JP4467736B2 - 洗濯堅牢度の良好な架橋繊維およびその製造方法 - Google Patents
洗濯堅牢度の良好な架橋繊維およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4467736B2 JP4467736B2 JP2000246775A JP2000246775A JP4467736B2 JP 4467736 B2 JP4467736 B2 JP 4467736B2 JP 2000246775 A JP2000246775 A JP 2000246775A JP 2000246775 A JP2000246775 A JP 2000246775A JP 4467736 B2 JP4467736 B2 JP 4467736B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polymer
- fiber
- polyoxyalkylene
- crosslinking
- phenyl ether
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Landscapes
- Multicomponent Fibers (AREA)
- Artificial Filaments (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビニルアルコール系重合体を少なくとも一成分とする複合繊維において、高温染色時やスチームアイロン時の膠着や過大収縮等の生じることのない耐熱安定性、および洗濯堅牢度の優れた架橋繊維およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビニルアルコール系重合体からなる繊維は、分子内に水酸基を有するために親水性、防汚性の点で優れた快適特性を有している。しかしながら、該重合体の融点が低いことから、特に高温熱水やスチーム等の熱安定性に劣る欠点を有している。このため、該重合体を他の熱可塑性、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等と複合化し繊維化することにより寸法安定性を改良しようとして各種の提案がなされている(特公昭56−5846号公報)。
【0003】
これらの提案には、高温高圧染色や縫製、あるいはスチームアイロンの使用により、織物、編物、不織布等の繊維製品の表面に露出したオレフィン−ビニルアルコール系共重合体が部分的に軟化や微膠着を生じ、繊維製品としての風合が硬くなることを防止するために染色加工時の高温熱水に接触する前に、ジアルデヒド等を用い、該重合体の水酸基をアセタール化する方法も開示されている(特公平7−84681号公報)。
【0004】
しかしながら、該アセタール化処理後の架橋繊維について、分散染料等により染色処理を行うと、特に該架橋繊維が結晶化エンタルピーを有しない場合には、洗濯堅牢度、特に洗濯液汚染が悪いという問題があった。また、該重合体が結晶化エンタルピーを有する場合にも洗濯堅牢度の評価という点では、洗濯堅牢度が悪い製品が見られるという問題もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の問題を解決するものであり、耐熱性、耐スチームアイロン性、洗濯堅牢度に優れた、ビニルアルコール系重合体を少なくとも一成分とする繊維を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、架橋構造を有するエチレン−ビニルアルコール系重合体(A)を少なくとも一成分とする繊維において、(C)1、1、9、9−ビスエチレンジオキシノナン、及び(D)アルキルアリールスルホン酸塩並びに/またはポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテル硫酸塩、及び(E)ヒマシ油アルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸部分エステル並びにポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテルのうち1種または2種以上、が用いられて架橋処理された架橋繊維であって、該重合体中の非晶領域における架橋密度が下記式(1)を満足することを特徴とする架橋繊維である。
【数3】
【0008】
さらに本発明は、エチレン−ビニルアルコール系重合体(A)を少なくとも一成分とする繊維について、(C)1、1、9、9−ビスエチレンジオキシノナン、及び(D)アルキルアリールスルホン酸塩並びに/またはポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテル硫酸塩、及び(E)ヒマシ油アルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸部分エステル並びにポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテルのうち1種または2種以上、を用いてアセタール化架橋反応を行い、該重合体中の非晶領域における架橋密度が下記式(1)を満足することを特徴とする架橋繊維の製造方法である。
【数4】
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明におけるビニルアルコール系重合体からなる繊維を構成する重合体は、ポリビニルアルコールはもちろんのこと、例えば、共重合によりオレフィン等を導入したオレフィン−ビニルアルコール系共重合体であってもよいが、溶融紡糸性、繊維物性の点から、共重合体成分としてオレフィンを導入したオレフィン−ビニルアルコール系共重合体が好ましく用いられる。
【0010】
オレフィン−ビニルアルコール系共重合体に用いられるオレフィンとして、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン等を使用することができるが、入手のしやすさの点からエチレン、プロピレンを共重合成分とするビニルアルコール系共重合体が好ましく、特にエチレン−ビニルアルコール系共重合体が好ましい。
【0011】
次に本発明で使用されるビニルアルコール系重合体の製造方法について述べる。メタノール等の重合溶媒中で酢酸ビニルと、必要に応じてエチレン等のオレフィンを共重合体成分として用い、ラジカル重合触媒下でラジカル重合させ、ついで未反応のモノマーの追い出し、ついで苛性ソーダによりケン化反応を起こさせ、ビニルアルコール系重合体とした後、水中でペレット化した後、水洗して乾燥する。また、ビニルアルコール系重合体のケン化度は、95%以上にすることが好ましい。ケン化度が低くなると、重合体の結晶性が低下し、強度等の繊維物性が低下してくるのみならず、該重合体が軟化しやすくなり加工工程でトラブルが発生してくるとともに、得られた繊維構造物の風合も悪くなり好ましくない。
【0012】
オレフィン−ビニルアルコール系共重合体の一例としてエチレン−ビニルアルコール系共重合体について述べると、共重合体におけるエチレン含有量は25mol%から70mol%であることが好ましい。25mol%よりも少なくなる、すなわちビニルアルコール含有量が75mol%よりも多くなると、紡糸または延伸時に単糸切れ、断糸が発生しやすくなり、しかも柔軟性のある繊維が得られにくい。また、後述するが該重合体と他の熱可塑性重合体とからなる複合繊維において、他の熱可塑性重合体としてポリエチレンテレフタレートのような高融点重合体を使用した場合には通常250℃以上の高い紡糸温度を使用するが、その場合にエチレン含有量が25mol%よりも少ないとエチレン−ビニルアルコール系共重合体の耐熱性が不十分になり、良好な複合繊維が得られにくくなる。
【0013】
一方、エチレン含有量が70mol%を超えると、ビニルアルコール単位、すなわち水酸基の割合が必然的に少なくなり、その結果、架橋反応の割合が減少して、目的とする耐熱水性の効果が奏されにくい。
【0014】
本発明におけるビニルアルコール系重合体からなる繊維の製造方法においては、公知の溶融紡糸装置を用いることができる。すなわち、溶融押出機でビニルアルコール系重合体のペレットを溶融混練し、溶融した重合体流を紡糸頭に導き、ギアポンプで計量し、紡糸ノズルから吐出させた糸条を巻き取ることで得られる。
【0015】
本発明においては、該重合体は単独で繊維化してもよいし、目的に応じて他の熱可塑性重合体と複合紡糸してもよい。かかる他の熱可塑性重合体としては、耐熱性、寸法安定性等の点から、融点が150℃以上の結晶性熱可塑性重合体であることが好ましく、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等をあげることができる。
【0016】
ポリエステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、α,β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4,4'−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸またはこれらのエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオールまたはこれらのエステル形成性誘導体とから合成されるポリエステルや、ポリ乳酸等のポリエステルをあげることができ、中でも構成単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位または、ブチレンテレフタレート単位であるポリエステルが好ましい。また、かかるポリエステル中には、少量の添加剤、蛍光増白剤、安定剤、紫外線吸収剤が含まれていてもよい。
【0017】
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12を主成分とする脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミドをあげることができ、少量の第3成分を含むポリアミドでもよい。かかるポリアミド中には、少量の添加剤、蛍光増白剤、安定剤、紫外線吸収剤等が含まれていてもよい。
【0018】
ビニルアルコール系重合体(A)と他の熱可塑性重合体との複合繊維を使用する場合、両重合体の複合比は前者:後者(質量比)=10:90〜90:10であることが紡糸性の点で好ましい。また複合形態は、芯鞘、サイドバイサイド、積層等の従来公知の複合形態であれば、特に限定はないが、該重合体(A)が繊維表面の少なくとも一部分に露出していることが必要であり、重合体(A)の有する親水性、風合改良性を発現させるためには、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上露出していることが好ましい。
【0019】
次に、架橋構造を有するビニルアルコール系重合体からなる繊維の製造方法について詳述する。一例として、オレフィン−ビニルアルコール系共重合体からなる繊維について述べると、該繊維は、一般に耐熱水性を向上させるために架橋剤として、ジアルデヒドおよび/または、ジルデヒド誘導体を用いてアセタール化架橋処理が行われる。
【0020】
架橋処理方法としては、浴中処理法、パディング法、コーティング法、スプレー法、気流処理法など、通常の加工処理法をあげることができる。そのうちでも、浴中処理法が、繊維の水による膨潤が起こり、繊維中に架橋剤が分散しやすく、また架橋反応の均一性の点から好ましい。
【0021】
従来、ジアルデヒドおよび/またはジアルデヒド誘導体による架橋度としては、オレフィン−ビニルアルコール系共重合体のビニルアルコール単位の数を100とした場合にジアルデヒドおよび/またはジアルデヒド誘導体が1〜10%付与されていること、すなわちジアルデヒドおよび/またはジアルデヒド誘導体の反応性基が全てビニルアルコール系単位の水酸基を反応したと仮定すると、上記の4倍、すなわち水酸基の4〜40%となるように架橋反応が行われていた。
【0022】
そして前記アセタール化架橋処理で、耐熱水性向上は認められるが、オレフィン−ビニルアルコール系共重合体とポリエステル等の熱可塑性重合体と複合紡糸を行い、該複合繊維を分散染料等で染色した場合は、洗濯堅牢度、中でも洗濯液汚染が悪い。また後述するが、特に120℃を超える高温でアセタール化架橋反応を行った場合は、処理後、該重合体中に結晶領域が存在しない、すなわち結晶化エンタルピーを有しない場合がある。この場合、上記の架橋度を満たすことで耐熱水性の向上は見られるが、洗濯液汚染が悪いという現象が認められた。このことから、架橋反応は単に架橋度が所定の値を満たしていればよいというわけではない。
【0023】
また、該重合体(A)中に結晶領域が存在している場合にも、架橋度が低い架橋繊維の場合については、(B)成分として、ポリエステル等を用いた場合に高温染色を行うと、染色後に該(A)成分の結晶領域が破壊され、洗濯堅牢度が悪化するという問題もあった。
【0024】
これらの問題は、該繊維の架橋物中に存在する架橋されていない非晶領域が洗濯堅牢度の悪化に大きく影響しており、重合体中における非晶領域の存在量に応じて架橋量を調整する必要がある。本発明においては、非晶領域における架橋密度を下記式(1)にて定義し、所望の架橋密度を満たすまでアセタール化架橋処理を行うことで、上記の問題が一挙に解決したのである。
【数5】
【0025】
本発明において、架橋密度とは式(1)で示されるように、ビニルアルコール系重合体の架橋量Rm、該重合体中のビニルアルコール量Pm、および架橋後における該重合体の結晶化エンタルピー△Hにより規定される値である。ここで、ビニルアルコール系共重合体の架橋量Rmは、架橋による質量増加率△Wtおよび、架橋部分に含まれる直鎖メチレンおよび/またはメチン基の数により規定される。ここで言う「直鎖」とは、化合物(1)で示されるOR1 〜 4を有する炭素間の結合を示す。ビニルアルコール量Pmは、複合繊維におけるビニルアルコールの複合比A、該重合体への共重合体変性量mにより規定される値である。該重合体の結晶化エンタルピー△Hは、示差走査熱量計(DSC)にて測定することにより得られる値である。本発明において、該架橋密度が所定の値以上であれば、良好な洗濯堅牢度および風合のものが得られることに特徴がある。本発明により得られる架橋繊維は、洗濯堅牢度、特に洗濯液汚染が3〜5級と良好な染色品が得られるのである。
【0026】
本発明における架橋密度は、30以上必要である。該密度が30より小さいと染色後の洗濯堅牢度が悪くなる。一方、架橋密度が80を超えると染色物の発色性が悪くなることから、該密度は80以下であることが好ましい。
【0027】
アセタール化架橋処理に用いる化合物としては、グルタルアルデヒド、グリオキザール、1,9−ノナンジアール等のジアルデヒドが挙げられるが、これらのジアルデヒドは、空気中の酸素により酸化されやすく、経時安定性が悪い。そのため、該ジアルデヒドを用いてのアセタール化の反応効率が悪く、架橋密度の向上が困難となる。そこで、本発明においては、下記一般式(1)で示される化合物を用いることが好ましい。
【0028】
【化1】
【0029】
ここで式中、R1〜R4で表されるアルキル基としては炭素数が1〜4のアルキル基が好ましく、中でも使いやすさの点でメチル基が好ましい。また、該アルキル基はエチレンオキシ基等のアルキレンオキシ基で置換されていてもよい。また、R1〜R4の全てが同じ種類のアルキル基であってもまたは異なっていてもよい。さらに、R1とR2および/またはR3とR4が結合して環を形成するアルキレン基である場合、アルキレン基としては炭素数1〜4のアルキレン基が好ましいが、環構造の安定性を考慮すると5員環または6員環が好ましく、従って炭素数が2〜3個のエチレンまたはプロピレン基が好ましい。これらのアルキル基、アルキレン基はいずれも置換基を有していてもよい。
【0030】
また、上記一般式(1)で表される式中、nは化合物(1)を複数使用して処理する場合には、その組成比に照らし合わせて算出した値であり、整数とは限らない。化合物(1)は、架橋処理に際しては分岐鎖を持たないことが好ましく、そのためR5は水素であることが好ましい。しかしながら、化合物(1)は、R5が炭素数1〜4のアルキル基である、いわゆる分岐鎖を有する化合物と、分岐鎖を有しない化合物の混合物であってもよいが、耐熱性に一層優れる繊維が得られる点で、分岐鎖を持たない化合物のみ、あるいは分岐鎖を持たない化合物の比率が大きい混合物を使用することがより好ましい。
また、化合物(1)におけるnは1〜10の数である。n個存在するR5は、全て同じ基、例えば、全てが水素であっても、例えば、アルキル基と水素の和がn個となるように混在した場合も含む。また、アルキル基としては同じ種類の基であっても、または異なった種類の基が混在していてもよい。
【0031】
本発明では、化合物(1)として、1種類の化合物のみを使用しても、またはnが異なる複数の化合物を混合して用いてもよい。nが異なる化合物の混合物を使用する場合は、該化合物におけるnの平均値が1〜10の範囲であればよい。本発明では、化合物(1)におけるnの値[化合物(1)の混合物の場合はnの平均値]が5〜9であることが、架橋処理された繊維製品の風合の点から好ましい。
【0032】
化合物(1)の好ましい具体例としては、1,1,6,6−テトラメトキシヘキサン、1,1,6,6−テトラエトキシヘキサン、1,1,7,7−テトラメトキシヘプタン、1,1,7,7−テトラエトキシヘプタン、1,1,8,8−テトラメトキシオクタン、1,1,8,8−テトラエトキシオクタン、1,1,9,9−テトラメトキシノナン、1,1,9,9−テトラエトキシノナン、1,1,9,9−ビスエチレンジオキシノナン、1,1,9,9−ビスプロピレンジオキシノナン、1,1,10,10−テトラメトキシデカン、1,1,10,10−テトラエトキシデカン、1,1,11,11−テトラメトキシウンデカン、1,1,11,11−テトラエトキシウンデカンなどを挙げることができる。これらの化合物は単独で使用しても、または2種類以上を用いてもよい。そのうちでも、架橋繊維の風合の点から、1,1,9,9−テトラエトキシノナン等の1,1,9,9−テトラアルコキシノナン、1,1,9,9−ビスエチレンジオキシノナン、1,1,9,9−ビスプロピレンジオキシノナン等の1,1,9,9−ビスアルキレンジオキシノナンが好ましく用いられ、特に、1,1,9,9−ビスエチレンジオキシノナンが好ましく用いられる。
【0033】
上記の化合物のうち、水に難溶解のものは、アニオン系界面活性剤を2〜25質量%、非イオン系界面活性剤を2〜30質量%の割合で乳化して使用することが好ましい。アニオン系界面活性剤としてアルキルアリールスルホン酸塩および/またはポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテル硫酸塩を用い、そして非イオン系界面活性剤として、ヒマシ油アルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸部分エステルおよびポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテルのうちの1種または2種以上を用いると、化合物(1)の乳化安定性、起泡抑制効果などが良好なものとなる。
化合物(1)の濃度は、処理されるオレフィン−ビニルアルコール系共重合体繊維に対して、5〜40質量%であることが好ましく、特に20〜30質量%が好ましい。
【0034】
本発明においてアセタール化架橋処理は、酸性下で行われ、酸性度は塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸によって調整することができる。なかでも処理装置の耐腐食性の点で有機酸が好ましく使用される。水溶性の酸以外にも活性白土やイオン交換樹脂などの固体酸を使用してもよい。
【0035】
アセタール化架橋処理は、pH=1〜5の酸性下で行うのが好ましい。pHが1未満での強酸下での処理は、着色、黄変の問題が生じ、耐光性不良の問題が生じる。一方、pHが5を超えての処理は、処理温度、処理時間等の処理条件を過酷にしないと、アセタール化が不十分となり、架橋密度の向上を達成することができない。アセタール化架橋処理の点から、処理液のpHは2〜4が好ましい。
【0036】
アセタール化架橋処理を行い、所望の架橋密度を得るには、処理温度は、90℃以上、120℃以下が好ましい。90℃未満の処理温度では上述のpH範囲において、アセタール化速度が著しく遅くなるため、アセタール化による架橋が不十分となり、所望の架橋密度が得られにくい。一方、120℃を超えた処理温度では、繊維が過大収縮を起こし、布帛の風合が損なわれる場合がある。
【0037】
染色処理は、アセタール化架橋処理時に同時に行うこともできる。その際、耐酸性の良い染料を選択しなければ、染料の発色性が悪化する場合がある。またアセタール化処理後に通常の染色処理を行うこともできる。
【0038】
本発明において処理される繊維の形態は特に限定されず、例えば、ワタ状、短繊維状、長繊維状、綛状、布帛状、網状、衣類やその他の繊維製品のいずれの形態であってもよいが、該繊維からなる織編物または該繊維を含む織編物、不織布等の布帛の形態で処理を行うことが工程上、また操作容易性の点で好ましい。
【0039】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法により測定されたものである。
(1)質量増加率(質量%)
架橋処理後の布帛を60℃にて減圧乾燥(133Pa)を12時間行い絶乾した後の重量Wを測定した。また、架橋処理前の布帛を60℃にて減圧乾燥(133Pa)を12時間行い絶乾した後の重量をW0とし、その差(W−W0)を架橋剤の重量増加率とした。
(2)結晶化エンタルピー(J/g)
示差走査熱量計(DSC)により以下の条件で測定して、吸熱ピーク面積で示す。
測定条件:35℃で1分間放置し、ついで300℃まで速度10℃/分で昇温した。なお、試料が複合繊維の場合にはそのまま測定し、低温度側のピークをエチレン−ビニルアルコール系共重合体のピークとした。
(4)洗濯堅牢度(洗濯液汚染)
JIS L 0844(A−2法)に準拠して測定評価を行った。
(5)風合
架橋処理後の乾燥布帛を手で触れて調べ、下記のような基準で評価した。
○:膠着がなく、ソフトな風合。
△:微膠着が見られ、やや硬化していた。
×:膠着が見られ、硬化していた。
【0040】
実施例1〜3、比較例1〜2
重合溶媒としてメタノールを用い、60℃下でエチレンと酢酸ビニルをラジカル重合させ、エチレン含有量が44mol%のランダム重合体を作製し、ついで苛性ソーダによるケン化処理を行い、ケン化度99%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物とした後、湿潤状態の重合体を酢酸が少量添加されている大過剰の純水で洗浄を繰り返し、重合体中のK,Naのアルカリ金属イオン及びMg,Caのアルカリ土類金属イオン含有量をそれぞれ約10ppm以下とし、その後、脱水機により重合体から水を分離した後、更に100℃以下で真空乾燥を十分に実施して固有粘度[η]=1.05dl/g(85%含水フェノールを溶剤とし30℃下で測定)の重合体を得た。熱可塑性ポリマーとして、[η]0.62dl/g(溶媒としてフェノールとテトラクロルエタンの等量混合溶媒を用い30℃恒温槽中でウーベローデ型粘度計を用いて測定した)のポリエチレンテレフタレートを用い、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリエチレンテレフタレート(B)を複合比A/B=1/1の芯鞘複合繊維を得た(Aが鞘部を、Bが芯部を形成)。紡糸温度は260℃、紡糸速度1000m/分で巻き取った。
得られた紡糸原糸を延伸して、83dtex/24fの複合フィラメントを得た。その後、この複合フィラメントを用いて編物を作製した。
【0041】
この編物を水酸化ナトリウム1g/lとアクチノールR−100(松本油脂社製)を0.5g/l含む混合液で80℃、30分間糊抜きした。その後、ピンテンターにて145℃でプレセットした。その後、架橋剤として1,1,9,9−ビスエチレンジオキシノナン(BEN)を用い、該架橋剤を表1に示す割合で混合して架橋処理剤を調製した。その後、架橋処理剤にてアセタール化架橋処理を行った。ついで、下記条件にて染色、還元洗浄を行った。そして、145℃でファイナルセットを行った。ファイナルセット後の該編物の洗濯堅牢度等の評価を行った。結果を表2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
架橋処理条件:
架橋処理剤(BEN等乳化組成物) 表2に記載
メイスターSA(アニオン界面活性剤:明成化学工業製) 1g/L
(マレイン酸等によりpHを調整)
115×40分
【0044】
染色条件:
Kayalon Polyester Navy Blue TK-SF200 2質量%
ディスパーTL(明成化学工業製) 1g/L
酢酸 0.5mL/L
浴比 1:20
温度 115℃×40分
【0045】
還元洗浄:
水酸化ナトリウム 1g/L
アミラヂンD(第一工業製薬社製) 1g/L
ハイドロサルファイト 1g/L
浴比 1:20
温度 80℃×20分
【0046】
【表2】
【0047】
表2から明らかなように、架橋密度が30以上のものについては洗濯堅牢度が3級以上と良好であり、かつ良好な風合のものが得られた。一方、架橋密度が30未満のものについては洗濯堅牢度が悪い結果が得られた。
【0048】
以上の結果から、ビニルアルコール系重合体からなる繊維について、架橋密度を設定し、該繊維について架橋密度が所定の値となるように架橋を行うことで、洗濯堅牢度の良好な繊維製品が得られることがわかった。
Claims (8)
- 架橋処理剤である、(C)1、1、9、9−ビスエチレンジオキシノナン、及び(D)アルキルアリールスルホン酸塩並びに/またはポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテル硫酸塩、及び(E)ヒマシ油アルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸部分エステル並びにポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテルのうち1種または2種以上、の架橋処理剤濃度が10〜20質量%で架橋処理された請求項1記載の繊維。
- 重合体(A)のエチレン含有量が25〜70mol%である請求項1または2記載の繊維。
- 重合体(A)と他の熱可塑性重合体(B)とからなる繊維であって、該重合体(A)は繊維表面の少なくとも一部分に露出していることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の繊維。
- 架橋処理剤である、(C)1、1、9、9−ビスエチレンジオキシノナン、及び(D)アルキルアリールスルホン酸塩並びに/またはポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテル硫酸塩、及び(E)ヒマシ油アルキレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸部分エステル並びにポリオキシアルキレントリスチリルフェニルエーテルのうち1種または2種以上、の架橋処理剤濃度が10〜20質量%である請求項5記載の製造方法。
- 重合体(A)のエチレン含有量が25〜70mol%である請求項5または6記載の製造方法。
- 重合体(A)と他の熱可塑性重合体(B)とからなる繊維であって、該重合体(A)は繊維表面の少なくとも一部分に露出していることを特徴とする請求項5〜7のいずれか記載の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000246775A JP4467736B2 (ja) | 2000-08-16 | 2000-08-16 | 洗濯堅牢度の良好な架橋繊維およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000246775A JP4467736B2 (ja) | 2000-08-16 | 2000-08-16 | 洗濯堅牢度の良好な架橋繊維およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002061028A JP2002061028A (ja) | 2002-02-28 |
JP4467736B2 true JP4467736B2 (ja) | 2010-05-26 |
Family
ID=18737017
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2000246775A Expired - Lifetime JP4467736B2 (ja) | 2000-08-16 | 2000-08-16 | 洗濯堅牢度の良好な架橋繊維およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4467736B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2020067489A1 (ja) * | 2018-09-28 | 2020-04-02 | 株式会社クラレ | ポリビニルアルコールフィルム及びそれを用いた偏光フィルムの製造方法 |
-
2000
- 2000-08-16 JP JP2000246775A patent/JP4467736B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002061028A (ja) | 2002-02-28 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100418824B1 (ko) | 에틸렌-비닐알콜계공중합체섬유및이의제조방법 | |
JP2911657B2 (ja) | 高吸湿・吸水性エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維およびその製造方法 | |
JP2002220741A (ja) | 複合繊維、中空繊維および該複合繊維を用いた中空繊維の製造方法 | |
JP4467736B2 (ja) | 洗濯堅牢度の良好な架橋繊維およびその製造方法 | |
JP6002468B2 (ja) | 複合繊維及び該複合繊維より得られる極細カチオン可染ポリエステル繊維 | |
JP2001336024A (ja) | 微粒子を包埋する架橋繊維およびその製造法 | |
JP5646387B2 (ja) | 複合繊維および該複合繊維を用いた中空繊維の製造方法 | |
JP4633247B2 (ja) | 多孔中空繊維及びその製造方法 | |
JP2842539B2 (ja) | 制電性複合繊維 | |
JP2000248427A (ja) | ポリエステル繊維 | |
JP3618509B2 (ja) | エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維の製造方法 | |
JP2003105627A (ja) | ポリエステル系多孔中空繊維およびその製造方法 | |
JPH05106111A (ja) | エチレン−ビニルアルコール系共重合体中空繊維およびその製造方法 | |
JP2003073970A (ja) | 中空繊維及び繊維構造物 | |
JP3887119B2 (ja) | 形態保持性に優れた水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールフィラメント | |
JP3756857B2 (ja) | 複合繊維 | |
JP3618505B2 (ja) | 高発色性エチレン−ビニルアルコ−ル系共重合体繊維 | |
JP3478503B2 (ja) | エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維のアセタール化方法 | |
JP3999224B2 (ja) | エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維 | |
JP4578670B2 (ja) | 複合繊維および該複合繊維を用いた中空繊維の製造方法 | |
JP2002155426A (ja) | 複合繊維および該複合繊維を用いた中空繊維の製造方法 | |
JP4531244B2 (ja) | 複合繊維および該複合繊維を用いた中空繊維の製造方法 | |
JP4556290B2 (ja) | 脂肪族ポリエステル系繊維含有繊維構造物の製造方法 | |
JP2001055639A (ja) | ポリエステル特殊混繊糸 | |
JP3941902B2 (ja) | 嵩高糸およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20070227 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20091106 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20091110 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20100112 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20100202 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20100224 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 4467736 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130305 Year of fee payment: 3 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |