JP3093069B2 - 光応答性カリックスアレーン誘導体を用いるイオン選択性電極 - Google Patents

光応答性カリックスアレーン誘導体を用いるイオン選択性電極

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JP3093069B2 JP04361438A JP36143892A JP3093069B2 JP 3093069 B2 JP3093069 B2 JP 3093069B2 JP 04361438 A JP04361438 A JP 04361438A JP 36143892 A JP36143892 A JP 36143892A JP 3093069 B2 JP3093069 B2 JP 3093069B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、イオン選択性電極に関
し、特に、光に応答して複数のイオンに対する選択性を
発揮する新規なイオン選択性電極に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】イオン選択性電極は、臨床検
査の分野において、H+、Na+、K+、Ca2+、Mg2+
などのイオンの濃度を測定する手段として多用されてい
る。その他に、イオン選択性電極は、環境、食品、医
療、バイオテクノロジーなど各種の産業分野において特
定のイオンを分析するのに使用することもできる。
【0003】イオン選択性電極は、作用電極に用いる物
質(ニュートラルキャリヤと称される)が、特定の単一
イオンに対して選択的に反応することを利用するもので
ある。例えば、Na+選択性電極とは、専らナトリウム
イオンのみを選択的に測定するための電極であり、その
他に、K+選択性電極とかCs+選択性電極と呼ばれるも
のも同様である。すなわち、従来のイオン選択性電極は
幾つかのイオンが混在するサンプル液中の特定の一種類
のイオンのみを分析することを目的としたものであり、
単一の電極により異種のイオンの分析することは不可能
であった。かくして、例えば、ナトリウムイオン(Na
+)とセシウムイオン(Cs+)を測定しようとすれば、
少なくとも2つのイオン選択性電極、すなわち、Na+
選択性電極とCs+選択性電極が必要であった。単一の
装置で複数のイオンの分析を行おうとすれば、電極部や
検出部の構成は複数かつ大型になり、このことは、当然
コストの面からも好ましくなくなる。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、イオン選択
性電極のニュートラルキャリヤについて研究を重ねるう
ち、光に応答して可逆的に構造変化し、この構造変化に
応じて固有のイオン選択性が異なる物質を見出し、これ
を利用することにより単一の電極で異なる複数のイオン
を分析できるイオン選択性電極を完成した。
【0005】かくして、本発明は、25−位および27
−位、または、26−位および28−位が9−アントリ
ルオキシ−エチル基で置換されたカリックス[4]アレ
ーン誘導体をニュートラルキャリヤとして、アントラセ
ンに重なるような吸収スペクトルを有していない可塑剤
を含有するポリマー中に分散して得られた膜状物を作用
電極に用いることを特徴とするイオン選択性電極を提供
する。
【0006】本発明において用いるニュートラキャリヤ
物質の原料となるカリックスアレーンとは、複数個のフ
ェノール単位がメチレン基で結合された環状オリゴマー
であり、原子や分子の認識素子として特異な性質を発揮
するので、近年、ホスト・ゲスト化学における新しいホ
スト化合物として研究されているものである。本発明者
は、カリックスアレーンの金属原子に対する認識機能に
注目し、各種のカリックスアレーン誘導体を合成し研究
を行った結果、2個のアントラセン基(bianthracene)
が結合した上述のカリックスアレーン誘導体において
は、光の照射によって選択的に認識されるイオン種が異
なることを見出した。
【0007】本発明において用いられるこのカリックス
アレーン誘導体は、フェノール単位が4個のカリックス
アレーン、すなわちカリックス[4]アレーン分子の2
5−位および27−位(または26−位および28−
位)が9−アントリルオキシーエチル基(9−anthrylo
xy-ethyl)で置換されたbianthracene含有化合物の一種
であり、次の式〔化1〕で表され得る。
【0008】
【化1】
【0009】上述の式〔化1〕で示されるカリックスア
レーン誘導体におけるXおよびY(Y1、Y2)として
は、本発明の目的を損なわない限り、従来よりカリック
スアレーン誘導体に用いられている各種の原子団または
官能基が可能である。Xはカリックス[4]アレーン分
子全体がコンホメションとしてコーン(cone)構造をと
り易いような基であることが好ましい。好ましいXの例
としては、−Cn2n+1[nは2以上の整数であり、好
ましくは2〜5の整数である]、−(CH2CH2O)m
CH2CH3[mは1以上の整数であり、好ましくは1〜
4の整数である]、または、−CH2CO2CH2CH3
挙げられる。特に好ましいXの例は、CH2CH2OCH
2CH3である。Y1およびY2は、一般に同一であるが、
別異であってもよい。Y1およびY2は可塑剤との親和性
に関係するものと考えられる。Y1またはY2として好ま
しい例は、−H、−C(CH33[t−ブチル基]、ま
たは−C(CH32C(CH33[t−オクチル基]で
ある。
【0010】2個のアントラセン基を有する化合物が光
二量化反応を起こすことは従来より知られているが、こ
の反応を、電極における特定のイオンに対する選択性と
結びつけた系は見当たらない。本発明は、上記の〔化
1〕で表されるようなカリックスアレーン誘導体を可塑
剤含有ポリマーを用いて膜状化してイオン選択性電極に
適用することにより、光の照射の前後でイオン選択性が
変化する系を見出したことに基づくものであり、この系
は図1のように示すことができる。
【0011】すなわち、25−位および27−位(また
は26−位および28−位)が9−アントリルオキシ−
エチル基で置換されたカリックスアレーン誘導体を含む
膜状物は、350nm以上の波長の光(可視光)が照射
されるとナトリウムイオンに対する選択性が著しく高く
なるが、これは、光二量化反応によって生じた図1のB
の状態においては、Na+と反応(錯化)するのにきわ
めて好適な空腔が形成されているためと考えられる。驚
くべきことに、本発明に従う系は、可視光の照射後、暗
中に放置しておくか、または、280nm以下の波長の
光(紫外光)を照射すると、ナトリウムイオンとは別異
のイオンに対する顕著な選択性を示す。これは、光二量
化していない(図1のAの状態の)カリックスアレーン
誘導体を含む系においては、可塑剤そのものが有するイ
オン選択性が発揮されるためと理解される。但し、可塑
剤としては、アントラセンの吸収スペクトルに重なるよ
うな吸収帯を有していないものを用いる。
【0012】光二量化していないカリックスアレーン誘
導体から成る電極が選択性を発揮するイオンの種類は、
用いる可塑剤によって異なる。例えば、リチウム選択性
を得るためには、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフ
ェート(TOP)、ジオクチルフェニルホスフェート
(DOPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)の
ようなリン酸系の可塑剤を用いる。また、セシウム選択
性を得るためには、ジ(2−エチルヘキシル)セバケー
ト(DOP)またはジ(エチルヘキシル)アジペート
(DOA)などのようなアントラセンに重なる吸収を持
たない芳香族系または脂肪酸系の可塑剤を用いる。
【0013】本発明において用いる膜状物を調製するた
めのポリマーとしては、イオン選択性電極の作用電極用
の膜に使用されている各種の材料が可能であるが、好ま
しいのは、ポリ塩化ビニルおよびポリ塩化ビニリデンで
あり、ポリ塩化ビニル(PVC)が特に好ましい。
【0014】かくして、本発明に従うイオン選択性電極
の好ましい具体例としては、〔化1〕のY1、Y2がt−
ブチル基である次の式〔化2〕で表されるカリックス
[4]アレーン誘導体をニュートラルキャリヤとし、可
塑剤TOP[n−トリオクチルホスフェート]を含有す
るPVC中に分散させた膜を用いるNa+−Li+選択性
電極、さらに、可塑剤DOP[n−ジオクチルフタレー
ト]またはDOS[ジ(2−エチルヘキシル)セバケー
ト]含有PVCに分散させて得た膜を用いるNa+−C
+選択性電極がある。
【0015】
【化2】
【0016】本発明において用いるアントラセン基含有
カリックスアレーン誘導体は、図2に示すような合成ル
ートに従って調製することができる。各工程における調
製法は、大略、次のようになる。
【0017】i)化合物(1)[9−(2−ブロモエト
キシ)アントラセン]の調製:アントラセン、水酸化ナ
トリウムおよび18−クラウン−6を1,2−ジブロモ
エーテルと水に溶かし、25℃で3日間攪拌した後、有
機層を分離、溶媒を除去する。残留物をクロロホルム/
ヘキサン中で再結晶すると化合物(1)が得られる。
【0018】ii)化合物(2)の調製:出発物質となる
テトラヒドロキシカリックス[4]アレーン誘導体に、
ブロモ試薬(BrX)および炭酸カリウムをアセトン中
で添加し、1〜4日間、75℃で反応させる。溶媒を除
去した後、固形分を希塩酸と水で洗浄する。クロロホル
ム/ヘキサン中で再結晶すると化合物(2)が得られ
る。
【0019】iii)化合物(3)の調製:化合物(1)
および(2)をNaHとともにTHF中に溶解し、75
℃で1〜3日間、窒素雰囲気下に反応させる。混合物を
冷却した後、メタノールを添加してNaHをクウェンチ
し、溶媒を除去する。得られた固形分をシリカゲルカラ
ムを用いて精製すると、化合物(3)が得られる。
【0020】本発明に従い、イオン選択性電極に好適な
膜状物を得るには、上記のようにして得られたカリック
スアレーン誘導体を、PVCのようなポリマーおよび可
塑剤とともに(通常は、これに、感度を上げるために親
油性の添加剤を付加することが多い)、適当な溶媒に均
一に溶解した後、溶媒を除去すればよい。このとき、カ
リックスアレーン誘導体/PVC/可塑剤から成る系の
全体に対して、カリックスアレーン誘導体を約1.50
〜8.0重量%になるように配合するのが好ましい。ま
た、可塑剤は、(可塑剤+PVC)に対して20.0〜
50.0重量%で使用するのが好ましく、特に約30重
量%が好ましい。
【0021】このようにして得られた膜は、従来より知
られた方法に従ってイオン選択性電極の作用電極を作成
するのに用いられる。図3および図4は、典型的なイオ
ン選択性電極の構成を概示するものである。
【0022】図3に示すように、イオン選択性電極を用
いて電位を測定するには、エレクトロメータ1に作用電
極2と標準電極3とが接続される。後述するように、作
用電極2に、本発明に従うカリックスアレーン誘導体を
含む膜状物が使用される。測定すべき試料の溶液5は、
磁気攪拌機で攪拌され、この試料溶液に塩橋4(0.1
モル酢酸リチウム)が浸漬されている。塩橋4の他端
は、飽和塩化カリウム水溶液6に浸漬し、これに銀/塩
化銀標準電極3が投入されている。
【0023】図4は、作用電極2をさらに詳細に図示し
たものである。銀/塩化銀内部標準電極として機能する
銀線11が電極ホルダー12(例えば、アクリル樹脂製
またはPVC製)内に挿入され、内部標準液13(10
-3モル塩化ナトリウム溶液)に接触している。このホル
ダーの一端に、本発明に従う光応答性カリックスアレー
ン誘導体を含有する膜状物14が取付けられる。したが
って、上述した装置の電気化学的セルとしての全体の構
成は次のように表すことができる:Ag/AgCl|a
q.NaCl(1×10-3mol dm-3)|光応答性膜状物
|試料溶液|aq.酢酸リチウム(1×10-1mol d
m-3)|KCl(飽和)|Ag/AgCl。
【0024】本発明に従うイオン選択性電極は、光の照
射によって、選択的な測定の対象となるイオンの種類を
異ならせることができる。このためには、図4のAに示
すように、電極の外部から光(図中、Lで示す)を照射
する。または、別の態様として、図4のBに示すように
光繊維(オプチカルファイバー)15を介して光(L)
を電極の内部から照射してもよい。
【0025】上述したような装置を用いて測定を行え
ば、当該分野でよく知られているように、測定データか
らNicolsky-Eisenmanの式に従って選択係数を計算する
ことにより、特定のイオン間の選択性を評価することが
できる。その詳細は適当な参考書や文献に記載されてい
るので省略するが大略次のように行われる。すなわち、
選択性を評価しようとする基準イオン(例えば、N
+)と妨害イオン(Mとする)の一定濃度(例えば、
1×10-4mol dm-3)および一定温度(例えば、25
℃)における測定電位が、それぞれ、ESおよびEMとな
った場合、EM−ESを当該温度におけるネルンストの式
から算出される理論勾配値で除せば、選択係数(log K
Na,M)が得られる。この値は小さいほど、基準イオンが
妨害イオンに対して高い選択性を有することを示す。
【0026】本発明に従う光応答性カリックスアレーン
誘導体を用いる電極は、2つの異なる対象イオンに対す
る選択性電極として機能するという特異な性質を有しな
がら、いずれのイオンを測定する場合においても、イオ
ン選択性電極として従来から要求されているような性能
を保有している。例えば、電極の応答速度は充分に高
く、僅か5〜10秒以内に定常状態に到達する。また、
1×10-1から1×10-4mol dm-3の濃度範囲にわたっ
てネルンストの式に合致するかまたはネルンストの式に
近似されるような応答が得られる。ネルンスト勾配の値
は、50〜62mv/decadeの範囲にある。
【0027】以下、本発明の特徴をさらに明らかにする
ために、実施例に沿って本発明を説明する。
【0028】
【実施例】実施例1:カリックスアレーン誘導体の調製 9−(2−ブロモエトキシ)アントラセンの調製: アン
トロン(25.0g)、ジシクロヘキサノ−18−クラ
ウン−6(0.70g)を含有する1,2−ジブロモエ
タン溶液300ml、および、水酸化ナトリウム(2
5.0g)水溶液とを室温において窒素雰囲気で3日間
攪拌した。有機層を分離し、1N HCl(50ml×
3)と水(50ml×4)で洗浄した後、無水MgSO
4で乾燥した。溶媒を減圧除去した後、得られた黄色固
形物をヘキサン/クロロホルム混合溶媒中で再結晶し
て、9−(2−ブロモエトキシ)アントラセンの黄色結
晶を得た。28.6g(収率73.8%);融点126
〜127℃;質量スペクトル(EI)m/e301(M
+);元素分析値C63.97、H4.39(計算値C
63.81、H4.35)。
【0029】5,11,17,23−テトラ−t−ブチ
ル−25,27−ジヒドロオキシ−26,28−ビス
(2−エトキシエトキシ)カリックス[4]アレーンの
調製:前に〔化2〕として示した5,11,17,23
−テトラ−t−ブチル−25,26,27,28−テト
ラヒドロキシカリックス[4]アレーン(25.0
g)、K2CO3(32.0g)、および2−ブロモエチ
ル−エチルエーテル(50.0g)を300mlのアセ
トンに溶かして得た溶液を還流温度において窒素雰囲気
に4日間加熱反応させた。溶媒を減圧除去した後、残留
物をクロロホルムで抽出(50ml×3)した。得られ
るクロロホルム溶液を1N HCl(50ml×3)と
水(50ml×4)で洗った後、無水MgSO4で乾燥
した。溶媒を減圧除去し、得られた白色固形分をヘキサ
ン/クロロホルム中で再結晶して、下記の〔化3〕で示
される所望の化合物を得た。15.61g(収率58.
4%);融点167〜168℃;質量スペクトル(E
I)m/e792(M+);元素分析C78.54、H
9.16(計算値C78.74、H9.15)。
【0030】
【化3】
【0031】5,11,17,23−テトラ−t−ブチ
ル−25,27−ビス(2−エトキシエトキシ)−2
6,28−[2−(9−アントリルオキシ)エトキシ]
カリックス[4]アレーンの調製:上記のようにして得
られた9−(2−ブロモエトキシ)アントラセン(1
0.0g)、〔化3〕で示す化合物(1.00g)およ
びNaH(1.0g)を50mlのTHFに溶かして得
た溶液を、暗中において、還流温度下、5日間窒素雰囲
気の下に加熱・反応させた後、室温まで冷却した。残留
NaHをクウエンチするためメタノールを添加した。溶
媒を蒸発除去した後、残留物を300mlのクロロホル
ムに溶かし、1N HCl(50ml×3)および水
(50ml×4)で洗浄した後、無水MgSO4で乾燥
した。溶媒を減圧除去して得られた黄色固形分をシリカ
ゲルカラムを用いるクロマトグラフィ(流出液ヘキサン
/クロロホルム3:1混合溶媒)で分離し、下記〔化
4〕で示される所望のカリックス[4]アレーン誘導体
を得た。0.34g(収率21.8%);融点177〜
178℃、質量スペクトル(SIMS)m/e1233
(M+)、1256([M+Na]+);元素分析C8
1.91、H7.95(計算値C81.78、H7.8
4)。
【0032】
【化4】
【0033】実施例2:膜状物の調製 PVC(分子量n=1100)50mg、可塑剤として
TOP[トリス(2−エチルエキシル)ホスフェート]
100mg、親油性添加剤KTpClPB(テトラ−ビ
ス−p−クロロフェニルボロン酸カリウム)1mg、お
よび実施例1で調製した式〔化4〕のカリックスアレー
ン誘導体5mgを1,2−ジクロロエタン3mlに溶解
させた。得られた溶液をペトリ皿(直径3.0cm)に
注ぎ、窒素雰囲気下に暗中で3日間、室温下において溶
媒を蒸発させたところ、透明で弾性のある膜(厚さ約
0.15mm)が得られた。
【0034】実施例3:電極の作製と膜電位の測定 実施例2で調製した膜状物を直径8mmのディスク状に
切り出し、図4のAに示すように、PVC製電極ホルダ
ー(外径8mm、内径4mm、高さ7mm)の一端に取
付け、図3に沿って前述したようなイオン選択性電極装
置を構成し、電位測定を行った。
【0035】電位測定は、分析用試薬グレードの塩化物
(LiCl,NaCl、CsCl,RbClなど)を脱
イオン水に溶解して得られた水溶液について行った。フ
ィルター付高圧水銀ランプを用いて、図4のAに関して
前述したように、光照射(365nm)を行い、照射の
前後における電位を測定した。照射時間は、特記してい
ない限り15分間である。1×10-1mol/dm3から1×
10-6mol/dmの範囲の6種類の濃度の金属塩化物水溶液
について電位測定を行い、選択係数(logKNa,M)を
求めた。
【0036】光照射前における暗中の選択係数の順位
は、Li+(1.82)>NH4 +(0.83)>Na
+(0.00)>K+(−0.32)>Rb+(−0.5
3)>Cs+(−0.59)となり、この電極が高いL
+選択性を有することが判った。
【0037】しかしながら、365nmを15分間照射
した後、選択係数は、Na+(0.00)>K+(−3.
06)>Li+(−4.02)=NH4 +(−4.02)
>Rb+(−4.73)>Cs+(−5.20)となり、
きわめて優れたNa+選択性を発揮する。
【0038】このようなイオン選択性の逆転は、電位の
値からも理解される。すなわち、塩化物水溶液の濃度1
×10-1mol/dm3における測定電位差(ELi +−ENa +
は、光照射前が107mVであるのに対して、照射後は
−237mVとなった。このように、上記〔化4〕で表
されるようなbianthracene基をもつカリックスアレーン
誘導体を可塑剤TOP含有PVCに分散して得た膜状物
を作用電極とする場合には、光の照射に応じてLi+
択性とNa+選択性の両方が得られる。
【0039】図5は、上記のような光の照射、非照射を
繰り返したサイクルテストの結果を示すものである。す
なわち、光照射を行った後に電位測定してNa+選択性
が確認された後、暗中に24時間放置して電位測定する
ことを繰り返したところ、図5に示すように、Li+
択性/Na+選択性の変換は可逆的に行われることが確
認された。
【0040】実施例4 実施例1で調製したカリックスアレーン誘導体、可塑剤
としてDOP(n−ジオクチルフタレート)、およびP
VCから実施例2と同様に膜状物を調製し、実施例5と
同様に電位測定を行った。
【0041】照射前の暗中における選択性係数の順位
は、Cs+(1.78)>Rb+(1.45)>K
+(1.34)>NH4 +(0.73)>Li+(0.0
7)>Na+(0.00)であり、Cs+選択性を有する
ことが判明した。365nmの照射後の選択性係数はN
+(0.00)>K+(−1.61)>Pb+(−2.
56)>Cs+(−3.56)>NH4 +(−6.54)
>Li+(−6.58)となり、優れたNa+選択性を示
した。Cs+に対する電位とNa+に対する電位との差
が、照射前の175mVから、照射後の−210mVに
変化していることからも、光の照射の前後において、C
+選択性からNa+選択性に変換することが判る。この
ように、可塑剤としてDOPを用いた場合には、Cs+
/Na+選択性電極が得られる。
【0042】なお、照射時間を変えて測定を行ったとこ
ろ、選択性係数(logKNa,M)は、2分(1.1
5)、5分(−2.87)15分(−3.56)、25
分(−3.57)、30分(−3.46)となり、膜状
物内におけるカリックスアレーン誘導体の光二量化は1
5〜20分で完了するものと推察された。
【0043】
【発明の効果】本発明のイオン選択性電極は、単一の作
用電極を使用するだけで複数のイオンを対象として測定
することができる。このことは、例えば、臨床検査の分
野において、体液中の電解質として重要なNa+と、精
神病に関連したLi+の測定など、異種の対象イオンを
単一の電極で測定できるという利点を与える。かくし
て、本発明のイオン選択性電極を用いれば、全体の測定
系としても小型で簡便になり、コストも低くすることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において用いるカリックスアレーン誘導
体の光二量化反応をモデル的に示したものである。
【図2】本発明において用いるカリックスアレーン誘導
体の合成法を概示するフローチャートである。
【図3】本発明のイオン選択性電極が適用される電位測
定装置の典型例を示す。
【図4】本発明に従う作用電極の構成を示す図である。
【図5】本発明に従うイオン選択性電極において光の照
射を繰り返した場合に選択性係数が可逆的に変化する様
子を示すグラフである。
【符号の説明】
1 エレクトロメータ 2 作用電極 3 標準電極(参照電極) 4 塩橋 5 試料溶液 6 飽和塩化カリウム溶液 11 銀線 12 電極ホルダー 13 内部標準液 14 膜状物 15 オプチカルファイバー
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/333 C09K 3/00 C07C 43/20 C07C 69/616

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 25−位および27−位、または、26
    −位および28−位が9−アントリルオキシ−エチル基
    で置換されたカリックス[4]アレーン誘導体をニュー
    トラルキャリヤとして、アントラセンに重なるような吸
    収スペクトルを有していない可塑剤を含有するポリマー
    中に分散して得られた膜状物を作用電極に用いることを
    特徴とするイオン選択性電極。
JP04361438A 1992-12-28 1992-12-28 光応答性カリックスアレーン誘導体を用いるイオン選択性電極 Expired - Fee Related JP3093069B2 (ja)

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