JPH11323155A - 金属錯体組成物 - Google Patents

金属錯体組成物

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JPH11323155A
JPH11323155A JP11063001A JP6300199A JPH11323155A JP H11323155 A JPH11323155 A JP H11323155A JP 11063001 A JP11063001 A JP 11063001A JP 6300199 A JP6300199 A JP 6300199A JP H11323155 A JPH11323155 A JP H11323155A
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compound
anion
group
ion
metal complex
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JP11063001A
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English (en)
Inventor
Hiroaki Taira
浩昭 平
Kazuya Ibaraki
和也 茨木
Kazuhiro Matsuuchi
和洋 松内
Hiromasa Yamamoto
博将 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
A & T Kk
Tokuyama Corp
Original Assignee
A & T Kk
Tokuyama Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】生体液中の炭酸水素イオンを高感度、高選択
的、かつ迅速な測定が可能なイオン選択性電極の陰イオ
ン感応膜として好適な金属錯体組成物を得ることを目的
とする。 【解決手段】ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の高分子
化合物及びボロン酸ジエステル化合物よりなるマトリッ
クス膜中に、エーテル結合、エステル結合もしくはアミ
ド結合を1つ以上含んでもよい直鎖部分の原子数が5つ
以上の炭化水素基を1つ以上を有するポルフィリンイン
ジウム錯体またはポルフィリンマンガン錯体を配合した
金属錯体組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶液中のイオンの
活量測定用のイオン選択性電極に使用する陰イオン感応
膜に適した金属錯体組成物に関する。詳しくは、イオン
選択性電極の境界膜として使用した場合、炭酸水素イオ
ンを選択的に検出可能な陰イオン感応膜に適した金属錯
体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、イオン選択性電極を医療用に応用
し、血液や尿などの生体液中に含まれるイオンの定量を
行う試みが盛んに行われている。これは、生体液中の特
定のイオン濃度が生体内の代謝反応と密接な関係がある
ことに基づいて該イオン濃度を測定することにより、種
々の疾病の診断を行うものである。体液、特に血液中の
炭酸水素イオンは、生体の呼吸および代謝機能の状態を
把握するための重要な因子であることから、該イオンの
濃度を測定することにより、糖尿病、腎疾患などの種々
の診断において有用な情報を得ることができる。
【0003】一般に、イオン選択性電極は、図1に示す
ように試料液に浸漬する部分(一般には底部)に境界膜
として陰イオン感応膜12を設けて構成された筒状容器
11中に、内部電解液13及び内部基準電極14を設け
ることにより基本的に構成される。
【0004】かかるイオン選択性電極を用い、溶液中の
イオンの活量の測定を行うためのイオン測定装置の代表
的な構造を図2に示す。すなわち、イオン選択性電極2
1は塩橋22とともに試料溶液23に浸漬され、塩橋の
他の一端は比較電極24と共に飽和塩化カリウム溶液2
6に浸漬される。両電極間の電位差はエレクトロメータ
ー25で読み取られ、該電位差より試料溶液中の特定の
イオン種のイオン活量を求めることができる。このよう
なイオン測定装置に用いる陰イオン選択性電極の性能
は、それに用いる陰イオン感応膜の性能によって大きく
左右される。
【0005】従来から、陰イオン、特に炭酸水素イオン
を選択的に検出するための陰イオン感応膜として種々の
膜が提案されている。例えば、 (a)ポリ塩化ビニルなどの重合体、4級アンモニウム
塩などの脂溶性陽イオンの塩、トリフルオロアセチル−
p−アルキルベンゼンなどのトリフルオロアセトフェノ
ン誘導体及び可塑剤を混合して製膜した膜 (b)ポリ塩化ビニルなどの重合体とトリオクチルティ
ンクロライドなどの有機錫化合物と可塑剤、または更に
トリフルオロアセチル−p−アルキルベンゼンなどのト
リフルオロアセトフェノン誘導体を混合して製膜した膜 等の膜が知られている。
【0006】(a)のタイプの陰イオン感応膜を用いた
イオン選択性電極としては、ワイズ等が開示した電極
(米国特許明細書第3723281号)、グリーンバー
グ等が報告した電極[J.Greenbergら,An
al.Chim.Acta.,141:p57−64
1982)に記載]、チヤパトウオー等が開示した電極
(特開昭61−10759号公報)、山口等が開示した
電極(特開昭62−265559号)が挙げられる。
【0007】(b)のタイプの陰イオン感応膜を用いた
イオン選択性電極としては、オーシュ等が報告した電極
[U.Oeschら,J.Chem.Soc.Fara
day Trans.1,82:p1179−1186
(1986)に記載]、牛沢等が開示した電極(特開平
4−204368号)などが挙げられる。
【0008】しかしながら、(a)のタイプの陰イオン
感応膜を用いたイオン選択性電極は、膜中に4級アンモ
ニウム塩を含むため、硝酸イオン、チオシアン酸イオン
等の脂溶性のイオンに対する選択性が悪いことが知られ
ている。また、電位応答が比較的遅く(1分程度)、膜
中のイオン感応物質が徐々に溶液中に溶解するため、電
極寿命が短いという欠点がある。
【0009】(b)のタイプの陰イオン感応膜を用いた
イオン選択性電極は、膜中に有機錫化合物を含むため、
塩素イオンに対する選択性が悪いことが知られている。
また、膜中のイオン感応物質が徐々に溶液中に溶解する
ため、電極寿命が短いという欠点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従って、生体液中の炭
酸水素イオンを高感度、高選択的、かつ迅速に測定が可
能なイオン選択性電極を与える陰イオン感応膜の開発が
望まれていた。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、かかる課
題を解決し得る陰イオン感応膜を開発すべく鋭意研究を
重ねてきた。その結果、ポルフィリン骨格を有する金属
錯体化合物、ボロン酸ジエステル化合物、及び、高分子
化合物からなる組成物を陰イオン感応膜として用いるこ
とにより、溶液中の炭酸水素イオンを高感度、高選択
的、かつ迅速に測定できることを見い出し、本発明を完
成するに至った。
【0012】即ち、本発明は、ポルフィリン骨格を有す
る金属錯体化合物とボロン酸ジエステル化合物と高分子
化合物からなる金属錯体組成物、あるいはこれらの化合
物と脂溶性アニオンからなる金属錯体組成物に関する。
【0013】本発明の金属錯体組成物の構成成分の1つ
はポルフィリン骨格を有する金属錯体化合物(以下、単
にポルフィリン錯体ともいう。)である。本発明の金属
錯体組成物を陰イオン感応膜として使用するとき、陰イ
オン応答性を発現させるために、ポルフィリン骨格を有
する金属錯体化合物は必須成分である。
【0014】本発明で用いられるポルフィリン骨格を有
する金属錯体化合物としては、下記一般式(1)
【0015】
【化2】 [式中、R1からR12は、それぞれ独立に水素原子、炭
素数1〜5のアルキル基、置換もしくは非置換のフェニ
ル基、または、エーテル結合、エステル結合もしくはア
ミド結合を1つ以上含んでもよい直鎖部分の原子数が5
つ以上の炭化水素基であり、R1からR12のうち少なく
とも1つはエーテル結合、エステル結合もしくはアミド
結合を1つ以上含んでもよい直鎖部分の原子数が5つ以
上の炭化水素基であり、Mは、マンガン原子あるいはイ
ンジウム原子であり、Aは陰イオンを形成し得る原子ま
たは原子団である。]で示される化合物が、後述するボ
ロン酸ジエステル化合物と高分子化合物よりなるマトリ
ックス膜への相溶性が高く、しかも炭酸水素イオンに対
して優れた選択性を示すことから、好適に用いられる。
【0016】上記一般式(1)中、R1からR12は、そ
れぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、置
換もしくは非置換のフェニル基、または、エーテル結
合、エステル結合もしくはアミド結合を1つ以上含んで
もよい直鎖部分の原子数が5つ以上の炭化水素基であ
る。そして、R1からR12の内、少なくとも1つは、エ
ーテル結合、エステル結合もしくはアミド結合を1つ以
上含んでもよい直鎖部分の原子数が5つ以上の炭化水素
基である必要がある。エーテル結合、エステル結合もし
くはアミド結合を1つ以上含んでもよい直鎖部分の原子
数が5つ以上の炭化水素基は、ボロン酸ジエステル化合
物と高分子化合物よりなるマトリックス膜への金属錯体
化合物の相溶性を高くし、また、安定した電位応答を得
るために必須である。
【0017】なお、ここでいう直鎖部分の原子数は、エ
ーテル結合、エステル結合もしくはアミド結合を1つ以
上含んでもよい直鎖部分の原子数が5つ以上の炭化水素
基中に含まれる最長の直鎖部分について主鎖を構成する
原子数である。この場合、エーテル結合を構成する酸素
原子(−O−)、エステル結合を構成する炭素原子と酸
素原子(−C−O−)、およびアミド結合を構成する窒
素原子および炭素原子(−N−C−)は、主鎖を構成す
る原子としてカウントされる。該炭化水素が分岐を有す
る基の場合は、分岐鎖のなかでも最長の分岐鎖を含む最
長の直鎖部分についての原子数である。該炭化水素基中
にフェニル基が含まれる場合、フェニル基の原子数はカ
ウントしないものとする。
【0018】上記の原子数の上限は特に制限されない
が、一般には50まで、通常40までであることが、原
料の入手の都合上好ましい。
【0019】上記のエーテル結合、エステル結合もしく
はアミド結合を1つ以上含んでもよい直鎖部分の原子数
が5つ以上の炭化水素基は、下記式(A)で示すことが
できる。
【0020】
【化3】 (但し、上記式(A)中、X1はアルキレン基またはフ
ェニレン基であり、X2はアルキレン基を含む2価の基
であり、X3は、水素、または2本もしくは3本の直鎖
疎水基を有する疎水性有機基であり、mは0または1で
ある。) 上記式(A)中、X1で示されるアルキレン基はその炭
素数に特に制限されないが、一般には1〜18の範囲で
あることが原料の入手が容易であるため好適である。
【0021】上記式(A)中、X2で示されるアルキレ
ン基を含む2価の基としては特に制限されるものではな
いが、合成時の収率を勘案すると、下記のような基が好
適である。
【0022】
【化4】 (ただし、上記式中、nは2以上の整数であり、特に2
〜18であることが原料の入手が容易であるため好適で
ある。) 上記式(A)中、X3は、水素または2本もしくは3本
の直鎖疎水基を有する疎水性有機基である。該疎水性有
機基はポルフィリン骨格を有する金属錯体化合物のボロ
ン酸ジエステル化合物への溶解性を高め、かつ良好なイ
オン応答性を発現させる効果を示す。一般に合成時の収
率を勘案してX3として望ましいものを例示すれば以下
の通りである。
【0023】
【化5】 [ただし、上記式中、A1はエーテル結合を有しても良
い炭素数8〜30の直鎖疎水基であり、sおよびtはそ
れぞれ1〜18の整数であり、uは1または2であ
る。] ここで、直鎖疎水基は分岐を有しない炭化水素基であ
る。本発明においてA1で示される直鎖疎水基として一
般に好適に使用されるものを例示すればn−オクチル
基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル
基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、ドコシ
ル基、エチルオキシデシル基、ヘキシルオキシデシル基
等が挙げられる。
【0024】上記のエーテル結合、エステル結合もしく
はアミド結合を1つ以上含んでもよい直鎖部分の原子数
が5つ以上の炭化水素基は、一般式(1)で示されるポ
ルフィリン骨格を有する金属錯体化合物の一分子中に少
なくとも1つ含まれていれば良いが、該金属錯体化合物
の合成上の点から一分子中に1〜4つ含まれていること
が好ましい。そして、該炭化水素基が複数個含まれてい
る場合には、該炭化水素基の種類は異なっていても良
い。
【0025】前記一般式(1)で示されるポルフィリン
骨格を有する金属錯体化合物において、R1からR12
内、前記炭化水素基でないものは水素原子、炭素数1〜
5のアルキル基、または置換若しくは非置換のフェニル
基である。炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル
基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n
−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ぺンチ
ル基等を挙げることができる。フェニル基が置換されて
いる場合の置換基としては、炭素数1〜2のアルキル
基、炭素数1〜2のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ
基、ハロゲン原子、アルキルカルボニル基等を挙げるこ
とができる。
【0026】上記一般式(1)で示されるポルフィリン
骨格を有する金属錯体化合物の中心金属であるMは、マ
ンガン原子又はインジウム原子を示す。Mとしてインジ
ウム原子またはマンガン原子を用いることにより、炭酸
水素イオンの選択性が良好となり、特にインジウム原子
は、炭酸水素イオンに対する応答性が良好となるために
好適に用いられる。
【0027】上記一般式(1)中のAは、陰イオンを形
成し得る原子または原子団である。これらの原子または
原子団は、本発明に用いるポルフィリン骨格を有する金
属錯体化合物の電荷を中性に保つのに必要となる。A
は、その原子価が3価であることが、得られる陰イオン
感応膜の炭酸水素イオンの選択率が良好となるために本
発明において好ましい。
【0028】陰イオンを形成する原子または原子団とし
ては、公知のものを特に制限なく使用されるが、一般に
好適に使用されるものを例示すれば以下のとおりであ
る。即ち、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨ
ウ素イオンを形成しうるハロゲン原子、および、炭酸水
素イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、水酸化物イオ
ン、チオシアン酸イオン、酢酸イオン等を形成しうる原
子団である。特に、Aが塩素イオン、炭酸水素イオン、
もしくは臭素イオンである場合、得られる陰イオン感応
膜の炭酸水素イオンに対する応答性が向上するため最も
好適に用いられる。
【0029】なお、上記一般式(1)中のこれらR1
らR12で示される基及びM、Aで示される基は、各々独
立しており相互に依存しない。
【0030】上記一般式(1)中、R1からR12で示さ
れる基と、M及びAで示される原子もしくは原子団はど
のような組み合わせであってもよいが、炭酸水素イオン
選択性、合成時の収率の良さ、原料入手の容易さを勘案
すると、下記一般式(3)〜(6)で表される化合物が
望ましい。
【0031】
【化6】 また、特開平7−233182号公報に開示されたポル
フィリン・マンガン錯体、特開平7−258261号公
報に開示されたポルフィリン・インジウム錯体などは、
2本ないし3本の直鎖の長鎖疎水性基を有することか
ら、炭酸水素イオン選択性が良好で、かつ、長期間にわ
たって安定した電位応答が得られ、好適に用いられる。
【0032】さらに、下記一般式(7)
【0033】
【化7】 〔式中、R13、R14およびR15は、同種又は異種の水素
原子または低級アルキル基、R16、R17およびR18は、
同種又は異種のエチレン基又はトリメチレン基又はイソ
プロピレン基であり、R19、R20、R21およびR22は、
同種又は異種のフェニレン基又は炭素数3以下の低級ア
ルキレン基であり、Mはマンガン原子又はインジウム原
子であり、Aはハロゲンイオンまたは安定な陰イオンを
形成する原子団であり、Q1は主鎖にエーテル結合、エ
ステル結合またはアミド結合を有してもよい炭素数2〜
12の2価の炭化水素基、Q2は2本または3本のエー
テル、アミド、エステル結合などを有してよい炭素数6
〜18の直鎖疎水基を有する疎水性有機基、p、qおよ
びrは0〜32の整数を示す。〕で示されるポルフィリ
ン骨格を有する金属錯体化合物が、分子中に2本または
3本の直鎖疎水基からなる疎水性有機基とオキシアルキ
レン基よりなる親水性基を有しているため、高分子化合
物とボロン酸ジエステル化合物よりなるマトリックス膜
への相溶性が高く、さらに、血清中の炭酸水素イオンを
測定する場合、より高速な応答速度が得られるという特
徴も併せ持っていることから好適に用いられる。
【0034】本発明の金属錯体組成物において、ポルフ
ィリン骨格を有する金属錯体化合物の含有量は、高分子
化合物とボロン酸ジエステル化合物よりなるマトリック
ス膜100重量部に対して、イオンに対する応答性を向
上させるために1重量部より多く、ポルフィリン骨格を
有する金属錯体化合物の析出を防ぎ、膜の均一性を保つ
ために20重量部以下であることが好ましく、2〜15
重量部であることがより好ましい。
【0035】本発明の金属錯体組成物の構成成分の他の
1つはボロン酸ジエステル化合物である。金属錯体組成
物中にボロン酸ジエステル化合物を含有させることによ
り、金属錯体組成物を陰イオン感応膜として使用したと
きに、陰イオン応答性を付与し、かつ、炭酸水素イオン
に対する選択性を向上させることができる。また、ボロ
ン酸ジエステル化合物は、陰イオン感応膜に柔軟性を付
与し、陰イオン感応膜の操作性を良好にする作用をも有
している。
【0036】本発明で用いられるボロン酸ジエステル化
合物としては、下記一般式(2)
【0037】
【化8】 [式中、Xは下記式(8)
【0038】
【化9】 [上記式(8)において、L1〜L6は水素原子、アルキ
ル基、または、エーテル結合、アミド結合若しくはエス
テル結合を含む炭素数1〜10の基であり、nは0又は
1である。]で表される基、Yは芳香族炭化水素基であ
り、Zは炭素数1〜12の基であり、aは1〜5の整数
であり、aが2〜5のときはZは互いに異なる基であっ
てよい。]で示される化合物が、高分子化合物との相溶
性が高く、さらに、安定した電位応答が得られるために
好適に用いられる。
【0039】前記一般式(2)中、Xは上記式(8)で
示される基である。炭素数に特に制限されないが、形成
される環の安定性から、主鎖が炭素数2〜3個のアルキ
レン基であることが好ましい。また、メチル基を分岐鎖
(側鎖)に有するエチレン基またはプロピレン基は、合
成する際に原料の入手が容易であり、合成時の収率が良
いことから好適である。さらに、分岐鎖にエーテル結
合、アミド結合若しくはエステル結合を含む炭素数1〜
10の基が結合した場合、電極としたときに応答速度が
高速になる場合があり好適である。エーテル結合、アミ
ド結合若しくはエステル結合を含む炭素数1〜10の基
としては、後述するZの説明において一般式で示した基
を好適に採用することができる。
【0040】Xとして望ましいものを例示すれば以下の
通りである。
【0041】
【化10】 前記一般式(2)中、Yは芳香族炭化水素基である。芳
香族炭化水素基としては、ベンゼン、トルエン、キシレ
ン、ナフタレン等から誘導される基を挙げることができ
る。中でも、Yがベンゼン、ナフタレン等から誘導され
るボロン酸ジエステル化合物は、合成時の収率が良く、
さらに、ボロン酸ジエステル化合物自体の安定性が向上
することから、安定した電位応答が得られるために、本
発明では好適に使用できる。
【0042】前記一般式(2)中、Zは炭素数1〜12
の基である。この基には、エーテル結合、エステル結合
またはアミド結合などが含まれていても良い。ここでい
うZの炭素数は、エステル結合、アミド結合などに含ま
れる炭素数を除いた数である。Zが、分岐または直鎖の
アルキル基を含有する基である化合物は、高分子化合物
との相溶性が向上するために好適であり、さらに、エー
テル結合、エステル結合またはアミド結合を有する分岐
または直鎖のアルキル基である化合物は、合成する際に
原料の入手が容易であり、合成時の収率が良いことから
好適である。
【0043】Zとして本発明において好適に使用できる
ものを例示すれば以下の通りである。
【0044】
【化11】 [式中、Z1は炭素数1〜12の分岐または直鎖のアル
キル基、Z2は炭素数2〜3の分岐または直鎖のアルキ
レン基、yは1〜4の整数である。] なお、上記のZは、Yで示される芳香族炭化水素基がナ
フチル基である場合は、そのα−位またはβ−位に結合
する。
【0045】前記一般式(2)中、X、YおよびZで示
される基はどのような組み合わせであっても良いが、本
発明の金属錯体化合物を陰イオン感応膜として用いる場
合、得られるイオン感応膜の安定性、炭酸水素イオン選
択性、合成時の収率の良さ、原料入手の容易さを勘案す
ると、下記一般式(9)または一般式(10)で表され
るボロン酸ジエステル化合物が好ましい。
【0046】
【化12】 [式中、Z1は炭素数1〜12の分岐または直鎖のアル
キル基である。]
【0047】
【化13】 [上記一般式において、L1〜L6は水素原子、アルキル
基、または、エーテル結合、アミド結合若しくはエステ
ル結合を含む炭素数1〜10の基であり、L7〜L11
水素原子、アルキル基、炭素数6以上のアルコキシ基、
または、エーテル結合、アミド結合若しくはエステル結
合を含む炭素数1〜10の基であり、L7〜L11のうち
少なくとも1つは、炭素数6以上のアルコキシ基であ
り、他のL7〜L11のうち少なくとも1つはアルキル
基、または、エーテル結合、アミド結合若しくはエステ
ル結合を含む炭素数1〜10の基であり、nは0又は1
である。] 上記一般式(9)中、Z1が炭素数8〜12の分岐型ア
ルキル基である場合、高分子化合物との相溶性に優れて
いることから、安定した電位応答が得られ、本発明にお
いて特に好ましい。
【0048】上記一般式(10)中、炭素数が6以上の
アルコキシ基の中でも特に炭素数が8〜18であるもの
は、高分子化合物との相溶性に優れていることから、安
定した電位応答が得られ、本発明において特に好まし
い。L7〜L11が非イオン性の親水性基である場合、電
位応答が高速になる場合があり特に好ましい。好適な基
を例示すれば、メトキシ基、エトキシ基、エトキシメチ
ル基、−(OCH2CH2)nOCH3(但し、nは1〜
5)などである。
【0049】本発明のボロン酸ジエステル化合物の合成
方法は一般に公知の方法を組合わせて合成することがで
きるが、次に示す方法が効率良く合成できるため好適に
採用される。
【0050】ボロン酸ジエステル化合物を合成するに
は、まずブロモアリール化合物にトリアルコキシボラン
をn−ブチルリチウム存在下で反応させて、ボロン酸化
合物を合成する。次に、ボロン酸化合物にエチレングリ
コールもしくはプロパンジオールなどのジオール化合物
を反応させ、ボロン酸の環状ジエステルを合成する。さ
らに、反応液からシリカゲル粒子を固定相としたカラム
クロマトグラフィーにより精製することで目的とするボ
ロン酸ジエステル化合物が得られる。ここで用いる展開
溶媒としてはクロロホルム、アセトン、メタノール等の
公知の溶媒が単独あるいは2種以上混合した形で用いら
れる。得られたボロン酸ジエステル化合物は一般に無色
もしくは淡黄色の透明な液体である。
【0051】得られたボロン酸ジエステル化合物は、薄
層クロマト(以下TLCと略記する)分析で単一のピー
クを示すことより、純粋な化合物であることが確認され
る。TLC分析に用いる担体としてはシリカゲルあるい
はアルミナがまた展開溶媒としてはクロロホルム、アセ
トン、メタノール等の公知の溶媒が単独あるいは2種以
上混合した形で用いられる。更に、プロトンNMRによ
りその構造が確認される。
【0052】本発明の金属錯体組成物において、ボロン
酸ジエステル化合物の含有量は本発明の金属錯体組成物
を陰イオン感応膜に使用する場合の目的に応じて適宜選
択すればよいが、一般的には後述する高分子化合物10
0重量部に対して30〜400重量部、さらに50〜3
50重量部の範囲が好ましく、100〜300重量部の
範囲が最も好ましい。
【0053】本発明の金属錯体組成物の構成成分の他の
一つは高分子化合物である。本発明の金属錯体組成物中
に高分子化合物が存在することにより、陰イオン感応膜
として使用する場合に、膜としての形状が保持されると
共に、ポルフィリン骨格を有する金属錯体化合物を膜中
に固定化することが可能となる。
【0054】本発明の金属錯体組成物を陰イオン感応膜
として用いる場合、通常水溶液中で使用されるため、高
分子化合物は水に溶解しないものであることが望まし
い。本発明で使用される高分子化合物として好適なもの
を例示すると、例えば、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化
ビニリデン等のハロゲン化ビニルの単独重合体あるいは
共重合体;スチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン
等のスチレン及びその置換体の単独重合体あるいは共重
合体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリ
ル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のアクリル酸エステ
ルあるいはメタクリル酸エステルの単独重合体あるいは
共重合体;酢酸ビニル等のビニルエステルの単独重合体
あるいは共重合体;ブタジエン、イソプレン等のジエン
系重合体またはこれらジエンとスチレン、アクリロニト
リル等との共重合体;ポリウレタン類;シロキサン重合
体または共重合体;酢酸セルロース、硝酸セルロース等
の繊維素誘導体が挙げられる。特にハロゲン化ビニルの
単独重合体または共重合体、または、シロキサン重合体
または共重合体が、本発明の金属錯体組成物を陰イオン
感応膜として生体液中で使用したときに、寿命が長く好
適である。
【0055】本発明の金属錯体組成物に更に脂溶性アニ
オンを配合することにより、本発明の金属錯体組成物を
陰イオン感応膜として使用したときに、イオンに対する
応答速度が向上し、試料中のイオン濃度の測定を迅速に
行うことができる。なお、本発明において、脂溶性アニ
オンは、脂溶性アニオンとその対カチオンとの塩として
使用される。
【0056】本発明の金属錯体組成物は、陰イオン感応
膜として用いる場合、通常水溶液中で使用されるため、
脂溶性アニオンを添加する場合には該脂溶性アニオンは
水に対する溶解度の小さいものであることが好ましい。
本発明で使用される脂溶性アニオンの水に対する溶解度
は10以下であることが望ましい。なお、脂溶性アニオ
ンの水への溶解度は、脂溶性アニオンのナトリウム塩が
20℃の純水100gに溶解する重量(g)である。
【0057】本発明で使用される脂溶性アニオンを含む
塩として好適なものを例示すると、例えば、テトラキス
[3、5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレ
ート、テトラキス(4−クロロフェニル)ボレート、テ
トラキス(4−フルオロフェニル)ボレート、テトラフ
ェニルボレートなどのテトラフェニルボレート類;デシ
ルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼン
スルホン酸、オクタデシルスルホン酸、オレイルスルホ
ン酸などの長鎖アルキルスルホン酸類;ビスメチルヘキ
シルスルフォコハク酸、ジオクチルスルフォコハク酸、
ジデシルスルフォコハク酸、ジドデシルスルフォコハク
酸などの長鎖ジアルキルスルフォコハク酸類;デシルホ
スフォン酸、ドデシルホスフォン酸、ドデシルベンゼン
ホスフォン酸、オクタデシルホスフォン酸、オレイルホ
スフォン酸などの長鎖アルキルホスフォン酸類;ビスメ
チルヘキシルホスフォン酸、ジオクチルホスフォン酸、
ジデシルホスフォン酸、ジドデシルホスフォン酸などの
長鎖ジアルキルホスフォン酸類;ビスメチルヘキシルホ
スフォコハク酸、ジオクチルホスフォコハク酸、ジデシ
ルホスフォコハク酸、ジドデシルホスフォコハク酸など
の長鎖ジアルキルホスフォコハク酸類などが挙げられ
る。
【0058】上記脂溶性アニオンの対カチオンとしては
公知の陽イオンが制限なく採用されるが、カリウムイオ
ン、ナトリウムイオンが製膜する際に用いる有機溶媒へ
の溶解度が良く好適に採用される。
【0059】本発明の金属錯体組成物において脂溶性ア
ニオンの量は特に限定されない。脂溶性アニオンのポル
フィリン骨格を有する金属錯体化合物に対するモル比
(脂溶性アニオンのモル数/ポルフィリン骨格を有する
金属錯体化合物のモル数)が0.01より少ない場合に
は、イオンに対する応答速度が遅くなる場合があり、ま
た1.00より多い場合にはイオンに対する応答性が低
下し、時にはイオンに対する応答性を失う場合がある。
一般には0.10〜0.30の範囲で配合することが好
適である。
【0060】本発明において、ポルフィリン骨格を有す
る金属錯体化合物、ボロン酸ジエステル化合物及び高分
子化合物を含有する金属錯体組成物よりなる陰イオン感
応膜、あるいはこれにさらに脂溶性アニオンを含有する
陰イオン感応膜を用いることにより炭酸水素イオンを特
異的に検出できる理由は明らかではないが、これらの化
合物が組み合わさることにより初めて現れる特有の現象
であり、ボロン酸ジエステル化合物が電子受容性物質と
して機能することが炭酸水素イオンの高い選択性に寄与
していることが示唆される。
【0061】本発明の金属錯体組成物を膜状に成形する
方法は従来公知の成形方法が採用される。一般に好適に
採用される代表的な製造方法を例示すれば次の通りであ
る。ポルフィリン骨格を有する金属錯体化合物、ボロン
酸ジエステル化合物、及び高分子化合物、または、さら
にこれらの化合物と脂溶性アニオンを共に有機溶媒に溶
解し、該溶液を板状面に塗布または流し込んだ後、有機
溶媒を蒸発せしめて膜状物とする方法が挙げられる。上
記有機溶媒としては、ポルフィリン金属錯体、ボロン酸
ジエステル化合物、及び高分子化合物、または、さらに
脂溶性アニオンを溶解するものであれば公知のものがな
んら制限されず使用し得る。一般に好適に用いられる有
機溶媒を具体的に例示すれば、テトラヒドロフラン、ジ
オキサン、クロロホルム、塩化メチレン、ジメチルホル
ムアミド、ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン
等が挙げられる。
【0062】上記の方法により得られる膜状物は、一般
に青紫色の均一な膜である。この膜状物は陰イオン感応
膜として使用しうる。膜厚は、用いる構成成分の量と膜
面積を調整することにより制御可能であるが、イオン選
択性電極として使用する際の操作性を勘案して1μm〜
1mmの範囲であることが望ましい。
【0063】上記の陰イオン感応膜は、公知の構造を有
するイオン選択性電極に適用できる。一般には、試料溶
液に浸漬する部分の少なくとも一部が前記陰イオン感応
膜で構成された容器内に内部基準電極、及び内部電解液
またはイオン導電性物質を介在させた構造が好適であ
る。該電極においては、陰イオン感応膜以外の材質等は
特に制限されず、公知のものが制限なく採用される。内
部基準電極としては白金、金、カーボングラファイトな
どの導電性物質あるいは銀−塩化銀、水銀−塩化水銀等
の難溶性金属塩化物が使用される。内部電解液としては
塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、炭酸水素
ナトリウム水溶液等の金属塩水溶液からなるものが用い
られる。イオン導電性物質として好適なものを例示すれ
ば、金、白金、グラファイト等の導電体あるいは、塩化
銀、塩化水銀等のイオン導電体等である。また、電極筒
体の材質としては、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸
メチル等が使用できる。
【0064】イオン選択性電極の代表的な態様を図1に
示した。図1のイオン選択性電極は、電極筒体11の低
面部に陰イオン感応膜12を装着して構成される容器内
に、内部電解液13が満たされ、且つ内部基準電極14
を設けてなるものである。なお15は液シール用のOリ
ングである。
【0065】本発明で得られた陰イオン感応膜を適用し
得るイオン選択性電極は、図1に示された構造に限定さ
れず、陰イオン感応膜を有する電極であればいかなる構
造であっても良い。他のイオン選択性電極の好適なもの
を例示すれば、金、白金、グラファイト等の導電体ある
いは、塩化銀、塩化水銀等のイオン導電体に前記陰イオ
ン感応膜を直接貼付けて構成されるイオン選択性電極等
である。
【0066】また、かかる陰イオン感応膜を利用したイ
オン選択性電極は公知の方法で使用することができる。
例えば、前記した図2に示すような使用態様が基本的で
ある。即ち、イオン選択性電極21は、塩橋22と共に
試料溶液23中に浸漬され、塩橋の他の一端は比較電極
24と共に飽和塩化カリウム溶液26に浸漬される。上
記比較電極としては一般に公知のものが採用されるが、
好適に使用されるものを例示すれば、カロメル電極、銀
−塩化銀電極、白金板、カーボングラファイト等であ
る。
【0067】
【発明の効果】本発明の金属錯体組成物は、ポルフィリ
ン骨格を有する金属錯体化合物とボロン酸ジエステル化
合物と高分子化合物、もしくは、これらの化合物と脂溶
性アニオンから構成されており、これを陰イオン感応膜
として使用した場合、血液、尿等の生体液中に存在する
硫酸イオン、硝酸イオン、塩素イオン、サリチル酸イオ
ン等の妨害イオンに対して炭酸水素イオンの応答性が著
しく高く、更に応答速度が極めて速い。よって、本発明
により、血液、尿等の生体液中の炭酸水素イオンの定量
が極めて正確に、かつ迅速に行うことが可能である。
【0068】
【実施例】以下に本発明をさらに具体的に説明するため
に実施例を掲げるが、本発明はこれら実施例に限定され
るものではない。
【0069】尚、実施例中における記号は以下の通りで
ある。 プロトンNMR:1HNMR NMRのスペクトルにおいてシングレット :s ダブレット :d マルチプレット :m ベンゼン環 :phe サリチル酸 :Sal ポリ塩化ビニル :PVCシ゛ (2-エチルヘキシル)フタレート :DOP 2-ニトロフェニルオクチルエーテル :NPOEリン 酸トリクレシ゛ル :TCPテトラキス [3、5-ヒ゛ス(トリフルオロメチル)フェニル]ホ゛レートナトリウム塩 :TFPBシ゛ (2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩 :DESSテトラキス (4-クロロフェニル)ホ゛レートカリウム塩 :TCPB また、本実施例中のポルフィリン骨格を有する金属錯体
化合物(以下の実施例においては、単にポルフィリン錯
体ともいう。)の配合量は、高分子化合物及びボロン酸
ジエステル化合物の合計重量を100重量部としたとき
のポルフィリン錯体の重量部である。また、脂溶性アニ
オンの配合量は、ポルフィリン錯体に対するモル比(脂
溶性アニオンのモル数/ポルフィリン錯体のモル数)で
ある。
【0070】なお、実施例において、スロープは次式
(ネルンストの式)におけるsの値である。
【0071】
【数1】 [式中、Eiは活量aiの分子種iが存在するときの電
位、sはスロープ]また、各イオンに対する重炭酸イオ
ンの選択性KHCO3,Xは次式を用いて求めた。
【0072】
【数2】 [式中、EXは妨害イオン種に対する電位、EHCO3は重
炭酸イオンに対する電位、sはスロープ]本実施例にお
いて用いたポルフィリン錯体の構造と化合物No.を表
1〜表16に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【0083】
【表11】
【0084】
【表12】
【0085】
【表13】
【0086】
【表14】
【0087】
【表15】
【0088】
【表16】
【0089】製造例1(製造No.1) 4−(2−エチルヘキシルオキシ)ブロモベンゼン2.
99g(10.4mmol)をテトラヒドロフラン50
mlに懸濁し、−70℃に冷却後、ヘキサンに溶解した
n−ブチルリチウム溶液(20.9mmol)を徐々に
滴下した。−70℃で30分間撹拌後、反応液にトリメ
トキシボラン21.7g(209mmol)をゆっくり
と滴下した。そのまま、−70℃で1時間撹拌した後、
徐々に昇温させ、常温で2時間撹拌した。さらに、反応
液のpHが1以下になるように塩酸を加え、常温で20
時間撹拌した後、反応液に水とエーテルを加え有機層を
分取した。溶媒を減圧留去し、淡黄色油状物を3g得
た。
【0090】得られた淡黄色油状物3g、2,2−ジメ
チル−1,3−プロパンジオール20gをトルエン15
0mlに溶解し、ディーン・スターク(dean−st
ark)トラップを用いて5時間加熱還流しエステル化
した。溶媒を減圧留去した後、シリカゲルカラム処理し
(クロロホルム)、淡褐色油状物1.2gを得た。精製
物の1HNMR(CDCl3中、TMSを基準(0.00
ppm)とする)を行い、次に示す結果を得た。1 HNMR:7.7ppm(d;2H、Phe−H)、
6.8ppm(d;2H、Phe−H)3.9ppm
(d;2H、Phe−O−CH2)、3.7ppm
(s;4H、BO−CH2)、1.8〜0.7(m;2
1H、CH、CH2、CH3) 得られたボロン酸ジエステル化合物の構造を表17に示
す。
【0091】
【表17】
【0092】製造例2(製造No.2〜7) 製造例1と同様にしてn−ブチルリチウム存在下で4−
(2−エチルヘキシルオキシ)ブロモベンゼンとトリメ
トキシボランを反応させて得られる淡黄色油状物と、表
18に示すジオール化合物から製造例1と同様にしてボ
ロン酸ジエステル化合物を合成した。得られたボロン酸
ジエステル化合物の構造を表18に併せて示す。
【0093】
【表18】
【0094】製造例3(製造No.8) 2−[4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2,6−ジ
メチルフェニル]−1,3−ジオキサ−5,5−ジメチ
ル−2−ボリナンの合成 500mlのナスフラスコに4−ブロモ−3,5−ジメ
チルフェノール25.1g、1−ブロモ−2−エチルヘ
キサン28.9g、水酸化カリウム7.0g、1,4−
ジオキサン150mlを入れ9時間加熱還流した。溶媒
を減圧留去した後、水、1M塩酸を加え、クロロホルム
で2回抽出した。有機相を水で2回洗浄した後、減圧濃
縮し、黄色油状物を得た。油状物をヘキサン、続いてヘ
キサン/クロロホルム=10:1でシリカゲルカラム処
理した。得られた無色油状物のうち、5gを300ml
の3口フラスコに入れ、窒素雰囲気下セプタムキャップ
を取り付け、乾燥テトラヒドロフラン100mlを導入
した。これを−78℃のドライアイス/メタノール浴に
つけ、15分間撹拌した。n−ブチルリチウムのヘキサ
ン溶液(1.6M)16mlを10分間かけて滴下し、
さらに30分間撹拌した。この反応液にトリメトキシボ
ラン8.3gを10分間かけて滴下し、−78℃で2時
間30分間撹拌した。反応混合物に1M塩酸を40ml
加えた後、徐々に昇温し、室温で1時間撹拌した。溶媒
を減圧留去した後、水を加え、得られた混合物をクロロ
ホルムで2回抽出した。有機相を水で洗浄した後、減圧
濃縮して得られた黄色油状物200mlのナスフラスコ
に入れ、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール
3.3g、トルエン100mlを入れ、dean−st
ark蒸留装置を用いて2時間加熱還流した。反応液を
減圧濃縮し、得られた黄色油状物をヘキサン/クロロホ
ルム=1:1、クロロホルムでシリカゲルカラム処理
し、目的物を淡黄色油状物 4.4gを得た。精製物の1
HNMR(CDCl 3中、TMSのシグナルを0.0p
pmとする)を行い、次に示す結果を得た。化学式を表
29に示した。1 HNMR:6.50ppm(s,2H)、3.79p
pm(m,2H)、3.77ppm(s,4H)、2.
36ppm(s,6H)、1.68(m,1H)、1.
56−1.26ppm(m,8H)、1.08ppm
(s,6H)、0.98ppm(s,3H)、0.92
ppm(t,3H)、0.89ppm(t,3H) IR(KBr法):1376cm-1(B−O伸縮振動)
【0095】製造例4(製造No.9) 2−[4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2,6−ジ
メチルフェニル]−1,3−ジオキサ−5−(2,5,
8−トリオキサノニル)−5−メチル−2−ボリナンの
合成 300mlの3口フラスコに4−(2−エチルヘキシル
オキシ)−2,6−ジメチルブロモベンゼン8.5gを
入れ、窒素雰囲気下セプタムキャップを取り付け、乾燥
テトラヒドロフラン100mlを導入した。これを−7
8℃のドライアイス/メタノール浴につけ、15分間撹
拌した。n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.6
M)27.1mlを10分間かけて滴下し、さらに40
分間撹拌した。この反応液にトリメトキシボラン14.
1gを10分間かけて滴下し、−78℃で1時間撹拌
後、徐々に昇温し、2時間室温で撹拌した。反応混合物
に1M塩酸を40ml加え、5時間撹拌した。溶媒を減
圧留去した後、水を加え、得られた混合物をクロロホル
ムで2回抽出した。有機相を水で洗浄した後、減圧濃縮
し、黄色油状物を 8.0g得た。このうち、2.9
g、 2−メチル−2−ヒドロキシメチル−4,7,1
0−トリオキサウンデカノール、トルエン100mlを
200mlのナスフラスコに入れ、dean−star
k蒸留装置を用いて、5時間加熱還流した。反応液を減
圧濃縮し、黄色油状物を得た。油状物をゲル浸透クロマ
トグラフィー(GPC)により分取し、目的物として淡
黄色油状物を1.0g得た。精製物の1HNMR(CD
Cl3中、TMSのシグナルを0.0ppmとする)を
行い、次に示す結果を得た。化学式を表29に示した。1 HNMR:6.50ppm(s,2H),4.04
(d,J=11.1Hz,2H),3.79ppm
(m,2H),3.77ppm(d,J=11.1H
z,2H),3.67−3.62ppm(m,6H),
3.54ppm(m,2H),3.46ppm(s,2
H),3.38ppm(s,3H),2.35ppm
(s,6H),1.68ppm(m,1H),1.59
−1.25ppm(m,8H),1.05ppm(s,
3H),0.91ppm(t,J=7.5Hz,3
H),0.88ppm(t,J=7.2Hz,3H) IR(KBr法):1376cm-1(B−O伸縮振動)
【0096】製造例5(製造No.10) 2−[4−オクタデカニルオキシ−2,6−ビス(2,
5,8−トリオキサノニル)フェニル]−1,3−ジオ
キサ−5,5−ジメチル−2−ボリナンの合成500m
lのナスフラスコに3,5−ジメチル−4−ブロモフェ
ノール25.4g、1−ブロモオクタデカン50.7
g、水酸化カリウム10.7g、1,4−ジオキサン1
00mlを入れ3時間加熱還流した。溶媒を減圧留去し
た後、水、1M塩酸を加え、クロロホルムで2回抽出し
た。有機相を水で洗浄した後、減圧濃縮し、黄色固形物
を得た。固形物をヘキサン、ヘキサン/クロロホルム=
10:1でシリカゲルカラム処理し、白色固形物47.
7gを得た。得られた白色固形物26.4g、N−ブロ
モスクシンイミド20.6g、四塩化炭素200mlを
500mlのナスフラスコ入れ室温で混合した。混合物
に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.47gを
加えた後、徐々に昇温し、1時間加熱還流した。不溶物
を濾過した後、減圧濃縮し淡褐色固形物を得た。固形物
をヘキサン、ヘキサン/クロロホルムでシリカゲルカラ
ム処理し、白色固形物9.7gを得た。
【0097】300mlの3口フラスコに水素化ナトリ
ウム1.66g(60−72%含有流動パラフィン分散
物)を入れ、窒素気流下ヘキサンで洗浄し、流動パラフ
ィンを取り除いた後、窒素雰囲気下セプタムキャップを
取り付け、室温で乾燥1,4−ジオキサン50mlを導
入した。混合物にエチレングリコールモノメチルエーテ
ル4.6gを5分間で滴下し、さらに5分間室温で撹拌
した。混合物を徐々に昇温し、80℃で30分間撹拌し
た後、室温まで冷却した。先に得られた化合物9.7g
を乾燥1,4−ジオキサンに溶解させたものを、上記溶
液に5分間で滴下し、さらに室温で2時間撹拌した。溶
媒を減圧留去した後、水、1M塩酸を加え、クロロホル
ムで4回抽出した。有機相を水で洗浄した後、減圧濃縮
し、黄色固形物を得た。固形物をクロロホルム、続いて
クロロホルム/アセトン=10:1でシリカゲルカラム
処理し、4−オクタデシルオキシ−2,6−ビス(2,
5,8−トリオキサノニル)ブロモベンゼンを淡黄色固
形物として9.5g得た。
【0098】300mlの3口フラスコに上記淡黄色固
形物5.0gを入れ、窒素雰囲気下、乾燥テトラヒドロ
フラン100mlを導入した。これを氷浴につけ20分
間撹拌した。n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.
6M)7.3mlを10分間かけて滴下し、さらに10
分間撹拌した。この反応液にトリメトキシボラン3.8
gを10分間かけて滴下し、0℃で30分間撹拌後、徐
々に昇温し2時間30分室温で撹拌した。反応混合物に
1M塩酸を60ml加え、5時間撹拌した。溶媒を減圧
留去した後、水を加え、得られた混合物をクロロホルム
で3回抽出した。有機相を水で洗浄した後、減圧濃縮
し、褐色油状物を5.0g得た。200mlのナスフラ
スコに、得られた褐色油状物2.5g、2,2−ジメチ
ル−1,3−プロパンジオール0.8g、トルエン10
0mlを入れ、dean−stark蒸留装置を用い
て、5時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮し、褐色油
状物を得た。油状物をクロロホルム/アセトンでシリカ
ゲルカラム処理し、さらにゲル浸透クロマトグラフィー
により精製し、淡褐色油状物を504mg得た。精製物
1HNMR(CDCl3中、TMSのシグナルを0.0
ppmとする)を行い、次に示す結果を得た。化学式を
表29に示した。1 HNMR:6.77ppm(s,2H),4.63p
pm(s,4H),3.94ppm(t,J=6.6H
z,2H),3.72ppm(s,4H),3.65−
3.61ppm(m,8H),3.58−3.51pp
m(m,8H),3.37ppm(s,6H),1.7
4ppm(m,2H),1.42ppm(m,2H),
1.32−1.23ppm(br,28H),1.08
ppm(s,6H),0.88ppm(t,J=6.7
Hz,3H) IR(KBr法):1376cm-1(B−O伸縮振動)
【0099】製造例6(製造No.11) 2−[4−オクタデシルオキシ−2,6−ビス(2,
5,8−トリオキサノニル)フェニル]−1,3−ジオ
キサ−4,4,5,5−テトラメチル−2−ボロリンの
合成 300mlの3口フラスコに、4−オクタデシルオキシ
−2,6−ビス(2,5,8−トリオキサノニル)ブロ
モベンゼン2.56gを入れ、窒素雰囲気下、乾燥テト
ラヒドロフラン100mlを導入した。これを−30℃
のメタノール浴につけ、20分間撹拌した。n−ブチル
リチウムの1.6Mヘキサン溶液3.7mlを10分間
かけて滴下し、さらに1時間20分撹拌した。この反応
液にトリメトキシボラン1.93gを10分間かけて滴
下し、−30℃で5時間撹拌した。反応混合物に1M塩
酸を50ml加えた後、室温で終夜撹拌した。溶媒を減
圧留去した後、水を加え、得られた混合物をクロロホル
ムで3回抽出した。有機相を水で洗浄した後、減圧濃縮
し、褐色油状物を2.8g得た。200mlのナスフラ
スコに得られた油状物、ピナコール0.9g、トルエン
50mlを入れ、dean−stark蒸留装置を用い
て、3時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮し、淡褐色
油状物を得た。油状物をクロロホルム/アセトンでシリ
カゲルカラム処理し、淡黄色油状物1.27gを得た。
精製物の1HNMR(CDCl3中、TMSのシグナルを
0.0ppmとする)を行い、次に示す結果を得た。化
学式を表29に示した。1 HNMR:6.85ppm(s,2H),4.65p
pm(s,4H),3.95ppm(t,J=6.6H
z,2H),3.66−3.62ppm(m,8H),
3.57−3.52ppm(m,8H),3.37pp
m(s,6H),1.75ppm(m,2H),1.4
3ppm(m,2H),1.36ppm(s,12
H),1.35−1.23ppm(br,28H),
0.88ppm(t,J=6.9Hz,3H) IR(KBr法):1376cm-1(B−O伸縮振動)
【0100】実施例1(膜No.1〜12) 化合物No.1、No.5、No.39、No.60の
ポルフィリン骨格を有する金属錯体化合物を表19に示
す量、PVC(重合度1000、サン・アロー化学製)
50mg及び製造例1で得られたボロン酸ジエステル化
合物(化合物No.82)100mgをテトラヒドロフ
ラン2.5mlに溶解させた後、直径35mmのガラス
製シャーレに流延した。溶媒を20℃大気圧の条件下で
24時間かけて蒸発させ膜状物を得た。膜の分散状態を
表19に示す。
【0101】
【表19】
【0102】得られた膜状物をそれぞれ図1に示すよう
に電極に装着した後、図2に示した装置により、種々の
陰イオンについて、室温での濃度と電位差の関係を測定
した。得られた結果より公知の方法[G.J.Mood
y、J.D.Thomas著、宗森信、日色和夫訳「イ
オン選択性電極」、共立出版、18ページ(1977)
に記載の方法]により各陰イオンに対する炭酸水素イオ
ン選択係数を求めた。結果を表19に併せて示す。
【0103】比較例1(膜No.比較膜1) PVC(重合度1000)50mg及び製造例1で得ら
れたボロン酸ジエステル化合物(化合物No.82)1
00mgを用いて実施例1と全く同様に膜状物を得た。
膜の分散状態を表19に併せて示す。得られた膜状物を
用いて実施例1と同様にして各陰イオンに対する炭酸水
素イオン選択係数を求めた。結果を表19に併せて示
す。なお、表中(−)は添加していないことを示す。
【0104】比較例2(膜No.比較膜2) テトラオクチルアンモニウムブロミド(Fluka製、
製品番号87996)10mg、4−(n−デシル)−
1−トリフルオロアセチルベンゼン20mg、PVC
(重合度1000)50mg及びジ(2−エチルヘキシ
ル)セバケート(関東化学製、製品番号S0025)1
00mgを用いて実施例1と全く同様に膜状物を得た。
結果を表19に併せて示す。得られた膜状物を用いて実
施例1と同様にして各陰イオンに対する炭酸水素イオン
選択係数を求めた。結果を表19に併せて示す。
【0105】比較例3(膜No.比較膜3) トリオクチルティンクロライド(Fluka製、製品番
号92851)5mg、4−(n−デシル)−1−トリ
フルオロアセチルベンゼン3mg、PVC(重合度10
00)50mg及びジ(2−エチルヘキシル)セバケー
ト100mgを用いて実施例1と全く同様に膜状物を得
た。結果を表19に併せて示す。得られた膜状物を用い
て実施例1と同様にして各陰イオンに対する炭酸水素イ
オン選択係数を求めた。結果を表19に併せて示す。
【0106】実施例中のイオン選択係数は、その値が小
さいほど陰イオン感応膜の炭酸水素イオンに対する選択
性が良好であることを示している。表19よりわかるよ
うに本発明の金属錯体組成物を用いた陰イオン選択性電
極は、生体液中に存在する硝酸イオン、塩素イオン、サ
リチル酸イオンに対する炭酸水素イオンの選択性が優れ
ており、生体液中の炭酸水素イオン濃度を正確に測定可
能である。一方、4級アンモニウム塩、4−アルキル−
1−トリフルオロアセチルベンゼン、高分子化合物及び
可塑剤から成る膜(比較膜2)、トリオクチルチンクロ
ライド、4−アルキル−1−トリフルオロアセチルベン
ゼン、高分子化合物及び可塑剤から成る膜(比較膜3)
は硝酸イオン、サリチル酸イオンもしくは塩素イオンに
対する炭酸水素イオンの選択性が不足しているため、生
体液中の炭酸水素イオン濃度の正確な測定が困難であ
る。
【0107】実施例2(膜No.13〜83) ポルフィリン錯体(化合物No.2〜4、化合物No.
6〜36、化合物No.40〜47、化合物No.50
〜59、化合物No.61〜69、化合物No.72〜
81)を表20に示す量、PVC(重合度1000)5
0mg及び製造例1で得られたボロン酸ジエステル化合
物(化合物No.82)100mgを用いて実施例1と
全く同様に膜状物を得た。結果を表20〜22に示す。
【0108】
【表20】
【0109】
【表21】
【0110】
【表22】 得られた膜状物を用いて実施例1と同様にして各陰イオ
ンに対する炭酸水素イオン選択係数を測定した。結果を
表20〜22に併せて示す。
【0111】比較例4(膜No.比較膜4〜9) ポルフィリン錯体(化合物No.37、化合物No.3
8、化合物No.48、化合物No.49、化合物N
o.70、化合物No.71)を表22に示す量、PV
C(重合度1000)50mg及び製造例1で得られた
ボロン酸ジエステル化合物(化合物No.82)100
mgを用いて実施例1と全く同様に膜状物を得た。結果
を表22に併せて示す。得られた膜状物を用いて実施例
1と同様にして各陰イオンに対する炭酸水素イオン選択
係数を求めた。結果を表22に併せて示す。中心金属と
して銅を有する比較膜38、比較膜48、比較膜70、
および中心金属として鉄を有する比較膜37、比較膜4
9、比較膜71ではこれらイオンに対する炭酸水素イオ
ンの選択性が不十分であるため生体液中の炭酸水素イオ
ンの正確な測定は不可能であることがわかる。
【0112】実施例3(膜No.84〜139) ポルフィリン錯体(化合物No.1、化合物No.5、
化合物No.39、化合物No.60)を表23〜25
に示す量(7.6μmol)、表23〜25に示す高分
子化合物50mg、および可塑剤として製造例1、製造
例2で得られたボロン酸ジエステル化合物(化合物N
o.82〜88)100mgを用いて実施例1と全く同
様に膜状物を得た。結果を表23〜25に併せて示す。
【0113】
【表23】
【0114】
【表24】
【0115】
【表25】
【0116】得られた膜状物を用いて実施例1と同様に
して各陰イオンに対する炭酸水素イオン選択係数を求め
た。結果を表23〜25に併せて示す。
【0117】比較例5(膜No.比較膜10〜18) ポルフィリン錯体(化合物No.1、化合物No.5、
化合物No.39、化合物No.60)を表25に示す
量(7.5μmol)に、表25に示す高分子化合物5
0mg、および可塑剤として表25に示す化合物(DO
P、NPOE、TCP)100mgを用いて実施例1と
全く同様に膜状物を得た。結果を表25に併せて示す。
得られた膜状物を用いて実施例1と同様にして各陰イオ
ンに対する炭酸水素イオン選択係数を求めた。結果を表
25に併せて示す。
【0118】ポルフィリン錯体と高分子化合物に、一般
的な可塑剤であるDOP、NPOE、もしくはTCPを
用いた陰イオン感応膜(膜No.比較膜12〜20)よ
り構成される陰イオン選択性電極は、硝酸イオン、塩素
イオン、サリチル酸イオンに対する炭酸水素イオンの選
択性が不十分であるため生体液中の炭酸水素イオンの正
確な測定は不可能である。
【0119】実施例4(膜No.84〜87、膜No.
140〜159) ポルフィリン錯体(化合物No.1、化合物No.5、
化合物No.39、化合物No.60)を表26に示す
量(7.6μmol)に、脂溶性アニオンとしてTFP
Bを0.7mg(ポルフィリン錯体に対するモル比0.
10)、1.4mg(同モル比0.20)、ないし2.
1mg(同モル比0.30)、さらにPVC(重合度1
000)50mg、および製造例1で得られたボロン酸
ジエステル化合物(化合物No.82)100mgをテ
トラヒドロフラン2.5mlに溶解させた後、直径35
mmのガラス製シャーレに流延した。溶媒を20℃大気
圧の条件下で24時間かけて蒸発させ膜状物を得た。結
果を表26に示す。上記と同様にして、ポルフィリン錯
体(化合物No.1、化合物No.5、化合物No.3
9、化合物No.60)を表26に示す量(7.6μm
ol)に、脂溶性アニオンとしてDESSもしくはTC
PBを0.7mg(同モル比0.20)、さらにPVC
(重合度1000)50mg、および製造例30で得ら
れたボロン酸ジエステル化合物(化合物No.82)1
00mg、テトラヒドロフラン2.5mlを用いて膜状
物を得た。結果を表26に併せて示す。
【0120】
【表26】
【0121】得られた膜状物を用いて実施例1と同様に
して各陰イオンに対する炭酸水素イオン選択係数を求め
た。また、10mMの炭酸水素カリウム溶液を試料とし
た時の応答速度(99%応答)を測定した。結果を表2
6に併せて示す。
【0122】表26より、膜No.140〜142と膜
No.84、膜No.143〜145と膜No.85、
膜No.146〜148と膜No.86、膜No.14
9〜151と膜No.87を比較すると明らかなよう
に、本発明の陰イオン感応膜を用いた陰イオン選択性電
極はTFPBをポルフィリン錯体に対してモル比で0.
1〜0.3の範囲で添加することにより、応答速度を飛
躍的に高速化し、迅速な炭酸水素イオンの測定が可能と
なる場合がある。さらに、DESS、TCPBなどの脂
溶性アニオンを添加した場合にも応答速度の向上が認め
られる(膜No.152〜159)。
【0123】実施例5 実施例1〜4で用いた陰イオン感応膜をそれぞれ図1に
示すように電極に装着した後、図2に示した装置によ
り、初期の炭酸水素イオン応答性(100mMの炭酸水
素ナトリウム水溶液を試料溶液とした時の膜電位と、1
0mMの炭酸水素ナトリウム水溶液を試料溶液とした時
の膜電位の差の絶対値)を測定した。長期に渡る陰イオ
ン選択性電極の安定性を検討するため、37℃のトリス
−リン酸緩衝液中に1年間浸漬した後、再び炭酸水素イ
オン応答性を測定した。長期保存前後の炭酸水素イオン
応答性を表27、表28に併せて示す。
【0124】
【表27】
【0125】
【表28】
【0126】比較例6 比較例2〜3で用いた比較膜2〜3を用いて実施例5と
同様にして長期に渡る陰イオン選択性電極の安定性を検
討した。結果を表28に併せて示す。表27、表28よ
り明らかなように、本発明の陰イオン感応膜を用いた陰
イオン選択性電極は、1年が経過した後でも初期とほぼ
同等の性能を示す。
【0127】実施例6(膜No.160〜207) 製造例3〜6で得られた表29に示すボロン酸ジエステ
ル化合物を使用して膜状物を製造した。すなわち、ポル
フィリン骨格を有する金属錯体化合物(化合物No.
1、No.5、No.39、No.60)を表30〜3
1に示す量、PVC(重合度1000、サン・アロー化
学製)50mg及びボロン酸ジエステル化合物(化合物
No.89〜92)100mgをテトラヒドロフラン
2.5mlに溶解させた後、直径35mmのガラス製シ
ャーレに流延した。溶媒を20℃大気圧の条件下で24
時間かけて蒸発させ膜状物を得た。膜の分散状態を表3
0〜31に示す。
【0128】
【表29】
【0129】
【表30】
【0130】
【表31】 得られた膜状物を用いて実施例1と同様にして各陰イオ
ンに対する炭酸水素イオン選択係数を求めた。結果を表
30、表31に併せて示す。
【0131】表30、表31よりわかるように本発明の
金属錯体組成物を用いた陰イオン選択性電極は、生体液
中に存在する硝酸イオン、塩素イオン、サリチル酸イオ
ンに対する炭酸水素イオンの選択性が優れており、生体
液中の炭酸水素イオン濃度を正確に測定可能である。一
方、4級アンモニウム塩、4−アルキル−1−トリフル
オロアセチルベンゼン、高分子化合物及び可塑剤から成
る膜(表19、比較膜2)、トリオクチルチンクロライ
ド、4−アルキル−1−トリフルオロアセチルベンゼ
ン、高分子化合物及び可塑剤から成る膜(表19、比較
膜3)は硝酸イオン、サリチル酸イオンもしくは塩素イ
オンに対する炭酸水素イオンの選択性が不足しているた
め、生体液中の炭酸水素イオン濃度の正確な測定が困難
である。
【0132】実施例7(膜No.208〜239) ポルフィリン錯体(化合物No.1、化合物No.5、
化合物No.39、化合物No.60)を表32〜33
に示す量(7.6μmol)、ポリ塩化ビニリデン(P
VdC)50mg、および可塑剤として製造例3〜6で
得られたボロン酸ジエステル化合物(化合物No.89
〜92)100mgを用いて実施例1と全く同様に膜状
物を得た。結果を表32〜33に併せて示す。
【0133】
【表32】
【0134】
【表33】 得られた膜状物を用いて実施例1と同様にして各陰イオ
ンに対する炭酸水素イオン選択係数を求めた。結果を表
32〜33に併せて示す。
【0135】比較例5に示したように、ポルフィリン錯
体と高分子化合物に、一般的な可塑剤であるDOP、N
POE、もしくはTCPを用いた陰イオン感応膜(表2
5、膜No.比較膜12〜20)より構成される陰イオ
ン選択性電極と比較すると、本実施例で得られた陰イオ
ン感応膜より構成される陰イオン選択性電極では硝酸イ
オン、塩素イオン、サリチル酸イオンに対する炭酸水素
イオンの選択性が良好であるため生体液中の炭酸水素イ
オンの正確な測定が可能であることがわかる。
【0136】実施例8(膜No.240〜263) ポルフィリン錯体(化合物No.1、化合物No.5、
化合物No.39、化合物No.60)を表34に示す
量(7.6μmol)に、脂溶性アニオンとしてTFP
Bを0.7mg(ポルフィリン錯体に対するモル比0.
10)、1.4mg(同モル比0.20)、ないし2.
1mg(同モル比0.30)、さらにPVC(重合度1
000)50mg、および製造例5で得られたボロン酸
ジエステル化合物(化合物No.91)100mgをテ
トラヒドロフラン2.5mlに溶解させた後、直径35
mmのガラス製シャーレに流延した。溶媒を20℃大気
圧の条件下で24時間かけて蒸発させ膜状物を得た。結
果を表34に示す。同様の操作により、ポルフィリン錯
体(化合物No.1、化合物No.5、化合物No.3
9、化合物No.60)を表34に示す量(7.6μm
ol)に、脂溶性アニオンとしてDESSもしくはTC
PBを0.7mg(モル比0.20)、さらにPVC
(重合度1000)50mg、および製造例5で得られ
たボロン酸ジエステル化合物(化合物No.91)10
0mg、テトラヒドロフラン2.5mlを用いて膜状物
を得た。結果を表34に併せて示す。
【0137】
【表34】 得られた膜状物を用いて実施例1と同様にして各陰イオ
ンに対する炭酸水素イオン選択係数を求めた。また、1
0mMの炭酸水素カリウム溶液を試料とした時の応答速
度(99%応答)を測定した。結果を表34に併せて示
す。
【0138】表34より、膜No.240と膜No.2
41〜243、膜No.244と膜No.245〜24
7、膜No.248と膜No.249〜251、膜N
o.252と膜No.253〜255を比較すると明ら
かなように、本発明の陰イオン感応膜を用いた陰イオン
選択性電極はTFPBをポルフィリン錯体に対してモル
比で0.1〜0.3の範囲で添加することにより、応答
速度を飛躍的に高速化し、迅速な炭酸水素イオンの測定
が可能となる場合がある。さらに、DESS、TCPB
などの脂溶性アニオンを添加した場合にも応答速度の向
上が認められる(膜No.256〜263)。
【0139】実施例9 実施例6〜8で用いた陰イオン感応膜について実施例5
と同様の操作により長期に渡る陰イオン選択性電極の安
定性を検討した。長期保存前後の炭酸水素イオン応答性
を表35〜36に示す。
【0140】
【表35】
【0141】
【表36】 表28に示した比較例6(比較膜2、比較膜3)と表3
5〜36の結果を比較すると明らかなように、本発明の
陰イオン感応膜を用いた陰イオン選択性電極は、1年が
経過した後でも初期とほぼ同等の性能を示す効果が見ら
れた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属錯体組成物よりなる陰イオン感応
膜を用いたイオン選択性電極の断面図である。
【図2】イオン選択性電極を用いて電位差を測定する装
置の説明図である。
【符号の説明】
11 電極筒体 12 陰イオン感応膜 13 内部電解液 14 内部基準電極 15 Oリング 21 イオン選択性電極 22 塩橋 23 試料溶液 24 比較電極 25 エレクトロメーター 26 飽和塩化カリウム水溶液 27 記録計
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G01N 27/30 331C (72)発明者 松内 和洋 東京都日野市日野320番地の11 株式会社 エイアンドティー内 (72)発明者 山本 博将 山口県徳山市御影町1番1号 株式会社ト クヤマ内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポルフィリン骨格を有する金属錯体化合
    物、ボロン酸ジエステル化合物、及び高分子化合物を含
    有してなることを特徴とする金属錯体組成物。
  2. 【請求項2】 更に脂溶性アニオンを含んでなることを
    特徴とする請求項1記載の金属錯体組成物。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2記載の金属錯体
    組成物よりなる陰イオン感応膜。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の陰イオン感応膜と内部基
    準電極の間に内部電解液またはイオン導電性物質を介在
    させて構成された陰イオン選択性電極。
  5. 【請求項5】 下記一般式で示されるボロン酸ジエステ
    ル化合物。 【化1】 [上記一般式において、L1〜L6は水素原子、アルキル
    基、または、エーテル結合、アミド結合若しくはエステ
    ル結合を含む炭素数1〜10の基であり、L7〜L11
    水素原子、アルキル基、炭素数6以上のアルコキシ基、
    または、エーテル結合、アミド結合若しくはエステル結
    合を含む炭素数1〜10の基であり、L7〜L11のうち
    少なくとも1つは、炭素数6以上のアルコキシ基であ
    り、他のL7〜L11のうち少なくとも1つはアルキル
    基、または、エーテル結合、アミド結合若しくはエステ
    ル結合を含む炭素数1〜10の基であり、nは0又は1
    である。]
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN113603697A (zh) * 2021-07-21 2021-11-05 三峡大学 水溶性卟啉稳定的金属纳米颗粒催化剂的制备方法及应用

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