JP3999224B2 - エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維 - Google Patents

エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維 Download PDF

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Description

本発明は高温染色時やスチ−ムアイロン、あるいは洗濯、乾燥時の繊維間の膠着や過大収縮等を生じることのない耐熱安定性に優れたエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維または該共重体を一成分とする複合繊維に関する。
エチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化物であるエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体からなる繊維は分子中にOH基を有するために親水性、防汚性、防臭気付着性等の点で従来の合成繊維に比較して優れた快適特性を有している。しかしながら、該共重合体の融点や軟化点が低いことから、とくに高温熱水やスチ−ム等の熱安定性に劣る欠点を有している。このため、該共重合体を他の熱可塑性重合体、たとえばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等と複合化し繊維化することにより寸法安定性を改良しようとして各種の提案がなされている(特公昭56−5846号公報、特公昭55−1372号公報、特公平7−84681号公報参照)。
これらの提案には、高温高圧染色や縫製、あるいはスチ−ムアイロンの使用により、織物、編物、不織布等の繊維製品の表面に露出したエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体が部分的に軟化や微膠着を生じ、繊維製品としての風合が硬くなることを防止するために、染色加工等の高温熱水に接触させる前に、ジアルデヒド化合物等を用い、該共重合体の水酸基をアセタ−ル化する方法も開示されている。
しかしながら、該アセタ−ル化処理は現行の染色工程の他に別のアセタ−ル化工程を必要とするため加工コストの問題、さらにはアセタ−ル化処理する際に強酸を高濃度で使用するので処理装置の耐腐食性の問題、染料がアセタ−ル化処理された繊維内部に拡散しにくいことから濃色化の困難性の問題、アセタ−ル化処理時の未反応のジアルデヒド化合物による染色物の退色等の問題が生じ、繊維性能の均一性確保に問題があった。また、アセタ−ル化処理するためのジアルデヒド化合物の種類やそのアセタ−ル化度により、工業的に実施するにはどの種類の化合物、どの程度のアセタ−ル化度を採用するかの見極めが困難であり、実用化には安定性の欠ける技術であった。すなわち、架橋程度により染色物に色差が生じたり、安定な風合が得られず商品価値の非常に低いものしか得られないのであった。
特公昭56−5846号公報 特公昭55−1372号公報 特公平7−84681号公報
本発明の目的は、上述の問題点を解決するものであり、耐スチ−ムアイロン性に優れたエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維を得ること、および均一な濃色染色が可能であり、染色物の退色等がなく、均一な繊維性能を有するエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体を一成分とする複合繊維を得ることを目的とし、工程上、簡略で低コストであり、作業環境上問題のないそれらの繊維の製造方法を提供することにある。さらには染色方法をも提供するものである。
すなわち、本発明は、エチレン含量が30〜50モル%であるエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体が架橋されてなる繊維であって、前記繊維がエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体を下式(1)で表される架橋剤によって架橋することでなり、該繊維の融点が前記架橋前のエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体に対して12℃〜25℃高いことを特徴とするエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維である。
Figure 0003999224
本発明によれば、エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体からなる繊維の耐スチ−ムアイロン性が良好となり、また該共重合体を一成分とする複合繊維の染色が作業環境上問題なく行うことができ、また得られた染色物の発色性がよく、変色もない。さらにかかる複合繊維からなる布帛も耐スチ−ムアイロン性に優れており、衣料用繊維、生活資材用繊維として非常に有用である。
また、下記式(3)で示される有用架橋度(K%)が下記式(4)を満足する繊維であり、下記式(3)と下記式(4)を満足するエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体と他の熱可塑性重合体とからなり、該共重合体が繊維表面の一部を形成してなる複合繊維であることが望ましい。
有用架橋度K(%) =1.2×{(27+m)/35}×(Tmk−Tmo)・・・(
ただし、
mは架橋部分に含まれる直鎖メチレン基および/またはメチン基の数、
Tmkは架橋後のエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維の融点(℃)または複合繊維の場合にはエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体部分の融点、
Tmoは架橋前のエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維の融点(℃)または複合繊維の場合にはエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体部分の融点、を示す。
K(%)≧0.27x+4.9 ・・・・・(
ただし、xはエチレン含有量(モル%)を示す。
本発明に係わるエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体について詳述する。該共重合体はエチレン−酢酸ビニル系共重合体のケン化物である。該共重合体に含有されるエチレンの量は30〜50モル%である。該共重合体のエチレン含有量が高くなる、すなわちビニルアルコ−ル成分の含有量が低くなれば、当然水酸基の減少のために親水性等の特性が低下し、目的とする親水性や防汚性等の効果が低減する。一方、製糸性の面から見ると、ビニルアルコ−ル成分の含有量が高くなりすぎると、溶融紡糸性が低下するとともに、繊維化する際の曵糸性や延伸性が悪化し、単糸切れや断糸につながり、生産合理性に優れるといわれる溶融紡糸繊維には不適となる。
また後述するが、該共重合体と他の熱可塑性重合体との複合紡糸の際、熱可塑性重合体としてポリエステル等の高融点重合体を用いると、必然的に紡糸温度が高くなるため、該共重合体中のビニルアルコ−ル成分の含有量が高くなり過ぎると高温での溶融紡糸が困難となる。
エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体はビニルアルコ−ル成分の含有量が高くなればなるほど乾燥状態で測定する示差走査熱量計(DSC)での融点は高温側にシフトするが、架橋処理前のエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体からなる繊維の融点(Tmo)は図1に示されるように、エチレン成分の含有量に支配される。このため架橋処理後の繊維の結晶部分の融解による融点(Tmk)も、本来のエチレン含有量に支配されることが予想される。架橋処理後の該共重合体繊維の結晶部分のエチレン含有量(xモル%)はX線回折(測定機:マックサイエンス(株)製 DIP1000型X線イメ−ジングプレ−ト装置、解析ソフト:マックサイエンス(株)製 高分子構造解析システム)で特定できるため、架橋処理後の該共重合体繊維の結晶部分のエチレン含有量から予想できる架橋処理前の該共重合体繊維の融点は、図1に示される該共重合体繊維の融点に一致する。
またエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体を一成分とする複合繊維においても、融点とエチレン含有量との関係は成り立ち、架橋後の複合繊維中の該共重合体のエチレン含有量および複合比率から、架橋前の複合繊維中のエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体の融点は同様に容易に予想され得る。
本発明において、上述のごとき架橋されたエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維を得るために使用される処理剤としては下記式()で示される化合物を用いる
Figure 0003999224
式中、R1 〜R4 で示されるアルキル基としては炭素数が1〜4の低級アルキル基が好ましく、中でも使い易さの点でメチル基が好ましい。また該アルキル基はエチレンオキシ基等のアルキレンオキシ基で置換されていてもよく、R1 〜R4 全てが同じ種類のアルキル基であっても異なっていてもよい。さらに環を形成するアルキレン基としては炭素数1〜4の低級アルキレン基が好ましいが、環構造の安定性を考慮すると5員環、6員環が好ましく、したがって炭素数が2〜3個のエチレン基、プロピレン基が好ましい。これらのアルキル基、アルキレン基はいずれも置換基を有していてもよい。
また、該化合物は架橋処理に際しては分岐鎖を持たないことが好ましく、R5は水素であることが好ましい。しかしながら、該化合物は、R5 が炭素数1〜4の低級アルキル基である、いわゆる分岐鎖を有する化合物と、分岐鎖を持たない化合物の混合物であってもよいが、さらに耐熱性に優れた繊維を得る点では分岐鎖を持たない化合物のみ、あるいは分岐鎖を持たない化合物の比率が大きい混合物を使用することがより好ましい。
また、R5 がアルキル基である場合、その数は個まで考えられるが、本発明においては個全部がアルキル基である必要はなく、個のうちの数個がアルキル基であって、残りが水素である場合、すなわち、アルキル基と水素との和が個となる場合をも含む。また、アルキル基は同じ種類の基であっても異なった種類の基が混在していてもよい。
該化合物は末端がアルキル基または環を形成したアルキレン基で封鎖されているために極めて安定であり、空気等の酸素に接触しても酸化されない。この末端封鎖により弱酸性下でも高温高圧にすることにより該化合物自身のアセタ−ル分解反応が進行し、そこに水酸基を有するエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体が共存すると水で膨潤した該共重合体側にアセタ−ル化反応が起こるのである。かかる脱アルコ−ルを伴うアセタ−ルの交換反応(架橋反応)を以後アセタ−ル分解再生反応と称する。
従来、エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維の架橋処理は特開平3−174015号公報に開示されているごとく、硫酸等の強酸を用いて通常1〜2規定の強い酸性下で行われていた。このような従来技術に対し、本発明は弱酸性下で脱アルコ−ルを伴うアセタ−ル分解再生反応を行うものであり、エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体への架橋は単に反応して架橋すればよいというものではない。本発明においては、かかるアセタ−ル分解再生反応処理を施すことにより該共重合体からなる繊維は繊維性能の1つとして、寸法安定性、耐スチ−ムアイロン性、再汚染防止性を有することが必要であり、また該共重合体と他の熱可塑性重合体とからなる複合繊維は繊維性能の1つとして高温染色時の耐熱性や耐スチ−ムアイロン性、均斉な染色性を有し、風合のよい加工が可能なことが必要である。このため、実質的に適性な効果を発現させた架橋繊維となるには有用架橋度が重要な要件となる。
該有用架橋度とはエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体の有する水酸基が全てアセタ−ル化された状態の理論付加量を100とし、重量増加で求められる反応量の比率を架橋度と定義することもできるが、上述のごとき効果を発現させるには架橋部分の長さや架橋された繊維の内部構造が重要な因子となるため、結晶を拘束する状態を示す結晶部分の融点による有用架橋度をここでは定義した。
有用架橋度とは式()で示されるように、エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維の架橋後の融点または複合繊維においては、該複合繊維を形成するエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体の融点Tmkと、架橋前の該共重合体繊維または複合繊維を形成する該共重合体の融点Tmo(前述のように結晶部分のエチレン含有量から推定され得る)と、架橋部分の直鎖状メチレン基および/または直鎖状メチン基の数により決まる値である。ここで、『直鎖状』とは式()で示されるOR1〜4 を有する炭素間の結合を示す。
上述の効果、すなわち、寸法安定性、再汚染防止性を有し、過度の収縮や膠着が高温熱水やスチ−ムアイロンで生じることがなく、また均斉な染色と良好な風合の繊維製品となすためには架橋部分の直鎖状メチレン基および/またはメチン基の数が重要な因子となる。式()では、それらの数(m)が大きければ大きい程有用架橋度に寄与していることがわかる。同じ融点上昇差であれば、mの数が大きい程効果も大きく、mの数が小さい場合には有用架橋度Kが式()を満足するために、強酸性下、たとえば染料やステンレス缶体を腐食させるような強い過酷な条件下でアセタ−ル分解再生反応を行う必要が生じる。かかる場合、目的とする上述の効果を発現させるには工業的な制約が多くなり実用性がなくなる。したがってmの数は2以上、好ましくは4以上が望ましい。mが10を越える場合には架橋成分を構成する化合物が高価な上に、該化合物を水に乳化分散させるのが非常に困難となり、実質上アセタ−ル分開再生反応を行う上で問題となる場合が多い。さらにアセタ−ル分解再生反応中にオリゴマ−ができやすくなり工業的に好ましくない。これらをさらに鑑みて本発明ではmの数が7であることとした。
mの数はアセタ−ル分解再生反応して得られた架橋繊維を脱アセタ−ル化反応し、該アセタ−ル分解再生反応に使用した化合物(アルデヒド)を脱離して液体クロマトグラフィにて分析することにより算出することができる。該有用架橋度Kは、また、式()を満足することが望ましい。すなわち、有用架橋度Kはエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体中のエチレン含有量と密接な関係があり、有用架橋度Kが式()を満足することによって上述の効果、寸法安定性、再汚染防止性を有し、過度の収縮や膠着が高温熱水やスチ−ムアイロンで生じることがないのである。
さらに、熱水中やスチ−ムアイロンにより分子の歪みが緩和されるためか、異常収縮を起こす原因となると推定されるエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体の分子配向を架橋により乱し、下記式()に示される配向係数を0.19以下にすることが好ましい。
配向係数=2(1−D)/(D+2) ・・・・・(
ただし、Dは繊維軸平行偏光PAS面積強度に対する繊維軸垂直偏光PAS面積強度の比を示す。
ここで、配向係数はFTIRに光音響測定装置と偏光板を装着した偏光PAS(PHOTO ACOUSTICS)により測定・算出することができる。配向は分子鎖軸に垂直なバンドの2色比で評価する。垂直バンドとしてメチレンCH2 対象伸縮、逆対称伸縮、メチンCH伸縮バンドを用いた。これらのバンドは2800〜2980cm-1付近に重なって観測されるため、3つのバンドの合計の面積強度で算出した。2色比は繊維軸、偏光方向の関係において(繊維軸に平行な偏光PAS面積強度)/(繊維軸に垂直な偏光PAS面積強度)の値で示され、配向係数は式()で算出される。
アセタ−ル分解再生反応において、上述の式()で示される化合物として、たとえば1,1,9,9−テトラメトキシノナンを使用して、エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体を一成分とする複合繊維を100℃で処理するに際し、触媒として硫酸を使用したとする。そして、その濃度をa)15g/リットル(0.33N規定、pH=1.15)、b)2.25g/リットル(0.05N規定、pH=1.65)、c)0.9g/リットル(0.018N規定、pH=1.9)と変え、架橋反応を行った。酸濃度に拘らず、融点上昇差は20℃以上であったが、架橋処理後の繊維に染色を施したところ、過収縮や膠着は見られないものの、発色性に大きな差が見られた。すなわち、酸濃度が高くなるに従い、発色性が低下する傾向が見られた。
この発色性の差は、酸濃度が高すぎる場合には繊維表面からアセタ−ル分解再生反応が過剰に進行し、繊維表層部の架橋密度が高く、繊維内層部の架橋密度が低いといった架橋密度に差を生じせしめる、所謂一種のスキンコア構造の発生に起因するものと推定される。酸濃度が高い条件ではアセタ−ル分解再生反応速度が速く、処理後の繊維の有用架橋度は高くなるが、有用架橋度が高くなる反面配向係数は低くなる傾向にある。
本発明においては該有用架橋度が重要な因子であるが、配向係数とのバランスも重要であり、有用架橋度が式()を満足し、かつ配向係数が0.19以下であることが好ましく、とくに0.16以下であることが望ましい。本発明においては、上述の有用架橋度を満足すればよいが、上述のように配向係数をも満足することが好ましい。この場合、配向係数が0である場合も含むが、本発明においては有用架橋度を満足していれば、配向係数が0になる場合も実用的繊維物性を有するのである。上述の有用架橋度を満足する繊維を得るためには、アセタ−ル分解再生反応処理における酸濃度を下げる、または実質的な処理温度に達するまでの昇温速度を遅くしたりすることにより、反応処理浴の反応速度を緩やかにするほうが、均一で再現性よい加工が可能となる。
有用架橋度が上述の範囲を越える繊維は染色物の発色性を下げ、洗濯堅牢度の悪化や高温熱水や高温スチ−ムで処理すると膠着や異常収縮が生じやすい。なお、本発明において、式()で示される化合物のOR1〜4 がすべてエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体と反応していることは無論のこと、少なくともそのうちの1つが反応している状態をもアセタ−ル分解再生反応と称する。
本発明に係わるエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体は公知の方法で製造することができる。たとえばメタノ−ル等の重合溶媒中でエチレンと酢酸ビニルをラジカル重合触媒の存在下でラジカル重合させ、ついで未反応のモノマ−を追い出し、水酸化ナトリウムによりケン化反応を生じせしめエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体とした後、水中でペレット化し、水洗して乾燥する。工程上アルカリ金属やアルカリ土類金属が共重合体中に介入されやすく、その量は数百ppm以上である。これらの金属イオンが存在すると該共重合体が熱分解され易いので、100ppm以下、とくに50ppm以下に減少させておく必要がある。かかる方法として、上述の製造工程において湿潤状態のペレットを酢酸を含む大量の純水溶液で洗浄し、さらに大過剰の純水のみで洗浄する方法を挙げることができる。
また、エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体はエチレンと酢酸ビニルとの共重合体を水酸化ナトリウムによりケン化して製造されるが、ケン化度は95%以上であることが好ましい。ケン化度が低すぎると該共重合体の結晶性が低下し強度等の繊維基礎物性が低下してくるのみならず、該共重合体が軟化しやすくなり加工工程上トラブルが発生してくると共に、得られた繊維、繊維製品の風合が悪くなる場合がある。
本発明においては、前述したように該共重合体のみで繊維化してもよいし、目的に応じ他の熱可塑性重合体と複合してもよい。かかる熱可塑性重合体としては耐熱性、寸法安定性等の点で融点が150℃以上の結晶性熱可塑性重合体が好ましく、具体的にはポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等を挙げることができる。ポリエステルとしてはテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4'−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類;エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、シクロヘキサン−1,4−ジメタノ−ル、ポリエチレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル等のジオ−ルからなる繊維形成性のポリエステルを挙げることができ、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレ−ト単位またはブチレンテレフタレ−ト単位であるポリエステルが好ましい。また、該ポリエステル中には少量の添加剤、たとえば蛍光増白剤、艶消剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤等が含有されていてもよい。ポリアミドとしてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を主成分とする脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドを挙げることができ、少量の第3成分を含有するポリアミドでもよい。該ポリアミドにも少量の添加剤、たとえば蛍光増白剤、艶消剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤等が含有されていてもよい。
エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体と他の熱可塑性重合体とからなる複合繊維において、複合比は前者:後者(重量比)=10:90〜90:10、とくに30:70〜70:30であることが紡糸性の点で好ましい。また複合形態は従来公知の複合形態であれば特に限定はなく、偏心芯鞘型、多層貼合型、サイドバイサイド型、ランダム複合型等を挙げることができる。エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体の有する親水性をおよび風合改良性を発現させるためには、複合繊維の断面周長の少なくとも一部、好ましくは該断面周長の30%以上がエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体であることが好ましい。
かかる複合繊維も該繊維を構成するエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体が式()で示される有用架橋度が式()を満足するものである。このような複合繊維において、上述の有用架橋度における各々の係数、たとえば直鎖メチレン基および/またはメチン基の数(m)はアセタ−ル分解再生反応して得られた複合繊維を脱アセタ−ル化反応し、該アセタ−ル分解再生反応に使用した化合物(アルデヒド)を脱離して液体クロマトグラフィにて分析することにより算出することができる。また、複合繊維を形成するエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体の融点は示差走査熱量計(DSC)により複合繊維の形態のまま測定、算出することができる。
次に、このようにして得られたエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体からなる繊維、あるいは該共重合体と他の熱可塑性重合体とからなる複合繊維の架橋処理方法(アセタ−ル分解再生反応)について詳述する。上述したように、一般に、ポリビニルアルコ−ル、エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体等の水酸基を有するポリマ−は耐熱水性を向上させるためにグルタルアルデヒド、グリオキザ−ル、ノナンジア−ル等のジアルデヒドによりアセタ−ル化する処理(架橋処理)がなされている。しかしながら、これらのジアルデヒドは空気中の酸素により酸化されやすく、経時安定性が非常に悪い。そのため、該ジアルデヒドを用いてのアセタ−ル化の効率が悪く、反応収率が悪い。また、アルデヒド特有の刺激臭があり、作業環境も悪い問題がある。さらに染色と同時に該ジアルデヒドを添加して使用する場合に、アルデヒドの還元性により染料を変質させ、とくに染色物の耐光性を悪化させる問題がある。
このような問題に対して、本発明においてはアセタ−ル化処理(架橋処理)に使用する架橋剤として、上述した式()で示される化合物を用いることによりこれらの問題を一挙に解決することができたのである。該化合物は水に難溶性であるので、水溶液として使用する場合、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムや多環型フェノ−ルのオキシアルキレン変性スルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤等を使用して乳化状態にして使用することができる。他に水−アルコ−ルの混合溶媒を用いることもできる。該化合物の濃度は処理されるエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体に対して10〜40重量%であることが好ましく、とくに15〜30重量%であることが好ましい。
またアセタ−ル分解再生反応速度の調整剤として、また後述する同時染色の場合の染料の加水分解抑制剤として、強酸と強塩基とからなる無機塩を用いることが好ましく、汎用性の点で硫酸ナトリウムを使用することが好ましい。
本発明において、適切な有用架橋度を得るには硫酸のごとき強酸を触媒として使用してもよいが、その場合には0.05規定以内の酸濃度でアセタ−ル分解再生反応を進めることが好ましい。
酸性度は塩酸、硫酸等の鉱酸;酢酸、ギ酸、マレイン酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸などによって調整することができる。なかでも処理装置の耐腐食性の点で有機酸が好ましい。水溶性の酸以外にも活性白土やイオン交換樹脂などの固体酸を使用してもよい。
処理液のpHが1.0未満の場合には、処理繊維の最表層の架橋が優先し有用架橋度の点で好ましくないばかりか、繊維の着色、黄変の問題が生じ、また、後述する同時染色の場合には染色物の退色、耐光堅牢性不良の問題が生じる。一方、pHが5.0を越える場合には、処理温度、処理時間等の条件を過酷にしないとアセタ−ル分解再生反応が進行しにくく、初期の目的である良好な風合を有し、耐熱水性の向上した架橋繊維を得ることができにくい。染料の劣化防止やアセタ−ル分解再生反応処理の点でpHは2.0以上が望ましく、また4.0以下であることが望ましい。
式()で示される有用架橋度Kが式()を満足するためには、処理温度を100℃以上、140℃以下、とくに110℃以上、135℃以下にすることが望ましい。該処理温度が100℃未満の場合には上述のpHの範囲においてアセタ−ル分解再生反応速度が著しく遅くなり、有用架橋度が低下し、安定な風合や耐熱水性、耐スチ−ムアイロン性の効果が奏されにくい。一方、処理温度が140℃を越えると処理後の繊維が過大収縮を起こして硬くなり、繊維製品としての風合が大きく損なわれることになる。
本発明において、高温染色時やスチ−ムアイロン、あるいは工業洗濯、乾燥時の膠着、接着、過大収縮等を生じることなく、工業的な生産安定性、均一架橋性に優れたエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維または複合繊維とするためには、有用架橋度が大きな因子となることは上述した通りである。微細構造的には、架橋部分は繊維の非晶部分に属するため、構造として適格な表現が困難であった。前述した架橋による重量増加で求められる反応量の比率から得られた架橋度の評価では再現性よい繊維製品が得られず、風合の異なるものが続出し、均斉性の点で大きな問題があった。
そこで式()で示される架橋用化合物の直鎖状のメチレン基および/または直鎖状メチン基の数と架橋前後の融点上昇差について検討した結果、式()で示されるように、該架橋用化合物の直鎖状のメチレン基および/または直鎖状メチン基の数が大きい程架橋効果が発現し、融点上昇差が小さくても有用な効果を発現することが判明したが、さらに、該有用架橋度がエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体のエチレン含有量と特定の関係式を満足することにより上述の効果を奏することが判明したのである。
本発明においては、上述のアセタ−ル分解再生反応処理前にエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維、または該共重合体を一成分とする複合繊維を該共重合体の融点以下の温度で乾熱処理を行うことにより、該繊維または該複合繊維の耐熱水性が一層向上する。とくに該共重合体の(融点−5)℃〜(融点−20)℃の範囲の温度で乾熱処理を行うことが好ましい。この理由は定かではないが、かかる処理は、該共重合体の微細構造の結晶化を促進させ、アセタ−ル分解再生反応処理による架橋の導入、より一層の分子運動の拘束によって耐熱水性の向上が顕著となると推察される。このため縫製時のアイロン、一般家庭使用時のスチ−ムアイロンによっても繊維の軟化、膠着を防ぐことができる。
本発明においてはエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体からなる繊維、または該共重合体を一成分とする複合繊維を、上述の式()で示される化合物を用いて特定の条件でアセタ−ル分解再生反応処理を行うことにより、該繊維または該複合繊維の耐熱水性が非常に向上するが、単に耐熱水性の向上だけに止まらない。すなわち、該アセタ−ル分解再生反応処理と同時に染色処理を行うことができるのである。その上、同時染色された物を脱色し、再度染色処理を施すことができ、淡色のみならず、濃色の染色物の色の変更が可能である。とくに、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性重合体との複合繊維おいて効果がある。ただし、アセタ−ル分解再生反応処理に使用される酸触媒の種類によっては染料が酸により分解されるので、場合によっては二段染色を行う場合もある。
一方、アセタ−ル分解再生反応と同時に染色処理を行うと収縮性が抑制され、また染料分子が拡散染着されると同時に架橋結合が導入されるため濃色染が可能となる。なお、濃色染の場合、染色後にアセタ−ル分解再生反応処理を行うと色の退色が生じるので好ましくない。エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体からなる繊維、該共重合体を鞘成分とする複合繊維の濃色染においてはかかる手段を用いることが好ましいが、他の複合形態の複合繊維または淡色染の場合にも好適である。工程簡略化の点において、同時架橋染色は有効な手段である。なお、従来のジアルデヒドを用いてアセタ−ル化と同時に染色を施すことは、染料の分解が激しいので濃色が不可能である。かかる同時架橋染色処理において、染料として分散染料を用いる場合には、分散染料の耐加水分解性を考慮して、マレイン酸、酢酸、酢酸アンモニウム等によってpH2.0〜4.0の範囲に調整することが好ましい。この場合、分散染料の加水分解抑制剤として硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。
さらに、架橋促進作用のある公知の剤、たとえばβ−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等を併用すると、耐熱水性向上効果が奏される。本発明の処理は繊維のまま行われてもよいが、該繊維からなる織編物または該繊維を含む織編物、不織布等の布帛の形態で処理を行うことが工程上、また操作容易性の点で好ましい。
本発明に係わる繊維または複合繊維は短繊維のみならず長繊維をも示すものであり、短繊維としては衣料用ステ−プル、乾式不織布、湿式不織布、湿熱不織布等がある。もちろん、該繊維または複合繊維の100%使いであっても、他の繊維との混綿で不織布を作製してもよい。しかしながら、ある程度の比率以上、本発明の繊維または複合繊維を混合させなければ本発明の効果が十分に得られないことはいうまでもない。
また、本発明の繊維または複合繊維は長繊維でも良好な発色性と良好な風合を兼ね備えたものが得られ、アンダ−ウエア、ユニフォ−ム、白衣、外衣等に最適である。さらに本発明に係わる繊維または複合繊維はカ−テン、壁装材などの生活資材用品にも適用できる。さらに、本発明に係わる繊維または複合繊維は仮撚捲縮加工等の高次加工により、5角、6角等の多角形に類似した断面形状になったり、紡糸時の異形断面ノズルにより3〜8葉形等の多葉形、T字形、U字形などの各種の断面形状となったものでもよい。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法により測定されたものである。
(1)繊維の配向係数
上述の偏光PASを使用して、繊維軸に平行な面の面積強度と繊維軸に垂直な面の面積強度を測定し、式()により算出した。
(2)アセタ−ル化反応率(%)
染色物(架橋処理済)を57%のピリジン水溶液を用いてソックスレ−抽出を行い、染料を除去した。ついで70℃にて減圧乾燥(0.1mmHg)を15時間行い絶乾した後の重量Wを測定した。また染色、架橋処理前の布帛を70℃にて減圧乾燥(0.1mmHg)を15時間行い絶乾した後の重量をW0 とし、その差(W−W0 )を架橋剤の重量増加率Wtとし、下記式にて反応率を算出した。
アセタ−ル化反応率(%)=(Wt/x)×100
ただし、xは架橋剤の処理濃度%owfを示す。
(3)繊維の融点(℃)
示差走査熱量計(DSC)により以下の条件で測定して吸熱ピ−ク温度で示す。
測定条件:30℃で3分間放置し、ついで220℃まで速度10℃/分で昇温した。
なお、架橋処理前の融点は架橋処理後の繊維のエチレン含有量をX線回折で測定して求め、図1で示される検量線により求めた。また、試料が複合繊維の場合にはそのまま測定し、低温度側のピ−クをエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体の融点とした。
(4)寸法変化(%)
アセタ−ル分解再生反応処理前後の試料を、白衣用90℃工業洗濯後比較し、視覚的な寸法変化がないものを○と評価した。
(5)再汚染防止効果(級)
白衣用90℃工業洗濯後の試料についてJIS L 0805 汚染用グレ−スケ−ル、環境はL 0801に準拠して測定した。
(6)濃色性
染色物を分光光度計C−2000S型カラ−アナライザ−によって測定した分光反射率をJIS Z 8722に準じて測色された三刺激値(X,Y,Z)および色度座標(x,y)よりL* 値を以下の関係式により算出した。該値が小さいほど濃色性が良好である。
L* =116(Y/100)1/3 −16
(7)染着率(%)
染色前後の染料溶液をアセトン/水(容量比1/1)の混合溶媒により希釈し、その希釈液の吸光度測定して下記式により染着率を算出した。
染着率(%)=〔(A−B)/B〕×100
A:染色前の希釈染料溶液の最大吸収波長における吸光度
B:染色後の希釈染料溶液の最大吸収波長における吸光度
(8)耐光堅牢度:JIS L 0842に準拠して第2露光法により判定を行った。
(9)スチ−ムアイロン性評価
JIS L 1042に準拠し、プレス収縮率のH−3法により測定評価した。評価基準を下記に示す。
○:膠着・収縮は全く見られなかった。
△:わずかに膠着が見られた。
×:膠着・収縮が激しくゴワゴワしていた。
実施例1〜6および比較例1〜4
重合溶媒としてメタノ−ルを用い、60℃でエチレンと酢酸ビニルをラジカル重合させ、表1に示すエチレン含有量のランダム共重合体を製造した。ついで水酸化ナトリウムによりケン化処理を行い、ケン化度99%以上のエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体を得た。ついで湿潤状態のポリマ−を酢酸が少量添加されている大過剰の純水で洗浄を繰り返した後、さらに大過剰の純水で洗浄を繰り返し、ポリマ−中のアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの含有量をそれぞれ約10ppm以下とし、その後脱水機によりポリマ−から水を分離してさらに100℃以下で真空乾燥を十分に実施した。該ポリマ−の重合度は600〜1000の範囲であった。得られたこのポリマ−を押出機により押出し、口金温度260℃の条件でノズルより吐出し、1000m/分の速度で紡糸を行った。その後常法により延伸を行い、75デニ−ル/24フィラメントのマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントを経糸および緯糸として使用し、1/1の平織物を作製した。該生機織物を水酸化ナトリウム1g/リットルとアクチノ−ルR−100(松本油脂社製)0.5g/リットルを含む水溶液で80℃、30時間糊抜きを行った。糊抜きの後、該織物を下記に示す処理液中に浸漬してアセタ−ル分解再生反応処理を行い、還元洗浄を行った。アセタ−ル化処理のpH、温度の変化に伴う評価結果を表1に示す。
処理液:
処理剤 テトラメトキシノナン 5g/リットル
ラバジョン(有効成分:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 松本油脂社製) 0.5g/リットル
(酢酸、硫酸、ギ酸、マレイン酸によりpHを変化させた。)
浴比 50:1
処理時間 130℃×40分
還元洗浄 ハイドロサルファイト 1g/リットル
水酸化ナトリウム 1g/リットル
アミラジンD(第一工業製薬社製) 1g/リットル
80℃×20分
表1から明らかなように、処理化合物としてテトラメトキシノナンを使用しても処理条件が異なることによって、処理後の繊維の有用架橋度が大きく異なり、本発明の範囲を満足しない繊維は90℃における工業用洗濯後の寸法変化が大きく、風合も硬くなり、160℃のスチ−ムイロンで膠着が生じた。
比較例5
実施例3において、処理化合物としてグルタルアルデヒド5g/リットル用いた以外は同様にしてアセタ−ル分解再生反応処理を行い、還元洗浄を行った。アセタ−ル化処理のpH、温度の変化に伴う評価結果を表1に示す。アセタ−ル化反応率が非常に低く、処理後の繊維の有用架橋度も低く、織物の風合が硬く、スチ−ムアイロンテストも120℃で膠着が見られた。
比較例6
実施例1において、下記に示す処理液中でアセタ−ル分解再生反応処理を施して、得られた織物の評価を行った。結果を表1に示す。アセタ−ル化反応率が非常に低く、処理後の繊維の有用架橋度も低く、織物の風合が硬く、スチ−ムアイロンテストも160℃で膠着が見られた。
処理液
処理剤: ノナンジア−ル 3g/リットル
ラバジョン(有効成分:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリ ウム 松本油脂社製)
0.5g/リットル (酢酸にてpHを調整した。)
浴比 50:1
130℃×40分
還元洗浄
ハイドロサルファイト 1g/リットル
水酸化ナトリウム 1g/リットル
アミラジンD(第一工業製薬社製) 1g/リットル
80℃×20分
比較例7
実施例1において、テトラメトキシノナンに代えて、テトラメトキシプロパン3.1g/リットルを使用した以外は同様にしてアセタ−ル分解再生反応を行い還元洗浄を行った。評価結果を表1に示す。アセタ−ル化反応率は低く、処理後の有用架橋度も本発明を満足するものではなかった。したがって120℃のスチ−ムアイロン性はまずまずであったが、温度を上げるに従い、繊維が膠着し織物の風合が硬くなった。
比較例8
比較例7において、pHを2.0にして処理した以外は同様にしてアセタ−ル分解再生反応を行い、還元洗浄を行った。アセタ−ル化反応が進行し過ぎてポリマ−の結晶破壊が生じて非晶部が多くなり、融点がかえって低下してしまった。120℃のスチ−ムアイロンにより繊維が膠着・収縮し織物の風合が硬くなった。
Figure 0003999224
実施例7〜8
固有粘度0.65(フェノ−ル/テトラクロロエタンの等重量混合溶液にて30℃で測定)のイソフタル酸10モル%含有したポリエチレンテレフタレ−トチップ(B成分と称する)と、エチレン含有量32モル%のエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体(ケン化度99%、融点181℃)チップ(A成分と称する)を用い、複合比A/B=1/1の芯鞘複合繊維を得た(Aが鞘部を、Bが芯部を形成)。温度250℃で紡糸し、速度1000m/分で巻き取った。得られた紡糸原糸を通常のロ−ラプレ−ト方式の延伸機を用いて、75℃の熱ロ−ラ、140℃の熱プレ−トに接触させて延伸倍率が3倍となるように延伸を施し、50デニ−ル/24フィラメントの複合フィラメントを得た。この複合フィラメントを経糸および緯糸として使用し、経糸には300T/MのZ撚を、緯糸には2500T/MのZ撚および2500T/MのS撚を施し、2本ずつ交互に緯打ちを行ったサテンクレ−プを製織した。生機密度は経糸185本/寸、緯糸98本/寸であった。この生機に下記に示す精練糊抜き処理を行い、ついで下記に示す処理液にてアセタ−ル分解再生反応と染色の同時処理を行い、還元洗浄を行った。そして170℃のファイナルセットを行った(実施例7)。
また、上記の生機サテンクレ−プをシュリンクサファ機により無緊張状態で170℃の乾熱処理を行い、精練糊抜きを行った後に下記の条件でアセタ−ル分解再生反応処理同時染色、還元洗浄およびファイナルセットを行った(実施例8)。得られた2種類の織物の評価を行い、結果を表2に示す。
精練糊抜処理:ソ−ダ灰 2g/リットル
アクチノ−ルR-100(松本油脂社製) 0.5g/リットル
90℃×30分
処理液:
処理剤テトラメトキシノナン 5g/リットル
ラバジョン(有効成分:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
松本油脂社製)0.5g/リットル
染料:DIANIX TUXEDO BLACK HCONC PAST 15%owf
ディスパ−TL(明成化学工業社製) 1g/リットル
(酢酸、硫酸、ギ酸等によりpHを変化させる)
浴比 50:1
135℃×40分(液流高温)
還元洗浄 ハイドロサルファイト 1g/リットル
水酸化ナトリウム 1g/リットル
アミラジンD(第一工業製薬社製) 1g/リットル
80℃×20分
比較例9
実施例8において、アセタ−ル化処理剤としてノナンジア−ル3g/リットルを用いた以外は同様にして精練糊抜処理、アセタ−ル分解再生反応処理同時染色、還元洗浄を行い、染色物の評価を行った。染料が酸により分解してしまい、満足に染色ができなかった。また、耐光堅牢度も満足できるものではなく全く実用的でなかった。
実施例9
実施例8において、アセタ−ル分解再生反応処理剤として1,1,9,9−ビスエチレンジオキシノナン5g/リットルを用いた以外は同様にして精練、糊抜き処理、アセタ−ル分解再生反応処理、染色、還元洗浄、ファイナルセット温度160℃で乾熱処理を行い、染色物の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 0003999224
実施例10
実施例8において、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体のエチレン含有量を44モル%にし、マレイン酸を酸触媒とした以外は同様にして精練、糊抜き処理、アセタ−ル分解再生反応処理、染色、還元洗浄、ファイナルセット温度160℃で乾熱処理を行い、染色物の評価を行った。結果を表3に示す。
実施例11〜12
実施例10において、アセタ−ル分解再生反応処理化合物として1,1,9,9−ビスエチレンジオキシノナン5g/リットルを用いた以外は同様にして精練、糊抜き処理、アセタ−ル分解再生反応処理、染色、還元洗浄、ファイナルセット温度160℃で乾熱処理を行い、染色物の評価を行った。結果を表3に示す。
実施例13
実施例9において、マレイン酸を酸触媒とし、処理温度を130℃とした以外は同様にして精練、糊抜き処理、アセタ−ル分解再生反応処理、染色、還元洗浄、ファイナルセット温度160℃で乾熱処理を行い、染色物の評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0003999224
実施例14〜16
固有粘度0.62(フェノ−ル/テトラクロロエタンの等重量混合溶液にて30℃で測定)のポリエチレンテレフタレ−トチップ(B成分と称する)と、エチレン含有量44モル%のエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体(ケン化度99%、融点165℃)チップ(A成分と称する)を用い、複合比A/B=2/1、A成分が6層、B成分が5層の交互貼合わせ型複合繊維を得た。温度250℃で紡糸し、速度1000m/分で巻き取った。得られた紡糸原糸を通常のロ−ラプレ−ト方式の延伸機を用いて、75℃の熱ロ−ラ、140℃の熱プレ−トに接触させて延伸倍率が3倍となるように延伸を施し、50デニ−ル/24フィラメントの複合フィラメントを得た。この複合フィラメントを経糸および緯糸として使用し、常法により2/1の斜文織を作成したこの織物を80℃で糊抜き、精練を行い、ついで110℃の乾燥を施し、155℃のプレセットを行った。このプレセット織物について水酸化ナトリウム20g/リットル濃度、処理温度90℃でアルカリ減量、分割を施し、極細調織物とした。
得られた極細調織物を下記に示す染色組成液中に浸漬してアセタ−ル分解再生反応処理を行い、還元洗浄を行った。ついで乾燥を行い、染色物の評価を行った。結果を表4に示す。
処理液:
処理剤 1,1,9,9-ヒ゛スエチレンシ゛オキシノナン 15%owf
ラバジョン(有効成分:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
松本油脂社製) 0.5g/リットル
染料: DIANIX BLUE BG-FS 200 NEW 15%owf
(酢酸、硫酸、マレイン酸等によりpHを変化させる)
浴比 50:1
115℃×40分(液流高温)
還元洗浄 ハイドロサルファイト 1g/リットル
水酸化ナトリウム 1g/リットル
アミラジンD(第一工業製薬社製) 1g/リットル
80℃×20分
比較例10〜12
実施例14において、酸触媒の種類、pH、処理温度を表4に示すように代えた以外は同様にして極細調織物を作成し、アセタ−ル分解再生反応同時染色、還元洗浄、乾燥を行った。得られた染色物の評価結果を表4に示す。酸濃度が高すぎると、繊維の過大収縮により織物は硬化し実用的でなく、また処理温度が高すぎても繊維が非晶化して過大収縮を起こし、織物が硬化して風合的に非常に問題があった。
Figure 0003999224
実施例17
固有粘度0.65のイソフタル酸10モル%変性ポリエチレンテレフタレ−トチップ(B成分と称する)と、エチレン含有量44モル%のエチレン−ビニルアルコ−ル共重合体(ケン化度99%、融点165℃)チップ(A成分と称する)を用い、各々別の押出機で溶融させた後、紡糸パック内で複合比A/B=1/1の比率でスタチックミキサ−(2分割、6エレメント)を通してほぼ層状に混合した。ついで口金より吐出して900m/分の速度で巻き取った。得られた紡糸原糸を1浴75℃、2浴85℃、ト−タル延伸倍率2.62倍で3デニ−ルの繊維を得た。ついで常法により捲縮付与、切断を行って3デニ−ル、54mmの原綿を作成した。
この原綿を用いて目付100g/m2 のカ−ドウエブを作成した後、ウオ−タ−ジェット交絡処理を行った。カ−ドウエブ形成の段階までは繊維が層状に分裂することはなく、フィブリル化も少なかったが、80kg/cm2レベルの高圧水流により容易に分割することができた。引き続き100℃の乾燥機を通して分割極細フィブリル交絡処理を施した不織布原布を得た。この原布に実施例16と同様にして架橋同時染色を行った。染色条件は115℃×40分であった。処理後の不織布に適度な起毛を形成させ、165℃の仕上げセットを施した結果、柔軟で手触りのよいセ−ム革調の不織布が得られた。該不織布は耐スチ−ムアイロン性に優れる上、工業洗濯、繰り返し使用に耐え、かつ拭き取り性のよい高感性、デュアラブルワイパ−として使用できることがわかった。
架橋処理前のエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体からなる繊維のエチレン含有量(モル%)と該共重合体の融点との関係を示す図である。

Claims (4)

  1. エチレン含量が3050モル%であるエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体が架橋されてなる繊維であって、前記繊維がエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体を下記式(1)で表される架橋剤によって架橋することでなり、該繊維の融点が前記架橋前のエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体に対して12℃〜25℃高いことを特徴とするエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維。
    Figure 0003999224
  2. エチレン含量が3050モル%、下記式(1)で表される架橋剤によって架橋することでなり、該繊維の融点が前記架橋前のエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体に対して12℃〜25℃高いエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体と、他の熱可塑性重合体とからなり、該共重合体が繊維表面の一部を形成してなる複合繊維。
    Figure 0003999224
  3. 下記式()に示す配向係数が0.19以下であることを特徴とする請求項1記載のエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体からなる繊維。
    配向係数=2(1−D)/(D+2) ・・・・(
    ただし、Dは繊維軸平行偏光PAS面積強度に対する繊維軸垂直偏光PAS面積強度の比を示す。
  4. 下記式()に示す配向係数が0.19以下のエチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体であること特徴とする請求項2記載の複合繊維。
    配向係数=2(1−D)/(D+2) ・・・・(
    ただし、Dは繊維軸平行偏光PAS面積強度に対する繊維軸垂直偏光PAS面積強度の比を示す。
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