JP2877731B2 - ナトリウムイオン選択性カリックスアレーン誘導体 - Google Patents

ナトリウムイオン選択性カリックスアレーン誘導体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カリックスアレーン誘
導体に関し、詳しくは、ナトリウムイオンに対して可逆
的な補足能を有し、特にイオン選択性電極として用いら
れるのに好適なカリックスアレーン誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、ナトリウムを選択的に検知したり
定量することは多くの分野でその必要性が認められてい
る。例えば、臨床検査の分野においてはヒト血清、血漿
及び尿中のナトリウム濃度を知ることは種々の病気を診
断するのに無くてはならない手段となっている。特に血
清中のナトリウム濃度は健康なヒトで135から145
ミリモル/リットルと極めて狭い範囲に維持されてお
り、この数値の変動は身体の重大な異常に直結している
ので、その値を測定する診断的意義は大きい。またナト
リウムイオンは広く自然界に存在するために、これらを
制御しなくてはならない工業的プロセス中や廃水中、お
よび河川中においてもその濃度の測定が広く行われてい
る。その他、最近では健康食に対する一般人の関心が高
まり、食品メーカーや消費者団体、個人消費者が食品中
のナトリウム濃度を測定したいという大きなニーズがあ
る。
【0002】これらのニーズを満たしうる技術がイオン
選択性電極である。イオン選択性電極法は試料を破壊す
ることなく、簡単な設備でイオン濃度を測定することの
できる極めて有用な測定手段である。イオン選択性電極
法の利点は、この他、広い濃度範囲にわたって測定が可
能であること、短時間で測定が行えること、一本の電極
で繰り返し測定が行えること等である。イオン選択性電
極以外にナトリウムイオン濃度を測定する手段としては
プラズマ発光分光分析法、原子吸光法、炎光法等がある
が、いずれもガス供給装置が必要であるなど装置が大き
く価格も高価である。
【0003】イオン選択性電極でナトリウムイオン濃度
を測定する際には、その電極が有する固有のイオン選択
性、及び試料中に含まれる共存物質に対する影響に注意
する必要がある。
【0004】すべての電極は共存するイオンの対する許
容限界濃度が存在し、それ以上の濃度環境でのナトリウ
ムイオン測定は結果に大きな誤差を含む。電極の選択性
が高いほど高濃度の妨害イオン存在下での測定が可能と
なり、使用に際しては予め選択性を把握しておく必要が
ある。
【0005】さらに、例えば臨床検査分野など、生体由
来の試料を測定する際には、共存するタンパク質の影響
により、測定所要時間が長くなったり、測定値に誤差を
与える場合があり、生化学自動分析において、ルーチン
検査等に支障をきたすことがあるため注意を要する。
【0006】イオン選択性電極は、無機物から構成され
るものと有機物から構成されるものとがある。後者はニ
ュートラルキャリアーと呼ばれる環状または非環状のリ
ガンドを主成分としており、この化合物がナトリウムイ
オンと選択的に錯化する現象を利用している。従来より
ナトリウムイオン用のニュートラルキャリアーとして実
用化されているのは、環状化合物であるクラウンエーテ
ルから誘導されたものであり、特にビス-12-クラウン
-4誘導体が使われてきた。これは、ナトリウムイオン
のニュートラルキャリアーとしてこれまで用いられてい
るもののうち最も選択性が高く、カリウムイオンに対す
る選択係数Kは、およそlogKNa,K=−2である(こ
の数値が低いほど良好な選択性を示す。)
【0007】 最近、カリックスアレーン化合物が、イ
オン選択性電極のニュートラルキャリアーとして検討さ
れている。カリックスアレーン化合物では、カリウムイ
オンに対して1000倍を越える優れた選択性を示す化
合物が知られている。例えば、SAKAKIら[Jou
rnal of InclusionPhenomen
a、14巻、285ページ、1992年]によって合成
されたカリックス[4]アレーンのテトラ特(t−オク
チル)エトキシカルボニルメチルエーテル誘導体は、カ
リウムイオンに対する選択係数が、logKNa,K=
−3.1であることが知られている。また、YAMAM
OTOら[Chemistry Letters,11
15ページ、1994年]によって合成されたカリック
スアレーン化合物が、カリウムイオンに対する選択係数
およそlogKNa,K=−5という選択性を示すこ
とも知られている。
【0008】カリックスアレーン化合物は、非常に高い
ナトリウムイオン選択性を有しているが、生体由来の試
料を測定する場合には、試料中に共存するタンパク質の
影響を受けるため、ナトリウムイオン濃度の測定がかな
らずしも正確にできない、測定時間が長くかかるという
問題点があった。
【0009】本発明の目的は、選択性が高く、かつ、生
体由来の試料の測定時に影響を受けないナトリウムイオ
ン選択性電極として一層好適な新しい化合物を提供する
ことにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高い選択
性を有しかつタンパク質の影響を受けない、優れたナト
リウムイオン選択性電極を開発すべく研究を重ねた結
果、特定構造のカリックスアレーン誘導体の調製に成功
し、この化合物が上記の目的を達成しうることを見出し
た。即ち、本発明は下記一般式[化2]で示されるカリ
ックスアレーン誘導体を提供するものである。
【0011】
【化2】 (式中Xは、−(CH22[O(CH222−であ
り、Rは水素(すなわち無置換の場合)、または炭素数
1〜18の直鎖または分岐のアルキル基である。)
【0012】この一般式[化2]で示されるカリックス
アレーン誘導体は、ナトリウムイオンに対する選択性が
極めて優れておりかつ、タンパク質の影響を受けにく
い。
【0013】例えば、該誘導体をイオン選択性電極のニ
ュートラルキャリアーとして用いた場合、前述したビス
-12-クラウン-4誘導体よりも高い選択性を示し、生体試
料、例えば血清測定において迅速、正確な測定が行え
る。
【0014】なお、本発明に従う一般式[化2]のカリ
ックスアレーン誘導体は、イオン選択性電極のニュート
ラルキャリアーとして用いられるのに特に適している
が、他の形態により、ナトリウムイオンの分離や分析に
利用することもできる。例えば、本発明のカリックスア
レーン誘導体はナトリウムイオンに対する吸収剤として
も利用できる。
【0015】一般式[化2]の本発明のカリックスアレ
ーン誘導体が、ナトリウムイオンに対して著しく高い選
択性、およびタンパク質の影響を非常に受けにくい正確
な理由は未だ明らかではないが、一般式[化2]で示さ
れる式中のクラウン環およびカリックスアレーンのエー
テル酸素原子からなる空隙がナトリウムイオンの配位に
適していること、さらに、分子内に二つものキノン環が
存在するため、通常のカリックスアレーン化合物と比較
し、非常に親水的構造をしているため、タンパク質が吸
着しにくく、結果としてイオン選択性電極に対するタン
パク質の影響が少ないと推測される。
【0016】Rとして好ましいのは、水素(無置換)、
炭素数1〜18までの直鎖または分岐のアルキル基であ
る。Rがこれより長い場合にはイオン選択性電極に供す
る場合、用いる可塑剤との相溶性が低下し、応答速度、
選択性の低下がみられる。
【0017】しかしながら、本発明者は、Rとして特に
好ましいのは、水素(すなわち無置換)、または、少な
くとも1個のメチレン基(−CH2−)またはメチン基
(−CH−)を含有する炭素数2〜12の直鎖または分
岐のアルキル基であり、このカリックスアレーン誘導体
を用いたニュートラルキャリアーは、特に長時間にわた
ってナトリウムイオン選択性電極としての優れた機能を
保持することを見いだしている。この点、Rがメチレン
基かメチン基を含有しないアルキル基、例えば、ter
t−ブチル基のようなカリックスアレーン誘導体を用い
たニュートラルキャリアーは、時間の経過と共に、著し
い感度の低下を生じるため、イオン選択性電極において
は最適ではない。
【0018】本発明のカリックスアレーン誘導体のRを
構成する、少なくとも1個のメチレン基(−CH2−)
またはメチン基(−CH−)を含有する炭素数2〜12
の直鎖または分岐のアルキル基の例としては、エチル
基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基
などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、sec−ブチ
ル基、2−エチルヘキシル基、ネオペンチル基、ter
t−オクチル基、3−ブチルオクチル基などの分岐アル
キル基を挙げることが出来る。
【0019】このように、上記一般式[化2]のRが水
素(すなわち無置換)、または、少なくとも1個のメチ
レン基(−CH2−)またはメチン基(−CH−)を含
有する炭素数2〜12の直鎖または分岐のアルキル基で
あるカリックスアレーン誘導体が、イオン選択性電極の
ニュートラルキャリアーとして特に優れている理由は定
かではないが、熱可塑性樹脂、および可塑剤との親和性
が特にすぐれているためと考えられる。
【0020】本発明の前記一般式[化2]で示される化
合物はいずれも新規化合物であり、通常、次のような測
定によって該化合物であることを確認できる。
【0021】 (1)赤外吸収スペクトル エーテル結合に由来する吸収が、1200〜1280、
1000〜1200cm −1 に強く現れる。カルボニル
基に由来する吸収は、1640〜1680cm −1 に現
れる。
【0022】(2)プロトン核磁気共鳴(プロトンNM
R)スペクトル 重水素化クロロホルム溶媒中テトラメチルシランを基準
として測定すると、主なシグナルは 7.5〜 6.4ppm 芳香族プロトン 6.8〜 6.2 キノン環プロトン 4.5〜 3.0 ベンジル位のメチレンプロト
ン 4.5〜 3.0 エーテル部位(ーCH2ーOー)
のプロトン 2.0〜 0.0 メチル、メチレン等のアルキ
ル基プロトン に示される。
【0023】また、それぞれこれらのピークの相対強度
比は、前記一般式[化2]から算出されるそれぞれの基
に結合したプロトンの数の比と一致する。
【0024】(3)質量分析測定 電子衝撃(EI)法または二次イオン質量分析(SIM
S)法によって当該化合物の分子イオンピーク(M+)
を観察することができる。これらの方法によって測定す
る場合、分子イオンピークのほかに、分子イオンに水素
一分子分、すなわち([M+1]+)、あるいは分子イ
オンにナトリウム1個分、すなわち分子量にして23多
い分子イオンピーク([M+23]+)が観察される場
合がある。
【0025】(4)元素分析 前記一般式[化2]から算出される化合物の炭素および
水素の量は、その分析結果のそれぞれの元素量にほぼ一
致する。
【0026】前記の一般式[化2]で示されるカリック
スアレーン化合物の代表的な性状は次の通りである。
【0027】a.常温(25℃)で黄色あるいは橙色を
した固体、針状晶または板状晶として得られる。
【0028】b.溶解性は一般式[化2]のRの種類に
より若干異なるが塩化メチレン、クロロホルム、テトラ
ヒドロフラン、N,Nージメチルホルムアミド、1,2
ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン 、酢酸エチル、
ジオキサン、イソプロピルアルコールには常温で溶解す
る。メタノール、エタノール、ヘキサン等には加熱下に
溶解する。また、水にはほとんど溶解しない。
【0029】本発明の前記一般式[化2]で示されるカ
リックスアレーン化合物の製造方法は特に限定されるも
のではなく、如何なる方法を採用してもよい。次に工業
的に好適な合成フロー法を図1に示す。
【0030】出発物質である一般式[化3]は、本発明
者等の出願に係る特願平6−23700号に示されてい
るように、例えばp−テトラアルキル置換テトラヒドロ
キシカリックス[4]アレーンとトリエチレングリコー
ルジトシレートを塩基存在下、溶媒中で反応させること
により合成できる。一般式[化3]にて、Rが水素(無
置換)以外の場合には、ルイス酸あるいは酸存在下、脱
アルキル化反応を行い一般式[化4]を得ることができ
る(経路 (i))。続いて、酸化剤存在下、反応を行い
一般式[化2]で示される本発明のカリックスアレーン
化合物を得ることが出来る。
【0031】また、適当な酸化剤、溶媒を選択すること
により一般式[化3]から、直接一般式[化2]で示さ
れる本発明のカリックスアレーン化合物を得ることが出
来る(経路 (ii))。
【0032】
【化3】 (但し、Rは水素(無置換)または炭素数1〜18の直
鎖または分岐のアルキル基である)
【0033】
【化4】 (但し、Rは水素(無置換)または炭素数1〜18の直
鎖または分岐のアルキル基である)
【0034】(i)前記一般式[化4]で表させる前駆
体を経る合成法(但し、Rは炭素数1〜18までの直鎖
または分岐のアルキル基)
【0035】一般式[化3]にて、Rが水素(無置換)
以外の場合には、ルイス酸あるいは酸存在下、脱アルキ
ル化反応を行い一般式[化4]を得ることができる。
【0036】ルイス酸としては、塩化アルミニウム、臭
化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エー
テラート、塩化ホウ素、臭化ホウ素、二酸化チタン、塩
化錫(II)、四塩化チタンなどを脱離させるアルキル基
の反応性によって、適宜選択することが出来る。使用す
る原料のモル比は広い範囲で選択できるが、通常はルイ
ス酸が一般式[化3]の0.1〜100モル倍の範囲、
さらには1〜20倍モル付近であることが好ましい。
【0037】酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝
酸などの鉱酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスル
ホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸など
の有機酸を用いることが出来る。使用する原料のモル比
は広い範囲で選択できるが、通常は酸が一般式[化3]
の0.1〜100モル倍の範囲、さらには1〜20倍モ
ル付近であることが好ましい。
【0038】ルイス酸あるいは酸のいずれを用いる場合
にも、反応の進行が遅い際には、反応を促進させるため
に、フェノール、クレゾール、カテコールなどのフェノ
ール類を反応促進剤として、一般式[化3]の1〜20
倍モル加えることも効果的である。
【0039】使用する溶媒は原料および用いるルイス酸
あるいは酸に対し不活性であれば何ら制限されずに使用
しうる。例えば、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水
素;ベンゼン、トルエン 、キシレン等の芳香族炭化水
素、ニトロメタン、ニトロベンゼン等の含ニトロ溶媒、
を単一溶媒または必要に応じ2〜3種類の溶媒を混合し
て用いることができる。ベンゼン、トルエン 、キシレ
ン等の芳香族炭化水素は反応促進剤としても作用するた
め、特に優れた溶媒である。
【0040】反応温度は特に制限されないが一般に0〜
150℃の範囲が好適である。反応時間も、特に制限は
されないが一般に0.5〜100時間で十分である。
【0041】一般式[化4]を酸化剤存在下、反応を行
い一般式[化2]で示される本発明のカリックスアレー
ン化合物を得ることが出来る。
【0042】酸化剤としては、フェノール性水酸基を有
する化合物の酸化に用いることのできる有機および無機
酸化剤が制限なく用いることができる。
【0043】例えば、硝酸タリウム(III)、酢酸タリ
ウム(III)、トリフルオロ酢酸タリウム(III)などの
タリウム塩(III)、ニトロソジスルホン酸カリウム、
ニトロソジスルホン酸ナトリリウムなどの有機ニトロキ
シド化合物、コバルトサルコミンなどのサレン錯体、ル
テニウム触媒および過酸化水素水存在下反応させる。ま
た、鉛または白金電極を用いた陽極酸化、過酸化水素水
およびK2[Fe(CN)6]、クロム酸−酢酸溶液な
どが用いられる。
【0044】使用する原料のモル比は広い範囲で選択で
きるが、通常は酸化剤が一般式[化4]の1〜100モ
ル倍の範囲、さらには2〜10倍モル付近であることが
好ましい。
【0045】使用する溶媒は原料および用いる酸化剤に
対し不活性であれば何ら制限されずに使用しうる。例え
ば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなど
のハロゲン化炭素、メタノール、エタノール、ブタノー
ルなどのアルコール類、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリ
クロロ酢酸などの有機酸、二硫化炭素、を単一溶媒また
は必要に応じ2〜3種類の溶媒を混合して用いることが
できる。
【0046】反応温度は特に制限されないが一般に0〜
150℃の範囲が好適である。反応時間も、特に制限は
されないが一般に0.1〜100時間で十分である。
【0047】(ii)一段階反応による合成法
【0048】直接一般式[化3]から、適当な酸化剤、
溶媒を用いることにより、一般式[化2]で示される本
発明のカリックスアレーン化合物を得ることが出来る。
【0049】酸化剤としては、トリフルオロ酢酸タリウ
ムなどの酸化剤を用いることが出来る。使用する原料の
モル比は広い範囲で選択できるが、通常は酸化剤が一般
式[化3]の1〜100モル倍の範囲、さらには2〜1
0倍モル付近であることが好ましい。
【0050】使用する溶媒は原料および用いるルイス酸
に対し不活性であれば何ら制限されずに使用しうる。例
えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンな
どのハロゲン化炭素、二硫化炭素、あるいはメタノー
ル、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、酢
酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などの有機酸等
を単一溶媒または必要に応じ2〜3種類の溶媒を混合し
て用いることができる。
【0051】反応温度は特に制限されないが一般に0〜
150℃の範囲が好適である。反応時間も、特に制限は
されないが一般に0.1〜100時間で十分である。
【0052】一般式[化2]及び[化4]で示される化
合物の精製は抽出、再結晶、カラムクロマトグラフィー
によって行われる。特に前駆体の分離には、カラムクロ
マトグラフィーが好適に用いられる。この方法を採用す
る際には、あらかじめ、カラム充填剤、展開溶媒につい
て予め薄層クロマトグラフィにて最適条件を検討してお
く必要がある。
【0053】本発明のカリックスアレーン誘導体は、イ
オン選択性電極(ニュ−トラルキャリア−)として用い
られるほか、直接イオン剤あるいはクロマトグラフィー
材料に応用することが可能である。また、サイクリック
ボルタンメトリー、ノーマルパルスボルタンメトリーな
ど電気化学的検出方法を利用することにより、ナトリウ
ムイオンの定性、定量分析に用いることもできる。
【0054】本発明の前記一般式[化2]で示される化
合物を一成分としてナトリウムイオン選択性電極を構成
する場合、その態様は特に限定されず、例えば、イオン
選択性電極(共立出版、1977)第7章;イオン・セ
レクティブ・エレクトローズ・イン・アナリティカル・
ケミストリー(プレナム・プレス、1987) [IonSel
ective Electrodes in Analytical Chemistry (Premum
Press 1978)] 第3章及第4章;アナリティカルケミス
トリー (Analytical Chemistry) 47巻 2238頁
(1975年)等に記載された種々の公知の方法が用い
られる。具体的に例示すれば次のごとくである。
【0055】本発明の前記一般式[化2]で示される化
合物をニトロベンゼン、ジフェニルエーテル、ブロモベ
ンゼン等の水に不溶性の有機溶媒に溶解し、ガラスキャ
ピラリー、セラミック多孔膜、高分子多孔膜に保持させ
る方法、または本発明の前記一般式[化2]で示される
化合物を、熱可塑性樹脂等とともに適当な方法、例え
ば、共通溶媒に溶解した後溶媒を蒸発せしめて膜状物を
一旦形成し、この膜状物を電極に取り付けるか、あるい
は銀線、または白金線、またはシリコン半導体のゲート
部上に直接皮膜を形成させる方法により、ナトリウム電
極を構成することができる。
【0056】前記熱可塑性樹脂等は、熱可塑性樹脂単体
として、あるいは必要に応じて熱可塑性樹脂及び可塑
剤、あるいはさらに有機ホウ素化合物とともに用いられ
る。
【0057】本発明で使用される前記熱可塑性樹脂とし
ては、公知の各種のものがなんら制限されずに使用され
るが、本発明のカリックスアレーン誘導体を、膜状物に
成形してナトリウム電極として用いる場合、通常水溶液
中で使用されるため、熱可塑性樹脂は水に溶解しないも
のであることが好ましい。
【0058】本発明で使用される熱可塑性樹脂として好
適なものを例示すると、例えば、塩化ビニル、臭化ビニ
ル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン等のハロ
ゲン化ビニルの単独重合体または共重合体;アクリル酸
メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタ
クリル酸ブチル等のアクリル酸エステル、またはメタク
リル酸エステルの単独重合体または共重合体;スチレ
ン、クロロプレン、ブロモスチレン、等のスチレン及び
その置換体の単独重合体または共重合体;酢酸ビニル等
のビニルエステルの単独重合体または共重合体;ブタジ
エン、イソプレン等のジエン系重合体またはこれらジエ
ンとスチレン、アクリロニトリル等との共重合体;ポリ
ウレタン類;シロキサン重合体または共重合体;酢酸セ
ルロース、硝酸セルロース等の繊維素化合物が挙げられ
る。
【0059】以上の説明から理解されるように、本発明
は、別の観点として、一般式[化2]で示されるカリッ
クスアレーン化合物と熱可塑性樹脂を含むナトリウムイ
オン選択性組成物を提供する。この場合、該一般式[化
2]で示される化合物の配合割合は目的の性能を発揮す
る限り特に限定されるものではないが、一般には該熱可
塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜20重量部好
ましくは1〜10重量部の範囲で用いると好適である。
一般式[化2]で示される化合物が上記範囲より少ない
場合には、ナトリウムイオンに対する選択性が低下する
傾向があり、ナトリウム電極を構成する組成物として好
ましくない場合がある。また、上記範囲より多い場合に
は、一般式[化2]で示される化合物が析出する傾向が
あり、極端な場合には上記化合物の相と熱可塑性樹脂と
の相とに相分離を起こし、カリックスアレーン組成物が
不均一になる場合があるので一般には好ましくない。
【0060】本発明のカリックスアレーン組成物は前記
説明したカリックスアレーン誘導体と熱可塑性樹脂から
構成した場合においても実施例において示すように、十
分実用に供し得るナトリウムイオン選択性電極を構成す
ることが可能であるが、さらに下記一般式[化5]で示
される有機ホウ素化合物
【0061】
【化5】 但し、Yは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はハ
ロアルキル基で、Mはアルカリ金属である)
【0062】を前記カリックスアレーン誘導体に対しモ
ル比で0.001〜1.0好ましくは0.01〜0.8
の範囲で用いることにより、本発明の組成物をナトリウ
ム電極として使用した場合、その測定感度を向上させる
ことができる。
【0063】有機ホウ素化合物の量が、上記範囲を越え
ると、本発明のカリックスアレーン組成物をナトリウム
電極として使用した場合に、ナトリウムイオンの選択性
及び感度を著しく低下させることがあるので好ましくな
い。
【0064】前記一般式[化5]中、Yで示されるハロ
ゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原
子が用いられるが好ましくはフッ素および塩素が用いら
れる。
【0065】また、前記一般式[化5]中、Yで示され
るアルキル基としては、その炭素数に限定されないが、
一般には炭素数1〜4のものが好ましい。具体的には、
メチル基、エチル基、nープロピル基、nーブチル基等が
挙げられる。さらに、ハロアルキル基としては、上記の
アルキル基の水素原子の少なくとも1つ以上がハロゲン
原子で置換されたものが何ら制限されずに用い得る。具
体的には、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモ
エチル基、ヨードプロピル基、クロロブチル基、ジクロ
ロエチル基、ジブロモプロピル基、トリフルオロメチル
基、トリクロロメチル基、トリブロモプロピル基、ペン
タフルオロエチル基、1、1、1、3、3、3−ヘキサ
フルオロ−2−メトキシ−2−プロピル基、等が挙げら
れる。
【0066】本発明において用いる前記一般式[化5]
で示される有機ホウ素化合物は、公知の方法、例えば
[I. Prackt. Chem., vol.26, p15 (1964)]及び
[ Synth. React. Inorg. Met.-Org. Chem., vol.
10, p261 (1980)]等に示された方法に従って合成す
ることができる。 前記一般式[化5]で示される有機
ホウ素化合物中、Yが水素原子、フッ素原子、塩素原
子、トリフルオロメチル基である化合物は、容易に入手
可能であるか、又は入手物から目的アルカリ金属塩に塩
交換することによって容易に誘導可能であるため、本発
明に於て好適に用いられる。
【0067】また、一般式[化5]においてアルカリ金
属がカリウム、ルビジウム、セシウム等が一般に水への
溶解度が低いため好適であり、カリウムである場合が特
に好ましい。アルカリ金属がリチウム、ナトリウムであ
る場合には一般に水溶性が高いため、熱可塑性樹脂及び
前記一般式[化2]で示されるカリックスアレーン誘導
体との組合せによっては得られる組成物が使用目的に合
わない場合があるので注意を要する。
【0068】本発明のカリックスアレーン誘導体と熱可
塑性樹脂等からなる組成物は目的に応じて任意の形状、
例えば、膜状物、粒状物、繊維状物等に成形することが
できる。膜状物に成形した場合には、ナトリウム電極と
して、粒状物、繊維状物に成形した場合には、イオン吸
着樹脂あるいはクロマトグラフィー材料に応用すること
が可能である。
【0069】以下に、本発明のカリックスアレーン誘導
体からなる組成物を膜状物に成形した場合について説明
する。
【0070】本発明のカリックスアレーン組成物を成形
して得られた膜状物をナトリウム電極を構成する膜状物
として使用する場合には、その膜状物の厚さは、特に限
定されないが、1〜1000μmの範囲で選択すれば十
分である。また、上記の膜状物は、柔軟性を有するもの
の方がよくポリシロキサン類を熱可塑性樹脂として用い
る場合には、これらの樹脂をそのまま使用できるが、比
較的柔軟性に欠ける膜状物を付与する熱可塑性樹脂、例
えばポリ塩化ビニル、アクリル酸メチル等を用いるとき
は、可塑剤を使用するのがよい。該可塑剤は特に限定さ
れず公知のものを使用できるが、一般には、次のような
ものを使用すればよい。
【0071】例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフ
タレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート
等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオ
クチルセバケート、等の脂肪酸エステル類;O-ニトロフ
ェニルフェニルエーテル、O-フルオローO'ーニトロジフェ
ニルエーテル等のジフェニルエーテル類;O-ニトロフェ
ニルオクチルエーテル,O-ニトロフェニルデシルエーテ
ル、O-ニトロフェニルドデシルエーテル等のO-ニトロフ
ェニルアルキルエーテル類;トリスオクチルフォスフェ
ート等のトリスアルキルフォスフェート類が挙げられ
る。これらの可塑剤の添加量は膜状物の使用目的に応じ
て適宜選択すればよいが、一般には熱可塑性樹脂100
重量部に対して可塑剤を30〜300重量部の範囲で選
べば好適である。
【0072】上記の膜状物の製造方法は特に限定されな
い。一般に好適に採用される代表的な製造方法を例示す
れば次の通りである。
【0073】前記一般式[化2]で示される化合物を熱
可塑性樹脂と共に、あるいはさらに可塑剤を添加して、
これらを有機溶媒に溶解し、該溶液を板上面に塗布又は
流し込んだ後、有機溶媒を蒸発せしめて膜状物とする方
法。上記有機溶媒としては熱可塑性樹脂及び一般式[化
2]で示される化合物を溶解するものであれば公知のも
のが何ら制限されず使用しうる。一般に好適に用いられ
る有機溶媒を具体的に例示すれば、テトラヒドロフラ
ン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセ
トアミド、クロロホルム、1,2ージクロロエタン、塩化メ
チレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベン
ゼン、トルエン等が挙げられる。
【0074】さらに、前記一般式[化5]で示される有
機ホウ素化合物を添加する場合、有機ホウ素化合物単独
では有機溶媒に難溶である場合でも、前記一般式[化
2]で示される化合物が共存する場合、前記一般式[化
2]で示される化合物に対しモル比で0.5以下では、
可溶化することが多いので予め溶解試験を実施した上で
溶媒を選択することが望ましい。
【0075】一般式[化2]で示される本発明のカリッ
クスアレーン誘導体を含む膜状物をナトリウム選択性電
極として使用する場合の電極の概略図を図1から図3に
示す。
【0076】図2は起電力を測定する装置の説明図で、
図3は図2の電極1に内蔵される各種構成要素を示す説
明図である。図3は本発明の前記一般式[化2]で表さ
れるような化合物を被覆した白金線の概略図である。以
下に測定装置の概略を記す。
【0077】上記のようにして得られたカリックスアレ
ーン誘導体を含む膜状物を図3の16のごとくo-リング
17を介してアクリル製膜ホルダー11と圧着する。銀
線の端子12と電気的に短絡するための内部標準液15
を満たし、作用電極1を構成する。
【0078】磁気撹拌子3を入れた試料溶液2を磁気撹
拌機で撹拌混合しておく。この測定液に電極1及び0.
1モル塩化アンモニウム塩橋5の一端を浸漬する。5の
他端は銀-塩化銀標準電極14とともに飽和塩化カリウ
ム水溶液6に浸漬し、作用極と電気的に接続する。この
ようにして得た2本の電極の端子をエレクトロメータ
(8:例えばアドバンテスト社製R8240)に接続す
ることにより測定を行うことができる。作用電極として
は上述のものの他に、図4に示すごとく、白金線の周囲
に16と同様のカリックスアレーン誘導体を含む膜状物
22を被覆し、ポリテトラフルオロエチレン製テープ2
3で境界部を保護した電極を使用しても同様な測定が可
能である。
【0079】本発明の一般式[化2]で示されるカリッ
クスアレーン誘導体は、ナトリウムイオンの選択的吸着
剤としても使用することができる。吸着剤としての利用
の態様は、ナトリウムイオンの存在状態により相違する
が、代表的な例を具体的に示せば、次のごとくである。
即ち、水溶液中にカリウム塩と共存するナトリウム塩を
選択的に抽出除去するに際し、本発明の前記一般式[化
2]で示される化合物を水と混和しない有機溶媒に溶解
し、その有機溶媒を水層と接触させることにより、該ナ
トリウムイオンを水層より選択的に有機溶媒中に抽出す
る。
【0080】
【発明の効果】本発明のカリックスアレーン誘導体は、
金属イオン、特にナトリウムイオンに対する選択性がき
わめて優れている。かくして、例えば、本発明のカリッ
クスアレーン誘導体を用いるイオン選択性電極のナトリ
ウムイオン選択性は、従来より実用に供しているものよ
り更に高く、また、タンパク質の影響を受けることもき
わめて少ないので応答速度も速い。特に、式〔化2〕に
おいてRが無置換または少なくとも1個のメチレン基ま
たはメチン基を含有する炭素数2〜12のアルキル基か
らなるカリックスアレ−ン誘導体をナトリウムイオン選
択性電極として用いたものは、感度の経時的低下も見ら
れない点においても優れている。。
【0081】
【実施例】以下、本発明の特徴をさらに明らかにするた
め、実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれ
らの例に限定されるものではない。なお、本発明に関連
して示す化学式においては、慣例に従い炭素原子や水素
原子を省略していることがある。
【0082】実施例1:本発明に従うカリックスアレー
ン誘導体[化6]を以下の要領で合成した。
【0083】
【化6】 (但し、式中Xは、−(CH22[O(CH222
である。)
【0084】まず[化7]を次の手順で合成した。
【0085】
【化7】 (但し、式中Xは、−(CH22[O(CH222
である。)
【0086】[化8]を0.5gのトルエン10ml溶
液に、無水塩化アルミニウム1.35gのニトロメタン
10ml溶液を添加し、40分攪拌した。反応混合物
に、1N塩酸10ml、クロロホルム50ml、水10
0mlを加え振とうした。有機相を分離後、水相をクロ
ロホルム50mlで2回抽出を行った。有機相をまとめ
て硫酸マグネシウムにて乾燥し、続いてろ過、濃縮を行
った。残さをクロロホルム:メタノールから再結晶し、
目的物0.31gを得た。
【0087】
【化8】 (但し、式中Xは、−(CH22[O(CH222
である。)
【0088】得られた化合物の分析結果を以下に示す。 (1)性状:白色固体 (2)赤外吸収スペクトル 3335カイザー(OH) (3)質量分析スペクトル(SIMS(+);m/z=
763[M+H]+)
【0089】メタノール20ml,エタノール30m
l,クロロホルム30mlの混合溶媒に溶かした[化
7]0.15gを、メタノール20ml,エタノール3
0ml,クロロホルム30mlの混合溶媒に溶かした硝
酸タリウム・三水和物0.61gに、2分間で加えた。
30分撹拌後、クロロホルム100ml、水100ml
を加え振とうした。有機相を分離後、水相をクロロホル
ム50mlで2回抽出を行った。有機相をまとめて硫酸
マグネシウムにて乾燥し、続いてろ過、濃縮を行った。
残さをシリカゲル:クロロホルム:メタノール=99:
1にてカラムクロマトグラフィーを行い、目的物0.3
1gを得た。
【0090】得られた化合物について以下の分析を行っ
た。 (1)性状:黄色粉末 (2)赤外吸収スペクトル:1655(sh),120
7、1057カイザー (3)プロトン核磁気共鳴スペクトル(90MHz、重
クロロホルム) δ6.99 (s, 4H,ArH) 6.55 (s, 4H,キノン環) 4.14−3.12 (m,20H,Ar−CH2−A
r、OCH2) 1.63 (s, 4H,CH2) 1.43 (s,12H,CH3) 0.60 (s,18H,CH3) (4)質量分析スペクトル(SIMS(+);m/z=
791[M+H]+) これら分析結果より前記構造式[化6](化合物No.
1)であることが確認できた。
【0091】実施例2〜7 実施例1と同様な方法で、前記一般式[化2]で示され
るカリックスアレーン化合物を合成し、表1に示される
構造の化合物を合成した。得られた化合物と、収率を表
1に示した。
【0092】
【表1】
【0093】実施例2〜7によって得られた化合物を実
施例1と同様な方法で目的化合物であることを確認し
た。同定データを表2および表3に示した。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】実施例8 テトラヒドロキシカリックス
[4]アレーンの例 100mlの分液ロートに,リン酸二水素ナトリウム
0.064g、ニトロソジスルホン酸カリウム0.4g
を加え、十分に振とうして溶解した。[化9]0.31
gの乾燥エーテル溶液15mlを加えて20分間激しく
振とうした。さらに、クロロホルム50mlを加え振と
うした。有機相を分離後、水相をクロロホルム50ml
で2回抽出を行った。有機相をまとめて硫酸マグネシウ
ムにて乾燥し、続いてろ過、濃縮を行った。残さをシリ
カゲル:クロロホルム:メタノール=99:1にてカラ
ムクロマトグラフィーを行い、目的物0.068gを得
た。
【0097】
【化9】
【0098】得られた化合物について以下の分析を行っ
た。 (1)性状:黄色板状晶 (2)赤外吸収スペクトル:1657、1205、10
53カイザー (3)プロトン核磁気共鳴スペクトル δ7.20−6.78 (s, 6H,ArH) 6.59 (s, 4H,キノン環) 4.15−3.13 (m,20H,Ar−CH2−A
r、OCH2) (4)質量分析スペクトル(SIMS(+);m/z=
576[M+H]+,589[M+Na]+) これら分析結果より下記構造式[化10](化合物N
o.8)であることが確認できた。
【0099】
【化10】 (但し、式中Xは、−(CH22[O(CH222
である。)
【0100】実施例9 窒素雰囲気下氷冷したトリフルオロ酢酸タリウム(II
I)0.27gのトリフルオロ酢酸溶液10mlに、
[化11]0.15gを加え、48時間室温で撹拌し
た。トリフルオロ酢酸を留去後、氷水を加えたのち、ク
ロロホルム100ml、水100mlを加え振とうし
た。有機相を分離後、水相をクロロホルム50mlで2
回抽出を行った。有機相をまとめて硫酸マグネシウムに
て乾燥し、続いてろ過、濃縮を行った。残さをシリカゲ
ル:クロロホルム:メタノール=99:1にてカラムク
ロマトグラフィーを行い、目的物0.10gを得た。
【0101】
【化11】
【0102】得られた化合物について以下の分析を行っ
た。 (1)性状:黄色粉末 (2)赤外吸収スペクトル:1655、1170、10
57カイザー (3)プロトン核磁気共鳴スペクトル(90MHz、重
クロロホルム) δ7.03 (s, 4H,芳香族プロト
ン) 6.49 (s, 4H,キノン環) 4.06−3.18 (m,20H,Ar−CH2−A
r、OCH2) 1.25 (s,18H,CH3) (4)質量分析スペクトル(SIMS(+);m/z=
701[M+Na]+) これら分析結果より下記構造式[化12](化合物N
o.9)であることが確認できた。
【0103】
【化12】 (但し、式中Xは、−(CH22[O(CH222
である。)
【0104】実施例に於て、本発明のカリックスアレー
ン誘導体を含む膜状物を用いた電極の性能は、図3に示
した膜ホルダーに膜状物を装着し、図2に示した装置を
用いて評価した。
【0105】応用例1:本発明の化合物のナトリウム選
択性電極への応用例を示す 実施例1〜9から得られた本発明の化合物5mg、ポリ塩
化ビニル(平均重合度1000)50mg、o-ニトロフェ
ニルオクチルエーテル100mgを2.5mlのテトラヒド
ロフランに溶解した。この溶液を平滑なガラス板上に流
延したのち、テトラヒドロフランを蒸発せしめて約15
0ミクロ厚の膜を得た。この膜を図2に示すように装着
し、図1に示した装置を用いて電極性能を評価した。全
ての測定は25℃で行った。
【0106】結果を表4に示す。尚、比較のために、従
来より最適のナトリウム選択性物質として知られた下記
構造式[化13]およびカリックスアレーン誘導体の下
記構造式[化14]、[化15]について同様の方法で
試験を行い、結果を表4に示した。
【0107】
【表4】
【0108】
【化13】
【0109】
【化14】
【0110】
【化15】
【0111】ナトリウムイオン選択性の決定は、0.1
モル/リットルの点におけるそれぞれの電位から求め
た。具体的には、カリウムイオン及びナトリウムイオン
のこの濃度での電位をそれぞれEM、ESとした場合、
EM-ESを25度Cでのネルンストの式から算出され
る理論勾配59mV/decadeで除し、選択性の代表値と
した。本法を用いることにより、ネルンスト勾配の得ら
れないような感度の低い電極が見かけ上大きな選択性を
与える弊害を避けることができる。この値は小さくなる
ほどナトリウムイオンがその対象イオンに対して選択的
であることを示す。また、塩化ナトリウムのみを0.1
から0.0001モル/リットルの濃度範囲で含む水溶
液の起電力の変化量をmV/decadeの単位で求めた。
【0112】応答時間は、電極を浸せきした塩化ナトリ
ウム0.001モル/リットル溶液(pH7トリス塩酸
緩衝液、5ml)に、ナトリウム濃度0.150モル/
リットルの血清試料を0.2ml添加した際の95%応
答時間で示した。
【0113】 表4より明らかなように、本発明のカリ
ックスアレーン誘導体を用いたナトリウム選択性電極は
従来の最適のものといわれている化合物[化13]に対
して選択性が優れており、また、カリックスアレーン誘
導体の下記構造式[化14]、[化15]と比較して血
清測定時の応答は早く、ナトリウム選択性電極の成分と
して有用である。
【0114】応用例2 本発明の化合物10mgと熱可塑性樹脂及び可塑剤を表
4に示した組成で10mlのテトラヒドロフランに溶解
した。この溶液を平滑なガラス板上に流延した後に、テ
トラヒドロフランを蒸発せしめて、約100μm厚の膜
状物を得た。これらの膜状物を用いて構成した電極の性
能を表5中の電極性能に示す。用いたカリックスアレー
ン誘導体は応用例1で付けた化合物番号を使用した。表
5において熱可塑性樹脂及び可塑剤を次のように略記す
る。
【0115】 ポリ塩化ビニル :PVC ポリ塩化ビニリデン :PVDC ポリメチルメタクリレート :PMMA ポリスチレン :PSt O-ニトロフェニルオクチルエーテル :NPOE O-ニトロフェニルデシルエーテル :NPDE O-ニトロフェニルドデシルエーテル :NPDDE ジブチルフタレート :DBP ジオクチルフタレート :DOP ジオクチルアジペート :DOA O-ニトロフェニルフェニルエーテル :NPPE O-フルオローO'ーニトロジフェニルエーテル:FNDPE トリス(オクチル)フォスフェート :TEHP
【0116】表5より明らかなように、本発明のカリッ
クスアレーン誘導体を用いたナトリウム選択性電極は従
来の最適のものといわれている化合物[化13]に対し
て選択性が優れており、かつ血清測定後も電極選択性の
劣化はみられず、ナトリウム選択性電極の成分として有
用である。
【117】
【表5】
【118】応用例3 実施例1〜9から得られた本発明の化合物5mgと熱可
塑性樹脂50mg及び可塑剤75mg及び一般式[化1
0]で示される有機ホウ素化合物をカリックスアレーン
誘導体に対して所定のモル比で1,2ージクロロエタン
2.5mlに溶解した後、ガラス板上に流延し、1,2
ージクロロエタンを蒸発せしめ、約100μm厚の膜状
物を得た。得られた膜状物を用いて構成したナトリウム
電極の電極性能を表6に示す。用いたカリックスアレー
ン誘導体は応用例1で付けた化合物番号を使用した。
【0119】表6に示すように、有機ホウ素化合物の添
加により、いずれの膜も勾配が57〜59mVという極
めて高い値を示し、応答速度も速くなることから、高感
度なナトリウム電極を構成できることは明かである。
【0120】
【表6】
【0121】応用例4 実施例1,5,7,8から得られた本発明の化合物5m
gとポリ塩化ビニル(平均重合度1000)50mg,
o−ニトロフェニルオクチルエーテル100mg、テト
ラキス(4−クロロフェニル)ボレート カリウム塩1
mgを2.5mlのテトラヒドロフランに溶解した後、
ガラス板上に流延し、テトラヒドロフランを蒸発せし
め、約100μm厚の膜状物を得た。用いたカリックス
アレーン誘導体は応用例1で付けた化合物番号を使用し
た。初期性能と、電極を0.01M塩化ナトリウム水溶
液に25度Cにて1カ月浸せき保存した後の性能を測定
した。
【0122】表7より明らかなように、本発明のRが水
素(すなわち無置換)、または、少なくとも1個のメチ
レン基(−CH2−)またはメチン基(−CH−)を含
有する炭素数2〜12の直鎖または分岐のアルキル基で
あるカリックスアレーン誘導体を用いたナトリウム選択
性電極は、感度の経時的劣化が少なく、より優れている
ことが判る。
【0123】
【表7】
【図面の簡単な説明】
【図1】カリックスアレーン誘導体の一般的な合成ルー
トを示す説明図である。
【図2】起電力を測定する装置の説明図である。
【図3】図2の電極1に内蔵される各種構成要素を示す
説明図である
【図4】本発明の応用例として、本発明の化合物を被覆
した白金線の概略図である
【符号の説明】
1 電極 2 測定溶液 3 磁気撹拌子 4 磁気撹拌機 5 0.1M塩化アンモニウム塩橋 6 塩化カリウム飽和溶液 7 飽和かんこう電極 8 エレクトロメーター(アドバンテスト社製R824
0) 11 アクリル製膜ホルダー 12 銀線 13 被覆ガラス管 14 銀−塩化銀内部標準電極 15 0.1M塩化ナトリウム内部標準液 16 カリックスアレーン誘導体を含む膜状物 17 o - リング 21 白金線 22 カリックスアレーン誘導体を含む膜状物 23 ポリテトラフルオロエチレン製テープ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 Chem.Lett.(1992), (7),1287−90 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07D 323/00 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の一般式[化1]で示されることを
    特徴とするカリックスアレーン誘導体。 【化1】 (式中Xは、−(CH22[O(CH222−であ
    り、Rは水素(無置換)、または炭素数1〜18の直鎖
    または分岐のアルキル基である。)
  2. 【請求項2】 Rが水素(無置換)、または、少なくと
    も1個のメチレン基(−CH2−)またはメチン基(−
    CH−)を含有する炭素数2〜12の直鎖または分岐の
    アルキル基であることを特徴とする、請求項1に記載の
    カリックスアレーン誘導体。
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