JP3941902B2 - 嵩高糸およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は嵩高糸に関するものであり、詳しくは糸状態での高温染色時、衣服縫製時のアイロン、あるいは洗濯、乾燥時に繊維間膠着、過大収縮等を生じることのない耐熱安定性に優れたエチレン−ビニルアルコール系共重合体複合繊維の嵩高糸およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化物であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる繊維は、分子中にOH基を有するために親水性、防汚性、防臭性等の点で従来の合成繊維に比較して優れた快適特性を有している。また該共重合体からなる繊維は屈折率が低いため染色物の発色性が優れている。
しかしながら、該共重合体は融点や軟化点が低いことから、高温熱水や縫製時のアイロン時の熱安定性に劣るという欠点を有している。
このため該共重合体を他の熱可塑性重合体、たとえばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等と複合して繊維化することにより寸法安定性を改良する各種の提案がなされている(例えば、特公昭56−5846号公報、特公昭55−1372号公報、特公平7−84681号公報参照)。
【0003】
これらの提案においては、高温高圧染色や縫製あるいはスチームアイロンの使用により織物、編物、不織布等の繊維製品の表面に露出したエチレン−ビニルアルコール系共重合体が部分的に軟化や微膠着を生じ、繊維製品としての風合が硬くなることを防止するため、染色加工等の高温熱水に接触させる前に、ジアルデヒド化合物等を用い、該共重合体の水酸基をアセタール架橋したり、さらにはアセタール架橋する前に上記の布帛状の繊維製品を熱処理し、ついでアセタール架橋する方法等が開示されている。
しかしながら、染色された糸形態で各種用途へ提供する場合に、上記のアセタール架橋を行う前の糸状で予らかじめ熱処理するためには設備上の制約があり、糸長方向に均一に熱処理することが極めて困難である。
【0004】
さらには従来のアセタール架橋処理は現行の染色工程の他に別のアセタール架橋工程を必要とするため加工コストの問題、さらにはアセタール架橋処理する際に強酸を高濃度で使用する必要があるので処理装置の耐腐食性の問題、染料がアセタール架橋処理された繊維内部に拡散しにくいことから濃色化の困難性の問題、アセタール架橋処理時の未反応のジアルデヒド化合物による染色物の退色等の問題等が生じ、繊維性能の均一性確保に問題があった。
また、アセタール架橋処理するためのジアルデヒド化合物の種類によって、化合物が貯蔵中に空気中の酸素により酸化され、該化合物の純度が低下し、コントロール性よくアセタール架橋処理することが不可能であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題点を解決するものであり、風合が良好で、耐熱水性、耐スチームアイロン性、解舒性に優れたエチレン−ビニルアルコール系共重合体複合繊維からなる嵩高糸を提供することであり、かかる嵩高糸は、単独で又は他の繊維等と交織、交編を行って防汚性、親水性に優れた繊維製品とするために使用されるものである。
特に、本発明の嵩高糸は、綿などの天然繊維と混用して布帛としても、アセタール架橋処理が既に糸の段階で施されているため、布帛でのアセタール架橋は不要であり、アセタール架橋処理に使用される強酸によって天然繊維を劣化させることもなく、未染色の白生地として生地染めや製品染め用に好適に使用することができる。
さらに、本発明の嵩高糸は、嵩高加工が施されていることにより、パッケージにおける繊維間に微小な隙間が生じるため、パッケージ形態でアセタール架橋処理や染色処理を行うに際して、処理液や染料がパッケージ内部に浸透しやすく均一なアセタール架橋処理や染色が可能である。そして、例えば、刺繍糸、飾り糸などとして有効に用いられ、高発色性、防汚性を活かした商品分野への使用が可能となる点に特徴を有するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、下記式[1]を満足するアセタール架橋された融点215℃以下のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を少なくとも一成分とする繊維を含むことを特徴とする嵩高糸である。
25≧α/R≧8 [1]
式中αは、アセタール架橋処理による、下記式[2];
Tm=234.2−1.659E [2]
(ただし、25≦E≦70)
で求められるアセタール架橋前のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の融点Tmからの融点上昇分(℃)を示し、Rは、架橋アセタール結合の割合であり、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の固体NMR測定によって観測される下記のピーク面積(A,BおよびC)から求めた13C-NMRピーク面積比[(B+C)/A ]を表わす。
A:8ppm〜53ppmの領域のピークの面積
B:98ppmにピークトップをもつピークの面積
C:103ppmにピークトップをもつピークの面積
【0007】
また、本発明は、下記式[1]を満足するアセタール架橋された融点215℃以下のエチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体とからなり、該共重合体が繊維表面の少なくとも一部を形成してなる複合繊維を含むことを特徴とする嵩高糸である。
25≧α/R≧8 [1]
式中αは、アセタール架橋処理による、下記式[2];
Tm=234.2−1.659E [2]
(ただし、25≦E≦70)
で求められるアセタール架橋前のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の融点Tmからの融点上昇分(℃)を示し、Rは、架橋アセタール結合の割合であり、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の固体NMR測定によって観測される下記のピーク面積(A,BおよびC)から求めた13C-NMRピーク面積比[(B+C)/A ]を表わす。
A:8ppm〜53ppmの領域のピークの面積
B:98ppmにピークトップをもつピークの面積
C:103ppmにピークトップをもつピークの面積
【0008】
また、本発明は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を少なくとも一成分とする繊維を含む糸条に嵩高加工を施すと同時又は別個に、該共重合体が実質的に溶融又は軟化せず、かつ下記式[3];
D≧4.5×10-3(100−E)+0.86 [3]
(ただし、25≦E≦70)
で示される密度D(g/cm3)を満足するような温度条件で熱処理し、該嵩高糸をPH1.0〜5.0の酸性下で下記一般式(I)で示される少なくとも1種の化合物を含む水溶液中、100℃〜140℃でアセタール架橋処理することを特徴とする嵩高糸の製造方法である。
【化5】
式中、R1,R2,R3およびR4はアルキル基、あるいはR1とR2,R3とR4が環を形成したアルキレン基を示し、R5は水素またはアルキル基を示す。またnは2〜10の数である。これらのR1,R2,R3,R4およびR5の基は置換基を有していてもよい
【0009】
さらに、本発明は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体とからなり、該共重合体が繊維表面の一部を形成してなる複合繊維を含む糸条に嵩高加工を施すと同時又は別個に、該共重合体が実質的に溶融又は軟化せず、かつ下記式[3];
D≧4.5×10-3(100−E)+0.86 [3]
(ただし、25≦E≦70)
で示される密度D(g/cm3)を満足するような温度条件で熱処理し、該嵩高糸をPH1.0〜5.0の酸性下で上記一般式(I)で示される少なくとも1種の化合物を含む水溶液中、100℃〜140℃でアセタール架橋処理することを特徴とする嵩高糸の製造方法である。
【0010】
また、本発明は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を少なくとも一成分とする繊維を含む糸条に嵩高加工を施すと同時又は別個に、該共重合体が実質的に溶融又は軟化せず、かつ下記式[3];
D≧4.5×10-3(100−E)+0.86 [3]
(ただし、25≦E≦70)
で示される密度D(g/cm3)を満足するような温度条件で熱処理し、該嵩高糸をPH1.0〜5.0の酸性下で、上記一般式(I)で示される少なくとも1種の化合物及び染料を含む水溶液中、100℃〜140℃でアセタール架橋処理及び染色処理を同時に行うことを特徴とする嵩高糸の製造方法である。
【0011】
さらにまた、本発明は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体とからなり、該共重合体が繊維表面の一部を形成してなる複合繊維を含む糸条に嵩高加工を施すと同時又は別個に、該共重合体が実質的に溶融又は軟化せず、かつ下記式[3];
D≧4.5×10-3(100−E)+0.86 [3]
(ただし、25≦E≦70)
で示される密度D(g/cm3)を満足するような温度条件で熱処理し、得られた嵩高糸をPH1.0〜5.0の酸性下で、上記一般式(I)で示される少なくとも1種の化合物及び染料を含む水溶液中、100℃〜140℃でアセタール架橋処理及び染色処理を同時に行うことを特徴とする嵩高糸の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明におけるエチレン−ビニルアルコール系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化物である。該共重合体に含有されるエチレンの共重合率(Eモル%)は25〜70モル%であり、好ましくは30〜50モル%である。該共重合体のエチレン共重合率が高くなると、すなわちビニルアルコール成分の含有量が低くなると、共重合体中の水酸基が減少するため親水性等の特性が低下し、目的とする親水性や防汚性等の効果が得られにくい。
一方、エチレンの共重合率が少なくなると、ビニルアルコール成分の含有量が高くなり、製糸性の面から、複合溶融紡糸性が低下するとともに、繊維化する際の曳糸性や延伸性が悪化し、単糸切れや断糸につながる。
【0013】
また、該共重合体と他の熱可塑性重合体との複合紡糸の際に、他の熱可塑性重合体としてポリエステル等の高融点の重合体を用いると、紡糸温度を高く設定する必要が生じるが、共重合体中のビニルアルコール成分の含有量が高くなり過ぎるとかかる高温下での溶融紡糸が困難となる。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体の融点は、エチレン成分の共重合率に支配され、エチレン共重合率が少ないほど乾燥状態での示差走査熱量計(DSC)による測定で融点は高温側にシフトし、アセタール架橋処理前のエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維の融点(Tm)は下記式[2]によって求めることができる。
Tm=234.2−1.659E [2]
【0014】
本発明で使用されるエチレン−ビニルアルコール系共重合体は公知の方法で製造することができる。たとえばメタノール等の重合溶媒中でエチレンと酢酸ビニルをラジカル重合触媒の存在下でラジカル重合させ、ついで未反応のモノマーを追い出し、水酸化ナトリウムによりケン化反応を生じせしめエチレン−ビニルアルコール系共重合体とした後、水中でペレット化し、水洗して乾燥する。工程上アルカリ金属やアルカリ土類金属が共重合体中に介入されやすく、その量は数百ppm以上である。これらの金属イオンが存在すると該共重合体が熱分解され易いので、100ppm以下、特に50ppm以下に減少させておく必要がある。かかる方法として、上述の製造工程において湿潤状態のペレットを酢酸を含む大量の純水溶液で洗浄し、さらに大過剰の純水のみで洗浄する方法を挙げることができる。
【0015】
また、エチレン−ビニルアルコール系共重合体のケン化度は95%以上であることが好ましい。ケン化度が低すぎると該共重合体の結晶性が低下し強度等の繊維基礎物性が低下してくるのみならず、該共重合体が軟化しやすくなり加工工程上トラブルが発生してくると共に、得られた該共重合体からなる複合繊維、繊維製品の風合が悪くなる場合がある。
【0016】
本発明の嵩高糸を構成する繊維は、アセタール架橋処理されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体単独からなる繊維であっても、他の熱可塑性重合体と混合または複合して得られる繊維であってもよいが、本発明においては、他の熱可塑性重合体との複合繊維であることが好ましい。この時、該共重合体は繊維の表面の少なくとも一部を形成するような複合形態であることが望ましい。
【0017】
複合繊維を構成する他の熱可塑性重合体としては耐熱性、寸法安定性等の点で融点が150℃以上の結晶性熱可塑性重合体が好ましく、具体的にはポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等を挙げることができ、好ましくはポリエステル又はポリアミドとの複合繊維である。
【0018】
ポリエステルとしてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4′−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオールからなる繊維形成のポリエステルを挙げることができ、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位またはブチレンテレフタレート単位であるポリエステルが好ましい。また、該ポリエステル中には少量の添加剤、たとえば蛍光増白剤、艶消剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤等が含有されていてもよい。
【0019】
ポリアミドとしてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を主成分とする脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドを挙げることができ、少量の第3成分を含有するポリアミドでもよい。該ポリアミドにも少量の添加剤、たとえば蛍光増白剤、艶消剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤等が含有されていてもよい。
【0020】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体とからなる複合繊維における両成分の複合比は前者:後者(重量比)=10:90〜90:10であることが紡糸性の点で好ましい。また複合形態は従来公知の複合形態であれば特に限定はないが、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の有する親水性をおよび風合を発現させるためには、複合繊維の表面の少なくとも一部、好ましくは該表面の30%以上がエチレン−ビニルアルコール系共重合体で占められていることが好ましい。
【0021】
かかる複合繊維の断面形状、複合形態等は通常の丸断面のみならず、楕円、三角〜八角等の多角形、三葉〜八葉等の多葉形、U字形、T字形などの異形断面であってもよく、芯鞘型、海島型、貼合型、それらの混在型等の任意の形態であることができる。芯鞘型の場合は2層芯鞘型および3層以上の多層芯鞘型のいずれでもよい。また海島型の場合は島の形状、数、分散状態を任意に選ぶことができ、島の一部が繊維表面に露出していてもよい。更に貼合型の場合は、繊維の長さ方向に直角な繊維断面において貼合面が直線状、円弧状、またはその他任意のランダムな曲線のいずれでよく、更に複数の貼合部分が互いに平行になっていても、放射状になっていても、その他任意の形状であってもよい。
【0022】
本発明の嵩高糸が、高温染色時の耐熱性や耐スチームアイロン性を示し、しかも糸長方向に均斉な染色性を有しソフトな風合を持つためには、アセタール架橋処理されたエチレン−ビニルアルコール系共重合体が高い融点を有することが重要である。
架橋処理された共重合体の融点は、架橋処理前の共重合体の融点(Tm)に対して架橋処理の程度に応じて上昇し、アセタール架橋処理によるTmからの融点上昇分をα(℃)とし、架橋アセタール結合の割合をRとするとき、本発明においては、下記式[1]を満足する必要がある。
25≧α/R≧8 [1]
【0023】
なお、Rは、架橋アセタール結合の割合であり、架橋エチレン−ビニルアルコール系共重合体の固体NMR測定によって観測される下記のピーク面積(A,BおよびC)から求めた13C-NMRピーク面積比[(B+C)/A ]を表わす。
A:8ppm〜53ppmの領域のピークの面積
B:98ppmにピークトップをもつピークの面積
C:103ppmにピークトップをもつピークの面積
【0024】
α/Rが8未満であったり、25を超えたりすると、融点上昇の効果が少なく、アセタール架橋処理後の糸条の沸水収縮率が大きく、パッケージからの解舒性も不良である。
【0025】
α/Rが、上記の範囲を満足するためには、繊維に特定の熱処理を施して該共重合体を充分に結晶化させておくことが必要である。熱処理をしないか又は不十分な熱処理である場合は融点上昇の効果が少ない。
しかしながら、架橋処理した共重合体の融点が高すぎると染色時に、染着し難くなって、発色性が不良となるので、その融点は215℃以下、特に210℃以下であることが望ましい。
【0026】
さらに、本発明においては、かかる熱処理は、アセタール架橋処理時の繊維の収縮を小さく抑えるという目的においても施されるものである。
【0027】
熱処理温度は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が実質的に溶融又は軟化しない温度であることが重要であり、熱処理温度が高くなるとエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維が溶融軟化しやすく、単繊維間での融着、硬化が起り好ましくない。また、嵩高糸としてチーズ巻したもが硬巻になり、アセタール架橋処理や染色処理において、薬剤や染料がチーズ内外に浸透流通しにくく、処理斑が生じ、均一な品質の嵩高糸を得ることができない。
【0028】
また、熱処理温度が低すぎたり、処理時間が短すぎる場合、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の密度が小く、アセタール架橋処理時に糸に過大収縮を引き起こす。本発明においては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を充分に結晶化させ、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の密度D(g/cm3)が下記式[3]を満足するように熱処理を行うことがアセタール架橋時の糸硬化防止の点で好ましい。
D≧4.5×10-3(100−E)+0.86 [3]
なお、式中のEはエチレン−ビニルアルコール系共重合体を構成するエチレン共重合モル%であって、その範囲は25≦E≦70である。
また、密度Dが大きすぎると、物性が低下しやすいので、共重合体の密度が1.3以下となるような熱処理を施すことが望ましく、具体的には、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の融点Tmに対して、(Tm-60)℃以上の熱処理温度を採用することが好ましい。
【0029】
本発明において、かかる熱処理は、上記の条件が満たされれば、その具体的な手段は限定されず、嵩高糸を製造するに際して、嵩高加工と同時に熱処理をしてもよいし、別個で行ってもよいし、2回以上に分けて熱処理を行っても差し支えないものである。
【0030】
本発明においては、上記のような熱処理が施されているだけでは目的を達成することができず、繊維に嵩高加工が施されていることが重要である。なぜならば、本発明においては、アセタール架橋や染色加工処理が巻糸体の状態で行われることを想定しており、アセタール架橋処理時の薬剤や染料が巻糸体(パッケージ)の内部まで充分に浸透し、均一な処理が施されることが重要だからである。本発明においては糸条が嵩高であるため、チーズ巻などの糸パッケージにおいて繊維間に隙間が生じ、ソフト巻になり易すく、架橋薬剤や染料がパッケージ内部までよく浸透し、均一な処理が可能となるのである。
【0031】
嵩高加工の手段としては特に限定されず、例えば、仮撚捲縮加工、機械捲縮加工、タスラン加工、デニット加工等の製造技術を利用することができるが、本発明においては、嵩高加工と熱処理を同時にしかも簡便に行うことができるという点から仮撚糸の製造技術を採用することが好ましい。
【0032】
仮撚加工について具体的に説明すると、仮撚数Tは、上記の熱処理(熱セット)温度下で、900×(150/Dr)1/2≦T(t/m)≦2650×(150/Dr)1/2の範囲で用いられる。仮撚数の極端に小さい場合は糸切れ、毛羽等が多発し好ましくない。また大きく過ぎる場合にも同様に糸切れ、毛羽等が多発し好ましくない。
【0033】
仮撚加工しない生糸の状態でアセタール架橋した場合、式[1]を満足するような融点上昇を発現せしめることが不可能であり、過大収縮を引き起こし糸の硬化が起こり、また糸の方向に斑となり好ましくない。
【0034】
次に、アセタール架橋処理について説明する。
前述したように、一般に、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール系共重合体等の水酸基を有するポリマーは耐熱水性を向上させるためにグルタルアルデヒド、グリオキザール、ノナンジアール等のジアルデヒドによりアセタール架橋処理がなされている。
しかしながら、これらのジアルデヒドは空気中の酸素により酸化されやすく、経時安定性が非常に悪い。そのため、該ジアルデヒドを用いてのアセタール架橋の効率が悪く、反応収率が悪い。また、該アルデヒド特有の刺激臭があり、作業環境も悪い問題がある。さらに染色時に該アルデヒドを添加して使用する場合に、アルデヒド基の還元性により染料を変質させ、とくに染色物の耐光性を悪化させる問題がある。
【0035】
このような問題に対して、本発明においてはアセタール架橋処理に使用する架橋剤として、下記一般式(I)で示される化合物を用いることによりこれらの問題を一挙に解決することができたのである。
【化6】
式中、R1,R2,R3あるいはR4はアルキル基、あるいはR1とR2,R3とR4が環を形成したアルキレン基を示し、R5は水素またはアルキル基を示す。またnは2〜10の数である。
これらのR1,R2,R3,R4およびR5の基は置換基を有していてもよい。
【0036】
式中、R1〜R4で示されるアルキル基としては炭素数が1〜4の低級アルキル基が好ましく、中でも使い易さの点でメチル基が好ましい。また該アルキル基はエチレンオキシ基等のアルキレンオキシ基で置換されていてもよく、R1〜R4全てが同じ種類のアルキル基であっても異なっていてもよい。
さらに環を形成するアルキレン基としては炭素数1〜4の低級アルキレン基が好ましいが、環構造の安定性を考慮すると5員環、6員環が好ましく、したがって炭素数か2〜3個のエチレン基、プロピレン基が好ましい。
これらのアルキル基、アルキレン基はいずれも置換基を有していてもよい。
また式中、nは該化合物を複数使用して処理する場合にはその組成比に照らしあわせて算出した値であり、整数とは限らない。
【0037】
また、該化合物は架橋処理に際しては分岐鎖を持たないことが好ましく、R5は水素であることが好ましい。しかしながら、該化合物は、R5が炭素数1〜4の低級アルキル基である、いわゆる分岐鎖を有する化合物と、分岐鎖を持たない化合物の混合物であってもさしつかえない。また、R5がアルキル基である場合、その数はn個まで考えられるが、本発明においてはn個全部がアルキル基である必要はなく、n個のうちの数個がアルキル基であって、残りが水素である場合、すなわち、アルキル基と水素との和がn個となる場合をも含む。また、アルキル基は同じ種類の基であっても異なった種類の基が混在していてもよい。
【0038】
該化合物は末端がアルキル基または環を形成したアルキレン基で封鎖されているために極めて安定であり、酸素に接触しても酸化されない。この末端封鎖により弱酸性下でも高温高圧にすることにより該化合物自身のアセタール分解反応が進行し、そこに水酸基を有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体が共存すると水で膨潤した該共重合体側にアセタール架橋反応が起こるのである。
【0039】
従来、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維の架橋処理は特開平3−174015号公報に開示されているごとく、硫酸等の強酸を用いて通常1〜2規定の強い酸性下で行われていた。このような従来技術に対し、本発明は弱酸性下で脱アルコールを伴うアセタール分解再生反応を行うものであり、エチレン−ビニルアルコール系共重合体への架橋は単に反応して架橋すればよいというものではない。
【0040】
化合物(I)に於いてnは2以上、好ましくは4以上が望ましく、該nが2未満の場合には強酸性下、たとえば染料を分解したり、染色機のステンレス缶体を腐食させるような強い過酷な条件下でアセタール架橋を行う必要が生じるため工業的な制約が多くなり実用性がなくなるので好ましくない。またnが10を越える場合には架橋成分を構成する化合物が高価な上にアセタール架橋処理中にオリゴマーができやすくなり工業的に好ましくない。
【0041】
化合物(I)の具体例としては、例えば、1,1,6,6−テトラメトキシヘキサン、1,1,6,6−テトラエトキシヘキサン、1,1,7,7−テトラメトキシヘプタン、1,1,7,7−テトラエトキシヘプタン、1,1,8,8−テトラメトキシオクタン、1,1,8,8−テトラエトキシオクタン、1,1,9,9−テトラメトキシノナン、1,1,9,9−テトラエトキシノナン、1,1,9,9−ビスエチレンジオキシノナン、1,1,10,10−テトラメトキシデカン、1,1,10,10−テトラエトキシデカン、1,1,11,11−テトラメトキシウンデカン、1,1,11,11−テトラエトキシウンデカン等を挙げることができる。
【0042】
該化合物(I)は水に難溶性であるので、水溶液として使用する場合、ドデシルベンゼスルホン酸ナトリウムや多環型フェノールのオキシアルキレン変性スルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤等を使用して乳化状態にして使用することができる。他に水−アルコールの混合溶媒を用いることもできる。
該化合物の濃度は処理されるエチレン−ビニルアルコール系共重合体に対して10〜40重量%であることが好ましく、特に15〜30重量%であることが好ましい。
【0043】
具体的な化合物(I)として、たとえば、1,1,9,9−テトラメトキシノナンを使用し、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を一成分とする繊維を100℃〜140℃で処理するに際し、触媒として硫酸を使用し、その濃度を▲1▼15g/リットル(0.33N規定、pH=1.15)、▲2▼2.25g/リットル(0.05N規定、pH=1.65)、▲3▼0.9g/リットル(0.018N規定、pH=1.9)と変えて架橋反応を行うと、酸濃度に拘らず、融点上昇は20℃以上であるが、架橋処理後の繊維に染色を施すと、過収縮や膠着は見られないものの、発色性に大きな差が見られ、酸濃度が高くなるに従い、発色性が低下する傾向が見られる。従って、硫酸のごとき強酸を触媒として使用する場合には0.05規定以内の酸濃度でアセタール架橋を進めることが好ましい。
【0044】
この発色性の差は、酸濃度が高すぎる場合には繊維表面からアセタール架橋分解再生反応が過剰に進行し、繊維表層部の架橋密度が高く、繊維内層部の架橋密度が低いといった架橋密度に差を生じせしめる、所謂一種のスキンコア構造の発生に起因するものと推定される。
【0045】
酸性度は塩酸、硫酸等の鉱酸;酢酸、ギ酸、マレイン酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸などによって調整することができる。なかでも処理装置の耐腐食性の点で有機酸が好ましい。水溶性の酸以外にも活性白土やイオン交換樹脂などの固体酸を使用してもよい。
【0046】
処理液のpHが1.0未満の場合には処理繊維の最表層の架橋が優先し、処理時の繊維の過大収縮、繊維の着色、黄変の問題が生じ、該処理糸を他の繊維素材と交編、交織して使用するのに不都合とする。また後述する同時染色の場合には染色物の退色、耐光堅牢性不良の問題が生じる。
一方、pHが5.0を越える場合には、処理温度、処理時間等の条件を過酷にしないとアセタール架橋反応が進行しにくく、糸に過大収縮が起きやすく、初期の目的である糸が硬化することなく、ソフトな感触の糸を安定に得ること、及び耐熱水性の向上した糸の形態での架橋繊維を得ることができにくい。
処理時の糸の過大収縮の防止そして染色同時処理時の染料の劣化防止やアセタール架橋処理した糸の融点上昇、発現効果の点でpH2.0以上が望ましく、さらには、4.0以下であることが望ましい。
【0047】
次に、式[1]を満足するためには、処理温度を100℃以上、140℃以下とくに110℃以上、135℃以下にすることが望ましい。
該処理温度が100℃未満の場合には上述のpHの範囲においてアセタール架橋反応が著しく遅くなり、融点上昇の効果が低下し糸の過大収縮を引き起こしソフトな風合や耐熱水性、耐スチームアイロン性の効果が奏されにくい。一方処理温度が140℃を越えると処理時の糸に過大収縮を起こして硬くなり糸の風合が大きく損なわれることになる。
【0048】
従来のジアルデヒドを用いてアセタール架橋を行うことあるいはアセタール架橋と同時に染色を施すことは、処理物の黄変や染料の分解が激しいので濃色が不可能であるが、上記の化合物(I)を使用することにより、アセタール架橋処理と染色を同時に同浴で行うことが可能である。
【0049】
かかる同時架橋染色処理において、染料として分散染料を用いる場合には、分散染料の耐加水分解性を考慮して、酢酸、酢酸アンモニウム等の酸によってpH2.0〜4.0の範囲に調整することが好ましい。この場合、分散染料の加水分解抑制剤として硫酸ナトリウム、塩酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。
さらに、架橋促進作用のある化合物、たとえばβ−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等を併用すると、耐熱水性向上効果が奏される。
上記のような架橋処理を行う装置としては、例えばチーズ染色機が挙げられる。
【0050】
以上のような条件下で架橋処理をすることにより、本発明においては、例えば、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を鞘成分としポリエステルまたはポリアミドを芯成分とする複合繊維を、分散染料または酸性染料等で染色した場合、L*が14以下という優れた発色性を付与することができ、しかも、耐光堅牢度も3級以上とすることができるのである。
【0051】
さらに、本発明においては、アセタール架橋処理に際して、処理液にコラーゲンなどの蛋白質、キトサンなどのアミノ多糖類、リグニンスルホン酸ソーダ、カルボキシメチルセルロースなどの機能性化合物と化合物(I)とを共存させて反応させることにより、該化合物(I)を介してこれら化合物をエチレン−ビニルアルコール系共重合体に固定化することが可能である。
【0052】
本発明に係わる複合繊維を含む嵩高糸は、刺繍糸、飾り糸等に好適に用いることができ、他の天然繊維、セルローズ系再生繊維、トリアセテート、ポリアミド系、ポリアクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の合成繊維と交編物、交織物として用いられてもよく、これらに限定されるものではない。
【0053】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。なお実施例中の測定値は以下の方法により測定されたものである。
(1)架橋アセタール結合割合(R)
装置;JEOL製 固体高分解能 NMR GX−270
NM−GSH27MU GX270 CP/MAS UNIT
測定;
測定モード CP/MAS
観測核 13C
CPコンタクトタイム(CT) 1000μS
パルス待ち時間(Pulse Delay) 5秒
温度 室温
MAS回転速度 3500〜5000Hz
積算回数:定量する最小シグナルのS/N比が最低10以上、
望ましくは15以上になるまで行う。
定量:▲1▼図1に示す化学シフト−50〜300ppmの範囲においてベースラインが水平になるように表示する。
▲2▼図1に示す8ppm〜53ppmの領域のシグナル面積をAとする。
▲3▼図1に示す98ppmおよび103ppmにピークトップをもつシグナルの面積をそれぞれB,Cとする。
▲4▼架橋アセタール結合割合(R)は(B+C)/Aとして算出する。
(2)エチレン−ビニルアルコール系共重合体の融点
繊維試料について、示差走査熱量計(DSC)により以下の条件で測定したときの該共重合体の吸熱ピーク温度で示す。
測定条件:30℃で3分間放置し、ついで220℃まで速度10℃/分で昇温した。
(3)アセタール架橋後の糸収縮率(%)
アセタール架橋処理前後の長さの寸法変化より求めた。
(初荷重1/10g/d下で長さを測定した。)
(4)スチームアイロンテスト
JIS−l−1042に準拠してH−2法によりプレスして、プレス後の風合変化より下記の判断基準で官能検査した。
○:膠着なし(ソフト)
△:少し膠着し、やや硬化
×:膠着し、硬化
(5)チーズ捲きの解舒性
コーンワインダーにて捲取り時の糸切れより判定した。
○:糸切れ回数 0〜1回/Hr
△:糸切れ回数 2〜4回/Hr
×:糸切れ回数 5回以上/Hr
(6)濃色性
染色物を分光光度計C−2000S型カラーアナライザーによって測定した分光反射率をJIS−Z−8722に準じて測定された三刺激値(X,Y,Z)および色度座標(x、y)よりL*値を以下の関係式により算出した。
L*値が小さいほど濃色性が良好である。
L*=116(Y/100)1/3−16
(7)耐光堅牢度
JIS−L−0842に準拠して第2露光法により判定を行った。
(8)熱処理後のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の密度(D)
密度勾配管法によって25℃で熱処理後の嵩高糸の密度を測定し、エチレン−ビニルアルコール系共重合体単独からなる繊維の場合は、嵩高糸の密度が該共重合体の密度となり、該共重合体と他の熱可塑性重合体との複合繊維である場合は、下記の式よりエチレン−ビニルアルコール系共重合体の密度(D)を求めた。
D=TsFs(X−10)/(TsX−10Fs)
D:エチレン−ビニルアルコール系共重合体の密度
Ts:エチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体とからなる複合繊維の密度
Fs:他の熱可塑性重合体の密度
X:他の熱可塑性重合体の複合割合重量%
【0054】
実施例1〜6および比較例1、2
エチレン含有量が44モル%、ケン化度が99%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(融点161.2℃;A成分と称する)とポリエチレンテレフタレート(フェノール/テトラクロロエタン等重量混合溶媒中にて30℃で測定した極限粘度0.65;B成分と称する)を使用し、複合比A成分/B成分=1/1の重量比率で、A成分が鞘部、B成分が芯部に配されるように温度295℃で紡糸し、速度1000m/分で巻き取った。その後、常法により延伸を行い、75デニール/24フィラメントのマルチフィラメントを得た。この延伸糸について下記に示す条件及び2段ヒーターの温度を表1に示すように種々変更して仮撚加工を行った。
糸速 150m/分
オーバーフィード率 0.3% 撚数、Z撚3048T/m
第1段ヒーター温度(中空ヒーター非接触) 120℃
上記条件で得られたそれぞれの仮撚糸を捲きチーズにしたものについて下記に示す組成の処理液中にてチーズ染色機を用いて架橋反応処理を行い還元洗浄を行った。その時、架橋反応処理のpH、温度は表1のように変更した。
処理液:
処理剤 ビスエチレンジオキシノナン 15%owf
ラバジョン(有効成分:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 松本油脂社製)1.5%owf
(酢酸、硫酸、マレイン酸によりpHを変化させた。)
浴比 1:20
酸化洗浄 過酸化水素(35%)3cc/l
けい酸ナトリウム 1g/l
アミラジンD(第一工業製薬社製)1g/l
80℃×20分
【0055】
【表1】
【0056】
表2に得られた仮撚加工糸の評価結果を示すが、これらから明らかなように、本発明の仮撚加工糸は、風合、耐スチームアイロン性、糸の収縮率、チーズ捲きの解舒性のすべてにおいて優れていたが、仮撚加工において第2段ヒーターを使用しなかったものについては、糸の収縮率が大きく、風合いも硬く、160℃を超える高温での耐スチームアイロン性に劣っており、また、仮撚加工を施されていない糸条については、糸の収縮率が非常に大きく風合も硬化し120℃のスチームアイロンで膠着が生じた。
【0057】
【表2】
【0058】
比較例3
処理化合物としてグルタルアルデヒドを15%owfを用いたこと以外は実施例3と同様にして架橋処理を行い、酸化洗浄を行った。評価結果を表2に示す。糸の収縮率が大きく、糸の風合が硬くチーズよりの糸の解除が不可能であった。
【0059】
比較例4,5
架橋処理時の処理浴のpHを表1に示すように変更すること以外は実施例2及び3と同様にして、架橋処理を行い、酸化洗浄を行った。評価結果を表2に示したが、いずれにおいても、風合が硬く、耐スチームアイロン性が悪く、糸の収縮率が大きく、チーズ捲きからの糸の解舒が不可能であった。
【0060】
実施例7
実施例1で用いた繊維のチーズ巻きについてチーズ染色機を用いて下記に示す染色液処理中で架橋処理を施し得られた糸の解除糸についての濃色性、染色物耐光堅牢度の評価を行った。結果を表3に示す。
染色処理液
分散染料:Dianix Tuxedo Black H conc Liquid 15%owf
処理剤: テトラメトキシメナン(TMN)12%owf
ラバジョン(有効成分:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
松本油脂社製)2%owf
(マレイン酸にてpHを調整) pH2.0
浴比 20:1
115℃×40分
還元洗浄 ハイドロサルファイト 1g/l
水酸化ナトリウム 1g/l
アミラヂンD(第一工業製薬) 1g/l 80℃×20分
【0061】
【表3】
【0062】
比較例6
架橋処理化合物として、ノナンジアール12%owfを用いたこと以外は実施例7と同様にして架橋処理を行い還元洗浄を行った。そして実施例と同様にして濃色性、染色物耐光堅牢度の評価を行ったが、表3に示すように濃色性は少なく、耐光堅牢度は不良であった。
Claims (11)
- 下記式[1]を満足するアセタール架橋された融点215℃以下のエチレン−ビニルアルコール系共重合体を少なくとも一成分とする繊維を含むことを特徴とする嵩高糸。
25≧α/R≧8 [1]
式中αは、アセタール架橋処理による、下記式[2];
Tm=234.2−1.659E [2]
(ただし、25≦E≦70)
で求められるアセタール架橋前のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の融点Tmからの融点上昇分(℃)を示し、Rは、架橋アセタール結合の割合であり、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の固体NMR測定によって観測される下記のピーク面積(A,BおよびC)から求めた13C-NMRピーク面積比[(B+C)/A ]を表わす。
A:8ppm〜53ppmの領域のピークの面積
B:98ppmにピークトップをもつピークの面積
C:103ppmにピークトップをもつピークの面積 - 下記式[1]を満足するアセタール架橋された融点215℃以下のエチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体とからなり、該共重合体が繊維表面の少なくとも一部を形成してなる複合繊維を含むことを特徴とする嵩高糸。
25≧α/R≧8 [1]
式中αは、アセタール架橋処理による、下記式[2];
Tm=234.2−1.659E [2]
(ただし、25≦E≦70)
で求められるアセタール架橋前のエチレン−ビニルアルコール系共重合体の融点Tmからの融点上昇分(℃)を示し、Rは、架橋アセタール結合の割合であり、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の固体NMR測定によって観測される下記のピーク面積(A,BおよびC)から求めた13C-NMRピーク面積比[(B+C)/A ]を表わす。
A:8ppm〜53ppmの領域のピークの面積
B:98ppmにピークトップをもつピークの面積
C:103ppmにピークトップをもつピークの面積 - 仮撚糸である請求項1又は2に記載の嵩高糸。
- 他の熱可塑性重合体がポリエステル又はポリアミドである請求項2又は3に記載の嵩高糸。
- 染色されており、L*が14以下、かつ耐光堅牢度が3級以上である請求項4に記載の嵩高糸。
- エチレン−ビニルアルコール系共重合体を少なくとも一成分とする繊維を含む糸条に嵩高加工を施すと同時又は別個に、該共重合体が実質的に溶融又は軟化せず、かつ下記式[3];
D≧4.5×10-3(100−E)+0.86 [3]
(ただし、25≦E≦70)
で示される密度D(g/cm3)を満足するような温度条件で熱処理し、該嵩高糸をPH1.0〜5.0の酸性下で下記一般式(I)で示される少なくとも1種の化合物を含む水溶液中、100℃〜140℃でアセタール架橋処理することを特徴とする嵩高糸の製造方法。
- エチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体とからなり、該共重合体が繊維表面の一部を形成してなる複合繊維を含む糸条に嵩高加工を施すと同時又は別個に、該共重合体が実質的に溶融又は軟化せず、かつ下記式[3];
D≧4.5×10-3(100−E)+0.86 [3]
(ただし、25≦E≦70)
で示される密度D(g/cm3)を満足するような温度条件で熱処理し、該嵩高糸をPH1.0〜5.0の酸性下で下記一般式(I)で示される少なくとも1種の化合物を含む水溶液中、100℃〜140℃でアセタール架橋処理することを特徴とする嵩高糸の製造方法。
- エチレン−ビニルアルコール系共重合体を少なくとも一成分とする繊維を含む糸条に嵩高加工を施すと同時又は別個に、該共重合体が実質的に溶融又は軟化せず、かつ下記式[3];
D≧4.5×10-3(100−E)+0.86 [3]
(ただし、25≦E≦70)
で示される密度D(g/cm3)を満足するような温度条件で熱処理し、該嵩高糸をPH1.0〜5.0の酸性下で下記一般式(I)で示される少なくとも1種の化合物及び染料を含む水溶液中、100℃〜140℃でアセタール架橋処理及び染色処理を同時に行うことを特徴とする嵩高糸の製造方法。
- エチレン−ビニルアルコール系共重合体と他の熱可塑性重合体とからなり、該共重合体が繊維表面の一部を形成してなる複合繊維を含む糸条に嵩高加工を施すと同時又は別個に、該共重合体が実質的に溶融又は軟化せず、かつ下記式[3];
D≧4.5×10-3(100−E)+0.86 [3]
(ただし、25≦E≦70)
で示される密度D(g/cm3)を満足するような温度条件で熱処理し、得られた嵩高糸をPH1.0〜5.0の酸性下で、下記一般式(I)で示される少なくとも1種の化合物及び染料を含む水溶液中、100℃〜140℃でアセタール架橋処理及び染色処理を同時に行うことを特徴とする嵩高糸の製造方法。
- 嵩高加工及び熱処理が仮撚熱処理である請求項6〜9のいずれか1項に記載の嵩高糸の製造方法。
- 他の熱可塑性重合体がポリエステル又はポリアミドである請求項7、9、10のいずれか1項に記載の嵩高糸の製造方法。
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