件を外れた例である。
これ等の条件並びに結果を第1表に示す。
上記の処理で得られた織物について見るに、比較例1な
いし7はGA化しないか、あるいはGA化が不満足なためア
ルカリ減量加工での処理でA成分ポリマー側での膠着を
生じ、良好なフイブリル化布帛を得る事ができなかつ
た。
これに対して実施例1〜4は、上記アルカリ減量加工で
分割剥離70%以上の良好なフイブリル化布帛となり、該
フイブリル化布帛を更にスチームアイロンによるアイロ
ンテストを行なつた後でのフイブリル化繊維の膠着も認
められず、その布帛の風合は極めて好ましいものとなつ
た。
実施例5 実施例1用いられた生機タフタをアクチノールR−10
0、1g/で80℃20分間糊抜きした後にグルタルアルデヒ
ド2g/、硫酸の3規定を含有する組成液にて浴比50:
1、室温より90℃の温度まで昇温し、その温度で90分間
のGA化を行なつた。このタフタについてH2O2(35%)5c
c/の液で浴比50:1、80℃30分間の後処理を行ない、GA
化時に発現した非架橋アルデヒド基を消失せしめる処理
を行なつた。引き続いてピンテンターによつてプレセツ
ト160℃を行ない、更に水酸化ナトリウム40g/の水酸
化ナトリウム溶液を用い、処理温度95℃、50分間でアル
カリ減量率20%の減量加工を行なつた。その減量加工物
について次に示す染色条件にて液流高温染色を行つた。
<染色条件> 染料:Sumikaron Red E−RPD 2%owf 分散剤:ニツカサンソルト #7000 0.5g/ PH調節剤: 浴比 50:1 115℃ 40分間 次いで、Na2S2O4 1g/、NaOH 1g/、アミラジン1g/
の液組成にて還元洗浄20分間の処理を行ない流水洗し、
中間乾燥の後にピンテンターを用いてフアイナルセツト
150℃にて乾熱処理を行ない染色仕上品を得た。染色仕
上品は150℃でのフアイナルセツトでも退色は全く認め
られず、ソフトな良好な風合となり、商品価値として優
れたものとなつた。
なおカルボン酸の生成確認試験として布帛のH2O2処理を
行なつたもの及びH2O2処理を行なわない場合の布帛等に
ついて下記に示すカチオン染料で染色した場合の染着率
の比較で判断した。
H2O2処理前の布帛の染色における染着率が2%であるの
に対しH2O2処理後の布帛の染色における染着率15%と向
上することからH2O2処理によりカルボキシル基が増加す
ることが推測される。
実施例9〜12及び比較例8〜11 B側ポリマーPETとして紡糸前の固有粘度が[η]0.70d
l/gのチツプを用い、A側ポリマーのEVALポリマーとし
てけん化度が99%でエチレン含量が48モル%のエチレン
酢酸ビニル共重合体けん化物で固有粘度が[η]1.10dl
/gのチツプを用いた。A側とB側の複合比率を3:7と
し、その横断面は第2図で示されるようなEVALが4層、
PETが5層の多層複合繊維となるよう、該複合ポリマー
を紡糸温度270℃、紡糸速度1000m/分の紡糸条件下で巻
取り、得られた紡糸原糸を通常のローラープレート方式
の延伸機により70℃の熱ローラ及び120℃の熱プレート
に接触させて延伸して75dr/24fの複合フイラメントを得
た。この延伸糸を用いてスピンドル仮撚方式にて加工温
度130℃、設定仮撚数 Z撚3387T/M、オーバーフイード率
0.5%の仮撚条件にて加工しA成分繊維とB成分繊維と
に分割剥離せしめ、良好なフイブリル化加工糸を得た。
次いでこの加工糸を丸編とした。その丸編をアクチノー
ルR−100 1g/で80℃20分間、精錬した後にグルタル
ジアルデヒド5g/、硫酸15g/を含有する組成液にて
浴比50:1、90℃40分間のアセタール化処理を行ない、該
処理の後に160℃のプレセツトを行なつた。
この編物について第2表に示した添加剤である硫酸ナト
リウム及び硼酸の含有される各染液組成にて120℃×40
分間の染色を行ない通常の還元洗浄を行なつた。それぞ
れの染液組成を用いての各染色還元洗浄処理後の各染色
時に現れる編物巾の収縮率、風合変化の判定及び染色物
の外観等について評価した。
<染色条件> 染料:Sumikaron Red E−RPD 2%owf 分散剤:ニツカサンソルト #7000 0.5g/ PH調節剤: 浴比 50:1 染色温度120℃ 時 間40分間 第2表に示される如く本発明で規定する硫酸ナトリウム
及び硼酸の浴濃度(添加量)以上では120℃での染色温
度を与えて染色を行なう時、染色時の縮みを抑制するこ
とが可能となり風合及び染色物の外観を同時に満足した
染色ができることがわかる。
実施例13 A成分ポリマーとしてけん化度が99%でエチレン含量が
44モル%のEVALで、85%含水フエノールを用い30℃で測
定した固有粘度が[η]1.05dl/gのチツプを用い、B成
分ポリマーとしては、イソフタル酸を8モル%共重合し
たPET系ポリマーでテトラクロロエタン:フエノール=
1:1の混合溶媒を用いて30℃で側定した固有粘度[η]
=0.67のチツプを用い、それぞれを別々の押出機にて溶
融押出し、A成分ポリマーとB成分ポリマーの重量比が
15対85となるようにそれぞれギアポンプで計量した後、
紡糸パツクへ供給し、その後紡糸パツク内でケーニツク
社製の4エレメントスタチツクミキサーで第4図で示さ
れる断面形状の如きのA成分とB成分の層状分割ポリマ
ー流を形成させた後、分配路を12個有する分配板を通過
させた後、24ホールの丸孔ノズルより紡糸温度275℃で
吐出し捲取り速度1000m/minで溶融紡糸した。得られた
紡糸原糸を通常のローラープレート方式の延伸機より75
℃の熱ローラ及び120℃の熱プレートに接触させて延伸
して75dr/24fの複合フイラメントを得た。
この複合フイラメントを経糸及び緯糸として使いタフタ
を製織した。その密度は経糸79本/吋、緯糸69本/吋で
あつた。この生機タフタについてシユリンク・サフア
(Shrink suffer)機により無緊張状態で150℃の乾熱処
理を行つた。次いで水酸化ナトリウム3g/、アクチノ
ールR−1000 0.5g/の液組成で80℃、30分間の混練糊
抜処理を行ない、水酸化ナトリウム20g/の水酸化ナト
リウム溶液を用い処理温度90℃でアルカリ減量率20%の
減量加工を行なつた。その減量加工物についてグルタル
アルデヒド5g/、硫酸0.3規定、硫酸ナトリウム20g/
を含有する組成液にて浴比50:1、室温より90℃の温度ま
で昇温し、その温度で2時間のGA化を行なつた。このタ
フタについてH2O2(35%)5cc/の液で浴比50:1、80℃
30分間の後処理を行い、次に示す染色条件にて液流高温
染色を行つた。
<染色条件> 染料:Sumikaron Brill Red SE−BGL 2%owf 分散剤:ニツカサンソルト #7000 0.5g/ PH調節剤: 浴比 50:1 125℃ 40分間 次いでNa2S2O4 1g/、NaOH 1g/、アミラジン1g/
(浸透剤)の液組成にて還元洗浄20分間の処理を行ない
流水洗し、中間乾燥の後にピンテンターを用いてフアイ
ナルセツト150℃にて乾熱処理を行ない染色仕上品を得
た。この染色仕上品は表面タツチが非常に繊細なソフト
な風合を有し、且つハリ、コシのあるプリプリ感の、表
面光沢がマイルド外観を有する天然繊維様の商品価値と
して品位の高いものとなつた。
この実施例は、特に、アルカリ減量に先立つて予めA成
分ポリマーの融点以下の温度で乾熱処理することによつ
て、A成分ポリマーの融点を上昇させ、その後のアルカ
リ減量工程でのA成分ポリマーの硬化(膠着化)を防
ぎ、前記の如き極めてソフトな風合の布帛を得る実施例
である。
【図面の簡単な説明】
第1図〜4図はA側ポリマーとB側ポリマーからなる複
合繊維の断面例を示した図、第5図はタテ軸を酸濃度
(N規定)にヨコ軸をジアルデヒド濃度(Cg/)にと
つて、15℃、75℃、135℃の各アセタール化温度の時の
好適な濃度範囲を斜線部で例示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D06C 19/00 D06M 13/123 D06P 3/00 9356−4H 3/52 Z 9356−4H // D06M 101:24 101:32 (72)発明者 赤木 孝夫 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内 (56)参考文献 特公 昭56−5846(JP,B2) 特公 昭55−1372(JP,B2)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エチレン含有量30〜70モル%のエチレン−
    酢酸ビニル共重合体のケン化ポリマー(A成分)とポリ
    エステル系ポリマー(B成分)からなる複合繊維で構成
    され、A成分中のアルコール性水酸基がアルコール性水
    酸基の酸素原子を介して式[I]で表される基の少なく
    とも1種によって変性され、かつA成分とB成分とが分
    割されていることを特徴とするフィブリル化布帛。 >CH−CnH2n−CH< ……[I] (但し、nは0〜10の整数である。)
  2. 【請求項2】エチレン含有量30〜70モル%のエチレン−
    酢酸ビニル共重合体のケン化ポリマー(A成分)とポリ
    エステル系ポリマー(B成分)からなる複合繊維を、該
    複合繊維の段階または該複合繊維を含む布帛の段階で、
    次の工程(a)および(b)を、(a)−(b)または
    (b)−(a)の順序で施すことを特徴とするフィブリ
    ル化布帛の製造方法。 (a):複合繊維をA成分繊維とB成分繊維とに分割剥
    離する工程 (b):複合繊維のA成分を下記一般式[Ia]で示され
    る化合物でアセタール化する工程 OCH−CnH2n−CHO ……[Ia] (但し、nは0〜10の整数である。)
  3. 【請求項3】請求項2に記載の(b)工程でのアセター
    ル化が、強酸濃度(N)を0.05〜2規定とし、15〜135
    ℃の温度(T)の範囲にて、一般式[Ia]の化合物を0.
    2〜500g/lの範囲の濃度(C)であって、下記式[III]
    を満足する条件で行なわれることを特徴とするフィブリ
    ル化布帛の製造方法。 N<1.7−0.576×log C−6.3×10-3×T ……[II] (但し、Nは強酸濃度(N)、Cは一般式[Ia]で表さ
    れるジアルデヒド濃度(g/l)、Tはアセタール化温度
    (℃)である)
  4. 【請求項4】請求項3に記載のアセタール化後染色する
    に際して、温度95℃以上、染色浴濃度が5g/l以上の強酸
    ・強塩基の塩、または染色浴濃度が10g/l以上の硼酸を
    含有する水溶液、あるいは1g/l以上の強酸・強塩基の塩
    と5g/l以上の硼酸を含有する混合水溶液中で染色するこ
    とを特徴とするフィブリル化布帛の製造方法。
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